第 1 章 人 獣 共 通 感 染 症 ( 解 説 ) Ⅰ. 人 獣 共 通 感 染 症 (ズーノーシス)とは 人 獣 共 通 感 染 症 (ズーノーシス:zoonoses)は と 脊 椎 動 物 の 間 を 自 然 に 伝 播 しう るすべての 病 気 又 は 感 染 症 で 寄 生 虫 症 と 細 菌 性 食 中 毒 も 含 む と 定 義 されており これ らの 多 くは 動 物 由 来 によるものである( 図 1-1) 一 方 かつて 知 られていなかったか もしくは 新 しく 認 識 された 感 染 症 で 局 地 的 あるいは 国 際 的 に 公 衆 衛 生 上 問 題 となる 感 染 症 を エマージング( 新 興 ) 感 染 症 また 既 知 の 感 染 症 で 既 に 公 衆 衛 生 上 問 題 にならな い 程 度 まで 患 者 ( 数 )が 減 少 していた 感 染 症 のうち 再 び 流 行 し 始 め 患 者 が 増 加 した 感 染 症 を リエマージング( 再 興 ) 感 染 症 という 今 日 これらのエマージング リエマ ージング 感 染 症 は 毎 年 のように 出 現 しており またこれらの 多 くは 人 獣 共 通 感 染 症 でもあ る 近 年 出 現 した 主 な 人 獣 共 通 感 染 症 を 表 1-1に 示 す 1. 病 原 体 の 種 類 人 獣 共 通 感 染 症 を 起 こす 病 原 体 としては ウイルス リケッチア クラミジア 細 菌 真 菌 原 虫 及 び 寄 生 虫 などであり 今 日 世 界 で 200 種 類 以 上 存 在 し その 数 は 年 々 増 加 し ているといわれている 我 が 国 でも 少 なくても 100 種 類 近 くが 認 められており これらの 約 半 数 以 上 が 現 況 で 公 衆 衛 生 上 注 意 すべきものである 日 本 で 発 生 があったかもしくは 発 生 に 注 意 すべき 人 畜 共 通 感 染 症 ( 病 原 体 動 物 およびへの 感 染 源 など)としては 表 1-2に 示 すものがあげられる 人 獣 共 通 感 染 症 はその 症 状 等 から 大 きく 3 つの 危 険 度 ( 群 )に 区 別 されている 炭 疽 や 狂 犬 病 のようにと 動 物 の 両 方 において 重 篤 なもの(I 群 ) ニューカッスル 病 や 口 蹄 疫 のように 動 物 ( 牛 豚 )では 重 篤 であるが では 軽 症 のもの(II 群 ) 及 び Q 熱 や 腎 症 候 性 出 血 熱 のように 動 物 では 軽 症 か 無 症 状 であるが に 対 しては 重 症 で 致 死 率 の 高 いもの(III 群 )の 3 群 に 分 けられる( 表 1-3) 危 険 度 I 群 に 属 する 感 染 症 は 畜 産 界 と 公 衆 衛 生 の 両 面 に 甚 大 な 被 害 をもたらす これに 対 し II 群 は 主 に 家 畜 の 経 済 損 失 や 被 害 が 大 きく また III 群 は 公 衆 衛 生 上 重 大 な 問 題 を 起 こすなどの 特 徴 を 有 している - 1 -
伴 侶 動 物 ペット エキゾチックアニマル 犬 猫 モルモット 兎 小 鳥 プレーリードック ハムスター リス 猿 類 は 虫 類 両 生 類 食 用 動 物 ( 家 畜 家 禽 ) 野 生 動 物 牛 馬 豚 めん 羊 山 羊 鶏 (ブロイラー) 七 面 鳥 あひる ( 感 染 症 ) 都 会 生 棲 クマネズミ ハト カラス アライグマ 野 生 生 棲 コウモリ 狐 猿 類 野 生 齧 歯 類 は 虫 類 展 示 動 物 学 校 飼 育 動 物 実 験 動 物 ゾウ トラ シマウマなど 猿 類 は 虫 類 両 生 類 兎 ハムスター 鶏 小 鳥 マウス ラット ウサギ モルモット 猿 類 図 1-1 動 物 由 来 の 人 獣 共 通 感 染 症 - 2 -
表 1-1 近 年 に 出 現 した 主 な 人 獣 共 通 感 染 症 年 の 疾 病 病 原 体 発 生 国 感 染 数 ( 死 亡 ) 被 害 動 物 1977 エボラ 出 血 熱 フィロウイルス 科 エボラウイルス アフリカ,ザイール 318 人 (279 人 ) 腎 症 候 性 出 血 熱 ブニヤウイルス 科 ハンタウイルス 韓 国 388 人 1982 出 血 性 大 腸 炎, 溶 血 性 尿 毒 症 症 候 群 (HUS) 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 O157:H7 73,000 人 (61 人 ) ライム 病 Borrelia burgdorferi 9,000 人 1986 牛 海 綿 状 脳 症 (BSE) プリオン 英 国 113 人 (2001 年 まで) 牛 181,368 頭 発 生 ( 英 国 ) 1989 類 リケッチア 症 エーリキア 1.200 人 1991 ベネズエラ 出 血 熱 アレナウイルス ベネズエラ 105 人 (35 人 ) 1992 猫 ひっかき 病 Bartonella henselae 22,000 人 1993 ハンタウイルス 性 肺 症 候 群 ブニヤウイルス 科 シンノムブレウイルス 1993 年 80 人 (50 人 ) 1994 ブラジル 出 血 熱 アレナウイルス 科 サビアウイルス ブラジル 26 人 (10 人 ) モルビリウイルス 感 染 症 (ウマから 感 染 ) ヘンドラウイルス オーストラリア 2 人 (1 人 ) 馬 14 頭 死 亡 1995 肺 症 候 出 血 熱 ブニヤウイルス 科 ハンタウイルス 南 米 諸 国 239 人 (30%) エボラ 出 血 熱 再 流 行 フィロウイルス 科 エボラウイルス アフリカ,ザイール 318 人 (249 人 ) 1996 類 狂 犬 病 ラブドウイルス 科 リッサウイルス 属 オーストリア 2 人 死 亡 1997 新 型 インフルエンザウイルス(H5N1) 感 染 症 高 病 原 性 鳥 インフルエンザウイルス 香 港 18 人 (6 人 ) 鶏 150 万 羽 殺 処 分 1998 肺 ペスト Yersinia pestis インド 16 人 (4 人 ) 1999 ニパウイルス 感 染 症 モルビリウイルス 属 ニパウイルス マレーシア 258 人 (100 人 ) 豚 90 万 頭 殺 処 分 レプトスピラ 感 染 症 ( 現 在 ) レプトスピラインテロガンス タイ,フィリピン 他 アジア タイ 3,000 人 以 上 (700 人 ) 2001 ウエストナイル 熱 フラビウイルス 属 ウエストナイルウイルス 3,000 人 (264 人 ) 馬 25 頭 (9 頭 死 亡 ) リフトバレー 熱 ブニヤウイルス 科 リフトバレー 熱 ウイルス サウジアラビア 884 人 (124 人 ) めん 羊 11,000 頭 死 亡 2003 重 症 急 性 呼 吸 器 症 候 群 (SARS) コロナウイルス 香 港, 中 国, 世 界 8,437 人 (813 人 ) 新 型 インフルエンザ(H7N7 ウイルス) 高 病 原 性 鳥 インフルエンザウイルス オランダ 86 人 (1 人 ) 鶏 他 家 禽 3,000 万 羽 処 分 2004 新 型 インフルエンザ(H5N1 ウイルス) 高 病 原 性 鳥 インフルエンザウイルス タイ,ベトナム 100 人 (26 人 ) 鶏 他 家 禽 数 千 万 羽 処 分 - 3 -
表 1-2 わが 国 で 注 意 すべき 人 獣 共 通 感 染 症 疾 病 名 病 原 体 感 染 源 ( 動 物 ) への 感 染 源 わが 国 での 発 生 炭 疽 ブルセラ 症 結 核 非 定 型 抗 酸 菌 症 サルモネラ 症 大 腸 菌 症 赤 痢 豚 丹 毒 リステリア 症 野 兎 病 ペスト( 肺 ) パスツレラ 症 エルシニア 症 カンピロバクター 症 レプトスピラ 症 ライム 病 細 菌 牛, 馬, 豚 牛, 豚,めん 羊, 犬 牛 豚, 豚, 鶏, 犬,カメなど 家 畜, 家 禽, 伴 侶 動 物 など 豚, 魚 類 牛,めん 羊, 豚 野 兎, 野 生 げっ 歯 類 野 生 げっ 歯 類 犬, 猫 など 牛, 豚, 犬, 猫, 野 生 げっ 歯 類 鶏, 豚,( 犬, 猫 ) 鼠, 犬, 豚, 牛 など 野 生 動 物 犬 不 明, 汚 染 食 品, 汚 染 食 品,サル, 汚 染 食 品 ネズミ,ノミ, 患 者, 汚 染 食 品, 汚 染 食 品 汚 染 環 境, 鼠 犬, 豚, 牛 マダニ クリプトコッカス 症 皮 膚 糸 状 菌 症 真 菌 鳩 の 排 泄 物 犬, 猫,げっ 歯 類 Q 熱 発 疹 熱 紅 斑 熱 リケッチア 野 生 動 物 鼠 野 生 動 物,げっ 歯 類 家 畜, 乳, 肉,マダニ ネズミ,ノミの 糞 犬 など,マダニ 実 態 不 明 オウム 病 クラミジア 狂 犬 病 日 本 脳 炎 ダニ 脳 炎 ニューカッスル 病 B ウイルス 病 マールブルグ 病 ラッサ 熱 腎 症 候 性 出 血 熱 ウエストナイル 脳 炎 リフトバレー 熱 SARS 高 病 原 性 鳥 インフルエンザ ウイルス 犬, 狐, 肉 食 獣 豚, 馬, 牛, 野 鳥 野 鼠, 犬, 牛, 山 羊 猿 猿 ( 野 生 哺 乳 類 ) 野 生 げっ 歯 類 ラット, 野 生 げっ 歯 類 家 畜 ハクビシン 野 生 肉 食 獣, 犬,コオモリ 蚊 マダニ 蚊 家 畜, 蚊 実 態 不 明 トキソプラズマ 症 アメーバ 赤 痢 クリプトストリジウム 症 原 虫 猫, 豚,めん 羊, 犬 など, 豚 など 家 畜, 家 禽 伴 侶 動 物 人, 豚, 汚 染 した 食 品, 汚 染 飲 料 水 肝 蛭 症 肺 吸 虫 症 日 本 住 血 吸 虫 症 有 鈎 条 虫 症 無 鈎 条 虫 症 広 節 裂 頭 条 虫 症 包 虫 症 旋 毛 虫 症 (トリヒナ 症 ) アニサキス 症 有 棘 顎 口 虫 症 寄 生 虫 ( 蠕 虫 ) 牛, 緬 羊, 豚, 野 生 肉 食 獣, 牛, 山 羊, 犬, 猫, 鼠, 犬, 猫, 野 生 肉 食 雑 食 獣 肉 食 獣 肉 食 獣 海 生 哺 乳 動 物 肉 食 獣 ヒメモノアラ 貝 ( 水 辺 の 草 ), 牛 豚 の 肝 臓 淡 水 産 のカニ,( 猪 の 生 肉 ) ミヤイリ 貝 豚 肉 牛 肉 サケ 科 の 魚 犬, 猫, 狐, 虫 卵 で 汚 染 した 飲 食 物 豚,( 熊 ) イカ, 海 水 魚 ライ 魚 など 牛 海 綿 状 脳 症 (BSE) 異 常 プリオン 蛋 白 質 牛 汚 染 肉 ( 食 品 ) - 4 -
表 1-3 と 動 物 における 人 獣 共 通 感 染 症 の 危 険 度 分 類 危 険 度 ( 群 ) 疾 病 例 宿 主 症 状 致 死 率 特 徴 I 炭 疽 狂 犬 病 < 動 物 重 症 重 症 高 高 経 済 損 失 公 衆 衛 生 問 題 II ニューカッスル 病 < 動 物 重 症 軽 症 高 無 経 済 損 失 III Q 熱 ダニ 脳 炎 < 動 物 軽 症 重 症 低 無 高 公 衆 衛 生 問 題 出 典 : 人 と 動 物 の 共 通 伝 染 病 ( 高 島 郁 夫 監 酪 農 総 合 研 究 所 :1998) 2. 感 染 源 別 によるズーノーシス ズーノーシスをその 感 染 源 感 染 経 路 別 に 区 分 してみよう 1 水 系 ( 感 染 動 物 の 糞 尿 に よる 経 口 経 皮 感 染 :レプトスピラ 病 (ワイル 病 ) クリプトスポリジウム 症 ほか) 2 食 物 ( 食 肉 魚 貝 類 などによる 経 口 感 染 : 各 種 食 中 毒 (サルモネラ 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 カ ンピロバクターほか) 及 び 寄 生 虫 症 3 汚 物 ( 動 物 のふんによる 経 口 感 染 : 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 ほか) 4 飛 沫 塵 埃 ( 鳥 のふんによる 経 気 道 感 染 :オーム 病 ほか) 及 び5 節 足 動 物 による 感 染 (ダニ シラミ ノミなど 経 皮 感 染 : 発 疹 チフス ペスト 他 )などがあ る 特 に 我 が 国 では 食 水 系 感 染 によるズーノーシスは 食 習 慣 上 発 生 しやすく これら は 食 中 毒 食 物 感 染 症 として 厚 生 労 働 省 への 届 出 が 義 務 付 けられており 毎 年 事 件 数 とし て 500~2,000 件 ( 患 者 数 25,000~40,000 名 ) 発 生 している 3.わが 国 の 感 染 症 法 で 指 定 されたズーノーシス 1999 年 4 月 1 日 より 施 行 された 感 染 症 の 予 防 及 び 感 染 症 の 患 者 に 対 する 医 療 に 関 する 法 律 ( 感 染 症 法 ) には 法 律 施 行 後 5 年 後 の 見 直 し 規 定 が 定 められている これに 基 づき 2003 年 8 月 感 染 症 法 の 見 直 し 案 がまとめられ 2003 年 11 月 から 施 行 となった( 表 1-4) 今 回 の 改 正 では 1) 緊 急 時 における 感 染 症 対 策 の 強 化 特 に 国 の 役 割 の 強 化 2) 動 物 由 来 感 染 症 に 対 する 対 策 の 強 化 と 整 理 3) 感 染 症 法 対 象 疾 患 及 び 感 染 症 類 型 の 見 直 しが - 5 -
表 1-4 感 染 症 法 に 指 定 された 疾 病 分 類 ヒ ト 由 来 感 染 症 動 物 由 来 感 染 症 1 類 1) 痘 そう エボラ 出 血 熱,クリミア コンゴ 出 血 熱,ペスト,マールブルグ 病,ラッサ 熱, 追 加 重 症 急 性 呼 吸 器 症 候 群 (SARS:コロナウイルスによる) 2 類 1) 急 性 灰 白 髄 炎,コレラ,ジフテリア, 腸 チフス,パラチフス 細 菌 性 赤 痢 (サル) 3 類 1) 新 4 類 1) コクシジオイデス 症,レジオネラ 症, 変 更 ボツリヌス 症 ( 乳 児 ボツリヌス 症 (4 類 全 数 ) を 変 更 ) 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 感 染 症 ウエストナイル 熱 (ウエストナイル 脳 炎 を 含 む),エキノコックス 症, 黄 熱,オウム 病, 回 帰 熱,Q 熱, 狂 犬 病, 腎 症 候 性 出 血 熱, 炭 疽,つつが 虫 病,デング 熱, 日 本 紅 斑 熱, 日 本 脳 炎,ハンタウイルス 肺 症 候 群,Bウイルス 病,ブルセラ 症, 発 しんチフス,マラリア,ライム 病 追 加 急 性 E 型 肝 炎, 急 性 A 型 肝 炎, 高 病 原 性 鳥 インフルエンザ,サル 痘,ニパウイルス 感 染 症, 野 兎 病,リッサウイルス 感 染 症,レプトスピラ 症 新 5 類 2) ( 全 数 ) 3) 急 性 ウイルス 肝 炎 ( E 型 肝 炎 及 びA 型 肝 炎 を 除 く),クリプトスポリジウム 症, クロイツフェルト ヤコブ 病, 劇 症 型 溶 血 性 レンサ 球 菌 感 染 症, 後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群, ジアルジア 症, 髄 膜 炎 菌 性 髄 膜 炎, 先 天 性 風 疹 症 候 群, 梅 毒, 破 傷 風, バンコマイシン 耐 性 腸 球 菌 感 染 症 ( 定 点 ) 4) 咽 頭 結 膜 熱,A 型 溶 血 性 レンサ 球 菌 咽 頭 炎, 感 染 性 胃 腸 炎, 急 性 出 血 性 結 膜 炎, クラミジア 肺 炎 (オウム 病 を 除 く), 細 菌 性 髄 膜 炎, 水 痘, 性 器 クラミジア 感 染 症, 性 器 ヘルペスウイルス 感 染 症, 成 人 麻 疹, 手 足 口 病, 伝 染 性 紅 斑, 突 発 性 発 疹, 百 日 咳, 風 疹, ペニシリン 耐 性 肺 炎 球 菌 感 染 症,ヘルパンギーナ,マイコプラズマ 肺 炎, 麻 疹 ( 成 人 麻 疹 を 除 く), 無 菌 性 髄 膜 炎,メチシリン 耐 性 黄 色 ブドウ 球 菌 感 染 症 状, 薬 剤 耐 性 緑 膿 菌 感 染 症, 流 行 性 角 結 膜 炎, 流 行 性 耳 下 腺 炎, 淋 菌 感 染 症 追 加 5) バンコマイシン 耐 性 黄 色 ブドウ 球 菌 感 染 症,RSウイルス 感 染 症 ( 定 点 ), 急 性 脳 炎 (ウエストナイル 脳 炎, 日 本 脳 炎 除 く) 変 更 尖 圭 コンジローマ( 定 点 )( 尖 圭 コンジローム から 変 更 ), 急 性 脳 炎 ( 定 点 把 握 から 全 数 把 握 に 変 更 ) ( 全 数 )アメーバ 赤 痢 ( 定 点 )インフルエンザ( 高 病 原 性 鳥 インフルエンザを 除 く) 1) 1~ 新 4 類 感 染 症 : 診 断 後 直 ちに 届 出, 2) 新 5 類 感 染 症 : 診 断 から7 日 以 内 に 届 出, 3) 全 数 : 全 数 把 握 疾 患, 4) 定 点 : 定 点 把 握 疾 患, 5) 追 加 : 今 回 の 改 正 で 追 加 または 変 更 された 疾 患 ( 平 成 15 年 11 月 5 日 施 行 ) - 6 -
主 体 に 行 われた また 本 改 正 では 2003 年 世 界 的 に 問 題 となった SARS( 重 症 急 性 呼 吸 器 症 候 群 )が1 類 感 染 に 指 定 され 更 に 従 来 4 類 感 染 症 に 区 分 されていたもので 媒 介 動 物 の 輸 入 規 制 消 毒 蚊 ネズミなどの 駆 除 などにかかわる 措 置 が 必 要 なものは 新 4 類 感 染 症 に 位 置 付 け られた また 新 たに 高 病 原 性 鳥 インフルエンザ サル 痘 ニパウイルス 感 染 症 野 兎 病 リッサウイルス 感 染 症 レプトスピラ 症 などの 動 物 由 来 感 染 症 も 新 4 類 に 追 加 された こ の 他 ウイルス 性 肝 炎 のうちE 型 肝 炎 とA 型 肝 炎 が 区 別 され 全 てのボツリヌス 症 が 新 4 類 に 加 えられた 旧 4 類 感 染 症 から 新 4 類 に 移 行 したものを 除 き 残 りは 新 5 類 感 染 症 と して 分 類 された また バンコマイシン 耐 性 黄 色 ブドウ 球 菌 感 染 症 (VRSA)が 全 数 把 握 疾 患 として ウエストナイル 脳 炎 及 び 日 本 脳 炎 を 除 く 急 性 脳 炎 が 定 点 把 握 疾 患 から 全 数 把 握 疾 患 に 変 更 された その 詳 細 は 第 2 章 Ⅲ 項 を 参 照 されたい 4. 家 畜 ( 食 用 動 物 )のズーノーシス 食 肉 食 鳥 肉 乳 卵 などのタンパク 性 食 品 の 生 産 動 物 である 家 畜 家 禽 に 対 し 家 畜 伝 染 病 予 防 法 による 取 締 りの 対 象 となっているズーノーシスとしては 炭 疽 ( 脾 脱 疽 ) 結 核 ブルセラ 病 鼻 疽 口 蹄 疫 豚 丹 毒 狂 犬 病 流 行 性 脳 炎 ( 日 本 脳 炎 ) ニューカッス ル 病 及 び 高 病 原 性 鳥 インフルエンザなどがあり( 対 象 家 畜 の 種 類 が それぞれ 定 められて いる ) これらの 疾 病 を 発 見 した 獣 医 師 あるいは 家 畜 の 所 有 者 は 家 畜 保 健 衛 生 所 を 経 由 して 各 都 道 府 県 知 事 に 届 出 が 義 務 付 けられている また 感 染 症 法 の 中 では これらの 疾 病 に 感 染 した 患 者 を 診 断 した 医 師 は 直 ちに 届 出 をしなければならないと 定 められている 国 際 獣 疫 事 務 局 (OIE)では 炭 疽 ブルセラ 病 牛 結 核 馬 鼻 疽 と 狂 犬 病 の 5 疾 病 を 家 畜 における 最 も 危 険 なズーノーシスとして 取 り 上 げている 今 日 これらの 疾 病 は 我 が 国 では 発 生 がないか もしくはほぼ 抑 制 されている 5. 伴 侶 動 物 等 のズーノーシス 近 年 社 会 生 活 の 多 様 化 に 伴 って 家 畜 以 外 に 伴 侶 動 物 ペット 実 験 用 動 物 及 び 動 物 園 などの 展 示 動 物 など 種 々の 動 物 がの 生 活 圏 内 において 飼 育 されている これらの 動 物 におけるズーノーシスの 実 態 としては 小 鳥 のオウム 病 イヌのレプトスピラ 症 ネコ のトキソプラズマ 症 イヌとネコのパスツレーラ 症 と 皮 膚 糸 状 菌 症 及 びイヌの 蛔 虫 症 など が 蔓 延 しており 我 が 国 でのへの 被 害 もみられる( 表 1-2) これらの 疾 病 につい ても 重 点 的 な 予 防 対 策 が 必 要 とされている 伴 侶 動 物 は 家 畜 家 禽 との 接 触 の 機 会 も 多 く これらの 疾 患 ( 犬 蛔 虫 を 除 く)は 家 畜 にも 感 染 するため 飼 育 環 境 及 び 疾 病 発 生 などに 対 しても 監 視 体 制 を 強 化 する 必 要 がある - 7 -
6. 野 生 動 物 からのズーノーシス 我 が 国 に 生 棲 する 野 生 動 物 において 家 畜 家 禽 にも 感 染 する 主 なズーノーシスとして は 細 菌 性 疾 病 では 野 兎 病 レプトスピラ 症 エルシニア 症 サルモネラ 症 非 定 型 抗 酸 菌 症 ライム 病 などであり リケッチア 性 では Q 熱 日 本 紅 斑 熱 クラミジア 性 ではオウ ム 病 ウイルス 性 では 日 本 脳 炎 ダニ 脳 炎 腎 症 候 性 出 血 熱 原 虫 性 ではトキソプラズマ 症 寄 生 虫 症 では 多 房 性 包 虫 症 とトリヒナ 症 などが 知 られている( 表 1-2) これらの 多 くはげっ 歯 類 などの 小 型 野 生 動 物 にも 感 染 するため の 生 活 圏 に 生 棲 する 小 型 野 生 動 物 に 流 行 がみられる 場 合 野 生 動 物 の 対 応 は 難 しく その 防 圧 も 著 しく 困 難 となるので 十 分 な 環 境 整 備 が 必 要 である Ⅱ. 食 品 とズーノーシス 1. 動 物 由 来 の 食 品 を 介 するズーノーシス 動 物 性 食 品 により 媒 介 されるズーノーシスのほとんどは 生 食 または 加 熱 不 十 分 なもの を 摂 食 することによって 発 生 している これらの 原 因 となる 食 品 としては 食 肉 乳 卵 及 び 魚 介 類 が 挙 げられる 主 な 食 品 媒 介 によるズーノーシスについて 病 原 体 媒 介 する 食 品 を 表 1-5に 示 す 1) 食 肉 とその 加 工 品 によるズーノーシス 食 肉 により 媒 介 されるズーノーシスとしては 動 物 ( 家 畜 )に 感 染 又 は 動 物 の 保 有 して いる 病 原 体 か 動 物 の 不 適 切 なと 殺 解 体 処 理 により 汚 染 された 食 肉 を 生 食 又 は 加 熱 不 十 分 のまま 摂 取 した 場 合 に 発 生 している 動 物 ( 家 畜 )の 感 染 症 の 中 で 家 畜 伝 染 予 防 法 に 指 定 されている 疾 病 ( 炭 疽 ブルセラ 症 結 核 豚 丹 毒 など)に 罹 患 した 動 物 は 食 用 不 適 とされているが 腸 管 または 内 臓 ( 肝 臓 など)に 保 有 している 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 O157 サルモネラ 及 びカンピロバクターは 食 肉 を 汚 染 して 食 中 毒 や 感 染 症 を 起 こすことがある 2) 乳 及 び 乳 加 工 品 によるズーノーシス 乳 及 び 乳 製 品 によるズーノーシスとして 代 表 的 なものはブルセラ 症 で 最 も 重 要 な 動 物 由 来 感 染 症 のひとつとして 世 界 保 健 機 構 (WHO)や 国 際 獣 疫 事 務 局 (OIE)などの 国 際 機 関 を 始 めとして 世 界 各 国 で 対 策 がとられている ブルセラ 属 菌 は 流 産 胎 児 や 胎 盤 などに 含 まれる 他 乳 汁 中 へも 排 出 される このため 食 品 由 来 ブルセラ 症 は 滅 菌 ( 殺 菌 )が 不 完 全 な 汚 染 乳 の 飲 用 や 汚 染 乳 から 作 られたチーズの 摂 食 によって 感 染 する 我 が 国 ではブルセラ 症 は 摘 発 淘 汰 対 象 の 家 畜 伝 染 病 に 指 定 されており 摘 発 された 感 染 - 8 -
表 1-5 食 品 媒 介 の 主 な 人 獣 共 通 感 染 ウイルス A E 型 肝 炎 ウイルス 性 胃 腸 炎 ダニ 媒 介 性 脳 炎 病 名 病 原 体 媒 介 食 品 Hepatitis A E virus Noro virus Flavivirus 属 魚 介 類 肉 ( 豚, 猪 ) 魚 介 類 生 乳 ( 山 羊 乳 ) リケッチア Q 熱 Coxiella burnetii 生 乳 肉 細 菌 原 虫 寄 生 虫 炭 疽 カンピロバクター 症 ガス 壊 疽 病 原 性 大 腸 菌 症 ( 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 ) サルモネラ 症 エルシニア 症 ブルセラ 症 リステリア 症 結 核 ブドウ 球 菌 症 (ブドウ 球 菌 感 染 ) 類 丹 毒 ビブリオ 症 トキソプラズマ 症 トキソプラズマ 症 アメーパ 赤 痢 肉 胞 子 虫 症 ズビニ 鉤 虫 症 槍 型 吸 虫 症 肝 蛭 ウエステルマン 肺 吸 虫 旋 毛 虫 症 アニサキス 症 広 節 裂 頭 条 虫 棘 口 吸 虫 症 顎 口 虫 症 横 川 吸 虫 症 ニベリン 条 虫 症 旋 尾 線 虫 症 エキノコックス 症 Bacillus anthracis Canpylobacter 属 菌 Clostridium perfringens Escherichia coli Salmonella 属 菌 Yersinia enterocolitica Bullcella 属 菌 Lysteria monocytogenes Mycobacterium tuberculosis Staphylococcus 属 菌 Erysipelothrix rhusiopathiae Vibrio fluvialis Toxoplasma gondii Toxoplasma gondii Entamoeba histolytica Sarcocystis hominis Ancylostoma duodenale Dicrocoelium dendriticum Fasciola 属 吸 虫 Paragonimus westeruanii Trichinella spiralis Anisakis simplex Diphylobothrium latum Echinostoma 属 吸 虫 Gnathostoma 属 線 虫 Metagonimus yokogawai Nybelinia surmenicola Spirurin 線 虫 Echinococcus multilocularis 肉 肉 製 品 乳 乳 製 品 乳 乳 製 品 卵 魚 介 類 肉 肉 製 品 生 野 菜 肉 肉 製 品 魚 介 類 生 野 菜 プリオン 変 異 型 クロイツフェルトヤコブ 病 牛 異 常 プリオンタンパク 質 肉 肉 製 品 - 9 -
牛 は 全 て 殺 処 分 を 行 ってきたため 今 日 では 全 く 発 生 は 見 られない 3) 卵 及 びその 加 工 品 によるズーノーシス 鶏 卵 によるものとして 最 も 多 い 疾 病 としてはサルモネラ 症 であり その 主 な 原 因 菌 の 血 清 型 は Salmonella Enteritidis(SE)である 鶏 卵 への 本 菌 汚 染 として 二 つの 経 路 (in egg 汚 染 と on egg 汚 染 )が 知 られており in egg は 産 卵 鶏 がサルモネラ( 特 に SE)を 保 菌 してお り 産 卵 時 に 既 に 卵 内 ( 特 に 卵 黄 内 )に SE の 汚 染 がみられるものである 他 方 on egg は 卵 殻 表 面 を 汚 染 している SE が 卵 殻 を 通 過 して 卵 内 に 達 し 汚 染 するものである 4) 魚 介 類 及 びその 加 工 品 によるズーノーシス 食 品 媒 介 ズーノーシスのうち 感 染 源 動 物 として 家 畜 の 他 に 重 要 なものとして 魚 介 類 が ある 魚 介 類 は 生 ( 非 加 熱 )で 食 用 とすることが 多 く 感 染 の 機 会 も 多 い 近 年 釣 りな どによるレクリエーションで 得 た 珍 しい 淡 水 魚 などの 生 食 による 感 染 例 も 増 えている 魚 介 類 由 来 の 感 染 症 の 中 で 寄 生 虫 によるものも 多 く 知 られているが これらの 感 染 源 としては 海 水 魚 に 比 べ 淡 水 魚 ( 池 川 などの 生 棲 魚 )によるものが 多 いことも 認 められて いる 海 水 魚 によるものでは 腸 炎 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)による 食 中 毒 事 例 が 最 も 多 く このほかナグビブリオ(non-O1 vibrio) エロモナス(Aeromonas 属 )によるも のも 報 告 されている 2. 食 肉 及 び 食 肉 加 工 品 による 感 染 症 ( 食 中 毒 )の 予 防 我 が 国 では 家 畜 ( 牛 馬 豚 めん 羊 山 羊 )については と 畜 場 法 により 獣 医 師 であ ると 畜 検 査 員 による 一 頭 ずつの 厳 密 な 検 査 が 実 施 されており これに 合 格 したものだけが と 殺 解 体 され 更 にと 殺 後 の 検 査 を 経 て 食 肉 として 市 場 に 流 通 されている また 平 成 4 年 からは 食 鳥 ( 鶏 あひる 七 面 鳥 など)も 獣 医 師 の 指 導 の 下 での 検 査 義 務 が 課 されて いる これらの 家 畜 家 禽 以 外 の 動 物 ( 熊 や 鹿 等 の 野 生 動 物 )はと 畜 場 法 の 対 象 外 とされ ており このような 衛 生 検 査 を 受 けることなく 食 用 (ゲームミート)にされることがある 過 去 に 熊 肉 を 食 した 人 の 寄 生 虫 感 染 症 (トリヒナ) 鹿 肉 による 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 O157 感 染 症 なども 発 生 している 家 畜 の 生 産 農 場 では 臨 床 獣 医 師 や 家 畜 防 疫 員 ( 家 畜 保 健 衛 生 所 の 獣 医 師 )により 安 全 な 食 肉 の 生 産 のための 健 康 な 家 畜 の 生 産 指 導 が 行 なわれている 家 畜 伝 染 病 に 感 染 してい ると 診 断 された 家 畜 は 生 産 段 階 で 排 除 され 出 荷 禁 止 となっており 食 肉 にされることは ない 食 用 として 出 荷 された 家 畜 は 全 てと 畜 場 に 搬 入 され 獣 医 師 による 検 査 を 経 て と 殺 解 体 される 解 体 された 枝 肉 は 食 肉 処 理 場 で 部 分 肉 (ロース モモ 肉 など)に 分 割 細 切 され 販 売 店 (スーパーなど)に 搬 送 され そこで 更 に 細 切 (スライスなど)され 販 売 されている これらの 加 工 販 売 においても 食 肉 への 病 原 微 生 物 の 汚 染 防 止 について - 10 -
食 品 衛 生 監 視 員 による 監 視 指 導 が 行 なわれている( 図 1-2) 農 場 ( 生 産 ) 出 荷 検 査 指 導 臨 床 獣 医 師 家 畜 防 疫 員 : 獣 医 師 家 畜 の 健 康 管 理 ( 伝 染 病 の 予 防 ) と 畜 場 (と 殺 解 体 ) 食 肉 処 理 場 ( 分 割 細 切 ) 検 査 処 分 と 畜 検 査 員 : 獣 医 師 ( 疾 病 の 有 無 抗 生 抗 菌 剤 の 残 留 排 除 食 肉 の 衛 生 管 理 などを 行 う) 生 肉 加 工 場 ( 加 工 ) ハ ソ ー ム セ ー ジ 監 視 指 導 小 売 店 ( 販 売 ) 一 般 家 庭 ( 消 費 ) 図 1-2 食 肉 の 生 産 流 通 経 路 と 感 染 症 ( 食 中 毒 など)の 予 防 < 参 考 文 献 > - Zoonoses and communicable diseases common to man and animals 3 rd edition (ズーノシス 及 びと 動 物 の 共 通 感 染 病 - 第 3 版 ) - Pan American Health Organization (Pan American Sanitary Bureau, Regioanl Office of the WHO) 2003 年 発 行 - 内 容 : 細 菌 病 40 種 とカビ 病 13 種 ( 第 1 巻 ) リケッチア クラミジア 12 種 とプリオン 病 を 含 む ウイルス 病 57 種 ( 第 2 巻 ) 原 虫 病 15 種 と 他 の 寄 生 虫 病 12 種 ( 第 3 巻 ) について 詳 しい 解 説 が なされている 本 報 告 書 で 取 り 上 げた 疾 病 を 含 む - 11 -