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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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Transcription:

Title 刑 事 弁 護 人 の 役 割 と 倫 理 村 岡, 啓 一 ; 川 崎, 英 明 ; 指 宿, 信 ; 武 井, 康 年 ; 大 出, 良 知 ; 高 田, 昭 正 ; 上 田, 信 太 郎 ; 上 田, 國 廣 ; 白 取, Author(s) 祐 司 ; 森 下, 弘 ; 水 谷, 規 男 ; 加 藤, 克 佳 ; 田 淵, 浩 二 ; 四 宮, 啓 Citation Issue 2009-06 Date Type Research Paper Text Version URL http://hdl.handle.net/10086/18477 Right Hitotsubashi University Repository

ケーススタディ 3 死 刑 求 刑 事 件 の 上 告 審 弁 論 期 日 の 欠 席 問 題 村 岡 啓 一 はじめに 2006 年 6 月 20 日 最 高 裁 第 三 小 法 廷 は いわゆる 山 口 県 光 市 母 子 殺 害 事 件 につき 検 察 官 の 上 告 趣 意 ( 判 例 違 反 及 び 量 刑 不 当 )は 適 法 な 上 告 理 由 には 当 たらないとしたものの 職 権 調 査 により 本 件 は 特 に 酌 量 すべき 事 情 がない 限 り 死 刑 の 選 択 をするほかない 事 案 であるとの 判 断 の 下 第 一 審 の 無 期 懲 役 刑 を 維 持 した 原 判 決 を 破 棄 し 死 刑 の 選 択 を 回 避 するに 足 りる 特 に 酌 量 すべき 事 情 の 存 否 につき 更 に 審 理 を 尽 くさせるため 原 審 に 差 し 戻 した ( 判 例 時 報 1941 号 38 頁 )この 判 決 が 従 来 の 永 山 事 件 判 決 によって 示 された 死 刑 基 準 と 整 合 するのか 否 か 実 質 的 な 死 刑 基 準 の 変 更 ではないのかが 法 律 家 の 間 では 大 問 題 として 議 論 されている しかし この 事 件 は 別 の 観 点 からも 注 目 を 集 めた 上 告 審 の 途 中 から 弁 護 人 となった 弁 護 士 が 指 定 されていた 公 判 期 日 に 欠 席 したことが 被 害 者 遺 族 の 告 発 を 通 じてマスコミによって 大 きく 報 道 された 結 果 世 論 が 弁 護 人 の 行 動 を 非 難 し それを 更 にマスコミがバッシング 報 道 するという 経 過 をたどったからである 世 間 の 関 心 は 被 告 人 の 判 決 の 帰 趨 以 上 に 弁 護 人 の 姿 勢 を 非 難 することに 向 いてしまったのである その 後 遺 族 代 表 から 公 判 期 日 を 欠 席 した 弁 護 人 の 所 属 弁 護 士 会 に 対 し 故 意 の 裁 判 遅 延 行 為 を 理 由 とする 実 質 的 な 懲 戒 請 求 1がなされた 結 果 現 在 綱 紀 委 員 会 による 事 前 審 査 が 継 続 している 本 稿 では 専 ら この 弁 護 士 倫 理 に 関 する 問 題 に 焦 点 を 絞 って そこ から 抽 出 される 一 般 的 な 問 題 について 考 察 してみたい この 弁 護 士 倫 理 に 関 する 問 題 につ いては 前 記 判 例 時 報 の 判 例 特 報 解 説 記 事 が 第 三 参 考 ( 本 件 上 告 審 の 審 理 手 続 について) で 裁 判 所 の 見 解 とそれに 関 連 した 解 説 を 加 えているので 裁 判 所 の 考 え 方 がわかるうえ 各 種 雑 誌 等 の 公 刊 物 2において 当 該 弁 護 士 が 自 らの 考 え 方 を 明 らかにしているので それ らを 前 提 にして 本 件 の 問 題 点 に 対 する 私 なりの 回 答 を 示 してみよう 本 稿 の 目 的 は 弁 護 士 倫 理 に 関 心 を 持 ち 研 究 する 者 として あくまでも 本 件 が 投 げかけた 問 題 を 一 般 化 して 考 えることであり 具 体 的 な 本 件 の 事 実 経 過 と 当 事 者 の 事 実 認 識 を 素 材 とするが 現 在 進 行 中 の 懲 戒 請 求 手 続 の 帰 趨 と 無 関 係 であることは 言 うまでもない Ⅰ 事 実 経 過 外 形 的 な 事 実 経 過 は 次 のとおりである 1 2005 年 12 月 6 日 裁 判 長 は 当 初 の 上 告 審 弁 護 人 ( 以 下 旧 弁 護 人 という )に 対 し 本 件 につき 弁 論 を 開 くことを 告 げ 2006 年 3 月 14 日 午 後 1 時 30 分 に 公 判 期 日 を 指 定 した 2 2006 年 2 月 末 から 3 月 初 旬 にかけて 旧 弁 護 人 に 加 わる 形 で 新 たに 二 人 が 上 告 審 弁 護 人 ( 以 下 新 弁 護 人 という )に 選 任 され その 直 後 に 旧 弁 護 人 が 辞 任 した 128

3 2006 年 3 月 7 日 新 弁 護 人 は 以 下 の 二 つの 理 由 をあげて 公 判 期 日 の 変 更 申 請 をなした (ⅰ) 予 定 されている 3 月 14 日 の 公 判 期 日 は 弁 護 士 会 の 会 務 が 入 っている (ⅱ) 受 任 して 日 が 浅 く 被 告 人 の 主 張 内 容 も 変 わっており 弁 論 の 準 備 が 間 に 合 わない 4 2006 年 3 月 8 日 最 高 裁 第 三 小 法 廷 は 上 記 公 判 期 日 変 更 請 求 を 却 下 した 5 2006 年 3 月 13 日 新 弁 護 人 は 翌 日 の 公 判 期 日 に 欠 席 する 旨 の 欠 席 届 を 裁 判 所 に 提 出 した 6 2006 年 3 月 14 日 最 高 裁 第 三 小 法 廷 は 予 定 どおり 開 廷 したが 新 弁 護 人 は 欠 席 した 検 察 官 は 弁 護 人 不 在 のまま 弁 論 を 行 い 結 審 すべきことを 主 張 したが 裁 判 所 は 合 議 の 結 果 当 日 の 公 判 期 日 の 延 期 を 決 め 裁 判 所 の 見 解 を 表 明 したうえで 次 回 期 日 を 2006 年 4 月 18 日 と 指 定 した 7 2006 年 3 月 15 日 最 高 裁 第 三 小 法 廷 は 新 弁 護 人 に 対 し 次 回 期 日 の 出 頭 在 廷 命 令 ( 刑 訴 法 278 条 の2)を 発 した 8 2006 年 4 月 18 日 新 弁 護 人 は 公 判 期 日 に 出 廷 して 弁 論 を 行 った 新 弁 護 人 は 被 告 人 の 殺 意 を 否 定 し 本 件 行 為 は 傷 害 致 死 死 体 損 壊 にとどまる 旨 を 主 張 し 最 高 裁 第 三 小 法 廷 において 検 察 官 の 上 告 を 棄 却 したうえで 事 実 誤 認 を 理 由 として 原 判 決 を 破 棄 し 原 審 裁 判 所 に 本 件 を 差 し 戻 しよう 求 めた あわせて その 主 張 を 補 充 するため 上 告 審 における 弁 論 の 続 行 を 求 めたが 裁 判 長 は 弁 論 の 続 行 を 認 めず 結 審 し 判 決 期 日 を 6 月 20 日 と 指 定 した Ⅱ 公 判 期 日 変 更 申 請 の 評 価 1 期 日 指 定 の 法 的 意 義 公 判 期 日 の 指 定 ( 刑 訴 法 273 条 1 項 ) 裁 判 長 の 権 限 でなされる 命 令 である 法 文 上 は 訴 訟 関 係 人 の 意 見 を 聴 く 必 要 はないが 実 務 上 は 期 日 の 空 転 を 避 け 充 実 した 審 理 を 行 うため 訴 訟 関 係 人 と 協 議 のうえ 指 定 されることが 多 い 当 事 者 に 対 する 法 的 拘 束 力 を 有 す る 命 令 であるから 弁 護 人 たる 弁 護 士 は 公 判 期 日 に 出 廷 する 義 務 を 負 う ( 但 し 不 出 頭 に 対 する 直 接 の 制 裁 は 規 定 されていない )しかし 公 判 期 日 の 指 定 は 将 来 の 出 頭 可 能 予 測 に 基 づくものであるから 実 際 には 様 々な 事 情 の 変 更 がありうる そこで 法 も 当 事 者 からの 請 求 を 受 けて 裁 判 所 の 判 断 で 公 判 期 日 を 変 更 することを 認 めている( 刑 訴 法 276 条 1 項 ) 法 の 建 前 は やむをえない 事 由 以 外 の 変 更 を 認 めない 公 判 期 日 不 変 更 の 原 則 ( 刑 訴 規 則 179 条 の 4)であるが 実 際 には 正 当 な 理 由 がある 場 合 には 一 旦 指 定 した 期 日 を 取 り 消 して 新 たな 期 日 を 指 定 し 直 す 公 判 期 日 の 延 期 がかなり 広 範 に 認 め られている 公 判 期 日 に 充 実 した 審 理 を 行 うことが 最 終 の 目 的 である 以 上 形 式 的 な 期 日 に 拘 泥 して 空 転 するよりは 期 日 を 延 期 して 実 質 的 な 審 理 を 実 現 することの 方 がはるかに 望 ましいからである その 結 果 実 務 の 感 覚 では 当 事 者 の 期 日 変 更 の 申 請 があった 場 合 正 当 な 理 由 が 一 応 推 定 され それが 明 白 な 訴 訟 遅 延 目 的 に 出 たものでない 限 り 期 日 の 延 期 申 請 は 認 められるという 逆 の 運 用 があるように 思 われる 特 に 刑 事 事 件 で 弁 護 人 129

が 交 代 した 場 合 には 特 別 の 事 情 がない 限 り 新 しく 弁 護 人 に 選 任 された 弁 護 士 にとって 準 備 が 必 要 なことは 自 明 であるから 公 判 期 日 の 延 期 申 請 は 認 められるのが 通 例 といって よい したがって 本 件 のように 裁 判 所 が 弁 護 人 からの 期 日 変 更 申 請 を 却 下 した 結 果 弁 護 人 が 不 都 合 な 期 日 に 出 廷 すべきか 否 かで 悩 むという 場 面 はまずない では 本 件 の 場 合 なぜ 裁 判 所 は 弁 護 人 からの 期 日 変 更 申 請 を 却 下 したのだろうか? 2 裁 判 所 の 論 理 本 件 で 裁 判 所 が 却 下 した 理 由 は 弁 護 人 不 出 頭 に 関 する 第 三 小 法 廷 の 見 解 ( 判 時 1941 号 42 頁 )に 示 されている すなわち 1 新 弁 護 人 は 予 め 指 定 されていた 公 判 期 日 を 前 提 にして 弁 護 人 となったこと 2 本 件 は 検 察 官 上 告 事 件 であり 既 に 旧 弁 護 人 から 上 告 趣 意 書 に 対 する 答 弁 書 も 出 ていることから 指 定 済 みの 公 判 期 日 に 出 席 できない 理 由 にはな らないというのである 判 例 時 報 の 解 説 記 事 は 却 下 決 定 は 審 理 を 不 当 に 遷 延 させる 行 為 と 認 めたもの との 理 解 を 示 し 弁 護 人 の 延 期 申 請 の 理 由 とされた 二 点 ( 事 実 経 過 3の ⅰ 及 びⅱ)につき 次 のように 補 足 している かなり 以 前 に 指 定 された 期 日 を 前 提 に 弁 護 を 受 任 した 以 上 当 該 期 日 に 他 の 用 件 が 入 っていることは 特 段 の 事 情 がない 限 り 裁 判 所 に 期 日 の 変 更 を 求 め あるいは 期 日 に 欠 席 する 正 当 な 理 由 にはならない 準 備 不 足 をい う 点 についても 本 件 では 上 告 申 立 てをした 側 の 当 事 者 ではなく かつ 答 弁 書 は 前 弁 護 人 により 既 に 提 出 されていたのであり 弁 論 を 補 充 すべく 審 理 の 続 行 を 求 める 理 由 とは なっても 期 日 変 更 ましてや 期 日 欠 席 を 正 当 化 するような 理 由 とはならない 裁 判 所 の 見 解 と 解 説 記 事 は 新 旧 の 弁 護 人 に 連 続 性 があること したがって 旧 弁 護 人 の 答 弁 書 提 出 という 先 行 する 訴 訟 行 為 に 基 づいて 新 弁 護 人 が 補 充 的 な 弁 論 をすれば 足 りるという 理 解 が 前 提 になっている それゆえに 弁 護 人 の 交 代 があえて 公 判 期 日 直 前 に されたこと を 重 視 し 訴 訟 遅 延 目 的 を 認 定 しているのである つまり 裁 判 所 の 事 実 認 識 は 新 旧 弁 護 人 の 交 代 を 訴 訟 遅 延 目 的 に 出 た 意 図 的 な 遷 延 行 為 とみており 期 日 変 更 申 請 却 下 の 論 理 も やむを 得 ない 事 由 がないこと( 実 務 の 実 際 に 即 していえば 訴 訟 遅 延 目 的 が 積 極 的 に 認 められるので 正 当 な 理 由 を 認 めないという 論 理 )に 求 めて いるのである 果 たしてそうなのか? 次 に 弁 護 人 の 側 から 新 旧 弁 護 人 の 交 代 の 真 意 を 見 てみよう 3 弁 護 人 の 論 理 新 弁 護 人 が 旧 弁 護 人 の 依 頼 を 受 けたのは 裁 判 所 が 旧 弁 護 人 に 対 し 本 件 につき 弁 論 を 開 くので 公 判 期 日 を 入 れたいという 申 し 入 れを 行 った 後 である この 裁 判 所 の 申 し 入 れの 意 味 は 第 一 審 の 無 期 懲 役 刑 を 維 持 した 原 判 決 が 破 棄 される 見 通 しであること 換 言 すれ ば 被 告 人 に 死 刑 が 科 される 可 能 性 が 開 かれることを 意 味 する それゆえに 旧 弁 護 人 は 死 刑 求 刑 事 件 の 刑 事 弁 護 の 第 一 人 者 である 新 弁 護 人 に 上 告 審 弁 護 を 依 頼 しようとしたので ある 実 際 に 新 弁 護 人 が 上 告 審 弁 護 人 になることを 決 意 したのは 被 告 人 に 面 会 して 事 実 関 係 を 把 握 した 2006 年 2 月 27 日 であり 指 定 公 判 期 日 のわずか 2 週 間 前 の 時 点 である しかも 新 弁 護 人 が 上 告 審 弁 護 人 を 引 き 受 けた 理 由 は 面 接 の 結 果 第 一 審 及 び 控 訴 審 を 130

通 じて 被 告 人 が 殺 意 の 有 無 及 び 犯 行 態 様 など 罪 体 の 重 要 な 部 分 について 実 質 的 な 審 理 を 受 けていなかったことがわかったからである 死 刑 が 法 定 刑 となっている 事 件 では 殺 意 及 び 犯 行 態 様 等 の 事 実 が 罪 体 に 関 する 事 実 認 定 の 場 面 で 重 要 であるのみならず 量 刑 因 子 とし ても 重 要 な 意 義 を 有 することから 通 常 弁 護 人 は 事 実 認 定 と 量 刑 双 方 の 手 続 を 連 動 させ る 形 で 殺 意 の 有 無 及 び 犯 行 態 様 等 を 明 らかにしようと 努 める しかし 本 件 の 場 合 旧 弁 護 人 は 被 告 人 が 犯 行 時 18 歳 1 ヶ 月 であったことから 18 歳 未 満 の 少 年 の 行 為 に 死 刑 科 刑 を 許 さない 少 年 法 51 条 の 趣 旨 に 照 らして 死 刑 は 回 避 できるとの 見 通 しの 下 事 実 審 理 において 殺 意 及 び 犯 行 態 様 等 の 事 実 関 係 を 争 ってはいなかったのである そして 検 察 官 も 事 実 審 の 裁 判 官 も 同 様 に 少 年 法 51 条 の 少 年 の 地 位 に 極 めて 近 接 した 地 位 にある 被 告 人 の 量 刑 判 断 にのみ 関 心 が 向 かい 実 質 的 な 事 実 認 定 が 行 われないままに 検 察 官 の 主 張 する 殺 意 と 犯 行 態 様 がそのまま 量 刑 因 子 として 考 慮 されるに 至 ったのである 4 私 見 新 弁 護 人 の 言 葉 を 借 りれば 深 刻 な 手 抜 き 裁 判 が 判 明 したのであり 鑑 定 書 の 分 析 の 結 果 殺 意 はなく 傷 害 致 死 及 び 死 体 損 壊 にとどまる ことの 心 証 を 抱 くに 至 ったとい うのである そうすると 新 弁 護 人 は 旧 弁 護 人 の 弁 護 方 針 が 誤 りであったことを 告 発 して いるのであり 旧 弁 護 人 の 弁 護 戦 略 の 延 長 線 上 にいるのではないことが 分 かる むしろ 逆 に 新 弁 護 人 は 旧 弁 護 人 らが 見 落 とした 重 大 な 事 実 認 定 の 誤 りを 最 終 審 である 最 高 裁 の 職 権 判 断 の 場 で 明 らかにし 検 察 官 の 主 張 する 量 刑 不 当 の 脈 絡 (これは 死 刑 相 当 を 意 味 す る)ではなく 事 実 誤 認 の 脈 絡 で 更 に 事 実 審 理 を 尽 くさせるために 原 審 裁 判 所 に 事 件 を 差 し 戻 すことを 求 めたのである したがって 新 旧 弁 護 人 の 交 代 は 訴 訟 遅 延 目 的 の 戦 略 的 なものではなく 被 告 人 の 裁 判 を 受 ける 権 利 をギリギリの 最 終 段 階 で 保 障 するための 必 然 であったのである これは 延 期 後 の 公 判 期 日 において 行 われた 新 弁 護 人 による 弁 論 の 内 容 が 証 明 していることである 死 刑 と 無 期 懲 役 の 限 界 事 例 において 被 告 人 の 殺 意 の 有 無 や 行 為 態 様 につき 理 由 のある 疑 念 が 示 された 場 合 事 案 の 真 相 を 究 明 する 職 責 を 負 った 裁 判 所 としても その 疑 念 を 晴 らすために 事 実 審 理 を 尽 くすべきは 当 然 の 義 務 である 被 告 人 の 視 点 に 立 つ 限 り 事 実 審 理 を 尽 くさなければならない 点 では 裁 判 所 も 新 弁 護 人 も 同 じ 地 平 に 立 ったのである し たがって 裁 判 所 としては 3 月 8 日 の 時 点 で 延 期 申 請 のⅱの 理 由 につき 正 当 な 理 由 があるとして 公 判 期 日 の 延 期 を 認 めるべきであったのである 3 Ⅲ 公 判 期 日 欠 席 の 評 価 1 公 判 期 日 欠 席 を 選 択 したことの 評 価 問 題 は 裁 判 所 の 期 日 変 更 申 請 に 対 する 却 下 決 定 が 上 記 のとおり 誤 った 事 実 認 識 に 基 づ く 誤 った 裁 判 であったとしても 一 旦 裁 判 がなされてしまった 以 上 弁 護 人 としてはそ の 決 定 に 従 わなければならなかったのではないか という 点 である 新 弁 護 人 が 予 想 外 の 却 下 決 定 に 対 して 驚 くとともに 困 惑 したことは 想 像 に 難 くない 弁 護 人 の 行 為 が 倫 理 上 問 131

題 とされるパターンには 適 法 な 行 為 に 基 づいて 倫 理 的 に 許 されない 目 的 を 達 成 する 場 合 4と 倫 理 的 に 許 されない 行 為 に 基 づいて 適 法 な 目 的 を 達 成 する 場 合 とがあるが 指 定 期 日 に 欠 席 するか 否 かの 選 択 の 問 題 は 後 者 の 範 疇 に 属 する その 状 況 下 の 選 択 肢 としては 大 別 して 1 当 初 の 期 日 指 定 に 従 う 2 欠 席 する 3 再 度 変 更 申 請 をして 裁 判 所 と 協 議 を する がありえた 3の 選 択 肢 は 当 時 の 裁 判 所 の 事 実 認 識 が 訴 訟 遅 延 目 的 であった 以 上 再 申 請 をしても 却 下 されることはほぼ 確 実 であり 裁 判 所 が 協 議 に 応 ずる 状 況 には なかったから 現 実 的 な 選 択 肢 ではなかった したがって 弁 護 人 の 判 断 としては 出 席 か 欠 席 かいずれかの 選 択 しかなかったと 考 えられる 1の 選 択 は 弁 護 人 が 抱 いた 誤 判 の 確 信 に 基 づく 充 実 した 事 実 審 理 の 実 現 よりも 形 式 的 な 期 日 指 定 に 従 う 義 務 の 方 を 優 先 させるものであるのに 対 し 2の 選 択 は 逆 に 後 者 よりも 前 者 の 被 告 人 の 利 益 を 優 先 さ せるものである 本 件 が 死 刑 か 無 期 懲 役 かの 限 界 に 位 置 するものであり 被 告 人 が 第 一 審 及 び 控 訴 審 を 通 じて 実 質 的 な 事 実 審 理 を 受 けていなかったという 本 件 の 特 殊 性 を 考 えれば 最 も 重 視 すべきは 依 頼 者 である 被 告 人 の 利 益 であるから 弁 護 人 が2の 方 針 を 選 択 したこ とには 十 分 な 合 理 性 がある つまり 倫 理 的 観 点 から 欠 席 を 選 択 すべきではなかったとは いえないということである そして 弁 護 人 の 立 場 として 最 終 の 最 高 裁 での 最 後 の 機 会 ともいうべき 弁 論 期 日 において 裁 判 官 に 重 大 な 事 実 誤 認 の 存 在 を 納 得 させるためには 一 定 の 時 間 が 必 要 であったのであり どのくらいの 準 備 期 間 が 必 要 であるかについては そ の 弁 護 人 の 時 間 的 猶 予 に 関 する 判 断 を 尊 重 するほかはないのである 前 記 最 高 裁 の 見 解 及 び 解 説 記 事 は 本 件 が 検 察 官 上 告 事 件 であり 弁 護 側 の 対 応 はあくまでも 防 御 的 であった ことを 強 調 する しかし もともと 検 察 官 の 量 刑 不 当 を 理 由 とする 上 告 理 由 は 不 適 法 であ り 実 質 は 最 高 裁 の 職 権 判 断 を 求 めるところにあったのであり 一 旦 最 高 裁 が 本 件 に つき 弁 論 期 日 を 入 れることにした 時 点 で 最 高 裁 は 職 権 判 断 に 踏 み 込 むこと( 原 判 決 の 無 期 懲 役 刑 の 見 直 し)を 明 らかにしたわけであるから 実 質 的 には 攻 守 ところを 変 えて 弁 護 側 は 受 身 で 防 御 をするのではなく むしろ 死 刑 判 決 を 回 避 するためには 積 極 的 に 防 御 側 の 論 拠 を 示 す 必 要 があることになったのである そして 新 弁 護 人 の 論 拠 は 殺 意 と 犯 行 態 様 についての 事 実 誤 認 であり 一 般 的 量 刑 因 子 の 評 価 ではなかったのであるから 最 高 裁 弁 論 での 獲 得 目 標 は 旧 弁 護 人 の 弁 論 を 補 充 すべく 審 理 の 続 行 を 求 める ( 解 説 記 事 ) ことではなく 端 的 に 全 く 新 たな 視 点 から 本 件 を 見 直 すために 事 実 誤 認 を 理 由 に 原 判 決 を 破 棄 し 原 審 裁 判 所 に 本 件 を 差 し 戻 すことであったのである したがって 前 記 最 高 裁 の 見 解 と 解 説 記 事 の 示 す 論 拠 は 本 件 に 適 切 ではない 2 欠 席 の 通 知 を 期 日 前 日 までしなかったことの 評 価 マスコミ 報 道 では 新 弁 護 人 は 当 初 予 定 の 弁 論 期 日 に 無 断 欠 席 したかのように 報 道 され ているが 実 際 には 新 弁 護 人 は 前 日 に 欠 席 届 を 最 高 裁 に 提 出 している 最 高 裁 の 却 下 決 定 後 公 判 期 日 の 前 日 まで 当 日 欠 席 するという 弁 護 人 の 態 度 を 明 確 にしなかったことは 弁 護 人 の 戦 略 的 判 断 であったことが 明 らかになっている 5 すなわち 弁 護 人 は 早 期 に 欠 席 の 方 針 を 明 らかにすれば 裁 判 所 から 出 頭 在 廷 命 令 を 受 けかねず 欠 席 の 方 針 を 採 用 し 132

た 究 極 の 目 的 である 充 実 した 事 実 審 理 のための 準 備 期 間 が 確 保 できないために 公 判 期 日 の 前 日 に 欠 席 届 を 提 出 し 初 めて 裁 判 所 に 公 判 期 日 に 出 頭 しない 意 思 を 表 示 したわ けである 裁 判 所 がこの 欠 席 届 を 正 当 な 理 由 ありと 認 めて 公 判 期 日 を 取 り 消 せば 公 判 期 日 の 弁 護 人 欠 席 が 問 題 になることはなかったのであるが 前 同 様 の 理 由 で 裁 判 所 は 欠 席 の 正 当 理 由 を 認 めなかったため 当 日 の 弁 護 人 欠 席 の 効 果 として 刑 訴 法 289 条 1 項 に 基 づき 当 日 の 弁 論 期 日 は 進 行 することができず 事 実 経 過 8の 経 緯 を 経 て 結 果 的 に 弁 論 期 日 は 延 期 された この 新 弁 護 人 の 戦 術 は 裁 判 所 が 欠 席 届 を 認 めないことを 見 越 して 刑 訴 法 289 条 1 項 の 効 果 により 期 日 が 空 転 することを 意 図 したものといえる そこで この ような 戦 術 の 選 択 が 弁 護 士 倫 理 として 許 されるか 否 かが 問 題 となる 裁 判 所 の 見 解 は 必 要 的 弁 護 事 件 を 人 質 に 取 るような 遷 延 的 活 動 は 審 理 の 充 実 促 進 の 観 点 から 許 されないものというものである( 解 説 記 事 43 頁 ) この 一 般 論 には 異 論 がないが 本 件 のように 審 理 の 充 実 が 全 く 実 現 されてこなかったような 例 外 的 な 場 合 に 審 理 の 促 進 よりも 審 理 の 充 実 を 優 先 させるという 価 値 判 断 は 十 分 にありうると ころである そして 私 は このような 価 値 判 断 に 立 った 弁 護 人 が 欠 席 届 を 公 判 期 日 の 直 前 に 出 すという 戦 術 も なお 弁 護 人 の 行 為 として 許 されると 考 える わが 国 では 刑 訴 法 上 の 権 利 や 手 続 には 特 定 の 立 法 目 的 があり 刑 事 訴 訟 に 携 わる 法 律 家 は 刑 事 訴 訟 制 度 の 不 可 欠 の 構 成 員 として その 所 期 する 目 的 の 範 囲 内 で 権 利 ないし 手 続 を 行 使 しなければな らず それらの 権 利 等 を 別 の 目 的 のために 利 用 することは 権 利 濫 用 として 許 されないとい う 考 え 方 が 一 般 的 である しかし 当 該 権 利 ないし 手 続 が 刑 事 訴 訟 の 中 で 一 方 当 事 者 の 権 利 ないし 手 続 として 制 度 的 に 保 障 されているということは その 権 利 行 使 の 枠 の 中 にある 限 り 当 事 者 がその 権 利 をいかなる 目 的 に 使 うかには 関 知 しない 換 言 すれば 当 該 権 利 行 使 の 結 果 が 本 来 想 定 している 目 的 以 外 の 目 的 を 実 現 することになっても それは 許 容 の 範 囲 内 であるということを 意 味 する 6 私 は 基 本 的 な 立 場 として 法 律 家 の 二 つの 性 格 すなわち 依 頼 者 の 代 理 人 性 と 独 立 の 司 法 機 関 性 のうち 前 者 の 優 位 を 説 く 立 場 を 採 ってい るので 依 頼 者 の 利 益 の 実 現 のために 必 要 であれば 権 利 行 使 の 枠 内 である 限 り その 戦 術 的 利 用 も 許 されると 考 えるからである したがって 本 件 の 新 弁 護 人 の 採 った 弁 論 期 日 欠 席 の 方 針 と 欠 席 届 を 前 日 になってから 提 出 したという 戦 術 も なお 弁 護 人 の 採 りうる 訴 訟 活 動 の 範 囲 内 にあると 考 える Ⅳ 被 害 者 の 利 益 の 考 慮 本 件 の 欠 席 問 題 については 被 害 者 の 遺 族 から 当 該 弁 護 士 に 対 して 懲 戒 請 求 がなされて いる 懲 戒 請 求 の 申 立 人 には 限 定 がないので そのこと 自 体 には 問 題 がないが マスコミ に 対 する 会 見 の 際 被 害 者 は これほどの 侮 辱 を 受 けたことはない と 述 べ 裁 判 を 傍 聴 する 被 害 者 の 権 利 が 弁 護 人 の 欠 席 によって 侵 害 されたことを 弁 護 人 に 対 し 懲 戒 請 求 を 求 め る 理 由 に 掲 げている 事 実 上 被 害 者 遺 族 が 公 判 期 日 に 傍 聴 人 として 出 席 し その 弁 論 の 行 方 に 重 大 な 関 心 を 示 すのは 当 然 のことであるから 予 定 していた 公 判 期 日 の 空 転 及 び 133

延 期 といった 事 態 に 単 なる 落 胆 以 上 の 怒 りを 覚 えたことは 十 分 に 理 解 できる しかし 現 行 法 の 下 では 被 害 者 は 訴 訟 当 事 者 ではなくあくまでも 傍 聴 人 の 一 員 であるから 期 日 指 定 及 び 期 日 進 行 につき 自 らの 利 益 を 反 映 できる 立 場 にはない 被 害 者 が 公 判 期 日 の 開 廷 に 期 待 を 寄 せる 利 益 は あくまでも 事 実 上 の 期 待 権 でしかないのである したがって 本 件 の 懲 戒 請 求 において 重 要 な 問 題 点 は 弁 護 人 の 公 判 期 日 の 欠 席 が 正 当 な 理 由 に 基 づ くものか 否 かであって 被 害 者 の 傍 聴 する 権 利 が 侵 害 されたか 否 かではない もっとも 傍 聴 が 予 想 される 被 害 者 にも 予 め 欠 席 の 通 知 をするなどの 配 慮 をすべきではなかったかと いう 問 題 はあるが これは 弁 護 人 の 倫 理 規 範 違 反 の 問 題 とは 別 次 元 のものである Ⅴ 公 判 期 日 延 期 が 実 現 したことの 評 価 本 件 につき 弁 護 人 の 公 判 期 日 欠 席 により 結 果 的 に 期 日 がほぼ 1 ヶ 月 間 延 期 されたこと をとらえて 新 弁 護 人 の 戦 略 は 成 功 したとみる 見 解 がある しかし 新 弁 護 人 が 本 件 の 事 実 誤 認 を 最 高 裁 裁 判 官 に 説 得 するために 必 要 と 考 えた 準 備 期 間 は 最 低 限 3 ヶ 月 で あったのであり 1 ヶ 月 間 の 時 間 的 猶 予 でなしえたことはいわば 問 題 点 の 指 摘 にすぎず 必 ずしも 意 を 尽 くしたものにはなっていない それゆえに 弁 護 人 は 弁 論 期 日 の 続 行 を 最 高 裁 に 求 めたが この 要 求 は 拒 否 された その 結 果 2006 年 6 月 20 日 に 最 高 裁 第 三 小 法 廷 は 職 権 判 断 により 実 質 的 に 検 察 官 の 量 刑 不 当 の 上 告 趣 意 を 受 け 入 れて 死 刑 を 回 避 するに 足 る 量 刑 因 子 の 有 無 を 検 討 させるために 原 判 決 を 破 棄 し 本 件 を 原 審 裁 判 所 に 差 し 戻 した したがって 破 棄 差 し 戻 しという 点 では 新 弁 護 人 の 求 めた 結 論 と 一 致 す るが 破 棄 理 由 が 弁 護 人 の 求 めた 事 実 誤 認 ではないので この 点 でも 新 弁 護 人 の 戦 略 が 成 功 したとはいえない 本 件 最 高 裁 判 決 は 新 弁 護 人 の 提 起 した 事 実 誤 認 の 新 たな 主 張 に 対 し 異 例 の な お 書 きを 付 して 上 記 各 犯 罪 事 実 は 各 犯 行 の 動 機 犯 意 の 生 じた 時 期 態 様 等 も 含 め 第 一 二 審 判 決 の 認 定 説 示 するとおり 揺 るぎなくみとめることができるのであり 指 摘 のような 事 実 誤 認 等 の 違 法 は 認 められない と 判 示 した この 判 示 自 体 が 新 弁 護 人 の 準 備 期 間 獲 得 のための 戦 術 が 訴 訟 遅 延 目 的 に 出 たものではなく 正 当 な 理 由 に 基 づくも のであったことを 証 明 しているが 反 面 において あたかも 新 弁 護 人 が 提 起 した 事 実 認 定 上 の 問 題 は 解 決 済 みであり 差 し 戻 し 審 において 審 理 対 象 にはならないかのような 口 吻 を 示 している 解 説 記 事 は 当 事 者 の 職 権 判 断 の 求 めに 対 する 明 示 的 な 判 断 であるから 差 戻 審 を 拘 束 すると 解 する 余 地 もあるとするが 事 実 誤 認 の 有 無 に 関 する 判 断 は 傍 論 にすぎないうえ 差 し 戻 し 審 の 審 理 対 象 が 死 刑 の 選 択 を 回 避 するに 足 りる 特 に 酌 量 すべ き 事 情 であるから その 考 慮 対 象 には 永 山 判 決 以 来 の 死 刑 の 量 刑 因 子 すべて( 動 機 態 様 ことに 殺 害 の 手 段 方 法 の 執 拗 性 残 虐 性 )が 含 まれることは 明 らかである 事 実 審 では ない 最 高 裁 が 新 弁 護 人 の 提 起 した 事 実 誤 認 の 主 張 に 的 確 に 判 断 できたとは 到 底 思 えな いから 上 記 判 示 部 分 は 職 権 判 断 で 事 実 誤 認 を 理 由 に 破 棄 することはしないという 理 由 付 けとしてなされているにとどまり 差 し 戻 し 後 の 事 実 審 理 において 罪 体 に 関 する 134

量 刑 因 子 である 殺 意 及 び 犯 行 態 様 等 の 事 実 認 定 を 拘 束 する 趣 旨 は 含 まないものと 考 えるべ きであろう 最 後 に 本 件 の 公 判 期 日 欠 席 問 題 につき 弁 護 人 の 倫 理 を 問 題 にする 場 合 忘 れてならないのは 本 件 が 裁 判 所 と 弁 護 人 間 の 期 日 指 定 の 形 式 的 遵 守 の 問 題 ではなく 根 底 に 依 頼 者 である 被 告 人 の 利 益 があるという 点 である 弁 護 人 が 最 高 裁 という 最 終 段 階 で 被 告 人 において 実 質 審 理 を 受 けてこなかったという 致 命 的 な 欠 陥 を 知 った 場 合 その 問 題 を 提 起 するための 必 要 な 時 間 を 確 保 するために 形 式 的 な 指 定 期 日 の 遵 守 よりも 実 質 的 な 弁 護 の 方 を 優 先 させ たというのが 本 件 の 実 相 である しかも その 事 件 は 少 年 法 51 条 の 死 刑 科 刑 の 禁 止 がど こまで 及 ぶかの 判 断 如 何 で 死 刑 と 無 期 懲 役 刑 を 分 かつ 限 界 事 例 なのである 私 は 同 じ 場 面 に 遭 遇 したすべての 刑 事 弁 護 人 が 本 件 の 新 弁 護 人 と 同 じ 行 動 を 採 るだろうとは 思 わない し また 当 然 にそうすべきだとも 主 張 しないが 少 なくとも 新 弁 護 人 の 選 択 がなお 正 当 な 理 由 によって 正 当 化 される 弁 護 活 動 であったことは 疑 わないのである 1 平 成 18 年 3 月 15 日 付 処 分 請 求 書 は 所 属 弁 護 士 会 に 弁 護 人 の 欠 席 行 為 が 故 意 の 裁 判 遅 延 行 為 か 正 当 な 弁 護 かの 見 解 を 求 めており 前 者 であれば 懲 戒 を 求 めるという 内 容 である 2 現 代 2006 年 7 月 号 41 頁 以 下 フライデイ 2006 年 5 月 5 日 号 86 頁 以 下 人 権 と 報 道 連 絡 会 ニュース 2006 年 6 月 30 日 号 3 残 念 なことに この 点 の 相 互 理 解 につき 裁 判 所 と 新 弁 護 人 との 間 で 協 議 が 行 われた 形 跡 が 認 められない 弁 護 人 の 方 は 従 前 の 例 に 照 らして 本 件 の 延 期 申 請 も 当 然 に 認 められるもの と 考 えて 裁 判 所 との 間 で 特 段 の 折 衝 をしなかったようであり 裁 判 所 の 方 も 専 ら 旧 弁 護 人 との 折 衝 過 程 などの 状 況 証 拠 のみから 新 旧 弁 護 人 の 一 体 性 連 続 性 を 推 認 してしまい 新 弁 護 人 の 真 意 が 事 実 審 理 のやり 直 しにあることを 見 誤 ったと 思 われる 安 田 好 弘 生 きる という 権 利 ( 講 談 社 2005 年 )に 登 場 する 本 件 に 類 似 する 実 例 は 全 く 相 反 する 双 方 の 根 拠 を 裏 付 け る 状 況 証 拠 を 提 示 する なお ⅰの 変 更 理 由 については 当 事 者 の 代 替 性 などの 事 情 が 考 慮 さ れるべきで 変 更 を 認 めるべき 特 段 の 事 情 があったのか 否 かは 外 部 からはわからない 4 最 高 裁 は 本 件 の 期 日 変 更 申 請 欠 席 を 訴 訟 遅 延 目 的 とみたのは 前 者 のパターンと 捉 え たことを 意 味 する しかし 訴 訟 遅 延 目 的 が 誤 りであったのは 既 述 のとおりである 5 現 代 2006 年 7 月 号 43 頁 6 2004 年 9 月 に 実 施 した 刑 事 弁 護 倫 理 研 究 会 のドイツ 調 査 では ドイツの 実 務 家 の 一 般 的 認 識 は 権 利 行 使 の 枠 内 である 限 り 倫 理 的 な 問 題 を 惹 起 しないというものであった 編 者 註 :2007 年 12 月 20 日 第 二 東 京 弁 護 士 会 綱 紀 委 員 会 は 光 市 母 子 殺 害 事 件 の 被 告 人 の 上 告 審 主 任 弁 護 人 である 安 田 好 弘 弁 護 士 に 対 し 懲 戒 しない 旨 の 議 決 をした 135