土木学会論文集 E Vol.66 No.3, , 最大粒径 2.5mm の細骨材を用いたノンプレミックス型超高強度繊維補強コンクリートに関する研究 坂本淳 1 田中良弘 2 新藤竹文 3 宇治公隆 4 1 正会員大成建設株式会社技術センター ( 横浜市戸塚区

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最大粒径 2.5mm の細骨材を用いたノンプレミックス型超高強度繊維補強コンクリートに関する研究 坂本淳 1 田中良弘 2 新藤竹文 3 宇治公隆 4 1 正会員大成建設株式会社技術センター ( 245-51 横浜市戸塚区名瀬町 344-1) E-mail: jun.sakamoto@sakura.taisei.co.jp 2 フェロー会員大成建設株式会社技術センター ( 245-51 横浜市戸塚区名瀬町 344-1) E-mail: ytanaka@ce.taisei.co.jp 3 フェロー会員大成建設株式会社技術センター ( 245-51 横浜市戸塚区名瀬町 344-1) E-mail: takefumi.shindoh@ sakura.taisei.co.jp 4 正会員首都大学東京都市環境科学研究科 ( 192-397 八王子市南大沢 1-1) E-mail: k.uji@ecomp.metro-u.ac.jp 最大粒径 2.5mm に調整した一般のコンクリートに使用される細骨材を用いて, ノンプレミックス型超高強度繊維補強コンクリートの配合を実験により検討した. その結果, 絶乾状態の細骨材を骨材混合比 5~ % 程度の範囲で 7 号珪砂と併用することにより, 所要の強度特性を満足する配合が得られることを確認した. また, 細骨材の粗粒率が 2.~2.5 程度の範囲であれば, 骨材粒度の変動がコンクリートの品質に及ぼす影響は無いこと, 本研究で提案した標準配合は, プレミックス型標準配合粉体を用いた配合と同等の凍結融解抵抗性, 中性化抵抗性, および塩化物イオン侵入抵抗性を有していること等を確認した. Key Words : ultra high strength fiber reinforced concrete, fine aggregate, non-premixed type 1. はじめに超高強度繊維補強コンクリート ( 以下,UFCと記す) は, 高強度, 高じん性, 高耐久性などの優れた特徴を活かし, 近年では海洋環境下における床版部材 1) や, 道路橋 2) など大型の実構造物へ盛んに適用されている. 使用されているUFCのマトリックスとしては, 土木学会 超高強度繊維補強コンクリートの設計 施工指針 ( 案 ) 3) ( 以下,UFC 指針 ( 案 ) と記す ) に示されている標準配合粉体のように粉体材料と骨材をプレミックスしたもの, あるいはエトリンガイト系混和材を添加したプレミックスセメントと砕砂を混合したもの 4) が多く適用されており, これらプレミックス方式が主流となっている. プレミックス方式によるUFCの製造は, セメント, シリカフューム, 珪砂など厳選された個々の材料をメーカの工場で予め混合して製造されたマトリックス材料を, メーカにより定められた配合に準じて, 水, 混和剤, 補強用繊維などと練り混ぜることで行われることから, 配合設計の作業が省略でき, 品質の安定化にも有効である. その反面, プレミックス品製造に要するコストも生じることから,UFCを大量に施工する場合では, 使用者が個々の材料を個別に調達して練り混ぜるノンプレミックス方式に比べて, プレミックス方式は経済性に劣る場合も考えられる. 本研究では, 材料コスト低減が期待できるノンプレミックス型 UFCを開発することを目的として, 一般のコンクリートに使用される細骨材のUFCへの適用性や, 個々の使用材料の計量誤差が品質に及ぼす影響などを検討し, 選定された標準的な配合について強度特性や耐久性などを実験的に検証した結果を示す. 2. 一般細骨材を用いたノンプレミックス型 UFC の配合に関する検討 (1) 一般細骨材の適用性に関する検討 a) 検討概要本節では, 一般のコンクリートに使用される細骨材のノンプレミックス型 UFC 配合への適用性を確認するため, 325

その混合率や最大寸法などについて検討した結果を示す. 表 -1 本研究におけるUFCの主な目標品質 本研究におけるUFCの目標品質は,UFC 指針 ( 案 ) 3) フレッシュフロー 2 mm を性状 mm フロー到達時間 1~25 秒参考にして表 -1に示すように定めた. 15~18 N/mm 2 b) 使用材料および配合 各種強度 ひび割れ発生強度 4N/mm 2 以上 本節の実験で使用した材料の品質を表 -2に, 検討配合 の特性値 引張強度 5 N/mm 2 以上 を表 -3に示す. 使用材料は, いずれも市販の材料を使用 ) 曲げ強度注 25N/mm 2 した.UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される標準配合粉体の材料構成を参考に, 粉体材料としては低熱ポルトランドセメ 注 )1 1 mm 供試体の 3 等分点曲げ試験による評価表 -2 主な使用材料の品質 ント, シリカフュームを中心に配合し, その他に中間粒材料品種材料名品質子となる混和材料を適宜添加した. 骨材としては4~7 号 ( 記号 ) 水珪砂, 細骨材を使用した. その他, 上水道水, ポリカル水上水道水 (W) ボン酸系高性能減水剤, および鋼繊維を使用した. なお, 低熱ポルト粉体材料密度 3.22g/cm 本研究で対象とする細骨材はアルカリシリカ反応性によランドセメント (P) る区分 Aに相当する骨材であり, 本節の実験では表乾状シリカフューム密度 2.22g/cm 3 4~7 号珪砂表乾密度 2.64g/cm 態に調整した試料を使用した. また, 鋼繊維はUFC 指針骨材 ( 案 ) 3) 表乾密度 2.62g/cm 3, 吸水率に示される標準配合粉体と共に用いられている (S) 細骨材 1.9%, 最大寸法 2.5mm もの (φ.2 15mm) と材質は同等であるが, 長さが混和剤 2mm 短い市販の繊維材である. (Ad) 高性能減水剤 ポリカルボン酸系 本実験では表 -3に示す配合について, 骨材最大寸法の φ.2mm 13mm, 繊維材鋼繊維密度 7.85g/cm 3, 検討 (No.1-1~1-3), および珪砂と一般細骨材との混合 (SF) 引張強度 N/mm 2 以上比の検討 (No.2-1~3-3) を行った. 前者については,4 ~6 号珪砂を混合して最大寸法 1.2,2.5,5mmとなるように 表 -3 検討配合 ( その 1) 調整した珪砂を用いて検討した. 調整する際には, 各最単位量 (kg/m 3 ) No. 検討要因大寸法で実積率が最も高くなるように混合した. 後者に W P S Ad SF ついては, 最大寸法 2.5mm の一般細骨材と7 号珪砂との珪砂のみ 1-1 ( 最大寸法 5mm) 混合質量比を検討要因として,No.2のシリーズでは細骨珪砂のみ材混合比 ~1% について最適範囲を検討し,No.3の 1-2 182 119 111 32 157 ( 最大寸法 2.5mm) シリーズでは5~7% の範囲に絞って詳細検討した. 使珪砂のみ 1-3 用した骨材の粒度分布および粗粒率を図 -1に示す. ( 最大寸法 1.2mm) c) 実験方法 2-1 細骨材混合比 1% 2-2 細骨材混合比 7% 164 1247 93 32 157 本節の実験では, 容量 3リットルモルタルミキサを使 2-3 細骨材混合比 % 用して4リットルのUFCを練り混ぜた. 練混ぜの手順は, 3-1 細骨材混合比 7% 以下の方法を基本とし, 混練状態に応じて練混ぜ時間な 3-2 細骨材混合比 % 169 1288 859 36 157 どは適宜調整した. 初めに水, 高性能減水剤, 鋼繊維以外の材料を投入し, 低速回転で1 分間空練りした後, 水, 3-3 細骨材混合比 5% 高性能減水剤を投入して低速回転で3 分間練り混ぜた. 1-1(2.69) 1-2(2.38) 1-3(1.76) 2-1(2.22) 容器内側面に付着した試料を練りさじで掻き落とした後, 2-2(1.73) 2-3(1.56) 中速回転でさらに7 分間練り混ぜた. 次に, 試料を低速 3-3(1.38) 回転させながら鋼繊維を1 分間で投入し, さらに2 分間練り混ぜて各種試験に供した. フレッシュ時の品質確認試験としては, フロー試験 (JIS R 51, 落下なし ), V 型ロート流下試験 (JSCE- F 512, モルタル用試験器 5) を使用 ) を行った. 強度確認用の供試体は材齢 1~2 日で脱型した後, 参考文献 3) に示 1 8 凡例の ( ) 内数値は粗粒率を示す される標準熱養生 (9 蒸気養生を48 時間 ) を施し,φ.1 1 1 5 1mm 供試体により試験 (JIS A 118) を, 1mm 供試体により曲げ強度試験 (JSCE-G ふるい目 (mm) 552) を実施した. 図 -1 配合 No.1-1~3-3 に使用した骨材の粒度分布 通過率 (%) 326

d) 実験結果最大寸法 1.2~5mmの珪砂を用いて, 骨材最大寸法が品質に及ぼす影響を検討した結果を, 図 -2に示す( 配合 No.1-1~1-3). 同図に示すように, 最大寸法 5mmの場合は他と比べると,Vロート流下時間が遅い結果となった. 骨材の最大寸法が大きいほど, 流動する際に鋼繊維と相互作用が生じ易くなるため, 間隙通過性が低下したものと思われる. また, 曲げ強度も比較的低い結果となったが, これも寸法の大きい骨材が鋼繊維の均一な分布を阻害したためと思われる.UFC 指針 ( 案 ) 3) には, 骨材の最大寸法は2.5mm 以下とすることが規定されている. その理由の一つとして,2.5mm より大きい骨材を使用すると, 本実験結果のような性能低下が生じるためと考えられる. 次に, 最大寸法 2.5mm の一般細骨材を使用し,7 号珪砂との混合比を検討した結果を図 -3に示す( 配合 No.2-1 ~2-3). 他のケースに比べて一般細骨材の混合比 1% の場合は,Vロート流下時間が早く, と曲げ強度が共にやや低い結果であった. これは, 粒径の大きな骨材が多いほどUFCの降伏値が小さくなることや, 鋼繊維とペースト部との界面に粒径の大きな骨材が介在する可能性が高くなるため強度低下が生じることなどが要因として考えられる. したがって, 一般細骨材と珪砂を併 3 25 2 2 18 1 フロー 5 7 8 9 1 細骨材の混合質量比 (%) V ロート流下時間 55 5 45 35 3 5 7 8 9 1 細骨材の混合質量比 (%) 曲げ強度 図 -3 細骨材の混合質量比と物性の関係 ( 配合 No.2-1~2-3) V ロート流下時間 (sec) 5 3 フロー V ロート流下時間 フロー V ロート流下時間 3 25 2 4 6 55 5 45 35 3 V ロート流下時間 (sec) 3 25 5 7 8 55 5 45 35 3 V ロート流下時間 (sec) 珪砂の最大寸法 (mm) 細骨材の混合質量比 (%) 曲げ強度 曲げ強度 2 2 18 1 2 4 6 5 3 2 2 5 18 3 1 5 7 8 珪砂の最大寸法 (mm) 細骨材の混合質量比 (%) 図 -2 珪砂の最大寸法と物性の関係 ( 配合 No.1-1~1-3) 図 -4 細骨材の混合質量比と物性の関係 ( 配合 No.3-1~3-3) 327

用する場合には, 流動性と強度特性とのバランスを考慮した最適混合比があると言え, 配合 No.3-1~3-3を対象として更に詳細検討を行った. なお, 配合 No.2のシリーズの試験結果が表 -1に示す目標品質に比べてフレッシュ性状, 強度特性共にやや劣る結果であったので, これらの品質改善を図るため, 配合 No.3のシリーズでは単位水量および単位粉体量をNo.2のシリーズに比べて増加させた. 図 -4は, 骨材全体に対する一般細骨材の混合比を5~ 7% の範囲で検討した結果である. 本検討範囲では, 概ね目標品質を満足しているものと考えられるが, 細骨材混合比 7% の場合には材料分離抵抗性がやや不足している性状であった. このため, 最適な細骨材混合比は5~ % 程度の範囲と考え, 以降の実験では一般細骨材と7 号珪砂の混合比を55:45としたものを骨材として使用することとした. また, 本節の曲げ強度試験では比較的小さな供試体 ( 1mm) を用いたが,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示されているように曲げ強度は供試体の寸法効果を受けるため, まだ目標とした曲げ強度には不足していると考えられた. このため, 以降の実験では水粉体比は本検討と同程度 ( 約 13%) として, 粉体量をさらに増やすこととした. (2) 細骨材の保水状態が品質に及ぼす影響 a) 検討概要前節の検討では, 表乾状態に調整した細骨材を使用していたが, 工場レベルの大容量で本 UFCを製造する場合には, そのような状態に細骨材を調整 保管することは困難であるため, 絶乾状態で保管するか, あるいは表面水率を有した状態で保管 管理するか, どちらかの方法を採ることが考えられる. そこで, 本節では細骨材の保水状態がUFCの品質に及ぼす影響を検討した結果を示す. 表乾状態を基本とし, 絶乾状態については吸水率分の水量を単位水量補正する場合としない場合とを比較検討した. さらに, 表面水率 4% 程度に調整して, その分を単位水量補正した場合についても検討した. b) 使用材料および配合本節の実験で対象とした基本配合 ( 表乾状態の細骨材を対象 ) を表 -4に, 検討ケースを表 -5に示す. 使用材料の品質は前節に示したものと同様であるが, 細骨材については吸水率が若干異なるもの (1.75%) を使用した. 表乾状態を目標に骨材調整を行った検討ケースにおいては, 若干の表面水率 (.57%) を有していたため, この分の水量を単位水量に対して補正して実験を行った. c) 実験方法本節の実験では, 容量 1リットルの多機能型ミキサを使用して5リットルのUFCを練り混ぜた. 図 -5に示すように, 本ミキサはコーン型の容器の中心部にスパイラ ル状の羽根を有する軸があり, 容器内側面には5 本の外羽根が設置されている. これら内 外の2 種類の羽根が, 相互に逆回転して練り混ぜることにより, 試料に強いせん断力を与えることから, 特に水粉体比の小さいコンクリートにおいては, 強制二軸式ミキサなど一般のミキサに比べて練混ぜ時間を短縮することができる. 練混ぜの手順は, 以下の方法を基本とした. 初めに水, 高性能減水剤, 鋼繊維以外の材料を投入し, 低速回転で 3 秒間空練りした後, 水, 高性能減水剤を投入して低速回転で7 分間練り混ぜた. 次に, 試料を低速回転させながら鋼繊維を1.5 分間で投入し, さらに2 分間練り混ぜて各種試験に供した. フローの経時変化測定については, 練り上がり5 分後に測定した後は試料をミキサ容器内に静置しておき,3 分毎に測定する前にミキサを1 分間低 表 -4 基本配合単位量 (kg/m 3 ) 備考 W P S Ad SF 172 1373 764 33 157 表乾状態の細骨材を対象 細骨材の保水状態 ほぼ表乾状態 絶乾状態 絶乾状態 表面水あり 表 -5 検討ケース 補正後の 補正後の 水量の補正方法 投入水量 投入骨材量 (kg/m 3 ) (kg/m 3 ) 表面水率分 (.57%) を単位水 169 766 量に対して補正 吸水率相当分 (1.75%) を単位水量 179 757 に対して補正 吸水率相当分 (1.75%) を単位水量 172 757 に対して補正せず 表面水率分 (4.14%) を単位水 154 781 量に対して補正 1 3 761 図 -5 多機能型ミキサの概要図 ( 単位 :mm) 328

速回転してから試料を採取し, フロー試験を行った. 試験方法や供試体の養生方法は前節と同様であるが, 硬化後の強度試験については, はφ1 mm の供試体を, 曲げ強度は1 1 mm の供試体を使用して行った. d) 実験結果実験結果を図 -6, 図 -7に示す. まず, 流動性について考察する. 図 -6に示すように, 練上がり5 分後の時点で最もフロー値が大きかったのは, 細骨材を絶乾状態で使用して吸水率分の水量を単位水量補正した配合であり, 表面水率などを補正した投入水量が多いほど, 流動性が高くなる傾向がみられた. このことから, 細骨材内部に吸水されている水分や, 表面水として細骨材粒子が保持している水分は流動性にはさほど寄与せず, 練混ぜ時に投入する水がコンクリート中の自由水として流動性に対しては最も寄与しているものと考えられる. また, 投入水量が多いほど経時的なmmフロー到達時間の変化, すなわち粘性の変化が少ない傾向もみられており, これも自由水の量に影響を受けた結果であると考えられる. したがって, 絶乾状態の細骨材を使用する場合には投入された水を骨材が急激に吸水し, 流動性が低下することが懸念されたが, フローの経時変化も9 分間でmm 程度であり, 実用上の問題はないものと考えられる. 次に, 強度特性についてみると, 図 -7に示すように絶乾状態として細骨材を使用した2ケースが他と比較して高い曲げ強度が得られた. についても, 絶乾状態 ( 吸水率分水量補正 ) の場合は, ほぼ表乾の場合と比較して高くなる傾向がみられた. 表乾状態, あるいは表面水を保持させた状態で細骨材を使用する場合は, 骨材内部に予め吸水されていた水により骨材界面部のペースト溶液の濃度は薄まるものと考えられる. これに対し, 絶乾状態で使用する場合は骨材周囲のペースト溶液が骨材表層部に浸透し, 濃度が薄まることなく, すなわちペースト溶液の水結合材比が低下することなく浸透して骨材界面周囲のペースト部と一体化するため, 骨材と周囲のペーストマトリックスとの付着が比較的に良くなることから, 硬化体の強度特性も向上したものと考えられる. 以上の実験結果より, 細骨材の保水状態を絶乾とすることにより, フレッシュ性状, 強度特性共に良好な品質が得られることが確認された. また, 細骨材を硅砂と同様に絶乾状態とすることにより, 品質管理の難しい表面水率管理が不要となり, 品質変動も小さくなることが期待されることから, 材料管理の面からも好ましい使用方法であると考えられる. (3) 鋼繊維の最適添加量に関する検討 a) 検討概要本節では, 材料コストで最も大きな割合を占める鋼繊 mm フロー到達時間 (sec) 19 18 3 2 2 2 8 絶乾 ( 吸水率分 W 補正 ) 絶乾 ( 吸水率分 W 補正なし ) ほぼ表乾 ( 表面水率.57%) 表面水率 4.14% 3 9 1 15 経過時間 ( 分 ) 3 9 1 15 経過時間 ( 分 ) 図 -6 フロー経時変化測定結果 絶乾 ( 吸水率分 W 補正 ) 絶乾 ( 吸水率分 W 補正なし ) ほぼ表乾 ( 表面水率.57%) 細骨材の保水状態 図 -7 各種強度試験結果 表面水率 4.14% 329

維について, 最適添加量を検討した結果を示す. b) 使用材料および配合本節の実験で検討した配合を表 -6に示す. 本実験では鋼繊維添加量をパラメータとして,1.5,1.75,2.vol.% の3 水準について検討した. 使用材料は (1) に示したものと同等であり, 絶乾状態の細骨材を硅砂と混合して使用した. 鋼繊維添加量 2.vol.% 配合は, 前節での検討結果より, 単位水量は細骨材吸水率相当の水量を単位水量として加えるなどして配合を微修正したものである. その他の配合は同配合を基に, 鋼繊維を減らした容積分を均等に他の材料へ割り振って定めた. c) 実験方法本節の実験では前節と同様に, 容量 1リットルの多機能型ミキサを使用して5リットルのUFCを練り混ぜた. 練混ぜ方法, 供試体の養生方法, および各種試験の実施方法は前節と同様である. 硬化後の強度試験については, はφ1 mm の供試体を, 曲げ強度は1 1 mm の供試体を使用して行った. さらに,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される割裂引張強度試験方法に準拠して,φ1 mm の供試体によりひび割れ発生強度を測定した. と曲げ強度の試験には3 本の供試体を, ひび割れ発生強度の試験については6 本の供試体を用いて評価した. d) 実験結果実験結果を図 -8に示す. 本検討の範囲では, フロー値はほとんど変化がなかったが,mm フロー到達時間は鋼繊維が多くなるほど短くなる傾向がみられた. モルタル部に対して密度が3 倍程度大きい鋼繊維が多いことにより, コンクリートの降伏値が小さくなったため, フロー速度は増加したものと考えられる. ただし, 鋼繊維添加量が過大になると繊維同士の絡み合いや, 余剰ペーストの不足などにより, 流動性は逆に低下するものと考えられることから, このような傾向は本検討で対象としたごく僅かな添加量の範囲内における現象と思われる., ひび割れ発生強度は鋼繊維添加量に関係なく, ほぼ一定の値であったが, 曲げ強度は鋼繊維 1.5vol.% の場合に低下した. また, ひび割れ発生強度の標準偏差は1.5vol.% の場合に大きくなっており, 最大値と最小値との偏差は2.vol.% の場合が2.3N/mm 2 であるのに対し,1.5 vol.% の場合は4.8N/mm 2 であったことから, 鋼繊維 1.5vol.% では品質安定性も低下することが確認された. 本実験結果より, 目標品質を満足する鋼繊維の最低添加量は1.75vol.% 程度であると考えられるが, 品質の安定性を考慮し, 本研究では鋼繊維の添加量は2.vol.% を採用することとした. 以上の検討結果より, 本研究では表 -6に示す配合 No.1 を, 一般細骨材を用いたノンプレミックス型 UFC 配合の基本配合として選定した. (4) 細骨材の粒度が品質に及ぼす影響 a) 検討概要二次製品工場レベルの大容量で本 UFCを製造する場合に懸念される事項の一つとして, 細骨材の粒度変動が考えられる. 本節では, 細骨材の粒度が品質に及ぼす影響を検討した結果を示す. 表 -6 検討配合 ( その 2) No. 検討要因 単位量 (kg/m 3 ) W P S Ad SF 1 鋼繊維 2.vol.% 179 1362 751 33 157 2 鋼繊維 1.75vol. % 18 1366 753 33 137 3 鋼繊維 1.5vol. % 18 137 755 33 117 ひび割れ発生強度 25 2 23 2 21 2 2 18 1 15 1 5 フロー 1.25 1.75 2.25 鋼繊維混入率 (vol.%) mm フロー到達時間 3 28 26 24 22 1.25 1.75 2.25 鋼繊維混入率 (vol.%) 曲げ強度 1.25 1.75 2.25 鋼繊維混入率 (vol.%) mm フロー到達時間 (sec) 5 3 ひび割れ発生強度ひび割れ発生強度の標準偏差 3 図 -8 鋼繊維混入率と物性の関係 2 1 標準偏差 33

b) 使用材料および配合 本節の実験では, 前節までの検討結果より選定した表 -6に示す配合 No.1を対象とした. 絶乾状態の細骨材を硅砂と混合して使用し, その他の使用材料の品質は, (1) に示したものと同等である. 本研究で対象としてい 6) る一般細骨材は, 図 -9に示すように細骨材の標準粒度の上限曲線に近い粗粒率 2. 程度の粒度を標準的に有している. 本節の実験では, これより粒度が粗くなった場合を想定し, 粗粒率 2.5,3.1に調整した細骨材を使用して実験を行った. c) 実験方法本節の実験では容量 3リットルモルタルミキサを使用して4リットルのUFCを練り混ぜた. 練混ぜ方法, 供試体の養生方法, および各種試験の実施方法は (1) に示した方法と同様である. はφ5 1mm の供試体を, 曲げ強度は 1mmの供試体を使用して行った. d) 実験結果実験結果を図 -1に示す. 粗粒率が変動してもフロー値にほとんど変化はみられなかったが,mm フロー到達時間, すなわち粘性は粗粒率が大きいほど低下する傾向がみられた. これは, 粒径の大きな骨材が多く混入されることにより,UFCの降伏値が小さくなったことや, 練混ぜ中の骨材によるペースト部のすり潰し効果で練混ぜ状態が改善されたこと等が要因として考えられる. 強度特性については, 粗粒率が3.1の場合に, 曲げ強度共に大きく低下した. 粒径の大きな骨材が多く混入されると鋼繊維とペースト部との界面に骨材が介在する可能性が高くなり, これが弱部となって強度低下が生じるものと考えられる. 以上の実験結果より, 本研究で対象としている一般細骨材は粗粒率の変動が2.~2.5 程度の範囲であれば, 品質に及ぼす影響は実用上問題ないものと考えられる. (5) 使用材料の計量誤差が品質に及ぼす影響 a) 検討概要二次製品工場レベルの大容量で本 UFCを製造する場合に懸念される事項の一つとして, 各材料の計量に誤差が生じた場合の品質変動が考えられる. 本節では水, 高性能減水剤, 粉体材料, および骨材の計量誤差が品質に及ぼす影響を検討した結果を示す. b) 使用材料および配合本節の実験では, 表 -6に示す配合 No.1を対象とした. 絶乾状態の細骨材を硅砂と混合して使用し, その他の使用材料の品質は,(1) に示したものと同等である. 本節の実験では, 表 -7に示すようにUFC 指針 ( 案 ) 3) に示される各材料の計量誤差の最大許容値の範囲で, 各材料の計量誤差が生じた場合を想定し, 材料の計量値を 故意に増減して練混ぜを行った. 水, 高性能減水剤については個々に計量誤差を生じさせても誤差が小さいため 通過率 (%) 1 8 25 2 23 2 21 2 18 標準的な粒度 (FM=1.97) FM=2.47 FM=3.13.1 1 1 ふるい目 (mm) 図 -9 検討した細骨材の粒度分布 フロー 1 2 3 4 粗粒率 mm フロー到達時間 35 3 25 15 1 1 2 3 4 粗粒率 細骨材の 6) 標準粒度 曲げ強度 図 -1 細骨材の粗粒率と物性の関係 表 -7 検討した各材料の計量誤差値 mm フロー到達時間 (sec) 材料の種類 計量誤差値 (wt.%) 水 (W) および高性能減水剤 (Ad) W-1% かつ Ad-2%, W+1% かつ Ad+2% 粉体材料 (P) -1%,+1% 骨材 (S) -3%,+3% 5 3 331

品質に大きな変動は生じないと思われたため, 本検討では極端な計量誤差が生じた場合として両材料共に計量値を増減させて実験を行った. また, 計量誤差の無い場合についても, 比較のため同時に実験を行った. c) 実験方法容量 1リットルの多機能型ミキサを使用して,5リットルのUFCを練り混ぜた. 練混ぜ方法, 供試体の養生方法, および各種試験の実施方法は (3) と同様である. 硬化後の強度試験については, とひび割れ発生強度はφ1 mm の供試体を, 曲げ強度は1 1 mm の供試体を使用して行った. d) 実験結果はじめに, 水と高性能減水剤の計量値を増減させた場合の実験結果を図 -11に示す. 検討した計量誤差の範囲であれば, フレッシュ性状に大きな変化はみられず, 水 -1% かつ高性能減水剤 -2% の場合にが若干低下した場合を除けば, 強度特性にも変化はみられなかった. 粉体材料および骨材を誤計量した場合については, いずれも流動性に大きな変化はみられなかった. 強度特性については, 図 -12 および図 -13に示すように, 粉体材料に誤計量が生じた場合以外は変動がみられなかった. 粉体材料の計量値が少ないほど, ひび割れ発生強度が低下する傾向がみられた理由としては,UFCのひび割れ発生強度はマトリックス部の強度に大きく依存するため, 粉体材料の大半を占める結合材の量が少ないほどマトリックス部の結合力が低下したことが, 一因として考えられる. 以上より,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される各材料の計量誤差の最大許容値の範囲においては, 本 UFCは各材料の計量値が変動しても品質が大きく変化することはなく, 目標品質を満足することを確認した. 添加量や単位水量を適宜微調整した. 25 2 23 2 21 2 18 W-1% Ad-2% 正規量 W+1% Ad+2% 計量誤差の検討ケース 図 -11 水と高性能減水剤を誤計量した場合の検討結果 2 2 18 1 ひび割れ発生強度 -2-1 1 2 粉体材料の計量誤差値 (wt.%) 12 1 8 6 4 ひび割れ発生強度 3. 一般細骨材を用いたノンプレミックス型 UFC の特性の検証 図 -12 粉体材料を誤計量した場合の検討結果 (1) 強度特性 a) 概要本節では, 前章に示した一般細骨材を用いたノンプレミックス型 UFC 配合について, 約 9ヶ月の期間に実施した各種強度試験結果をもとに決定配合の妥当性を検証した結果を示す. b) 使用材料および配合本節の実験では, 表 -6に示す配合 No.1を基本配合とした. 絶乾状態の細骨材を使用し, その他の使用材料の品質は, 第 2 章に示したものと同等である. 練上がり時のフローが2±3mm の範囲になるよう, 高性能減水剤の 2 2 18 1-4 -2 2 4 骨材の計量誤差値 (wt.%) ひび割れ発生強度 12 1 図 -13 骨材を誤計量した場合の検討結果 8 6 4 ひび割れ発生強度 332

c) 実験方法 本節の実験では容量 5 リットル, または 1 リットル の多機能型ミキサを使用して練り混ぜた. 練混ぜ量は各ミキサ容量の半分程度とし, 練混ぜ方法は第 2 章に示した方法に準じた. また, 供試体の養生方法, および各種試験の実施方法は第 2 章に示した方法と同様である. とひび割れ発生強度はφ1 mm の供試体を, 曲げ強度は1 1 mm の供試体を使用して測定した. 本配合の強度特性値を把握するため, 供試体の採取は約 9ヶ月の間に計 8バッチを練り混ぜて行い, いずれの供試体も1 バッチあたり最低 3 本ずつ採取した. さらに,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される手法に準拠して, 切欠きのある供試体の3 等分点曲げ強度試験を実施し, 試験結果を逆解析して引張強度等を求めた. d) 実験結果実験結果を図 -14, 表 -8に示す. は平均で 7N/mm 2, 標準偏差は12.5N/mm 2 であり, これより試算した特性値はUFC 指針 ( 案 ) 3) に示される標準配合粉体を用いた場合の特性値 18 N/mm 2 と同等の強度であった. ひび割れ発生強度は特性値で6.2 N/mm 2 であり, 標準配合粉体を用いた場合の特性値 3) 8.N/mm 2 と比べると小さい値であった. また, 引張強度, 曲げ強度についても特性値は,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される標準配合粉体を用いた場合に比べてやや小さい値であった. その要因としては, 標準配合粉体に添加されている鋼繊維に比べて本配合で使用しているものは長さが2mm 短いために, 引張や曲げなど鋼繊維を引抜く力が作用した場合の抵抗力がやや弱いことが挙げられる. また, 粒径の大きい細骨材を使用しているため鋼繊維とマトリックス部との付着性状に差があることも要因として考えられる. 同一バッチから採取した1 1 mm 供試体について, 曲げ強度と逆解析による引張強度との関係を求めた結果を図 -15に示す. 同図には,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される標準配合粉体を用いた場合のデータも併記しているが, これによれば, 本 UFCにおける両強度の関係は同指針 ( 案 ) 3) の場合と同等であることがわかる. 以上より, 本研究で対象としたUFC 配合の強度特性は, ひび割れ発生強度など全般的に標準配合粉体と15mm 長の鋼繊維を用いた場合よりやや低いが,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示されるUFCとしての強度特性 ( 15N/mm 2 以上, ひび割れ発生強度 4N/mm 2 以上, 引張強度 5N/mm 2 以上を各特性値とする ) を十分満足する品質であると考えられる. (2) 耐久性 a) 概要本節では, 前節で対象としたUFC 配合の凍結融解抵抗性, 中性化抵抗性, および塩化物イオン侵入抵抗性につ 度数 度数 1 5 15 1 5 17~175 5~6 18~185 6~7 7~8 19~195 8~9 ~5 9~1 21~215 1~11 11~12 2~225 12~13 図 -14 とひび割れ発生強度の度数分布 統計値 表 -8 各種強度試験結果 ひび割れ発生強度 引張強度 曲げ強度 データ数 24 6 24 平均値 7 8.2 1.6 28.9 標準偏差 12.5 1.2 2.2 2.3 1) 特性値注 186 6.2 7. 25.1 2) 特性値注 18 8. 8.8 28.9 注 1) 正規分布と仮定して危険率 5% として算出 注 2)UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される標準配合粉体の特性値 5 3 n=24 平均値 :7N/mm 2 標準偏差 :12.5N/mm 2 175 185 195 5 215 225 UFC 指針データ n= 平均値 :8.2N/mm 2 標準偏差 :1.2N/mm 2 6 7 8 9 1 11 12 ひび割れ発生強度 対象 UFC 配合 5 1 15 引張軟化曲線での引張強度 図 -15 曲げ強度と引張強度の関係 3) 333

相対動弾性係数 (%) 11 1 9 8 7 試験前 27.3 試験後 31.6 8 1 1 1 サイクル数 図 -16 凍結融解試験結果 塩分浸透深さ (mm, 暴露面 =mm) -1 - -3 対象 UFC( 試験期間 122 週 ) 標準配合粉体使用 UFC( 試験期間 96 週 ) 水セメント比 35% 配合 ( 試験期間 96 週 ) 鋼材腐食発生限界濃度 (1.2kg/m 3 ) 1mm 供試体暴露面 ( 一面 ) 表 -9 実効拡散係数測定結果 配合 実効拡散係数 (cm 2 / 年 ) 対象 UFC 配合 2.6 1-2 標準配合粉体使用 UFC 配合 6.38 1-3 水セメント比 35% 配合 8.47 1-1 - 1 3 全塩化物イオン濃度 (kg/m 3 ) 図 -17 促進腐食試験における塩分浸透分布状況 いて示す. b) 使用材料および配合本節の実験で使用した材料の品質, および検討配合は前節と同様である. c) 実験方法本節の実験では容量 1リットルの多機能型ミキサを使用して練り混ぜた. 練混ぜ量はミキサ容量の半分程度とし, 練混ぜ方法, 供試体の養生方法は第 2 章に示した方法と同様である. 凍結融解試験はJSCE-G 51の A 法に, 促進中性化試験はJIS A 1153に準拠して行った. 塩化物イオン侵入抵抗性については, 既報 7) で報告した電気泳動法による実効拡散係数の評価, および複合サイクル試験機を用いて行う促進腐食試験により評価した. 実効拡散係数の評価においては, 鋼繊維を添加した硬化体で測定すると, 測定中に繊維が腐食して妥当な試験データが得られなかったため 7), 鋼繊維無添加配合を測定の対象とした. また, 試験の対象は表 -6に示す配合 No.1の他に,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される標準配合粉体を用いたUFC 配合, および普通ポルトランドセメントを用いた水セメント比 35% の高強度コンクリート配合とした. 両 UFC 配合については前述の標準熱養生を施し, 高強度配合については試験開始材齢 (44または52 日 ) まで標準水中養生を行った. 促進腐食試験で用いた複合サイクル試験機は, 雰囲気温度および塩水の噴霧を自動的に制御可能な試験機である. 本試験では, 乾燥状態は雰囲気温度 5 で湿度 1% 未満の状態を5 時間保持とし, 湿潤状態は雰囲気温度 35 で3% 食塩水を噴霧させる状態を3 時間継続させた. 以上の乾湿状態の繰返しを8 時間 / サイクルとして, 試 験は96 週間行った. 試験の対象は, 実効拡散係数の評価の場合と同様の2 種のUFC 配合とした. また, 水セメント比 35% の高強度コンクリート配合をウェットスクリーニングしたモルタルに鋼繊維 (φ.2 15mm) を.5vol.% 添加した, 鋼繊維補強高強度モルタル配合についても試験の対象とした. 供試体の寸法は 1mm とし, 両 UFC 配合については実効拡散係数評価と同様に標準熱養生を施し, 鋼繊維補強高強度モルタル配合については試験開始材齢 (55 日 ) まで標準水中養生を行った. 試験開始前には, 一側面 ( 1mm) のみ暴露表面となるように, 他の5 面にはシーリングを施して試験に供した. d) 実験結果凍結融解試験結果を図 -16に示す. 試験は13サイクルと長期間にわたって行ったが, 相対動弾性係数の変動はみられず, 試験体外観にも変状はみられなかった. 硬化体組織が非常に緻密であるため, 外部からの水の浸透が極めて少なく, また, 硬化体中の未反応水も極めて僅かなため, 凍結融解に対する高い抵抗性が示されたものと考えられる. ただし, 試験前後で曲げ強度試験を実施したところ, 試験後の方がやや強度は高くなった. このことから, 標準熱養生後にも硬化体中には未水和水が僅かに残り, これが試験期間中に反応して強度が微増したものと考えられる. 以上の結果より, 本研究で対象としたUFC 配合の凍結融解抵抗性は極めて高いことを確認した. 促進中性化試験は促進期間 3 年まで試験を実施したが, 中性化領域は認められなかった.UFC 指針 ( 案 ) 3) やフランスのSETRA/AFGC 指針 8) では, 一般にUFCは高い中性化抵抗性を有することが示されているが, 本研究で対 334

象とした配合においても中性化抵抗性は極めて高いことが確認された. 実効拡散係数の測定結果を表 -9に示す. 本研究で対象としたノンプレミックス型 UFC 配合は, プレミックス型標準配合粉体を使用した場合より1オーダー大きい2.6 1-2 cm 2 / 年であったが, 水セメント比 35% の高強度配合に比べると1オーダー小さい結果であった. 本研究で対象としたUFC 配合の実効拡散係数が, 標準配合粉体を使用したUFC 配合より大きかったことの理由としては, 両配合で使用している結合材の種類 量や水結合材比の相違, 使用した骨材の最大径の相違 ( 後者 1mm 未満 9) に対して前者 2.5mm) などが考えられる. 一方, 図 -17に示すように, 促進腐食試験の結果においては本研究で対象とした配合の全塩化物イオン濃度分布は標準配合粉体を使用した場合と同程度であり, 両 UFC 配合は水セメント比 35% の高強度モルタル配合に比べると遮塩性能に顕著な差があることがわかる. したがって,1 1-2 ~1 1-3 cm 2 / 年程度の範囲の実効拡散係数を有する配合においては, 遮塩性能としては大差はなく, 1 1-1 cm 2 / 年程度の配合と比べると同性能は顕著に高いと考えられる. 以上より, 本研究で対象とした配合は十分な塩化物イオン侵入抵抗性を有していると考えられる. 以上の実験結果より, 本研究で対象としたノンプレミックス型 UFC 配合は本節で実施した評価項目については十分な耐久性を有していることを確認した. 4. 結論本研究で得られた知見を以下に示す. 1) 骨材混合比 5~% 程度の範囲で, 絶乾状態の一般の細骨材を7 号珪砂と併用することにより,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示されるUFCとしての強度特性を満足するノンプレミックス型 UFC 配合が可能である. 2) 検討対象としたノンプレミックス型 UFC 配合においては, 細骨材の保水状態を絶乾状態とすることにより, 表乾状態, あるいは表面水を保持させた場合よ りや曲げ強度は高い. 3) 検討対象としたノンプレミックス型 UFC 配合においては, 目標品質を満足する鋼繊維の最低添加量は 1.75vol.% である. 4) 細骨材の粗粒率が2.~2.5 程度の範囲であれば, 骨材粒度の変動はノンプレミックス型 UFCの品質に及ぼす影響は無い. 5) 検討対象としたノンプレミックス型 UFC 配合においては,UFC 指針 ( 案 ) 3) に示される各材料の計量誤差の最大許容値の範囲においては, 品質変動も小さく, 目標品質を満足する. 6) ノンプレミックス型 UFCの凍結融解抵抗性, 中性化抵抗性, および塩化物イオン侵入抵抗性は, プレミックス型標準配合粉体を用いた場合と同等である. 参考文献 1) 野口孝俊, 加藤浩司 : 羽田再拡張工事における超高強度繊維補強コンクリートの活用, セメント コンクリート,No.741,pp. 34-38,8.11. 2) 武者浩透, 渡辺典男, 福原哲, 一戸秀久 :UFC を用いた GSE 橋梁の設計と実務, プレストレストコンクリート,Vol.5,No.6,pp.13-,8.11. 3) 土木学会 : コンクリートライブラリー 113 超高強度繊維補強コンクリートの設計 施工指針 ( 案 ),3.9. 4) 大野俊夫, 坂井吾郎, 保利彰宏, 樋口正典 : 超高強度繊維補強コンクリートの品質安定性に関する検討, コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,pp.1265-127,6.7. 5) 岡村甫, 前川宏一, 小澤一雅 : ハイパフォーマンスコンクリート,pp.13-131,1993.9. 6) 土木学会 :7 年制定コンクリート標準示方書 [ 施工編 ],pp.45,7.3. 7) 坂本淳, 新藤竹文, 丸屋剛, 杉山隆文 : 高緻密性材料の塩分浸透性評価に関する研究, コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp.325-33,5.7. 8) Ultra high performance fiber-reinforced concrete, BFUP Group, AFGC/SETRA, 2. 9) 田中良弘 : コンクリートの常識を破った超高強度繊維補強コンクリートの応用, 未来材料,Vol.6,No.11, pp.52-59,6.11. (9. 11. 25 受付 ) 335

STUDY ON NON-PREMIXED TYPE ULTRA HIGH STRENGTH FIBER REINFORCED CONCRETE APPLYING FINE AGGREGATE WHICH MAXIMUM SIZE IS 2.5mm Jun SAKAMOTO, Yoshihiro TANAKA, Takefumi SHINDOH and Kimitaka UJI This paper reports test results of non pre-mixed type ultra high strength fiber reinforced concrete, making use of the fine aggregate which is used for the general concrete. From test results, it was investigated that we could obtain the mix proportion of the concrete that satisfied necessary strength quality, with jointly using the fine aggregate under absolute dry condition and the silica sand in the range of the aggregate mixture ratio 5~%. In addition, if fineness modulus of the fine aggregate was the range of the 2.~2.5, fluctuation of aggregate grain size didn't influence the quality of the concrete. It was also investigated that the concrete had high freezing and thawing resistance, carbonation resistance, and the chloride ion invasion resistance which are equal to the combination which uses the pre-mixed type standard combination powder body. 336