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25 年 度 アクションプラン 補 助 制 度 目 標 定 住 人 口 :198 人 増 1 九 州 大 学 学 生 への 電 動 バイクレンタル 事 業 学 研 都 市 づくり 課 進 学 糸 島 市 内 に 居 住 する 九 州 大 学 の 学 生 に 民 間 業 者 と 連 携 し て 電 動

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市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

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退職手当とは

(5) 農 地 法 ( 昭 和 27 年 法 律 第 229 号 )による 農 地 転 用 が 許 可 されないと 見 込 ま れる 農 用 地 (6) 森 林 法 ( 昭 和 26 年 法 律 第 249 号 ) 第 25 条 第 1 項 第 25 条 の2 第 1 項 及 び 第 41 条 第

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

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34 県 立 鶴 岡 工 業 高 等 校 ( 全 日 制 ) 工 業 科 ( 機 械 科 電 気 電 子 科 情 報 通 信 科 建 築 科 環 境 化 科 ) 次 のいずれかに 該 当 する 1 文 化 的 活 動 や 体 育 的 活 動 において 地 区 大 会 を 経 て 県 大 会 に 出

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七 の 二 自 然 公 園 法 ( 昭 和 三 十 二 年 法 律 第 百 六 十 一 号 ) 第 二 十 条 第 一 項 に 規 定 する 国 立 公 園 又 は 国 定 公 園 の 特 別 地 域 のうち 同 法 第 二 十 一 条 第 一 項 に 規 定 する 特 別 保 護 地 区 その 他

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( 新 ) 医 療 提 供 の 機 能 分 化 に 向 けたICT 医 療 連 携 導 入 支 援 事 業 費 事 業 の 目 的 医 療 政 策 課 予 算 額 58,011 千 円 医 療 分 野 において あじさいネットを 活 用 したICT したICT 導 入 により により 医 療 機 能

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(5) 事 業 者 等 自 転 車 及 び 自 動 車 の 製 造 輸 入 販 売 又 は 修 理 を 業 として 行 っている 者 及 びそ れらの 者 の 団 体 並 びにその 他 の 事 業 者 をいう (6) 所 有 者 等 自 動 車 の 所 有 権 占 有 権 若 しくは 使 用 権 を

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する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

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第 63 回 ( 平 成 26 年 度 ) 横 浜 文 化 賞 選 考 委 員 会 日 時 平 成 26 年 8 月 22 日 ( 金 ) 午 後 2 時 ~ 場 所 市 庁 舎 2 階 応 接 室 次 第 1 開 会 2 開 会 あいさつ 横 浜 市 副 市 長 渡 辺 巧 教 3 委 員 紹 介

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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Taro-00 県立・表紙

役員退職手当規程

容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

Transcription:

美 活 同 源 と 特 定 地 域 学 - 美 しい 農 村 での 儲 かる 農 業 - 蓑 茂 寿 太 郎 公 立 大 学 法 人 熊 本 県 立 大 学 理 事 長 農 学 アカデミーの 論 壇 に 寄 稿 するようにとのことである 私 は 33 年 間 母 校 である 東 京 農 業 大 学 に 籍 を 置 き 4 年 前 に 法 人 化 と 同 時 に 現 職 に 就 任 した この ことにより 農 村 や 農 業 を 見 る 目 が 東 京 から でなく 九 州 で に 変 わった また 専 門 がトータルに 環 境 をとらえるランドスケープ 分 野 であるので 本 務 の 傍 らではあるが 地 域 貢 献 の 使 命 から 農 村 と 農 業 を 俯 瞰 的 に 診 ている その 一 端 を 述 べご 批 判 を 仰 ぎたい 美 活 同 源 という 表 現 熊 本 に 着 任 して 直 ぐに 熊 本 に 学 ぶ 美 活 同 源 が 全 国 に 流 布 するようにと 願 うようになった そこで 講 演 等 の 機 会 に 私 の 造 語 美 活 同 源 をできるだけ 使 うようにした 都 会 では 通 じるランドスケープを 田 舎 でも 理 解 してもらうため でもあった 医 食 同 源 は 聞 いたことがあるが 美 活 同 源 は 知 らない そんな 声 が 返 って 来 た 医 食 同 源 も 1991 年 の 第 四 版 から 広 辞 苑 に 登 場 したもので 一 般 化 したのはそんなに 古 くないこと そこには 病 気 をなおすのも 食 事 をするのも 生 命 を 養 い 健 康 を 保 つためで その 本 質 は 同 じだ ということが 書 いてあるこ とを 紹 介 し 以 下 のように 美 活 同 源 について 述 べてきた 活 力 ある 地 域 の 風 景 は 美 しい 私 は 高 校 卒 業 まで 休 耕 田 などない 農 村 で 育 ち 減 反 政 策 が 実 施 されるようになってからも 年 に 数 度 ここを 訪 問 していた そ こでこれらの 前 後 の 比 較 観 測 から 美 活 同 源 を 導 いた ドイツの 植 物 生 態 学 者 - 62 -

チュクセン 博 士 は 日 本 の 水 田 は 正 に 庭 園 だ と 言 ったが これは 減 反 政 策 以 前 のことで 今 は 耕 作 放 棄 地 の 荒 れた 農 地 が 大 きな 社 会 問 題 になっている ま たドイツ 林 学 の 祖 フォンザリッシュは 施 業 林 の 美 を 森 林 美 学 として 論 じ ている ツル 切 りと 枝 打 ちがなされ 間 伐 がきちんと 行 われた 森 林 は 美 しい 風 景 を 奏 でる 林 床 に 光 が 届 くなら 土 壌 侵 食 や 樹 幹 への 鹿 の 被 害 も 少 なかろう 生 産 基 盤 となっている 土 地 は 活 力 ある 経 営 の 下 では 美 しい 景 観 を 呈 する 農 林 業 斜 陽 のままでは 美 しい 農 山 村 には 出 会 えない 生 活 基 盤 としての 土 地 も 同 様 に 生 き 生 きしたコミュニティがあってこそ 心 地 よい 界 隈 をみせる そこで 今 課 題 の 地 域 再 生 には まず 美 しい 環 境 だ と 主 張 している 美 しい 地 点 には 人 が 集 まり 活 気 が 溢 れる 美 しい 風 景 の 道 筋 にはたくさんの 人 が 行 き 交 う そこ では 定 住 人 口 の 減 少 を 交 流 人 口 が 補 う 情 景 に 出 会 う 美 しい 場 所 が 点 や 線 では 非 効 率 なので 面 として 美 しい 地 域 をつくる 考 えにたどり 着 く そのような 地 域 づくりの 思 いが 全 国 展 開 して 先 の 景 観 法 の 制 定 となった そこで 美 しい 町 にするのも 町 に 活 力 を 沸 き 立 たせるのも 人 々の 喜 びを 満 たし 生 きる 力 を 地 域 に 継 続 させるためで その 本 質 は 同 じだ と 美 活 同 源 を 規 定 することがで きる 日 本 建 築 学 会 賞 を 受 賞 したヨーロッパの 建 築 家 が 日 本 での 生 活 の 楽 し みは 何 ですかとインタビューで 聞 かれて 美 しいものと 醜 いものとのギャップ が 大 きいのに これを 埋 めようとせず 共 存 させていることに 興 味 がある 建 築 も 風 景 も と 答 えていたが これは 日 本 の 風 景 を 見 事 に 言 い 当 てていると 思 う これと 無 関 係 でないと 思 うが 熊 本 では 環 境 フォト コンテストが 2007 年 か ら 実 施 されている 3 年 目 となって 私 が 気 付 いたのは 将 来 に 残 したい 環 境 は 多 様 多 彩 である 対 して 取 り 除 きたい 醜 い 環 境 は 数 パターンに 整 理 できる し かしその 数 は 多 く 一 握 りではないということである 私 が 属 する 日 本 造 園 学 会 の 初 代 会 長 を 努 め 当 時 東 京 帝 国 大 学 教 授 であった 本 多 静 六 は 福 岡 市 の 大 濠 公 園 を 設 計 するついでに 大 分 の 鄙 びた 温 泉 地 由 布 院 を 訪 れ 視 察 の 後 にこの 地 の 発 展 策 を 講 演 している 大 正 13 年 のことであ る 今 や 有 名 になった 湯 布 院 の 記 念 すべき 出 来 事 として 語 り 継 がれている そ こからひと 山 越 えて 今 人 気 のナンバーワンの 温 泉 地 が 熊 本 県 南 小 国 の 黒 川 - 63 -

温 泉 である 100 万 人 の 来 訪 者 を 数 え この 町 は 景 観 でも 日 本 一 の 座 を 射 止 め た 美 しい 温 泉 郷 では ご 多 分 にもれず 定 住 人 口 は 減 少 傾 向 であるが 交 流 人 口 が 増 えて 活 気 に 満 ちている これは 美 活 同 源 の 好 例 である 黒 川 温 泉 郷 には 24 軒 の 旅 館 があって 合 言 葉 は 黒 川 一 旅 館 である 一 つひとつの 旅 館 は 部 屋 で 道 が 廊 下 という 捉 え 方 をして ふるさとの 自 然 暮 らし もてなし の 風 景 づくりを 続 けている 風 景 づくり 原 則 を 懐 かしさのスケール 暮 らし の 空 間 天 然 素 材 の 3 点 で 定 め デザインコードをつくり 街 づくり 協 定 を 制 定 して 取 り 組 から 20 年 が 経 過 した これが 温 泉 郷 に 止 まらず ここに 至 る 道 筋 の 田 園 風 景 にまで 広 がれば 本 物 である そのためには 広 義 の 地 産 地 消 で ある 基 本 は 風 景 を 醸 し 出 している 農 作 物 や 木 材 を 含 む 林 産 物 を 適 切 な 生 産 価 格 で 旅 館 や 訪 問 者 が 消 費 するスタイルを 定 着 させ 儲 かる 農 業 地 帯 にするこ とである 特 定 地 域 学 のススメ 美 しい 農 村 での 儲 かる 農 業 実 現 に 農 学 は 役 立 つか? これが 二 つ 目 の 関 心 事 である 東 京 農 大 での 後 半 の 10 年 間 は 新 しいパラダイム 地 域 環 境 科 学 での ランドスケープ 研 究 であった 時 あたかも 東 南 アジアからの 留 学 生 が 造 園 学 Landscape Architecture に 関 心 を 示 すことと 重 なった そこで 国 費 留 学 生 を 含 む 多 くの 外 国 人 院 生 を 抱 えることになり それまでとは 違 った 研 究 推 進 体 制 を 構 築 しなければならないことになった そこで 導 入 したのが 特 定 地 域 学 研 究 である これは 研 究 対 象 を 特 定 の 地 域 に 固 定 して 様 々な 手 法 で 解 きほぐすとい うものである 一 般 的 に 研 究 は 手 法 体 系 を 軸 に 進 められ 一 つの 研 究 室 に 属 する と 研 究 の 方 法 論 が 特 定 され がんじがらめになることが 多 い 確 かにこれも 一 つである しかし 研 究 を 通 じての 人 材 育 成 である 究 極 の 目 的 に 照 らすなら 色 々と 不 都 合 なこともある そこで 各 人 が 個 別 にまとめあげる 手 法 体 系 を 軸 とした 修 士 や 博 士 の 研 究 とは 別 に 共 同 プロジェクトとして 特 定 地 域 学 研 究 に 取 り 組 むことを 提 案 した その 対 象 に 私 の 郷 里 人 吉 盆 地 を 設 定 し 宿 泊 をは - 64 -

じめとする 活 動 の 拠 点 を 整 備 して 約 10 年 間 にわたり 試 行 した この 間 には 台 湾 韓 国 中 国 フィリピン メキシコ ブラジル ペルー モンゴル イ ンドネシア タイ 等 の 学 生 や 研 究 者 が 人 吉 盆 地 を 体 験 し 彼 らは 日 本 でのも う 一 つの 想 い 出 をつくり 母 国 に 帰 り 多 くは 教 育 研 究 者 となって 次 の 世 代 の 人 材 育 成 に 励 んでいる 昨 年 は 中 国 の 杭 州 と 大 連 に 一 昨 年 は 韓 国 のソウルと 水 原 に 国 際 会 議 のために 出 向 き 彼 らと 旧 交 を 温 めたが 思 い 出 話 の 多 くはこ の 体 験 であった ところで 私 は その 貴 重 な 経 験 をさせてくれた 東 京 農 大 を 退 職 し 平 成 18 年 4 月 に 法 人 化 した 熊 本 県 立 大 学 の 初 代 理 事 長 に 就 任 することになった 法 人 化 後 の 大 学 づくりで 真 っ 先 に 提 案 したのが 地 域 実 学 主 義 と 大 学 のスローガン 地 域 に 生 き 世 界 に 伸 びる である 熊 本 県 が 設 置 する 公 立 大 学 だから 地 域 貢 献 度 の 高 い 大 学 にするという 初 期 の 目 標 を 掲 げ 多 彩 に 学 問 し 十 分 な 研 究 体 験 を 積 んだ 有 為 な 人 材 を 養 成 しようと 意 図 した ちなみに 日 経 グローカルは 本 年 度 の 大 学 地 域 貢 献 度 ランキングの 第 一 位 として 熊 本 県 立 大 学 を 発 表 している さて 本 学 にも 10 年 前 に 環 境 共 生 学 部 が 創 設 され 水 産 系 や 農 学 系 の 教 員 がこ の 学 際 の 一 員 に 含 まれている 平 成 20 年 時 点 で 環 境 冠 学 部 は 全 国 に 51 大 学 あり これが 冠 学 科 となると 約 260 を 数 える まさに 環 境 系 学 問 の 爆 発 (?) である 学 部 単 位 で 見 たとき 国 立 大 学 に 4 学 部 公 立 に 12 学 部 私 立 に 35 学 部 が 開 設 されている 国 公 私 立 大 学 の 数 の 割 合 から 見 て 公 立 大 学 の 12 は 多 い これは 公 立 大 学 に 当 該 地 域 の 環 境 にかかわる 教 育 と 研 究 の 使 命 があるからであ ろう また 集 計 年 はずれるが 平 成 19 年 度 での 冠 学 科 256の 内 国 立 大 学 に 88 公 立 大 学 に 23 私 立 大 学 に 145 であり ここでは 国 立 大 学 の 88 学 科 が 目 を 引 く ここに 見 られるように 日 本 の 大 学 教 育 における 環 境 学 の 台 頭 は 大 学 の 地 域 貢 献 使 命 とも 密 接 し 環 境 学 イコール 地 域 学 的 色 彩 が 強 まっている 各 大 学 で 地 域 学 の 講 座 が 開 講 されるなど 地 域 学 活 動 が 盛 んになっている 地 域 学 のさき がけは 東 北 学 や 京 都 学 であるが 最 近 では 地 方 だけでなく 東 京 の 真 ん 中 でも - 65 -

千 代 田 学 や 渋 谷 学 が 聞 かれるようになった これらに 共 通 しているのは 地 域 の アイデンティティを 活 かした 研 究 への 挑 戦 これの 教 育 への 反 映 である そし てこれらが 全 国 一 律 の 地 域 づくりの 是 正 に 役 立 ち 地 域 への 貢 献 とも 映 って いる 地 域 という 言 葉 は きわめて 概 念 的 な 言 葉 であるため その 空 間 的 広 が りは 規 定 しにくいが 私 はある 特 性 を 持 ったまとまりのある 範 囲 として 捉 えて いる 人 吉 盆 地 は 不 知 火 海 に 流 れ 込 む 球 磨 川 の 流 域 で 一 定 のまとまりと 特 性 を 有 しているからここを 特 定 地 域 学 の 対 象 としたのだった これらの 範 囲 を 歩 き 眺 め 調 べ 分 析 し 考 察 する 営 みをみんなで 共 有 した その 際 井 の 中 の 蛙 大 海 を 知 らず では 困 るわけで 類 似 した 他 の 地 域 との 比 較 研 究 であるとか 全 く 対 照 的 な 地 域 との 比 較 考 察 が 必 要 となる 私 たちの 場 合 も 人 吉 盆 地 研 究 に 入 る 前 に 福 島 県 会 津 盆 地 での 調 査 研 究 経 験 があったことが 大 きかった いず れにしろ 特 定 地 域 学 研 究 は 幾 つもの 可 能 性 を 秘 めている 生 産 学 としての 農 学 に 止 まらず 生 活 学 としての 農 学 さらには 生 命 学 としての 農 学 へと 別 の 山 の 頂 が 見 えてくることにより 地 域 の 農 業 に 役 立 つ 農 学 になるのではないかと 思 う 儲 かる 農 業 は そのような 地 域 独 自 の 差 異 化 から 生 まれるのではないか 田 舎 を 持 たない 人 は 国 際 人 になれないというセリフをどこかで 聴 いた 記 憶 があ る 特 定 地 域 学 の 経 験 は そのことともつながろう この 体 験 により 情 報 収 集 のアンテナも 高 くなる 今 私 の 大 学 では 文 学 環 境 共 生 学 総 合 管 理 学 の 3 つの 学 部 横 断 で 天 草 プロジェクトに 取 り 組 んでいる 大 学 はもともと 学 部 が 単 位 として 作 られた 組 織 なので 学 部 自 治 や 学 部 モンローになりやすい 学 部 を 越 えた 学 問 連 携 があって 儲 かる 農 業 に 貢 献 できるのではないか 特 定 地 域 学 は そんな 舞 台 だと 思 う - 66 -