Ⅶ 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 点 検 と 劣 化 診 断
木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 -1 木 材 の 劣 化 に 関 する 基 本 事 項 1 木 材 の 劣 化 に 関 する 基 本 的 事 項 (1) 木 材 の 劣 化 とは 木 材 の 劣 化 とは 木 材 が 酸 素 紫 外 線 水 薬 品 生 物 などの 作 用 によって 本 来 の 色 強 さなどの 性 質 が 変 化 し 木 材 本 来 の 使 い 方 ができなくなること を 総 称 したものです 具 体 的 には 変 色 や 風 化 といった 表 面 劣 化 や 表 面 にとどまらず 木 材 の 内 部 まで 劣 化 す る 割 れ 腐 朽 食 害 が 主 に 挙 げられます (2) 木 造 建 築 木 質 化 建 築 で 傷 みやすい 部 分 木 材 が 傷 みやすい 特 に 腐 朽 や 食 害 による 劣 化 が 現 れやすいのは 以 下 の 条 件 にある 部 分 です 木 材 が 土 に 接 する 部 分 木 材 が 雨 さらしになっている 部 分 建 物 に 雨 水 がしみこんでくる 部 分 常 に 水 がかかる 部 分 湿 度 の 高 い 部 分 通 風 の 悪 い 部 分 (3) 劣 化 しやすい 木 材 製 材 を 用 いる 場 合 含 水 率 の 高 い 材 料 は 将 来 収 縮 反 り ねじれといった 変 形 割 れが 発 生 しやすくなります また 寒 冷 地 では 初 期 結 露 の 発 生 リスクが 高 まります 2 表 面 劣 化 の 要 因 現 象 内 外 装 材 として 木 材 を 使 用 する 場 合 表 面 劣 化 の 対 策 を 講 じる 必 要 があります (1) 表 面 劣 化 の 要 因 表 面 劣 化 の 要 因 は 以 下 のようにまとめられます ア 一 次 的 劣 化 要 因 : 太 陽 光 ( 紫 外 線 ) 気 温 雨 雪 ( 湿 気 ) 風 といった 気 象 的 因 子 イ 二 次 的 劣 化 要 因 : 腐 朽 菌 カビ 藻 虫 などの 発 生 などによる 生 物 的 因 子 光 酸 化 による 化 学 的 変 化 ほこりなど 空 気 中 浮 遊 物 による 摩 耗 など 物 理 的 因 子 (2) 様 々な 表 面 劣 化 ア 太 陽 光 ( 紫 外 線 )による 変 色 光 による 変 色 は 木 材 成 分 のリグニンが 光 劣 化 し 黄 変 色 し やがて 灰 色 化 します 例 え ば 古 い 新 聞 紙 が 黄 変 しているのは 光 変 色 が 生 じていることによります イ カビによる 変 色 カビによる 変 色 は 木 材 を 栄 養 源 とする 特 定 のカビ 類 によって 木 材 成 分 の 低 分 子 化 が 生 じることによる 表 面 変 色 です ウ 腐 朽 菌 の 繁 殖 による 変 色 腐 朽 菌 の 繁 殖 による 変 色 は 白 若 しくは 褐 色 に 変 化 します エ 藻 の 繁 殖 による 変 色 藻 の 繁 殖 による 変 色 は 藻 が 付 着 し 緑 色 に 変 化 します 98
Ⅶ 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 オ 鉄 汚 染 による 変 色 鉄 汚 染 による 変 色 は 鉄 により 黒 色 化 するもので 微 量 の 鉄 イオンが 木 材 中 のタンニン あるいは フェノール 性 成 分 と 反 応 することにより 生 じます カ 風 化 による 摩 耗 風 化 による 摩 耗 は 目 痩 せに 見 られるような 早 材 部 と 晩 材 部 に 凹 凸 差 が 生 じることで す 早 材 部 晩 材 部 樹 皮 の 内 側 には, 樹 木 を 太 らせる 細 胞 の 集 まり( 形 成 層 )があります 形 成 層 の 活 動 が 盛 んな 春 ~ 夏 に 形 成 された 早 材 (そうざい)の 仮 道 管 には 樹 木 が 成 長 するために 必 要 な 水 分 を 根 から 葉 へと 円 滑 に 移 動 させるため たくさんのすき 間 があいて いて 幅 が 広 くて 色 が 薄 いのが 特 徴 です 一 方 夏 ~ 秋 に 形 成 された 晩 材 (ばんざい)の 仮 道 管 は 壁 を 厚 く すき 間 を 少 なくする ことで 樹 木 自 身 の 重 みを 支 えています 幅 が 狭 く 濃 い 筋 のように 見 えます この 早 材 と 晩 材 の 差 が 年 輪 です 目 痩 せ 乾 燥 と 吸 湿 が 繰 り 返 されることにで 表 面 に 大 小 の 割 れを 生 じ 内 部 まで 劣 化 が 進 行 しま すが 早 材 の 柔 らかい 部 分 から 先 に 劣 化 が 進 行 するため 早 材 部 が 窪 み 相 対 的 に 晩 材 部 が 浮 き 上 がる 現 象 のことです 図 7-1 木 材 の 表 面 劣 化 に 影 響 する 要 因 ( 平 成 24 年 度 木 造 公 共 建 築 物 等 の 整 備 に 係 る 設 計 段 階 からの 技 術 支 援 報 告 書 より) 3 腐 朽 食 害 (1) 腐 朽 木 材 の 劣 化 のうち 特 に 注 意 しなければならないのは 腐 朽 で 菌 などの 微 生 物 によっ て 木 材 の 構 成 物 が 侵 される 生 物 的 現 象 です 表 面 汚 染 や 変 色 の 中 にも 生 物 的 現 象 はありますが 強 度 に 決 定 的 なダメージを 与 える 腐 朽 とは 区 別 して 考 えます 木 材 の 劣 化 に 関 与 する 菌 類 は4 種 類 ( 表 7-1)あり 図 7-2に 菌 の 種 類 による 木 材 強 度 の 低 下 の 度 合 いを 示 します 図 中 の 右 へいくほど 木 材 の 強 度 低 下 に 大 きな 影 響 を 及 ぼし きのこ 類 は 一 般 に 木 材 腐 朽 菌 と 言 われ 最 も 影 響 を 及 ぼします 木 材 腐 朽 菌 の 胞 子 は 人 間 の 目 には 見 えませんが 空 気 中 に 各 種 多 数 存 在 し 菌 の 生 育 条 件 が 与 えられたときに 木 材 上 で 発 芽 し 菌 糸 を 伸 ばしながら 木 材 中 に 侵 入 し 生 長 します 菌 の 生 育 条 件 には 栄 養 分 水 分 温 度 酸 素 の4つがあり 栄 養 分 は 木 材 を 構 成 する 糖 類 タンパク 質 など 水 分 は 湿 度 85%~99%の 高 湿 状 態 や 木 材 の 含 水 率 28% 以 上 など 99
温 度 は 気 温 5~40 の 範 囲 酸 素 は 大 気 中 への 暴 露 です 完 全 に 水 中 に 没 している 場 合 は 酸 素 をシャットアウトできるので 腐 りません バクテリア 類 カビ 類 軟 腐 朽 菌 類 きのこ 類 土 壌 水 中 などに 生 息 し 木 材 を 攻 撃 するが 劣 化 にはそれほど 影 響 はない 強 度 上 の 影 響 はないが 木 材 表 面 の 汚 染 によ り 変 色 させる 土 壌 水 中 などに 生 息 し 木 材 の 表 面 から 浅 い 部 分 を 軟 化 させる 子 実 体 と 呼 ばれるキノコを 作 って 木 材 に 寄 生 し 激 しく 木 材 を 腐 らせる 表 7-1 木 材 の 劣 化 に 関 与 する 菌 類 の 種 類 図 7-2 木 材 の 劣 化 に 関 与 する 菌 類 による 木 材 強 度 の 低 下 平 成 24 年 度 木 造 公 共 建 築 物 等 の 整 備 に 係 る 設 計 段 階 からの 技 術 支 援 報 告 書 ( 一 般 社 団 法 人 木 を 活 かす 建 築 推 進 協 議 会 ) ( 平 成 24 年 度 木 造 公 共 建 築 物 等 の 整 備 に 係 る 設 計 段 階 からの 技 術 支 援 報 告 書 より) (2) 食 害 建 築 物 の 木 材 の 食 害 には キクイムシに 代 表 される 甲 虫 類 によるものと シロアリによる 蟻 害 があります キクイムシの 類 いは 内 装 材 や 家 具 材 などの 乾 燥 材 に 孔 を 開 けて 産 卵 し 幼 虫 が 材 中 で 被 害 を 与 えます シロアリによる 食 害 は 主 にヤマトシロアリ イエシロアリによるものであり どちらも 市 内 に 分 布 します シロアリは 雑 食 で 木 材 以 外 にも 生 木 プラスチック ゴム 繊 維 類 皮 革 類 も 加 害 します ヤマトシロアリ イエシロアリは 木 材 腐 朽 菌 と 同 じく 湿 度 が 高 く 暖 かい 環 境 を 好 むため 対 策 についても 木 材 腐 朽 菌 に 近 いものとなります 一 方 市 内 でも 被 害 が 確 認 されている アメリカカンザイシロアリは 湿 潤 な 環 境 を 必 要 と せず 巣 を 木 材 中 に 作 るなど 在 来 のシロアリと 異 なる 生 態 のため 従 来 の 防 除 法 は 有 効 とは いえず 発 見 した 場 合 には 早 急 に 駆 除 を 行 います 4 維 持 管 理 等 に 配 慮 した 設 計 について 以 上 木 材 の 劣 化 に 関 する 基 本 事 項 について 述 べてきましたが 設 計 にあたっては 第 Ⅴ 章 木 造 化 に 向 けて 設 計 時 配 慮 すべき 事 項 3 耐 久 性 維 持 管 理 に 配 慮 した 部 位 別 設 計 チェックポイント を 参 照 してください 100
木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 -2 Ⅶ 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 事 例 による 経 年 変 化 と 維 持 管 理 木 造 建 築 物 及 び 木 質 化 した 建 築 物 における 経 年 変 化 と 維 持 管 理 上 の 事 例 を 以 下 に 紹 介 します 秋 田 県 横 手 市 立 栄 小 学 校 ( 築 後 18 年 ) 雨 がかからないように 軒 を 深 く 計 画 されたが 築 後 1 8 年 ということもあり 木 部 の 雨 のかか る 部 分 に 汚 れがあった 例 えば 廊 下 側 には 軒 の 出 が 900mm あるが 腰 壁 の 下 部 に 汚 れが 発 生 している 箇 所 があったり 雁 木 の 軒 垂 木 の 小 口 に 雨 が 掛 かり 汚 れが 発 生 している 箇 所 があったりした ( 写 真 7-1) 正 面 玄 関 の 隅 柱 は 二 方 向 から 雨 が 掛 かる 位 置 にあるため 劣 化 が 早 まったと 見 られ 柱 の 取 り 替 えを 行 っていた( 写 真 7-2 ) 雁 木 (1,818mm)+ 軒 の 出 (900mm)により 雨 が 掛 からない 壁 の 部 分 の 木 部 に 汚 れは 見 られ なかった( 写 真 7-3) メンテナンスが 必 要 となった 際 には その 都 度 対 応 することをしゅん 工 当 初 より 想 定 しており 想 定 の 範 囲 内 で 行 っているとのこと 鉄 筋 コンクリート 造 のように 急 に 大 きな 費 用 がかかること はないことが メリットであるとのことだった 廊 下 に 使 用 しているマツ 板 (t = 21mm)の 反 りや 暴 れについては 飛 び 出 した 部 分 を 削 って 対 応 していた ( 写 真 7-4) 写 真 7-1 雁 木 軒 先 写 真 7-2 正 面 玄 関 の 隅 柱 写 真 7-3 雁 木 写 真 7-4 廊 下 床 名 称 所 在 地 木 材 利 用 の 概 要 建 築 面 積 規 模 延 べ 面 積 階 数 構 造 木 材 構 造 材 利 用 内 装 材 主 な 使 用 樹 種 しゅん 工 年 横 手 市 立 栄 小 学 校 秋 田 県 横 手 市 木 造 2,951.26m2( 校 舎 ) 985.12m2( 屋 内 運 動 場 ) 2,773.88m2( 校 舎 ) 996.24m2( 屋 内 運 動 場 ) 地 上 2( 校 舎 屋 内 運 動 場 ) 地 下 1( 校 舎 ) 木 造 軸 組 工 法 一 部 RC 造 スギ76% アカマツ16% ヒバ6% - スギ アカマツ ヒバ 平 成 6 年 3 月 ( 校 舎 ) 平 成 7 年 1 月 ( 屋 内 運 動 場 ) 101
宮 城 県 栗 原 市 立 鶯 沢 小 学 校 ( 築 後 7 年 ) 北 西 の 庇 のない 外 壁 の 木 部 に 黒 カビのような 汚 れが 見 られた( 写 真 7-5) また 庇 のない 外 壁 の 木 部 の 上 部 で 塗 料 が 落 ち 始 めている 形 跡 があった( 写 真 7-6) しかし 庇 や 軒 が 少 しでもある 部 位 については 塗 装 の 色 がはっきりと 出 ており 問 題 は 見 当 たらなかった( 写 真 7-7 7-8) 外 壁 の 再 塗 装 などのメンテナンスは まだ 行 ったことがない 内 装 の 木 部 についても 費 用 をかけたメンテナンスは 行 っていない 日 常 の 床 の 清 掃 はモップによる 乾 拭 きを 行 い 年 に3 回 大 掃 除 の 際 に 水 拭 きを 行 う クラスによっては 児 童 用 の 木 製 の 机 や 椅 子 の 脚 に 布 を 巻 き 傷 や 引 きずり 音 を 軽 減 する 工 夫 を 行 っている 写 真 7-5 北 西 の 外 壁 写 真 7-6 外 壁 木 部 の 塗 料 落 ち 有 り 写 真 7-8 左 側 の 外 壁 は 軒 の 出 があり 塗 料 の 落 ち 無 し( 卓 越 風 の 風 下 に 当 たる ) 写 真 7-7 北 西 外 壁 に 隣 接 する 庇 下 の 外 壁 は 塗 料 の 落 ちはない 名 称 栗 原 市 立 鶯 沢 小 学 校 所 在 地 宮 城 県 栗 原 市 木 材 利 用 の 概 要 内 装 木 質 化 1,824.94m2( 校 舎 ) 建 築 面 積 17.10m2(ポンプ 室 ) 規 模 3,006.17m2( 校 舎 ) 延 べ 面 積 17.10m2(ポンプ 室 ) 地 上 2 階 数 地 下 構 造 鉄 筋 コンクリート 造 構 造 材 木 材 スギ47% ヒノキ11% スギ 合 板 4% 利 用 内 装 材 ナラ( 突 き 板 )34% サクラ( 突 き 板 )4% 主 な 使 用 樹 種 スギ しゅん 工 年 平 成 17 年 7 月 写 真 7-9 多 目 的 ホール 102
岩 手 県 一 関 市 立 萩 荘 小 学 校 ( 築 後 7 年 ) Ⅶ 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 柱 やはりなど 多 くの 構 造 体 は 素 材 のまま 現 しにしている 床 面 は 全 て 複 合 フローリングに ウレタン 塗 装 である 片 流 れ 屋 根 の 棟 側 部 分 の 木 部 で 塗 料 が 落 ち 始 めている 形 跡 があった この 部 位 は 他 の 部 位 に 比 較 して 雨 掛 かりが 多 いためだと 思 われる ( 写 真 7-10) 写 真 7-10 片 流 れ 屋 根 棟 部 名 称 一 関 市 立 萩 荘 小 学 校 所 在 地 岩 手 県 一 関 市 木 材 利 用 の 概 要 木 造 及 び 他 構 造 + 内 装 木 質 化 建 築 面 積 4,378.61m2( 校 舎 )1,564.84m2( 屋 内 運 動 場 ) 規 模 延 べ 面 積 5,931.74m2( 校 舎 多 目 的 室 ( 木 造 部 分 )353m2) 1,562.91m2( 屋 内 運 動 場 ) 階 数 地 上 2 地 下 混 構 造 構 造 木 造 ( 多 目 的 ホール) RC 造 ( 木 造 小 屋 組 ) S 造 ( 屋 内 運 動 場 ) 木 材 構 造 材 - 利 用 内 装 材 - 主 な 使 用 樹 種 しゅん 工 年 スギ ベイヒバ ベイツガ 平 成 17 年 3 月 熊 本 県 五 木 村 役 場 ( 築 後 11 年 ) 木 造 一 部 鉄 筋 コンクリート 造 の 混 構 造 である ホール 吹 き 抜 けに 面 した 部 分 の 通 し 柱 には 村 内 にある 国 有 林 のスギ 大 ばりには 県 有 林 のマツが 使 用 されている しゅん 工 後 1 年 で はりに 使 用 しているマツのねじれが 目 立 ってきたため 隙 間 が 見 えないように 枠 を 設 ける 補 修 を 行 った ( 写 真 7 11) 写 真 7-11 ねじれ 対 策 の 補 修 また 柱 等 の 割 れについて 指 が 入 るほどに 亀 裂 が 生 じていた 箇 所 は 一 部 樹 脂 で 埋 めるなどで 利 用 者 のけがの 防 止 のため 対 応 し た ( 写 真 7 12) 床 については 毎 日 モップがけを 年 に1 度 連 休 前 にワックスが けを 行 っている 五 木 村 は 霧 の 発 生 が 多 い 地 形 であり 湿 気 が 多 い 気 候 だが 庁 舎 外 装 については 今 のところ 問 題 は 発 生 していない ポーチ 独 立 屋 根 の 柱 が 風 雨 に 直 接 さらされていて 劣 化 が 進 んでいるが 独 立 屋 根 のため 改 修 については 大 きな 問 題 は 出 ていない ( 写 真 7-13) 写 真 7-12 柱 の 割 れ 写 真 7-13 ポーチ 独 立 屋 根 の 柱 名 称 所 在 地 木 材 利 用 の 概 要 五 木 村 役 場 熊 本 県 球 磨 郡 五 木 村 甲 字 下 手 2672 番 地 の7 木 造 一 部 RC 造 ( 内 装 木 質 化 ) 規 模 階 数 建 築 面 積 地 上 2 延 べ 面 積 地 下 2792.89m2 構 造 混 構 造 ( 木 造 一 部 RC 造 ) 木 材 構 造 材 - 利 用 内 装 材 主 な 使 用 樹 種 しゅん 工 年 スギ ヒノキ マツ 平 成 14 年 3 月 103
埼 玉 県 ときがわ 町 明 覚 小 学 校 ( 改 修 後 10 年 ) 都 幾 川 中 学 校 ( 改 修 後 3 年 ) 都 幾 川 公 民 館 ( 改 修 後 1 年 ) ときがわ 町 では 昭 和 40 年 代 頃 から 建 てられ た 学 校 建 築 は 老 朽 化 しており 建 替 えか 改 修 を しなければならなくなってきた 木 造 での 建 替 えを 選 択 すると 財 源 がないため 耐 震 補 強 をメインとした 改 修 を 行 うと 同 時 に 内 装 木 質 化 を 図 ることで 既 存 の 建 物 を 有 効 利 用 しながら 木 材 利 用 も 図 る 取 組 が 推 進 されて きた 木 材 の 劣 化 の 原 因 を 水 によるものと 判 断 し たときがわ 町 では 水 拭 きでの 掃 除 も 止 め 当 初 水 拭 きを 行 っていた 明 覚 小 学 校 では から 拭 きでのメンテナンスに 変 更 することとした 使 用 時 における 水 かかりには 注 意 しており 水 回 りにはマットを 敷 いて 水 かかりの 対 策 と している ( 写 真 7-14) 明 覚 小 学 校 では 水 がかかった 床 の 劣 化 が 進 んでいたため 調 査 前 年 1mm 程 度 研 磨 し 再 塗 装 を 施 している ( 写 真 7-15) メンテナンスに 配 慮 して 計 画 したこととして 床 には 集 成 材 を 使 用 していることが 挙 げられる これにより 目 地 をなくし 砂 やほこりのつま りを 防 ぐことができ また 無 垢 材 よりも 表 面 の 傷 に 対 して 強 いと 言 える( 写 真 7-16 都 幾 川 公 民 館 は 事 務 室 として 利 用 しているが 目 立 った 傷 や 破 損 は 見 られない ) 写 真 7-14 水 回 りのマット( 都 幾 川 中 学 校 ) 写 真 7-15 再 塗 装 後 の 廊 下 ( 明 覚 小 学 校 ) 写 真 7-16 集 成 材 の 床 ( 都 幾 川 公 民 館 事 務 室 ) 名 称 所 在 地 木 材 利 用 の 概 要 規 模 階 数 木 材 利 用 明 覚 小 学 校 都 幾 川 中 学 校 都 幾 川 公 民 館 埼 玉 県 比 企 郡 ときがわ 町 大 字 関 堀 ときがわ 町 大 字 桃 木 ときがわ 町 大 字 桃 木 内 装 木 質 化 内 装 木 質 化 内 装 木 質 化 建 築 面 積 868m2 1,030m2 454.32m2 延 べ 面 積 2,444m2 2,967m2 1,301.28m2 地 上 3 3 3 地 下 構 造 鉄 筋 コンクリート 造 鉄 筋 コンクリート 造 鉄 筋 コンクリート 造 構 造 材 - - - 内 装 材 ヒノキ スギ ヒノキ スギ ヒノキ 平 成 14 年 9 月 平 成 21 年 9 月 平 成 24 年 3 月 主 な 使 用 樹 種 しゅん 工 年 104
点 検 と 劣 化 診 断 Ⅶ 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 点 検 部 位 と 劣 化 診 断 について 記 載 しましたので 参 考 にしてください 1 点 検 部 位 木 造 建 築 物 で 問 題 となる 部 位 別 の 劣 化 や 不 具 合 現 象 は 以 下 のとおりです (1) 木 部 : 干 割 れ 蟻 害 腐 朽 など (2) 屋 外 使 用 等 の 集 成 材 : 接 着 層 のはく 離 ( 屋 外 使 用 限 定 の 現 象 ) それによる 強 度 劣 化 など (3) 木 部 の 表 面 塗 装 :はがれ 白 亜 化 など (4) 金 物 類 : 防 錆 塗 装 メッキ 層 の 劣 化 鋼 材 部 の 腐 蝕 など (5) 接 合 部 : 緩 み はずれ 変 形 など (6) 異 種 材 料 間 の 界 面 : 結 露 隙 間 の 発 生 など (7) 建 具 周 り: 不 具 合 2 劣 化 診 断 診 断 種 別 ごとの 点 検 項 目 点 検 方 法 診 断 基 準 対 応 措 置 を 以 下 に 示 します (1) 木 部 の 割 れ 診 断 接 合 部 の 割 れ( 小 屋 組 床 組 露 出 木 部 ) 目 視 及 び 隙 間 ゲージによる 計 測 ア 接 合 部 の 軽 微 な 割 れ 経 過 観 察 イ 接 合 部 の 過 半 の 割 れ 補 修 又 は 部 材 交 換 (2) 腐 朽 診 断 断 面 欠 損 が2 割 程 度 までで 収 まっていれば 表 面 的 な 補 修 や 水 分 を 避 けるための 環 境 改 善 を 行 い 2 割 を 超 える 場 合 は 部 材 交 換 を 検 討 するものとします ア 腐 朽 診 断 の 重 点 的 な 点 検 個 所 は 以 下 のような 部 位 があげられます (ア) 外 壁 開 口 部 回 り 軒 回 り 水 回 り 1 階 床 組 外 部 バルコニーなどの 水 が 滞 留 しや すい 箇 所 (イ) 木 口 面 に 水 が 作 用 しやすい 部 材 ( 柱 脚 部 母 屋 垂 木 端 部 など) (ウ) 水 平 部 材 の 上 部 あるいは 下 部 で 水 が 滞 留 しやすい 箇 所 ( 外 部 バルコニー 床 手 す り 材 など) (エ) 下 部 にコンクリートなどの 抱 湿 材 料 が 接 触 する 部 位 イ 診 断 は 目 視 打 診 触 診 圧 入 によって 行 い 腐 朽 のレベルは 下 記 の(ア)~(オ)の5 段 階 で 評 価 します (ア) 建 物 全 体 に 劣 化 の 兆 候 も 被 害 も 一 切 無 い 健 全 (イ) 劣 化 の 兆 候 はあるが 触 診 圧 入 目 視 による 明 確 な 被 害 が 確 認 できない 要 環 境 改 善 + 経 過 観 察 (ウ) 明 確 な 被 害 は 見 られるものの 局 所 的 かつ 断 面 の 20% 程 度 以 内 である 要 部 材 補 修 + 要 環 境 改 善 (エ) 明 確 な 被 害 が 部 材 の 大 半 に 見 られ その1 箇 所 以 上 に 材 表 面 から 辺 長 の 20% 以 上 に 達 する 被 害 がある 要 部 材 交 換 + 要 環 境 改 善 105
(オ) 明 確 な 劣 化 の 兆 候 があるが 仕 上 げ 材 などで 覆 われていて 直 接 木 部 を 確 認 できない 要 精 密 診 断 + 要 環 境 改 善 ( 建 物 所 有 者 に 了 解 を 得 て 仕 上 げ 材 を 剝 さなければ 被 害 の 有 無 は 判 定 不 可 能 ) (3) 蟻 害 診 断 点 検 方 法 診 断 基 準 対 応 措 置 は 腐 朽 診 断 と 同 様 とします 蟻 害 診 断 の 重 点 的 な 点 検 個 所 は 以 下 のような 部 位 があげられます ア 敷 地 回 り( 伐 根 垣 根 木 杭 木 材 片 など) イ 基 礎 回 り( 基 礎 立 ち 上 がり 部 ) ウ 外 壁 回 り( 北 側 外 壁 樋 回 り 開 口 部 回 りなど) エ 床 回 り( 振 動 床 鳴 り 傾 斜 などがある 箇 所 など) オ 水 回 り( 仕 上 げにひび 割 れがある 箇 所 など) カ 小 屋 裏 天 井 回 り( 特 に イエシロアリ アメリカカンザイシロアリに 対 して) (4) 集 成 材 のはく 離 診 断 乾 湿 の 影 響 を 受 けやすい 箇 所 柱 脚 部 接 合 部 空 調 の 吹 き 出 し 口 屋 外 露 出 部 等 の 集 成 材 の 接 着 層 のはく 離 を 目 視 や 隙 間 ゲージによる 計 測 によって 点 検 します ア はく 離 がない 健 全 イ 一 部 に 深 さが 材 幅 の1 割 未 満 のはく 離 がある 経 過 観 察 ウ 深 さが 材 幅 の2 割 未 満 のはく 離 がある 経 過 観 察 の 上 進 行 性 の 場 合 は 要 精 密 診 断 エ 明 瞭 なはく 離 が 材 中 央 部 にあり 深 さが 材 幅 の1/2 未 満 のもの 専 門 家 による 精 密 診 断 の 上 補 修 をするなど 進 行 を 止 める 措 置 を 取 る オ 上 記 の 状 態 で 深 さが 材 幅 の1/2 以 上 のもの 専 門 家 による 精 密 診 断 の 上 構 造 耐 力 に 影 響 するか 検 討 し 必 要 があれば 補 強 あ るいは 部 材 交 換 を 行 う (5) 屋 外 木 部 の 塗 装 部 の 診 断 塗 装 部 の 劣 化 には 塗 膜 表 面 の 劣 化 及 び 塗 膜 自 体 の 劣 化 の 2 種 類 があります ア 塗 膜 表 面 の 劣 化 目 視 や 触 診 により 点 検 を 行 います 汚 れや 変 退 色 が 顕 著 に 認 められたり 白 亜 化 により 粉 状 物 が 顕 著 に 付 いたりする 場 合 は 清 掃 の 上 重 ね 塗 りなどの 措 置 で 補 修 を 行 います イ 塗 膜 自 体 の 劣 化 目 視 により 点 検 を 行 います 欠 損 ふくれ 剝 がれ ひび 割 れ 等 が 顕 著 に 認 められる 場 合 は 早 急 に 塗 り 替 えなどの 措 置 を 行 います (6) 接 合 金 物 の 腐 食 診 断 目 視 や 触 診 により 点 検 を 行 います 金 物 の 表 面 的 局 部 的 な 腐 食 で 止 まっている 場 合 は 経 過 観 察 とし 著 しい 腐 食 が 認 めら れる 場 合 は 金 物 腐 食 診 断 を 実 施 します (7) 接 合 金 物 の 塗 膜 劣 化 診 断 金 物 の 塗 膜 の 劣 化 は 塗 膜 表 面 だけの 劣 化 の 場 合 塗 膜 内 部 まで 劣 化 が 進 行 している 場 合 下 地 まで 劣 化 している 場 合 の 三 段 階 に 分 けることができます 106
Ⅶ 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 目 視 触 診 により 点 検 を 行 うこととし その 診 断 基 準 及 び 対 応 措 置 は 以 下 の 通 りです ア 塗 膜 表 面 の 劣 化 : 汚 れ 変 退 色 光 沢 低 下 白 亜 化 白 化 清 掃 の 実 施 イ 塗 膜 内 部 の 劣 化 : 膨 れ 割 れ 剝 がれ 補 修 ウ 下 地 を 含 む 劣 化 : 腐 食 (6) 接 合 金 物 の 腐 食 診 断 へ (8) 全 部 位 の 金 物 の 防 錆 塗 装 層 の 腐 食 診 断 金 物 のさびは 放 置 すると 接 合 部 耐 力 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすため 異 常 が 見 られる 場 合 は 早 めに 措 置 を 施 します 目 視 や 触 診 により 防 錆 塗 装 にふくれ 剝 がれ 割 れ 白 亜 化 といった 変 質 が 無 いかを 点 検 します 診 断 基 準 及 び 対 応 措 置 は 以 下 の 通 りです ア 防 錆 層 に 変 質 が 認 められない 健 全 ただし 塗 膜 面 に 異 常 が 認 められる 場 合 は 塗 膜 補 修 を 行 います イ 局 部 的 な 防 錆 層 のさびが 認 められる 部 分 的 補 修 局 部 的 なさびは 結 露 水 雨 水 などの 何 らかの 水 分 が 関 与 している 場 合 が 多 いため 早 急 な 補 修 が 必 要 であると 同 時 に 漏 水 原 因 の 除 去 に 努 めます ウ 全 面 にわたる 防 錆 層 のさびが 認 められる 全 面 補 修 エ 素 地 面 にさびが 生 じている 金 物 の 交 換 一 般 に 鋼 材 の 寿 命 は 表 面 防 錆 被 膜 が 無 くなった 段 階 をいい 交 換 が 必 要 となります (9) 金 物 接 合 部 の 変 状 診 断 製 材 を 使 用 した 場 合 は 乾 燥 収 縮 により 緩 みが 必 ず 発 生 するため 増 し 締 めが 必 要 となり ます 金 物 の 緩 み 欠 落 はずれ 部 材 と 金 物 間 の 隙 間 等 を 目 視 や 触 診 ゲージを 用 いた 計 測 に より 点 検 します 重 点 的 な 点 検 箇 所 は 柱 基 礎 柱 横 架 材 横 架 材 小 ばり 筋 交 い 端 部 アーチ 脚 部 基 礎 アーチ 頂 部 継 ぎ 手 部 分 です 診 断 基 準 及 び 対 応 措 置 は 以 下 の 通 りです ア ボルトの 緩 みがある 増 し 締 め イ 欠 落 がある 欠 落 の 原 因 を 探 るとともに 再 取 り 付 け ウ はずれている はずれの 原 因 を 探 るとともに 再 取 り 付 け エ 隙 間 にゲージが 簡 単 に 入 る 補 修 隙 間 に 鋼 板 などを 挿 入 し 接 合 具 の 締 め 直 し を 行 います 木 材 利 用 に 係 る 維 持 管 理 については 平 成 23 年 度 林 野 庁 補 助 事 業 木 造 公 共 建 築 物 等 の 整 備 に 係 る 設 計 段 階 からの 技 術 支 援 報 告 書 ( 一 般 社 団 法 人 木 を 活 かす 建 築 推 進 協 議 会 ) より 引 用 さ せていただきました 107
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