小 川 報 告 では 当 初 の 報 告 予 定 のタイトルが 変 更 され 今 回 のテーマである 生 殖 補 助 医 療 をめぐる 法 的 問 題 を 理 解 する 前 提 として 総 論 的 観 点 から 生 殖 補 助 医 療 全 般 と 日 本 の 家 族 親 子 関 係 の 法 の 問



Similar documents
為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程


発 覚 理 由 違 反 態 様 在 日 期 間 違 反 期 間 婚 姻 期 間 夫 婦 間 の 子 刑 事 処 分 等 1 出 頭 申 告 不 法 残 留 約 13 年 9 月 約 9 年 11 月 約 1 年 10 月 2 出 頭 申 告 不 法 入 国 約 4 年 2 月 約 4 年 2 月 約

- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

公文書非公開決定処分に関する諮問について(答申)

●幼児教育振興法案

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

児童扶養手当(大阪府)

4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果


安 芸 太 田 町 学 校 適 正 配 置 基 本 方 針 の 一 部 修 正 について 1 議 会 学 校 適 正 配 置 調 査 特 別 委 員 会 調 査 報 告 書 について 安 芸 太 田 町 教 育 委 員 会 が 平 成 25 年 10 月 30 日 に 決 定 した 安 芸 太 田

資料1:勧告の仕組みとポイント 改【完成】

Taro-07-1提言概要.jtd

参 考 様 式 再 就 者 から 依 頼 等 を 受 けた 場 合 の 届 出 公 平 委 員 会 委 員 長 様 年 月 日 地 方 公 務 員 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 261 号 ) 第 38 条 の2 第 7 項 規 定 に 基 づき 下 記 のとおり 届 出 を します この

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

入札公告 機動装備センター

tokutei2-7.xls

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

(2) 保 育 料 等 減 免 措 置 に 関 する 調 書 (3) 地 方 税 法 ( 昭 和 25 年 法 律 第 226 号 ) 第 5 条 第 2 項 第 1 号 に 規 定 する 市 町 村 民 税 の 課 税 の 状 況 を 証 明 する 書 類 又 は 生 活 保 護 法 ( 昭 和

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

スライド 1

異 議 申 立 人 が 主 張 する 異 議 申 立 ての 理 由 は 異 議 申 立 書 の 記 載 によると おおむね 次 のとおりである 1 処 分 庁 の 名 称 の 非 公 開 について 本 件 審 査 請 求 書 等 について 処 分 庁 を 非 公 開 とする 処 分 は 秋 田 県

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

自衛官俸給表の1等陸佐、1等海佐及び1等空佐の(一)欄又は(二)欄に定める額の俸給の支給を受ける職員の占める官職を定める訓令

<4D F736F F D F582CC88E78E998B788BC C98AD682B782E92E646F63>

学校安全の推進に関する計画の取組事例

財政再計算結果_色変更.indd

Microsoft Word - 答申第143号.doc

Q1 4 月 から 児 童 手 当 の 支 給 額 はどうなるのですか? Q2 児 童 手 当 には 所 得 制 限 が 設 けられるとのことですが 具 体 的 な 基 準 はどのよう になるのですか? Q3 4 月 以 降 児 童 手 当 を 受 け 取 るためには 手 続 きが 必 要 ですか?

2 積 極 的 な 接 種 勧 奨 の 差 し 控 え 国 は 平 成 25 年 4 月 から 定 期 接 種 化 したが ワクチン 接 種 との 関 連 を 否 定 できない 持 続 的 な 痛 みなどの 症 状 が 接 種 後 に 見 られたことから 平 成 25 年 6 月 定 期 接 種 と

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

m07 北見工業大学 様式①

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

平成24年度開設予定大学院等一覧(判定を「不可」とするもの)

Microsoft Word - y doc

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

1 学 部 ( 短 大 含 む) 高 専 専 修 学 校 専 門 課 程 1 世 帯 人 員 世 帯 人 員 は 本 人 を 含 む 同 一 生 計 を 営 む 世 帯 の 人 数 のことです 世 帯 の 人 数 を 入 力 してください 住 民 票 上 の 別 世 帯 であっても 同 一 生 計

第2分野 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革

1

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

Microsoft Word 差替_【900】(旧69)「交代」120111CL.docx

給 与 所 得 控 除 控 除 額 の 計 算 については 次 のとおりです 給 与 等 の 収 入 金 額 給 与 所 得 控 除 額 180 万 円 以 下 の 場 合 180 万 円 を 超 え 360 万 円 以 下 の 場 合 360 万 円 を 超 え 660 万 円 以 下 の 場 合

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

Microsoft Word - 02第3期計画(元データ).doc

2. 当 初 の 目 的 と 現 状 コア 会 議 の 役 割 目 的 現 状 分 析 マネジメント 会 議 の 運 営 や あり 方 問 題 取 り 組 みにつ いての 議 論 会 員 からの 意 見 の 吸 い 上 げ と 内 容 の 各 会 議 への 振 り 分 け 全 体 会 運 営 会 議

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

届 届 火 葬 費 補 助 金 町 内 に 住 所 を 有 するかたが 死 亡 ( 死 産 も 含 む)し 火 葬 の 許 可 を 受 け 火 葬 をした 場 合 に 申 請 により 火 葬 料 を 補 助 します なお 平 成 28 年 3 月 までに 許 可 された 分 の 申 請 は 従 前

資料2-2 定時制課程・通信制課程高等学校の現状

 

別 紙

III. 前 述 の 如 く 医 学 部 新 設 を 容 認 している 訳 ではないが 国 家 戦 略 特 区 による 医 学 部 新 設 については 国 会 答 弁 で 確 約 している 様 に 平 成 27 年 7 月 31 日 付 け 国 の 方 針 に 厳 格 に 従 う 事 を 求 める

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

2 前 項 前 段 の 規 定 にかかわらず 年 俸 制 教 職 員 から 申 し 出 があった 場 合 においては 労 使 協 定 に 基 づき その 者 に 対 する 給 与 の 全 額 又 は 一 部 を 年 俸 制 教 職 員 が 希 望 する 金 融 機 関 等 の 本 人 名 義 の 口

<4D F736F F D C482C682EA817A89BA90BF8E7793B1834B A4F8D91906C8DDE8A A>

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

<4D F736F F D CF322D33817A95DB8CEC8ED292B28DB881698A6D816A2E646F63>

4 乙 は 天 災 地 変 戦 争 暴 動 内 乱 法 令 の 制 定 改 廃 輸 送 機 関 の 事 故 その 他 の 不 可 抗 力 により 第 1 項 及 び 第 2 項 に 定 める 業 務 期 日 までに 第 1 条 第 3 項 の 適 合 書 を 交 付 することができない 場 合 は

2 条 例 の 概 要 (1) 趣 旨 この 条 例 は 番 号 利 用 法 第 9 条 第 2 項 に 基 づく 個 人 番 号 の 利 用 に 関 し 必 要 な 事 項 を 定 めます (2) 定 義 この 条 例 で 規 定 しようとする 用 語 の 意 義 は 次 のとおりです 1 個 人

Taro-01 議案概要.jtd

18 国立高等専門学校機構

とする (1) 多 重 債 務 や 過 剰 債 務 を 抱 え 返 済 が 困 難 になっている 人 (2) 債 務 整 理 を 法 律 専 門 家 に 依 頼 した 直 後 や 債 務 整 理 途 上 の 人 (3) 収 入 よりも 生 活 費 が 多 くお 金 が 不 足 がちで 借 金 に 頼

(2) 勤 続 5 年 を 超 え 10 年 までの 期 間 については 勤 続 期 間 1 年 につき 本 俸 月 額 の100 分 の140 (3) 勤 続 10 年 を 超 え 20 年 までの 期 間 については 勤 続 期 間 1 年 につき 本 俸 月 額 の100 分 の180 (4)

<81696D373188A E58A77816A E93788D9191E5834B C8EAE82502E786C73>

資料2 利用者負担(保育費用)

<4D F736F F D CC E82CC8E9E89BF955D89BF82CC8AEE8F E20322E32202E646F63>

二 資本金の管理

Ⅰ 総論

平成21年10月30日

工 事 名 能 代 南 中 学 校 体 育 館 非 構 造 部 材 耐 震 改 修 工 事 ( 建 築 主 体 工 事 ) 入 札 スケジュール 手 続 等 期 間 期 日 期 限 等 手 続 きの 方 法 等 1 設 計 図 書 等 の 閲 覧 貸 出 平 成 28 年 5 月 24 日 ( 火

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

25 年 度 アクションプラン 補 助 制 度 目 標 定 住 人 口 :198 人 増 1 九 州 大 学 学 生 への 電 動 バイクレンタル 事 業 学 研 都 市 づくり 課 進 学 糸 島 市 内 に 居 住 する 九 州 大 学 の 学 生 に 民 間 業 者 と 連 携 し て 電 動

Taro13-公示.jtd

役員退職金支給規程

文化政策情報システムの運用等

< F2D819A8B638E968E9197BF82528E968BC68C7689E68F C>

<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

川越市幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

< E8BE08F6D2082C682B DD2E786C7378>

工 事 名 渟 城 西 小 学 校 体 育 館 非 構 造 部 材 耐 震 改 修 工 事 ( 建 築 主 体 工 事 ) 入 札 スケジュール 手 続 等 期 間 期 日 期 限 等 手 続 きの 方 法 等 1 設 計 図 書 等 の 閲 覧 貸 出 平 成 28 年 2 月 23 日 ( 火

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

幼 稚 園 教 育 と 小 学 校 教 育 との 連 続 性 幼 稚 園 における 教 育 は 義 務 教 育 就 学 前 の 教 育 として 極 めて 重 要 な 役 割 を 担 っ ていることから 子 どもの 発 達 の 連 続 性 を 踏 まえ 小 学 校 教 育 との 連 続 性 を 意 識

職 員 退 職 手 当 支 給 規 程 平 成 15 年 10 月 1 日 規 程 第 号 改 正 平 成 17 年 1 月 31 日 規 程 第 17-1 号 改 正 平 成 20 年 12 月 22 日 規 程 第 号 改 正 平 成 22 年 3 月 18 日 規 程

主要生活道路について

Transcription:

小 川 富 之 ( 近 畿 大 学 法 学 部 教 授 ) アジアの 家 族 法 の 視 点 から 見 た 生 殖 補 助 医 療 の 問 題 について 生 殖 補 助 医 療 大 国 である 日 本 は 生 殖 補 助 医 療 法 制 ( 規 制 および 親 子 ) 後 進 国 である 生 殖 補 助 医 療 の 研 究 や 技 術 それを 提 供 する 医 療 機 関 の 数 などは 世 界 ナンバーワンであり その 医 療 を 求 める 人 の 数 も 世 界 の 国 々の 中 で 最 も 多 い 国 の 一 つであるが それにかかわる 法 制 度 が 整 備 されておらず 無 法 地 帯 に 近 い 状 態 であるといえる このような 日 本 の 現 状 を 踏 まえた 上 で アジアに 視 点 を 転 じて この 問 題 を 検 討 したい 特 に 日 本 からアジアの 国 々に 生 殖 補 助 医 療 の 実 施 を 求 めて 出 かける 人 々の 問 題 と それぞれの 国 でのこの 問 題 に 対 してどのような 法 的 対 応 がなされているかについて 考 えてみたい 伊 藤 弘 子 ( 愛 知 学 院 大 学 非 常 勤 講 師 ) 日 本 人 を 生 物 学 上 の 父 母 としてインドで 代 理 出 産 された 子 の 法 的 取 扱 い 2008 年 夏 に 日 本 人 を 父 としてインドで 代 理 出 生 した 女 児 マンジちゃんの 事 件 が 契 機 となり 日 本 でもイ ンドが 生 殖 ツーリズムの 最 前 線 であり 比 較 的 手 が 届 きやすい 現 実 の 問 題 として 海 外 での 代 理 出 産 が 認 識 されるようになった マンジちゃんの 事 件 は 日 本 国 際 私 法 上 もインド 家 族 法 上 も 母 子 関 係 を 特 定 する ことができず 双 方 の 国 において 代 理 出 産 子 に 係 わる 法 整 備 が 急 務 であることを 知 らしめた 特 に 生 殖 ツーリズムが 急 成 長 しているインドでは 大 きな 気 運 となり 初 めての 生 殖 補 助 医 療 規 制 法 案 が 成 立 しようとしている この 報 告 はインドにおける 代 理 出 産 に 係 わる 法 規 制 の 動 向 を 概 観 し 次 いで 日 本 人 を 依 頼 者 としてインドで 出 生 する 代 理 出 生 子 の 親 子 関 係 および 国 籍 について 日 本 の 国 際 私 法 及 び 改 正 後 の 国 籍 法 の 立 場 で 把 握 しようとするものである 梅 澤 彩 ( 摂 南 大 学 法 学 部 講 師 ) 日 本 における 代 理 懐 胎 の 現 状 と 課 題 - 法 的 親 子 関 係 を 中 心 に- 日 本 においては 代 理 懐 胎 をはじめとする 生 殖 補 助 医 療 に 関 する 法 政 策 の 構 築 整 備 は 遅 々として 進 んでおらず 医 療 の 場 における 事 実 が 先 行 し 社 会 はこれを 容 認 するという 現 状 がある そこで 本 報 告 では 代 理 懐 胎 における 法 的 親 子 関 係 をめぐる 判 例 日 本 学 術 会 議 生 殖 補 助 医 療 の 在 り 方 検 討 委 員 会 の 代 理 懐 胎 を 中 心 とする 生 殖 補 助 医 療 の 課 題 - 社 会 的 合 意 に 向 けて- (2008 年 4 月 )を 契 機 として 代 理 懐 胎 における 子 の 法 的 地 位 ( 法 的 親 子 関 係 の 確 立 子 の 出 自 を 知 る 権 利 )を 中 心 に その 現 状 と 課 題 を 整 理 検 討 したい

小 川 報 告 では 当 初 の 報 告 予 定 のタイトルが 変 更 され 今 回 のテーマである 生 殖 補 助 医 療 をめぐる 法 的 問 題 を 理 解 する 前 提 として 総 論 的 観 点 から 生 殖 補 助 医 療 全 般 と 日 本 の 家 族 親 子 関 係 の 法 の 問 題 点 について 論 じられた 報 告 では 生 殖 補 助 医 療 をめぐる 近 年 の 状 況 や 将 来 的 展 望 を 概 観 したあと 法 的 親 子 関 係 を 理 解 する 上 で 重 要 な 民 法 772 条 を 中 心 とし 母 子 関 係 父 子 関 係 の 成 立 について 民 法 が 前 提 としている 男 女 間 の 婚 姻 を 前 提 とした 親 子 関 係 は 現 在 の 世 相 と 必 ずしも 合 致 しているとは 言 えないことが さまざまな 事 例 を 挙 げて 説 明 がされた 772 条 の 規 定 では 婚 姻 届 を 出 してから 200 日 以 上 経 って 生 まれれば それは 法 的 に 夫 婦 の 子 ど もとなるが 婚 姻 届 を 出 して 200 日 経 たないうちに 生 まれてしまったら 生 まれてきた 子 どもの 身 分 や 親 子

関 係 はどうなるのか 婚 姻 に 対 する 考 え 方 や 婚 姻 の 在 り 方 が 多 様 化 する 中 で 知 らないうちに 法 的 問 題 の 渦 中 に 入 り 込 んでしまう 状 況 が 具 体 的 事 例 を 元 に 紹 介 された それは 生 殖 補 助 医 療 とのかかわりにおいても 同 様 であり 性 関 係 なくして 子 を 持 つことが 可 能 となるため 代 理 懐 胎 により 分 娩 者 を 母 とする 原 則 が 崩 れること 性 同 一 性 障 害 の 治 療 のため 性 別 適 合 手 術 を 受 けたカッ プルによる 技 術 利 用 の 問 題 AID のケースにおける 父 子 関 係 をめぐる 争 いなど 後 の 報 告 を 理 解 するのに 資 す る 形 で 重 要 な 法 的 論 点 が 提 示 された 続 いて 梅 澤 報 告 日 本 における 代 理 懐 胎 の 現 状 と 課 題 - 法 的 親 子 関 係 を 中 心 に- では 報 告 後 主 に 以 下 のような 質 疑 応 答 が 行 われた

まず 2008 年 4 月 の 日 本 学 術 会 議 の 報 告 書 で 分 娩 者 = 母 ルールが 確 認 されたが 依 頼 した 人 が 母 親 とい う議 論 は 出 なかったのか という 質 問 がされた これに 対 しては 報 告 者 から 代 理 懐 胎 が 問 題 となった 最 初 の 時 期 には 依 頼 者 がなぜ 母 となれないのか そもそも 依 頼 者 がいなければ 子 どもは 生 まれなかったのだから 依 頼 者 = 母 で 良 いではないかという 主 張 が 強 くあったが 学 術 会 議 では 従 来 有 力 であった 分 娩 者 = 母 ルール が 前 提 で 議 論 が 進 んでいた 事 情 が 語 られた その 話 を 受 け 小 川 報 告 者 から この 議 論 は 代 理 懐 胎 代 理 出 産 をどこまで 許 すかという 議 論 にもつながっていく という 指 摘 があり 現 に 日 本 人 依 頼 者 の 多 くが 法 律 上 の 父 母 となれる 国 地 域 で 代 理 懐 胎 を 実 施 し これにより 生 まれた 子 どもを 日 本 に 連 れ 帰 り その 子 が 嫡 出 子 と して 扱 われている 事 実 がある 一 方 国 内 での 代 理 懐 胎 については 分 娩 者 = 母 ルールで 養 子 縁 組 によって 親 子 関 係 を 作 ることになるのは ダブルスタンダードとなり 不 公 平 ではないかというコメントがされた さらにその 議 論 を 受 け 委 員 の 中 でも 専 攻 分 野 によって 考 え 方 に 違 いはあるのか という 質 問 がされ 報 告 者 からは 学 術 会 議 の 委 員 会 においても 委 員 によって 価 値 観 はバラバラで 代 理 懐 胎 を 認 めるか 認 めないか でも 見 解 が 分 かれており 提 言 も 大 雑 把 な 形 でまとめざるを 得 なかったのではないかという 背 景 が 説 明 された そのような 価 値 観 の 相 違 や 見 解 の 相 違 が 議 論 になって 政 治 的 な 判 断 に 反 映 されると 意 義 があるのではな いか という 意 見 については 報 告 者 もそれに 同 意 した 上 で 国 民 の 意 識 としてはアンケート 調 査 の 結 果 から 代 理 懐 胎 容 認 の 流 れがあるが 一 般 論 としての 意 見 と 自 身 がどう 振 る 舞 うかという 行 動 の 間 には 落 差 があるこ とや 代 理 懐 胎 によって 引 き 起 こされる 様 々な 問 題 について 必 ずしも 十 分 理 解 した 上 で 容 認 しているわけで はないという 現 状 が 指 摘 された 続 いて 代 理 懐 胎 の 場 合 配 偶 子 提 供 と 異 なり 子 どもに 遺 伝 物 質 を 提 供 しているわけではないので 代 理 懐 胎 において 提 供 者 を 知 ることは 本 当 に 子 どもの 利 益 になるのか という 質 問 がされた これに 対 して 報 告 者 は 子 どもが 実 際 に 自 分 がどうやってこの 家 庭 に 来 たのかを 知 りたいという 欲 求 を 抱 くことはあり 子 ども が 大 きくなり それを 知 りたくなったときに この 家 庭 には 何 か 秘 密 がある と 子 どもが 怪 しんでしまうと すれば それは 必 ずしも 子 どもの 利 益 にならない 場 合 があるため 出 自 を 知 るための 道 を 残 しておくことは 必 要 であるということを 指 摘 した

最 後 に 伊 藤 報 告 日 本 人 を 生 物 学 上 の 父 母 としてインドで 代 理 出 産 された 子 の 法 的 取 扱 い では 報 告 後 に 以 下 のような 質 疑 応 答 が 行 われた 最 初 に インドで 成 立 するであろう ART 法 の 中 で 明 確 に 本 国 で 代 理 出 産 が 認 められている 国 の 人 間 であ るというのが インドで 代 理 出 産 を 行 う 条 件 だが 世 界 に 200 近 くある 国 の 中 で 代 理 出 産 を 認 めている 国 は 実 際 にどのくらいあるのか という 質 問 がされ 報 告 者 から 実 際 はアメリカのネバダ 州 や ボランティアと いう 条 件 で 認 められているイギリスなど ごく 一 部 に 限 られているという 現 状 が 述 べられた その 現 状 を 受 け 続 けて 同 じ 質 問 者 から インドとしては そのような 限 られた 国 や 地 域 だけが 対 象 で 良 いと 考 えているのか という 質 問 がされ この 質 問 に 対 し 報 告 者 から 医 療 ツーリズムでインドに 向 かう 実 情 が 報 じられる 際 外 国 人 の 事 例 が 目 立 つが 実 際 にインド 国 内 で 代 理 出 産 を 行 うのは アメリカやカナダの 市 民 権 を 持 っている 在 外

インド 人 が 多 く このような 国 で 代 理 出 産 を 依 頼 すると 費 用 が 高 額 (アメリカでは 25,000~30,000 ドル)とな るため 本 国 のインドでそれを 行 う 例 が 多 いということ さらに 昨 今 所 得 の 高 いインド 人 や 在 外 インド 人 が 増 加 しているため 特 に 外 国 人 を 受 け 入 れなければ 制 度 が 回 らないのではなく 日 本 のように 代 理 懐 胎 の 規 制 が 厳 しい 国 から 来 てもらわなければ 困 るという 性 質 のものではないと 現 代 のインド 社 会 の 階 層 分 化 に 端 を 発 する 興 味 深 い 背 景 が 説 明 された 続 けて 外 国 で 生 まれた 日 本 人 の 嫡 出 子 は 200~300 と 言 われているが 本 当 に 日 本 人 カップルが 生 んだの かどうかという 確 認 は 無 理 ではないか 全 部 見 極 められるということを 前 提 とした 法 制 度 を 作 ることには 無 理 があり 全 部 を 規 制 するより 実 際 に 生 まれた 子 どもの 利 益 をどう 考 えるのかを 考 えたほうが 生 産 的 ではない か という 質 問 に 対 し 小 川 報 告 者 の 方 から さまざまなケースに 場 合 分 けした 場 合 そこに 虚 偽 の 嫡 出 子 認 定 がどのくらい 紛 れ 込 むのかという 説 明 がされ その 議 論 を 引 き 取 って 報 告 者 も 交 え 法 規 制 の 方 向 性 や 胎 児 認 知 をめぐる 問 題 について 議 論 が 交 わされた