< 年 金 塾 > ( 年 金 判 例. 1/ ) 公 的 年 金 の 逸 失 利 益 性 (その-1) H.. 課 題 < 逸 失 利 益 > 1. 街 頭 相 談 会 ( 当 塾 の 主 催 や ) で 次 のような 質 問 があったとしたら 貴 方 は どう 答 えますか? < 想 定 質 問 > 年 金 受 給 中 のお 爺 さんが 横 断 歩 道 を 通 行 中 に 信 号 無 視 の 車 にひかれ 死 亡 した 遺 族 の お 婆 さんは 運 転 手 に 生 きていたらお 爺 さんが 貰 えた 年 金 を 損 害 賠 償 として 請 求 ができますか? < 正 しい 答 え> お 爺 さんが 貰 っていた 年 金 の 種 類 により 異 なります ( 具 体 的 には ) と なります 2. 交 通 事 故 等 の 不 法 行 為 により 死 亡 した 場 合 被 害 者 (の 遺 族 ) は 加 害 者 に 被 害 者 が 生 きていたら 得 た ( 働 いて 得 た 稼 得 ) であろう 収 入 利 益 ( 稼 働 収 入 ) を 逸 失 利 益 として 損 害 賠 償 ができる ( 民 法 709 条 自 賠 法 3 条 )/( 債 務 不 履 行 : 民 法 415 条 ) ( 精 神 的 被 害 苦 痛 に 対 する 慰 謝 料 は 不 法 行 為 は 請 求 可 能 債 務 不 履 行 は 不 可 ) この 場 合 被 害 者 に ( 重 要 な) 過 失 があると 過 失 相 殺 として 相 応 額 が 減 額 される ( 民 法 722 条 2 項 /(418 条 )) 他 方 被 害 者 の 死 亡 により 損 害 とともに 何 らかの 収 入 利 益 等 も 得 る 場 合 は 損 害 額 から 得 る 利 益 額 を 控 除 して 損 益 相 殺 の 調 整 をし 公 平 を 図 ることになる ( 民 法 に 明 文 はないが 民 法 536 条 2 項 債 務 不 履 行 時 の 債 権 者 の 危 険 負 担 の 類 推 解 釈 の 説 もある) 3. 年 金 受 給 者 の 年 金 収 入 は 今 時 点 の 労 働 の 対 価 ( 稼 働 収 入 ) ではありませんが それでも 逸 失 利 益 の 対 象 になる と 考 えてよいのでしょうか? ( 年 金 法 の 問 題 ではないので) 国 年 法 厚 年 法 に 規 定 はない 民 法 自 賠 法 にも 明 文 はない 実 務 上 は 最 高 裁 の (3つの) 判 決 により 判 例 法 理 として (ほぼ) 定 着 しています 以 下 3つの 判 決 を 確 認 してみます < 参 考 民 法 > 第 709 条 ( 不 法 行 為 による 損 害 賠 償 ) 故 意 又 は 過 失 によって 他 人 の 権 利 又 は 法 律 上 保 護 される 権 利 を 侵 害 した 者 は これに よって 生 じた 損 害 を 賠 償 する 責 任 を 負 う 第 415 条 ( 債 務 不 履 行 による 損 害 賠 償 ) 債 務 者 がその 債 務 の 本 旨 に 従 った 履 行 をしないときは 債 権 者 は これによって 生 じた 損 害 の 賠 償 を 請 求 することができる 債 務 者 の 責 めに 帰 すべき 事 由 によって 履 行 をする ことができなくなったときも 同 様 とする
( 年 金 判 例. 2/ ) 課 題 < 退 職 年 金 の 逸 失 利 益 性 :H5.3.24 最 大 判 > 添 付 (3/),(4/) から 下 記 を 確 認 して 下 さい 1. 内 容 は 退 職 年 金 の 逸 失 利 益 性 に 関 する 最 高 裁 H5.3.24 大 法 廷 判 決 です ( 大 法 廷 なので) 従 来 の 最 高 裁 の 判 断 基 準 の 変 更 があった と 想 定 される 2.< 事 実 の 概 要 > 地 公 共 法 の 退 職 年 金 を 受 給 しながら 塾 経 営 の 収 入 を 得 ていた (A)が 自 動 車 に 衝 突 され 死 亡 し 妻 (X)は 被 害 者 (Y) に (A) 平 均 余 命 までの 塾 経 営 の 収 入 + 退 職 年 金 を 逸 失 利 益 として 請 求 した これに 対 しYは 将 来 までの 遺 族 年 金 額 を 損 害 額 から 控 除 すべきである と 主 張 第 一 審 高 裁 : [ 塾 経 営 収 入 + 退 職 年 金 ] を 逸 失 利 益 と 認 定 し 現 実 に 受 給 した 遺 族 年 金 のみを 控 除 した 退 職 年 金 の 受 給 者 が 不 法 行 為 により 死 亡 した 場 合 相 続 人 は 加 害 者 に 受 給 者 の 平 均 余 命 までの 退 職 年 金 の 現 在 額 を 同 人 の 損 害 として 賠 償 請 求 ができる そして 遺 族 年 金 が 受 給 できるときは ( 損 益 相 殺 的 観 点 から) 確 定 した 遺 族 年 金 額 を 損 害 額 から 控 除 し いまだ 確 定 していない 遺 族 年 金 額 は 控 除 を 要 しない 多 数 意 見 / 少 数 意 見 の 対 比 退 職 年 金 の 逸 失 利 益 逸 失 利 益 の 概 念 遺 族 年 金 の 損 益 相 殺 範 囲 二 重 補 填 本 判 旨 ( 多 数 意 見 ) 所 得 喪 失 説 既 受 給 分 有 ( 将 来 分 ) 少 数 意 見 藤 島 園 佐 木 味 村 稼 働 能 力 説 なし 稼 働 能 力 説 控 除 しない 有 ( 既 将 来 ) 既 受 給 + 将 来 分 なし 4. 本 判 決 の 意 義 と 問 題 点 1 損 益 相 殺 的 な 調 整 という 概 念 を ( 最 高 裁 として) 初 めて 提 示 した 2 退 職 年 金 の 逸 失 利 益 性 を 明 確 に 肯 定 ( 従 来 どおり) 3 逸 失 利 益 について 平 均 余 命 までの 退 職 年 金 の 現 在 額 を 遺 族 が 相 続 した という 解 釈 を 採 用 した 4 控 除 の 範 囲 を 既 受 給 の 遺 族 年 金 とし 従 来 の 判 例 を 変 更 した 5 問 題 点 : (4/)4. 参 照 次 回 以 降 ( 障 害 年 金 / 遺 族 年 金 ) に 扱 います 本 例 は 地 公 共 法 なので 退 職 年 金 ですが 国 年 厚 年 の 老 齢 年 金 にも そのまま 適 用 される と 考 えられています ( 本 事 件 は S61.1 月 旧 年 金 法 の 時 代 に 発 生 したものです)
( 年 金 判 例. 1/ ) 公 的 年 金 の 逸 失 利 益 性 (その-2) H.. 課 題 -2 <H5.3.24 最 高 裁 大 法 廷 判 決 > 1. 前 回 課 題 では 退 職 年 金 の 逸 失 利 益 性 を < 別 冊 ジュリスト>の 解 説 を 中 心 に 説 明 しました この 解 説 には 出 てない 内 容 を 実 際 の 判 決 文 ( 一 部 ) で 確 認 します 2.(3/) ~は H5.3.24 最 高 裁 大 法 廷 判 決 文 の 前 半 部 分 です 下 記 を 確 認 して 下 さい 高 裁 原 審 の 判 決 は 違 法 である と 否 定 している : 1P 理 由 下 段 部 分 損 益 相 殺 的 な 調 整 の 文 言 が 各 所 にある : 2P 控 除 すべき 範 囲 を 損 害 が 実 際 に 補 てんされたということができる 範 囲 と 明 示 し 支 給 を 受 けることが 確 定 した 額 が 限 度 で 確 定 していない 額 は 含 めない : P3 具 体 的 には 原 審 の 口 頭 弁 論 終 決 時 (S63.7.8) までに 受 給 した 額 ではなく 受 給 が 確 定 した 額 である : P4,P5 3. 年 金 額 等 の 金 額 は 下 記 のようです 平 均 余 命 までの 退 職 年 金 の 現 在 額 原 審 (2 審 高 裁 ) 最 高 裁 10,355,671 円 10,355,671 円 受 給 とする 遺 族 年 金 額 3,211,151 円 3,583,501 円 (+372,350 円 ) ( 口 頭 弁 論 終 結 までの 受 給 額 ) ( 口 頭 弁 論 終 結 までの 確 定 額 ) 過 失 相 殺 による 減 額 自 賠 法 の 保 険 金 弁 護 士 費 用 ( 加 算 ) (4,982,376 円 ) (4,982,376 円 ) 損 害 賠 償 額 2,162,144 円 1,789,794 円 (-372,350 円 ) 4. 金 額 算 出 の 根 拠 5 月 原 審 口 頭 弁 論 終 結 の 日 S63.7.8 8 月 (2~4 月 3 月 分 : 372,350 円 ) (5~7 月 3 月 分 : 372,350 円 ) 5 月 に 受 給 済 7 月 分 まで 確 定 受 取 受 取 当 時 の 年 金 受 給 受 取 りは 前 3カ 月 分 を 2,5,8,11 月 の 年 4 回 受 給 受 取 になっていた
( 年 金 判 例. 1/ ) 公 的 年 金 の 逸 失 利 益 性 (その-3) H.. 課 題 < 障 害 年 金 の 逸 失 利 益 性 :H11.10.22 最 二 判 > 1. 添 付 (3/)~ は 障 害 年 金 の 逸 失 利 益 性 に 関 する 最 高 裁 H11.10.22 第 二 小 法 廷 判 決 です 2.< 事 件 の 経 過 等 > 1 級 障 害 年 金 を 受 給 中 の 夫 が H4.7.16 入 院 先 病 院 で 胃 瘻 (いろう) 造 設 術 中 のミスにより 死 亡 したので 妻 等 の 相 続 人 が 医 師 医 院 に 損 害 賠 償 を 請 求 した 相 続 人 は 妻 と 子 2 人 H4.7 月 の 受 給 した 障 害 年 金 の 金 額 2,525,700 円 障 害 基 礎 年 金 : 1,324,800 円 906,600 (725,3001.25) + 418,200 ( 子 の 加 算 :209,1002) 障 害 厚 生 年 金 : 1,200,900 円 基 本 額 (991,800(?) + 配 偶 者 加 給 : 209,100) H4.8 月 以 降 に 受 給 する 遺 族 年 金 額 1,738,600 円 遺 族 基 礎 年 金 : 1,143,500 円 (725,300 + 418,200) 遺 族 厚 生 年 金 : 595,100 円 ( 報 比 (3/4)= (991,800/12)(3/4)) [ H4 年 の 年 金 額 は H22.5.13 課 題 47 < 塾 資 料 -19,20> 参 照 ] 1 障 害 基 礎 厚 生 年 金 の 基 本 部 分 は 保 険 料 を 納 付 した 者 の 障 害 状 態 に 支 給 される 保 険 料 を 納 付 した 者 の 拠 出 に 基 づく 給 付 であること 特 に 短 命 とは 認 められず 平 均 余 命 までの 受 給 の 蓋 然 性 が 高 いこと から 逸 失 利 益 性 が 認 められる 2 子 及 び 妻 の 加 給 年 金 部 分 は 拠 出 された 保 険 料 とのけん 連 性 がなく 社 会 保 障 的 性 格 が 強 い 子 の 婚 姻 / 養 子 縁 組 配 偶 者 の 離 婚 で 終 了 等 存 続 の 確 実 性 が 薄 い ので 逸 失 利 益 性 は 認 められない ( 加 給 年 金 も 逸 失 利 益 に 含 めていた 原 審 を 否 定 変 更 ) 3 遺 族 年 金 の 控 除 の 範 囲 は 支 給 が 確 定 した 遺 族 年 金 額 を 限 度 とする ( 本 判 決 は 新 年 金 法 (S61.4.1 以 降 ) を 対 象 とした 初 の 最 高 裁 判 決 としての 意 味 がある)
課 題 < 遺 族 年 金 の 逸 失 利 益 性 :H12.11.14 最 三 判 > 1.( /) は 遺 族 年 金 の 逸 失 利 益 性 に 関 する 最 高 裁 H12.11.14 第 三 小 法 廷 判 決 です 2.< 事 件 の 概 要 > 夫 の 死 亡 により 遺 族 厚 生 年 金 と 市 議 会 議 員 共 済 の 給 付 金 ( 以 下 遺 族 年 金 ) を 受 給 していた 妻 (A) が 交 通 事 故 で 死 亡 し 相 続 人 遺 族 (X) が 損 害 賠 償 等 を 請 求 した 第 一 審 は 遺 族 年 金 の 逸 失 利 益 性 を 肯 定 高 裁 は 否 定 した 下 記 理 由 により 遺 族 年 金 は 逸 失 利 益 に 当 たらない とした 1 遺 族 年 金 は 専 ら 遺 族 受 給 権 者 の 生 計 維 持 に 限 られる 一 身 専 属 制 のもの 2 受 給 権 者 の 保 険 料 拠 出 がなく 給 付 と 負 担 とのけん 連 が 間 接 的 で 社 会 保 障 的 給 付 3 受 給 権 者 の 婚 姻 養 子 縁 組 離 婚 等 で 失 権 し 存 続 の 確 実 性 が 薄 い 課 題 -2 < 公 的 年 金 の 逸 失 利 益 性 の 整 理 比 較 > 1. 最 高 裁 三 判 例 の 整 理 比 較 受 給 年 金 の 種 類 逸 失 利 益 性 遺 族 年 金 の 控 除 範 囲 退 職 年 金 障 害 年 金 ( 基 本 年 金 ) 障 害 年 金 ( 加 給 分 ) 遺 族 年 金 ( 既 受 給 分 ) 国 厚 の 老 齢 も 同 ( 既 受 給 分 ) 2. 学 説 は 遺 族 年 金 の 控 除 範 囲 ( 全 額 控 除 すべきと) に 批 判 が 多 い 3. 最 高 裁 三 判 例 から 見 える 公 的 年 金 の 本 質 拠 出 に 基 づく 給 付 は 逸 失 利 益 となり 遺 族 は 損 害 賠 償 を 請 求 できる 無 拠 出 社 会 保 障 的 一 身 専 属 の 給 付 は 逸 失 利 益 を 否 定 の 方 向 ( 今 後 場 合 により 想 定 される 方 向 ) 今 後 公 的 年 金 の 財 務 状 況 の 悪 化 が 続 いた 場 合 考 えられそうなこと 一 身 専 属 制 給 付 と 負 担 のけん 連 がない 内 容 の 給 付 加 算 加 給 年 金 まず 最 初 に 減 額? 遺 族 年 金 制 度 減 額 任 意 加 入 ( 希 望 性 ) 制 度 等 将 来 公 的 年 金 の 財 務 状 況 が 超 困 窮 になった 場 合 考 えられそうなこと 無 拠 出 社 会 保 障 的 内 容 の 給 付 保 障 福 祉 ( 扶 助 ) の 分 野 に 移 す 例 : 学 生 主 婦 の 任 意 未 加 入 期 間 の 障 害 特 別 障 害 給 付 金 ( 年 金 法 の 給 付 でない!!) 3. 拠 出 制 と 無 拠 出 性 の 本 質 拠 出 制 : 保 険 的 自 助 / 共 助 の 性 格 が 強 い 無 拠 出 : 扶 助 / 救 貧 的 公 助 の 性 格 が 強 い