研 究 報 告 3 長 田 洋 和 ( 心 理 科 学 研 究 センター 代 表 / 専 修 大 学 教 授 ) わが 国 の 一 般 人 口 における 発 達 障 がいリテラシー Literacy of developmental disorders in Japanese general population それでは 時 間 になりましたので, 再 開 いたしましょう 最 後 は 私 の 番 です 岡 村 先 生 のご 専 門 は 臨 床 神 経 心 理 学 です 本 日 は, 専 修 大 学 心 理 教 育 相 談 室 での 多 くの 臨 床 実 践 についてお 話 しいただきました 国 里 先 生 のご 専 門 は 計 算 論 的 臨 床 心 理 学 であり, 神 経 科 学 に 非 常 に 関 心 をもたれ 知 識 もお 持 ちですので, 多 くの 専 門 用 語 をご 紹 介 いただきました 非 常 に 難 しいですが, 大 変 重 要 な 用 語 です 国 里 先 生 のお 話 はとても 印 象 深 いものでした 推 定 構 造 モデルは, 将 来 的 に 臨 床 場 面 に 応 用 されていくものと 思 います 私 の 専 門 は 発 達 精 神 病 理 学 で, 公 衆 衛 生 の 研 究 にも 心 血 を 注 いできました 本 日 は, 小 学 校 教 職 員 を 対 象 とした 全 国 的 な 疫 学 調 査 についてお 話 したいと 思 います 本 日 のロードマップですが(スライド2),まず,DSM-IVからDSM-5での 自 閉 症 スペクトラム (ASD)の 診 断 基 準 の 変 更 についてお 話 ししたいと 思 います 次 に,ASDの 子 どもに 関 する 日 本 人 の 知 識 の 現 状 について, 政 府 統 計 のデータをご 紹 介 したいと 思 います そして, 現 在 行 っ ている 研 究 の 報 告 を 紹 介 いたしますが,この 報 告 は 私 の 研 究 のほんの 一 部 で, 大 変 短 いものです 最 後 に, 日 本 の 一 般 人 口 のASDに 関 するリテラシーの 見 通 しについてお 話 しいたします 最 後 の 部 分 は, 私 の 妄 想 のようなものとも 言 えますが, 耳 を 傾 けていただきたいと 思 います まず,DSM-5におけるASDの 診 断 基 準 についてです ご 存 知 のとおり,DSM-5は2013 年,つ まり 今 年 の5 月 に 公 刊 され,ASDの 診 断 基 準 が 少 しだけ 変 更 されました スライド4は,ASDの 診 断 基 準 で, 現 在 または 過 去 から 以 下 のように 示 される 特 徴 です 複 数 の 状 況 における 社 会 的 コミュニケーションと 社 会 的 相 互 の 持 続 的 な 欠 陥 社 会 的 感 情 的 相 互 作 用 の 欠 陥 非 言 語 のコ ミュニケーション 行 為 の 欠 陥 関 係 作 りとその 維 持,そしてそれに 対 する 理 解 の 欠 陥 これらは, ASDの 子 ども 達 に 共 通 してみられます 次 にスライド5の 基 準 Bは, 現 在 または 過 去 から 示 される, 制 限 された 反 復 される 行 動 パターン です 1. 常 同 的 または 反 復 的 な 運 動 性 の 行 動, 物 体 の 使 用,または 発 言 2. ルーティンへの 固 執 3. 対 象 において 異 常 に, 強 く 制 限 され 固 執 した 興 味 4. 過 剰 または 過 少 な 感 覚,または 環 境 に 対 する 異 常 な 関 心 基 準 Bの4は,DSM-5で 追 加 された 新 たな 項 目 で,DSM-IVにはありませんでし たが,DSM-5で 非 常 に 重 要 な 基 準 となっています スライド6をご 覧 ください DSM-IVとの 違 いは,PDDのサブタイプです DSMにおける 自 閉 症 スペクトラムや 特 定 不 能 のPDDは,DSM-IVの 用 語 であり 診 断 基 準 です アスペルガー 障 害 や レット 障 害 がなくなったことは 重 要 ですが,DSM-IVでアスペルガーと 診 断 されていた 個 人 が, DSM-5ではASDと 診 断 されるのです DSM-5では 発 症 に 関 して 厳 密 な 記 述 がありませんが, DSM-IVでは 3 歳 以 前 に 症 状 が 出 現 が 診 断 基 準 として 求 められます 現 在 は,ほとんどの 臨 床 家 が 注 意 欠 如 多 動 性 障 害,すなわちADHDと 自 閉 症 スペクトラムの 両 方 の 診 断 をするものと 思 いますが,DSM-IVではこれらの 障 害 は 併 存 しないことになっていました しかし,DSM-5では, 56 Development and current situations of Cognitive Behavioural Therapy for children and/or persons with disabilities
これらの 障 害 は 公 式 に 併 存 する 可 能 性 があります これは 非 常 に 重 要 な 変 更 点 です 対 人 的 コミュ ニケーション 障 害 は,DSM-5で 新 しく 設 定 されたコミュニケーション 障 害 です この 障 害 は, DSM-IVにおける 特 定 不 能 の 広 汎 性 発 達 障 害,PDDNOSの 代 替 といえると 思 います 私 は,こ れも 大 きな 変 更 であると 考 えています 対 人 的 コミュニケーション 障 害 は, 反 復 的 限 定 的 行 動 は ないが, 対 人 的 コミュニケーションについて 問 題 をもつというものです 次 に, 発 達 障 害 の 子 どもに 対 する 日 本 人 の 知 識 の 現 状, 日 本 における 発 達 障 害 に 関 する 教 員 の 気 づきについてご 報 告 いたします(スライド7) まず, 教 員 の 気 づきについてです 文 部 科 学 省 が2012 年 に 学 級 担 任 を 対 象 に 行 った 全 国 学 校 調 査 によれば, 通 常 学 級 の 小 学 生 の6.5%に 発 達 障 害 の 可 能 性 があるとの 報 告 でした(スライド8) 発 達 障 害 には, 自 閉 症 スペクトラム 障 害,ADHD, 学 習 障 害 (LD)が 含 まれます 学 年 別 に 有 病 率 をみると, 小 学 校 1 年 生 (7 歳 )で9.8%,4 年 生 (10 歳 )で7.8%, 中 学 1 年 生 (13 歳 )で4.8%, 中 学 3 年 生 (15 歳 )で3.2%と 報 告 されています 興 味 深 いことに, 年 齢 が 高 くなるほど 有 病 率 は 少 しずつ 低 くなるようです しかし, 実 際 には, 年 齢 が 上 がるにつれ,より 多 くの 発 達 障 害 の 子 ども 達 が 特 別 支 援 学 級 や 学 校 に 行 く 傾 向 があるのです そのため, 通 常 学 級 における 有 病 率 は 減 少 しているかもしれませんが, 発 達 障 害 の 子 どもの 数 は 年 齢 とともに 減 少 するわけではないと 考 えています 先 ほど 通 常 学 級 の 小 学 生 の6.5%に 発 達 障 害 の 可 能 性 があるとの 報 告 をご 紹 介 しましたが,こ れら 児 童 に 関 して, 政 府 調 査 のもう 一 つの 報 告 があります これら, 学 級 担 任 によって 発 達 障 害 の 可 能 性 があると 見 なされた 子 ども 達 の38.6%が,いずれの 支 援 も 受 けていませんでした 非 常 に 重 要 なことですが, 本 当 なのです また, 同 じく 発 達 障 害 の 可 能 性 があるとされた 小 学 生 のうち, 約 18.4%の 児 童 が 特 別 支 援 を 要 すると 認 識 されていますが,その 内 6%は 適 切 な 援 助 を 受 けていま せん このことも 重 要 です 文 部 科 学 省 は,すべての 教 員 ができるだけ 早 期 に 発 達 障 害 に 関 する 研 修 を 受 講 すべきであると 結 論 づけています さらに, 日 本 の 学 校 教 員 は 発 達 障 害 に 関 して 十 分 な 知 識 や 態 度 を 身 につけていないとも 結 論 づけています ある 意 味 では 真 実 でありますが, 日 本 の 教 員 が 発 達 障 害 のある 子 どもの 扱 いに 困 っているというのは 言 い 過 ぎであるようにも 思 います この 考 えから, 私 は 研 究 を 行 うことにいたしました これに 関 する 国 際 的 な 情 報 です CDC;アメリカ 疾 病 予 防 管 理 センターによれば,3 歳 から17 歳 までの 子 どもの 発 達 障 害 の 有 病 率 は13.9%とされています この 調 査 は2012 年 に 行 われていま す 日 本 には, 発 達 障 害 に 関 する 研 究 機 関 による 全 国 レベルのデータはありません たとえば, 国 立 精 神 神 経 医 療 研 究 機 関 のような 研 究 機 関 が, 発 達 障 害 の 有 病 率 に 関 する 全 国 調 査 を 行 う べきと 考 えていますが,このような 調 査 はまだ 行 われていません おそらく, 有 病 率 については, 少 なくとも 日 本 とアメリカでは 文 化 的 格 差 はないと 言 い 切 りたいところです 日 本 には, 発 達 障 害 の 子 ども 達 は 潜 在 的 には 約 2 倍 いるものと 思 われます 発 達 障 害 と 診 断 することは 非 常 に 難 し いですが, 行 動 や 認 知 行 動 の 問 題 を 持 っている グレーゾーン と 呼 ばれる 子 ども 達 がいるから です グレーゾーンというのは 和 製 英 語 で,グレーは 黒 と 白 の 間 の 色 としてあいまいな 色 である ことから, 同 様 に 非 常 にあいまいであることを 意 味 しています 専 修 大 学 心 理 科 学 研 究 センター 年 報 第 3 号 2014 年 3 月 57
それでは, 私 が 現 在 行 っている 研 究 についてお 話 しいたします(スライド11 12) 先 ほどお 話 ししましたように, 文 部 科 学 省 によれば, 日 本 の 学 校 教 員 達 はできるだけ 早 く, 発 達 障 害 の 子 どもへの 対 応 に 関 する 知 識 を 向 上 させなければならないとされます 2012 年 の 文 部 科 学 省 の 調 査 に 加 え,これは, 先 生 方 を 対 象 にASDについて 尋 ねた 全 国 的 な 疫 学 研 究 です 文 部 科 学 省 が 学 級 担 任 にのみ 調 査 を 行 ったのに 対 し, 我 々は, 校 長 先 生, 教 頭 先 生, 通 常 学 級 教 員, 通 級 教 員, 特 別 支 援 学 級 教 員, 養 護 教 員, 学 校 カウンセラーなどすべての 教 職 員 を 対 象 としました また, これは, 日 本 の 教 職 員 を 対 象 とした 初 めての 全 国 疫 学 調 査 です この 調 査 の 目 的 は,ASDに 関 する 日 本 の 小 学 校 教 職 員 の 知 識 の 実 態 を 明 らかにすることです 文 部 科 学 省 は,すべての 教 員 が,できるだけ 早 期 に 発 達 障 害 に 関 連 する 研 修 を 受 講 すべきであ るとまとめていますが,これは 本 当 でしょうか? 私 は,ASDについての 日 本 の 小 学 校 教 職 員 の 知 識 を 明 らかにし,これらをパキスタンの 保 健 専 門 職 の 知 識 や 理 解 と 比 較 することにしました 私 はパキスタンの 内 科 医 や 小 児 科 医 と 交 流 があり, 日 本 とパキスタンの 間 で, 発 達 障 害 に 関 する 知 識 の 比 較 という 国 際 的 研 究 を 行 おうとしています 私 の 研 究 計 画 は, 日 本 の 一 般 成 人 のASDに 関 するリテラシーの 向 上 に 役 立 つものと 考 えていま す スライド13 14が, 研 究 の 目 標 と 方 法,そして 参 加 者 です 我 々は 単 純 なランダムサンプリ ングを 行 い, 日 本 全 国 から2,000 校 の 小 学 校 を 選 択 しました ただし, 震 災 による 影 響 を 考 慮 し, 福 島, 岩 手, 宮 城 の3 県 は 除 外 しています 各 学 校 に 調 査 票 を 送 付 し,それを 送 り 返 してもらえ るように 依 頼 しました この 結 果,345 校 に 調 査 票 を 送 り 返 していただきました 回 収 率 は17.25% で, 参 加 者 は 延 べ1,663 名, 男 性 427 名 女 性 1,115 名 が 匿 名 で 質 問 紙 に 回 答 してくださいました なお,この 研 究 は, 疫 学 研 究 のための 倫 理 規 定 に 基 づいています 参 考 までに,2012 年 の 文 部 科 学 省 の 調 査 は, 日 本 全 国 の1,200 校 を 選 択 し,1,164 校 が 回 答 しま した 回 収 率 は 驚 くべきことに97%です 私 の 調 査 の 回 収 率 は17.25%ですが,これは 非 常 に 一 般 的 な 回 収 率 で,97%は 信 じ 難 い 数 値 です スライド14をごらんください 回 答 者 は 男 性 427 名, 女 性 1,115 名 となっており,その 割 合 は7 対 18です 統 計 によれば, 日 本 の 小 学 校 の 教 員 の 男 女 比 は7 対 13であることから,7 対 18というのは 適 当 な 数 字 であり, 欠 損 値 を 考 慮 しても, 代 表 性 は 確 認 されたと 思 われます スライド15が 回 答 者 の 職 種 の 割 合 です 通 常 学 級 の 教 員 が57%, 通 級 の 教 員 が3%, 特 別 支 援 学 級 の 教 員 が26%, 養 護 教 諭 9%, 校 長 または 教 頭 が2%,スクールカウンセラーは1%にとどまりました つぎのスライド16は 年 齢 の 分 布 です 20 代 が14%,30 代 が16%,40 代 が30%,50 代 が37%,60 代 は1%にとどまりました 回 答 者 の 大 多 数 は40 代 から50 代 であるといえます スライド17は 質 問 紙 の 内 容 です フェイスシートではいくつかの 属 性 を 尋 ねました 年 齢, 性 別, 職 種 です 職 種 とは, 通 常 学 級 の 教 員, 特 別 支 援 学 級 教 員 などの 分 類 です そして, 教 員 とし ての 経 験 年 数,ASD 児 童 を 指 導 した 経 験 の 有 無 を 尋 ねました ASDの 診 断 基 準 にある10の 行 動 特 徴 について,それがASD 診 断 に 必 要 であると 思 うかどうかを 尋 ねました 10 項 目 のうち8 項 目 はDSM-5において 診 断 に 有 益 とされるものですが, 他 の2 項 目 はDSM-5において,ASDの 診 断 に 有 益 かもしれないが 必 要 ではないとされる 項 目 でした また,ASDに 関 する 一 般 的 な 理 解 につい 58 Development and current situations of Cognitive Behavioural Therapy for children and/or persons with disabilities
て 尋 ねました 22 項 目 のうち15 項 目 は,ASDについて 一 般 的 に 誤 解 されがちな 項 目 です スライド18から21が 実 際 に 使 用 した 項 目 です これは,ASDの 診 断 において 特 徴 的 な 行 動 です 項 目 1. 言 語 の 遅 れ 項 目 2.アイコンタクトの 欠 陥 項 目 3. 常 同 性 欲 求,ルーティンの 変 更 に 対 する 抵 抗 項 目 4. 独 特 の 話 し 方 項 目 5. 社 会 的 応 答 性 の 欠 陥 項 目 6.ステレオタイプの 活 動 項 目 7. 生 後 36ヵ 月 以 前 に 症 状 が 出 現 項 目 8. 通 常 見 られない 独 特 な 特 徴,たとえば 指 をならし 続 ける 項 目 9. 対 象 へのこだわり 項 目 10. 対 人 的 相 互 性 の 困 難 項 目 1と 項 目 7はDSM-5の 診 断 には 必 要 ありませんが, 他 の 項 目 はDSM-5で 求 められるものです 回 答 者 は, 各 項 目 について,ASD 診 断 において 必 要, 必 要 でない, 役 立 つが 必 要 ではないのい ずれかにチェックをするよう 求 められました 各 項 目 の 回 答 が 正 しい 場 合 には1 点 を 付 与 しました たとえば, 項 目 1について, 役 立 つが 必 要 でないと 回 答 した 場 合 には,1 点 を 付 与 します 項 目 は 全 部 で10 個 ありますので, 全 体 の 得 点 は0から10 点 の 範 囲 となります 次 のスライド19から21が,ASDについての 一 般 的 な 理 解 についての 項 目 です 回 答 者 は 各 項 目 について,そう 思 う,わからない,そう 思 わないのいずれかにチェックするよう 求 められました 項 目 のいくつかが 正 しい 一 方,ほとんどは 誤 解 を 表 すものでした なお,1,10,11,14,17, 19,21が 正 しい 項 目 です 各 項 目 について, 正 しい 回 答 に1 点 を 与 えます 項 目 21を 見 てください トレーニング 技 法 についての 親 のカウンセリングは,ASDの 有 効 な 治 療 の 一 つです 私 は,これは, 家 庭 などでの 認 知 行 動 療 法 の 親 のトレーニングに 対 応 しているものだと 思 います 結 果 と 考 察 をお 話 したいと 思 います スライド23は 職 種 間 の 属 性 データの 比 較 です 年 齢 と 職 種, 通 常 学 級 教 員 か 通 級 教 員 か,などを 尋 ねるものでした 6つの 職 種 に 分 け, 性 別, 年 齢 の 効 果 量 に 関 してCramer s V 効 果 量 を 算 出 しました Cramer s V 効 果 量 は, 約 0.1で 小 さく,0.3で 中 程 度,0.5で 大 きいとされます 年 齢 は 小 さな 効 果 量 で, 性 別 は 中 程 度, 教 職 員 歴 はASDにつ いて 非 常 に 小 さな 効 果 量 でした ASDの 指 導 歴 有 無 のCramerʼs Vは0.25でした これは 中 程 度 のサイズかと 思 います 全 体 的 に, 各 職 種 のなかの 属 性 は 比 較 的 異 なるものとなっています スライド25の 表 2は,ASDの 特 徴 について, 診 断 する 際 に 必 要 であるか 否 かを 聞 いた 結 果 です ASDの 指 導 歴 の 有 無 に 関 わらず,これらの 順 位 付 けは 全 く 同 じでした 生 後 36ヵ 月 以 前 に 症 状 が 出 現 するという 項 目 は,DSM-5の 診 断 においては 不 要 です ASDの 指 導 歴 のある 教 員 のその 順 位 付 けは 最 後 でした ASDの 指 導 歴 のない 教 員 におけるこの 項 目 の 順 位 付 けも 同 様 です す なわち,ASDの 指 導 歴 の 有 無 に 関 わらず, 日 本 の 小 学 校 教 職 員 は,ASDの 診 断 に 関 してほぼ 同 程 度 の 知 識 を 持 っているのです これらが 本 研 究 の 非 常 に 重 要 な 結 果 であると 思 います スライド26の 表 3は, 職 種 別 DSM-5に 対 応 する 特 徴 とASDに 関 する 一 般 的 な 理 解 の 比 較 です 特 徴 については, 統 計 的 有 意 差 がありません 効 果 量 の 二 乗 は 大 変 小 さいですが, 職 種 間 の 一 般 的 理 解 に 関 しては 統 計 的 有 意 差 があり,その 平 方 は0.096でした Cohenによれば,0.01で 小 さ い 効 果 量,0.06は 中 程 度 の 効 果 量,0.14で 大 きな 効 果 量 と 判 断 しますので,これは 中 程 度 から 大 きな 効 果 量 の 中 間 にあるといえます すなわち, 通 常 学 級 教 員 が, 通 級 や 特 別 支 援 学 級 の 教 員, 養 護 教 員,スクールカウンセラーと 比 較 して, 誤 った 理 解 をもつ 傾 向 があると 言 えます スクー ルカウンセラーは 他 の 教 員 や 養 護 教 員 と 比 べ,ASDに 関 して 高 い 知 識 を 持 っていました 通 級 や 専 修 大 学 心 理 科 学 研 究 センター 年 報 第 3 号 2014 年 3 月 59
特 別 支 援 学 級 の 教 員 と 養 護 教 員 は,ASDについての 知 識 に 関 してはほとんど 同 じレベルでした これらは 現 在 行 っている 研 究 で,これから 分 析 していかなくてはなりません 分 析 はそろそろ 終 了 する 予 定 です スライド23の 表 1にあるように, 各 職 種 には 年 齢 性 別 指 導 歴 など, 異 な る 属 性 の 人 々が 含 まれていました 複 数 要 因 ANOVAが 検 討 されるべきですが,まだ 行 っていま せん ベイズ 理 論 を 用 いて,ASDについての 知 識 や 対 応 を 改 善 する 最 適 な 方 法 を 予 測 したり, 模 索 したりすることができるでしょう また, 各 教 員 の 職 種, 年 齢, 性 別,ASDの 指 導 歴 の 有 無 により 予 測 してみることができるでしょう 本 研 究 センターに 統 計 の 専 門 家 がいらっしゃいますの で,この 研 究 についてベイズ 理 論 を 用 いて 分 析 を 行 ってくださる 予 定 です また,パキスタン 人 のデータと 比 べることで, 先 ほど 申 し 上 げた 課 題 についてのヒントが 得 られるものと 思 います 最 後 に, 地 域 的 要 因 がある 可 能 性 があります たとえば, 関 東 と 関 西 と 九 州 ですが, 私 はいくつ か 地 域 的 差 異 があるのではないかと 考 えています 各 職 種 が 異 なる 属 性 から 構 成 されている 地 域 的 理 由 について 検 討 してみるつもりです(スライド27) これが 私 の 発 表 の 最 後 の 部 分 です(スライド28 29) 研 究 にもとづき,いくつかのコメントを 申 し 上 げたいと 思 います これらのコメントは 妄 想 のようなもので, 私 が 考 えているだけにすぎま せん 教 職 員 の 方 々は,ASDの 生 徒 についての 知 識 や 対 応 を 向 上 させるために 日 夜 努 力 されて います 私 は 文 部 科 学 省 のまとめ 結 論 には 賛 成 していないと 断 固 申 し 上 げます 先 生 方 は, 障 害 の 有 無 にかかわらず, 生 徒 の 問 題 に 対 して 日 常 的 に 熱 心 に 取 り 組 まれていらっしゃいます 必 要 なのは, 全 国 レベルでのASDに 関 するリテラシーの 向 上 であり, 教 職 員 のみならず 国 民 全 体 が そのようにすべきです ASDの 子 どもやその 家 族 を 支 援 するためのNPOやNGO, 非 政 府 組 織 な どの 団 体 がありますが,こうした 組 織 は 日 本 の 一 般 人 口 に 対 しては 何 ら 強 い 影 響 を 持 っていませ ん 悲 しいことですが 事 実 です これはまさに 妄 想 の 部 分 です アメリカのAutism Speaksは, 最 もよいモデルの 一 つと 考 えて います もしもAutism Speaks Japanが 日 本 にできたならば, 日 本 の 一 般 人 口 におけるASDリテ ラシーは 急 激 に 向 上 するでしょう この 団 体 は, 政 治 の 世 界 に 働 きかけていると 聞 いたことがあ ります 同 様 に 我 々 日 本 にも,アメリカのAutism Speaksのような 強 い 団 体 が 必 要 なのです 最 後 になりますが,ASDの 子 どもやその 家 族 を 支 援 しエンパワーする 力 をもった 組 織 を 設 立 するよ う, 支 持 者 があらゆる 関 係 者 に 働 きかける 試 みを 行 うべきです 私 の 発 表 は 以 上 です ご 清 聴 ありがとうございました 60 Development and current situations of Cognitive Behavioural Therapy for children and/or persons with disabilities
❶ ❷ ❸ ❹ ❺ ❻ 専修大学 心理科学研究センター年報 第3号 2014年3月 61
❼ ❽ ❾ ❿ ⓫ ⓬ 62 Development and current situations of Cognitive Behavioural Therapy for children and/or persons with disabilities
⓭ ⓮ ⓯ ⓰ ⓱ ⓲ 専修大学 心理科学研究センター年報 第3号 2014年3月 63
⓳ ⓴ 64 Development and current situations of Cognitive Behavioural Therapy for children and/or persons with disabilities
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