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1.3. 距 離 による 比 較 距 離 による 比 較 を 行 う ( 基 本 的 に 要 求 される 能 力 が 違 うと 思 われるトラック 別 に 集 計 を 行 った ) 表 -3 に 距 離 別 の 比 較 を 示 す 表 -3 距 離 別 比 較

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Transcription:

< 脉 診 の 基 本 とその 手 順 > 名 古 屋 漢 方 鍼 医 会 はじめに 凡 そ 診 脉 は 須 らく 先 ず 時 脉 胃 脉 と 臓 腑 の 平 脉 とを 知 りて 然 る 後 に 病 脉 に 及 ぶこと を 要 す ( 診 家 枢 要. 景 岳 全 書 - 脉 診 章 等 ) 脉 診 を 行 うには 平 脉 ( 健 康 人 の 脉 )を 知 ってから 病 脉 ( 病 人 の 脉 )を 診 るのだと 述 べ られている 極 当 たり 前 のことの 様 に 思 えるが 治 療 家 は 病 脉 にのみ 拘 泥 する 傾 向 がある 脉 診 流 とも 言 われる 経 絡 治 療 ( 漢 方 鍼 治 療 )は 診 断 において 脉 診 の 果 たす 役 割 は 大 きい そこで 名 古 屋 漢 方 鍼 医 会 では 診 断 に 必 要 な 季 節 の 脉 胃 気 の 脉 五 臓 正 脉 菽 法 脉 及 び 基 本 脉 状 について 一 定 の 共 通 認 識 の 素 に 研 修 を 進 める 様 に 資 料 を 作 成 した 1 脉 診 の 意 義 脉 診 は 四 診 法 の 一 部 であり 脉 所 に 軽 く 指 をあて 手 を 通 して 気 の 交 流 をはかり 素 直 に 感 じることが 大 切 である 無 理 に 脉 を 診 ようとしない その 患 者 の 全 体 像 から 陰 気 陽 気 の 状 態 ( 元 気 の 有 無 顔 色 眼 の 輝 き 発 声 音 肌 艶 等 )をありのままに 感 じるように する 感 じなければそれでよい 最 初 から 病 因 病 理 を 診 ようとするとかえって 複 雑 となり 病 の 全 体 像 つまり 八 綱 ( 陰 陽 表 裏 虚 実 寒 熱 )や 病 の 臓 腑 経 絡 病 の 新 旧 を 観 察 する 事 が 出 来 なくなる 難 経 を 基 盤 とした 六 部 定 位 脉 診 は 単 なる 経 絡 の 虚 実 ( 脉 差 診 )を 診 るものでは 無 く 六 部 全 体 および 六 部 それぞれの 脉 状 を 診 て 臓 腑 経 絡 の 気 血 津 液 の 虚 実 寒 熱 を 診 察 する 方 法 ( 脉 状 診 )である それによって 病 因 病 理 病 証 証 決 定 選 穴 手 法 予 後 判 定 等 を 行 う 事 が 出 来 る 2 五 臓 の 正 脉 について( 難 経 _ 四 難 参 照 ) 五 臓 には それぞれその 特 性 を 現 す 脉 が 在 る それを 以 下 に 定 める 左 寸 口 ( 心 ) 浮 にして 大 散 心 は 陽 中 の 陽 臓 で 陽 気 旺 盛 で 発 散 作 用 があるから 浮 にして 大 散 ( 洪 ) 脉 になる 左 関 上 ( 肝 ) 沈 にして 牢 長 肝 は 陰 中 の 陽 臓 であり 沈 脉 になるが 春 に 応 じ 血 を 蔵 し 発 散 作 用 があるから 長 牢 ( 弦 ) 脉 になる 左 尺 中 ( 腎 ) 沈 にして 濡 実 ( 滑 ) 腎 は 陰 中 の 陰 臓 であるため 沈 脉 になるが 冬 に 応 じ 春 の 発 生 に 備 えて 内 燃 力 を 蓄 え るために 実 ( 滑 ) 脉 も 現 れる 右 寸 口 ( 肺 ) 浮 にして 短 しょく 肺 は 陽 中 の 陰 臓 であり 浮 脉 になるが 秋 に 応 じ 収 斂 作 用 もあるのでしょく 短 という 陰 性 の 脉 も 現 れる 右 関 上 ( 脾 ) 緩 脾 は 中 州 ( 陰 に 偏 らず 陽 に 偏 らず 浮 沈 の 間 )にあり 後 天 の 原 気 ( 胃 気 )にて 五 臓 を 統 括 している 為 いずれにも 偏 らない 和 緩 を 帯 びた 脉 状 を 呈 する 右 尺 中 ( 命 門 ) 沈 滑 先 天 の 原 気 真 陽 腎 陽 元 陽 の 根 三 焦 の 原 気 等 と 表 現 され 生 命 の 根 源 である 命 門 の 陽 気 を 含 有 しているので 滑 脉 を 呈 する 実 地 臨 床 の 現 場 では 上 記 の 様 な 脉 状 を 現 していることは 少 ない これらの 脉 状 が 複 雑 に 交 わり 合 っているのが 現 状 である 従 って その 脉 状 が 六 部 定 位 のどこの 臓 腑 経 絡 に 現 れているかにより 病 因 病 症 や 予 後 を 判 定 出 来 るのである( 不 問 診 断 ) 臨 床 的 には 浮 にして 沈 にして の 部 分 が 重 要 であり 心 肺 肝 腎 いずれの 脉 も 五 臓 の 正 脉 を 造 ることを 目 標 とする 3 菽 法 脉 診 について( 難 経 _ 五 難 参 照 ) 六 部 定 位 脉 診 における 各 脉 位 ( 寸 口 関 上 尺 中 )の 指 圧 の 軽 重 方 法 を 豆 ( 菽 ) 一 粒 の

重 さにたとえて 次 の 様 に 定 める 三 菽 皮 毛 肺 六 菽 血 脉 心 九 菽 肌 肉 脾 十 二 菽 筋 肝 十 五 菽 骨 腎 心 肺 は 陽 臓 であり 正 常 に 働 き 陽 気 が 盛 んであれば 脉 が 浮 く 肝 腎 は 陰 臓 であり 正 常 に 働 き 陰 気 が 盛 んであれば 脉 が 沈 む 脾 は 中 州 にあり 陰 中 の 至 陰 ともいわれ 後 天 の 精 微 の 元 締 めで 五 臓 六 腑 を 統 括 している 上 記 した 心 肺 の 浮 脉 肝 腎 の 沈 脉 というのは 浮 位 或 いは 沈 位 にしか 感 じない( 幅 が 無 い)と 言 うものでは 無 く ある 程 度 幅 を 持 つ( 胃 気 )ものである 臨 床 的 にはこの 様 に 厳 密 に 菽 を 意 識 するものでは 無 く 陰 陽 論 に 従 い 寸 口 は 浮 か し 気 味 に 尺 中 は 沈 め 気 味 に 行 う 4 季 節 の 脉 について( 難 経 _ 十 五 難 参 照 ) 人 体 は 小 宇 宙 とも 言 われ 季 節 ( 四 季 三 陰 三 陽 運 気 )の 影 響 無 しには 存 在 しえない ところが 古 典 鍼 灸 家 は 運 気 を 邪 気 としてのみ 受 けとめる 傾 向 が 強 い 季 節 は 人 体 に 取 って 正 気 (めぐみ)であることを 決 して 忘 れてはならない 漢 方 鍼 治 療 は 精 気 を 補 い 邪 気 を 瀉 ( 寫 )す 事 である 季 節 の 脉 は 俗 に 微 弦 微 鉤 微 毛 微 石 の 脉 と 言 われている 春 夏 長 夏 秋 冬 が 行 う 生 長 化 収 蔵 という 自 然 界 の 化 育 に 適 合 している つまり 陽 気 と 陰 気 の 盛 衰 が 現 れ それがそのまま 人 体 に 現 れると その 人 は 健 康 人 と 言 える 1 春 弦 脉 ( 脉 の 来 たる 事 濡 弱 にして 長 し) 春 は 血 の 力 により 陽 気 が 発 散 し 始 めるので 弦 脉 となり それに 胃 気 が 加 わるので 微 弦 となる 2 夏 鉤 洪 脉 ( 脉 の 来 たるや 疾 く 去 ること 遅 し) 夏 は 更 に 陽 気 が 盛 り 上 がり 発 散 の 力 を 強 め 秋 の 準 備 をし 始 めるので 鉤 脉 となり そ れに 胃 気 が 加 わり 微 鉤 となる 3 土 用 ( 長 夏 ) 緩 脉 ( 遅 緩 ) 夏 は 脾 胃 がしっかりと 働 いて 気 血 の 生 成 が 活 発 と 成 り 夏 の 陽 気 が 内 に 籠 ることなく 発 散 し 心 に 熱 が 多 くならない 様 に 制 御 しているために 遅 緩 脉 と 成 る 各 季 節 の 土 用 ( 十 八 日 間 )は 変 化 の 時 期 である 従 って 各 季 節 の 脉 に この 遅 緩 の 脉 が 加 わると 胃 気 のある 軟 らかい 脉 になる 4 秋 毛 脉 ( 脉 の 来 たる 事 軽 虚 にして 以 って 浮 かぶ) 秋 は 発 散 し 尽 くした 陽 気 が 穏 やかになり 逆 に 陰 気 の 力 が 冬 の 準 備 のために 盛 り 上 がって 固 まり 始 めるので その 陽 気 の 現 れが 僅 かとなって 毛 脉 となり それに 胃 気 が 加 わると 微 毛 となる 5 冬 石 脉 ( 脉 の 来 たる 事 沈 濡 にして 滑 ) 冬 は 陰 気 が 最 も 強 くなり 陽 気 の 温 存 を 図 るため 深 い 所 に 隠 れ 沈 むので 石 脉 となり それに 胃 気 が 加 わるので 微 石 となる 臨 床 的 には 春 夏 は 陽 気 が 盛 んとなり 浮 大 で 浮 上 性 の 傾 向 を 示 し 秋 冬 は 陰 気 が 盛 んとなり 沈 小 で 沈 降 生 の 傾 向 を 示 す この 様 な 脉 状 を 現 せば 健 康 であり これに 反 せば 五 臓 六 腑 のどこかに 病 があるものと 考 える しかし 臨 床 の 場 においては この 様 な 脉 状 に 触 れる 事 は 少 ない なぜならばこの 様 な 脉 状 になれないのが 病 気 である 従 って 治 療 後 少 しでもその 方 向 にいけばそれで 良 しとす る 5 胃 気 の 脉 について 胃 気 について 古 典 では 次 のように 述 べられている 胃 気 が 在 れば 生 き 胃 気 無 ければ 死 す ( 素 問 平 人 気 象 論 篇 )

五 臓 六 腑 皆 気 を 胃 に 受 く ( 霊 枢 五 味 篇 ) 胃 気 が 失 調 すると 脉 状 は 堅 くなり 真 臓 の 脉 になる ( 難 経 十 五 難 ) 胃 気 とは 飲 食 物 の 消 化 吸 収 により 化 生 した 水 穀 の 精 微 から 造 られた 気 血 津 液 を 経 絡 を 通 して 全 身 に 運 搬 するエネルギーである 循 環 の 過 程 で 先 天 の 原 気 を 養 いつつ 三 焦 の 原 気 となる 人 体 の 生 命 力 ともいえる 胃 気 脉 とは 陰 陽 五 行 が 調 和 し 和 緩 をおびた 脉 ( 大 小 長 短 滑 しょく 浮 沈 遅 数 に 偏 らない 脉 )である 臨 床 的 には 五 臓 正 脉 菽 法 脉 季 節 の 脉 に 適 合 し 脉 に 緩 みと 適 度 な 丸 みの 在 るもの で 寸 関 尺 に 当 てた 指 に 快 い 波 状 を 感 じるもの 6 基 本 脉 状 について( 八 祖 脉 に 弦 を 含 む) (カッコ 内 は 帰 類 脉 /より 前 は 日 本 鍼 灸 医 学 基 礎 篇 /より 後 は 漢 方 鍼 医 掲 載 を 追 加 した) 1 浮 脉 ( 浮 大 / 革 ) 形 状 軽 按 で 感 じ 重 按 で 感 じない 病 理 浮 大 で 有 力 は 陽 実 ( 傷 寒 中 風 等 で 発 熱 する) 浮 大 で 無 力 は 陰 虚 ( 労 倦 などにより 血 や 津 液 不 足 で 虚 熱 発 生 ) 浮 疾 で 無 力 は 三 焦 の 原 気 不 足 ( 旧 病 で 陽 虚 で 重 病 ) 左 右 の 寸 口 が 浮 脉 の 時 は 陽 実 か 陽 虚 である 左 右 の 関 上 と 尺 中 が 浮 脉 の 時 は その 部 の 陰 ( 血 か 津 液 )が 虚 している 刺 法 基 本 的 には 浅 補 又 は 置 鍼 浮 数 で 有 力 は 速 刺 速 抜 の 瀉 法 浮 数 で 無 力 は 浅 く 補 法 2 沈 脉 ( 沈 伏 細 / 牢 ) 形 状 軽 按 で 感 じない 重 按 で 感 じる 病 理 寒 湿 の 邪 が 臓 陰 経 裏 を 侵 したものであり 邪 気 深 く 陰 病 を 意 味 する 沈 で 有 力 は 肝 実 お 血 ( 他 の 脉 診 部 に 沈 で 有 力 な 脉 が 現 われていれば その 部 の 臓 腑 の 熱 である) 沈 で 無 力 は 水 滞 ( 湿 痰 飲 など)か 陽 虚 による 寒 冷 である 刺 法 基 本 的 には 少 し 深 く 刺 す ただし 沈 虚 であれば 浅 く 刺 して 陰 陽 共 に 補 い 置 鍼 する 事 もある 沈 実 なら 陰 経 を 瀉 すことがある 3 遅 脉 ( 遅 緩 / 結 大 ) 形 状 脉 動 が 遅 い( 三 拍 以 下 ) 病 理 病 臓 に 在 り 寒 静 の 傾 向 を 示 す 沈 で 有 力 は 慢 性 的 な 冷 えや 湿 による 痛 みが ある 遅 で 力 がなければ 血 や 津 液 が 虚 して 冷 えている 腎 虚 寒 証 の 時 に 現 われやすい 刺 法 基 本 的 にはゆっくりと 刺 して 置 鍼 する ただし 遅 で 実 であれば 少 し 深 く 置 鍼 する 遅 で 虚 なら 長 時 間 の 補 法 が 必 要 になる あるいは 灸 で 補 う 4 数 脉 ( 数 動 / 促 疾 ) 形 状 脉 動 が 早 い( 五 六 拍 以 上 ) 病 理 病 陽 腑 にある 熱 騒 の 傾 向 ( 難 経 九 難 ) 数 で 有 力 は 実 熱 ( 急 性 熱 病 肝 実 熱 陽 経 または 腑 の 熱 ) 数 で 無 力 は 虚 熱 ( 津 液 不 足 誤 治 などによる 陽 気 不 足 腫 れ 物 がある 時 ) 遅 数 脉 にこだわらず 脉 拍 が 不 安 定 でリズム 感 が 悪 い 不 快 でバランスが 悪 い 等 他 の 脉 状 との 関 連 性 をも 考 慮 する 例 えば 浮 数 虚 は 気 血 虚 損 の 極 み( 虚 労 )であり 浮 数 実 は 邪 気 旺 盛 である 刺 法 速 刺 速 抜 が 基 本 数 で 有 力 は 実 のある 部 位 を 瀉 す 数 で 無 力 は 補 法 のみ

5 虚 脉 ( 虚 微 細 軟 弱 / 濡 散 短 小 ) 形 状 無 力 で 不 鮮 明 ( 脉 幅 が 有 るような 無 いような)で 頼 りなく 按 圧 すると 無 くな る 遅 脉 の 傾 向 病 理 精 気 の 虚 損 を 現 す 労 倦 などによる 血 や 津 液 の 不 足 経 絡 が 暑 に 傷 られて 起 こる 病 証 としては 驚 きやすく 胸 騒 ぎがしやすいとある このことから 考 えると 虚 脉 とは 主 に 津 液 の 虚 によって 現 われるものであり その 本 体 は 腎 虚 のようである 刺 法 補 法 津 液 の 補 法 すなわち 陰 経 の 水 穴 と 陽 経 の 土 穴 を 用 いる 6 実 脉 ( 実 洪 力 のある 滑 弦 緊 / 大 長 ) 形 状 脉 状 が 有 力 で 鮮 明 脉 幅 大 きく 弾 力 的 で 按 圧 しても 無 くならない 数 脉 の 傾 向 病 理 外 邪 によって 熱 が 発 生 し それが 陽 経 や 腑 に 停 滞 すると 実 脉 になる お 血 が 停 滞 しても 実 脉 になる(この 場 合 の 脉 状 は 沈 大 若 しくは 細 渋 で 重 按 しても 無 くならない) 各 種 の 熱 証 から 波 及 した 熱 によっても 実 脉 になる 刺 法 瀉 法 陽 経 熱 は 速 刺 速 抜 陰 経 熱 は 深 く 刺 す 7 滑 脉 形 状 脉 動 円 滑 でリズム 感 があり やや 数 脉 の 傾 向 手 にクルクルと 珠 の 様 に 触 れて なめらかな 感 じ 病 理 一 定 の 病 因 から 発 症 するものでは 無 く 上 に 押 し 挙 げようとする 陽 気 あるい は 外 に 出 て 行 こうとする 陽 気 と これを 押 さえ 込 もうとする 何 か( 痰 飲 宿 食 )がぶつ か り 合 った 時 に 現 われる 脉 である その 出 て 行 こうとする 陽 気 は ほとんどが 陰 虚 によ っ てできた 虚 熱 である 従 って 食 欲 旺 盛 で 暑 がり 四 肢 煩 熱 痰 飲 宿 食 高 血 圧 高 コレステロール 妊 娠 の 時 等 に 現 れる 刺 法 陰 経 を 補 った 後 陽 経 にまだ 熱 ( 実 )が 残 っていれば 瀉 法 する 但 し 陰 虚 の 虚 熱 の 場 合 は 陰 経 を 補 っただけで 改 善 することが 多 い 8 しょく 脉 ( 渋 脉 ) 形 状 手 にざらざらと 触 れて 大 小 ばらつきリズム 無 く やや 遅 脉 の 傾 向 切 れない 刃 物 で 竹 を 削 る 感 じ あるいは 鉄 錆 を 触 る 感 じだと 言 われている 病 理 気 血 の 循 環 障 害 やお 血 による 血 滞 等 いずれの 場 合 も 陽 気 の 循 環 が 悪 くなった り 不 足 した 時 に 現 われる 刺 法 陽 気 ( 衛 気 )を 補 い 血 の 停 滞 があれば 瀉 す お 血 に 対 しては 刺 絡 治 療 や 灸 頭 鍼 等 が 有 効 9 弦 脉 形 状 弓 の 弦 に 接 する 感 じで 軽 按 では 感 じられず 重 按 すると 弓 の 弦 を 張 ったよう に 感 じる 脉 である 病 理 熱 の 停 滞 血 の 変 動 による 疼 痛 寒 冷 麻 痺 血 等 で 現 れる 弦 で 無 力 は 経 絡 の 血 不 足 による 虚 熱 弦 で 有 力 はその 部 の 臓 腑 に 熱 が 停 滞 している 肝 虚 ( 血 虚 )による 筋 肉 痛 や 神 経 痛 の 時 又 は 脾 虚 肝 実 熱 のとき 刺 法 陰 を 補 って 必 要 に 応 じて 瀉 す 7 脉 診 部 位 と 脉 診 方 法 1. 脉 診 部 位 六 部 定 位 脉 診 と 言 われ 左 右 の 橈 骨 動 脉 の 拍 動 部 を 中 心 に 診 る 古 典 では 腕 関 節 横 紋 か ら 一 寸 九 分 の 間 を 寸 口 または 気 口 という それをさらに 分 けて 寸 口 関 上 尺 中 という 寸 口 は 腕 関 節 横 紋 の 直 下 関 上 は 橈 骨 茎 状 突 起 ( 古 典 では 高 骨 という)の 内 側 その 下 に 尺 中 がある

一 般 に 橈 骨 茎 状 突 起 の 内 側 つまり 骨 が 飛 び 出 ている 内 側 で もっとも 拍 動 をよく 感 じる 場 所 が 関 上 だといわれている その 関 上 にまず 中 指 を 当 てて その 上 に 示 指 を 当 てて 寸 口 を その( 中 指 ) 下 に 薬 指 を 当 てて 尺 中 を 診 る ということになっている 以 上 のように 脉 診 部 位 は 左 右 六 か 所 になるが 各 脉 診 部 位 には 臓 腑 経 絡 が 配 当 されてい る( 後 述 ) 2. 脉 診 方 法 の 基 本 イ) 原 則 として 患 者 を 仰 臥 させてから 診 る 患 者 の 手 の 位 置 は 臍 より 少 し 下 下 腹 の 部 分 に 自 然 と 置 いた 感 じがよい その 時 患 者 の 肘 は 脇 腹 に 当 たっているはずである 無 理 に 持 ち 上 げたり 力 を 入 れさせてはいけない 患 者 の 手 掌 面 は 頭 部 か 少 し 上 に 向 いてい る のがよい ロ) 脉 を 診 る 時 は 患 者 の 左 側 に 立 つのが 原 則 である また いきなり 脉 を 診 るのではな く 患 者 を 仰 臥 させた 後 五 分 くらいは 休 ませてから 診 る ハ) 脉 診 部 に 直 角 に 指 をあてるのがよい 指 が 斜 めにならないように 気 をつける ニ) 脉 診 部 に 指 をあてる 時 は 最 も 敏 感 な 部 分 をあてる 一 般 には 指 頭 よりも 指 腹 が 敏 感 な 人 が 多 いが これにこだわることはない ただし 自 分 の 指 先 の 脉 の 拍 動 を 感 じる 人 は 自 分 の 脉 か 患 者 の 脉 か 分 からないことがあるので 指 腹 で 診 るのがよい ホ) 詳 しくは 後 述 するが 脉 は 強 く 按 圧 したり 弱 く 按 圧 したりして 診 る その 時 は 六 本 の 指 に 同 時 に 平 均 して 力 を 入 れる 訓 練 をする 少 し 慣 れたら 寸 口 は 心 もち 軽 く 按 圧 する 関 上 は 中 くらい 尺 中 はやや 深 く 力 を 入 れ て 診 る( 菽 法 脉 診 ) これがうまくできないと 寸 口 が 常 に 虚 して 尺 中 は 常 に 脉 があるよ う に 診 えてしまう ただし 慣 れてくると 別 々に 診 たり 左 右 や 浮 沈 寸 尺 を 比 較 したりしながら 診 るこ ともある( 総 按 単 按 ) ヘ) 指 に 力 が 入 り 過 ぎると 脉 が 分 からなくなる 指 の 力 を 抜 いて 感 じるままに 診 るのが よい 強 く 按 圧 して 診 る 時 はどうしても 指 に 力 が 入 るのだが 六 指 に 力 を 入 れるのでは な く 陽 池 にあてた 拇 指 を 支 点 にして 肘 でコントロールする( 詳 しくは 実 技 に 譲 る) ト) 脉 を 診 る 時 間 はあまり 長 くないのがよい 長 く 診 ていると 患 者 が 嫌 がることがある こ れは 脉 診 部 を 握 り 締 めるようになるからである 特 に 補 の 指 になっていない 術 者 が 診 ると 気 の 動 きやすい 患 者 は 陽 気 が 奪 われて 余 計 に 悪 い 脉 になる チ) 腹 診 したり 腹 部 に 鍼 をすると 脉 が 変 わることがある その 場 合 変 わった 脉 状 を 主 として 診 断 する しかし これも 補 の 手 で 腹 診 したり 鍼 をした という 前 提 である 補 の 手 になっていないと 結 局 は 診 断 も 治 療 もだめなのである リ)すぐに 脉 が 変 わる 人 は 気 が 動 きやすいので 鍼 する 時 も 注 意 が 必 要 である 少 しくら い 触 っても 脉 が 変 わらない 人 は 血 の 病 気 や 慢 性 の 治 りにくい 病 気 をしている 3. 脉 の 診 方 ( 浮 中 沈 について) 浮 の 診 方 ( 軽 按 )とは 脉 診 部 に 指 を 軽 く 乗 せて 診 る 方 法 ( 皮 毛 ) 中 の 診 法 ( 中 按 )とは 指 を 中 くらいの 強 さにして 診 るという 方 法 ( 肌 肉 ) 沈 の 診 法 ( 重 按 )とは 指 を 沈 めて 診 る 方 法 ( 骨 ) この 三 方 法 は 六 部 位 同 時 に 行 う もちろん 六 部 位 を 別 々に 診 る 方 法 もある( 総 按 単 按 ) 1 軽 按 とは 軽 く 指 を 載 せただけで 脉 を 感 じるようにする 感 じなければそれでよい 無 理 に 感 じよ うと 按 圧 したのでは 軽 按 とはいえない まず 軽 按 で 六 部 位 のどこで 脉 を 感 じるかに 注 意 する 軽 按 により 腑 と 陽 経 の 状 態 を 診 る 脉 診 部 を 軽 く 按 圧 できるようになれば 重 按 してから 軽 按 してもよく 解 るのである 2 中 按 とは 次 に 左 右 の 六 部 位 全 体 で 平 等 に 脉 拍 を 感 じるまで 指 を 沈 めて 診 る これを 中 脉 を 診 ると

いう 中 脉 を 診 るとすれば 按 圧 の 深 さにはデコボコが 生 じるはずである 中 按 によって 胃 気 の 状 態 を 診 る 全 体 の 脉 状 に 軟 らかみがあり 中 脉 が 大 きければ 胃 の 気 が 旺 盛 だとする 全 体 の 脉 状 も 中 脉 で 判 断 する 例 えば 脉 が 浮 いているか 沈 んでいるかは この 中 脉 によっ て 判 断 するのである もし 軽 按 する 部 位 で 脉 拍 が 良 く 感 じれば その 脉 は 浮 いていると 判 断 する 重 按 によりその 脉 がよく 感 じるとすればその 脉 は 沈 んでいると 判 断 する また その 他 の 脉 状 も もっとも 脉 をよく 感 じる 中 脉 によって 判 断 するのである 3 重 按 とは 次 に 中 按 の 指 の 深 さ(デコボコ)のまま ゆっくりと 指 を 沈 めて 拍 動 が 感 じるかどう かを 診 る これを 重 按 で 診 る または 沈 めて 診 るともいう 重 按 によって 陰 経 や 臓 の 状 態 を 診 るのである 六 部 位 のどこの 脉 がどのような 状 態 になっているかを 診 る この 場 合 血 管 を 押 しつぶすほど 力 を 入 れてはいけない もちろん 寸 口 はやや 軽 く 按 圧 す るようになるし 尺 中 は 深 く 按 圧 するようになるはずである( 菽 法 脉 診 ) なお 軽 按 する 時 は 指 腹 で 診 ているのに 重 按 する 時 には 指 尖 で 診 ている 人 がいる こ れでは 最 初 に 脉 を 診 た 所 とは 別 の 部 位 を 診 るようになるのでよく 注 意 すること 4. 六 部 位 で 何 を 診 るか 1 寸 口 左 右 とも 全 身 の 陽 気 を 診 る 左 右 とも 上 焦 の 状 態 を 診 る 左 右 とも 頚 の 人 迎 脉 と 関 係 する 左 手 心 臓 の 状 態 を 診 る 右 手 肺 臓 の 状 態 を 診 る 2 関 上 膈 の 気 を 診 る 左 右 とも 中 焦 の 状 態 を 診 る 左 右 とも 足 の 陽 脉 と 関 係 する 左 手 肝 臓 の 状 態 を 診 る 右 手 脾 臓 の 状 態 を 診 る 胃 気 を 診 る 3 尺 中 左 右 とも 下 焦 の 状 態 を 診 る 左 右 とも 大 腸 の 状 態 を 診 る 左 右 とも 妊 娠 の 状 態 を 診 る 左 右 とも 陰 気 の 状 態 を 診 る 左 右 とも 足 の 少 陰 脉 と 関 係 する 左 手 腎 臓 の 状 態 をみる 右 手 三 焦 の 原 気 を 診 る 心 の 陽 気 を 診 る 六 部 位 に 配 当 されているのは 臓 腑 なのか 経 絡 なのか これは 経 絡 を 配 当 したものなのだが 素 問 の 脉 要 精 微 論 などの 記 述 を 参 考 にして 脉 状 や 病 症 を 考 慮 すれば 臓 腑 の 状 態 も 分 かるのである したがって 六 部 位 で 全 身 の 状 態 を 診 ているのである 以 上 作 成 _ 天 野 靖 之 参 考 引 用 文 献 臨 床 に 生 かす 古 典 の 学 び 方 池 田 政 一 著 医 道 の 日 本 社 臓 腑 経 絡 からみた 薬 方 と 鍼 灸 池 田 政 一 編 著 監 修 漢 方 陰 陽 会 日 本 鍼 灸 医 学 ( 経 絡 治 療 基 礎 編 ) 経 絡 治 療 学 会 編 纂 経 絡 治 療 学 会 漢 方 鍼 医 漢 方 鍼 医 会 編