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相 関 関 係 と 因 果 関 係 (Correlation and Causality) 相 関 係 数 の 二 つの 落 とし 穴 2002 年 7 月 27 日 明 治 大 学 阪 井 和 男 sakai@isc.meiji.ac.jp 相 関 関 係 の 有 無 と 因 果 関 係 の 有 無 とはどのような 関 係 があるのだろうか 相 関 関 係 と 因 果 関 係 の 混 同 は 現 在 でもよく 見 られるため 具 体 例 を 挙 げて 問 題 点 を 指 摘 する さらに 数 値 データに 対 しては 相 関 関 係 を 調 べる 図 的 な 方 法 を 与 えて その 後 に 相 関 関 係 を 定 量 化 する 方 法 として 相 関 係 数 を 導 入 する 一 般 に 統 計 的 な 処 理 においては 相 関 係 数 を 用 い て 議 論 がなされるが 相 関 係 数 が 有 効 に 機 能 しない 例 外 的 な 具 体 例 を 挙 げて 相 関 係 数 の 解 釈 に 対 する 警 告 を 与 える 1. 相 関 があって 因 果 関 係 もある! 次 に 挙 げたのは 相 関 があって 因 果 関 係 もある 例 である 子 供 たちを 集 めてボール 投 げ 上 げ 競 争 をした このとき 投 げ 上 げたボールの 速 さ と 到 達 した 高 さの 間 の 関 係 なぜ 相 関 があるか? 投 げ 上 げるボールの 速 さが 速 ければ 速 いほど 到 達 する 高 さも 高 いから なぜ 因 果 関 係 があるか? ニュートン 力 学 を 用 いれば 到 達 する 高 さがボールの 速 さによって 決 定 できることを 示 すことが 出 来 る 2. 相 関 がなくて 因 果 関 係 もない! 次 の 例 は 相 関 がなくて 因 果 関 係 もないことは 明 らかである ポルトガル 国 リスボン 市 の 一 日 あたりの 交 通 事 故 件 数 と あなたの 一 日 あたりの 摂 取 カロリー 数 明 治 大 学 阪 井 和 男 1/9 12/20/2012

3. 相 関 があるのに 因 果 関 係 がない? 3.1 キレるのは 食 生 活 が 原 因? [ 問 題 ] 次 の 主 張 の 問 題 点 を 指 摘 せよ 以 下 の 新 聞 記 事 ( 読 売 新 聞 )が 示 すように 子 どもたちが キレる 行 動 を 取 る 原 因 は バランスの 悪 い 食 事 が 引 き 起 こす 脳 の 栄 養 失 調 である したがって 食 生 活 指 導 を 充 実 さ せれば 子 どもたちの キレる 行 動 は 減 るはずである 食 事 乱 れて キレる? 脳 の 栄 養 失 調 が 深 刻 子 供 たちの 乱 れた 食 事 が キレる 行 動 と 関 係 するのではないか と 文 部 省 は 先 週 食 生 活 指 導 を 充 実 させるよう 都 道 府 県 教 育 委 員 会 に 対 し 通 知 した 広 島 県 福 山 市 立 女 子 短 大 の 鈴 木 雅 子 教 授 も 欠 食 や 栄 養 バランスの 悪 い 貧 しい 食 生 活 が 子 どもたちをいらつかせ 生 きる 基 盤 を 揺 るがしている と 警 告 する その 根 拠 とな る 研 究 報 告 はこうだ 福 山 尾 道 両 市 内 の 中 学 生 の 男 女 計 1169 人 に 対 しアンケート 調 査 を 行 った 毎 朝 朝 食 を 食 べますか 1 週 間 に3 日 以 上 大 根 ごぼうなどの 根 菜 類 を 食 べていますか ラーメン カップめんはよく 食 べますか など 食 生 活 について13 問 を 質 問 一 方 健 康 状 態 も いらいらすることが 多 いですか 腹 が 立 つことが 多 いですか などと10 問 に 答 えてもらい 両 者 の 相 関 関 係 を 比 較 した 食 生 活 を 良 い 方 からA Eの5グループに 分 けた 結 果 食 生 活 が 最 も 悪 いEグループの 女 子 全 員 が 腹 が 立 つ と 答 えた すぐカッとなる のは 食 事 のバランスが 良 いAグル ープの 女 子 は1 割 に 過 ぎないが Eグループでは3 人 に2 人 の 割 合 でいた 友 達 らを い じめている 人 は Eグループの 男 子 で4 割 もいるのに 対 し Aグループでは1 人 もいな かった 脳 の 重 さは 全 体 重 の2% 程 度 だが 全 エネルギーの20%も 消 費 する 大 食 漢 脳 活 動 に 必 要 不 可 欠 なミネラル ビタミン たんぱく 質 が 不 足 した 食 事 をとっているD Eグルー プは 脳 における 栄 養 失 調 を 起 こしている と 鈴 木 教 授 食 事 改 善 のポイントとして 1 旬 の 野 菜 や 海 藻 を 多 く 使 い 食 材 の 種 類 を 増 やす 2 インスタント 食 品 はできるだけ 使 わず 使 う 時 は 材 料 添 加 物 のチェックする 3 でん ぷん たんぱく 質 脂 質 の 摂 取 を6 3 2の 割 合 にする を 挙 げる 明 治 大 学 阪 井 和 男 2/9 12/20/2012

キレる 脳 の 栄 養 失 調 相 関 バランスの 悪 い 食 事 [ 解 答 ] 新 聞 記 事 が 示 している 統 計 データは 食 生 活 の 悪 さと キレる 行 動 の 相 関 関 係 を 述 べ ているだけで 因 果 関 係 を 述 べているわけではない つまり 相 関 関 係 があっても 因 果 関 係 があるとはいえない たとえば 食 生 活 の 悪 さと キレる 行 動 の 本 当 の 原 因 が 親 の 育 児 に 関 する 無 関 心 さ にあると 考 えてみよう この 場 合 親 が 子 どもに 無 関 心 だから 子 どもの 食 生 活 が 乱 れる し 子 どもの 精 神 面 での 教 育 も 不 十 分 になるといえることになる つまり 原 因 が 同 じで あるため 食 生 活 の 悪 さと キレる 行 動 に 相 関 関 係 が 生 まれる しかし この 二 つは 因 果 関 係 にないので 食 生 活 を 改 善 しても 親 の 育 児 に 関 する 関 心 が 高 まらなければ キレ る 行 動 は 減 ることはない 仮 説 子 供 の 精 神 面 で の 教 育 が 不 十 分 キレる 親 の 育 児 に 対 する 無 関 心 さ 相 関 子 供 の 食 生 活 が 乱 れる バランスの 悪 い 食 事 [ 引 用 URL] 問 題 : キレるのは 食 生 活 が 原 因? ( 倉 島 保 美 ) より 引 用 http://www2u.biglobe.ne.jp/~kurapy/logical/training/q_kireru.html 解 答 : キレるのは 食 生 活 が 原 因? ( 倉 島 保 美 ) http://www2u.biglobe.ne.jp/~kurapy/logical/training/a_kireru.html 明 治 大 学 阪 井 和 男 3/9 12/20/2012

3.2 母 乳 は IQ を5ポイント 以 上 上 げる? [ 問 題 ] 次 の 記 事 をよく 読 み 論 理 的 な 誤 りを 指 摘 し 何 がどう 問 題 かについて 論 ぜよ 母 乳 は 乳 児 の 免 疫 組 織 を 強 化 し 母 子 関 係 を 緊 密 にするとされるが さらにIQを 高 める 効 果 もあ ることが 確 認 された デンマークと 米 国 の 合 同 研 究 班 が 発 表 し 米 国 の 医 学 雑 誌 に 掲 載 された 調 査 結 果 によると 7~ 9ヵ 月 母 乳 を 飲 みつづけた 人 のIQは 母 乳 を 飲 まなかったか 非 常 に 短 期 間 しか 飲 まなかった 人 に 比 べて 5ポイント 以 上 高 かった 母 乳 で 育 った 人 のIQの 平 均 値 は 105 母 乳 以 外 で 育 った 人 は 99.4 人 工 乳 メーカーの 何 社 かは この 母 乳 効 果 に 目 をつけ 母 乳 の 構 成 要 素 を 抽 出 し 自 社 製 品 に 加 えることを 決 めたという IQ が 高 い 母 乳 効 果 相 関 母 乳 を 飲 み 続 ける [ 解 答 ] 省 略 仮 説? IQ が 高 い? 相 関? 母 乳 を 飲 み 続 ける [ 引 用 文 献 ] 日 刊 ゲンダイ 2002 年 ( 平 成 14 年 )5 月 24 日 15 面 情 報 ボックスより 明 治 大 学 阪 井 和 男 4/9 12/20/2012

4 年 終 了 時 成 績 4. 相 関 の 有 無 と 相 関 係 数 4.1 相 関 の 有 無 数 値 データの 間 の 相 関 を 調 べるには 散 布 図 を 作 ってみるとよい 相 関 がない 代 表 的 な 例 として 二 つの 乱 数 の 散 布 図 を 次 に 示 しておく 乱 数 の 散 布 図 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 図 のように 相 関 がない 場 合 には 散 布 図 がに 散 らばって 特 定 の 構 造 が 何 も 見 えない こ れに 対 して 強 い 相 関 がある 場 合 には 特 定 の 場 所 に 集 中 してきれいな 構 造 が 姿 を 現 す [ 問 題 ] 大 学 生 の 在 学 時 の 成 績 の 間 には 相 関 があるか? [ 解 答 ] 強 い 相 関 がある 次 の 図 を 参 照 のこと 1998 年 度 入 学 者 ( 法 学 部 一 般 入 試 相 関 係 数 = 0.856788) 4.0 3.0 2.0 y = 0.8851x R 2 = 0.678 4 年 次 線 形 (4 年 次 ) 1.0 0.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 1 年 終 了 時 成 績 明 治 大 学 阪 井 和 男 5/9 12/20/2012

4 年 終 了 時 成 績 この 場 合 は 強 い 性 の 相 関 を 持 っている つまり 一 年 終 了 時 の 成 績 がよければ 卒 業 時 の 成 績 もよいという 傾 向 ( 正 の 相 関 )がはっきりと 現 れている ちなみにどの 学 年 次 ごと にも より 強 い 相 関 がある [ 問 題 ] 大 学 生 の 入 試 成 績 と 卒 業 時 の 成 績 に 相 関 があるか?つまり 入 試 得 点 がよければ 卒 業 時 の 成 績 もよいか? [ 解 答 ] 相 関 はほとんどない 次 の 図 を 参 照 のこと 1998 年 度 入 学 者 ( 法 学 部 一 般 入 試 相 関 係 数 = 0.081454) 4.0 3.0 2.0 y = 0.0054x + 0.5623 R 2 = 0.0113 4 年 次 線 形 (4 年 次 ) 1.0 0.0 170 190 210 230 250 270 入 試 得 点 入 試 得 点 の 軸 で 左 側 に 白 くデータの 抜 けがあるのはこの 得 点 で 足 切 りをしたからであり したがってこの 点 の 右 側 近 くに 合 格 者 が 集 中 している 様 子 が 分 かる 前 の 図 のようにはっ きりとした 構 造 が 見 えてこない データの 相 関 を 特 徴 付 ける 量 として 直 線 性 へのまとまりのよさを 表 す 相 関 係 数 r が 統 計 処 理 においてはよく 用 いられている 相 関 係 数 は -1 から 1 の 値 をとり 次 式 で 定 義 さ れる r = s 2 xy / (sx sy) 明 治 大 学 阪 井 和 男 6/9 12/20/2012

ここで 分 子 は 共 分 散 であり 平 均 値 を 中 心 として 第 1 3 象 限 のデータには 正 第 2 4 象 限 のデータには 負 の 寄 与 を 与 える 分 母 はそれぞれ 標 本 標 準 偏 差 である s 2 xy = {1/(n-1)} Σ(xi-<x>)(yi-<y>) s 2 x = {1/(n-1)} Σ(xi-<x>) 2 s 2 y = {1/(n-1)} Σ(yi-<y>) 2 ここで n はデータの 個 数 <x>と<y>はそれぞれ 平 均 値 を 表 す 相 関 係 数 をそれぞれ 求 めたものを 次 の 表 にまとめる 入 試 1 年 次 2 年 次 3 年 次 4 年 次 入 試 1 1 年 次 0.081454 1 2 年 次 0.098474 0.920399 1 3 年 次 0.1 0.881955 0.970245 1 4 年 次 0.101995 0.856788 0.948694 0.982095 1 入 試 得 点 に 対 する 各 学 年 次 の 相 関 係 数 はいずれも 0.1 程 度 であり ほとんど 相 関 がないのに 対 して それぞれの 学 年 次 どうしの 相 関 係 数 は 0.9 程 度 を 示 しており 強 い 相 関 があること が 分 かる 5. 因 果 関 係 があるのに 相 関 がない? 一 般 的 にいえば 因 果 関 係 があれば 相 関 はありそうである 相 関 の 有 無 を 相 関 係 数 を 用 い て 判 定 するものとして 因 果 関 係 があるにもかかわらず 相 関 係 数 からは 相 関 がまったく 読 み 取 れない 例 を 挙 げる もっとも 明 瞭 で 単 純 な 因 果 関 係 を 与 えるとすると 両 者 の 間 に 関 数 関 係 がある 場 合 である ここではひとつのパラメータ A しかもたない 二 次 式 で 次 のように 与 える x(t+1) = A x(t){1-x(t)} 明 治 大 学 阪 井 和 男 7/9 12/20/2012

パラメータ A を 与 えて 初 期 値 x(0)を 与 えると x(1)が 求 まり x(1)が 決 まるとその 値 から x(2) が 次 に 決 まるというふうに 次 々と 値 を 二 次 式 で 決 まっていくことになる すべての 値 が 計 算 式 で 求 められるということは 完 全 に 決 定 論 に 従 うことを 意 味 する パラメータ A=4 初 期 値 x(0)=0.1 として このように 求 まったはじめのいくつかを 表 に 表 す x(t) x(t+1) 0.1 0.36 0.36 0.9216 0.9216 0.289014 0.289014 0.821939 0.821939 0.585421 0.585421 0.970813 0.970813 0.113339 0.113339 0.401974 0.401974 0.961563 0.961563 0.147837 0.147837 0.503924 これらの 二 列 の 数 値 データを 100 個 集 めて 相 関 係 数 を 求 めてみると 次 の 表 のように 与 えられる x(t) x(t+1) x(t) 1 x(t+1) -0.06655 1 すなわち 相 関 係 数 から 見 ると ほとんど 相 関 がないと 結 論 せざるを 得 ない ところが これらのデータから 散 布 図 を 求 めると 次 の 図 のように 明 確 な 構 造 が 存 在 していることが 分 かる 明 治 大 学 阪 井 和 男 8/9 12/20/2012

x(t) x(t+1) x(t) vs x(t+1) 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 x(t) 乱 数 の 場 合 とはまったく 違 った 様 子 で きわめて 強 い 相 関 を 持 っていることが 明 らかであ る ただし 相 関 係 数 がゼロに 近 かったように 直 線 性 は 極 めて 悪 いといわざるを 得 ない 参 考 までに 一 列 分 だけのデータを 折 れ 線 グラフとして 描 くと 次 図 のようにきわめて 乱 雑 性 が 強 いことが 分 かる これは ロジスティック 写 像 によるカオスの 時 系 列 なのである ロジスティック 写 像 のカオス 時 系 列 (A=4) 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 20 40 60 80 100 t 相 関 の 有 無 を 相 関 係 数 で 論 じる 場 合 は 相 関 係 数 が 直 線 的 な 相 関 関 係 しか 判 定 できないこ とに 注 意 を 要 する 以 上 明 治 大 学 阪 井 和 男 9/9 12/20/2012