Q 改 正 後 の 退 職 給 付 に 関 する 会 計 基 準 と 改 訂 IAS 第 19 号 との 差 異 を 教 え てください A 数 理 計 算 上 の 差 異 過 去 勤 務 費 用 の 会 計 処 理 退 職 給 付 見 込 額 の 期 間 配 分 方 式 および 期 待 運 用 収 益 という 概 念 の 廃 止 が 主 な 差 異 として 残 っています 平 成 24 年 5 月 に 企 業 会 計 基 準 委 員 会 より 企 業 会 計 基 準 第 26 号 退 職 給 付 に 関 する 会 計 基 準 ( 以 下 基 準 )が 公 表 されました また 平 成 23 年 6 月 にIASBは 改 訂 IAS 第 19 号 従 業 員 給 付 ( 以 下 IAS19)を 公 表 しています 両 者 の 関 係 は 以 下 のとおりです 項 目 国 際 財 務 報 告 基 準 ( 改 訂 IAS 第 19 号 ) 退 職 給 付 に 関 する 会 計 基 準 退 職 給 付 債 務 測 定 日 期 間 配 分 方 式 基 礎 率 割 引 率 年 金 資 産 の 評 価 決 算 日 決 算 日 給 付 算 定 式 決 算 日 現 在 の 優 良 社 債 の 市 場 利 回 り 等 期 間 定 額 基 準 と 給 付 算 定 式 基 準 のいずれか の 方 法 を 選 択 適 用 期 末 における 国 債 政 府 機 関 債 及 び 優 良 社 債 等 の 安 全 性 の 高 い 債 券 の 利 回 りを 基 礎 として 決 定 昇 給 率 インフレーション 等 を 考 慮 予 想 される 昇 給 等 を 考 慮 した 昇 給 率 期 待 運 用 収 益 率 期 待 運 用 収 益 という 概 念 を 廃 止 し 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 割 引 率 を 乗 じて 純 利 息 費 用 を 算 定 期 首 の 年 金 資 産 の 額 に 合 理 的 に 期 待 される 収 益 率 ( 長 期 期 待 運 用 収 益 率 )を 乗 じて 計 算 決 算 日 の 公 正 価 値 決 算 日 における 公 正 な 評 価 額 数 理 計 算 上 の 差 異 の 会 計 処 理 その 他 の 包 括 利 益 で 即 時 認 識 リサイクリングしない 当 期 発 生 額 のうち 費 用 処 理 されない 部 分 に ついては その 他 の 包 括 利 益 で 認 識 する 過 去 勤 務 費 用 の 会 計 処 理 即 時 に 純 損 益 で 認 識 数 理 計 算 上 の 差 異 の 処 理 方 法 に 準 じる 表 示 連 結 貸 借 対 照 表 連 結 包 括 利 益 計 算 書 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 の 再 測 定 その 他 の 包 括 利 益 過 去 勤 務 費 用 純 損 益 積 立 状 況 を 示 す 額 について 純 額 で 退 職 給 付 に 係 る 負 債 ( 又 は 退 職 給 付 に 係 る 資 産 ) で 計 上 当 期 に 費 用 処 理 された 部 分 退 職 給 付 費 用 として 計 上 当 期 に 費 用 処 理 されない 部 分 その 他 の 包 括 利 益 で 計 上 なお 主 な 差 異 として 挙 げた 数 理 計 算 上 の 差 異 過 去 勤 務 費 用 の 会 計 処 理 退 職 給 付 見 込 額 の 期 間 配 分 方 式 および 期 待 運 用 収 益 という 概 念 の 廃 止 については これ 以 降 のページで します
Q 改 正 後 の 退 職 給 付 に 関 する 会 計 基 準 と 改 訂 IAS 第 19 号 では 数 理 計 算 上 の 差 異 および 過 去 勤 務 費 用 の 処 理 についてどのような 違 いがあります か A 改 訂 IAS 第 19 号 では 数 理 計 算 上 の 差 異 はその 他 の 包 括 利 益 で 認 識 することが 要 求 されて います また 過 去 勤 務 費 用 は 即 時 に 純 損 益 で 認 識 しなければならないとされています 基 準 では 数 理 計 算 上 の 差 異 は 原 則 として 各 期 の 発 生 額 について 平 均 残 存 勤 務 期 間 以 内 の 一 定 の 年 数 で 按 分 する 方 法 により 毎 期 費 用 処 理 します( 基 準 第 24 項 ) また 過 去 勤 務 費 用 についても 数 理 計 算 上 の 差 異 に 準 じた 処 理 を 行 います( 基 準 第 25 項 ) これに 対 して IAS19では 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 の 再 測 定 ( 基 準 の 数 理 計 算 上 の 差 異 に 相 当 する 部 分 )は その 他 の 包 括 利 益 で 認 識 することが 要 求 されています(IAS19.120(c)) また 過 去 勤 務 費 用 は (a) 制 度 改 訂 又 は 縮 小 が 発 生 した 時 (b) 関 連 するリストラクチャリング 費 用 又 は 解 雇 給 付 を 企 業 が 認 識 する 時 の(a)(b)いずれか 早 い 時 に 費 用 として 認 識 しなければならないとされています(IAS19. 103) このため 基 準 とIAS19では 以 下 のように 差 異 が 生 じます 国 際 財 務 報 告 基 準 ( 改 訂 IAS19 号 ) 退 職 給 付 に 関 する 会 計 基 準 数 理 計 算 上 の 差 異 の 会 計 処 理 その 他 の 包 括 利 益 として 認 識 する その 他 の 包 括 利 益 として 認 識 した 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 の 再 測 定 は その 後 の 期 間 で 純 損 益 に 振 替 えることができ ない( 包 括 利 益 計 算 書 での 組 替 調 整 はで きない) ただし その 他 の 包 括 利 益 として 認 識 し た 金 額 を 資 本 の 中 で 振 替 えることが 可 能 である 当 期 発 生 額 のうち 費 用 処 理 されない 部 分 については その 他 の 包 括 利 益 に 含 め て 計 上 する その 他 の 包 括 利 益 に 計 上 された 額 は 平 均 残 存 勤 務 期 間 以 内 の 一 定 の 年 数 で 按 分 した 額 を 毎 期 費 用 処 理 する( 包 括 利 益 計 算 書 での 組 替 調 整 が 必 要 となる) 過 去 勤 務 費 用 の 会 計 処 理 即 時 に 純 損 益 で 認 識 数 理 計 算 上 の 差 異 の 処 理 方 法 に 準 じる IAS19で 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 総 額 の 再 測 定 を 包 括 利 益 計 算 書 で 純 損 益 に 振 替 えない 理 由 につ いては その 他 の 包 括 利 益 と 純 損 益 を 識 別 する 原 則 が 定 められておらず また その 他 の 包 括 利 益 から 純 損 益 に 振 替 える 方 法 も 定 められていないことを 挙 げています(IAS19. BC90,99)
Q Vol.16(2012.12) 退 職 給 付 見 込 額 の 期 間 配 分 方 式 について 両 基 準 の 差 異 を 教 えてくだ さい A IFRSでは 給 付 算 定 式 日 本 基 準 では 期 間 定 額 基 準 あるいは 給 付 算 定 式 基 準 のいずれか を 選 択 適 用 して 期 間 配 分 します 基 準 では 退 職 給 付 見 込 額 のうち 期 末 までに 発 生 したと 認 められる 額 は 期 間 定 額 基 準 あるいは 給 付 算 定 式 基 準 のいずれかの 方 法 を 選 択 適 用 して 算 定 することとしています( 基 準 第 19 項 ) ただし 給 付 算 定 式 基 準 による 場 合 勤 務 期 間 の 後 期 における 給 付 算 定 式 に 従 った 給 付 が 初 期 よりも 著 しく 高 い 水 準 となるときには 当 該 期 間 の 給 付 が 均 等 に 生 じるとみなして 補 正 した 給 付 算 定 式 に 従 わなければな らないとしています( 基 準 同 項 ) これに 対 して IAS19では 給 付 算 定 式 に 基 づいて 勤 務 期 間 に 給 付 を 帰 属 させなければならないとし ています(IAS19.70) ただし 後 期 の 年 度 における 従 業 員 の 勤 務 が 初 期 の 年 度 より 著 しく 高 い 水 準 の 給 付 を 生 じさせる 場 合 には 企 業 は 給 付 を 定 額 法 により 次 の 期 間 に 帰 属 させなければなりません (IAS19.70) 1 従 業 員 による 勤 務 が 制 度 の 下 での 給 付 を 最 初 に 生 じさせた 日 ( 当 該 給 付 が 将 来 の 勤 務 を 条 件 とし ているかどうかにかかわらず)から 2 従 業 員 によるそれ 以 降 の 勤 務 が それ 以 降 の 昇 給 を 除 けば 制 度 の 下 での 重 要 な 追 加 の 給 付 を 生 じさせなくなる 日 まで 上 記 の 基 準 およびIAS19の 期 間 配 分 方 法 を 図 に 表 すと 以 下 のようになります 退 職 給 付 2 見 込 額 給 付 算 定 式 を 定 額 法 により 補 正 した 場 合 期 間 定 額 基 準 給 付 算 定 式 1 勤 務 期 間 このように どの 期 間 配 分 方 式 によるかで 各 時 点 における 退 職 給 付 見 込 額 の 配 分 額 は 異 なってきま す 基 準 では いずれの 方 法 も 認 められていますが IAS19では 給 付 算 定 式 ( 定 額 法 により 補 正 した 場 合 を 含 む)しか 認 められていないため 基 準 を 適 用 し 期 間 定 額 基 準 を 採 用 している 場 合 には 日 本 基 準 からIFRSへの 移 行 に 伴 い 財 務 諸 表 に 影 響 が 出 る 可 能 性 があります
Q 期 待 運 用 収 益 の 算 定 について 両 基 準 の 差 異 を 教 えてください A IFRSには 期 待 運 用 収 益 という 概 念 はなく 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 割 引 率 を 乗 じた 額 を 純 利 息 費 用 として 計 上 します 基 準 では 期 待 運 用 収 益 は 退 職 給 付 費 用 に 含 まれる 項 目 として 規 定 されており( 基 準 第 14 項 (3)) その 額 は 期 首 の 年 金 資 産 の 額 に 合 理 的 に 期 待 される 収 益 率 ( 長 期 期 待 運 用 収 益 率 )を 乗 じて 計 算 す るとされています( 基 準 第 23 項 ) これに 対 して IAS19では 純 損 益 に 認 識 すべき 金 額 として 以 下 の 項 目 が 列 挙 されており (IAS19.57(c)) 期 待 運 用 収 益 については 独 立 した 概 念 としては 捉 えず 3に 含 めたかたちで 整 理 され ています 1 当 期 勤 務 費 用 2 過 去 勤 務 費 用 および 清 算 損 益 3 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 係 る 利 息 の 純 額 そして 当 該 3の 計 算 については 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 退 職 後 給 付 債 務 の 算 定 に 使 用 す る 割 引 率 を 乗 じて 算 定 しなければならないとされています(IAS19.123) なお ここでいう 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 とは 積 立 不 足 または 積 立 超 過 ( 確 定 給 付 制 度 債 務 の 現 在 価 値 - 制 度 資 産 の 公 正 価 値 )に 確 定 給 付 資 産 の 純 額 を 資 産 上 限 額 に 制 限 することによる 影 響 を 調 整 したものをいいます(IAS19.8) 簡 単 なイメージとしては 年 金 資 産 と 退 職 給 付 債 務 をNETした 金 額 に 退 職 給 付 債 務 の 算 定 に 用 いた 割 引 率 を 乗 じて 利 息 の 純 額 を 算 定 する ということになります ここでIAS19と 基 準 の 差 異 を 整 理 すると 以 下 のようになります 年 金 資 産 から 生 ずると 見 込 まれ る 収 益 の 捉 え 方 IAS19 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 係 る 利 息 純 額 の 構 成 要 素 期 待 運 用 収 益 基 準 年 金 資 産 から 生 ずると 見 込 まれ る 収 益 の 算 定 方 法 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 割 引 率 を 乗 じて 算 定 ( 利 息 費 用 と 一 括 して 算 定 ) 年 金 資 産 の 額 に 長 期 期 待 運 用 収 益 率 を 乗 じて 算 定 ( 利 息 費 用 と 別 に 算 定 ) このような 差 異 の 背 景 には 財 政 状 態 計 算 書 に 認 識 される 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 をどのように 捉 えるかの 違 いがあります その 捉 え 方 として IAS19には 純 額 説 と 総 額 説 という2つの 考 え 方 が 示 されています(IAS19.BC84)
確 定 給 付 債 務 ( 資 産 )の 純 額 の 捉 え 方 整 合 する 利 息 費 用 利 息 収 益 の 考 え 方 純 額 説 企 業 が 制 度 に 対 して 負 っている か または 制 度 が 企 業 に 負 っ ている 単 一 の 金 額 とみる 捉 え 方 利 息 純 額 アプローチ 総 額 説 制 度 資 産 と 確 定 給 付 制 度 債 務 の2つの 部 分 から 構 成 され 別 々に 測 定 されるが 一 緒 に 表 示 されるものとみる 捉 え 方 期 待 収 益 アプローチ IAS19は 財 政 状 態 計 算 書 における 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 表 示 との 整 合 性 が 高 いことから 純 額 説 を 採 っているため 関 連 する 利 息 の 算 定 についても 純 額 説 と 整 合 的 である 利 息 純 額 アプローチを 採 っています(IAS19.BC74およびBC84) またIAS19は 期 待 収 益 アプローチを 採 らない 論 拠 として 実 務 上 期 待 収 益 を 算 定 するための 観 察 可 能 な 情 報 が 利 用 可 能 でない 可 能 性 の 方 が 利 息 純 額 アプローチに 使 用 される 割 引 率 の 場 合 よりも 高 い 点 も 挙 げています(IAS19.BC83) 以 上 のような 理 由 から IAS19は 利 息 純 額 アプローチを 採 り 確 定 給 付 負 債 ( 資 産 )の 純 額 に 係 る 利 息 純 額 を 確 定 給 付 制 度 債 務 の 測 定 に 用 いたのと 同 じ 割 引 率 で 計 算 することを 要 求 しています (IAS19.BC74) このような 差 異 により 日 本 基 準 からIFRSへ 移 行 した 場 合 期 待 運 用 収 益 率 と 割 引 率 の 差 から 生 じる 差 額 が 財 務 諸 表 上 損 益 に 影 響 する 可 能 性 があります