EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 EU:20 世 紀 型 統 合 と21 世 紀 の 現 実 証 券 セミナー 2016.03.09. 報 告 : 田 中 素 香 はじめに 〇 EU の 現 実 (Wolfgang Muenchau, FT04.01.2016)より: EU3つの divide 1 南 北 2ユーロスケプティクスとユーロファイル 3 社 会 的 にリベラルな 西 と 独 裁 的 な 東 2016 年 の 特 定 の 予 想 を 作 るのは 難 しい 既 知 の 数 多 くのリスク: 1イギリス 国 民 投 票 2 難 民 流 入 3ギリシャのメルトダウン 4イタリアの 半 分 破 綻 している 銀 行 システム 5 財 政 政 策 をめぐるドイツと 周 縁 諸 国 の 対 立 6ジハドテロリズムの 上 昇 7スペインとポルトガルの 政 治 的 不 安 定 8フォルクスワーゲン 事 件 これほど 多 くの 危 機 が 同 時 に 来 ているのが 特 徴 :big picture を 描 く 必 要 ミュンシャウの 結 論 ハンガリーとポーランドの 反 統 合 反 民 主 主 義 東 方 拡 大 はヨーロッパの 分 離 を 付 け 加 え EU を 機 能 不 全 にした /それゆえ 私 は 分 裂 や 不 和 を 廃 棄 さるべき 脅 威 とは 見 ずに 捉 えるべき 機 会 (opportunities)と 見 る 2016 年 に 対 する 私 の 予 想 は われわれはさらなる 不 和 を 見 るであろうということ である 私 の 希 望 はそれが 賢 明 にマネッジされるであろう ということである 〇 ミュンシャウより 長 期 を 見 て 少 し 大 きな 絵 を 描 いてみたい 1.20 世 紀 欧 州 統 合 モデル 〇 20 世 紀 第 2 次 大 戦 後 の 世 界 3 分 割 共 産 圏 後 進 国 圏 は 基 本 的 に 閉 じてい て 先 進 資 本 主 義 圏 がアメリカ 技 術 を 導 入 して 高 度 成 長 福 祉 国 家 を 形 成 〇 EEC 条 約 (1957 年 調 印 )からマーストリヒト 条 約 (1992 年 調 印 )に 至 る EC/ EU 基 本 条 約 は 20 世 紀 欧 州 統 合 モデル を 体 現 対 米 経 済 キャッチアップを 目 標 とする ホブズボームの 短 い20 世 紀 を 反 映 〇 その 後 のアムステルダム 条 約 ニース 条 約 リスボン 条 約 は EU 拡 大 など 新 情 勢 に 対 応 するための 条 約 だったが 基 本 的 性 格 はマーストリヒト 条 約 を 超 えない 〇 ただし EEC 条 約 (1957 年 )の 統 合 事 項 完 成 ( 関 税 同 盟 と CAP:1968 年 )とそ の 改 正 ( 単 一 欧 州 議 定 書 SEA 1986 年 )の 間 には 統 合 の 暗 黒 時 代 といわれ る15 年 があった 67
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 暗 黒 時 代 は 戦 後 国 家 独 占 資 本 主 義 に 対 応 した EEC 条 約 が 新 自 由 主 義 型 資 本 主 義 ( 自 由 化 グローバル 化 ) 対 応 の SEA に 飛 躍 するための 期 間 であった 〇 SEA による 単 一 市 場 統 合 は 成 功 し EC に 経 済 成 長 を 復 活 させ 東 欧 市 民 革 命 ドイツ 統 一 への 道 を 拓 いた その 成 功 がマーストリヒト 条 約 (1991 年 末 合 意 )に よる 通 貨 統 合 を 可 能 にした(ドイツ 統 一 とあいまって) 2.21 世 紀 初 頭 ヨーロッパ 統 合 の 現 実 〇 ホブズボームの 長 い19 世 紀 に 対 応 させて 長 い21 世 紀 (1992 年 以 降 ) 第 2 次 グローバル 化 ( 世 界 全 体 を 市 場 経 済 に 巻 き 込 む) グローバル 金 融 資 本 主 義 の 発 展 〇 ユーロ 危 機 20 世 紀 統 合 モデル リスボン 条 約 の 破 綻 ユーロ1.0 から ユー ロ2.0 へ ユーロ2.0 は 20 世 紀 統 合 モデル を 超 える ECB と EU の 条 約 を 超 える 強 化 が 不 可 避 だった 〇 難 民 危 機 ヨーロッパの 政 策 担 当 者 にとってユーロ 危 機 に 匹 敵 する(あるいはそ れを 上 回 る) 深 刻 な 危 機 EU では 西 欧 北 欧 南 欧 のポスト モダンと 東 欧 の (ニュー)モダンの 対 立 難 民 流 入 はプレモダン 地 域 の 西 欧 に 対 する 歴 史 の 復 讐 の 側 面 〇 しかし ヨーロッパの 過 去 10 年 間 の 労 働 力 増 加 の70%は 流 入 移 民 による EU 加 盟 国 の 総 体 的 GDP への 効 果 は 明 らかにポジティブ 移 民 はネイティブの 人 口 より 若 いので 経 済 的 に 活 動 的 であり 依 存 人 口 比 率 (dependency ratio)を 引 き 下 げている 財 政 支 出 へのインパクトは 少 なくとも 中 立 的 現 状 はヨー ロッパに 奇 貨 を 提 供 している 難 民 と 彼 らが 提 供 する 挑 戦 とは 平 時 には 政 治 的 に 困 難 であろうようなヨーロッパにおける 統 合 と 共 通 移 民 制 度 化 の 必 要 なプロセ スをスピードアップさせるであろう(Jacob Kirkegaard,) 〇 英 国 離 脱 危 機 3. 評 価 と 展 望 〇 ホブズボームの 短 い20 世 紀 に 対 応 させて 短 い21 世 紀 の 開 始 =リーマン ショック(2008 年 ) ポスト モダン 地 域 =(ニュー)モダン 地 域 =プレモダン 地 域 ( 近 代 以 前 脆 弱 地 域 を 含 む)の 世 界 新 3 分 割 構 造 とその 対 立 関 係 の 明 確 化 68
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 〇 短 い21 世 紀 にリスボン 条 約 は 対 応 できない:ユーロ 危 機 で 明 らか 〇 アンソニー= ギデンズ EU1 EU2 紙 のヨーロッパ メルケル 首 相 が 統 率 す る EU2が EU を 動 かしている ユーロ 危 機 には 当 てはまったが 難 民 危 機 では EU2は 機 能 できていない 〇 さしあたり ad hoc な 対 応 とならざるを 得 ないが 21 世 紀 に 対 応 するには 新 EU 条 約 が 不 可 欠 ポスト ユーロ 危 機 対 応 (ユーロ 圏 財 政 移 転 機 構 ユーロ 圏 財 務 省 )+ 難 民 対 応 ( 共 通 の 国 境 を 守 る EU 国 境 警 備 体 制 )を 含 む 〇 ヨーロッパの 問 題 を 解 決 できるのは EU だけである 69
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 EU:20 世 紀 型 統 合 と21 世 紀 の 現 実 証 券 セミナー( 証 券 経 済 研 究 所 ) 2016.03.09. 15:10~16:30 田 中 素 香 1 構 成 1.20 世 紀 欧 州 統 合 モデル( 環 境 理 念 発 展 ) 2.21 世 紀 初 頭 ヨーロッパ 統 合 の 現 実 1ユーロ 危 機 2イギリス 残 留 問 題 3 難 民 流 入 問 題 3. 評 価 と 展 望 2 70
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 1.20 世 紀 欧 州 統 合 モデル (1) 順 調 な 発 展 :ECSC EEC 単 一 域 内 市 場 単 一 通 貨 ユーロ (2) 危 機 が 統 合 飛 躍 のバネ:EECから 単 一 市 場 へ(15 年 間 の 統 合 の 暗 黒 時 代 を 経 て 飛 躍 ) 3 深 化 拡 大 を 続 ける 欧 州 赤 字 :ユーロ 導 入 国 欧 州 経 済 共 同 体 (EEC) 設 立 :1958 年 1 月 欧 州 石 炭 鉄 鋼 共 同 体 (ECSC) 設 立 :1952 年 8 月 ベルギー フランス ( 西 )ドイツ イタリア ルクセンブルク オランダ 関 税 同 盟 +CAP 1960 年 代 欧 州 共 同 体 (EC12) 第 1 次 拡 大 :1973 年 1 月 デンマーク アイルランド 英 国 欧 州 連 合 (EU15) 欧 州 連 合 (EU27) 第 2 次 拡 大 :1981 年 1 月 第 4 次 拡 大 :1995 年 1 月 第 5 次 拡 大 :2004 年 5 月 ギリシャ オーストリア キプロス フィンランド チェコ 第 3 次 拡 大 :1986 年 1 月 ポルトガル スウェーデン エストニア ハンガリー ラトビア スペイン ユーロ 導 入 (11) :1999 年 1 月 リトアニア マルタ 単 一 ポーランド ギリシャ スロバキア :2001 年 1 月 市 場 スロベニア ユーロ 現 金 流 通 開 始 07 年 1 月 1985-92 :2002 年 1 月 ブルガリア スロベニア 等 07 年 1 月 ルーマニア スロバキア09 年 1 月 2010 年 以 後 の EU 加 盟 クロアチア (2013 年 加 盟 ) その 他 西 バルカン 諸 国 トルコ ユーロ 圏 の 拡 4 大 4 71
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 出 所 : 駐 日 欧 州 委 員 会 代 表 部 Europe Spring 2004 5 短 い20 世 紀 に 対 応 した 統 合 モデル 英 国 の 歴 史 家 E.ホブズボーム 著 書 極 端 な 時 代 で 提 唱 長 い19 世 紀 と 短 い20 世 紀 短 い20 世 紀 :1914-1991 年 第 1 次 大 戦 ~ソ 連 崩 壊 20 世 紀 : 戦 争 と 革 命 の 世 紀 短 い20 世 紀 の3つの 時 代 : 1914 年 ~1945 年 破 局 の 時 代 1945 年 ~1973 年 黄 金 時 代 ( 高 度 成 長 福 祉 向 上 ) 1973 年 ~1991 年 危 機 の 時 代 本 報 告 の 見 方 20 世 紀 欧 州 統 合 モデル = 短 い20 世 紀 の 後 の2つの 時 代 に 対 応 するモ デル 21 世 紀 の 現 実 に 不 適 合 第 2 次 大 戦 後 =ソ 連 崩 壊 まで 冷 戦 体 制 = 世 界 2 分 割 時 代 本 報 告 : 世 界 3 分 割 時 代 世 界 3 分 割 : 先 進 資 本 主 義 圏 共 産 圏 発 展 途 上 圏 共 産 圏 と 発 展 途 上 圏 は 閉 じていた 最 大 7 億 人 程 度 の 先 進 資 本 主 義 圏 が IMF=GATT 体 制 の 下 アメリカ 技 術 を 導 入 して 高 度 成 長 20 世 紀 欧 州 統 合 モデル :3 分 割 世 界 の 中 で 西 欧 の 復 興 = 対 米 経 済 キャッチアップのためのモデル( 基 本 的 に) 6 72
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 20 世 紀 統 合 モデルの 目 標 : 対 米 キャッチアップ( 経 済 ) 50 年 代 : 冷 戦 体 制 下 の 不 戦 同 盟 1950 年 代 : 仏 独 不 戦 ECSC 思 想 的 文 化 的 同 一 性 :ポスト モ ダン( 反 戦 平 和 主 義 ナショナリ ズム=モダンの 克 服 国 際 主 義 ) 与 件 としての 冷 戦 体 制 [ 閉 じたパ ンドラの 箱 ][ 低 開 発 圏 は 植 民 地 独 立 第 3 世 界 構 築 へ] 仏 独 友 好 条 約 1963 年 ever closer union with common institutions and policies 英 国 は 大 英 帝 国 依 存 路 線 垂 直 貿 易 型 vs 水 平 貿 易 型 =EEC EECの 理 想 : 西 欧 復 興 / 対 米 経 済 キャッチアップ キャッチアップ: 規 模 の 経 済 経 済 統 合 による 大 市 場 1960 年 代 : 関 税 同 盟 対 米 国 キャッチアップ 製 造 業 主 体 の 経 済 構 造 [ 産 業 資 本 主 義 ] 規 模 の 経 済 関 税 同 盟 統 合 の 難 しさ: 国 家 独 占 資 本 主 義 [ケインズ 型 マクロ 経 済 コ ントロール+ 金 融 国 家 規 制 ] の 諸 類 形 = 独 型 仏 型 伊 型 英 型 共 同 市 場 不 可 部 門 統 合 にとどまる 7 統 合 の 暗 黒 時 代 から 市 場 統 合 へ 統 合 暗 黒 時 代 1970~84 年 EEC 条 約 の 統 合 目 標 完 成 ( 関 税 同 盟 +CAP) 新 条 約 なし 方 法 性 喪 失 混 乱 の70 年 代 :1マクロ 経 済 政 策 対 立 西 独 単 独 フロート 71 年 5 月 = 第 1 次 経 済 通 貨 同 盟 計 画 破 綻 (Re-nationalization) 2 第 1 次 石 油 ショック 仏 EC 為 替 相 場 同 盟 スネーク 離 脱 マルク 圏 へ 1979 年 EMS( 欧 州 通 貨 制 度 ) 成 立 暗 黒 時 代 克 服 : 市 場 統 合 1980 年 代 前 半 :EC 経 済 成 長 率 1% 台 失 業 率 2 桁 へ ケインズ 主 義 崩 壊 (スタグフレーション) マネタリスト 政 策 =マルクス 型 不 況 ( 大 量 失 業 で 賃 上 げ=インフレ 抑 制 ) 諸 国 新 自 由 主 義 受 入 れ( 仏 左 翼 ミッテ ラン 政 権 が 単 一 市 場 唱 道 ) 1985 年 単 一 市 場 統 合 合 意 アメリカ 型 巨 大 単 一 市 場 形 成 へ( 非 関 税 障 壁 撤 廃 4つの 自 由 実 現 ) 1987 年 単 一 欧 州 議 定 書 (EEC 条 約 改 正 ) 発 効 単 一 市 場 統 合 成 功 経 済 成 長 復 活 東 欧 市 民 革 命 ドイツ 統 一 91 年 ソ 連 崩 壊 : 20 世 紀 終 了 EU: 市 場 統 合 から 通 貨 統 合 へ 21 世 紀 へ 8 73
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 1990 年 代 : 統 合 深 化 による 時 代 対 応 [ 単 一 市 場 単 一 通 貨 ] 体 制 = 対 米 キャッチアップの 完 成 金 融 グローバル 化 対 応 単 一 市 場 統 合 成 功 を 受 け て 単 一 市 場 に 単 一 通 貨 を (スキオッパ 報 告 :[1992+ EMS] [1992+ 単 一 通 貨 ]) 単 一 市 場 単 一 通 貨 = 1 規 模 の 経 済 論 理 では 対 米 キャッチアップの 完 成 2グローバル 化 対 応 3 英 国 のオプトアウト 通 貨 統 合 の 想 定 と 現 実 想 定 : 先 進 国 通 貨 同 盟 EMS ( 西 欧 諸 国 参 加 )が 単 一 通 貨 体 制 へ 進 む= 水 平 的 通 貨 同 盟 ドイツの 設 計 した 通 貨 同 盟 は 非 連 帯 型 = 先 進 国 型 現 実 :1 金 融 グローバル 化 = 1930 年 代 型 金 融 恐 慌 が 再 発 2 垂 直 的 通 貨 同 盟 へ( 南 欧 諸 国 のユーロ 加 盟 次 いで 若 干 の 東 欧 諸 国 の 加 盟 ) 9 EC/EUの 基 本 条 約 - 21 世 紀 に 対 応 できない- 深 化 関 連 の 条 約 ( 調 印 / 発 効 ) ECSC 条 約 (パリ 条 約 1951 /52) EEC 条 約 (ローマ 条 約 1957 /58) 関 税 同 盟 共 通 農 業 政 策 単 一 欧 州 議 定 書 (EEC 条 約 改 正 1986/87) 単 一 市 場 統 合 EU 条 約 Ⅰ(マーストリヒト 条 約 1991.12 合 意 /92 調 印 /93 発 効 ) 通 貨 統 合 ユーロ 危 機 で 限 界 露 呈 拡 大 その 他 こまごま EU 条 約 Ⅱ(アムステルダ ム 条 約 1997/99) より 緊 密 な 協 力 を 規 定 EU 条 約 Ⅲ(ニース 条 約 2001/03) EU 憲 法 条 約 (2004/05 年 5 月 6 月 仏 蘭 の 国 民 投 票 で 拒 否 廃 棄 ) EU 条 約 Ⅳ(リスボン 条 約 07/09) 憲 法 条 約 引 き 継 ぎ E U 権 限 / 共 有 権 限 を 明 示 10 74
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 まとめ:20 世 紀 型 統 合 モデル: ever closer union (ますます 緊 密 化 する 同 盟 ) ever closer union の20 世 紀 統 合 深 化 でヨーロッパの 問 題 を 解 決 していく(ポスト モダンの 方 法 論 ) アメリカ 経 済 ( 巨 大 市 場 単 一 通 貨 )= 統 合 のモデル: 規 模 の 経 済 で キャッチアップ 可 能 単 一 市 場 統 一 通 貨 へ 高 成 長 高 福 祉 を 実 現 ECSC6カ 国 からEU15カ 国 へ 拡 大 ポスト モダン 思 想 は15カ 国 共 有 無 傷 でドイツ 統 一 (+or-?) 限 界 :2 段 階 ヨーロッパ 単 一 市 場 統 合 まではすべ ての 国 が 統 合 参 加 通 貨 統 合 :ユーロ 圏 と 非 ユーロ 圏 ( 英 国 デンマーク スウェーデン)への 2 段 階 ヨーロッパ へ 20 世 紀 EUにおける 英 国 の 役 割 :1 統 合 前 のめり ブレーキ 役 2 自 由 貿 易 主 義 (vs 仏 伊 ベル ギー)3Gateway to Europe 日 本 にとってpositive 11 2.21 世 紀 初 頭 ヨーロッパ 統 合 の 現 実 21 世 紀 初 頭 の 世 界 経 済 : 統 合 環 境 1 〇 第 2 次 グローバル 化 : 全 世 界 を 市 場 経 済 化 脱 落 地 帯 ( 脆 弱 国 家 群 崩 壊 国 家 群 ) 〇 新 しい 3 分 割 世 界 (ニューモダンの 台 頭 : 中 国 ロシア 東 欧 諸 国 など) 〇 グローバル 金 融 資 本 主 義 の 支 配 〇 先 進 諸 国 における 格 差 問 題 EU: 東 欧 諸 国 の 加 盟 (ポスト モダンvs(ニュー) モダン) 12 75
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 21 世 紀 初 頭 の 環 境 :ヨーロッパ 統 合 1. 経 済 金 融 のグローバル 化 〇 地 球 全 体 が 資 本 主 義 経 済 に 巻 き 込 まれる( 地 球 規 模 の 4つの 自 由 の 諸 問 題 ) 〇 人 の 自 由 移 動 地 域 紛 争 移 民 問 題 亡 命 / 難 民 問 題 〇 グローバル 金 融 資 本 主 義 :ユーロ 危 機 不 安 定 化 2. 東 欧 諸 国 のEU 加 盟 :15カ 国 から28カ 国 へ 対 立 〇 西 欧 北 欧 諸 国 :ポスト モダン 〇 東 欧 諸 国 :モダン( 新 興 国 ナショナリズム) 西 欧 のEU 支 配 への 反 発 3.シリア イラクの 崩 壊 ( 難 民 問 題 激 化 ) 13 21 世 紀 統 合 のこれまでの 特 徴 20 世 紀 統 合 モデル では21 世 紀 の 危 機 に 対 応 できず 統 合 の 性 格 の 変 容 (1) 帝 国 化 :1ユーロ 圏 における 自 己 責 任 制 から 権 限 集 中 へ( 銀 行 同 盟 など) 2EU 機 関 の 権 限 強 化 (ECB 欧 州 委 員 会 の 権 限 強 化 ECJの 権 限 拡 大 ) (2) 多 段 階 化 :20 世 紀 型 の 継 続 (イギリスの 反 発 )に 加 えて 21 世 紀 型 = 東 欧 問 題 の 出 現 ( 難 民 問 題 ポーラ ンド ハンガリー 問 題 ) (3) 序 列 化 orドイツ 化 : 欧 州 委 員 会 が 追 随 ブリュッセ ル=ベルリン 枢 軸 とそれへの 反 発 (イタリアの ダブ ル スタンダード 批 判 ) (4)ロシア 要 因 + 中 国 要 因 の 顕 在 化 14 76
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 (1)ユーロ 危 機 とユーロ 制 度 改 革 ユーロ 危 機 :ユーロ 制 度 限 界 1ユーロ 圏 と 欧 州 中 央 銀 行 制 度 2 資 本 移 動 自 由 3 危 機 対 応 は 各 国 毎 12から 危 機 へ( 西 欧 大 銀 行 の 南 欧 への 過 剰 融 資 ) 3では 対 処 不 可 能 1 欧 州 中 央 銀 行 が 危 機 を 止 めた ユーロ 制 度 改 革 3をユーロ 圏 レベルへ 是 正 危 機 時 の 財 政 支 援 機 構 ( 欧 州 安 定 メカニズムESM 2012 年 10 月 スタート) 銀 行 監 督 銀 行 破 綻 処 理 はECB( 欧 州 中 銀 )+EUが 担 当 (2016 年 より) 危 機 国 国 債 の 無 制 限 買 い 上 げ(ECB)(2012 年 より) 15 2007 サブプ ライム 危 機 ユーロ 圏 :3 段 階 にわたる 危 機 Ⅰ.リーマン 危 機 段 階 2008 グロー バル 金 融 危 機 2009 世 界 経 済 危 機 Ⅱ.ユーロ 危 機 段 階 : 金 融 パニック 期 2010 ソブリン 危 機 銀 行 危 機 2012- ユーロの 制 度 危 機? Ⅲ.ポスト ユーロ 危 機 段 階 : 経 済 停 滞 南 北 欧 州 分 裂 2013 マイナス 成 長 から 弱 い 回 復 へ 財 政 支 援 調 整 プログラム ガバナンス 改 善 財 政 緊 縮 / 構 造 改 革 ECB( 欧 州 中 央 銀 行 ): SMP, LTRO, OMT ESM, 銀 行 同 盟 2015ー 弱 い 回 復 ギリシャ の 反 乱 景 気 刺 激 政 策 + 自 動 安 定 装 置 [ 出 所 ] 筆 者 作 成 16 16 77
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 図 1 1 ユーロ 圏 諸 国 の10 年 物 国 債 利 回 りの 対 独 スプレッド Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ [ 注 ]の 追 加 Ⅰ~Ⅲはユーロ 危 機 の3つの 波 Ⅳはギリシャ 反 乱 期 15 年 は7 月 まで 17 ユーロ 危 機 : 危 機 の 四 角 形 と 関 連 理 論 西 欧 大 銀 行 大 規 模 与 信 ( 南 北 格 差 利 用 )/ 資 本 流 出 不 動 産 財 政 バブル [2] 最 適 通 貨 圏 の 理 論 -1 南 欧 を 入 れるべきでな かった 2 南 欧 諸 国 は 離 脱 す る 方 が 双 方 にとってbetter( 浜 田 宏 一 大 きすぎるユーロ 圏 ) 1 emuは 後 戻 りできない (パ ドア スキオッパ)エミュー: オーストラリアの 非 公 式 な 国 鳥 2 通 貨 統 合 =political will 3ドイツはこの 理 論 を 当 時 どう 見 ていたのか 南 北 格 差 政 府 債 務 危 機 ユーロ 危 機 ユーロ 制 度 の 欠 陥 国 債 価 格 変 動 が 媒 介 [1]ユーロ 危 機 の 現 象 論 銀 行 金 融 危 機 ヨーロッパ 金 融 資 本 主 義 Bubble & bust process [3] 通 貨 統 合 論 -ユーロ 危 機 長 期 化 要 因 ユーロ 制 度 批 判 制 度 改 革 論 - 欠 陥 制 度 から 制 度 改 革 へ 18 18 78
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 ユーロ1.0 (ユーロ 危 機 )から ユーロ2.0 へ - 制 度 改 革 more Europe ー ユーロ1.0 非 救 済 条 項 (125 条 ) 国 債 直 接 購 入 禁 止 ( 第 123 条 ) ユーロ2.0 ESM(12 年 10 月 スタート) ECBのOMT 銀 行 監 督 : 加 盟 国 ( 母 国 監 督 主 義 ) 銀 行 破 綻 処 理 : 加 盟 国 当 局 銀 行 監 督 :ECB 銀 行 破 綻 処 理 :ECB+EU ( 欧 州 委 員 会 ) 19 3イギリス 残 留 離 脱 問 題 EC 加 盟 :1973 年 大 英 帝 国 依 存 路 線 は 失 敗 英 国 病 EEC 加 盟 を 望 むも 仏 ドゴール 大 統 領 拒 否 権 2 度 行 使 ( 米 国 の トロイの 馬 ) 加 盟 後 も EEC あるいは EC と 呼 ばず Common Market と 呼 んだ 大 市 場 ( 輸 出 市 場 英 国 企 業 競 争 力 強 化 )を 望 み 共 同 体 (European Community)は 関 係 ない クレバーな 戦 略 成 功 20 79
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 英 国 : 我 関 せず ヨーロッパの 未 曾 有 の 危 機 を 前 に 手 前 勝 手 21 将 来 も 明 るいはず: 離 脱 願 望 why? 米 英 は 普 通 の 国 ではない: 老 い る 世 界 の 中 で: 鍵 は 移 民 8500 8000 7500 7000 6500 6000 5500 5000 EU3 大 国 の 人 口 予 想 ( 単 位 : 万 人 ) 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 イギリス フランス ドイツ [ 出 所 ]E. Commission, 2015 Ageing Report 経 済 好 調 未 来 展 望 離 脱 願 望 why? 2 月 中 旬 までの 世 論 調 査 : 残 留 / 離 脱 が 拮 抗 60 歳 台 以 上 層 : 離 脱 願 望 大 国 の 思 い 出 (EU= 独 仏 追 随 を 拒 否 ) 昨 年 春 まで: 残 留 志 向 強 い 難 民 流 入 パリ 同 時 テロの 影 響? アメリカ トランプ 現 象 との 共 通 性? 格 差 批 判 反 移 民 [ 移 民 流 入 は 繁 栄 のベースな のに] 22 80
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 (3) 難 民 問 題 シェンゲン 協 定 :ヒトの 自 由 移 動 を 保 証 1 欧 州 統 合 の 象 徴 =ヒトの 自 由 移 動 は 平 和 と 安 定 が 前 提 テロ 難 民 大 量 流 入 で 揺 らぐ 2 国 境 検 査 をなくすシェンゲ ン 協 定 :テロと 難 民 移 民 流 入 で 一 部 に 国 境 検 査 復 活 3シェンゲン 協 定 の 見 直 し 物 流 コストの 増 大 EU 経 済 に 打 撃 4 西 北 欧 vs 東 欧 (EU 内 部 対 立 ) 北 欧 諸 国 オーストリ アなども 国 境 管 理 導 入 5 対 ギリシャ トルコ シリ ア シェンゲン 協 定 加 盟 26カ 国 23 21 世 紀 初 頭 世 界 : 新 3 分 割 新 しい 統 合 環 境 プレモダン モダン(ニューモダン) ポストモダン EU=ポストモダン モ デル 21 世 紀 EU: 中 東 欧 を 10カ 国 以 上 加 盟 させた 中 東 欧 諸 国 は(ニュー)モダ ンのレベル EUの 理 想 が 崩 れ かかっている という 議 論 < ニューモダン のモダン 化 >が 世 界 を 動 かす ( 後 ろ 向 き: 中 国 ロシア) [ 出 所 ] 日 本 経 済 新 聞 08.12.2015 24 81
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 難 民 流 入 : 過 去 の 実 績 と 今 回 25 難 民 大 量 流 入 EU 諸 国 で 極 右 台 頭 反 統 合 の 動 き 加 速 1テロと 移 民 の 流 入 ナショナ リズムに 基 づく 排 他 主 義 の 高 まり 極 右 の 台 頭 民 族 主 義 など 反 統 合 の 動 きが 加 速 仏 ル ペン 国 民 戦 線 党 首 2 仏 の 極 右 政 党 国 民 戦 線 ル ペン 党 首 の 存 在 感 が 増 す 3 英 国 離 脱 の 動 き: 格 差 社 会 化 と 並 び 難 民 移 民 大 量 流 入 テロ への 反 発 が 作 用 4EU 離 脱 を 問 う 英 国 民 投 票 が 2016 年 に 早 まり 英 のEU 離 脱 が 現 実 味 を 帯 びてくる 26 82
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 3. 評 価 と 展 望 1.リーマン ショックから 21 世 紀 が 始 まった -08 年 9 月 15 日 :リーマン 破 綻 グローバル 金 融 危 機 ユーロ 危 機 先 進 諸 国 長 期 経 済 停 滞 - 小 アメリカ 主 義 :09 年 オバマ 政 権 -4 兆 元 景 気 対 策 ( 中 国 ) 過 剰 生 産 尖 閣 南 シナ 海 -EU:ユーロ 危 機 難 民 危 機 -ロシア:クリミア 併 合 ウクライナ 紛 争 シリア 軍 事 介 入 27 21 世 紀 にリスボン 条 約 は 対 応 できない リスボン 条 約 :20 世 紀 統 合 モデル+ 拡 大 21 世 紀 には 機 能 不 全 21 世 紀 のユーロ 危 機 :EU 運 営 条 約 を 乗 り 越 えてユーロ 危 機 ようやく 沈 静 化 : 第 125 条 ESM 第 123 条 (1) OMT 第 127 条 (5) 銀 行 同 盟 新 しい 条 約 が 必 要 : ヨーロッパ 合 衆 国 型 で ないと 機 能 できない 28 83
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 3つのEU (アンソニー=ギデンズ) EU1 EU 首 脳 会 議 欧 州 委 員 会 閣 僚 理 事 会 ( 従 来 のEU 統 治 機 構 ) EU2 メルケル+EU 首 脳 (ドラギ 総 裁 を 含 む) EUを 動 かしている ユーロ 危 機 yes 難 民 危 機 では 司 令 塔 の 役 割 を 果 たせていな い 紙 のヨーロッパ 欧 州 委 員 会 やEU 機 関 の 将 来 展 望 文 書 分 析 文 書 実 現 能 力 をもたな い 29 中 国 のヨーロッパへの 影 響 増 大 -GDP( 購 買 力 平 価 )で14 年 世 界 1 位 へ- 30 84
EU: 二 〇 世 紀 型 統 合 と 二 一 世 紀 の 現 実 条 約 改 正 について ヨーロッパ 合 衆 国 型 EUへ 踏 み 込 むしか ない アメリカがモデル 連 邦 型 統 治 機 構 が 21 世 紀 EUにとってのモ デル さしあたって 2025 年 までにユーロ 圏 財 務 省 (5 Presidents Report, 2015) ユーロ 圏 財 政 移 転 機 構 難 民 危 機 に 対 応 できる 対 外 国 境 警 備 移 民 難 民 対 応 機 構 31 EUの 移 民 移 動 同 盟 (MMU) 形 成 へ:2025 年? EU 権 限 各 国 権 限 32 85
証 券 レビュー 第 56 巻 第 4 号 21 世 紀 ヨーロッパ 問 題 を 解 決 できるのはEUだけ 究 極 的 には 各 国 バラバラか EUか 有 志 連 合 ( 先 行 統 合 )か という 選 択 になる バラバラ は 混 乱 を 深 めるということが 時 間 とともに 分 かっ てくる 難 民 問 題 の 現 状 はEU 各 国 バラバラに 動 き 国 境 管 理 の 一 時 的 導 入 へ 1 解 決 へ 至 らず 混 乱 が 増 す 2 単 一 市 場 の 物 流 コスト 増 大 More Europe : 共 同 の 国 境 管 理 共 同 の 難 民 対 応 米 国 の 国 境 管 理 体 制 がモデルになる 少 数 国 ( 西 欧 南 欧 )の 有 志 同 盟 が 一 時 的 に 先 に 進 む 方 式 もありうる 33 86