古 川 裕 之 先 生 山 口 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 教 授 同 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 長 学 歴 職 歴 など 1975 年 3 月 金 沢 大 学 薬 学 部 卒 業 1977 年 3 月 同 大 学 院 修 士 課 程 修 了 1977 年 4 月 金 沢 大 学 附 属 病 院 薬 剤 部 勤 務 2002 年 4 月 医 療 安 全 管 理 部 兼 任 2003 年 3 月 社 会 人 学 生 として 金 沢 大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 ( 博 士 課 程 後 期 ) 修 了 博 士 ( 薬 学 ) 2003 年 4 月 金 沢 大 学 准 教 授 (Associate Professor) 同 時 に 臨 床 試 験 管 理 センターに 異 動 2009 年 4 月 医 療 安 全 管 理 部 に 異 動 2010 年 9 月 山 大 学 大 学 院 医 学 研 究 科 教 授 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 長 として 異 動 専 門 領 域 臨 床 薬 理 学 医 療 安 全 管 理 学 医 療 情 報 学 委 員 会 活 動 等 日 本 病 院 薬 剤 師 会 臨 床 試 験 対 策 委 員 会 委 員 長 日 本 病 院 薬 剤 師 会 医 療 安 全 対 策 委 員 会 副 委 員 長 独 立 行 政 法 人 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 専 門 委 員 CRC 連 絡 協 議 会 世 話 人 所 属 学 会 日 本 臨 床 薬 理 学 会 評 議 員 日 本 医 療 情 報 学 会 評 議 員 医 療 の 質 安 全 学 会 評 議 員 国 際 薬 学 連 合 FIP 日 本 医 療 薬 学 会 薬 学 を 目 指 したきっかけをお 聞 かせください 高 校 時 代 までは 高 校 教 師 か 芸 人 になりたいと 考 えていました 人 生 が 変 わっていくときに 道 を 示 してく れるような 教 師 の 必 要 性 を 自 分 自 身 が 感 じていましたし また チャップリンや 植 木 等 の 映 画 が 好 きで 彼 らのように 人 を 笑 わせたいと 思 っていたからです しかし 芸 人 は 親 が 賛 成 しないし 教 師 になるなら 地 元 の 福 井 大 学 が 就 職 しやすいと 言 われて 現 実 的 すぎてつまらなく 感 じてしまいました そこで 文 系 の 勉 強 は 後 から 独 学 でもできると 思 い 実 験 が 必 要 な 理 系 に 行 こうと 決 めました しかし 血 を 見 るのが 嫌 だったので 医 学 部 は 避 け 薬 学 部 を 志 望 しました 金 沢 大 学 を 選 んだのは 子 どものころ 遠 足 で 行 った 時 に 金 沢 をいい 街 だと 感 じたからです
ご 卒 業 後 のお 話 をお 聞 かせいただけますか 大 学 院 の 修 士 課 程 を 終 え 金 沢 大 学 医 学 部 附 属 病 院 の 薬 剤 部 に 入 りました 同 級 生 からは 企 業 の 研 究 員 にならないのか と 言 われたし 病 院 の 上 司 も 研 究 の 分 野 に 進 んでほしかったようですが 私 は 自 分 が 深 く 考 えるより 広 く 浅 く 考 えるタイプで 研 究 職 に 向 かないとわかっていました そして 何 よりも 臨 床 業 務 に 就 きたかったのです 当 時 はまだ 薬 剤 師 が 病 棟 に 行 くことはほとんどなく 入 職 時 は 調 剤 と 製 剤 を 担 当 していました 2 年 目 からは 瓶 を 洗 って 滅 菌 して 注 射 薬 を 詰 めるのが 主 な 仕 事 になり 8 年 間 続 けました 病 棟 業 務 などに 比 べ ると 単 調 な 仕 事 ではありましたが その 分 自 分 の 時 間 を 作 ることができたので 臨 床 薬 学 の 翻 訳 本 を 隅 々まで 読 み 休 みを 取 って 自 費 で 米 国 の 学 会 に 行 ったり 薬 剤 師 向 けの 雑 誌 に 投 稿 したりしていました 1992 年 に 病 院 にコンピューターが 導 入 されるのに 合 わせて 薬 剤 部 でも 活 用 できないかという 話 が 出 て 薬 剤 を 整 理 してシステム 化 する 仕 事 の 担 当 になりました 95 年 にオーダリングシステムを 導 入 注 射 薬 もコンピューターを 使 って 個 人 別 に 供 給 できるようにしました コンピューターは 仕 事 のシステムを 変 えることができる と 実 感 しました 97 年 に 薬 剤 部 の 副 部 長 になり 2000 年 に 金 沢 大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 の 博 士 課 程 に 社 会 人 入 学 しました 2003 年 に 学 位 を 取 った 後 助 教 授 として 臨 床 試 験 管 理 センターに 異 動 しました その 前 から 治 験 の 仕 事 をしていたことが 文 部 科 学 省 にも 認 められたようです 研 究 と 臨 床 の 間 をつなぐ 意 義 のある 仕 事 と 考 え 打 ち 込 みました その 後 医 療 安 全 管 理 センターに 異 動 しました 医 療 安 全 にも 以 前 から 自 ら 手 を 挙 げてかかわっていたので そこでも 張 り 切 って 仕 事 をしました 2009 年 に 山 口 大 学 からお 声 かけをいただき 2010 年 9 月 に 赴 任 しました 薬 剤 部 に 戻 るのもいいなと 考 えていましたし また 1983 年 30 歳 のとき 私 の 人 生 初 めての 講 演 となる 山 口 県 病 院 薬 剤 師 会 総 会 における 講 演 の 機 会 をいただいたのが 山 口 大 学 病 院 の 薬 剤 部 の 教 授 だったこともあり ご 縁 を 感 じて います 山 口 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 での 取 り 組 みについて 教 えてください(1) 薬 - 薬 連 携 による 副 作 用 シグナル 検 出 システム 調 剤 薬 局 で 薬 剤 師 が 患 者 さんの 副 作 用 を 調 べる 際 に 活 用 いただける 副 作 用 シグナル 確 認 シー ト ( 図 1)と 副 作 用 シグナル 記 録 票 ( 報 告 用 ) ( 図 2)を 作 成 し 私 が 編 集 委 員 を 務 めている 薬 剤 師 向 けの 雑 誌 クリニカル ファーマシスト (メディカ 出 版 )の 付 録 として 発 表 しました 副 作 用 シグナル 確 認 シート は 患 者 さんの 副 作 用 自 覚 症 状 を 調 べるためのツールです 皮 膚 目 尿 手 足 お 腹 呼 吸 や 胸 血 液 全 身 の8 領 域 30 項 目 の 頻 度 の 高 い 副 作 用 シグナルを 挙 げ イラストを 入 れて 患 者 さんにわかりやすくしました 患 者 さんは 薬 剤 師 から 急 に 何 か 変 わったことはありませんか と 聞 かれても とっさには 答 えられませんから 調 剤 薬 局 での 待 ち 時 間 を 利 用 して 事 前 にシグナル 確 認 シートを 渡 して 見 てもらっておくと 副 作 用 を 抽 出 しやすくなります 副 作 用 シグナル 記 録 票 ( 報 告 用 ) は 薬 剤 師 側 のチェック 項 目 を 網 羅 した 表 です そして 2011 年 4 月 から 宇 部 薬 剤 師 会 とのプロジェクトとして この2つのツールを 使 った 薬 - 薬 連 携 に よる 副 作 用 シグナル 検 出 システム ( 図 3)の 運 用 を 始 めました ハイリスク 薬 と 市 販 後 1 年 以 内 の 新 薬 を 中 心 に 院 外 処 方 の 場 合 は 調 剤 薬 局 の 薬 剤 師 が 副 作 用 シグナル 確 認 シート で 患 者 さんの 副 作 用 を チェックします 副 作 用 を 疑 われる 症 状 があった 場 合 は 副 作 用 シグナル 記 録 票 ( 報 告 用 ) に 記 入 し て 当 薬 剤 部 が 管 理 するDIセンターにファックスで 送 ってもらいます DIセンターでは 患 者 さんの 検 査 値 等 を 確 認 して 必 要 に 応 じて 主 治 医 に 報 告 するとともに データベース 化 しています 調 剤 薬 局 からDIセ ンターに 送 られたシグナル 記 録 の 数 は 運 用 を 開 始 した4 月 は89 枚 でしたが 最 近 は100 枚 を 超 えてお り このなかで 医 師 への 報 告 が 必 要 だったのは 全 体 の 約 10% 程 度 です このプロジェクトがうまくいけば 山 口 県 内 はじめ 全 国 に 広 げていきたいと 考 えています 副 作 用 の 防 止 早 期 発 見 は 薬 剤 師 の 最 も 大 切 な 使 命 であり 将 来 的 には 6 年 制 の 教 育 を 受 けた 薬 剤 師 が 患 者 さん の 副 作 用 シグナルに 対 して 薬 局 でバイタルチェックで 確 認 できるようになればいいなと 思 っています
図 1: 副 作 用 シグナル 確 認 シート 調 剤 薬 局 で 薬 剤 師 が 患 者 さんの 副 作 用 の 自 覚 症 状 を 聞 く 際 に 使 用 見 やすいA4サイズの 裏 表 にまとめられ イラストが 添 付 されているのも 患 者 さんに 好 評 だという 出 典 : クリニカル ファーマシスト 2011 年 第 3 巻 2 号 (メディカ 出 版 ) 図 2: 副 作 用 シグナル 記 録 票 ( 報 告 用 ) 副 作 用 シグナル 確 認 シートに 対 応 調 剤 薬 局 の 薬 剤 師 が 患 者 さんから 聞 き 取 った 副 作 用 情 報 を 記 入 し 山 口 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 のDIセンターにファックスする
図 3: 副 作 用 シグナル 検 出 システムの 概 念 図 出 典 : 山 口 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 作 成 薬 - 薬 連 携 による 副 作 用 シグナル 検 出 システム 構 築 第 1 回 報 告 会 資 料 より 山 口 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 での 取 り 組 みについて 教 えてください(2) 薬 剤 部 における 業 務 見 直 し 等 薬 剤 部 の 業 務 の 見 直 しのために この 仕 事 いらないかも 調 査 を 始 めました 各 薬 剤 部 員 に なくてもい い する 意 味 がわからない 仕 事 を 挙 げさせたところ 誰 も やめよう と 言 わないまま しきたりのように 続 いてきた 業 務 がたくさんありました 例 えば インスリンを 置 いた 棚 に インスリン と 書 かれたプラスチッ クの 札 を 置 くとか 新 人 がバレンタインデーのチョコレートやホワイトデーのお 返 しを 買 いに 行 くといったこ とです そこで 提 案 されたものを 整 理 して 優 先 順 位 を 決 めて 廃 止 したり 改 善 したりしました 担 当 者 の 裁 量 部 分 が 大 きい 病 棟 業 務 も 入 院 時 入 院 中 退 院 時 に 分 け 重 要 性 や 診 療 報 酬 上 の 制 約 をチェックし て 標 準 化 を 進 めています また それまで 病 棟 薬 剤 師 の 業 務 記 録 は 薬 剤 部 員 しか 見 られないようになっていましたが それでは ラブレターを 書 いても 出 さないようなもの 電 子 カルテに 貼 り 付 け 医 師 や 看 護 師 にも 見 てもらっていま す さらに 新 薬 の 製 造 販 売 後 調 査 の 調 査 票 記 入 も 病 棟 薬 剤 師 の 日 常 業 務 の 一 環 とし 場 合 によっては 医 師 に 医 学 的 判 断 をもらったり 製 薬 企 業 の 医 薬 情 報 担 当 者 とコンタクトしたりする 体 制 を 整 えていま す 薬 剤 部 員 には 外 の 世 界 をもっと 見 てほしいので 学 会 発 表 も 奨 励 しています 学 会 に 行 きたいかどうか の 希 望 を 募 り 発 表 テーマをともに 考 えます 最 近 では 添 付 文 書 で 定 期 的 に 検 査 が 必 要 とされている 薬 剤 の 実 際 の 検 査 の 間 隔 や 薬 用 量 の 計 算 の 正 誤 について 私 の 講 演 先 で 調 査 を 行 い それらをまと めて 発 表 しました 臨 床 試 験 や 医 療 安 全 などさまざまなフィールドでの 経 験 が 今 活 きていると 思 います 定 年 退 職 までの 7 年 半 はちょうどいい 長 さです 7 年 半 で10 年 分 の 仕 事 をしようと 思 っています 10 年 も 同 じ 仕 事 をしたら 自 分 も 飽 きるし 周 囲 にも 煙 たがられますから ただ 焦 らずに 根 気 よく 大 事 なことは 何 度 も 言 うようにし ています 部 員 には スマイル で 仕 事 してもらうのが 一 番 です そのためには 自 分 自 身 が スマイル で 仕 事 をしなければなりません
古 川 裕 之 先 生 ご 趣 味 についてお 聞 かせいただけますか 88 年 にNHK-FMで 聞 いたブラジル 音 楽 のサンバに 魅 せられ ブラジルのバンドの 来 日 コンサートを 観 に 行 ったことをきっかけに そのころ 出 会 った 仲 間 とバンドを 組 みました 担 当 はスルド(ブラジルの 打 楽 器 ) とおしゃべりで お 祭 りなどでも 演 奏 するほどになりました 山 口 に 移 ってからは 金 沢 のバンドは 休 止 状 態 になっていて 少 し 残 念 です 3 年 ほど 前 から 鉄 道 写 真 を 撮 るようになり 2008 年 9 月 にはブログを 開 設 しました( 図 4) 講 演 に 行 くと きには 下 調 べをして 撮 影 に 足 を 伸 ばします 蒸 気 機 関 車 やディーゼル 機 関 車 が 好 きなのですが その 理 由 は1 両 だけで 走 っても 絵 になるからです 撮 り 鉄 だと 知 られるようになってから 鉄 道 関 連 の 品 を いただくようになり 車 両 のネームプレートなどが 薬 剤 部 長 室 に 増 えています( 写 真 ) 定 年 後 は 写 真 家 として 活 動 できればうれしいですね 図 4 ふるかわひろゆき no 撮 り 鉄 日 記 http://ameblo.jp/toritetsu-nikki/ 薬 剤 部 長 室 の 書 棚 には 多 くの 鉄 道 関 連 の 品 が 飾 られてい る 写 真 は 知 人 から 譲 られたドイツ 製 の 鉄 道 模 型 ( 上 段 ) と ブラジルを 代 表 するアーティストの1 人 セルジオ メンデ スのアルバム( 下 段 )