[マーケット レビュー] 214.5.2 J-REIT 保 有 不 動 産 のキャップレート 見 通 し 214 ~オフィスのキャップレートは 緩 やかな 低 下 トレンドが 続 き ホテルはより 一 層 の 低 下 が 期 待 される~ 株 式 会 社 ティーマックス 不 動 産 戦 略 室 3-551-295 今 回 は J-REIT の 保 有 不 動 産 のうち オフィスとホテルについて 不 動 産 キャップレートとインプライドキャ ップレートとの 時 系 列 比 較 を 行 い 今 後 の 不 動 産 キャップレートの 見 通 しを 分 析 した( 調 査 期 間 22 年 5 月 末 ~214 年 4 月 末 / 月 次 ) 不 動 産 キャップレートとインプライドキャップレート 不 動 産 キャップレートとは 投 資 家 の 実 物 不 動 産 に 対 する 要 求 利 回 りであり インプライドキャップレート とは 資 本 市 場 の J-REIT 運 用 不 動 産 に 対 する 要 求 利 回 りである J-REIT 株 式 市 場 の 方 が 不 動 産 市 場 に 比 べ 流 動 性 が 高 く 金 融 市 場 の 影 響 を 受 けるためインプライドキャップレートはボラティリティが 高 くなり 両 キャップレートの 間 には 一 定 のスプレッドが 見 られる 12. 図 表 1-1 不 動 産 キャップレートと インプライドキャップレートの 推 移 (オフィス) 1. 8. % 6. 4. 2.. 2/5 3/5 4/5 5/5 6/5 7/5 8/5 9/5 1/5 11/5 12/5 13/5 不 動 産 キャップレート(オフィス) インプライドキャップレート(オフィス) 2 15 1 5 BP -5 2/5 3/5 4/5 5/5 6/5 7/5 8/5 9/5 1/5 11/5 12/5 13/5-1 -15-2 図 表 1-2 スプレッドの 推 移 (オフィス) スプレッド(オフィス) インプライドキャップレート- 不 動 産 キャップレート % 12. 1. 8. 6. 4. 2. 図 表 2-1 不 動 産 キャップレートと インプライドキャップレートの 推 移 (ホテル). 2/5 3/5 4/5 5/5 6/5 7/5 8/5 9/5 1/5 11/5 12/5 13/5 不 動 産 キャップレート(ホテル) インプライドキャップレート(ホテル) BP 5 4 3 2 1 2/5 3/5 4/5 5/5 6/5 7/5 8/5 9/5 1/5 11/5 12/5 13/5-1 -2 図 表 2-2 スプレッドの 推 移 (ホテル) スプレッド(ホテル) インプライドキャップレート- 不 動 産 キャップレート TMAX Valuation Co.,Ltd. TMAX All Rights Reserved. 1
図 表 1-1 は 22 年 以 降 における J-REIT 保 有 オフィスの 不 動 産 キャップレート 及 びインプライドキャ ップレートの 推 移 である オフィスのインプライドキャップレートはサブプライムローン 問 題 が 表 面 化 した 27 年 6 月 に 上 昇 に 転 じ リーマンショック 以 降 も 上 昇 の 推 移 を 続 けた その 後 29 年 3 月 に 低 下 に 転 じ 211 年 の 東 日 本 大 震 災 以 降 に 一 時 上 昇 局 面 が 見 られたものの 長 期 的 には 緩 やかな 低 下 基 調 を 続 けている 一 方 不 動 産 キャップレートは 27 年 12 月 に 上 昇 を 開 始 し 29 年 1 月 に 低 下 に 転 じ その 後 は 緩 やかな 低 下 基 調 を 続 けている 27 年 の 低 下 から 上 昇 への 転 換 点 や 29 年 の 上 昇 から 低 下 への 転 換 点 はいずれも インプライドキャップレートが 約 6 ヵ 月 先 行 しており インプライドキャップレートは 不 動 産 キャップレートの 先 行 指 標 としての 性 格 を 有 することがわかる 図 表 1-2 はオフィスのインプライドキャップレートと 不 動 産 キャップレートのスプレッドを 示 したものである スプレッドは J-REIT の 上 場 による 流 動 性 の 付 与 やポートフォリオによるリスク 分 散 効 果 を 反 映 して マイ ナス(インプライドキャップレートが 低 い 状 態 )になるのが 通 常 であり サブプライムローン 問 題 の 後 には 株 式 市 場 の 混 乱 の 影 響 から 一 時 的 にプラスで 推 移 していたが 長 期 平 均 では 32bp となっている オフィスでは 214 年 4 月 時 点 の 不 動 産 キャップレートが 4.7% インプライドキャップレートが 3.9%で あり スプレッドは 79bp と 長 期 平 均 を 大 きく 上 回 る 水 準 にある 次 に ホテルのインプライドキャップレートはリーマンショック 後 の 28 年 1 月 に 約 1%まで 上 昇 し その 後 も 8~9% 付 近 での 推 移 が 続 いたが 21 年 7 月 にようやく 7% 台 へと 低 下 した 東 日 本 大 震 災 後 には 再 び 8%まで 上 昇 したが 212 年 の 日 本 ホテルファンド 投 資 法 人 とジャパン ホテル アンド リゾート 投 資 法 人 の 合 併 (ジャパン ホテル リート 投 資 法 人 に 商 号 変 更 ) 後 には 大 きく 低 下 し 213 年 後 半 以 降 は 4% 台 後 半 で 推 移 している( 図 表 2-1) ホテルのインプライドキャップレートは オフィスと 同 様 にマクロ 経 済 の 影 響 を 受 けるが ビジネス 目 的 の 宿 泊 ニーズや 観 光 市 況 等 のホテル 特 有 の 要 因 が 投 資 家 のマイ ンドに 影 響 しやすい ホテルの 不 動 産 キャップレートは 27 年 12 月 に 上 昇 を 開 始 し 21 年 2 月 に 低 下 に 転 じてからは 緩 やかな 低 下 基 調 を 続 けてきたが 213 年 3 月 頃 からは 大 幅 な 低 下 傾 向 にある ホテルでは 214 年 4 月 時 点 の 不 動 産 キャップレートが 6.% インプライドキャップレートが 4.8%であ り スプレッドは 125bp と 非 常 に 大 きい( 図 表 2-1 2-2) 214 年 の 不 動 産 キャップレートの 見 通 し オフィスについては 企 業 収 益 の 改 善 を 受 けて 需 要 が 拡 大 しており 特 に 東 京 都 心 部 では 空 室 率 の 低 下 が 進 んでいる 三 鬼 商 事 のオフィスデータによれば 都 心 5 区 の 平 均 空 室 率 は 29 年 半 ばに 7%を 超 え その 後 は 8~9% 台 の 推 移 が 続 いたが 214 年 に 入 ってからは 6% 台 の 水 準 に 改 善 している( 図 表 3) また 賃 料 は 既 存 ビルではほぼ 下 げ 止 まり 新 築 ビルでは 昨 年 から 上 昇 基 調 にある( 図 表 4) 一 部 のビルでは 既 存 テナントに 対 して 賃 料 の 引 き 上 げ 交 渉 を 行 う 動 きも 出 始 めている 模 様 である 214 年 のオフィス 市 況 は 本 格 的 な 回 復 が 予 想 され 賃 料 の 増 額 改 定 の 実 現 可 能 性 が 高 まり NOI の 改 善 が 期 待 される 最 近 のオフィスビルの 投 資 市 場 は 過 熱 しており 都 心 部 のみならず 地 方 都 市 における 取 引 利 回 りも 低 下 傾 向 にあるが 今 後 も 賃 貸 市 況 の 回 復 によるキャッシュフローの 改 善 を 見 込 んだ 従 来 よりも 低 い 利 回 り での 取 引 が 継 続 する 可 能 性 が 高 い したがって 214 年 のオフィスの 不 動 産 キャップレートは ゆるやか な 低 下 基 調 で 推 移 すると 考 えられる TMAX Valuation Co.,Ltd. TMAX All Rights Reserved. 2
(%) 図 表 3 東 京 ビジネス 地 区 オフィス 空 室 率 の 推 移 ( 平 均 ) 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 5/1 5/7 6/1 6/7 7/1 7/7 8/1 8/7 9/1 9/7 1/1 1/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 出 所 : 三 鬼 商 事 ( 円 / 坪 ) 図 表 4 東 京 ビジネス 地 区 オフィス 賃 料 の 推 移 ( 新 築 既 存 ) 4, 35, 3, 25, 2, 15, 1, 5, 新 築 ビル 平 均 賃 料 既 存 ビル 平 均 賃 料 5/1 5/7 6/1 6/7 7/1 7/7 8/1 8/7 9/1 9/7 1/1 1/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 出 所 : 三 鬼 商 事 ホテルについては 景 気 回 復 によるビジネス 需 要 やレジャー 志 向 の 高 まり 海 外 向 け 観 光 政 策 の 実 施 や 円 安 等 のホテル 市 場 の 好 況 を 支 える 材 料 が 見 られ 213 年 の 国 内 ホテルの 平 均 客 室 稼 働 率 は 29 年 以 降 最 も 高 い 水 準 となった( 図 表 5) また 日 本 政 府 観 光 局 (JNTO)によれば 訪 日 外 国 人 客 数 は 213 年 に 年 間 1,36 万 人 に 達 し ビジット ジャパン 事 業 開 始 の 23 年 時 点 と 比 較 して 約 2 倍 の 規 模 となった( 図 表 6) 214 年 に 入 っても 訪 日 外 国 人 客 数 は 増 加 基 調 が 継 続 している 政 府 は 23 年 に 3, 万 人 を 超 えることを 目 標 に 掲 げるなど 長 期 的 な 観 光 政 策 の 下 で 一 層 の 訪 日 外 国 人 客 数 の 増 加 が 見 込 まれる 22 年 に 開 催 される 東 京 オリンピック パラリンピックに 向 け ホテルは 有 望 な 投 資 セクタ ーとして 注 目 を 浴 びており 特 に 東 京 都 内 ではホテルの 新 規 開 発 が 目 立 ち 投 資 市 場 でも 過 熱 感 が 高 ま っている ホテルの 売 買 件 数 の 増 加 により 取 引 データが 積 み 上 がり 投 資 しやすい 環 境 が 形 成 されつつ あることや 他 のアセットの 取 引 利 回 りが 低 下 し 相 対 的 に 利 回 りの 高 いホテルへの 投 資 ニーズが 増 え 競 争 がより 激 化 していることから 214 年 にはホテルの 不 動 産 キャップレートの 一 層 の 低 下 が 予 想 され る TMAX Valuation Co.,Ltd. TMAX All Rights Reserved. 3
平 均 客 室 稼 働 率 9% 図 表 5 全 国 ホテルの 平 均 客 室 稼 働 率 の 推 移 85% 8% 75% 7% 65% 6% 55% 5% 29 年 21 年 211 年 212 年 213 年 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月 出 所 :オータパブリケイションズ( 週 刊 ホテルレストラン) ( 千 人 ) 図 表 6 訪 日 外 国 人 客 数 の 推 移 12, 1, 8, 6, 4, 2, 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 21 年 211 年 212 年 213 年 出 所 : 日 本 政 府 観 光 局 まとめ 地 価 の 回 復 や 物 価 上 昇 NISA 導 入 GPIF( 年 金 積 立 金 管 理 運 用 独 立 行 政 法 人 )の J-REIT への 投 資 開 始 等 の 効 果 により 214 年 も 安 定 的 な J-REIT への 資 金 流 入 が 予 想 され 当 面 はいずれのセクタ ーにおいてもインプライドキャップレートの 緩 やかな 低 下 基 調 が 継 続 する 可 能 性 が 高 い オフィス ホテルともに 現 在 のインプライドキャップレートと 不 動 産 キャップレートのスプレッドは 比 較 的 大 きく 過 去 のトレンドから 今 後 はスプレッドの 縮 小 が 不 動 産 キャップレートの 下 げ 圧 力 となると 見 られ 前 述 のオフィス ホテルの 不 動 産 キャップレートの 低 下 可 能 性 は 高 いといえる TMAX Valuation Co.,Ltd. TMAX All Rights Reserved. 4
1)ティーマックスでは J-REIT が 保 有 する 物 件 について NOI 及 び 不 動 産 価 格 を 22 年 5 月 から 月 次 算 出 し J-REIT における 不 動 産 キャップレート 及 びインプライドキャップレートの 推 移 を 観 測 している 214 年 4 月 末 時 点 では 43 法 人 2,635 物 件 1 のデータを 分 析 している 2) 不 動 産 キャップレート=NOI 不 動 産 価 格 インプライドキャップレート=NOI EV(Enterprise Value: 時 価 総 額 +ネット 負 債 ) 3)インプライドキャップレートの 分 析 は 上 場 や 合 併 後 の 初 回 決 算 発 表 後 の 投 資 法 人 が 対 象 となる 投 資 法 人 の 合 併 後 初 回 の 決 算 短 信 が 公 表 されるまでは 算 出 されないため 212 年 4 月 ~213 年 1 月 の 期 間 はホテルの インプライドキャップレートのデータはない( 図 表 2-1) * 免 責 事 項 当 レポートは 投 資 判 断 のための 情 報 提 供 を 目 的 としたものであり 投 資 勧 誘 や 特 定 の 銘 柄 へ の 投 資 の 推 奨 を 目 的 としたものではありません 内 容 は 現 時 点 での 判 断 を 示 したに 過 ぎず デー タ 及 び 表 現 などの 欠 落 誤 謬 などにつきましては 責 任 を 負 いかねますのでご 了 承 ください 当 レ ポートのいかなる 部 分 もその 権 利 は 株 式 会 社 ティーマックスに 帰 属 しており 電 子 的 または 機 械 的 な 方 法 を 問 わず 無 断 で 複 製 または 転 送 などを 行 わないようお 願 いします < 本 件 に 関 するお 問 い 合 わせ> 株 式 会 社 ティーマックス 不 動 産 戦 略 室 1-11 東 京 都 千 代 田 区 内 幸 町 2-2-1 日 本 プレスセンタービル TEL:3-551-295 FAX:3-551-2951 E-Mail:ff_t@tmaxv.co.jp [ 会 社 概 要 ] 株 式 会 社 ティーマックスは 累 計 1 万 6, 件 の 不 動 産 デューデリジェンス 実 績 をもつ 不 動 産 評 価 会 社 です( 不 動 産 鑑 定 業 東 京 都 知 事 (1) 第 1823 号 ) 不 動 産 評 価 のリーディングカンパニーとして 全 国 のオフィス 住 宅 からオペレーショナルアセットまで 多 様 な 投 資 用 不 動 産 の 評 価 サービスを 提 供 すると 同 時 に 調 査 研 究 事 業 では 不 動 産 投 資 インデック スの 開 発 配 信 や 不 動 産 マーケット 全 般 の 調 査 分 析 を 行 っています マーケット レビュー は ティーマックスがさまざまな 角 度 から 不 動 産 市 況 を 分 析 紹 介 するレポートで す 過 去 のレポートはホームページで 公 表 しています http://www.tmaxv.co.jp/ ( 弊 社 ホームページトップ) ナレッジレポート TMAX Valuation Co.,Ltd. TMAX All Rights Reserved. 5