18-26 平 成 20 年 度 戦 略 的 基 盤 技 術 高 度 化 支 援 事 業 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 による 金 型 内 メッキ 技 術 の 開 発 研 究 開 発 成 果 等 報 告 書 平 成 21 年 11 月 委 託 者 委 託 先 独 立 行 政 法 人 中 小 企 業 基 盤 整 備 機 構 財 団 法 人 飯 塚 研 究 開 発 機 構 18-26_1
目 次 第 1 章 研 究 開 発 の 概 要... 3 1. 研 究 開 発 の 背 景 研 究 目 的 及 び 目 標... 3 (1) 研 究 開 発 の 背 景... 3 (2) 研 究 目 的 及 び 目 標... 3 2. 研 究 体 制... 5 (1) 管 理 体 制... 5 (2) 研 究 体 制... 6 (3) アドバイザー... 9 (4) 研 究 開 発 スケジュール... 10 3. 成 果 概 要... 11 4. 当 該 研 究 開 発 の 連 絡 窓 口... 11 第 2 章 本 論... 12 1. 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 用 射 出 成 形 機 の 開 発... 12 (1) フローフロント 法 射 出 成 形 機 の 開 発... 13 (2) 超 臨 界 流 体 発 生 装 置 の 開 発... 13 (3) サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 の 開 発... 13 2. 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 用 金 型 の 開 発... 14 (1) 金 型 シール 実 験 用 金 型 の 開 発... 14 (2) フローフロント 法 基 礎 実 験 用 金 型 の 開 発... 16 (3) 川 下 産 業 からの 課 題 製 品 形 状 用 金 型 の 設 計 製 作... 16 (4) サンドイッチ 法 成 形 実 験 用 金 型 の 設 計 製 作... 17 (5) 金 属 光 造 形 を 活 用 したサンドイッチ 成 形 用 特 殊 金 型 の 開 発... 18 3. 型 内 メッキ 射 出 成 形 技 術 の 確 立... 20 (1) フローフロント 法 による 成 形 実 験... 20 (2) サンドイッチ 法 による 成 形 実 験... 24 (3) プラスチックメッキ 成 形 品 の 総 合 評 価... 25 第 3 章 全 体 総 括... 28 1. 研 究 開 発 成 果... 28 2. 今 後 の 課 題 及 び 事 業 化 展 開... 28 (1) 今 後 の 課 題... 28 (2) 事 業 化 計 画... 28 付 録... 29 1. 参 考 文 献 引 用 文 献... 29 2. 専 門 用 語 の 解 説... 29 18-26_2
第 1 章 研 究 開 発 の 概 要 1. 研 究 開 発 の 背 景 研 究 目 的 及 び 目 標 (1) 研 究 開 発 の 背 景 自 動 車 産 業 は 日 本 の 産 業 界 において 中 核 的 な 役 割 を 果 たしており 世 界 的 に 見 ても 高 い 競 争 力 を 持 っている 各 メーカーでは 世 界 戦 略 上 からも 増 産 体 制 にあり 北 部 九 州 も 国 内 生 産 の 生 産 拠 点 の 一 つになろうとしている 北 部 九 州 における 自 動 車 産 業 は 日 産 自 動 車 九 州 工 場 ( 福 岡 県 京 都 郡 )の 52 万 台 生 産 体 制 トヨタ 自 動 車 九 州 ( 福 岡 県 鞍 手 郡 )の 43 万 台 生 産 体 制 ダイハツ 車 体 ( 大 分 県 中 津 市 )の 50 万 台 体 制 へ 向 けて 各 社 が 生 産 体 制 を 増 強 しており 福 岡 県 が 中 心 とな って 推 進 する 北 部 九 州 自 動 車 100 万 台 生 産 拠 点 構 想 が 着 実 に 進 行 し 県 下 150 万 台 の 生 産 体 制 を 構 築 しつつある さらに 国 内 自 動 車 産 業 は 熾 烈 な 国 際 競 争 にさらされており 国 際 的 優 位 性 を 確 保 するために 他 と 差 別 化 した 高 品 質 高 機 能 部 品 を 短 納 期 低 コストで 調 達 する 必 要 に 迫 られている 本 研 究 開 発 は ものづくり 基 盤 技 術 である 金 型 に 係 わる 技 術 に 関 して 自 動 車 産 業 が 求 める 高 品 質 高 機 能 部 品 について 短 納 期 化 低 コスト 化 のニーズに 答 える 目 的 で 特 にプラスチックメッキ 部 品 ( 以 下 メッキ 品 )に 対 して 新 技 術 である 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 による 金 型 内 メッキ 技 術 の 確 立 を 図 るものである 従 来 工 程 では 射 出 成 形 した 成 形 品 について 別 工 場 の 複 数 工 程 でメッキ 処 理 を 施 し ているため 短 納 期 低 コスト 化 を 図 るには 限 界 がある しかし 超 臨 界 流 体 を 利 用 し 射 出 成 形 時 に 金 型 内 でメッキ 前 処 理 までを 達 成 できれ ば 工 程 の 短 縮 並 びに 複 数 工 程 の 同 時 処 理 化 により 高 品 質 メッキ 品 の 短 納 期 化 低 コ スト 化 を 実 現 できる (2) 研 究 目 的 及 び 目 標 短 納 期 化 低 コスト 化 を 実 現 するためには 工 程 毎 の 所 要 時 間 短 縮 と 工 程 数 の 削 減 が 不 可 欠 である メッキ 品 は 成 形 を 射 出 成 形 機 で 行 った 後 別 の 複 数 工 程 でメッキ 処 理 を 施 しているが この 方 式 ではこれ 以 上 の 製 造 時 間 の 削 減 は 期 待 できない したがっ て 工 程 毎 の 所 要 時 間 短 縮 と 工 程 数 の 削 減 を 狙 い 射 出 成 形 時 に 金 型 内 で 成 形 と 同 時 に メッキ 前 処 理 を 行 うことにより 短 納 期 化 低 コスト 化 を 実 現 することを 目 的 とした 課 題 を 解 決 する 方 法 として 開 発 を 次 の 3 項 目 とした (1) 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 用 射 出 成 形 機 の 開 発 (2) 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 用 金 型 の 開 発 (3) 型 内 メッキ 射 出 成 形 技 術 の 確 立 また 目 標 は 従 来 メッキ 品 を 基 準 に 成 形 品 の 製 造 単 価 を 10~30% 削 減 することを 全 体 目 標 とし 各 年 度 の 実 施 目 標 を 以 下 のように 設 定 した 1 年 度 目 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 に 必 要 な 個 別 要 素 技 術 の 確 立 2 年 度 目 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 による 金 型 内 メッキ 前 処 理 技 術 の 確 立 18-26_3
3 年 度 目 金 型 内 メッキ 前 処 理 技 術 と 中 間 仕 上 げメッキ 処 理 技 術 の 確 立 図 1 に 従 来 のメッキ 品 の 製 造 方 法 図 2 には 本 研 究 開 発 での 製 造 方 法 を 示 す 図 1 従 来 のメッキ 品 の 製 造 方 法 図 2 本 研 究 開 発 での 製 造 方 法 18-26_4
2. 研 究 体 制 (1) 管 理 体 制 事 業 管 理 者 財 団 法 人 飯 塚 研 究 開 発 機 構 820-8517 福 岡 県 飯 塚 市 川 津 680 番 地 41 1 従 事 者 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 竹 下 一 義 中 山 和 美 水 上 輝 美 研 究 開 発 部 部 長 総 務 部 総 務 課 主 任 主 事 研 究 開 発 部 事 業 課 課 長 都 外 川 靜 生 重 田 直 子 研 究 開 発 部 事 業 課 事 業 主 任 研 究 開 発 部 事 業 課 H21.4~ ~H21.3 牛 尾 雅 樹 鐘 ヶ 江 裕 志 研 究 開 発 部 事 業 課 研 究 開 発 部 事 業 課 管 理 運 営 杉 田 美 登 里 宮 嶋 友 子 菅 原 美 世 子 坂 尾 知 子 研 究 開 発 部 事 業 課 嘱 託 員 研 究 開 発 部 事 業 課 嘱 託 員 研 究 開 発 部 事 業 課 嘱 託 員 研 究 開 発 部 事 業 課 嘱 託 員 H20.12~H21.3 H20.12~H21.5 H21.4~ H21.6~ 2 総 括 研 究 代 表 者 (PL) 及 び 副 総 括 研 究 代 表 者 (SL) 総 括 研 究 代 表 者 (PL) 九 州 工 業 大 学 教 授 鈴 木 裕 副 総 括 研 究 代 表 者 (SL) 三 泉 化 成 株 式 会 社 営 業 部 営 業 技 術 Gr 副 部 長 高 島 宏 18-26_5
(2) 研 究 体 制 1 全 体 三 泉 化 成 株 式 会 社 1-1.サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 によるメッキ 前 処 理 成 形 実 験 2-1. 中 間 仕 上 げメッキ 実 験 用 装 飾 メッキ 処 理 装 置 の 開 発 支 援 2-2. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 用 メッキ 治 具 の 開 発 2-3. 中 間 仕 上 げメッキ 処 理 実 験 3-1. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 による 新 メッキプロセスの 総 合 評 価 試 験 4-1.フローフロント 法 射 出 成 形 機 用 ミキシングノズルの 開 発 九 州 池 上 金 型 株 式 会 社 2-2. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 用 メッキ 治 具 の 開 発 株 式 会 社 高 城 精 機 製 作 所 2-1. 中 間 仕 上 げメッキ 実 験 用 装 飾 メッキ 処 理 装 置 の 開 発 支 援 シバタ 精 機 株 式 会 社 1-2. 金 属 光 造 形 を 活 用 したサンドイッチ 法 成 形 用 特 殊 金 型 の 開 発 株 式 会 社 サンテック 4-1.フローフロント 法 射 出 成 形 機 用 ミキシングノズルの 開 発 日 立 マクセル 株 式 会 社 1-1.サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 によるメッキ 前 処 理 成 形 実 験 2-3. 中 間 仕 上 げメッキ 処 理 実 験 3-1. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 による 新 メッキプロセスの 総 合 評 価 試 験 九 州 工 業 大 学 先 端 金 型 センター 1-2. 金 属 光 造 形 を 活 用 したサンドイッチ 法 成 形 用 特 殊 金 型 の 開 発 福 岡 県 工 業 技 術 センター 機 械 電 子 研 究 所 1-1.サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 によるメッキ 前 処 理 成 形 実 験 1-2. 金 属 光 造 形 を 活 用 したサンドイッチ 法 成 形 用 特 殊 金 型 の 開 発 2-1. 中 間 仕 上 げメッキ 実 験 用 装 飾 メッキ 処 理 装 置 の 開 発 支 援 2-2. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 用 メッキ 治 具 の 開 発 2-3. 中 間 仕 上 げメッキ 処 理 実 験 3-1. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 による 新 メッキプロセスの 総 合 評 価 試 験 4-1.フローフロント 法 射 出 成 形 機 用 ミキシングノズルの 開 発 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 デジタルものづくり 研 究 センター 1-2. 金 属 光 造 形 を 活 用 したサンドイッチ 法 成 形 用 特 殊 金 型 の 開 発 18-26_6
2 再 委 託 先 三 泉 化 成 株 式 会 社 ( 再 委 託 先 ) 820-0052 福 岡 県 鞍 手 郡 小 竹 町 御 徳 1672-10 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 本 田 隆 介 代 表 取 締 役 社 長 1-1,2-1,2-2,2-3 3-1,4-1 高 島 宏 営 業 部 営 業 技 術 Gr 副 部 長 1-1,2-1,2-2,2-3 3-1,4-1 飯 野 貴 雄 営 業 部 営 業 技 術 Gr 係 長 1-1,2-1,2-2,2-3 3-1,4-1 蔵 本 久 雄 九 州 工 場 副 工 場 長 主 事 1-1,2-3,3-1 中 津 留 頼 弥 営 業 部 営 業 技 術 Gr 1-1,2-1,2-2,2-3 3-1,4-1 泰 藤 翔 平 営 業 部 営 業 技 術 Gr 1-1,2-1,2-2,2-3 3-1,4-1 九 州 池 上 金 型 株 式 会 社 ( 再 委 託 先 ) 819-1627 福 岡 県 糸 島 郡 二 丈 町 松 国 344-2 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 川 添 成 樹 製 造 部 製 造 課 長 3-1 廣 川 浩 司 製 造 部 技 術 担 当 3-1 古 賀 智 宏 製 造 部 技 術 担 当 3-1 株 式 会 社 高 城 精 機 製 作 所 ( 再 委 託 先 ) 802-0836 福 岡 県 北 九 州 市 小 倉 南 区 石 田 南 2 丁 目 4-1 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 安 田 恵 執 行 役 員 工 場 長 2-1 十 河 正 史 技 術 部 次 長 2-1 豊 富 稔 CAD/CAM 課 課 長 代 理 2-1 18-26_7
シバタ 精 機 株 式 会 社 ( 再 委 託 先 ) 838-1506 福 岡 県 朝 倉 市 杷 木 林 田 807-1 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 深 江 潤 一 経 営 管 理 部 部 長 1-2 御 堂 邦 則 営 業 部 課 長 1-2 中 本 克 己 プラスチック 金 型 部 部 員 1-2 松 井 孝 行 プラスチック 金 型 部 係 長 1-2 中 村 太 郎 プラスチック 金 型 部 部 員 1-2 株 式 会 社 サンテック( 再 委 託 先 ) 807-1312 福 岡 県 鞍 手 郡 鞍 手 町 中 山 55-3 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 堤 隆 幸 金 型 製 造 本 部 技 術 部 4-1 技 術 開 発 課 課 長 川 野 和 彦 金 型 製 造 本 部 技 術 部 4-1 技 術 開 発 課 グループ 長 粟 津 和 行 金 型 製 造 本 部 技 術 部 4-1 技 術 開 発 課 課 員 北 村 詔 一 金 型 製 造 本 部 技 術 部 4-1 H20.1~H21.1 技 術 開 発 課 課 員 本 田 広 道 金 型 製 造 本 部 技 術 部 技 術 開 発 課 課 長 4-1 H21.2~H21.11 日 立 マクセル 株 式 会 社 ( 再 委 託 先 ) 567-8567 大 阪 府 茨 木 市 丑 寅 1-1-88 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 遊 佐 敦 開 発 本 部 主 任 技 師 1-1,2-3,3-1 末 永 正 志 開 発 本 部 主 任 技 師 2-3,3-1 阿 野 哲 也 開 発 本 部 技 師 1-1,2-3 太 田 寛 紀 開 発 本 部 技 師 2-3 安 達 和 慶 開 発 本 部 技 師 2-3,3-1 野 村 善 行 開 発 本 部 技 師 2-3,3-1 山 本 智 史 開 発 本 部 技 師 1-1 18-26_8
九 州 工 業 大 学 先 端 金 型 センター( 再 委 託 先 ) 820-8502 福 岡 県 飯 塚 市 川 津 680-4 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 鈴 木 裕 先 端 金 型 センター センター 長 1-2 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 デジタルものづくり 研 究 センター( 再 委 託 先 ) 305-8564 茨 城 県 つくば 市 並 木 1-2-1 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 尾 崎 浩 一 加 工 基 盤 技 術 研 究 チーム 1-2 チームリーダー 伊 藤 哲 加 工 基 盤 技 術 研 究 チーム 主 任 研 究 員 1-2 福 岡 県 工 業 技 術 センター 機 械 電 子 研 究 所 ( 再 委 託 先 ) 807-0831 北 九 州 市 八 幡 西 区 則 松 3-6-1 氏 名 所 属 役 職 実 施 内 容 備 考 野 中 智 博 生 産 技 術 課 専 門 研 究 員 1-1,1-2,2-1,2-2 2-3,3-1,4-1 (3) アドバイザー 氏 名 所 属 役 職 備 考 緒 方 光 トヨタ 自 動 車 九 州 NB 事 業 室 主 査 大 嶋 正 裕 京 都 大 学 工 学 研 究 科 教 授 坂 本 正 史 西 日 本 工 業 大 学 名 誉 学 長 藤 本 敏 樹 信 州 大 学 イノベーション 研 究 支 援 センター 神 谷 昌 秀 福 岡 県 工 業 技 術 センター 機 械 電 子 研 究 所 所 長 大 橋 隆 弘 国 士 舘 大 学 理 工 学 部 理 工 学 科 機 械 工 学 系 准 教 授 18-26_9
(4) 研 究 開 発 スケジュール 実 施 内 容 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 1.サンドイッチ 法 によるメッキ 前 処 理 成 形 品 の 量 産 化 1-1 1-2 2.メッキの 中 間 仕 上 げ 処 理 方 法 の 確 立 2-1 2-2 2-3 3. 装 飾 メッキ 処 理 装 置 による 新 メッキプロセスの 総 合 評 価 試 験 3-1 4.フローフロント 法 射 出 成 形 機 の 改 良 開 発 4-1 5 プロジェクトの 管 理 運 営 推 進 委 員 会 実 務 者 会 議 報 告 書 作 成 18-26_10
3. 成 果 概 要 プラスチック 装 飾 メッキ 部 品 に 対 して 自 動 車 産 業 が 求 める 高 品 質 部 品 の 短 納 期 低 コ スト 化 のニーズには 従 来 工 程 である 射 出 成 形 後 の 別 工 場 で 行 われる 複 数 工 程 によるメッ キ 処 理 では 工 程 数 工 程 時 間 共 に 削 減 できる 限 界 がある 本 研 究 開 発 では 金 型 内 で 樹 脂 射 出 成 形 とメッキ 前 処 理 を 行 うことにより 工 程 数 工 程 時 間 の 短 縮 を 図 ることを 目 指 した 研 究 開 発 を 実 施 した 本 研 究 開 発 では 主 にナイロンに 対 して 金 型 内 で 樹 脂 射 出 成 形 とメッキ 前 処 理 技 術 の 確 立 をフローフロント 法 及 びサンドイッチ 法 による 射 出 成 形 を 実 施 した その 結 果 サンドイッチ 法 において 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 による 金 型 内 で 樹 脂 射 出 成 形 とメッキ 前 処 理 までを 行 う 新 技 術 を 開 発 し 同 時 に 生 産 技 術 を 確 立 した 特 にメッキ 前 処 理 工 程 の 確 立 と 装 飾 メッキ 処 理 装 置 による 中 間 仕 上 げメッキ 工 程 の 条 件 だしについては 今 後 の 実 用 化 に 向 けて 歩 留 まりを 考 慮 したさらなる 工 程 条 件 の ブラッシュアップにより 当 初 目 標 の 30%コスト 削 減 を 行 える 4. 当 該 研 究 開 発 の 連 絡 窓 口 財 団 法 人 飯 塚 研 究 開 発 機 構 研 究 開 発 部 牛 尾 雅 樹 TEL: 0948-26-1606 FAX: 0948-21-2150 E-mail: ushio@cird.or.jp 18-26_11
第 2 章 本 論 本 研 究 開 発 の 中 核 技 術 である 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 法 は 超 臨 界 流 体 を 使 って 射 出 成 形 と 同 時 に メッキの 触 媒 核 となる 金 属 錯 体 を 成 形 品 の 表 層 に 分 散 させ メッキ 前 処 理 を 行 う 技 術 である 本 研 究 開 発 では 成 形 方 法 の 違 うフローフロント 法 およびサンドイッチ 法 の 二 種 類 について 研 究 開 発 を 実 施 した フローフロント 法 は 射 出 成 形 機 のノズル 部 において 金 属 錯 体 等 を 溶 かした 超 臨 界 流 体 を 溶 融 したプラスチックと 混 合 し 分 散 させて 金 型 に 射 出 し 成 形 する 方 法 である 一 方 サンドイッチ 法 は 成 形 品 のスキン 層 成 形 のため 射 出 装 置 とコア 層 を 成 形 す るための 二 本 の 射 出 装 置 を 持 つ 特 殊 な 射 出 成 形 機 で スキン 層 用 の 射 出 装 置 では シリ ンダ 内 に 金 属 錯 体 等 を 溶 かした 超 臨 界 流 体 を 注 入 し スクリューで 攪 拌 した 後 シリン ダ 部 で 高 圧 ガスだけを 抜 くという 全 く 新 しい 構 造 を 持 っている 本 研 究 開 発 では 超 臨 界 流 体 は 二 酸 化 炭 素 金 属 錯 体 としてパラジウム 錯 体 ( 以 下 錯 体 )を 用 いた 図 3 にフローフロント 法 とサンドイッチ 法 の 概 略 図 を 示 す 研 究 開 発 は 実 施 項 目 について 年 度 毎 の 目 標 を 達 成 するように 実 施 した 以 下 に 実 施 項 目 毎 に その 内 容 を 示 す 1. 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 用 射 出 成 形 機 の 開 発 フローフロント 法 超 臨 界 CO 2 + 金 属 触 媒 金 型 フ ロ ー フロント 既 存 の 射 出 成 形 機 の 改 造 で 実 現 できる ( 設 備 が 低 コスト) 噴 水 効 果 金 型 内 にCO 2 が 導 入 される サンドイッチ 法 超 臨 界 CO2+ 金 属 触 媒 CO2 スキン 層 専 用 の 射 出 成 形 機 が 必 要 ( 設 備 費 がかかる) 2 種 類 の 樹 脂 で 成 形 が 出 来 る コア 層 金 型 内 にCO 2 が 導 入 されない 図 3 フローフロント 法 とサンドイッチ 法 の 概 略 図 18-26_12
(1) フローフロント 法 射 出 成 形 機 の 開 発 フローフロント 法 によるメッキ 前 処 理 技 術 を 確 立 するために フローフロント 法 射 出 成 形 機 に 装 着 するミキシングノズルの 開 発 を 行 った フローフロント 法 の 利 点 は 広 く 普 及 している 射 出 成 形 機 に ミキシングノズル 部 を 装 着 することによって 成 形 と 同 時 にメッキ 前 処 理 が 実 現 できるものであり 専 用 成 形 機 を 必 要 とするサンドイッチ 法 と 比 較 し 設 備 費 を 抑 えることができる 点 である 開 発 当 初 のフローフロント 法 射 出 成 形 機 は 180ton 級 の 電 動 サーボ 射 出 成 形 機 と 市 販 のミキシングノズルを 用 い ノズル 部 で 超 臨 界 流 体 を 導 入 し 溶 融 樹 脂 と 錯 体 を 撹 拌 させるものであった しかし 市 販 のミキシングノズルを 用 いた 場 合 撹 拌 による 錯 体 の 分 散 が 悪 く 高 品 質 なメッキ 成 長 を 望 めないことが 分 かったため 効 率 の 良 い 専 用 ミキシングノズルの 開 発 を 目 指 すこととした (2) 超 臨 界 流 体 発 生 装 置 の 開 発 フローフロント 法 射 出 成 形 機 へ 錯 体 を 溶 かした 超 臨 界 流 体 を 供 給 する 装 置 として 超 臨 界 流 体 発 生 装 置 の 開 発 を 行 った (3) サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 の 開 発 サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 は コア 層 とスキン 層 を 形 成 する 二 本 の 射 出 装 置 を 持 ち スキン 層 成 形 射 出 装 置 では シリンダ 内 に 錯 体 を 溶 かした 超 臨 界 流 体 を 注 入 し スクリ ューで 攪 拌 した 後 シリンダで 高 圧 ガスだけを 抜 く 新 しい 構 造 である 平 成 18 年 度 には スキン 層 用 のスクリュー シリンダを 先 行 的 に 試 作 開 発 し 性 能 テスト 後 に 平 成 19 年 度 に 射 出 成 形 機 全 体 を 開 発 した この 射 出 成 形 機 の 試 作 開 発 は ( 株 ) 日 本 製 鋼 所 にて 製 作 を 行 った 写 真 1 にスキン 層 用 のスクリューとシリンダを 示 す また 写 真 2 に 開 発 したサンドイッチ 法 射 出 成 形 機 を 示 す 写 真 1 スキン 層 用 のスクリューとシリンダ 18-26_13
写 真 2 サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 2. 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 用 金 型 の 開 発 金 属 光 造 形 は 金 属 粉 末 をレーザ 光 源 により 焼 結 させて 構 造 体 を 形 成 するため 構 造 体 について ⅰ) 物 質 の 粗 密 造 形 や ⅱ) 切 削 加 工 では 不 可 能 な3 次 元 形 状 を 構 造 体 内 部 に 構 築 することが 可 能 である 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 技 術 に 対 して ⅰ)の 特 徴 は 成 形 後 の 流 体 排 出 の 助 長 ⅱ) の 特 徴 は 成 形 時 に 重 要 となる 金 型 温 度 の 均 一 化 を 実 現 することができる (1) 金 型 シール 実 験 用 金 型 の 開 発 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 では 金 型 内 で 超 臨 界 状 態 を 実 現 するために 臨 界 点 で 圧 力 が 7.38MPa 温 度 が 31 以 上 の 二 酸 化 炭 素 を 使 用 する 平 成 18 年 度 の 開 発 初 期 段 階 においては 高 圧 二 酸 化 炭 素 を 金 型 内 に 導 入 し 高 圧 を 保 持 する 必 要 性 があると 考 えていたために 高 圧 二 酸 化 炭 素 に 対 する 金 型 内 の 基 本 的 な シール 方 法 の 検 討 について 実 験 用 金 型 を 試 作 開 発 し シール 実 験 を 行 った 図 4 に 成 形 サンプル 品 形 状 図 5 に 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 )を 示 す また 写 真 3 4 に 開 発 した 金 型 の 固 定 側 可 動 側 を 示 す さらに 写 真 5 にパウダーによるガスの 流 れのチェックの 様 子 と 写 真 6 にシール 実 験 で 使 用 した 高 圧 二 酸 化 炭 素 発 生 装 置 を 示 す この 金 型 を 使 ったシール 実 験 では 四 フッ 化 エチレン 樹 脂 を 基 材 とした 高 圧 シールを 用 いることにより 円 筒 形 状 を 持 つ 金 型 中 核 部 およびエジェクターピンに 対 して 15MPa までの 高 圧 二 酸 化 炭 素 のシールが 可 能 であることを 確 認 できた 18-26_14
図 4 成 形 サンプル 品 形 状 図 5 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 ) 写 真 3 金 型 固 定 側 写 真 4 金 型 可 動 側 写 真 5 パウダーによるガスの 流 れチェック 写 真 6 高 圧 二 酸 化 炭 素 発 生 装 置 18-26_15
(2) フローフロント 法 基 礎 実 験 用 金 型 の 開 発 フローフロント 法 射 出 成 形 機 を 使 ったメッキ 前 処 理 基 礎 実 験 により 評 価 を 行 う 試 験 形 状 を 基 本 的 な 実 験 用 三 次 元 形 状 ( 図 6)の 金 型 を 開 発 した 図 7 に 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 ) 写 真 7 に 金 型 可 動 側 さらに 成 形 した 錯 体 入 り 成 形 サンプル 品 ( 写 真 8)を 示 す (3) 川 下 産 業 からの 課 題 製 品 形 状 用 金 型 の 設 計 製 作 実 形 状 に 近 いメッキ 製 品 に 対 するメッキ 前 処 理 技 術 を 確 立 するために 実 金 型 を 製 作 し 有 効 性 を 実 証 することとした そこで 川 下 産 業 より 提 供 されたエンブレム 形 状 に サンプル と 刻 印 した 製 品 形 状 とし これをフローフロント 法 射 出 成 形 機 で 使 用 する 金 型 とし 設 計 製 作 した 図 8 に 実 験 用 形 状 図 9 に 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 ) 写 真 9 に 製 作 した 金 型 可 動 側 を 示 す この 金 型 には 金 属 光 造 形 複 合 加 工 で 製 作 した 金 属 シールを 取 り 付 けられるように したが 成 形 実 験 の 結 果 により メッキ 前 処 理 では 金 型 内 が 高 圧 である 必 要 がなくな り 高 圧 シールの 必 要 性 がなくなったため 検 証 の 必 要 がなくなった 写 真 10 に 金 属 光 造 形 複 合 加 工 で 製 作 した 金 属 シールを 示 す 図 6 実 験 用 三 次 元 形 状 図 7 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 ) 写 真 7 金 型 可 動 側 写 真 8 成 形 サンプル 品 ( 錯 体 入 り) 18-26_16
図 8 実 験 用 形 状 (エンブレム) 図 9 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 ) 写 真 9 金 型 可 動 側 写 真 10 金 属 光 造 形 部 品 ( 金 属 シール) (4) サンドイッチ 法 成 形 実 験 用 金 型 の 設 計 製 作 自 動 車 用 ライトリフレクタ 形 状 を 成 形 サンプル 品 として サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 でメッキ 前 処 理 成 形 実 験 を 行 う 金 型 を 設 計 製 作 した 図 10 に 実 験 用 形 状 図 11 に 金 型 全 体 図 写 真 11 に 製 作 した 金 型 可 動 側 写 真 12 に サンドイッチ 法 射 出 成 形 機 での 成 形 サンプル 品 を 示 す 図 10 実 験 用 形 状 (リフレクタ) 図 11 金 型 全 体 ( 三 次 元 表 示 ) 18-26_17
写 真 11 金 型 可 動 側 写 真 12 成 形 サンプル 品 ドリル 加 工 の 温 調 回 路 金 属 光 造 形 の 温 調 回 路 図 12 温 調 回 路 の 配 置 ( 二 個 取 り 構 造 ) (5) 金 属 光 造 形 を 活 用 したサンドイッチ 成 形 用 特 殊 金 型 の 開 発 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 では メッキ 前 処 理 として メッキを 成 長 させるために 必 要 な 触 媒 核 として 錯 体 を 使 用 し 成 形 時 にプラスチックと 混 合 し 表 層 に 分 散 させる しかし この 錯 体 は 高 価 ( 実 験 用 試 薬 11,200 円 /g)であるために 量 産 での 低 価 格 化 を 実 現 するには その 使 用 量 を 極 力 低 減 する 必 要 がある そこで 金 属 光 造 形 複 合 加 工 によって 従 来 の 加 工 方 法 ではできない 形 状 の 温 度 調 節 回 路 ( 温 調 回 路 )をもつ 特 殊 金 型 を 製 作 し メッキを 施 す 成 形 品 の 表 面 に 接 触 する 金 型 部 品 の 温 度 分 布 を均 一 化 し 錯 体 の 分 散 性 を 向 上 し 使 用 量 を 削 減 について 実 験 により 明 らかにした 特 殊 金 型 は メッキを 施 すサンプル 品 の 表 側 になるキャビティ 部 に 対 して 従 来 のド リル 加 工 による 温 調 回 路 を 持 つ 従 来 金 型 と 金 属 光 造 形 による 三 次 元 的 な 温 調 回 路 を 持 つ 特 殊 金 型 を 二 面 並 べた 二 個 取 り 構 造 とした これにより 同 じ 射 出 条 件 で 両 者 を 比 較 検 討 できるようにした 図 12 に キャビティ 形 状 および 二 個 取 り 構 造 での 温 調 回 路 の 配 置 を 示 す 写 真 13 に 特 殊 金 型 を 示 す 18-26_18
ドリル 加 工 による 温 調 回 路 側 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 1 1 金 属 光 造 形 による 温 調 回 路 側 写 真 13 特 殊 金 型 図 13 測 定 位 置 図 14 測 定 結 果 この 金 型 を 使 用 した 実 験 では まず 成 形 時 にキャビティの 製 品 との 接 触 面 の 温 度 測 定 を 行 った この 結 果 従 来 のドリルによる 温 調 回 路 に 比 べ 金 属 光 造 形 による 温 調 回 路 では 温 度 調 整 機 の 設 定 温 度 80 度 に 対 し 表 面 温 度 が 全 体 的 に 設 定 温 度 に 近 く 位 置 による 温 度 変 化 も 少 ないことが 分 かった 図 13 にその 測 定 位 置 図 14 に 測 定 結 果 を 示 す 18-26_19
メッキむらがある 部 分 的 にメッキが 成 長 していない 全 面 にメッキが 成 長 一 般 金 型 による 成 形 特 殊 金 型 による 成 形 写 真 14 無 電 解 下 地 メッキ 実 験 の 結 果 次 に サンドイッチ 成 形 機 で 成 形 し ドリル 穴 による 温 調 回 路 で 成 形 した 成 形 品 と 金 属 光 造 形 による 温 調 回 路 で 成 形 した 成 形 品 のメッキのつきまわりと 反 応 性 の 違 いを 確 認 する 無 電 解 下 地 メッキ 実 験 を 行 った 実 験 では 無 電 解 メッキ 処 理 時 間 を 5 分 とし て 表 面 状 態 の 違 いを 観 察 した その 結 果 を 写 真 14 に 示 す この 実 験 で サンドイッチ 成 形 による 成 形 で ドリル 穴 による温 調 回 路 で 成 形 した 成 形 品 よりも 金 属 光 造 形 による 温 調 回 路 で 成 形 した 成 形 品 の 方 がメッキの 成 長 性 が 改 善 されることが 分 かった 3. 型 内 メッキ 射 出 成 形 技 術 の 確 立 (1) フローフロント 法 による 成 形 実 験 フローフロント 法 射 出 成 形 機 を 使 ったメッキ 前 処 理 成 形 実 験 では 当 初 市 販 のミキ シングノズルを 付 けたプロトタイプの 超 臨 界 流 体 供 給 装 置 で 錯 体 をプラスチックと 混 合 しようとしたが 錯 体 の 混 合 量 をうまく 制 御 できなかった そこで 錯 体 を 溶 かした 超 臨 界 流 体 の 流 入 量 を 正 確 に 制 御 するために インジェクタ バルブを 新 たに 開 発 した 開 発 したインジェクタバルブ( 写 真 15)とそのバルブを 取 り 付 けた 市 販 ミキシングノズル( 写 真 16)に 示 す また 写 真 17 に 成 形 した 平 板 基 本 形 状 の 成 形 サンプル 品 を 示 し 写 真 18 に 三 次 元 基 本 形 状 の 成 形 サンプル 品 を 示 す この 実 験 で 写 真 17 に 示 すように 成 形 品 の 一 部 に 錯 体 が 混 合 できない 部 分 があるこ とと 写 真 18 に 示 すように 錯 体 の 分 散 性 が 均 一 ではないことが 分 かった 18-26_20
写 真 18 のサンプル 品 に 対 して 中 間 仕 上 げメッキを 施 し 全 体 にメッキが 成 長 する ことが 確 認 できた その 様 子 を 写 真 19 に 示 す 写 真 15 インジェクタバルブ 写 真 16 市 販 ミキシングノズル 写 真 17 平 板 基 本 形 状 成 形 サンプル 品 写 真 18 三 次 元 基 本 形 状 成 形 サンプル 品 写 真 19 フローフロント 法 による 成 形 品 のメッキ 処 理 18-26_21
しかし この 方 法 による 新 しいメッキ 方 法 を 事 業 化 するために メッキ 品 質 を 一 定 化 し 向 上 させることと 高 価 な 錯 体 の 使 用 量 を 削 減 するためには 錯 体 の 分 散 性 を 均 一 にすることが 課 題 であった そこで フローフロント 法 では 射 出 成 形 機 のノズル 部 に 取 り 付 ける 超 臨 界 流 体 供 給 装 置 の 改 良 開 発 を 中 心 に 研 究 開 発 を 進 めることにした 平 成 19 年 度 に 攪 拌 子 を 前 後 に 動 かすことにより プラスチックと 錯 体 を 混 合 する 超 臨 界 流 体 供 給 装 置 (ミキシングノズル)を 開 発 した 図 15 にその 概 念 図 を 示 す また 写 真 20 に 攪 拌 子 写 真 21 に 開 発 したミキシングノ ズルを 示 す 金 型 ミキシングノズル 部 射 出 成 形 機 本 体 CO 2 +Pd 錯 体 攪 拌 子 前 後 運 動 による 攪 拌 図 15 前 後 運 動 によるミキシングノズルの 概 念 図 写 真 20 攪 拌 子 形 状 写 真 21 開 発 したミキシングノズル 写 真 22 成 形 サンプル 品 ( 平 成 19 年 度 ) 18-26_22
(タイプ1) (タイプ2) (タイプ3) (タイプ4) (タイプ5) 図 16 製 作 した 攪 拌 子 の構 造 この 装 置 でも 分 散 性 は 不 十 分 であった 写 真 22 に 成 形 サンプル 品 を 示 す そこで 平 成 20 年 度 も 引 き 続 き 改 良 を 行 うことにし 図 16 に 示 す 五 種 類 の 構 造 で 攪 拌 子 を 試 作 し 前 後 運 動 での 分 散 性 改 善 の 可 能 性 を 検 討 した 試 作 した 攪 拌 子 を 使 った 成 形 実 験 では 全 体 的 に 分 散 が 不 十 分 であったが タイプ3 においてのみ 一 方 向 のみの 分 散 でなく 全 体 的 な 分 散 が 確 認 できた これは 五 種 類 の 攪 拌 子 の 中 で 樹 脂 が 前 後 方 向 に 通 過 する 穴 の 数 が最 も 少 ないため 他 のものに 比 べて 流 体 に 与 える 流 動 抵 抗 が 大 きく 錯 体 が 注 入 口 付 近 で 撹 拌 子 を 通 過 す ることができないために 他 方 向 へ 動 いた 結 果 と 推 察 された そこで 写 真 23 に 示 す 撹 拌 子 の 外 周 部 に さらにセレーション 形 状 を 施 したものを 製 作 し 追 加 実 験 を 行 うことにした 写 真 24 に 成 形 サンプル 品 ( 平 板 )を 示 す 実 験 結 果 では 前 回 行 った 五 種 類 の 撹 拌 子 に 比 べて 分 散 性 が 改 善 できることが確 認 された これらの撹 拌 実 験 により ミキシングノズル 内 で 撹 拌 するには 錯 体 を 円 周 方 向 へ 動 かすとともに 抵 抗 を 与 えて 混 練 させる 運 動 が 重 要 であるとが 明 らかになった しかし 撹 拌 子 形 状 の 検 証 実 験 では 分 散 性 の 向 上 は 確 認 できたが まだ 実 用 レベル には 至 っていない そこでさらに 分 散 性 を 向 上 させる 方 策 として 前 記 の 実 験 考 察 を 元 にした 撹 拌 子 に 回 転 運 動 を 付 加 する 機 構 を 構 想 し 設 計 製 作 を 行 った 図 17 に 概 略 図 写 真 25 に 射 出 成 型 機 に 取 り 付 けたものを 示 す 18-26_23
写 真 23 攪 拌 子 (セレーション) 写 真 24 成 形 サンプル 品 ( 平 板 ) 図 17 ミキシングノズル 概 略 図 写 真 25 射 出 成 形 機 に 取 り 付 けた ミキシングノズル 既 存 の 市 販 ミキシングノズルよりも 高 い 分 散 性 を 目 標 に ミキシングノズルを 開 発 し 往 復 運 動 では 適 切 な 撹 拌 子 形 状 を 決 定 することができた さらに 分 散 性 を 狙 い 回 転 運 動 を 取 り 入 れた 機 構 開 発 を 行 ったが 撹 拌 実 験 による 検 証 までは 至 らなかった 今 後 フローフロント 法 での 錯 体 の 分 散 性 の 向 上 を 追 及 する 予 定 である (2) サンドイッチ 法 による 成 形 実 験 サンドイッチ 法 の 成 形 実 験 では 目 標 の 10N/cm を 上 回 る 剥 離 強 度 を 有 するメッキができること 錯 体 の 使 用 量 を 極 力 削 減 し 低 価 格 でのメッキ 前 処 理 を 実 現 すること を 主 な 課 題 として 研 究 開 発 に 取 り 組 んだ その 結 果 ナイロンに 対 しては 目 標 の 10N/cm を 上 回 る 20N/cm 程 度 の 剥 離 強 度 を 持 つに 至 った 剥 離 強 度 試 験 機 ( 写 真 26)と 剥 離 強 度 測 定 結 果 ( 図 18)を 示 す 18-26_24
写 真 26 剥 離 強 度 試 験 機 図 18 剥 離 強 度 測 定 結 果 また 錯 体 使 用 量 についても 従 来 のメッキ 技 術 とほぼ 同 等 のコストで メッキが 可 能 なレベルにすることができた (3) プラスチックメッキ 成 形 品 の 総 合 評 価 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 技 術 によって 成 形 とメッキ 前 処 理 が 同 時 に 行 うことが 可 能 となり メッキに 掛 かる 工 程 数 を 大 きく 削 減 することができる したがって この 新 しいメッキ 技 術 の 有 効 性 優 位 性 を 示 すためには このメッキ 前 処 理 に 適 した 全 てのメッキ 処 理 を 行 い メッキ 完 成 品 として 総 合 的 に 評 価 する 必 要 がある そこで 写 真 27 に 示 す 装 飾 メッキ 処 理 装 置 を 使 い メッキ 前 処 理 成 形 品 に 対 して 中 間 仕 上 げメッキを 施 し 完 成 品 とした 写 真 28 に 仕 上 げメッキサンプル 品 を 示 す 写 真 27 装 飾 メッキ 処 理 装 置 写 真 28 仕 上 げメッキサンプル 品 18-26_25
総 合 評 価 では まず プラスチックとメッキの 界 面 状 態 を 把 握 するために 集 束 イ オンビーム 加 工 観 察 装 置 (FIB-SEM)を 使 って 立 体 画 像 観 察 ( 図 19)を 行 った その 後 仕 上 げメッキサンプル 品 (エンブレム)に 対 して 自 動 車 メーカーの 装 飾 用 クロムメッキの 技 術 標 準 を 参 考 にして 以 下 の 項 目 に 対 して メッキ 完 成 品 を 評 価 した その 結 果 の 概 要 を 示 す 1) 膜 厚 試 験 膜 厚 試 験 では 超 臨 界 流 体 付 加 射 出 成 形 によってメッキ 前 処 理 は 影 響 が 薄 く そ の 後 の 中 間 仕 上 げメッキを 適 切 に 施 せば 自 動 車 メーカー 等 のユーザの 指 定 によ る 膜 厚 を 得 ることができることが 確 認 できた 写 真 29 に 成 形 品 の 膜 厚 測 定 箇 所 と 表 1 に 蛍 光 X 線 膜 厚 計 による 測 定 結 果 を 示 す 2) ヒートサイクル 試 験 装 飾 メッキ 品 に 対 し 高 温 と 低 温 の 雰 囲 気 に 一 定 時 間 晒 し 交 互 に 温 度 変 化 を 行 うことにより 温 度 差 によるメッキ 品 の 劣 化 等 を 定 量 化 するものである ヒートサイクル 試 験 では 銅 メッキ 段 階 では 自 動 車 メーカーの 規 格 である 四 サ イクルでも 有 効 面 の 膨 れ 剥 離 割 れは 発 生 しなかった しかし 仕 上 げメッキサンプル 品 では 二 サイクルで 膨 れが 生 じた これは ナイロンと 無 電 解 下 地 ニッケルメッキの 密 着 力 がまだ 不 十 分 であること が考 えられ 今 後 更 に 密 着 力 を 向 上 させる 必 要 がある 3)キャス 試 験 30 時 間 のキャス 試 験 の 結 果 目 視 による 検 査 で 素 地 の 腐 食 によるしみ メッキ 皮 膜 の 割 れや 剥 離 及 び 膨 れ ピット 状 やこぶ 状 及 び 樹 枝 状 の 腐 食 等 の 不 良 は 発 生 しておらず 規 格 に 耐 えうる 成 形 サンプル 品 であることが 確 認 できた 4) 歩 留 まり 50 個 の 連 続 処 理 に 対 して 良 品 の 割 合 は 従 来 のメッキ 処 理 法 と 同 等 の 70% 程 度 であった 30%の 不 良 の 原 因 は メッキ 完 成 品 の 状 態 から 無 電 解 下 地 メッキ 段 階 ま でではなく 従 来 技 術 である 中 間 仕 上 げメッキに 対 するノウハウ 不 足 に 起 因 する ものと 推 察 される 写 真 30 に 歩 留 まり実 験 における 不 良 の 状 態 を 示 す 総 合 評 価 では 上 記 の 実 験 結 果 から 本 研 究 で 確 立 したメッキ 前 処 理 及 び 中 間 仕 上 げ 処 理 を 施 した 成 形 サンプル 品 は 一 定 の 完 成 度 であることが 確 認 できた 事 業 化 を 行 う 際 に 必 要 となるコストダウンは 不 良 の 発 生 率 を 低 減 する 必 要 があり 特 に 中 間 仕 上 げメッキでの メッキ 条 件 の 確 立 が 必 要 であることが 分 かった 18-26_26
8.5μm 5.5μm 4.6μm PA6 層 NiP 層 Cu 層 図 19 集 束 イオンビーム 加 工 観 察 装 置 による 立 体 画 像 観 察 表 1 膜 厚 測 定 結 果 3 4 1 2 ( 単 位 μm) 市 販 品 今 回 サンプル Cr Ni Cr Ni 1 0.231 22.21 0.511 24.54 2 0.225 19.77 0.546 19.17 7 6 3 0.211 19.87 0.420 22.75 4 0.152 17.54 0.264 19.90 5 写 真 29 膜 厚 測 定 箇 所 5 0.398 29.31 0.900 26.49 6 0.311 22.28 0.851 18.62 7 0.288 23.78 0.805 27.29 電 着 不 良 異 物 付 着 写 真 30 歩 留 まり 実 験 における 不 良 の 状 態 18-26_27
第 3 章 全 体 総 括 1. 研 究 開 発 成 果 プラスチック 装 飾 メッキ 部 品 に 対 して 自 動 車 産 業 が 求 める 高 品 質 部 品 の 短 納 期 低 コ スト 化 のニーズには 従 来 工 程 である 射 出 成 形 後 の 別 工 場 で 行 われる 複 数 工 程 によるメッ キ 処 理 では 工 程 数 工 程 時 間 共 に 削 減 できる 限 界 がある 本 研 究 開 発 では 金 型 内 で 樹 脂 射 出 成 形 とメッキ 前 処 理 を 行 うことにより 工 程 数 工 程 時 間 の 短 縮 を 図 ることを 目 指 した 研 究 開 発 を 実 施 した 本 研 究 開 発 では 主 にナイロンに 対 して 金 型 内 で 樹 脂 射 出 成 形 とメッキ 前 処 理 技 術 の 確 立 をフローフロント 法 及 びサンドイッチ 法 による 射 出 成 形 を 実 施 した その 結 果 サンドイッチ 法 において 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 による 金 型 内 で樹 脂 射 出 成 形 とメッキ 前 処 理 までを 行 う 新 技 術 を 開 発 し 同 時 に 生 産 技 術 を 確 立 した 特 にメッキ 前 処 理 工 程 の 確 立 と 装 飾 メッキ 処 理 装 置 による 中 間 仕 上 げメッキ 工 程 の 条 件 だしについては 今 後 の 実 用 化 に 向 けて 歩 留 まりを 考 慮 したさらなる 工 程 条 件 のブ ラッシュアップにより 当 初 目 標 の 30%コスト 削 減 を 行 える 2. 今 後 の 課 題 及 び 事 業 化 展 開 (1) 今 後 の 課 題 課 題 として 残 った ナイロン 以 外 の 樹 脂 材 料 である ABS 等 に 対 する 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 技 術 及 び フローフロント 法 における 成 形 技 術 の 確 立 については ミキシングノズルの 開 発 を 継 続 し プラスチックへの 錯 体 分 散 性 の 向 上 を 図 り 実 用 化 に 近 づけるための 研 究 開 発 を 継 続 し さらなるコスト 低 減 と 技 術 の 普 及 を 図 る (2) 事 業 化 計 画 今 後 は この 新 しいメッキプロセスの 完 成 度 を 向 上 させ 機 械 的 強 度 が 優 れており 耐 薬 品 性 耐 熱 性 があるナイロンを 基 材 とした 装 飾 メッキ 品 を 軸 として 今 後 三 泉 化 成 ( 株 ) を 中 心 に 事 業 化 を 行 う 予 定 である また 本 開 発 技 術 の 特 徴 となった 環 境 負 荷 低 減 処 理 プロセスであること および 開 発 成 果 であるメッキ 被 膜 の 高 剥 離 強 度 を 活 かせる 等 の 対 象 製 品 模 索 を 行 う 18-26_28
付 録 1. 参 考 文 献 引 用 文 献 (1) 表 面 技 術 : 遊 佐 敦 他 社 団 法 人 表 面 技 術 協 会 Vol. 59 No. 5 2008 (2) 成 形 加 工 : 遊 佐 敦 他 プラスチック 成 形 加 工 学 会 第 19 巻 第 11 号 2007 (3) 超 臨 界 流 体 のすべて: 荒 井 康 彦 監 修 (テクノシステム) 2002 (4) 超 臨 界 流 体 の 最 新 応 用 技 術 : 新 井 邦 夫 他 (NTS) 2004 (5) 超 臨 界 流 体 のはなし: 佐 古 猛 岡 島 いづみ( 日 刊 工 業 新 聞 社 )2006 (6) 錯 体 のはなし: 渡 部 正 利 河 野 博 之 山 崎 昶 ( 米 田 出 版 )2004 (7) 次 世 代 めっき 技 術 : 電 気 鍍 金 研 究 会 日 刊 工 業 新 聞 社 2005 (8) めっき 教 本 : 電 気 鍍 金 研 究 会 日 刊 工 業 新 聞 社 2003 (9) 絵 ときめっき 基 礎 のきそ :プレーティング 研 究 会 日 刊 工 業 新 聞 社 2007 (10) 初 級 めっき : 丸 山 清 日 刊 工 業 新 聞 社 2006 (11) 図 解 めっき 用 語 辞 典 : 丸 山 清 毛 利 秀 明 日 刊 工 業 新 聞 社 2006 (12) 無 電 解 めっき 基 礎 と 応 用 : 電 気 鍍 金 研 究 会 日 刊 工 業 新 聞 社 2006 2. 専 門 用 語 の 解 説 専 門 用 語 解 説 超 臨 界 流 体 付 加 物 質 には それぞれ 固 有 の 臨 界 点 があり 臨 界 点 を 越 えた 状 態 を 成 形 超 臨 界 流 体 と 言 う 超 臨 界 流 体 の 特 徴 を 活 かし プラスチック 製 品 の 成 形 に 利 用 して 通 常 の 成 形 ではできない 成 形 を 行 う 事 を 超 臨 界 流 体 付 加 成 形 という 金 属 錯 体 錯 体 (さくたい ''Complex'')とは 配 位 結 合 や 水 素 結 合 によ って 形 成 された 分 子 性 化 合 物 の 総 称 である 狭 義 には 金 属 原 子 を 中 心 として 周 囲 に 配 位 子 が 結 合 した 構 造 を 持 つ 化 合 物 ( 金 属 錯 体 )を 指 す 金 属 光 造 形 複 合 金 属 光 造 形 複 合 加 工 とは 金 属 粉 末 を 数 十 ミクロンの 厚 さの 層 に 加 工 敷 き 詰 めて スライスした1 番 下 の 層 と 同 じ 形 状 になるように そこだけレーザビームを 走 らせて 金 属 粉 末 を 固 め 積 層 したもの を 切 削 加 工 と 組 み 合 わせ 切 削 による 仕 上 げ 面 を 得 られるよう にした 加 工 方 法 をいう 無 電 解 メッキ 外 部 電 源 を 用 いずに 金 属 を 化 学 的 に 還 元 析 出 させる 方 法 電 解 メッキ 金 属 塩 の 水 溶 液 から 外 部 電 流 による 電 気 化 学 的 に 加 工 物 表 面 ( 陰 極 )への 金 属 を 還 元 析 出 させるメッキ 広 範 囲 の 金 属 のめっ きが 可 能 18-26_29