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7-2 材料 (1) 材料一般 1. アンカーの材料は JIS などの公的機関の規格により保証されているものか もしくは所要の品質や性能を有していることを確認したものとする 2. アンカーの材料を組み立てる場合には 各材料は他の材料に悪影響を与えないことを確認したものを使用する 1) 材料に関する一

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5.2 浸 透 に 対 する 堤 防 強 化 工 法 堤 体 を 対 象 と し た 強 化 工 法 難 透 水 性 材 料 被 覆 材 料 ( 土 遮 水 シート 等 ) 堤 防 強 化 工 法 断 面 拡 大 工 法 ドレーン 工 法 表 のり 面 被 覆 工 法 透 水 性 材 料 ドレーン

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茨木市では 緑あふれる魅力あるまちづくりを進めるため 民有地での緑化について その費用の一部を補助しています 生垣を設置 壁面を緑化 道路に面して新たに生垣を設置する 道路にはみ出している生垣を改良する [ 生垣緑化 ] 道路 壁面 擁壁 フェンス 市街化区域で 道路から眺望できる建築物や擁壁の壁面

松 岡 490 注 国 優 吉 田 豊 か オ づ ぉ え え 松 岡 横 典 杉 原 吉 田 豊 蛯 名 正 杉 原 ツ ウ ぃ ぃ お お え ぉ お て お ぉ ウ い お で ひ


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Transcription:

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3 2 旧史跡名越切通保存管理計画策定にあたっ ての発掘調査 実施機関 子市教育委員会 調査期間 昭和 年 月下旬 昭和 年 月初旬 調査目的 旧 史跡名越切通保存管理計画 策定にあ た り 具体的な 遺構の分布範囲を 把 握し 史跡の価値や保存範囲など を 検討する ための基礎資料を 得る ため 調査内容 発掘調査 現地表面踏査 調査範囲 図 調査位置図 参照 発掘調査 切通路から 大切岸方面への分岐点付近に分布する 平場 A 地点 大切岸北東側の平場 地点 名越溜池奥谷戸Ⅲに面し た平場 C 地点 現地表面踏査 鎌倉市材木座 子市小坪 丁目 大町 丁目 丁目 久木 丁目 ᆅⅬ ᆅⅬ ᆅⅬ! " # $ ụ ト レ ン チ 調査実施箇所 図 調査位置図 子市! $ 名越溜池奥谷戸 A M 葬送遺構の分布 子市史別編" よ り 抜粋 加筆修正

成果と 今後の課題 発掘調査の成果 発掘調査の成果を 表 にま と める 表 発掘地点 A 地点 ト レ ン チ名 ト レ ンチ 発掘調査の成果 確認さ れた遺構 遺 ト レ ン チ交点においてほぼ南北に走る 積石列 それを 境に 物 段の 平場直上に は 遺物が 多い か わ 段の低い段差のあ る 平 ら け 陶器 舶載陶磁器 砥石など 場 平場北東側は地山凝灰岩を 削り 東南側は褐 下部地形面の下から 遺物が出土 色土自然堆積土層を 削り 平坦にし ている 表 面は凝灰岩や泥岩砕を つき 固めて整形 ト レ ン チ北東寄り に 長さ 深さ 墓穴内部から か わら け 完形品数個 の岩盤を く り 抜いた 墓穴 ピ ッ ト m 体が出土 覆土中には細骨片が 多 く 混入 ト レ ンチ ト レ ン チの地表下 盤面 に削平し た 岩 ト レ ン チでは岩盤を 切り 取っ た 切 遺構の 直上に 遺物が 確認さ れ た 遺物の詳細は不明 岸状遺構が崩れた 状態で出土 崩れた 凝灰岩 にノ ミ 痕ら し き も のが一部残存 ト レ ン チ山側は岩盤を 削平し 先端部は谷 を 埋めて 整形 ト レ ンチ ト レ ン チ内全面に おい て 地表下 に泥 岩砕を つき 固めた整形面 ト レ ンチ 地形面直上に 遺物が 多く 出土 遺物の詳細は不明 両ト レ ン チと も 部分的に凝灰岩を 削平し て いる が ほと んど 凝灰岩砕でつき 固めて 整形 遺物は少な いが 地形面直上に 認 めら れた 遺物の詳細は不明 両ト レ ン チ の 接点の 段差部分は 下か ら ほ ど 岩盤を 垂直に 切り 上部に 石を 段積 ト レ ンチ m 強 ト レ ン チは ト レ ン チは 下に岩盤削平面 整形面 そ の 直上 m 下部に泥岩砕によ る 前後に焼土を 多量に 含む層 火葬場であ っ たと 想定 ト レ ンチ 地点 ト レンチ 下に岩盤削平面 ト レ ン チ北西側は 削平面直上に 若干の 遺物 遺物 の詳細は不明 焼土層内部には火葬骨細片が多量 に認めら れ 遺物も 多かっ た かわら け で岩盤に達す 東南側は凝灰岩砕で埋めて整形 地形面及び岩盤削平面よ り ご く 少 量の 遺物が 出土 舶載陶磁器染 付片 ト レンチ ト レ ン チ中央部に周囲を 平ら に切り 取ら れた 大岩盤 石切場跡 若干の遺物が認めら れる が詳細は 不明 同一レ ベルに凝灰岩砕によ る 整形 下部にも う 一段低い整形面が想定さ れる ト レンチ 石切場遺構が残存 遺物について の記載なし

石切場遺構が残存 切石が残っ ており 採石 状況がう かがわれる かわら け 片 ト レ ンチ 地表面下 形面 に泥岩砕を つき 固めた 整 ト レ ンチ 地表面下 整形面 に凝灰岩砕を つき 固め た ト レ ンチ 石切場跡が確認さ れ その上端ま で凝灰岩砕 を 埋めて整形 C 地点 ト レ ンチ 世紀のかわら け片 陶器 舶載陶磁器 遺物についての記載な し 滑石製石鍋片 砥石 鉱滓 ト レ ン チ同様 切石採取の状況が残存 発掘調査の結果 各ト レ ン チで岩盤削平面ま たは褐色土削平面と 凝灰岩 泥岩砕でつき 固めた整 形面が確認さ れ その直上から は少ないながら も かわら けなど の遺物が確認さ れた ま た C 地点では石切場遺構も 確認さ れた 出土遺物から 見る と 遺構の年代は 世紀代 世紀代と 考え ら れ その多く は墳墓と 関連し た も のである と 推定さ れる 遺構分布調査の成果 遺構分布調査では 名越切通に関する あ る いは同時期と 考え ら れる 遺構の分布範囲を おおよ そつ かむこ と ができ た 確認さ れた遺構は表 の通り であ る 表 従来知ら れて い た 遺構 今回明ら か に さ れ た遺構 やぐ ら 群 中世墳墓穴 確認さ れた遺構 名越切通 切岸 平場 空堀 山腹路 土塁 法性寺背後 日朗窟やぐ ら 名越切通北側遺構 平場 ま んだら 堂の北西広場 平場 切岸 ま んだら 堂の北東尾根 石造墳墓堂 大切岸方面と の分岐点付近 切通 平場状地形 切岸 土塁 空堀 城跡 基 鎌倉後半 陸橋 路西側の平場周辺 崩落部分南西側尾根 平場状地形 切岸 崩落部分南々西側尾根 切岸 平場状遺構 ま んだら ど う やぐ ら 群 ま んだら ど う 平場東側に お猿畠やぐ ら 群 穴 名越奥やぐ ら 群 穴 西側高平場に数穴 北西下段平場に 破壊 穴 石造墳墓群 石造堂形建造物二基 穴 名越谷中程やぐ ら 群 穴 名越谷入口やぐ ら かなり 大型のやぐ ら 松葉ケ 谷やぐ ら 群 破壊さ れて いる 名越ト ン ネル脇やぐ ら 注 遺構番号 平場 切岸 空濠状遺構 やぐ ら については 当該報告書に表記なし 名越ト ン ネ ルの鎌倉側に南向き に開口 内の記号は図 と 対応 平成 年 月から 教育委員会が実施中の実踏調査によ る と 若干異なる 点も あ る が そのま ま 引用し ている 子市

今後の課題 検出さ れた遺物の多く は葬送関連遺構に関する も のであ り 切通と の関係 特に切通が開削さ れ た年代を 明確に示すよ う な遺物の検出はない ま た 大切岸では石切場遺構を 整形し て平場を 形成 し ている と こ ろ が確認さ れている も のの 防衛遺構であ る こ と が確定さ れていないため 遺構の性 格を 明確にする 必要がある 周辺遺構は現地踏査によ っ て確認さ れたも のであ る こ と から 発掘調査によ る 遺構の時代を 確定 する こ と 名越切通と 同時期の遺構であ る かど う かの検証 が必要である

3 3 名越遺跡範囲確認調査 実施機関 子市教育委員会 調査期間 平成 年 調査目的 月 平成 子市久木 年 月 丁目における 大規模宅地開発事業計画が具体的な行政手続き に入っ た こ と を 受け 開発によ る 造成区域がこ れま で国史跡の指定拡大対象区域と な っ て い たこ と から 遺跡の性格を 具体的に調査し た 調査内容 発掘調査 現地表面踏査 遺構分布調査 調査範囲 名越溜池の北側及び東側に延びる 谷戸内及び尾根上 図 図 調査位置図 ト レ ン チ配置図 参照 子市教育委員会 名越遺跡範囲確認調査報告書 よ り 抜粋

成果と 今後の課題 調査の成果 発掘調査によ っ て確認さ れた遺構 遺物は表 のと おり であ る 中世に名越周辺の丘陵部で大規模な石切作業が行われていたこ と はほぼ確実であり 都市鎌倉へ の一大石材供給セン タ ーと し ての役割を 担っ ていた可能性も 考え ら れる こ の石切遺構は結果と し て切岸の防衛機能も 併せ持っ ていた可能性が想定さ れる ただし 大切 岸は連続的に整然と 構築さ れており 崖面に中世のやぐ ら が穿たれている のに対し 今回の調査 地に分布する 切岸状遺構は断続的で 崖面にやぐ ら も 穿たれていない し たがっ て 大切岸と 同 一の設計プラ ン を 持つと はいい難く 出土遺物から 想定さ れる 切岸状遺構の年代は中世後期であ り 年代的に見ても 大切岸に準じ たも のと 考え る べき であ る 近世以降の溝状 井戸状遺構及び石垣状遺構は耕作によ る も のと 考え ら れる が 石垣の一部には 単なる 土留めにし ては堅牢な構築のも のが見ら れ その性格は一様ではないと 思われる プラ ン ト オパール分析 及びテフ ラ 分析 の結果から 古代 平安時代 頃及び近世前期以降 には溜池周辺で水田が営ま れていたこ と が推定さ れる 図 に確認さ れた切岸遺構など の分布概略状況を 明確にする 表 年代 古墳時代後期 発掘調査の成果 遺構 掘立柱建物址 遺物 棟 土師器片 点 かわら け片 点 他 瀬戸天目茶碗片 瀬戸擂鉢片 中世 切岸状遺構 石切遺構 常滑甕片 溝状遺構 井戸状遺構 点 点 陶磁器片 石垣状遺構 近代 点 丸杭1 点 近世 畦畔状遺構 点 滑石製石鍋片 角柱 点 点 他 陶磁器他 注 プラ ン ト オパール分析 堆積土壌中に含ま れる プラ ン ト オパール 植物珪酸体 化石を 同定 計数し その結果から 古植生 栽培を 含む や古気候を 推定する 手法 テフ ラ 分析 堆積土壌中に含ま れる テフ ラ について 由来する 火山や噴出年代を 同定する 手法 その層 序関係から 地層の年代を 推定する 場合など に用いら れる 表 中の は 検出さ れたト レ ン チ番号を 示す

大切岸 図 切岸状遺構等の分布概略図 子市教育委員会 名越遺跡範囲確認調査報告書 よ り 抜粋

3 4 国指定史跡名越切通整備基礎調査 調査機関 子市教育委員会 調査期間 平成 年 月 平成 年 月 調査目的 崩落部分では 風化によ る 岩盤のゆる みや崩落が見受け ら れ 地震や大雨の際に更 な る 崩落を 発生さ せる 危険があ る ため 崖面下の市道を 通行止めと し て おり 仮の 迂回路が設けら れている そこ で 崖面崩壊の原因を 明ら かにし 史跡と し て の景 観 価値を でき る だけ損なわずに実施でき る 対策工法を 提案する こ と を 目的と し て 調査を 実施し た 調査範囲 切通のう ち 亀ヶ 岡団地よ り の崩落部分 調査内容 地形測量 地表踏査 植生調査 気象調査 対策工法の検討 参考調査 ハン ド オーガーボーリ ン グ 調査 地下レ ーダー調査 成果と 今後の課題 成果 崩落部分は中腹に地層境界があ り 上位が池子層 下位が 危険があ る 岩塊が約 ヶ 所 子層には 子層であ る 池子層には落石の ヶ 所見ら れる 図 参照 ハン ド オーガーボーリ ン グ 調査 地下レ ーダー探査の結果から 崩積土は概ね 未満と 推定 さ れる ま た 崩積土の堆積層厚が切通の両側で異なっ ている こ と から 人工的に崩積土を 移 動し た可能性が考えら れる 植生調査では 岩塊の割れ目沿いに樹根が成長し 岩盤を 不安定化し ている 箇所が見受けら れ た 調査地は 月から 月にかけての降水量が多く その影響を 受けて常緑広葉樹が雨季に成 長し 樹根の生長によ る 割れ目の拡大は夏期に最も 進行する こ と が考え ら れる 注 ハン ド オーガーボーリ ング 人力でオーガーに回転と 推進力を 与えながら 地中に圧入し てボーリ ン グ する 方法

岩塊の危険箇所 図 危険な岩塊箇所及び崩落部分地層断面図 子市教育委員会 国指定史跡名越切通整備基礎調査報告書 よ り 抜粋

対策工の検討 調査の結果 落石の危険が指摘さ れた 箇所について 抑制工と 抑止工を 検討し た 表 の危険度及び対策案 岩塊 参照 抑制工は崩壊の素因の除去 改良が目的であ り 抑止工は土木構 造物によ っ て崩壊に拮抗し よ う と する も のであ る 抑制工と し ては 樹木の揺れが風化岩盤に直 接的な負荷を かけている こ と から 景観を 損なわない範囲で樹木を 伐採する こ と が望ま し い ま た 抑止工と し ては将来差し 替え も 可能な施工方法であ る ロ ッ ク ボルト 薬液注入 薬液塗布が 最適と 考え る 図 岩塊⑤ ⑥の対策工案 参照 維持管理に際し ては 大雨や地震の際には点検を 行う 対策が完了する ま で選定し た岩塊を 中心 に定期点検を 行う 抑制工 抑止工を 施工し た後は よ り 詳細な点検を 行う レ ーザーなど を 利 用し て維持管理を する こ と を 提案する ま た 切通の公開に際し ては 切通を 上方から も 望める よ う 展望箇所を 設置する こ と を 提案する 表 岩塊 総堆積 m 岩塊の危険度及び対策案 崩壊度 危険度 抑制工 抑止工 ① A A 割目 開口部 下部 の 岩塊除去 ② 岩塊の一部除去 Ⅰ 維持管理 Ⅱ 薬液注入 A 部分的な岩塊除去 維持管理 樹木の伐採 他 薬液注入ま た は薬液塗布 Ⅰ 薬液塗布 ③ 未満 ④ 以上 ⑤ 以上 ⑥ 以上 ⑦ ⑧ 未満 移動 Ⅰ 維持管理 特A ⑩ 割目間隔など の継続的な測定 Ⅱ つっ かえ 棒 A ⑨ Ⅱ 現状維持 周辺岩塊を 観察し 樹根 の成長を 止める 樹木の伐採 ロ ッ ク ボルト 薬液注入 Ⅰ 薬液注入 Ⅱ 岩塊の一部除去 岩塊の一部除去 A 維持管理 岩塊の一部除去 Ⅰ 維持管理 Ⅱ 薬液注入 樹木の伐採 Ⅰ 維持管理 定期的な観測 Ⅱ 薬液注入 Ⅲ 岩塊除去 子市教育委員会 国指定史跡名越切通整備基礎調査報告書 よ り 抜粋

岩塊⑤の現状 対策案 岩塊⑥の現状 対策案 図 岩塊⑤ ⑥の対策工案 子市教育委員会 国指定史跡名越切通整備基礎調査報告書 よ り 抜粋 課題 特に危険な箇所に指摘さ れた地点については 早急の安全対策が必要であ る ま た 今後も 継続 的に定期的な危険箇所のモニタ リ ン グを 行っ ていく 必要があ る