2.3 中 央 大 学 理 工 学 部 情 報 工 学 科 2.3.1 調 査 団 および 調 査 日 程 ( 調 査 団 ) 芝 浦 工 業 大 学 村 上 雅 人 ( 副 学 長 ) 工 藤 一 彦 ( 学 長 室 教 授 ) 室 越 昌 美 ( 企 画 室 課 長 ) 小 玉 嘉 洋 ( 企 画 室 ) 東 京 電 機 大 学 藤 本 明 ( 副 学 長 ) 高 田 茂 ( 学 長 室 補 佐 ) 工 学 院 大 学 菅 村 昇 ( 情 報 学 部 情 報 デザイン 学 科 教 授 教 務 部 長 教 育 開 発 センター 所 長 ) 雑 賀 高 (グローバルエンジニアリング 学 部 機 械 創 造 工 学 科 教 授 JABEE 推 進 室 ) 杉 原 明 ( 教 育 開 発 センター 課 長 ) ( 調 査 日 程 ) 1 月 22 日 10:00-12:00: 中 央 大 学 理 工 学 部 情 報 工 学 科 教 育 実 情 調 査 ( 中 央 大 学 対 応 者 ) 石 井 洋 一 ( 理 工 学 部 長, 理 工 学 研 究 科 委 員 長 ) 牧 野 光 則 ( 学 部 長 補 佐, 理 工 学 部 情 報 工 学 科 教 授 ) 中 央 大 学 理 工 学 部 でのコンピテンシー 育 成 教 育 プログラム の 中 心 的 存 在 で, 今 回 の 調 査 の 主 説 明 者 渡 井 幸 男 ( 理 工 学 部 事 務 室 担 当 課 長 ) 32
2.3.2 コンピテンシー 育 成 教 育 のための Rubrics 策 定 と 活 用 事 例 概 要 牧 野 教 授 よりプログラムの 説 明 を1 時 間 程 度 いただき,その 後 質 疑 応 答 を 行 った. コンピテンシーとは ある 目 的 のために 知 識 を 活 用 する 際 に 必 要 となる 行 動 特 性 は コンピテンシー と 呼 ばれている. 職 業 人 として 行 う 業 務 上 の 行 動 特 性 は,ある 程 度 把 握 でき, 改 善 を 図 ることがで きる. 一 部 企 業 では 採 用 時 面 接 でコンピテンシーを 評 価 基 準 にしたり, 入 社 後 もコ ンピテンシーを 本 人 周 囲 に 確 認 させ, 人 材 配 置 に 活 用 している. 中 央 大 学 理 工 学 部 情 報 工 学 科 で 取 り 上 げているコンピテンシーは 下 記 の7 項 目. 組 織 的 行 動 能 力,コミュニケーション 能 力, 専 門 性, 問 題 解 決 力, 知 識 獲 得 力, 自 己 実 現 力, 創 造 力 中 央 大 理 工 学 部 での 導 入 経 過 (2008 年 度 ) 中 央 大 学 理 工 学 部 では 教 育 改 善 の 一 環 として,コンピテンシー 育 成 教 育 シス テムの 開 発 導 入 を, 情 報 工 学 科 から, 下 記 の 手 順 で 始 めた. ルーブリックス(コンピテンシー 到 達 度 点 検 表 ) 作 成 ( 詳 細 は 本 報 告 (Ⅳ-3) 節 参 照 ) (1) 学 科 卒 業 生 に 求 められる 人 材 像 を 具 体 的 に 定 義 (2) それに 必 要 なコンピテンシーを7 項 目 定 義 (3) 各 コンピテンシーを 具 体 的 に 定 義 するキーワードを, 各 コンピテン シーごとに5 個 ( 一 部 3 個 ), 合 計 33 個 定 義 (4) コンピテンシー 評 価 のため, 各 キーワードを5 段 階 の 水 準 ( 合 計 1 65 項 目 )で 定 義 した,コンピテンシーの 到 達 度 点 検 表 (ルーブリ ックス)を 作 成 このルーブリックス 作 成 作 業 は, 企 業 (IBM)の 人 材 育 成 プロフェッショナ ルの 協 力 を 得 ながら, 若 手 中 堅 教 員 が 夏 休 み 返 上 で 取 り 組 み,これにより 教 員 の 教 育 意 識 が 向 上 し,FD 活 動 として 有 効 であった. (2009 年 度 ) このルーブリックスを 用 いて, 学 生 のコンピテンシー 向 上 を 目 指 した 映 像 系 コンテンツエンジニア 教 育 プログラムを 開 設 した.この 科 目 は, 映 像 処 33
理,コンピュータグラフィック,バーチャルリアリティ,コンピュータビジ ョンなどの 画 像 映 像 系 コンテンツ に 関 する 教 育 である. 従 来 から 設 置 している 当 該 分 野 の 専 門 科 目 をベースとして, 画 像 映 像 コンテンツ 演 習 を2 年 後 期 から4 年 前 期 に 配 置 したものである. 並 行 して 行 われる 専 門 科 目 の 知 識 経 験 をもとに, 半 年 単 位 のプロジェクトを 繰 り 返 すことで, 学 生 に 課 題 整 理, 調 査, 解 決 手 段 の 考 案 選 択, 解 決 手 段 の 実 現, 結 果 の 点 検 評 価,プレゼンテーションを 含 む 報 告,という 一 連 のプロセスを 体 験 させ, 必 要 なコンピテンシーを 所 定 の 水 準 で 身 につけさせる,というものである. 2009 年 度 プロジェクトテーマ 2 年 後 期 : 立 体 視 用 バーチャルシティ 3 年 前 期 : 立 体 肖 像 撮 影 インターフェース 3 年 後 期 : 画 像 の 符 号 化 と 暗 号 化 4 年 前 期 : 立 体 視 用 リアルタイムグラフィックス (コンピテンシー 育 成 教 育 の 学 生 に 対 する 効 果 ) この 演 習 を 通 し,ルーブリックスを 用 いたコンピテンシー 評 価 を 継 続 的 に 用 いることで, 学 生 自 身 が 自 らのコンピテンシーの 現 状 水 準 を 認 識 できるとともに, 履 修 前 と 比 較 したコンピテンシーの 向 上 度 合 いを 認 識 でき, 学 生 に 学 修 満 足 感 をもたせるとともに, 向 上 心 を 植 え 付 けることができた. これにより 座 学 だけでは 困 難 なコンピテンシーの 体 系 的 育 成 ができた. 新 教 育 GP への 採 用 ( 理 工 学 部 全 学 科 へのコンピテンシー 育 成 教 育 の 展 開 計 画 ) 情 報 工 学 科 の 取 り 組 みを 先 例 として,コンピテンシー 育 成 点 検 を 理 工 学 部 各 学 科 の 教 育 課 程 に 導 入 することを 目 的 とする, 下 記 のような 段 階 別 コンピテンシ ー 育 成 教 育 システム が, 平 成 21 年 度 の 大 学 教 育 学 生 支 援 推 進 事 業 (テーマ A) 大 学 教 育 推 進 プログラム に 選 定 された. 理 工 学 部 各 学 科 が 育 成 する 人 材 に 必 要 な 学 士 力 を 具 現 化 するコンピテンシーを, 具 体 的 かつ 段 階 別 ( 前 頁 記 述 の,5 水 準 別 のキーワード 定 義 のこと)に 定 義 し, 理 工 学 部 卒 業 生 の 到 達 度 を 保 証 する 継 続 的 教 育 改 善 システムの 構 築 を 目 的 とする. (1) 各 学 科 が 育 成 すべき 人 材 像 やその 人 材 に 必 要 なコンピテンシー,キーワ ード 並 びに 段 階 別 水 準 ( 到 達 度 ) 表 (ルーブリックス)の 定 義 策 定 34
公 表 (2) 分 野 特 性 ならびに 現 行 の 教 育 課 程 に 応 じた,コンピテンシー 育 成 のた めの 教 育 プログラムの 設 計,コンピテンシー 到 達 度 を 教 育 プログラムで 点 検 する 方 法 の 策 定 実 施,コンピテンシー 到 達 度 の 点 検 可 能 な 仕 組 み の 構 築 (3) コンピテンシー 育 成 教 育 のための 指 導 書 マニュアル 類 の 整 備, 並 びに 研 修 会 等 の 継 続 的 実 施 (4) コンピテンシー 達 成 度 の 学 生 による 自 己 点 検 と, 教 員 TA 卒 業 生 ( 産 業 界 )などによる 他 者 点 検 を 組 み 合 わせた, 総 合 的 評 価 の 実 施 と,その 結 果 の 学 生 自 身 による 把 握 (5) これらの 結 果 を 踏 まえ,コンピテンシー 向 上 のための 教 育 改 善 に 取 り 組 む PDCA サイクル 構 築 と,このサイクル 自 体 を 点 検 評 価 する 仕 組 みの 継 続 運 用 これらの 全 体 像 を 図 3.1 に 示 す. 図 3.1 段 階 別 コンピテンシー 育 成 教 育 のための PDCA サイクル( 中 央 大 学 理 工 学 部 ) 35
ルーブリックス 策 定 の 実 際 (1) プロジェクト 結 成 検 討 期 間 :2008 年 8-9 月 検 討 時 間 : 週 1 回 2 時 間 10 回 メンバー: 情 報 工 学 科 若 手 中 堅 教 員 数 名 + 日 本 IBM,IBM ビジネスコンサルティングサービスの 人 材 育 成 担 当 者 数 名 まず IBM の 人 が, 企 業 内 での 人 材 育 成 に 使 われているコンピテンシーとその 評 価 に ついて 説 明 し, 教 員 が 問 題 点 をのべ,IBM の 人 が 交 通 整 理 して, 下 記 のゴール 事 項 をまとめた. プロジェクトのゴール 情 報 工 学 科 が 育 成 する 学 生 像 を 明 確 にする 情 報 工 学 科 が 求 める 学 生 コンピテンシーを 定 義 する 画 像 映 像 コンテンツ 演 習 を 念 頭 にコンピテンシーの 育 成 目 標 と 育 成 方 法 を 明 確 にする. 以 下 の (2)~(5)までの,アウトカムズ( 中 央 大 学 ではコンピテンシーと 呼 称 して いる)とルーブリックスの 実 際 の 策 定 法 は,(Ⅳ-4) 節 に 記 述 した. (2) 育 成 すべき 人 材 像 定 義 (3) 育 成 すべき 人 材 像 実 現 に 必 要 なコンピテンシーの 策 定 (4) コンピテンシーを 具 体 的 に 定 義 するキーワードの 策 定 (5) コンピテンシーの 水 準 策 定 (6) 各 学 年 で 求 められる,コンピテンシーの 達 成 目 標 水 準 の 策 定 カリキュラム 等 から, 学 年 別 に 学 生 に 期 待 する 役 割 ( 行 動 )と,そのために 必 要 と 考 える 重 点 育 成 内 容 を, 次 々 頁 の 図 3.2 のように 策 定 するとともに,これを 基 にし て, 各 コンピテンシー 毎 の, 各 学 年 で 期 待 される 達 成 水 準 目 標 を 下 記 のように 策 定 ( 各 学 年 ごとに 期 待 される 目 標 達 成 度 水 準 ) 1 年 8 月 末 2 年 8 月 末 3 年 8 月 末 4 年 8 月 末 4 年 卒 業 時 M1 8 月 末 M2 8 月 末 M2 修 了 時 期 待 水 準 1 2 2~3 3~4 3~4 3~4 4 4 36
画 像 映 像 コンテンツ 演 習 でのコンピテンシー 育 成 教 育 の 展 開 本 項 では, 前 項 で 作 成 したルーブリックスを 演 習 に 適 用 し, 学 生 のコンピテン シーの 達 成 度 を 実 際 に 評 価 する 手 法 を 示 す. (1) 授 業 ( 演 習 ) 計 画 の 策 定 ( 行 動 のポイントの 抽 出 ) 演 習 の 各 回 ごとに, 下 記 の 内 容 を 明 示 した 演 習 計 画 を 図 3.3 のように 策 定 す る. その 時 間 にやる 内 容 行 動 のポイント 次 回 までの 宿 題 提 出 物 これらはシラバスの 記 述 に 行 動 のポイント を 付 け 加 えたものである.こ の 行 動 のポイント は, 各 回 の 演 習 での 学 生 に 期 待 する 役 割 ( 行 動 )の 記 述 であり, 各 時 間 でこれに 関 連 したコンピテンシーの 育 成 を 目 標 とし,これら のコンピテンシーの 達 成 度 をルーブリックスを 用 いて 評 価 することになる. 図 3.3 演 習 の 各 時 間 ごとの 計 画 と 行 動 のポイント 37
図 3.2 学 年 別 の 役 割 期 待 と 重 点 育 成 項 目 学 年 ( 前 期 末 時 点 ) 役 割 期 待 基 本 的 なプログラミングができる. 情 報 工 学 の 社 会 への 貢 献 を 事 例 などから 理 解 している 大 学 生 として 自 覚 を 持 ち, 小 集 団 で 1 年 生 の 自 分 の 役 割 を 果 たせる( 他 人 に 迷 惑 をかけない) 何 事 も 興 味 を 持 ち,チャレンジする よう 努 力 している 我 が 国 における 標 準 的 な 専 門 知 識 ( 教 科 書 レベル)を 備 えている 関 数 やポインタを 含 めプログラミン グ 言 語 を 扱 うことができる チームの 一 員 としての 自 分 の 役 割 と 2 年 生 責 任 を 理 解 し,それを 果 たすことが できる( 自 立, 自 律 した 行 動 がとれ る) 自 分 の 将 来 像 をイメージし, 目 標 に 向 かって, 努 力 している( 資 格 試 験 受 験 準 備 など) 与 えられたアルゴリズムを 自 分 の 手 でコーディングすることができる 国 際 社 会 における 標 準 的 な 専 門 基 礎 知 識 を 備 えている チームの 一 員 あるいはリーダーとし て 先 に 立 って 実 践 している. 先 に 立 3 年 生 って 模 範 を 示 し, 他 を 誘 導 している 自 らの 夢 やキャリアデザインと 自 身 の 置 かれている 状 況. 社 会 情 勢 を 踏 まえ, 進 路 決 定 に 向 けてその 計 画 を 先 生 スタッフ 家 族 に 語 り, 理 解 と 協 力 を 得 ることができる 卒 業 論 文 の 研 究 テーマを 理 解 し, 他 者 にわかりやすく 説 明 することがで きる 4 年 生 教 員, 上 級 生 の 指 導 に 基 づき, 卒 業 論 文 の 研 究 テーマを 計 画 的 に 遂 行 す ることができる 人 と 環 境 と 社 会 に 関 わる 諸 問 題 を 情 大 学 院 生 報 分 野 の 視 点 から 発 見 し, 情 報 技 術 を 活 用 して 新 しい 仕 組 みを 創 案 し, 卒 業 生 学 術 活 動 や 企 業 活 動 を 通 じて 社 会 に 提 案 ないし 展 開 できる ( 赤 字 : 就 活 対 応 ) 重 点 育 成 項 目 情 報 工 学 の 社 会 における 役 割 の 理 解 与 えられた 手 順 に 基 づくプログラミング と 動 作 検 証 メディアや( 準 ) 専 門 誌 等 による 情 報 収 集 の 習 慣 化 自 己 管 理 授 業 への 確 実 な 出 席 と 課 題 の 確 実 な 提 出 情 報 工 学 基 礎 の 理 解 と 活 用 プログラミングにおける PDCA の 意 識 下 と 実 践 ( 与 えられた 手 順 に 基 づくプログ ラミング, 動 作 検 証 と 修 正 ) 情 報 収 集 整 理 方 法 と 結 果 の 記 述 表 現 大 学 院 進 学 も 含 めたキャリアデザインの 具 体 化 基 本 情 報 技 術 者 試 験 等 の 受 験 情 報 工 学 に 関 する 応 用 事 項 プログラミングにおける PDCA サイクル の 理 解 と 実 践 ( 手 順 の 考 察,プログラミ ング, 動 作 検 証 と 修 正 ) ひとつのテーマに 関 する 深 い 考 察, 他 者 との 議 論 学 習 内 容 と 社 会 の 結 びつきに 関 する 自 主 的 な 情 報 収 集 整 理 と 自 らのキャリアデ ザインとの 統 合 考 察 ( 拠 点 とする 研 究 室 のリサーチ, 専 門 分 野 及 び 企 業 研 究 ) 論 理 的 思 考 に 基 づく 手 順 の 組 み 立 て, 論 文 執 筆 的 を 射 た 質 疑 応 答 卒 業 研 究 の 確 実 な 実 施 エンジニアリングデザインの 実 施 (PDCA サイクルを 回 す) 他 者 に 立 場 に 応 じた 的 確 な 説 明 討 論 38
3.3 PDCA ト た 図 行 動 の で ポ 策 イ 定 ン し サ イ ク ル (2) 行 動 のポイントの, 関 連 したコンピテンシーへの 展 開 半 期 にわたって 実 施 する 演 習 の 全 体 を, 全 体 計 画 仕 様 書 作 成 プログラミ ング プレゼンテーション 最 終 報 告 運 営 の6つのフェーズに 分 割 し, 各 フェーズごとに,そのフェーズで 学 生 に 期 待 する 役 割 ( 行 動 )である 行 動 のポイ ント ( 前 節 の 図 3.3 で 策 定 )とコンピテンシーを 関 連 付 ける. 各 行 動 のポイント およびこれに 関 連 したコンピテンシーは, 下 記 の5 段 階 の PDCA サイクルを 経 て 身 に 着 くと 考 え,この 関 連 付 けの 作 業 の 際, 当 該 コンピテ ンシーに 関 連 した 行 動 のポイント を, 図 3.4 のように,これらの5 段 階 の PDCA サイクルの 各 フェーズに 展 開 する.ここで 図 3.4 は, 仕 様 書 作 成 フェーズでの 行 動 のポイントのコンピテンシーへの 展 開 図 である. 紙 面 の 都 合 上,コンピテン シーとしては,コミュニケーション 力 と 問 題 解 決 力 のみ 記 述 してあるが, 実 際 は 横 に7 個 のコンピテンシーが 並 ぶことになる. 知 る( 学 ぶ) 試 す 使 う( 動 く) 違 いを 知 る( 最 適 でないことに 気 づく) 宣 言 する( 改 善 方 針 を 立 てる 行 動 態 度 を 変 える( 行 動 に 反 映 する) 図 3.4 行 動 のポイントのコンピテンシーへの 展 開 Plan Do Check Action Action コンピテンシー ( 実 際 には 横 に7 項 目 並 ぶ) し 各 た コ 行 ン 動 ピ の テ ポ ン イ シ ン ー ト に 関 連 各 コンピテンシー 対 応 の 行 動 のポイント を 学 生 が 達 成 したとき,PDCA の 各 フェーズで 学 生 が 示 す 行 動 39
(3) 演 習 の 各 回 毎 の 点 検 可 能 なコンピテンシーの 抽 出 演 習 の 各 回 での 内 容, 行 動 のポイント, 提 出 物 から, 点 検 可 能 なコンピテンシ ーを 抽 出. 行 動 のポイントとコンピテンシーの 関 連 は, 前 節 の 図 3.4 の 各 コン ピテンシーに 関 連 した 行 動 のポイント を 参 照 して 図 3.5 のように 抽 出 する.こ こで 図 3.5 は 紙 面 の 都 合 上,コンピテンシーとしては,コミュニケーション 力 と 問 題 解 決 力 のみ 記 述 してあるが, 実 際 は 横 に7 個 のコンピテンシーが 並 ぶことに なる. コンピテンシー( 実 際 には 横 に7 項 目 並 ぶ)と, コンピテンシーを 定 義 するキーワード 図 3.5 演 習 の 各 回 で 点 検 可 能 なコンピテンシーとキーワードの 抽 出 演 習 の 回 数 ( 実 際 には 縦 に15 回 並 ぶ) (4) 演 習 全 体 でのコンピテンシー 達 成 度 点 検 評 価 計 画 の 策 定 演 習 全 体 を 通 じ, 学 生 は 演 習 計 画 書, 仕 様 書 ( 中 間 と 最 終 と2 回 ),プログラミ ング 結 果 ( 中 間 と 最 終 と2 回 ), 最 終 報 告 書 を 提 出 するとともに, 中 間 と 最 終 の2 回 のプレゼンテーションを 行 う.これらに 対 し TA と 担 当 教 員 は,プレゼンテーシ ョン(ポスターセッション+ソフトのデモ)と 提 出 物 で, 各 学 生 の 個 別 評 価 を 行 い,これらを 総 合 して 演 習 全 体 の 成 績 評 価 を 行 う. コンピテンシーの 到 達 レベル 評 価 は, 図 3.4 の 各 コンピテンシー 対 応 の 行 動 のポイント を 学 生 が 達 成 したとき PDCA の 各 フェーズで 学 生 が 示 す 行 動 につ いて, 図 4.11-1~7 のルーブリックスに 定 義 された 記 述 を 参 考 に, 学 生 の 自 己 評 40
価 と,TA 及 び 教 員 による 評 価 を 行 う. 演 習 の 進 行 と 評 価 の 流 れを 図 3.6 に 示 す. 図 3.6 演 習 の 流 れと 評 価 演 習 の 中 で 行 われる 評 価 をまとめると 下 記 のようになる. ( 学 生 のコンピテンシー 自 己 評 価 ) 学 生 は, 演 習 開 始 時 と 終 了 時 の2 回,コンピテンシーの 自 己 評 価 を 行 うことで, 自 分 に 不 足 しているコンピテンシーの 項 目 の 認 識,この 演 習 の 履 修 による, 自 己 のコ ンピテンシーの 各 項 目 の 伸 びを 実 感 することができる. ( 成 績 評 価 ) 教 員 は TA の 補 助 の 下 で, 演 習 計 画 書, 中 間 仕 様 書, 中 間 プログラミング 結 果, 中 間 プレゼンテーション, 最 終 仕 様 書, 最 終 プログラミング 結 果, 最 終 プレゼンテー ション, 最 終 報 告 書,の 成 果 の 品 質 により 成 績 評 価 を 行 う. (コンピテンシー 評 価 ) 教 員 は TA,PA( 最 終 プレゼン 時 に 卒 業 生 を 評 価 者 に 加 える)の 補 助 の 下 で, 仕 様 書, プログラミング 結 果,プレゼンテーションに 関 し, 中 間 と 最 終 の2 回 のコンピテン シー 評 価 を 行 う.また, 演 習 開 始 時 と 終 了 時 の2 回 学 生 が 記 入 したコンピテンシー の 自 己 評 価 シートを 参 考 のためレビューする. ( 評 価 のための 作 成 書 類 ) 演 習 用 点 検 シート 図 3.5 で 抽 出 した, 各 回 の 演 習 で 点 検 可 能 なコンピテンシーとそれに 関 連 したキー ワードのみを 記 述 した 演 習 用 点 検 シート を 演 習 の 各 回 ごとに 用 意 する. 41
TA 指 導 書 演 習 の 目 的,TA がやるべきこと,やっては/ 言 ってはいけないこと,を 記 述 した 指 導 書 を 作 成 し,これを 用 いて TA の 研 修 を 行 う. 来 年 度 以 降 の 理 工 学 部 全 体 への 展 開 のやりかた (1) 情 報 工 学 科 で 作 成 したマニュアルを 参 考 に, 情 報 工 学 科 の 教 員 に 指 導 を 受 ける. (2) 科 目 タイプ 別 ( 講 義, 演 習, 実 験 など)に 育 成 すべきコンピテンシーをまとめ たマニュアルを 作 成 し, 全 カリキュラムに 適 用 しやすくする. (3) 教 員 へのコンピテンシー 育 成 教 育 の 必 要 性 の 説 得 法 と 導 入 の 秘 訣 学 生 の 学 習 意 欲 欠 如 に 関 する 教 員 の 危 機 感 を 利 用 学 部 長 の 指 導 + 若 手 教 員 (40-50 歳 ) 特 に 学 生 の 意 欲 欠 如 に 直 面 してい る 演 習 担 当 教 員 の 問 題 意 識 を 利 用 コンピテンシー 育 成 教 育 について 内 容 自 体 に 反 論 はないので, 各 学 科 で 教 育 上 一 番 困 っている 科 目 から 導 入.(とりあえず 各 学 科 1 科 目 でスタート) 外 部 にコンピテンシー 教 育 実 施 を 宣 言 することで, 歯 止 めとする 一 度 導 入 してマニュアルを 作 成 しておけば,カリキュラム 改 訂 時 などの 変 更 はそれほど 困 難 ではない(ルーチンワーク 化 ) (4) 現 状 では 評 価 用 チェックリストは 紙 を 使 用 (web やエクセルは 全 体 が 見 られな いので 現 状 では 使 用 しにくい) コンピテンシー 育 成 教 育 の 効 果, 問 題 点 等 ( 効 果 ) (1) 学 生 が 自 分 のコンピテンシーの 現 状 を 認 識 することで, 学 生 の 学 修 意 欲 が 向 上 し, 最 終 的 に 能 力 向 上 に 結 び 付 く. (2) キャリア 教 育 支 援 にコンピテンシー 評 価 結 果 を 使 用. (3) ( 各 学 生 の 弱 い 項 目 について,キャリアセミナ 参 加 の 勧 誘 を 行 う.) (4) 各 科 目 における 育 成 対 象 コンピテンシーを 意 識 することで, 教 員 の 教 育 力 向 上 (5) 各 教 育 プログラムで 達 成 すべき 目 標 コンピテンシーの 内 容 を 考 えることで,プ ログラムの 有 効 な 組 み 立 てが 可 能 となるとともに, 目 標 としたコンピテンシー レベルと, 実 際 に 学 生 が 獲 得 したコンピテンシーレベルの 結 果 の 比 較 から,プ ログラムの 問 題 点 を 明 らかにでき,プログラム 改 善 に 有 効 (6) JABEE などの 外 部 点 検 認 証 評 価 における,プログラムの 有 効 を 示 すエビデン スとして 有 効 ( 問 題 点, 問 題 が 予 想 されたが 実 際 には 問 題 とならなかった 点 ) (1) コンピテンシーについての 学 生 の 自 己 評 価 と 他 者 評 価 ( 教 員 TA PA)の 違 い 42
は, 各 学 生 にフィードバックして, 自 己 評 価 の 精 度 を 上 げるように 指 導 する. (2) 2009 年 度 は 情 報 工 学 科 の 画 像 映 像 コンテンツ 演 習 1 科 目 を 対 象 にし て,コンピテンシー 育 成 教 育 を 導 入 した.この 演 習 は 選 択 科 目 で,1チーム3 名 3チーム= 合 計 9 名 が 受 講 した.この 程 度 の 規 模 だと 今 回 導 入 したルーブ リックスによるコンピテンシー 評 価 が 可 能 であるが,この 方 式 では20-30 名 程 度 が 上 限 であろう.これ 以 上 の 人 数 の 学 生 が 受 講 する 科 目 については,も う 尐 し 簡 単 なやり 方 でないと 対 応 が 困 難 と 思 われる.TA マニュアルを 高 度 化 し て,TA の 評 価 能 力 を 上 げれば, 多 人 数 でも 対 応 可 能 と 思 われる. (3) 卒 論 では 各 テーマで 内 容 が 異 なるので, 各 学 生 が 修 得 できるコンピテンシーに 違 いが 出 る 可 能 性 がないか? (4) この 問 題 については, 各 研 究 室 各 学 科 の 卒 論 で 得 られる 共 通 のコンピテンシ ーを 抽 出 して,これを 評 価 することにした. 専 門 に 関 する 評 価 は,コンピテン シー 評 価 とは 別 に 行 う.これまでは 専 門 でのみ 評 価 し,コンピテンシー 評 価 を 行 わなかったことが 逆 に 問 題 であった. (5) プレゼンにおける 教 員 TA PA のコンピテンシー 評 価 の 結 果 には,あまり 大 き な 差 はない. 2.3.3 感 想 これまで 各 種 文 献 で 知 識 としては 知 っていた,ルーブリックスによるコンピテン シー 育 成 教 育 システムに 関 し, 実 際 に 詳 細 かつ 緻 密 なルーブリックスを 作 成 し, それを 理 想 的 な 形 で 学 生 のコンピテンシー 評 価 に 適 用 している 様 子 を 説 明 して いただき,その 内 容, 利 点, 問 題 点 などを 十 分 に 把 握 することができた.また, 日 本 においては 普 及 していないコンピテンシー 評 価 システムを, 一 から 構 築 され た 熱 意 と 努 力 に 感 動 と 敬 服 を 禁 じえなかった. 今 回 の 調 査 対 象 では, 情 報 工 学 科 における 尐 人 数 の 演 習 1 科 目 に 対 し, 目 標 人 材 像 の 策 定 その 実 現 に 必 要 なコンピテンシーの 策 定 これを 評 価 するためのルーブリックスの 策 定, これを 利 用 したコンピテンシー 育 成 教 育 システムの 構 築, その 実 行 の 中 での 学 生 のコンピテンシー 達 成 度 の 評 価, の PDCA サイクルを 実 際 のシステムとして 実 現 しているが, 多 人 数 になったとき にこれをどのように 適 用 してゆくかが 今 後 の 問 題 であり, 中 央 大 学 理 工 学 部 では, 新 教 育 GP として, 来 年 度 からのその 実 現 に 向 けての 検 討 を 行 っている. 今 後 このようなコンピテンシー 育 成 教 育 を 全 国 の 大 学 に 普 及 させるためには,この ような 多 人 数 教 育 に 対 する 適 切 な 評 価 システムの 構 築 の 検 討 が 不 可 欠 であり, 中 央 大 学 理 工 学 部 の 貴 重 な 試 みに 今 後 とも 着 目 して 行 くことが 望 まれる. 43