平 成 20 年 門 審 第 9 号 旅 客 船 おおいた 防 波 堤 衝 突 事 件 言 渡 年 月 日 平 成 20 年 6 月 27 日 審 判 庁 門 司 地 方 海 難 審 判 庁 ( 井 上 卓, 伊 東 由 人, 蓮 池 力 ) 理 事 官 中 井 勤 受 審 人 A 職 名 おおいた 船 長 海 技 免 許 三 級 海 技 士 ( 航 海 ) 受 審 人 B 職 名 おおいた 機 関 長 海 技 免 許 三 級 海 技 士 ( 機 関 ) 指 定 海 難 関 係 人 C 社 代 表 者 代 表 取 締 役 社 長 D 業 種 名 海 運 業 損 害 おおいた バルバスバウ 右 舷 側 に 凹 損,バウバイザーの 右 舷 側 中 央 部 付 近 に 擦 過 傷 東 防 波 堤 灯 台 同 灯 台 が 基 部 から 倒 壊 原 因 発 航 中 止 の 措 置 不 十 分 主 文 本 件 防 波 堤 衝 突 は, 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 において, 発 電 機 駆 動 用 ディーゼル 原 動 機 1 機 が 故 障 して 発 電 機 の 並 列 運 転 ができなくなった 際, 発 航 中 止 の 措 置 がとられなかったことに よって 発 生 したものである 海 運 業 者 が 乗 組 員 に 対 して 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 していなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる 受 審 人 Aを 戒 告 する 受 審 人 Bを 戒 告 する 理 由 ( 海 難 の 事 実 ) 1 事 件 発 生 の 年 月 日 時 刻 及 び 場 所 平 成 19 年 10 月 7 日 05 時 45 分 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 ( 北 緯 33 度 18.0 分 東 経 131 度 30.4 分 ) 2 船 舶 の 要 目 等 (1) 要 目 船 種 船 名 旅 客 船 おおいた 総 ト ン 数 2,453トン 全 長 115.00メートル 機 関 の 種 類 ディーゼル 機 関
出 力 6,620キロワット (2) 設 備 及 び 性 能 等 ア おおいた おおいたは, 平 成 15 年 9 月 に 進 水 した, 航 行 区 域 を 沿 海 区 域 とする 全 通 二 層 甲 板 型 でバウバ イザー 及 びバウスラスターを 有 する 鋼 製 旅 客 船 兼 自 動 車 渡 船 で, 船 体 船 首 寄 りに 船 橋 を, 中 央 後 部 寄 りに 機 関 室 をそれぞれ 配 し, 主 機, 推 進 装 置, 発 電 機, 電 動 油 圧 式 舵 取 機 及 び 舵 をそれぞれ 2 機 分 装 備 し, 船 橋 にはバウスラスターの 翼 角 操 作 及 び 主 機 の 増 減 速 操 作 等 を 行 う 遠 隔 操 縦 台 を 備 えていた イ 発 電 機 発 電 機 は, 発 電 機 駆 動 用 ディーゼル 原 動 機 ( 以 下 補 機 という )に 直 結 されたE 社 が 製 造 し たFE547C-10 型 と 称 する 容 量 900キロボルトアンペアの 交 流 ブラシレス 発 電 機 であっ た ウ 補 機 補 機 は,F 社 が 製 造 した6DK-20 型 と 称 する 計 画 出 力 770キロワット 同 回 転 数 毎 分 72 0の 過 給 機 付 4サイクル6シリンダ ディーゼル 機 関 で, 右 舷 側 に 備 えた 補 機 を1 号 発 電 機 関 ( 以 下 1 号 補 機 という ), 左 舷 側 に 備 えた 補 機 を2 号 発 電 機 関 ( 以 下 2 号 補 機 という )と 呼 称 していた (ア) 補 機 の 運 転 おおいたは, 通 常,1 機 を1 箇 月 間 連 続 運 転 して 発 電 を 行 い, 他 の1 機 は, 自 動 待 機 の 状 態 と して 運 転 中 の 補 機 及 び 発 電 機 に 異 状 が 生 じて 主 電 源 を 喪 失 したとき, 自 動 的 に 始 動 して 発 電 し, 配 電 盤 の 気 中 遮 断 器 を 投 入 して 主 電 源 を 回 復 するようにしていたほか,1 機 の 発 電 機 では 電 力 負 荷 に 対 応 できない 場 合 や, 出 入 港 時 などで, 主 電 源 を 喪 失 すると 著 しく 航 海 の 安 全 確 保 に 支 障 が 生 じるおそれがある 場 合 には,2 機 を 運 転 して 発 電 機 の 並 列 運 転 を 行 うようにしていた (イ) 使 用 燃 料 油 通 常 運 転 中 の 燃 料 油 はC 重 油 を 使 用 し, 停 止 前 にA 重 油 に 切 り 替 えるようにしていた (ウ) 補 機 の 過 給 機 補 機 の 過 給 機 ( 以 下 過 給 機 という )は,G 社 が 製 造 したRH163 型 と 称 し, 単 段 のター ビン 翼 車, 単 段 の 圧 縮 機 インペラ( 以 下 インペラ という ), 同 翼 車 とインペラとを 結 合 する ロータ 軸, 排 気 ケーシング, 軸 受 ケーシング, 圧 縮 機 ケーシング 及 び 吸 込 みフィルタ 等 で 構 成 さ れていた ロータ 軸 は, 軸 受 ケーシング 内 のインペラ 側 に 設 けられた 推 力 軸 受 ( 以 下 スラストベアリン グ という ) 及 びジャーナル 部 分 に 組 み 込 まれた 浮 動 軸 受 ( 以 下 フローティングベアリング という )により 支 持 されていた 各 部 品 の 標 準 寸 法 等 は,タービン 翼 車 の 最 大 直 径 が129.12ミリメートル(mm)の 特 殊 耐 熱 合 金 製,インペラの 最 大 直 径 が155.9mmのアルミニウム 合 金 製,ロータ 軸 の 軸 受 ケーシング 内 ジャーナル 部 分 の 直 径 が23.85mm 及 びフローティングベアリングの 内 径 が23.893mmであ った 過 給 機 は, 補 機 から 排 出 された 排 気 ガスがタービン 翼 の 外 周 から 半 径 方 向 に 流 入 してロータ 軸 を 回 転 し 軸 端 より 軸 方 向 に 放 出 され,ロータ 軸 の 回 転 とともにインペラが 空 気 を 吸 引 して 圧 縮 し て 補 機 に 給 気 するようになっていた (エ) 過 給 機 の 潤 滑 油 系 統 過 給 機 の 潤 滑 油 系 統 は, 補 機 のシステム 潤 滑 油 系 統 の 潤 滑 油 主 管 から 分 岐 した 潤 滑 油 が 過 給 機
用 こし 器 を 経 て 軸 受 ケーシングの 上 部 から 入 り,フローティングベアリング 及 びスラストベアリ ング 等 を 潤 滑 したのち, 補 機 クランク 室 下 部 の 油 だめに 戻 り 循 環 するようになっていた (オ) タービン 翼 車 の 洗 浄 過 給 機 は, 補 機 の 排 気 ガス 中 にカーボン 等 の 燃 焼 残 渣 物 が 含 まれることから, 排 気 タービンの 内 部, 特 に 排 気 ガスで 回 転 されるタービン 翼 車 に, 同 残 渣 物 が 付 着 しやすく, 同 残 渣 物 が 堆 積 す るとタービン 翼 車 の 回 転 バランスに 支 障 を 生 じて 振 動 を 発 生 し,ロータ 軸 を 支 持 するフローティ ングベアリング 等 の 寿 命 が 短 くなるなどの 障 害 が 生 じるので, 毎 年 1 回 実 施 する 開 放 整 備 のほか, 運 転 中 定 期 的 に, 排 気 ガス 流 入 口 に 洗 浄 水 をノズルより 注 入 し, 同 翼 車 に 衝 突 させて 汚 れを 除 去 する( 以 下 タービン 洗 浄 という ) 方 法 がとられていた (カ) 過 給 機 の 開 放 整 備 及 び 運 転 時 間 1 号 及 び2 号 補 機 の 両 過 給 機 は, 同 19 年 1 月 の 第 一 種 中 間 検 査 入 渠 工 事 時 に 開 放 整 備 され, ロータ 軸,フローティングベアリング 及 びスラストベアリングが 標 準 寸 法 と 変 わりなく, 摩 耗 等 の 異 状 が 全 くないことが 確 認 されていた 両 過 給 機 の 運 転 時 間 は, 同 19 年 10 月 7 日 までの 総 運 転 時 間 については,1 号 補 機 分 が 約 1 7,960 時 間,2 号 補 機 分 が 約 19,140 時 間 であり, 同 年 1 月 の 開 放 整 備 時 後 から10 月 7 日 までの 運 転 時 間 については,1 号 補 機 分 が 約 3,260 時 間,2 号 補 機 分 が 約 3,600 時 間 で あった 3 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 ( 以 下 泊 地 という )は, 別 府 港 内 の 南 北 に 延 びる 陸 岸 と, そのほぼ 中 央 部 から 東 方 約 300メートルの 距 離 に 平 行 に 築 かれた 長 さ 約 1,000メートルの 沖 防 波 堤 とにより 囲 まれた 水 域 で, 泊 地 内 の 陸 岸 に 北 から 第 3ふ 頭, 第 2ふ 頭, 第 1ふ 頭 が 設 け られ, 第 1ふ 頭 の 北 東 端 から 北 北 東 方 に 長 さ 約 130メートルの 東 防 波 堤 が 築 かれ, 同 防 波 堤 の 先 端 部 と 沖 防 波 堤 南 側 端 部 との 間 の 約 210メートルの 開 口 部 が 泊 地 の 南 側 港 口 となっており, 東 防 波 堤 の 先 端 部 には, 灯 高 7.4メートルの 鉄 筋 コンクリート 製 の 別 府 観 光 港 東 防 波 堤 灯 台 ( 以 下 東 防 波 堤 灯 台 という )が 設 置 されていた 4 安 全 管 理 規 程 指 定 海 難 関 係 人 C 社 は, 平 成 18 年 12 月 1 日 に 作 成 した 安 全 管 理 規 程 により, 船 長 は, 同 規 程 第 25 条 において, 適 時, 運 航 の 可 否 判 断, 運 航 中 止 の 措 置 をとらなければならない 旨, 同 規 程 第 31 条 において, 発 航 前 検 査 を 終 え 出 港 するとき, 入 港 したとき 及 び 航 行 の 安 全 に 係 わりを 有 する 船 体, 機 関 その 他 の 設 備 等 に 修 理 又 は 整 備 を 必 要 とする 事 態 が 生 じたときなどには, 必 ず 運 航 管 理 者 に 連 絡 しなければならない 旨 定 め, 安 全 統 括 管 理 者 及 び 運 航 管 理 者 は, 同 規 程 第 51 条 において, 乗 組 員 等 に 対 し, 輸 送 の 安 全 を 確 保 するために 必 要 と 認 められる 事 項 について 理 解 しやすく, 具 体 的 な 安 全 教 育 を 定 期 的 に 実 施 し,その 周 知 徹 底 を 図 らなければならない 旨 定 めて いた 5 事 実 の 経 過 おおいたは,A 及 びB 両 受 審 人 ほか9 人 が 乗 り 組 み, 旅 客 56 人 及 び 車 両 13 台 を 載 せ, 船 首 3.60メートル 船 尾 4.30メートルの 喫 水 をもって, 平 成 19 年 10 月 7 日 05 時 39 分, 右 舷 付 け 中 の 泊 地 第 2ふ 頭 岸 壁 を 発 し, 八 幡 浜 港 へ 向 かった ところで,おおいたは, 前 示 岸 壁 に 同 日 02 時 57 分 着 岸 し 係 留 していたところ,1 箇 月 ほど 前 となる9 月 10 日 から 連 続 運 転 していた1 号 補 機 が, 過 給 機 のタービン 翼 車 のシュラウド 部 と タービンケーシングとが 接 触 して 回 転 数 が 低 下 するとともに, 給 気 圧 力 が 低 下 して 回 転 数 が 低 下 し,03 時 02 分 配 電 盤 の 気 中 遮 断 器 が 開 いて 主 電 源 を 喪 失 したが, 直 ちに2 号 補 機 が 自 動 的 に
始 動 して 主 電 源 を 回 復 した このため,B 受 審 人 は,1 号 補 機 の 回 転 数 低 下 の 原 因 調 査 を 行 い,05 時 00 分 ごろ 過 給 機 の ロータ 軸 芯 が 大 きく 振 れることを 認 め, 過 給 機 の 軸 受 に 異 状 が 生 じたと 判 断 したが, 停 泊 中 に 修 理 する 時 間 的 余 裕 がないので 航 海 中 に 実 施 しようと 思 い,05 時 30 分 A 受 審 人 に 補 機 1 機 が 故 障 中 で 並 列 運 転 できないことを 報 告 したものの,バウスラスターさえ 全 力 運 転 をしなければ 電 力 負 荷 は 補 機 1 機 だけの 運 転 で 間 に 合 うので 発 電 機 単 独 運 転 の 状 態 で 発 航 して 欲 しいと 要 請 し, 発 航 中 止 の 措 置 をとるよう 進 言 しなかった A 受 審 人 は,B 受 審 人 の 報 告 を 受 けて 並 列 運 転 ができない 状 況 であることを 知 ったが,B 受 審 人 の 要 請 を 受 け,バウスラスターの 使 用 を 翼 角 5 度 以 内 で 済 ませば 問 題 ないと 思 い,2 号 補 機 が 停 止 すると 主 電 源 を 喪 失 し, 航 海 の 安 全 の 確 保 が 不 十 分 な 状 態 になることにも, 安 全 管 理 規 程 の 不 遵 守 になることにも, 更 に, 運 航 管 理 者 に 報 告 すべき 事 柄 であることにも 考 え 及 ばず, 発 航 中 止 の 措 置 をとらなかった また,C 社 は,1ないし2 箇 月 に1 度 の 割 合 で 安 全 会 議 を 開 催 し, 自 社 の 乗 組 員 総 員 約 100 人 に 対 し, 安 全 運 航 に 関 する 教 育 指 導 を 行 っていたものの, 発 電 機 の 並 列 運 転 ができないときは 発 航 を 中 止 するなどの 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 していなかった こうして,A 受 審 人 は, 前 示 のように,05 時 39 分 離 岸 したのち 船 橋 で 操 船 指 揮 を 執 りなが らバウスラスターを 操 作 し, 舵 を 右 30 度 に 固 定 した 状 態 として 操 舵 手 を 主 機 の 遠 隔 操 縦 用 ハン ドル 操 作 に 当 たらせ,B 受 審 人 が 船 橋 の 遠 隔 操 縦 台 横 でバウスラスターの 翼 角 等 を 監 視 する 中, 船 首 配 置 に 二 等 航 海 士 を 船 尾 配 置 に 三 等 航 海 士 をそれぞれ 就 け,バウスラスターを 翼 角 5 度 で 運 転 しつつ, 主 機 を 極 微 速 前 進 にかけ,05 時 40 分 ごろ 船 体 が 岸 壁 と 平 行 に 約 25メートル 離 れ たところで 微 速 前 進 とし, 徐 々に 船 速 を 増 しながら 右 回 頭 中,05 時 41 分 ごろ, 港 口 を 出 て 安 全 な 海 域 まで 船 首 配 置 を 維 持 することなく, 投 錨 準 備 を 終 了 させて 船 首 配 置 を 開 いた ところが,おおいたは, 船 速 が 約 3ノット( 対 地 速 力, 以 下 同 じ )となって 回 頭 中,05 時 4 2 分 東 防 波 堤 灯 台 から330 度 ( 真 方 位, 以 下 同 じ )150メートルの 地 点 で 船 首 が116 度 を 向 いたとき, 突 然, 単 独 運 転 していた2 号 補 機 の 回 転 数 が 急 激 に 低 下 し,2 号 発 電 機 の 気 中 遮 断 器 が 開 いて 主 電 源 を 喪 失 して 操 船 不 能 となり, 主 機 が 潤 滑 油 圧 力 低 下 により 危 急 停 止 したので, A 受 審 人 が, 船 室 に 戻 っていた 二 等 航 海 士 及 び 船 尾 で 作 業 中 であった 三 等 航 海 士 に 急 ぎ 船 首 配 置 に 就 くよう 命 じて 投 錨 準 備 を 急 がせ,05 時 45 分 わずか 前 両 舷 錨 を 投 入 したものの 効 なく, 約 2ノットの 前 進 惰 力 で167 度 に 向 首 し,05 時 45 分 別 府 観 光 港 沖 防 波 堤 南 灯 台 から252 度 180メートルの 東 防 波 堤 先 端 部 に 衝 突 した 当 時, 天 候 は 曇 で 風 はほとんどなく, 潮 候 は 高 潮 期 で, 海 上 は 穏 やかであった 衝 突 の 結 果,おおいたはバルバスバウの 右 舷 側 に 凹 損 及 びバウバイザーの 右 舷 側 中 央 部 付 近 に 擦 過 傷 を 生 じ,バウバイザーの 右 舷 側 中 央 部 が 東 防 波 堤 灯 台 に 衝 突 して 同 灯 台 が 基 部 から 倒 壊 し たが, 旅 客 の 負 傷 等 及 び 車 両 の 損 傷 はなかった 衝 突 後,おおいたは,B 受 審 人 ほか 機 関 部 の 手 により,2 号 補 機 の 再 始 動 操 作 を 行 い,05 時 55 分 主 電 源 を 回 復 し,A 受 審 人 が 舵 を 中 央 に 戻 し, 揚 錨 作 業 を 行 っていたところ, 再 び 同 補 機 が 停 止 して 主 電 源 を 喪 失 し, 折 からの 潮 流 により 漂 流 を 始 めたので, 同 受 審 人 の 救 助 要 請 に 応 じ て 駆 け 付 けた 海 上 保 安 庁 の 巡 視 艇 に 曳 航 され,09 時 20 分 泊 地 第 2ふ 頭 南 岸 壁 に 引 き 付 けられ, 旅 客 の 下 船 及 び 車 両 の 陸 揚 げを 行 った その 後,C 社 は,おおいたを 入 渠 させてバルバスバウ 等 の 修 理 を 行 い,1 号 及 び2 号 補 機 の 過 給 機 を 整 備 済 みの 完 備 品 及 び 新 品 と 新 替 えし, 東 防 波 堤 灯 台 を 再 建 した C 社 は, 乗 組 員 に 対 し 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 していなかったことを 反 省 し, 本 件 の
5 日 後 におおいたで 船 内 安 全 対 策 会 議 を 開 いて 安 全 確 認 を 行 い,その 翌 日 から2 日 間 かけて, 全 船 の 乗 組 員 を 対 象 とした 乗 組 員 会 議 を 開 催 し, 発 電 機 の 並 列 運 転 ができない 状 態 で 発 航 しないこ となどを 含 めた, 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 について 具 体 的 事 例 を 挙 げて 安 全 教 育 を 徹 底 するように 努 めた ( 本 件 発 生 に 至 る 事 由 ) 1 B 受 審 人 が, 停 泊 中 に 修 理 する 時 間 的 余 裕 がないので 航 海 中 に 実 施 しようと 思 い,A 受 審 人 に 補 機 1 機 が 故 障 中 で 並 列 運 転 できないことを 報 告 したものの,バウスラスターさえ 全 力 運 転 を しなければ 電 力 負 荷 は 補 機 1 機 だけの 運 転 で 間 に 合 うので 発 電 機 単 独 運 転 の 状 態 で 発 航 して 欲 し いと 要 請 し, 発 航 中 止 の 措 置 をとるよう 進 言 しなかったこと 2 A 受 審 人 が,B 受 審 人 の 要 請 を 受 け,バウスラスターの 使 用 を 翼 角 5 度 以 内 で 済 ませば 問 題 ないと 思 い,2 号 補 機 が 停 止 すると 主 電 源 を 喪 失 し 航 海 の 安 全 の 確 保 が 不 十 分 な 状 態 になること にも, 安 全 管 理 規 程 の 不 遵 守 になることにも, 更 に, 運 航 管 理 者 に 報 告 すべき 事 柄 であることに も 考 え 及 ばず, 発 航 中 止 の 措 置 をとらなかったこと 3 C 社 が, 乗 組 員 に 対 して 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 していなかったこと 4 A 受 審 人 が 港 口 を 出 て 安 全 な 海 域 まで 船 首 配 置 を 維 持 しなかったこと ( 原 因 の 考 察 ) 本 件 は, 発 航 時 に 発 電 機 の 並 列 運 転 が 通 常 どおり 行 われ, 主 電 源 喪 失 防 止 の 措 置 がとられてい れば, 港 内 で 主 電 源 を 喪 失 し, 航 行 不 能 の 状 態 に 陥 ることがなかったと 認 められ, 衝 突 を 回 避 で きたものと 認 められる したがって,A 受 審 人 が,B 受 審 人 の 要 請 を 受 け,バウスラスターの 使 用 を 翼 角 5 度 以 内 で 済 ませば 問 題 ないと 思 い,2 号 補 機 が 停 止 すると 主 電 源 を 喪 失 し 航 海 の 安 全 の 確 保 が 不 十 分 な 状 態 になることにも, 安 全 管 理 規 程 の 不 遵 守 になることにも, 更 に, 運 航 管 理 者 に 報 告 すべき 事 柄 で あることにも 考 え 及 ばず, 発 航 中 止 の 措 置 をとらなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる B 受 審 人 が, 停 泊 中 に 修 理 する 時 間 的 余 裕 がないので 航 海 中 に 実 施 しようと 思 い,A 受 審 人 に 補 機 1 機 が 故 障 中 で 並 列 運 転 できないことを 報 告 したものの,バウスラスターさえ 全 力 運 転 をし なければ 電 力 負 荷 は 補 機 1 機 だけの 運 転 で 間 に 合 うので 発 電 機 単 独 運 転 の 状 態 で 発 航 して 欲 しい と 要 請 し, 発 航 中 止 の 措 置 をとるよう 進 言 しなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる C 社 が, 乗 組 員 に 対 して 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 せず 乗 組 員 に 対 する 安 全 教 育 が 徹 底 していなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる A 受 審 人 が, 港 口 を 出 て 安 全 な 海 域 まで 船 首 配 置 を 維 持 しなかったことは, 操 船 不 能 の 状 態 で 防 波 堤 衝 突 のおそれが 生 じたとき, 直 ちに 投 錨 することによって 衝 突 を 回 避 できた 可 能 性 はある が, 本 件 と 相 当 な 因 果 関 係 があるとは 認 められない しかしながら, 海 難 防 止 の 観 点 から, 港 内 を 航 行 中 は, 船 首 配 置 を 維 持 すべきである ( 海 難 の 原 因 ) 本 件 防 波 堤 衝 突 は, 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 において, 発 航 に 備 えて 係 留 中, 補 機 1 機 が 故 障 して 発 電 機 の 並 列 運 転 ができなくなった 際, 発 航 中 止 の 措 置 がとられず, 防 波 堤 入 口 に 向 けて 進 行 中, 単 独 運 転 中 の 発 電 機 が 停 止 して 操 船 不 能 の 状 態 に 陥 り, 惰 力 により 東 防 波 堤 先 端 部 に 向 かって 進 行 したことによって 発 生 したものである 運 航 が 適 切 でなかったのは, 船 長 が, 機 関 長 から 発 電 機 の 並 列 運 転 ができない 旨 の 報 告 を 受 け
たとき, 発 航 中 止 の 措 置 をとらなかったことと, 機 関 長 が, 船 長 に 同 報 告 をしたとき, 発 航 中 止 の 措 置 をとるよう 進 言 しなかったこととによるものである 海 運 業 者 が, 乗 組 員 に 対 して 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 せず, 乗 組 員 が 同 規 程 を 遵 守 せ ず 発 航 中 止 の 措 置 をとらなかったこと 及 び 乗 組 員 から 補 機 故 障 の 報 告 を 受 けることができなかっ たことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる ( 受 審 人 等 の 所 為 ) A 受 審 人 は, 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 において, 発 航 に 備 えて 係 留 中,B 受 審 人 から 補 機 1 機 が 故 障 して 発 電 機 の 並 列 運 転 ができない 旨 の 報 告 を 受 けた 場 合, 発 航 中 止 の 措 置 をとるべ き 注 意 義 務 があった しかるに 同 人 は, 電 力 負 荷 を 抑 えれば 発 電 機 の 並 列 運 転 ができなくても 大 丈 夫 と 思 い, 発 航 中 止 の 措 置 をとらなかった 職 務 上 の 過 失 により, 発 航 後 防 波 堤 入 口 に 向 けて 進 行 中, 単 独 運 転 中 の 発 電 機 が 停 止 して 主 電 源 を 喪 失 し, 操 船 不 能 状 態 に 陥 り, 惰 力 により 東 防 波 堤 先 端 部 に 向 かって 進 行 して 衝 突 する 事 態 を 招 き,バルバスバウの 右 舷 側 に 凹 損 及 びバウバイザ ーの 右 舷 側 中 央 部 付 近 に 擦 過 傷 を 生 じさせ, 東 防 波 堤 灯 台 を 基 部 から 倒 壊 させるに 至 った 以 上 のA 受 審 人 の 所 為 に 対 しては, 海 難 審 判 法 第 4 条 第 2 項 の 規 定 により, 同 法 第 5 条 第 1 項 第 3 号 を 適 用 して 同 人 を 戒 告 する B 受 審 人 は, 大 分 県 別 府 港 別 府 国 際 観 光 泊 地 において, 発 航 に 備 えて 係 留 中, 補 機 1 機 が 故 障 して 発 電 機 の 並 列 運 転 ができない 状 態 にあったのだから,A 受 審 人 に 対 し, 発 航 中 止 の 措 置 をと るよう 進 言 すべき 注 意 義 務 があった しかるに 同 人 は, 航 海 中 に 修 理 すれば 問 題 ないと 思 い,A 受 審 人 に 発 電 機 単 独 運 転 の 状 態 で 発 航 して 欲 しいと 要 請 し, 発 航 中 止 の 措 置 をとるよう 進 言 しな かった 職 務 上 の 過 失 により, 発 航 後 防 波 堤 入 口 に 向 けて 進 行 中, 単 独 運 転 中 の 発 電 機 が 停 止 して 主 電 源 を 喪 失 し, 操 船 不 能 状 態 に 陥 り, 惰 力 により 東 防 波 堤 先 端 部 に 向 かって 進 行 して 衝 突 する 事 態 を 招 き, 前 示 損 傷 を 生 じさせるに 至 った 以 上 のB 受 審 人 の 所 為 に 対 しては, 海 難 審 判 法 第 4 条 第 2 項 の 規 定 により, 同 法 第 5 条 第 1 項 第 3 号 を 適 用 して 同 人 を 戒 告 する C 社 が, 乗 組 員 に 対 して 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 していなかったことは, 本 件 発 生 の 原 因 となる C 社 に 対 しては, 乗 組 員 に 対 して 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 を 十 分 に 指 導 していなかったことを 反 省 し, 本 件 の5 日 後 におおいたで 船 内 安 全 対 策 会 議 を 開 いて 安 全 確 認 を 行 い,その 翌 日 から2 日 間 かけて, 全 船 の 乗 組 員 を 対 象 とした 乗 組 員 会 議 を 開 催 し, 発 電 機 の 並 列 運 転 ができない 状 態 で 発 航 しないことなどを 含 めた, 安 全 管 理 規 程 の 遵 守 について 具 体 的 事 例 を 挙 げて 安 全 教 育 を 徹 底 す るように 努 めたことに 徴 し 勧 告 しない よって 主 文 のとおり 裁 決 する