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今 井 洋 子 訳 を, 語 彙, 熟 語, 文 法 の 3 つの 点 から 分 析 することによって, 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 一 助 とな ることを 目 指 すものである 翻 訳 本 오체 불만족 진경빈 訳 は, 韓 国 において 2001 年 度 小 学 4 年 生 1 学 期 の 生 活 の 手 引 き に 一 部 が 掲 載 されているほどであり, 訳 者 が 日 本 語 に 熟 達 し ていると 考 えられるだけに,そこに 現 われる 誤 訳 は 日 本 語 研 究 のみならず, 韓 国 語 母 語 話 者 に 対 する 日 本 語 教 育 にも 有 益 な 材 料 を 提 供 するものと 考 えられる 油 谷 (2002)の 構 成 に 基 本 的 に 従 い, 第 1 章 で 誤 訳 を 数 的 に 概 観 し, 第 2 章 では 語 彙 の 誤 訳 を, 第 3 章 では 熟 語 の 誤 訳 を, 第 4 章 では 文 法 の 誤 訳 を 取 り 上 げ, 第 5 章 で 考 察 を 整 理 する 1. 誤 訳 の 概 観 誤 訳 総 数 およびその 内 訳 は 表 1 の 通 りであるが, 形 容 詞 には 形 容 動 詞, 擬 態 語 には 擬 声 語 も 含 んでいる 最 も 多 く 見 られるのが 語 彙 の 誤 訳 であり, 全 体 の 3 分 の 2 に 上 るが,その 半 数 が 名 詞 である 以 下, 項 目 ごとに 検 討 することにする 表 1 誤 訳 の 内 訳 語 彙 熟 語 文 法 計 数 名 詞 形 容 詞 副 詞 擬 態 語 動 詞 主 語 文 脈 30 10 5 5 11 9 5 17 92 2. 語 彙 の 誤 訳 2.1 名 詞 2.1.1 固 有 名 詞 油 谷 (2002)で 相 当 数 見 受 けられた 固 有 名 詞 の 誤 読 は, 今 回 の 資 料 では 人 名 の トオル を 오토루 オトル(150) 1) とした 1 例 のみであった 地 名 がさほど 多 くないことと, 人 名 の 多 くがカタカナ 表 記 によるニックネームであったことが 影 響 していると 思 われる トオル の 誤 読 については 単 なる 不 注 意 によるものと 考 えられるが, 人 名 が 多 様 であるとはいえ オト ル という 名 が 存 在 しない,もしくは 極 めて 特 殊 であるという 知 識 がなかったことが 予 測 され る 2.1.2 普 通 名 詞 1)うっかりした 間 違 い(lapse)によるもの 相 当 の 実 力 を 有 する 訳 者 にしては,うっかりした 間 違 いとしか 言 いようのない 誤 訳 が 14 例 も 見 られ, 物, 色, 人, 時, 数 などあらゆる 範 囲 にわたる 1ふた: 道 具 の 入 った 箱 とフタを 別 々のロッカーにしまって 도구가 든 상자와 산수세트를

翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 による 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 試 み 日 本 語 教 育 への 提 言 3 각각 다른 사물함에 넣어 두고 道 具 が 入 った 箱 と 算 数 セット 2) を (28) 2 椅 子 : 椅 子 にのぼった 휠체어에 올라갔다 車 椅 子 にのぼった(34) 3 洋 服 : 洋 服 が 手 に 触 れただけで 옷기만 스쳐도 襟 が 触 れただけで(56) 4 壁 : 壁 や 机 を 拭 くことはできない 창틀이나 책상을 닦을 수는 없었다 窓 枠 や 机 を 拭 くことはできなかった(64) 5ダンス:ダンスのようなものに 메스 게임 같은 경우는 マスゲーム のような 場 合 (69) 6バイク: 大 のバイク 好 き 자전거를 아주 좋아해서 自 転 車 がとても 好 きで(170) 7 紫 : 紫 のドレスに 분홍색 드레스에 ピンク のドレスに(233) 8 欧 米 : 欧 米 では 미국에서 アメリカ では(260) 9 名 刺 : 名 刺 を 携 え 이름표까지 달고 名 札 まで 下 げて(191) 10 一 人 っ 子 : 一 人 っ 子 特 有 のワガママ 골목대장 특유의 기질 ガキ 大 将 特 有 の 気 質 (16) 11 数 十 分 :キャンパス 内 を 数 十 分 歩 き 回 っただけで 캠퍼스에 들어서서 열 발 자국만 걸어도 キャンパスに 入 って 10 歩 だけ 歩 いても(182) 12 100 万 円 単 位 でお 金 が 動 く 100 만 원 단위로 움직이는 규모가 100 万 ウォン 単 位 で 動 く 規 模 が(191) 正 しくは 1000 万 ウォンである 13 2000 円 という 決 して 安 くはない 参 加 費 を 1 만 원이라는 결코 싸지 않은 참가비를 1 万 ウォン という 決 して 安 くはない 参 加 費 を(225) 正 しくは 2 万 ウォンである 14 数 千 円 を 取 り 出 すと 몇 천 원을 꺼내더니 数 千 ウォン を 取 り 出 すと(240) 正 しく は 数 万 ウォンである 2) 語 彙 の 意 味 を 取 り 違 えている 誤 訳 漢 字 語, 略 語, 外 来 語 あるいはカタカナ 表 記 語 を 合 わせて 15 例 見 られた また, 自 国 に 存 在 しない 事 物 や 事 柄 に 関 する 翻 訳 は, 豊 富 な 注 釈 で 説 明 をするか 意 訳 をすることになるが, 中 には 全 くの 誤 解 による 訳 も 見 受 けられた 日 韓 辞 典 に 記 載 されていないこともその 一 因 と 考 え られるものの, 今 回 辞 典 に 記 載 されていなかった 語 は 酒 屋 クローゼット の 2 例 にとど まった 1 年 長 組 : 年 長 組 になってから 유치원 반장으로 뽑히면서 幼 稚 園 の 班 長 に 選 ばれて から(17) 年 少 年 中 年 長 というシステムを 理 解 していなくても, 年 長 が 年 が 上 で あることを 知 っていれば 容 易 に 翻 訳 できると 思 われるが, 長 という 漢 字 にひかれたの か 班 長 に 選 ばれて と 勝 手 な 訳 にしている 2 酒 屋 : 酒 屋 さんに 掛 け 合 った 술집에 도움을 청해본다 飲 み 屋 に 掛 け 合 った(113) 酒 屋 を 1 字 ずつ 分 解, 酒 =술 屋 =집 と 直 訳 的 に 解 釈 した 結 果, 酒 の 販 売 店 では なく 술집= 飲 み 屋 と 訳 している ちなみに, 韓 国 で 最 もよく 用 いられていると 思 われ

4 今 井 洋 子 る エッセンス 日 韓 辞 典 2001 年 版 ( 以 下, 日 韓 辞 典 と 略 する)には, 酒 を 作 るとこ ろ, 酒 を 飲 むところという 記 述 はあるものの, 売 るところという 記 述 はない 辞 典 の 整 備 が 望 まれる 3 王 冠 :ビンの 王 冠 だけ 먹다 남은 소주병뿐이잖아 飲 み 残 した 焼 酎 の ビン だけじゃ ないか(73) ビール 瓶 などのブリキ 製 のふたであることを 知 らないようであるが, 日 韓 辞 典 には 第 3 義 に 載 せられている 4 時 期 :この 時 期 はたいへん 雪 が 多 く 그 날 따라 웬 눈이 그리도 많이 この 日 に 限 っ て なぜか 雪 が 多 く(46) 時 という 漢 字 に 惑 わされたか, 時 期 を 限 定 的 に 解 釈 し 時 間 の 幅 をもたせた 訳 になっていない 5 先 ほど: 先 ほど 息 子 が 学 校 から 帰 ってまいりまして 며칠 전에 우리 애가 학교에서 돌아와 서는요 何 日 か 前 子 どもが (100) 先 という 漢 字 にひかれて 先 日 と 誤 読 し た 可 能 性 がある 6 添 乗 員 : 添 乗 員 の 派 遣 などをする 간병인등을 파견하는 看 病 人 などを 派 遣 する (223)ここは, 元 は 添 乗 員 を 派 遣 していた 人 材 派 遣 会 社 が, 今 では 障 害 者 や 高 齢 者 の 旅 を 扱 うようになったという 文 脈 であるが, 障 害 者 や 高 齢 者 という 語 から 看 病 人 を 類 推 し たことも 考 えられる 7セレクション:セレクションをする 신체검사를 받아야 하는 身 体 検 査 を 受 けなけ ればならない(143) スポーツの 得 意 な 選 手 を 選 抜 する 特 別 な 試 験 を, 単 なる 身 体 検 査 と 訳 している 外 来 語 ではあるが 日 韓 辞 典 にも 記 載 されており, 선발시험( 選 抜 試 験 ) と すべきところである 8クローゼット:ベッド,クローゼット, 本 棚 침대, 화장실, 책상 ベッド, トイレ, 本 棚 (174) クローゼット という 語 は 韓 国 においてまだ 一 般 的 ではなく, 日 韓 辞 典 に も 掲 載 されていないため 何 を 表 しているのか 理 解 していない 可 能 性 がある 9バネ: 黒 人 のバネを 持 つ 男 검은 바람의 사나이 黒 い 風 の 男 (148) 比 喩 として 用 いられている バネ が 足 腰 の 弾 力 性 を 指 していることが 反 映 されず, 単 に 走 力 があるこ とだけに 終 わっている 10ザル:ディフェンスなどはザル 同 然 수비를 보는 자리에서는 뀌다 놓은 보릿자루나 마찬 가지였다 借 りてきた 麦 の 袋 ( 皆 の 中 で 何 も 言 わずに 黙 っている) も 同 然 だ(105) ディフェンスが 不 十 分 で 穴 だらけであるという 意 ではなく, 借 りてきた 猫 を 意 味 する ことになっている 11ウソつき: 通 称 ウソつき 校 舎 유령 학원으로 불렸다 幽 霊 学 校 と 呼 ばれていた (169) 新 宿 校 と 言 いながら 一 駅 隣 に 位 置 することをウソつきと 称 しているのであり, 幽 霊 学 校 では 実 体 がないことを 意 味 してしまう 12はしご: 一 気 に はしご する 学 生 단슴에 순례 하는 학생 一 気 に 巡 礼 する 学 生

翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 による 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 試 み 日 本 語 教 育 への 提 言 5 (225) はしご 酒 の 略 であることを 知 らないため 巡 礼 と 訳 しているが,はしご 酒 は 韓 国 でもよく 見 られるもので 2 차 3 차 술(2 次 会 3 次 会 ) という 語 彙 をそのまま 使 えばよ い 13 切 れ 者 : 見 るからに 切 れ 者 という 男 잘 빠진 남자가 とてもスタイルのよい 男 (202) 外 見 のよさと 解 釈 し, 物 事 を 処 理 する 能 力 に 秀 でたことの 意 味 になっていない 14 不 届 き 者 : 困 っていない とは 不 届 き 者 だが 그다지 힘들지 않다고 하면 코웃음을 칠 지도 모른다 それほど 大 変 じゃないと 言 うと せせら 笑 う かもしれない(41) 自 分 は 周 囲 の 助 けを 得 て 生 活 しているのに, 困 っていないと 答 えることに 対 するある 種 の 申 し 訳 なさを 表 現 しているところが, 周 囲 から 冷 笑 されるかもしれないことだと 訳 されてい る 15 嫌 がらせ: 嫌 がらせだ 누가 봐도 혼날 일이었다 誰 が 見 ても ひどく 叱 られること だった(120) 度 が 過 ぎたいたずらをして 人 に 叱 られるという 訳 よりも, 故 意 に 人 の 嫌 が る 行 為 をする 짓궂다 を 使 うべきところである 2.2 形 容 詞 形 容 動 詞 形 容 詞 形 容 動 詞 は, 日 韓 両 言 語 で 意 味 内 容 が 微 妙 にずれていたり, 一 対 一 に 対 応 しないこ ともあるため 翻 訳 に 苦 労 する 語 ではあるが, 今 回 見 られた 10 例 はいずれも 日 韓 辞 典 に 記 載 さ れ,その 意 味 内 容 も 一 致 する 語 彙 であり, 特 に 難 解 だと 思 われるものではなかった ただし, おめでたい うるさい の 2 つは 辞 典 の 第 1 義 には 記 述 されていなかったため, 多 義 性 をも つことによる 困 難 が 生 じたことも 考 えられるが, 辞 書 で 確 認 すれば 生 じなかった 誤 りだと 言 え る 1ややこしい:ややこしい 世 界 が 시시한 세계가 つまらない 世 界 が(122) 人 間 関 係 の 複 雑 さや 煩 わしさを 表 している 部 分 であるため, つまらない は 誤 りと 言 わざるを 得 ない 2 初 々しい: 新 入 生 らしい 初 々しさなど 全 く 感 じられない 어리벙벙한 모습이라곤 찾아볼 수 없는 呆 然 とした 姿 なんて 探 してみることができない(183) 初 々しい を 表 す 풋풋하다 をそのまま 使 うべきところを 完 全 に 誤 訳 している 3おめでたい: 短 大 = 女 の 子 がいっぱい というオメデタイ 発 想 여학생들이 많은 곳 이라는 엉큼한 생각으로 という 腹 黒 くしたたかな 考 え で(212) 滑 稽 さを 含 む 単 純 な 発 想 が, 狡 猾 さにすりかわっている 4うるさい: 洋 服 にはうるさかった 양복에 익숙해져 있다 洋 服 に 慣 れている (244) こだわりがあることを 意 味 しており, 端 的 に 까다롭다 とすべきところである 5もったいない: 同 時 にもったいなくも 思 った 동지에 마음이 무거워지기도 했다 同 時 に 心 が 重 くなり もした(228) シンポジウムに 関 わり 刺 激 を 受 けた 反 面, 多 くの 人 々の 情 熱 やパワーが 無 駄 になっていることを 残 念 がる 場 面 なので, 아깝다 とすべきであ

6 今 井 洋 子 る 6 厳 しい: 厳 しい 口 調 で 迫 った 조목조목 따졌다 ひとつひとつ 問 い 詰 めた(120) 濡 れ 衣 を 着 せられた 友 人 になぜ 真 実 を 告 げないのかと 気 色 ばんで 発 した 言 葉 が 厳 しかった のであり,いくつもの 問 いかけをしたわけではない 7 生 意 気 : 生 意 気 な 態 度 をとる 생떼를 쓰기 시작한다 無 理 強 い をし 始 める(17) ガ キ 大 将 の 典 型 で 親 や 教 師 に 対 して 生 意 気 であったという 意 味 であり, 誰 かに 何 かを 強 要 し ているかのような 訳 は 妥 当 ではない 8 朗 らか: 朗 らかな 性 格 で 성격도 화끈해서 性 格 も まっすぐで 小 さいことにこだわらな い ので(111) 朗 らか の 語 義 とは 何 の 関 係 もない 訳 になっている 9 楽 だ: 決 して 楽 なものではなかった 결코 즐겁지만은 않았다 決 して 楽 しい だけで はなかった(138) 楽 という 漢 字 にひかれて 楽 しい と 思 い 込 んだおそれがある 10お 茶 目 :おちゃめで 楽 しい 父 親 だ 다정하고 재미있는 분이시다 やさしくて おもし ろい 父 親 だ(249) やさしい だけでは 不 十 分 で 無 邪 気 さやいたずらっぽさも 含 んだ 장난기가 많다 とするのがふさわしい 2.3 副 詞 程 度 副 詞 に 比 べると 情 態 副 詞,それも 話 者 の 心 情 を 表 す 情 態 副 詞 は, 学 習 者 にとって 理 解 に 困 難 を 伴 う 語 であり, 今 回 見 られた 5 例 のうち 4 例 が 情 態 副 詞 であった 特 に 何 だか 何 気 なく など 何 を 含 んだ 副 詞 は,その 種 類 も 多 い 上 にそれぞれが 類 似 した 意 味 を 持 つため 使 い 分 けが 難 しく, 今 回 の 資 料 でも 何 だか 何 となく の 2 例 見 られた 副 詞 の 誤 訳 の 5 例 はすべて 日 韓 辞 典 に 記 載 されている 語 彙 であるにもかかわらず, 思 い 違 いによるのか,ひど い 誤 訳 になっている 1 何 だか: 何 だか 彼 に 悪 い 気 がする 그 친구에게 무척이나 미안했다 ひどく 申 し 訳 な かった(108) ひどく では, 申 し 訳 なさを 感 じる 気 持 ちが 過 剰 に 表 れてしまっている ため, 어쩐지 を 用 いるべきである 2 何 となく: 何 となくなりたかった 기를 쓰고 얻은 직업 何 としても なりたい 仕 事 (164) 上 述 の 何 だか と 同 様, 漠 然 とした 思 いが 強 い 意 気 込 みを 表 し, 正 反 対 の 訳 に なってしまっている 3よりによって:よりによって 英 語 だなんて 팔자에도 없는 영어라니? 思 いもよらず 英 語 だなんて(188) 単 なる 意 外 性 を 述 べるだけでは 不 十 分 であり,もっとましなものが あるはずなのに,それを 選 んでしまったことに 対 する 後 悔 をも 表 すには, 하필 以 外 な い 4どうせ:どうせ 自 分 なんてという 言 葉 を 口 にする 왜 나만 을 자주 입에 올린다 ど うして 自 分 だけがとしょっちゅう 口 にする(262) 自 分 だけが 運 が 悪 いということでは なく 自 分 を 卑 下 している 文 脈 であるため, 어차피 とすべきである

翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 による 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 試 み 日 本 語 教 育 への 提 言 7 5 徐 々に: 徐 々に 顔 をのぞかせ 始 める 비죽이 튀어나오기 시작했다 ぴょこんと 飛 び 出 し 始 めた(16) 自 分 のわがままな 性 格 が 次 第 に 現 れ 始 めたという 文 脈 であるため, 意 訳 せずにそのまま 서서히 とすればよいところを, 비죽이 という 物 の 端 が 長 く 突 き 出 ている 様 子 を 表 す 副 詞 を 用 いたために, 動 詞 まで 誤 訳 となっている 2.4 擬 態 語 擬 声 語 擬 態 語 擬 声 語 は 一 般 的 にその 理 解 も 習 得 もたやすいものではないが, 韓 国 語 は 日 本 語 と 同 様, 擬 態 語 擬 声 語 が 豊 富 な 言 語 であり, 両 言 語 で 一 致 するものも 少 なくないため, 他 言 語 に 比 べると 韓 国 語 への 翻 訳 は 比 較 的 容 易 であると 思 われる しかしながら, 今 回 見 られた 5 例 は いずれも, 日 本 語 と 一 対 一 に 対 応 するものであり, 日 韓 辞 典 に 掲 載 されているものばかりで あった 1ピョンピョン:ピョンピョンピョン 퉁 퉁 퉁 とんとん,こんこん (42) なわとび をしている 様 子 を 表 すには, 軽 快 に 跳 ね 上 がるさまの 깡충깡충,または, 縄 が 風 を 切 る 音 の 씽씽 がふさわしい 2ぐったり:グッタリとして 体 が 動 かなかった 온몸이 뻣뻣해지더니 움직이기조차 힘들었 다 全 身 が 硬 直 して 動 くことさえ 辛 かった(54) 疲 労 困 憊 の 状 態 を 指 していること を 理 解 していないのか, 녹초가 되다 を 用 いていない 3ぼろぼろ:ボロボロになってしまった 封 筒 を 나달나달해진 그 봉투를 ぶらぶら,ひ らひらに なった 封 筒 を(68) 母 音 の 違 いであるが, 너덜너덜 を 用 いないことには 紙 類 の 傷 んだ 様 子 は 表 せない 4にやにや: 思 わずニヤニヤしてしまった 순간 내 입꼬리가 자꾸만 귀 옆으로 달려갔다 瞬 間 口 の 端 が 耳 の 横 にまで 走 った (70) 히쭉거리다 とすれば, 意 味 ありげに 薄 笑 いを 浮 かべる 意 が 的 確 に 表 現 できるところを, 比 喩 のつもりであろうが,わざわざ 特 殊 な 表 現 を 用 いたことが 結 果 的 に 誤 訳 になっている 5ホッ:ホッとした 깜짝 놀랐다 非 常 に 驚 いた (109) ぎょっとした と 誤 解 した のか, 安 堵 が 驚 きとして 訳 されており, 마음을 놓다 を 用 いていない 2.5 動 詞 同 音 異 義 語 や 多 義 語 はその 選 択 に 迷 い, 誤 訳 を 起 こすことが 多 いと 思 われるが, 今 回 見 られ た 11 例 の 中 には, 単 なる 思 い 違 いや 漢 字 にひかれた 誤 解, 名 詞 を 誤 読 したための 誤 訳, 意 訳 の 域 を 逸 脱 したと 言 わざるを 得 ないものも 多 かった 1 満 開 の 桜 に,やわらかな 陽 射 し 활짝 피어난 벚꽃 위로 다가선 부드러운 햇살 満 開 の 桜 の 上 に 近 づいた 柔 らかい 陽 射 し(2) 原 文 は 動 詞 が 省 略 された 文 であるが, 내리 쬐다 を 使 って 陽 射 しが 降 り 注 ぐ と 端 的 に 言 い 表 してほしいところである 2 苦 笑 する: 苦 笑 せずにはいられない 쿡쿡거리며 웃음이 나온다 ぷっと 笑 いが 出 る (25) 日 本 語 と 見 事 に 対 応 する 쓴웃음을 짓다 を 用 いればよいところを, 吹 き 出 すとい

8 今 井 洋 子 う 意 に 変 えてしまっている 3 誘 う:ミノルを 誘 った 미노루를 꼬드겼다 ミノルを そそのかした (74) 誘 う に はもちろん そそのかす という 意 味 もあるが,ここは 早 朝 マラソンを 一 緒 にしないかと 持 ちかけている 場 面 であるため, 悪 事 を 働 かせるような そそのかす では 明 らかに 誤 り である 4 悩 む:みんな 悩 んでいるのかな 그들만의 고민을 녹여내고 있을까 彼 らだけの 悩 みを 溶 かしだして いるだろうか(125) 意 訳 の 域 にとどめるにはあまりの 抵 抗 を 覚 える 表 現 となっている 5 落 ち 着 く: 学 年 全 体 が 落 ち 着 きをなくし 始 める 학년 전체가 차부해지기 시작했다 学 年 全 体 が 落 ち 着 き 始 める (132) ~ 始 める を 見 落 としたのか, 全 く 反 対 の 意 味 に なっている 6 動 揺 する: 動 揺 するトオルの 前 に 방황하는 오토루 앞에 さまよう オトルの 前 に (150) 당황하다( 動 揺 する) を 知 らないとは 考 えられないため, 勘 違 いとしか 考 えられ ない 7 呆 れる: 夢 が プロ 野 球 選 手 だというのだから 呆 れてしまう 꿈이 프로야구 선수였다니 자다가도 웃을 일이다 どう 考 えても 笑 う ことだ(161),さすがの 母 も 呆 れている 억지를 쓰는 아들이 기여운 모양이었다 我 を 張 る 息 子 が かわいい ようだった(245) どちらの 場 合 も 어이없다 とすればよいところを, 呆 れる を 意 外 で 驚 いた 意 を 表 すと 理 解 していないのか, 全 く 異 なる 訳 になっている 8 携 える: 名 刺 を 携 えて 이름표까지 달고 名 札 を 下 げて (191) 名 刺 を 名 札 と 誤 解 していることによって, 動 詞 まで 誤 りとなっている 9 気 負 う: 気 負 わずにはいられない 나는 슬그머니 기가 질렸다 そっと やる 気 が 失 せ た (217) 負 という 漢 字 にひかれたためか 気 持 ちが 負 けた と 正 反 対 の 訳 になっ ている 10 書 ききれない:ここには 書 ききれないほどの 経 験 を 이 책에 쓰지 않고는 견딜 수 없을 만 큼 많은 경험을 ここに 書 かずにはいられない ほどの 経 験 を(236) あまりに 多 くて 十 分 にし 尽 くせない 意 味 である ~きれない が,そうすることを 止 めることができない 意 にすりかわっている 11すねる:ふくれっ 面 をしてスネてしまうような 뾰로통한 얼굴로 심통을 부리는 아이였다 ふくれっ 面 をして 意 地 悪 をする 子 どもだった(244) すねる はそのまま 비꼬 이다 で 表 現 できるところである

翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 による 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 試 み 日 本 語 教 育 への 提 言 9 3. 熟 語 の 誤 訳 本 稿 では, 二 つ 以 上 の 単 語 が 結 合 し, 単 語 としての 慣 用 が 固 定 しているものを 熟 語 と 定 義 し ( 国 語 大 辞 典 言 泉 ), 連 語 や 慣 用 句,ことわざもここに 含 める 熟 語 は 日 本 語 にかなり 習 熟 していなければ 運 用 できないものであり, 同 様 の 表 現 が 自 国 語 にない 場 合 は 説 明 的 な 翻 訳 にな らざるを 得 ないが, 今 回 はことわざ 1 例 を 含 め 全 部 で 9 例 見 られた その 中 には, 泣 き 言 を 言 う 顔 をのぞかせる など, 通 常 日 本 人 に 対 する 国 語 教 育 では 扱 われないようなものもあ り,これらも 連 語 として 丁 寧 に 取 り 上 げる 必 要 があると 思 われる 1 蓼 食 う 虫 も 好 き 好 き : 蓼 食 う 虫 も 好 き 好 き と 言 ってしまえばそれまでだが 그 이상 도 이하도 아니었지만 それ 以 上 でもそれ 以 下 でもなかったけれど (128) 人 の 好 みはさまざまであるという 意 味 を 全 く 理 解 していないため, 오이를 거꾸로 먹어도 제 맛 (きゅうりを 逆 さに 食 べても 自 分 の 好 み 次 第 ) ということわざを 用 いることもなく, 説 明 も 誤 っている 2 火 がついたかのような: 火 がついたかのような 泣 き 声 とともに 불에 데여 놀란 것처럼 울 어대며 火 傷 をして 驚 いたように 激 しく 泣 き(2) 赤 ちゃんの 激 しく 泣 くそのさま を 火 がついたかのように と 表 すことを 理 解 していない ちなみに 日 韓 辞 典 には 載 って いない 3 泣 き 言 を 言 う: 泣 き 言 を 言 った 日 のことを 思 い 出 す 울음을 터뜨렸던 기억이 난다 わっと 泣 き 出 した ことを 思 い 出 す(16) 不 幸 や 不 運 を 嘆 いてくどくどと 話 すことが, 実 際 に 泣 いたことになってしまっている 日 韓 辞 典 には 第 1 義 に 우는 소리( 泣 き 声 ) と 記 述 されており, 辞 書 の 不 備 が 指 摘 される 4 顔 をのぞかせる: 徐 々に 顔 をのぞかせ 始 める 비죽이 튀어나오기 시작했다 ぴょこっと 飛 び 出 し 始 めた(16) わがままな 性 格 が 徐 々に 現 れ 始 めた とすべきところが, 突 然 現 れ 始 めたことになっている 5ため 息 をつく: 分 厚 いステーキを 見 てタメ 息 をついているような 感 覚 두툼한 스테이크를 보며 만족해하는 착각에 빠져 있을 정도 満 足 がっている 錯 覚 に 陥 る 程 度 (79) 非 常 に 分 厚 く 収 録 語 数 も 桁 外 れに 多 い 国 語 辞 典 を 目 にして,その 素 晴 らしさに 惚 れ 込 み 見 とれている 状 態 を 満 足 がっている と 誤 訳 してしまっている 6 根 性 が 据 わっている: 何 より 根 性 が 据 わっているんだ 무엇보다 살아있는 생동감을 그들 로부터 얻는다 何 より 生 動 感 を 彼 らから 得 る(133) ひたむきで 少 々のことには 動 じないという 意 味 が, 生 き 生 きとした 感 覚 と 訳 されている 7 目 を 奪 われる:ボクの 目 は 奪 われた 힘이 쪽 빠져 버렸다 思 わず 力 が 抜 けて し まった(162) あまりの 立 派 さに 見 とれるという 意 味 が 奪 という 漢 字 にひかれたため か, 力 が 奪 われた と 解 釈 されている

10 今 井 洋 子 8 輪 が 広 がる: 一 気 に 友 だちの 輪 が 広 がった 친구들이 그룹으로 만들어져 있을 정도였다 友 だちが グループに 分 けられる 程 度 だった(171) 友 だちが 増 えたことを 表 しては いるものの, 輪 をグループと 解 した 訳 は 誤 りである 9 嫌 気 が 差 す: 活 動 に 嫌 気 が 差 したこと 활동을 하면서 갑자기 회의가 들었다 活 動 しな がら 突 然 懐 疑 が 生 まれた (190) 嫌 気 が 差 す にあたる 싫증이 나다 をそのまま 使 うべきところであるが, 嫌 気 を けんぎ と 読 み 嫌 疑 と 混 同 したおそれがあ る 4. 文 法 の 誤 訳 4.1 主 語 の 取 り 違 え 韓 国 語 は, 前 後 の 文 脈 から 判 断 できる 場 合 は 主 語 を 明 示 しないという 日 本 語 と 同 様 の 特 徴 を 持 つため, 主 語 が 明 示 されていない 文 の 理 解 にさほど 支 障 はないものと 思 われる しかしなが ら, 明 示 非 明 示 にかかわらず, 主 語 を 取 り 違 えた 訳 が 5 例 見 受 けられた 1 事 態 を 把 握 してもらおうと 言 うわけだ 사태를 수습한자는 생각에서였다 事 態 を 収 拾 しよう という 考 えからだった(3) 異 常 があると 知 らされた 我 が 子 との 初 対 面 に 際 し, 母 親 に 心 の 準 備 をしてもらうという 文 脈 が, 周 囲 がその 状 況 を 解 決 することになってい る 2 泣 き 言 を 言 った 日 のことを 母 は 印 象 深 く 覚 えているという 울음을 터뜨렸던 기억이 난다 わっと 泣 き 出 したことを 思 い 出 す (16) 母 の 記 憶 を 自 分 の 記 憶 と 誤 解 している 3 自 分 のことを 王 様 みたい と 言 って,はしゃいでいた 아이들은 왕자님 같다 며 추켜 세워 주기도 했다 子 どもたちは 王 様 みたい と おだててくれ もした(30) 自 分 自 身 がはしゃいでいたことが, 友 だちがおだててくれたことになっている 4 なわとびやろう と 友 達 に 声 をかけるまでになる 친구들이 줄넘기 하자 며 다가왔으니 友 達 がなわとびしようと 近 づいてきた ので(42) 自 分 から 声 をかけたことが 表 さ れていない 5 彼 自 身 が 滑 ってしまわないように 내가 넘어지지 않도록 ボクが 滑 らないように (246) 彼 と 自 分 とを 完 全 に 取 り 違 えている 4.2 文 脈 の 取 り 違 え ここでは 主 語 以 外 の 文 脈 の 取 り 違 えを 取 り 扱 う 一 文 がそれほど 長 文 でもなく,また 難 解 な 語 彙 や 表 現 も 多 くないため, 前 後 関 係 を 正 しく 理 解 した 上 で 一 語 ずつ 丁 寧 に 読 み 進 めていけ ば, 文 脈 の 取 り 違 えは 起 こりにくいと 思 われるものの, 不 正 確 な 訳 や, 度 を 過 ぎた 意 訳,また 思 い 違 いなどによる 誤 訳 が 17 例 も 見 受 けられた 1 赤 ん 坊 ながら 問 題 児 ぶりはすでにこの 頃 から 発 揮 していた 될 성싶은 나무는 떡잎부터 알 아본다고 했던가 栴 檀 は 双 葉 より 芳 しと 言 ったか (12) 夜 泣 きやミルクを 飲 む 量 が

翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 による 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 試 み 日 本 語 教 育 への 提 言 11 少 なく 母 親 を 困 らせたことを 問 題 児 と 称 しているのであって, 何 ゆえいずれ 大 成 する 子 ど もであるとのことわざを 用 いたのか 不 明 である 2どうやらこの 頃 から 変 わっていないらしい 어쩌면 이 무렵부터 싹텄는지도 모른다 どう やらこの 頃 から 芽 生 えた のかもしれない(18) 見 栄 っ 張 りな 性 格 は 今 も 当 時 も 変 わっていないという 意 であるのに,その 頃 に 生 じたと 訳 している 3 自 分 のクラスに 障 害 を 持 った 子 がいれば 예전에는 선생님 반에 장애아가 있을 경우 以 前 は 先 生 のクラスに 障 害 児 がいるときは (26) もしや 障 害 児 がクラスにいたらどの ように 接 するかという 仮 定 条 件 が, 過 去 の 実 際 の 経 験 談 になってしまっている 4 上 り 始 めてすぐ,5 ~ 10 分 間 ぐらい 急 な 斜 面 が 続 く 사늘 오르기 시작한 지 10 분도 안 돼서 급격한 경사면이 나타났다 上 り 始 めて 10 分 もしないうちに 急 な 斜 面 が 現 れた (52) 斜 面 が 現 れる 時 間 も, 継 続 する 時 間 も 誤 解 している 5 淋 しさが 増 してくる 우울증에 빠져들었다 憂 鬱 な 気 分 に 陥 った (60) 完 全 看 護 の 病 院 に 入 院 中, 帰 される 両 親 の 姿 を 見 たときの 寂 しさを 表 しているため, 明 らかに 憂 鬱 さ ではない 6ボクの 世 話 だけでなく, 子 どもの 面 倒 を 見 るのも 得 意 で 워낙 마음이 넗고 심지가 굳어서 何 しろ 心 が 広 く 心 根 がまっすぐなので (71) そのまま 直 訳 すべき 文 をひどく 意 訳 し ているように 思 われる 7 乙 武, 一 体 どうしたんだろう と 思 われただろう 야, 오토, 도대체 무슨 일이야? 라 며 다가와 지분거렸을 것이다 と 近 づいてきて 嫌 がらせをした だろう(127) ラブレターをもらって 顔 が 紅 潮 している 場 面 を 指 しており, 友 人 が 嫌 がらせをする と いうのは 誤 読 も 甚 だしい 8 制 服 の 第 2 ボタン,まだ 持 ってくれているのかな 두 번째 사랑의 여신은 언제쯤 만날 수 있을까. 2 度 目 の 愛 の 女 神 はいつごろ 会 えるだろうか (131) 制 服 の 第 2 ボタンと は, 卒 業 に 際 し, 好 きな 女 の 子 に 思 い 出 になるようにと 渡 すものであり,ここでは 自 分 の ことをまだ 覚 えていてくれるかという 意 である 辞 典 に 記 載 されていないのはもちろん, 自 国 にもない 文 化 であるため 誤 訳 もいたしかたないが, 日 本 語 母 語 話 者 に 尋 ねるなどの 作 業 が 必 要 であろう 9 何 より 根 性 が 据 わっているんだ 무엇보다 살아있는 생동감을 그들로부터 얻는다 何 よ り 生 動 感 を 彼 らから 得 る (133) 根 性 が 据 わる を 誤 訳 しているだけでなく, 客 観 的 に 述 べられた 彼 らの 性 質 特 徴 が 自 分 に 影 響 を 及 ぼしていることになっている 10とてもではないが 私 立 高 校 にかなわない 사립고등학교 가운데 우리를 누를 팀이 없을 정 도였다 私 立 高 校 の 中 でボクらを 押 さえつけるチームはない 程 だった(143) 私 立 高 校 がいかに 強 いかを 表 しているのに, 正 反 対 に 自 分 たちが 強 いことを 示 すことになってい る

12 今 井 洋 子 11 登 場 する 桜 の 木 を,ほとんどひとりで 完 成 させた 벚나무를 떠받차고 있는 역을 혼자서 해 냈다 桜 の 木 を 支 えている 役 を 一 人 でやり 遂 げた(152) 演 劇 大 会 での 大 道 具 である 桜 の 木 を 作 り 上 げたという 意 であって, 桜 の 木 を 支 える 役 柄 ではない 12さすがに 日 本 人 でなくなることには 抵 抗 を 感 じた 일본인은 미국 대통령이 될 수 없다는 걸 알고 상당한 저항감을 느꼈다 日 本 人 は 米 大 統 領 になれないことを 知 ってかなりの 抵 抗 を 覚 えた (162) 米 国 大 統 領 になるためには 米 国 籍 が 必 要 であると 知 り, 日 本 国 籍 を 捨 てることに 抵 抗 を 感 じたのであって, 大 統 領 になれないことに 対 して 感 じたのではな い 13 悔 しさを 通 り 越 して 悲 しい 気 持 ちにすらなった 약이 오르다 못해 속이 부글부글 끓어 올랐다 腹 立 ちのあまり 腸 が 煮 えくり 返 った (174) 模 試 結 果 を 見 て, 自 分 の 実 力 の なさを 思 い 知 ったときの 悔 しさを 通 り 越 した 情 けなさが, 激 しい 怒 り に 変 わってし まっている 14 哲 学 者 のような 難 しいことまでは 考 えなかったが 철학적이고 어려운 문제는 질색이었던 내가 哲 学 的 で 難 しい 問 題 は うんざりしていた ボクが(194) 人 間 はなぜ 生 きて いるのか というようなことまでは 考 えなかったにせよ, 自 分 はどのように 生 きたいと 思 っているのかを 考 えるよい 機 会 になったという 文 脈 が 否 定 的 に 捉 えられている 15メガネの 掛 け 方 外 し 方 に,カッコイイもカッコ 悪 いもないだろう 안경 벗은 내 모습이 이상하지는 안겠지 メガネをはずしたボクの 姿 は 変 じゃないだろう (214) 原 文 を 丁 寧 に 読 んでいないのか, 適 当 な 訳 ですませている 16 いいんだよ 하지만 난 형이 좋아요 でもボクお 兄 ちゃんが いいよ (218) 自 分 の 姿 が 子 どもたちの 好 奇 の 的 となる 中, 一 人 の 子 どもが ぼくらと 変 わりのない 人 な んだ いろんな 人 がいていいんだ という 趣 旨 で 発 した 言 葉 である いい という 語 のもつ 多 義 性 のために 生 じた 誤 訳 であるが, 彼 に 対 する 好 き 嫌 いの 判 断 としての 訳 は 妥 当 ではない 17 お 父 さん,お 母 さん ではなく 父, 母 と 呼 ぶ 아빠, 엄마 라고 부른다 お 父 さん,お 母 さん と 呼 ぶ(249) 元 来, 呼 称 ではない 父 母 を 使 っているところの おもしろさが 表 現 されていない 5.まとめ 以 上, 翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 を 抽 出 し 考 察 を 試 みた その 結 果, 語 彙 に 関 しては, 漢 字 に 惑 わ されないこと,いわゆる 多 義 語 の 意 味 選 択 を 正 確 に 行 うこと, 外 来 語 に 関 する 知 識 を 深 めるこ と, 情 態 副 詞 や 擬 態 語 擬 声 語 の 用 例 を 豊 富 に 示 すこと, 文 化 的 背 景 を 解 説 する 必 要 のある 語 彙 に 注 意 を 払 うことがわかった 特 に 漢 字 語 については, 漢 字 1 字 に 着 目 しその 意 味 を 限 定 的

翻 訳 書 に 現 れた 誤 訳 による 日 韓 対 照 言 語 研 究 の 試 み 日 本 語 教 育 への 提 言 13 に 解 釈 したための 誤 訳 や,1 字 ずつ 分 解, 直 訳 したことによる 誤 りが 目 立 った 韓 国 は 漢 字 圏 に 属 するとはいえ, 日 常 的 に 漢 字 に 触 れることがほとんどない 現 在, 漢 字 にさほど 習 熟 してい るとは 言 い 難 いこともあり, 非 漢 字 圏 学 習 者 とは 異 なる 方 法 での 漢 字 漢 語 指 導 が 必 要 と 思 わ れる 熟 語 に 関 しては,ことわざや 慣 用 句 はもちろんのこと, 通 常 は 国 語 教 育 で 扱 われない 連 語 ま でをも 丁 寧 に 取 り 上 げる 必 要 があることが 明 らかになった また, 文 法 に 関 しては, 主 語 の 明 示 非 明 示 に 関 わらず, 主 語 を 正 しく 把 握 した 上 で, 一 語 ずつ 正 確 に 読 み 進 めることが 文 脈 の 取 り 違 えを 防 ぐことになると 考 えられる さらに, 辞 典 の 記 述 を 充 実 させる,つまり, 取 り 上 げられていない 語 義 を 補 うことはもちろん, 単 なる 語 義 説 明 にとどまらず 豊 富 な 用 例 も 載 せ, 可 能 ならば 文 化 的 な 解 説 のコラムなども 用 意 することが 望 ましいと 思 われる 通 常, 対 照 言 語 研 究 においては, 両 言 語 の 異 同 の 存 在 を 一 般 化 できるだけの 十 分 な 用 例 が 必 要 とされるため, 今 回 のように 1 作 品 の 分 析 だけで 論 じられるものではない しかしながら, 今 回 明 らかになった 結 果 の 一 部 は, 油 谷 (2002)で 用 いられた 毎 日 が 日 曜 日 城 山 三 郎 著, 油 谷 (2003)の 金 閣 寺 三 島 由 紀 夫 著 の 韓 国 語 訳 において 得 られた 考 察 と 共 通 するところが 多 い すなわち, 同 音 異 義 語 の 明 確 な 区 別 ( 本 稿 で 言 うところの 多 義 語 の 意 味 選 択 ), 文 化 的 背 景 を 有 する 語 彙 の 解 説, 通 常 の 国 語 教 育 では 扱 われない 慣 用 句 の 抽 出,および, 豊 富 な 用 例 も 載 せた 辞 書 の 編 纂 の 必 要 性 がそれである 資 料 の 数 がまだ 少 ないため 仮 説 の 域 を 出 ないが, 翻 訳 書 の 誤 訳 に 見 られる 一 定 の 傾 向 を 示 唆 するものと 考 えられるかもしれない なお, 補 足 的 なことであるが, 今 回 の 誤 訳 抽 出 の 結 果, 誤 りの 出 現 する 箇 所 に 偏 りが 見 られ たことを 付 け 加 えておく 原 書 は 262 ページ, 誤 訳 総 数 は 92 であり, 単 純 計 算 すると 誤 訳 出 現 割 合 は 約 3 ページに 1 つとなる ところが,10 ~ 20 ページの 間 に 誤 りが 全 くない 箇 所 があ る 一 方 で,1 ページに 最 大 5 つの 誤 りがあったり, 数 ページにわたって 誤 訳 が 続 いたりするこ ともあった 詳 細 な 分 析 を 行 うに 至 っていないため 推 測 でしかないが,この 偏 りは, 日 本 語 力 に 差 のある 複 数 の 訳 者 の 存 在 の 可 能 性 を 示 しているように 思 われる 今 後 の 翻 訳 書 における 誤 訳 抽 出, 分 析 の 際 には 十 分 に 考 慮 すべき 点 となるであろう 今 後 は,さらに 詳 しい 観 点 からの 分 析 および 考 察 に 加 え, 小 説 や 評 論 など, 他 のジャンルも 検 討 していく 予 定 である 注 1) 用 例 末 にある( ) 内 の 数 字 は, 原 書 のページ 数 をさす 2) に 続 く 文 は 韓 国 語 版 を 日 本 語 に 訳 したもので, 誤 訳 部 分 を で 表 す 参 考 文 献 垣 田 直 巳 (1983) 英 語 の 誤 答 分 析 大 修 館 書 店 金 仁 炫 (2001) 韓 日 語 の 対 照 言 語 学 的 研 究 제이앤씨

14 今 井 洋 子 金 仁 炫 (2004) 韓 日 語 の 対 照 研 究 と 日 本 語 教 育 語 文 学 社 国 立 国 語 研 究 所 (1997) 日 本 語 と 外 国 語 との 対 照 研 究 Ⅸ 日 本 語 と 朝 鮮 語 ( 下 ) くろしお 出 版 国 立 国 語 研 究 所 (2002) 日 本 語 と 外 国 語 との 対 照 研 究 Ⅹ 対 照 研 究 と 日 本 語 教 育 くろしお 出 版 迫 田 久 美 子 (2002) 日 本 語 教 育 に 生 かす 第 二 言 語 習 得 研 究 アルク 田 窪 行 則 (1987) 誤 用 分 析 1-7 日 本 語 学 6-4,5,6,7,8,9,10 明 治 書 院 寺 村 秀 夫 他 編 (1982) 講 座 日 本 語 学 10 外 国 語 との 対 照 Ⅰ 明 治 書 院 深 見 兼 孝 (2006) 日 本 語 と 韓 国 語 縫 部 義 憲 監 修, 多 和 田 眞 一 郎 編 講 座 日 本 語 教 育 学 第 6 巻 言 語 の 体 系 と 構 造 スリーエーネットワーク 松 本 隆 (2008) にほんご café 韓 国 語 から 見 えてくる 日 本 語 ~ 韓 流 日 本 語 鍛 錬 法 ~ スリーエー ネットワーク 森 田 芳 夫 (1983) 韓 国 学 生 의 日 本 語 学 習 에있어서의 誤 用 例 誠 信 女 子 大 学 校 出 版 部 森 田 良 行 (1985) 誤 用 文 の 分 析 と 研 究 日 本 語 学 への 提 言 明 治 書 院 森 山 新 (2000) 認 知 と 第 二 言 語 習 得 도서출판계명 油 谷 幸 利 (2002) 誤 訳 に 基 づく 日 韓 対 照 研 究 言 語 文 化 5-1 同 志 社 大 学 言 語 文 化 学 会 油 谷 幸 利 (2003) 誤 訳 に 基 づく 日 韓 対 照 研 究 < 2 > 言 語 文 化 6-2 同 志 社 大 学 言 語 文 化 学 会 油 谷 幸 利 (2005) 日 韓 対 照 言 語 学 入 門 白 帝 社 吉 川 武 時 (1982) 外 国 人 の 日 本 語 誤 用 分 析 1-6 日 本 語 学 1-11,12;2-1,2,3,4 明 治 書 院 資 料 乙 武 洋 匡 (2001) 五 体 不 満 足 完 全 版 講 談 社 진경빈(2004) 오체 불만족 창해 An attempt to a Japanese-Korean Contrastive Study by the Analysis of the Mistranslation in the Translated Version A proposal to teaching Japanese as a foreign language abstract Yoko IMAI It aims as that this paper serves as an aid of Japanese-Korean contrastive study by extracting the mistranslation which appears there using the Korean translation of Gotai Fumanzoku, and analyzing from a vocabulary, an idiom, and three points of grammar. Since the translator is proficient in Japanese, the mistranslation which appears there will provide the Japanese language education to Koreans with a useful material. Therefore the mistranslation which appeared in the translated version was extracted and consideration was tried. As a result, about the vocabulary, it became clear that it is necessary not being confused by the Chinese character, getting to know better about a foreign word, that an adverbial example is shown abundantly, and to pay attention to the vocabulary which requires explanation of a cultural background. About the idiom it became clear that it is necessary to also take up a collocation carefully not to mention a proverb and an idiomatic phrase. Moreover, it is thought that reading one word at a time correctly when the subject has been correctly grasped about grammar will prevent misunderstanding of the context. Furthermore, it also turned out that it is necessary to enrich description of a Japanese-Korean dictionary that is, and not only mere meaning-of-a-word explanation but abundant examples need to carry it. Keywords : Japanese and Korean, mistranslation, contrastive study, teaching Japanese as a foreign language, Japanese-Korean dictionary