地 元 民 の 誇 りである 稲 毛 の 海 金 子 周 一 1. はじめに 1-1. テーマ 設 定 千 葉 の 海 浜 地 区 の 可 能 性 を 探 るという 目 的 で 私 たちは 稲 毛 海 浜 公 園 に 関 する 調 査 をおこ なってきた インタビューやアンケートをしていく 中 で 私 は 住 民 の 海 浜 地 区 に 対 する 意 識 の 高 さを 実 感 した 海 浜 公 園 近 隣 の 住 民 の 意 見 そして 海 浜 地 区 の 現 状 を 述 べることで 千 葉 の 海 をよりよいものにする 方 法 を 探 りたい 1-2. いなげの 浜 に 対 する 住 民 の 意 識 住 民 の 意 識 を 調 べる 上 で 私 は 稲 毛 の 人 々が 地 元 の 海 へ 愛 着 をもっているのか 誇 りに 思 っているのか そして 浜 に 何 を 求 めているのかということに 興 味 を 持 った そこでアン ケートの 結 果 やインタビューをもとにこれらのことを 考 察 していく 2. アンケート 2-1. 結 果 からわかったこと 調 査 実 習 の 中 で 私 は 実 際 に 何 度 か 海 浜 公 園 に 赴 き その 現 状 をこの 目 で 確 かめてみた そこで 思 ったのは なにか 魅 力 に 欠 けているのではないかということだ 平 日 ということ もあったが 周 辺 施 設 には 人 が 少 なく 砂 浜 も 荒 れており 国 道 からは 木 々に 遮 られ 海 岸 線 も 見 えず 特 に 景 色 が 良 いというわけでもない このような 海 に 人 が 集 まるのだろうかという のが 私 の 率 直 な 感 想 だ しかし アンケート 結 果 からは 私 の 予 想 とは 違 う 住 民 の 意 識 が 明 らかとなった いなげの 浜 を 誇 りに 思 えるかという 質 問 をしたところ 約 30%もの 人 が 誇 れると そして 約 50%もの 人 がどちらかと 言 えば 誇 れるという 回 答 をしたのだ 調 査 対 象 者 の 実 に 8 割 もの 人 がいなげの 浜 をある 程 度 誇 りと 思 っているのである この 点 について 詳 しく 考 察 するため 他 の 問 いとの 関 係 も 調 べてみた まず 誇 りに 思 うか 否 かを 年 代 別 に 見 てみたところ 20~30 代 の 若 い 人 は 除 くと 40 代 か らは 年 を 経 るごとにつれ 誇 りに 思 う 人 の 割 合 が 高 くなっていった( 図 1) また 男 女 差 を 調 べてみたところ 若 干 ではあるが 男 性 の 方 が 誇 りに 思 っている 傾 向 がある( 図 2) 海 浜 公 園 に 行 く 頻 度 が 高 い 人 ほど 浜 を 誇 りに 思 っている 傾 向 があり また 誇 りに 思 っている 人 ほどきれいな 景 観 を 求 めていた( 図 3) 意 外 だったのが 公 共 交 通 機 関 を 求 める 人 はそれほ ど 多 くないということだ 稲 毛 海 浜 公 園 は 駅 から 決 して 近 いわけではなく 交 通 機 関 はバ スということになる しかし 夜 は 本 数 も 少 なくなってしまい 海 浜 公 園 に 行 きやすいとは 言 えないだろう アンケートの 対 象 地 区 が 海 浜 公 園 の 近 くであったため ほとんどの 人 が 91
徒 歩 か 自 転 車 を 利 用 すると 答 えている そのため 主 観 的 に 見 て 交 通 機 関 の 必 要 性 を 感 じ ないためなのかもしれない 公 園 の 管 理 状 況 については 浜 を 誇 れないと 思 っている 人 のほ うの 不 満 度 がより 高 かった 図 1 誇 りに 思 えるか 年 代 図 2 誇 りに 思 えるか 性 別 図 3 誇 りに 思 えるか 景 観 を 求 めるか 92
稲 毛 海 浜 公 園 で 開 催 されるイベントの 参 加 率 との 関 係 も 調 べてみたところ よく 参 加 す ると 答 えた 人 数 は 少 なかったが やはり 参 加 率 が 高 いほど 誇 りに 思 う 人 の 割 合 も 少 しずつ 増 えている ここで 興 味 深 いのが 全 く 参 加 しないと 答 えた 人 イベントを 知 らないと 答 えた 人 でも 誇 れる どちらかといえば 誇 れると 答 えた 割 合 が 7 割 から 9 割 にも 及 ぶとい う 点 だ( 図 4 参 照 ) イベントに 参 加 していないからといって いなげの 浜 を 悪 くは 思 って おらず むしろプラスのイメージを 抱 いているということが 明 らかになった これらにつ いて 次 章 で 考 察 していく 図 4 誇 りに 思 えるか イベントの 参 加 率 2-2. いなげの 浜 を 誇 りに 思 う 人 が 多 いのはなぜか いなげの 浜 に 何 を 望 むかという 質 問 での 住 民 の 答 えは 多 岐 にわたるものだった 今 のま まで 十 分 素 晴 らしいという 人 も 多 数 いれば もっとレジャー 施 設 に 市 は 力 を 入 れるべきだ という 人 もいた 私 が 印 象 に 残 ったのは 多 くの 人 が きれいに 整 備 された 自 然 清 潔 感 あふれる 公 園 に 満 足 しているということだ 以 下 自 由 回 答 より 自 然 豊 かな 海 緑 豊 かな 緑 地 公 園 で 良 い そのままの 姿 を 楽 しむのが 良 い (50 代 男 性 ) きれいな 景 色 だから もっと 人 々に 来 てほしいと 思 います (70 代 女 性 ) 緑 も 多 く 環 境 も 整 備 されていて 現 状 維 持 でいいのではないか (60 代 男 性 ) 本 当 に 今 のまま これ 以 上 変 えないで! (30 代 女 性 ) 今 のままできれいにしてくれればいい (80 代 男 性 ) 静 かで 落 ち 着 いて 散 歩 できるような 公 園 を 市 民 は 求 めている そして 今 の 公 園 のあり 方 に 満 足 している 人 不 満 がある 人 にかかわらず ある 程 度 の 人 々がいなげの 浜 を 誇 りに 思 っている ということは いなげの 浜 の 現 状 が 良 いか 悪 いかは 別 として それが 住 民 の 誇 りとは 直 接 にはつながらないのではないか ここからは 私 の 考 えだが 地 元 だからとい 93
う 愛 着 が この 誇 りというものにつながっているのではないだろうか 図 5 からもわかる ように やはりいなげの 浜 によく 行 く 人 ほど 浜 を 誇 りに 思 っている 行 けば 行 くほど 浜 に 親 しみがわくというのもうなずける しかし 全 く 行 かないと 答 えた 人 でも 6 割 以 上 の 人 が 誇 りに 思 うと 答 えているところにも 気 をつけたい 自 分 たちが 住 む 街 海 を 嫌 いに 思 う 人 などそうそういないと 私 は 思 う たとえ 自 分 の 理 想 とは 遠 く 離 れていたとしても そ の 海 を 大 切 にしよう よりよいものにしていこうという 気 持 ちがあるはずである その 愛 着 心 が 誇 りとなっているのではないか そしてその 愛 着 が 強 ければより 誇 りに 思 えるよう になるのではないだろうか 図 5 誇 りに 思 えるか 行 く 頻 度 3. 住 民 たちの 活 動 3-1. 住 民 の 取 り 組 み アンケートからは 住 民 の 多 くが 稲 毛 の 海 を 誇 りに 思 っていること 海 浜 公 園 に 対 する 様 々な 要 望 意 見 があることがでている ( 川 部 森 の 報 告 参 照 )そういったものが 実 際 に 海 浜 公 園 へ 反 映 されるかといえば 簡 単 にはそうはいかない 行 政 の 管 理 と 市 民 の 望 みがか み 合 わないこともままある そういった 場 合 市 民 たち 自 身 が 海 をよりよくするための 活 動 を 行 わなければならないだろう では 実 際 このような 活 動 は 市 民 に 広 く 認 知 されてい るのだろうか 千 葉 市 の 海 で 活 動 している 市 民 団 体 には 以 下 のようなものがある 人 工 海 浜 を 守 る 海 彦 の 会 幕 張 海 浜 公 園 を 育 てる 会 ちばのたね 検 見 川 浜 ビーチ 連 盟 にこにこ 稲 毛 etc 94
いずれも 環 境 保 全 社 会 教 育 まちづくりのために 活 動 している 団 体 である さて 稲 毛 海 浜 公 園 を 中 心 に 活 動 している NPO 法 人 についてどの 程 度 知 っているかとい う 質 問 をしたところ よく 知 っている またはある 程 度 は 知 っているという 回 答 をした 人 は 全 体 の 約 5%にすぎなかった ( 図 6 参 照 ) 海 浜 公 園 のために 活 動 を 行 っている 団 体 の 存 在 が 市 民 には 浸 透 していないというのが 現 状 だ こういった 活 動 をしている 人 たちの 話 を 聞 くことで 市 民 の 取 り 組 みについて 考 えようと 思 う 図 6 NPO 認 知 度 3-2. インタビュー 概 要 稲 毛 ヨットハーバー 近 くにあるウィンドサーフィンショップ Duck の 店 長 である 岩 下 哲 也 さんは 検 見 川 浜 ビーチ 連 盟 の 代 表 でもある 岩 下 さんに 行 ったインタビューの 概 要 を 述 べたい 県 市 への 不 満 としては 20 年 ほどこの 地 区 で 店 をやってきた 実 感 として 行 政 が 力 を 入 れて 活 動 しているとは 思 えない 地 元 の 人 への 海 に 関 する 事 業 に 関 しての 協 力 要 請 もほ とんどない ならば 自 分 たちから 動 くしかないと 検 見 川 浜 に 関 する 嘆 願 書 などを 出 すな どして 活 動 している 海 浜 の 遊 歩 道 をはさんで 砂 浜 側 は 県 陸 側 は 市 が 管 轄 するという 管 理 制 度 にも 疑 問 があり 目 がとどきやすい 市 が 一 帯 を 管 轄 すべきではないだろうか また 工 場 が 多 いため 水 質 を 良 くするためには 設 備 の 充 実 が 不 可 欠 となってくるので 海 洋 学 識 の ある 人 が 管 理 に 関 わる 必 要 がある 行 政 の 工 事 はコンクリートを 流 すだけというずさんな ものであり 人 工 海 浜 ( 幕 張 検 見 川 稲 毛 )を 作 るだけでいるのはもったいない せっ かく 車 でのアクセスが 良 いというメリットがあるのに 日 曜 以 外 は 駐 車 禁 止 であり それ も 施 設 の 営 業 時 間 内 に 限 られている 気 軽 に 行 けるような 海 にする 必 要 があるのでは 95
もっと 稲 毛 海 浜 はアピールされるべきだろう 駐 車 場 不 足 を 回 避 するためのパーキング メーターの 設 置 千 葉 市 民 に 特 別 料 金 を 設 けるなどの 人 を 呼 び 込 むためのサービスの 展 開 があってもよい また 海 にゴミがたくさん 捨 てられてしまうのは 海 に 慣 れ 親 しむ 機 会 が 少 ないのも 一 因 ではないだろうか もっと 市 民 に 海 を 知 ってもらいそれをきっかけに 環 境 問 題 についても 考 えてもらいたい 神 奈 川 や 東 京 に 比 べ 多 くの 海 に 囲 まれている 千 葉 なのだから 海 の 利 用 の 仕 方 によっては 宝 になる NPO 活 動 マスコミなどが 市 や 県 をうごかすのではないか あるいはこれらの 活 動 でしか 市 や 県 を 動 かせないのかもしれない 以 上 が 概 要 である インタビューをおこなった 感 想 としては 縦 割 り 行 政 の 都 合 の 悪 さ というものを 感 じた 管 理 制 度 がややこしいがために 行 政 が 介 入 しづらくなっているので はないだろうか そして 市 民 と 行 政 に 温 度 差 があるように 受 け 取 れた せっかくこれだ けの 熱 意 をもって 活 動 している 人 たちがいるのに 行 政 の 政 策 がそれに 見 合 っていないの ではないか また 私 は 岩 下 さんから 紹 介 してもらった 子 どもを 風 に 乗 せるプロジェクト を 見 学 しに 行 った このイベントは NPO 法 人 にこにこ 稲 毛 が Duck の 協 力 のもとに 開 催 している ものであり ウィンドサーフィン 海 での 遊 び クリーン 活 動 を 通 して 子 どもたちに 稲 毛 の 海 の 素 晴 らしさを 知 ってもらおう 大 切 にしてもらおうというものだ 行 ってみた 感 想 としては 市 民 に 海 を 大 切 にしてもらうのには このように 海 と 触 れ 合 う 機 会 を 設 けるのが 手 っ 取 り 早 いのではないかと 思 った また 家 族 ぐるみでこのようなイ ベントに 参 加 することで 親 子 の 仲 だけでなく 地 域 の 人 との 仲 も 深 めることにつながる のだなと 感 じた 海 のことをより 多 くの 人 達 に 知 ってもらうことが この 海 をよりよくす ることになるのではないだろうか 4. まとめ 調 査 からは 地 元 の 人 々が 稲 毛 の 海 を 誇 りに 思 っており 大 切 にしていることがわかった しかし 実 際 にこの 海 をよりよいものにしようと 尽 力 する 人 々はまだ 少 ないというのが 現 状 だ 私 なりに この 海 をどうしたらいいのか 考 えてみた まず 市 や 県 はもっと 市 民 や NPO の 声 を 取 り 入 れることによって 海 のある 街 というこ とを 全 面 に 推 しだしていってもらいたい 車 でのアクセスの 良 さを 最 大 限 に 生 かし 地 元 民 だけでなく 少 し 離 れたところの 人 も 呼 び 込 むようにすれば 海 浜 地 区 一 帯 が 賑 やかな ものになるだろう 確 かに 一 部 の 人 の 意 見 では 人 が 少 なく 落 ち 着 けるところが 良 いとい う 意 見 もあったが 私 個 人 の 意 見 としては ただの 近 くにあるきれいな 公 園 ですませてほ しくないのだ いなげの 浜 はあまりに 閉 鎖 的 であるような 気 がする 地 元 の 人 たち 以 外 か 96
らすれば どこか 立 ち 寄 りがたいような 雰 囲 気 を 感 じる 遊 歩 道 沿 いに 木 々があることで 海 沿 いの 道 に 出 てきても 海 岸 線 が 見 えないというのは 大 きなマイナス 要 素 ではないだろう か 海 のある 街 という 印 象 があまりにも 薄 い そのせいで 解 放 感 爽 快 感 が 半 減 されてし まっている 海 岸 沿 いにカフェや 飲 食 店 が 少 ないのももったいない せっかくドライブし やすいような 道 があるのだから 立 ち 寄 る 店 がもっとあってもよい ここからは 極 論 である が あまりに 整 備 された 環 境 というのはかえって 人 が 集 まりづらくなるのではないだろう か 砂 浜 までしっかりとコンクリートの 道 で 固 められており 施 設 はそれぞれに 大 きな 駐 車 場 があり 公 園 と 浜 辺 はきっちりと 区 切 られている これらは 確 かに 良 いことではある のだが 私 からすると 海 との 距 離 感 を 遠 く 感 じさせているように 思 われる ここでいいた いのはつまり もっと 気 軽 に 行 けるような 場 所 にしてもらいたいのだ 海 へ 遊 びに 行 く 人 が 増 えることで 海 のことを 知 る 人 が 増 え 海 を 大 切 にしよう より 良 いものにしようとす る 人 々が 増 える このような 少 しずつの 変 化 がやがては 海 を 変 えていってくれるのではな いだろうか 97