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Transcription:

金 融 資 本 市 場 2013 年 5 月 9 日 全 9 頁 私 募 REIT は 新 たな 投 資 対 象 になりうるのか 私 募 REIT 投 資 ガイドラインの 試 案 金 融 調 査 部 研 究 員 佐 川 あぐり ロンドンリサーチセンター 主 任 研 究 員 菅 野 泰 夫 [ 要 約 ] 近 年 私 募 REIT は 年 金 基 金 や 金 融 機 関 の 間 で 注 目 されており 積 極 的 な 投 資 への 機 運 が 高 まっている この 要 因 として 私 募 REIT は オープンエンド 型 で 投 資 口 の 払 戻 しができるなど 流 動 性 が 確 保 されていること 非 上 場 であるため 価 格 変 動 リスクが 限 定 的 であること などが 挙 げられるだろう 本 稿 では いまだ 商 品 数 が 少 ない 私 募 REIT に 対 して 投 資 判 断 の 基 準 となるガイドラ インの 作 成 を 試 みている ガイドラインでは ファンドの 基 本 的 な 項 目 組 み 入 れ 不 動 産 などを 4 つのカテゴリーに 分 類 し チェックすべき 項 目 を 抽 出 している また 利 益 相 反 やリファイナンスリスク 低 減 の 観 点 からの 対 策 不 動 産 固 有 リスクにおける 把 握 な ども 特 に 重 要 なチェック 項 目 として 挙 げた 私 募 REIT への 注 目 が 高 まっている 要 因 としては 昨 今 の アベノミクス 政 策 による 影 響 もあるだろう 日 銀 の J-REIT( 上 場 REIT) 買 入 れを 通 じた 不 動 産 価 格 の 上 昇 期 待 また 長 期 国 債 利 回 りの 低 下 を 通 じた 銀 行 貸 出 金 利 の 低 下 によるリファイナンスリスク の 低 減 など 現 状 の 日 銀 の 金 融 政 策 の 影 響 により 私 募 REIT においてはより 安 定 した ファンド 運 営 が 実 現 できる 期 待 が 高 まっている 私 募 REIT の 市 場 規 模 はまだ 小 さく 将 来 の 姿 は 不 透 明 と 判 断 する 投 資 家 も 多 い しか し 価 格 変 動 リスク 出 口 リスクを 低 減 した 商 品 であることへの 期 待 感 は 強 く 今 後 は 市 場 が 拡 大 する 可 能 性 もあるだろう 1. 高 まる 私 募 REIT ブーム 近 年 年 金 基 金 や 金 融 機 関 などの 間 では 私 募 REIT(オープンエンド 型 私 募 投 資 法 人 )への 注 目 が 急 速 に 高 まっている 日 本 での 私 募 REIT は 2010 年 11 月 に 第 一 段 となる 野 村 不 動 産 プ ライベート 投 資 法 人 が 誕 生 したのをはじめとして 合 計 6 本 が 組 成 されており 資 産 総 額 は 約 株 式 会 社 大 和 総 研 丸 の 内 オフィス 100-6756 東 京 都 千 代 田 区 丸 の 内 一 丁 目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー このレポートは 投 資 勧 誘 を 意 図 して 提 供 するものではありません このレポートの 掲 載 情 報 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 源 から 作 成 しておりますが その 正 確 性 完 全 性 を 保 証 する ものではありません また 記 載 された 意 見 や 予 測 等 は 作 成 時 点 のものであり 今 後 予 告 なく 変 更 されることがあります 大 和 総 研 の 親 会 社 である 大 和 総 研 ホールディングスと 大 和 証 券 は 大 和 証 券 グループ 本 社 を 親 会 社 とする 大 和 証 券 グループの 会 社 です 内 容 に 関 する 一 切 の 権 利 は 大 和 総 研 にあります 無 断 での 複 製 転 載 転 送 等 はご 遠 慮 ください

2 / 9 3,000 億 円 超 と 推 計 される 上 場 REIT(J-REIT)の 時 価 総 額 ( 約 7 兆 円 1 )と 比 較 すればまだま だ 小 規 模 ではあるが 先 行 して 組 成 されたファンドにおいては 既 に 追 加 募 集 ( 増 資 )が 行 われ ており 資 産 規 模 は 徐 々に 拡 大 しているといえる 2. 私 募 REIT の 商 品 性 ( 特 徴 と 注 意 点 ) 私 募 REIT は 上 場 REIT 同 様 に 投 資 法 人 2 のスキームで 設 計 されているため 基 本 的 なフ ァンドの 構 造 は 同 じといえる また 不 動 産 私 募 ファンドとはスキームが 異 なるものの 共 に 非 上 場 でかつ 私 募 形 式 であり 類 似 する 点 も 多 いといえる( 図 表 1 参 照 ) 一 方 私 募 REIT が 他 のスキームと 異 なる 点 は 非 上 場 で 市 場 での 売 買 はできないが オープンエンド 型 のため 解 約 請 求 による 投 資 口 の 払 戻 しが 認 められている 点 であろう 上 場 REIT と 比 べて 流 動 性 は 劣 るが 期 中 解 約 が 認 められていない 私 募 ファンドと 比 較 すると 一 定 の 流 動 性 が 確 保 されているとも いえる 投 資 口 の 払 戻 しについては 運 用 会 社 の 手 元 流 動 性 資 金 や 必 要 に 応 じて 保 有 不 動 産 を 売 却 するなどの 対 応 が 考 えられる また 上 場 REIT や 私 募 ファンドと 比 較 して 私 募 REIT のレバレッジは 低 めに 設 定 されており 財 務 安 全 性 は 相 対 的 に 高 い 図 表 1 私 募 REIT の 特 徴 上 場 REIT 私 募 REIT 私 募 ファンド 特 定 目 的 会 社 ( 資 産 流 動 化 法 ) 投 信 法 人 投 信 法 人 スキーム 合 同 会 社 ( 会 社 法 ) ( 投 信 法 ) ( 投 信 法 ) ( 根 拠 法 ) 匿 名 組 合 ( 商 法 ) クローズドエンド 型 オープンエンド 型 クローズドエンド 型 上 場 の 有 無 上 場 非 上 場 非 上 場 投 資 期 間 無 期 限 無 期 限 有 期 限 レバレッジ 中 (LTV: 平 均 50% 程 度 ) 低 (LTV:30~40%) 高 (LTV:0~80%) 流 動 性 評 価 額 の 変 動 性 高 市 場 価 格 による 変 動 中 鑑 定 評 価 に 基 づく 時 価 評 価 低 鑑 定 評 価 に 基 づく 時 価 評 価 ( 市 場 で 売 買 可 能 ) ( 毎 日 ) ( 投 資 口 の 払 戻 し 制 約 有 ) ( 年 2 回 程 度 ) ( 原 則 期 中 解 約 できない) ( 年 1~2 回 程 度 ) 情 報 開 示 東 証 による 適 時 開 示 投 信 法 に 基 づき 適 時 開 示 適 宜 情 報 開 示 主 な 投 資 家 機 関 投 資 家 / 個 人 投 資 家 機 関 投 資 家 機 関 投 資 家 ( 特 定 少 数 ) 株 式 市 場 との 相 関 高 低 低 その 他 の 特 徴 最 低 売 買 単 位 が 小 さい 最 低 売 買 単 位 が 大 きい 最 低 売 買 単 位 が 大 きい 情 報 の 透 明 性 が 高 い 情 報 の 透 明 性 が 中 程 度 情 報 の 透 明 性 が 低 い ( 注 )LTV(Loan to Value: 負 債 比 率 )= 有 利 子 負 債 残 高 総 資 産 ( 出 所 ) 各 種 資 料 を 基 に 大 和 総 研 作 成 多 様 なリスクリターン 特 性 に 適 応 する 商 品 組 成 が 可 能 1 東 京 証 券 取 引 所 月 間 REIT(リート)レポート(2013 年 4 月 末 時 点 ) を 参 照 http://www.tse.or.jp/rules/reit/b7gje6000002xx2z-att/b7gje6000003bt3d.pdf 2 投 資 信 託 には 契 約 型 と 会 社 型 があり 日 本 の 公 社 債 投 信 株 式 投 信 は 契 約 型 による 形 式 が 主 流 投 資 法 人 ( 会 社 型 投 資 信 託 )とは 資 産 運 用 を 目 的 として 設 立 される 会 社 のような 形 態 であり 投 資 信 託 及 び 投 資 法 人 に 関 する 法 律 を 根 拠 法 としている

3 / 9 しかし オープンエンド 型 であるがゆえ 投 資 口 の 払 戻 しによって 自 己 資 本 が 減 少 すると 一 時 的 にレバレッジが 高 まることが 懸 念 される 特 に 解 約 請 求 が 集 中 したときには そのリス クがさらに 高 まる 可 能 性 が 高 い これに 対 しては 解 約 請 求 を 受 け 付 けないクローズド 期 間 を 設 ける 一 定 割 合 以 上 の 解 約 は 認 めない など 解 約 に 対 して 制 限 をつけることで 解 約 請 求 の 集 中 を 回 避 する 対 応 策 がとられている つまり 一 定 の 流 動 性 は 確 保 されているものの い つでも 解 約 ができるわけではないという 点 には 注 意 が 必 要 といえる 一 方 で 私 募 REIT の 時 価 は 不 動 産 鑑 定 に 基 づいた 評 価 額 であり 上 場 REIT のように 株 式 市 場 と 連 動 し 価 格 が 大 きく 変 動 することはなく 価 格 推 移 は 相 対 的 に 安 定 しているといえる また 投 信 法 に 準 拠 した 形 での 情 報 開 示 となるので 私 募 ファンドと 比 べ 透 明 性 の 高 い 情 報 に 基 づいた 投 資 が 可 能 といえるだ ろう 3. 私 募 REIT の 投 資 ガイドライン 案 の 作 成 超 低 金 利 下 での 運 用 難 にある 機 関 投 資 家 にとって 現 在 の 私 募 REIT は ある 程 度 の 金 利 収 益 が 期 待 できるプロダクトとしてメリットがあることは 事 実 であろう ただし 私 募 REIT は 組 成 本 数 も 少 なく 現 段 階 では 大 口 の 機 関 投 資 家 以 外 では 慎 重 な 姿 勢 とみられる 日 々の 時 価 変 動 がない 分 運 用 の 中 身 がブラックボックスになるのでないかという 懸 念 も 存 在 する 今 後 機 関 投 資 家 からの 資 金 拠 出 が 増 加 する 条 件 として 私 募 REIT 投 資 にかかる 標 準 的 な 基 準 の 策 定 が 求 められているともいえる そこで 本 稿 では 私 募 REIT の 商 品 性 を 踏 まえた 上 で 投 資 ガイドラインの 作 成 を 試 みることと した 主 な 項 目 としては (1)ファンドの 基 本 的 情 報 (2) 運 用 内 容 (3) 組 み 入 れ 不 動 産 の 概 要 (4)スクリーニングポイント 及 び 投 資 決 定 後 に 定 期 的 にチェックが 必 要 とされる 項 目 の 4 つのカテゴリーに 分 類 した (4)については さらに1 安 全 性 2 収 益 性 3 流 動 性 の 3 つの 観 点 から 分 類 している 目 論 見 書 ないしは 商 品 説 明 書 で 確 認 し 比 較 した 上 で 投 資 適 格 か 否 かを 判 断 する 基 準 とした 以 下 では 主 な 4 つの 項 目 の 概 要 について 解 説 をしている (1) 基 本 的 な 項 目 ~ファンドの 基 本 的 情 報 ~ ここでは 運 用 会 社 の 概 要 や 実 際 に 運 用 している 商 品 の 基 本 的 な 項 目 を 確 認 する 箇 所 となる 中 でもポイントとなるのは 運 用 会 社 のファンド 運 営 能 力 ( 資 金 調 達 力 物 件 調 達 力 物 件 マ ネジメント 能 力 など)を 定 性 的 に 判 断 する 部 分 といえよう さらに ファンド 運 営 能 力 では 運 用 会 社 に 出 資 する 親 会 社 や 大 株 主 といったスポンサー 企 業 の 信 用 力 が 大 きく 影 響 する 運 用 会 社 の 設 立 母 体 資 本 関 係 などを 把 握 し 運 用 資 産 の 規 模 財 務 内 容 等 も 確 認 することが 重 要 と 思 われる 特 に 同 族 グループ 内 で 運 営 を 行 うファンドの 場 合 には 利 害 関 係 者 との 間 で 利 益 相 反 取 引 が 行 われないよう コンプライアンス 体 制 が 敷 かれているかどうかも 確 認 すべき 項 目 といえよう

4 / 9 <チェックポイント> 運 用 会 社 のファンド 運 営 能 力 : 運 用 会 社 の 設 立 母 体 や 資 本 関 係 運 用 資 産 規 模 財 務 内 容 利 益 相 反 チェック 体 制 :ファンド 運 営 に 関 わる 関 係 各 社 の 組 織 図 等 (2) 運 用 内 容 目 標 に 関 する 項 目 ファンドの 運 用 内 容 目 標 については 目 論 見 書 や 商 品 説 明 書 等 に 記 載 されている 内 容 が 実 際 に 守 られているのか また 投 資 家 サイドにおける 運 用 ガイドラインに 沿 うものかどうか という 観 点 が 重 要 な 点 となる 運 用 方 針 や 収 益 源 泉 また 投 資 対 象 となる 不 動 産 の 用 途 や 地 域 における 分 散 状 況 などが コア 投 資 などの 運 用 戦 略 を 前 提 とした 内 容 と 相 違 がないかを 確 認 していく また 運 用 体 制 リスク 管 理 体 制 における 確 認 も 必 要 となる 案 件 ベースのものを 精 査 して 実 際 に 取 得 売 却 等 を 行 うまでの 意 思 決 定 プロセスの 中 で 十 分 な 精 査 が 行 われるような 組 織 体 制 になっている かなどが 具 体 的 に 確 認 すべき 部 分 といえる さらに 外 部 専 門 家 との 連 携 体 制 や 内 部 管 理 体 制 利 益 相 反 対 策 ルールについて 貧 弱 な 内 容 となっていないか など リスク 管 理 上 の 観 点 から 確 認 すべきポイントとなる <チェックポイント> 運 用 戦 略 : 運 用 方 針 収 益 源 泉 投 資 対 象 が 内 容 に 沿 うものかどうか 運 用 体 制 リスク 管 理 体 制 :ファンド 運 営 に 関 わる 関 係 各 社 の 関 連 性 を 概 念 図 等 で 確 認 し 意 思 決 定 プロセス 外 部 専 門 家 との 連 携 体 制 コンプライアンス 体 制 の 確 認 (3) 組 み 入 れ 不 動 産 に 関 する 項 目 ここでは 組 み 入 れ 不 動 産 の 概 要 について 詳 しくチェックすべき 項 目 を 挙 げている ファンドの 主 なキャッシュフローの 源 泉 は 物 件 から 得 られる 賃 貸 料 収 入 である 各 物 件 の 基 本 項 目 ( 所 有 形 態 賃 貸 可 能 面 積 不 動 産 鑑 定 に 基 づく 評 価 額 簿 価 )のほか 物 件 の 質 ( 築 年 数 や 立 地 建 物 の 質 など)や テナント 状 況 ( 賃 貸 契 約 期 間 テナント 数 テナント 業 種 の 分 散 状 況 信 用 力 など)について 十 分 に 確 認 し 安 定 的 な 賃 貸 料 収 入 が 期 待 できるかどうかを 評 価 する 必 要 がある 稼 働 状 況 においても 高 い 水 準 を 維 持 できているか 空 室 が 出 た 場 合 のリ ーシング 活 動 における 取 り 組 みはどうかなどの 点 についても 収 益 性 の 観 点 から 評 価 の 対 象 と なろう また 不 動 産 固 有 のリスクとして 地 震 や 津 波 といった 自 然 災 害 による 被 害 も 考 えら

5 / 9 れる 新 耐 震 基 準 を 満 たしているか PML 3 値 の 水 準 は 低 いか また 地 盤 の 液 状 化 土 壌 汚 染 と いった 土 地 の 個 別 的 要 因 における 対 策 についても 可 能 な 限 り 詳 細 な 確 認 が 望 ましいといえる <チェックポイント> 安 定 した 賃 貸 料 収 入 : 各 物 件 の 基 本 項 目 物 件 の 質 テナント 状 況 稼 働 率 不 動 産 固 有 のリスクの 把 握 : 新 耐 震 基 準 を 満 たしているか PML 値 地 盤 の 液 状 化 土 壌 汚 染 における 対 策 についての 確 認 (4)スクリーニングポイント 及 び 投 資 決 定 後 に 定 期 的 にチェックが 必 要 とされる 項 目 1 安 全 性 私 募 REIT が 継 続 的 な 成 長 を 続 けるためには レバレッジをコントロールしながら 資 金 調 達 を 行 っていくことが 財 務 戦 略 上 で 最 も 重 要 となる 一 般 的 にレバレッジの 評 価 には 簿 価 ベース LTV 4 ( 下 記 (A))が 代 表 的 な 指 標 として 利 用 されているが 例 えば 格 付 投 資 情 報 センター(R&I) では より 実 態 に 近 いレバレッジ 水 準 を 確 認 するためには 加 えて 時 価 ベース LTV( 下 記 (B)) 敷 金 保 証 金 考 慮 後 LTV( 下 記 (C)) の 3 つの 指 標 を 利 用 して 評 価 することを 推 奨 している 5 本 投 資 ガイドラインにおいても 同 様 に 3 つの LTV で 評 価 することを 有 効 としている (A) 簿 価 ベース LTV= 有 利 子 負 債 残 高 / 総 資 産 < 簿 価 > (B) 時 価 ベース LTV= 有 利 子 負 債 残 高 / 総 資 産 < 時 価 > (C) 敷 金 保 証 金 考 慮 後 LTV=( 有 利 子 負 債 残 高 + 敷 金 相 当 額 )/ 総 資 産 また 借 入 状 況 ( 借 入 先 金 融 機 関 借 入 金 額 期 間 適 用 金 利 等 )については 詳 細 な 確 認 が 必 要 であるといえる 私 募 REIT は 中 長 期 での 安 定 運 用 を 目 的 としており 将 来 の 金 利 上 昇 リ スク 低 減 の 観 点 からも 長 期 固 定 金 利 での 借 入 による 資 金 調 達 が 望 ましい また リファイナ ンスリスク 低 減 の 観 点 から 返 済 期 日 の 分 散 や 機 動 的 な 資 金 調 達 を 目 的 とした 短 期 借 入 の 状 況 加 えて コミットメントラインの 活 用 についても 必 ず 確 認 したい 項 目 といえよう その 際 運 用 会 社 やスポンサー 企 業 の 信 用 力 によっては 有 利 な 条 件 での 借 入 が 可 能 となるため リファイナンスリスク 低 減 の 効 果 が 高 まることについても 認 識 しておくべきだろう 長 期 固 定 金 利 での 借 り 入 れ 比 率 を 示 す 長 期 固 定 金 利 比 率 6 借 入 金 返 済 の 余 裕 度 を 示 す DSCR 7 等 を 参 考 指 3 PML(Probable Maximum Loss)とは 地 震 による 被 害 を 予 想 する 指 標 である 475 年 に 一 度 の 周 期 で 起 こると 予 想 される 最 大 規 模 の 地 震 による 建 物 の 損 害 額 が 当 該 建 物 の 再 調 達 価 格 に 対 してどの 程 度 になるかを 示 す 数 値 である 数 値 が 低 いと 地 震 が 起 きたときのリスクが 低 いと 考 えられる 4 2 ページ 図 表 1( 注 )を 参 照 5 格 付 投 資 情 報 センター(2012)を 参 照 6 長 期 固 定 金 利 比 率 = 長 期 固 定 金 利 の 有 利 子 負 債 残 高 有 利 子 負 債 総 額 7 DSCR=( 減 価 償 却 費 + 支 払 利 息 + 当 期 利 益 ) 支 払 利 息

6 / 9 標 とし 評 価 することができるだろう ( 優 先 劣 後 の 別 金 利 スワップ キャップなどの 項 目 についても 可 能 な 限 り 確 認 する ) 2 収 益 性 収 益 性 については 必 要 経 費 を 意 識 した 上 で それを 上 回 るキャッシュフロー 水 準 を 確 保 し ていることが 重 要 な 評 価 基 準 といえる 収 益 性 を 判 断 する 指 標 としては 営 業 純 収 益 (NOI 8 ) 利 回 り インタレストカバレッジレシオ 9 などが 重 視 される 経 費 については 賃 貸 事 業 費 用 を 除 いたベースでみると 支 払 利 息 と 資 産 運 用 報 酬 が 7~8 割 を 占 めるファンドが 多 いようだ 金 利 動 向 による 支 払 利 息 の 増 加 についてはコントロールが 難 しいと 思 われるが 資 産 運 用 報 酬 につ いては 各 ファンドによって 報 酬 体 系 が 異 なるため 総 資 産 残 高 に 対 する 比 率 の 比 較 が 一 つの 評 価 基 準 となりうるであろう また 物 件 取 得 価 格 の 妥 当 性 については 不 動 産 鑑 定 評 価 額 との 比 較 だけでは 不 十 分 と 思 わ れる 不 動 産 価 格 は NOI( 建 物 修 繕 のための 費 用 である 資 本 的 支 出 10 (CAPEX)を 控 除 した 純 収 益 を 利 用 するケースもある)とキャップレート 11 から 算 出 されるため 不 動 産 証 券 化 協 会 (ARES) が 提 供 する ARES Japan Property Index から 算 出 されるインカムリターンや 不 動 産 証 券 化 協 会 (2012)で 定 期 的 に 発 表 されるキャップレートなどを 使 い 各 ファンド 内 での 運 用 資 産 のキ ャップレート 水 準 との 乖 離 を 評 価 する 方 法 が 有 効 といえるだろう 3 流 動 性 前 述 のように オープンエンド 型 の 私 募 REIT においては 大 量 の 解 約 請 求 が 集 中 した 場 合 に は 流 動 性 リスクが 顕 在 化 する 恐 れがある さらに 税 務 上 の 導 管 性 12 を 喪 失 する 場 合 や コベ ナンツ 13 抵 触 時 には 払 戻 しを 停 止 するケースもある 投 資 口 の 払 戻 しにおける 具 体 的 方 法 や 条 件 等 についての 詳 細 また 払 戻 しにかかるスケジュールについても 詳 細 な 確 認 が 望 ましいと いえる また リファイナンスリスクの 低 減 という 観 点 から 手 元 流 動 性 ( 現 預 金 コミット メントラインなど)の 確 保 などはさることながら 換 金 性 の 高 い 物 件 を 保 有 しているなど 有 効 な 流 動 性 対 策 がとられているかどうかも 確 認 すべきであろう 8 NOI(Net Operating Income)= 賃 貸 事 業 収 入 - 賃 貸 事 業 費 用 + 減 価 償 却 費 NOI 利 回 り=NOI 物 件 取 得 価 格 9 インタレストカバレッジレシオ=EBITDA( 営 業 利 益 + 減 価 償 却 費 ) 支 払 利 息 10 単 なる 不 動 産 を 維 持 するための 修 繕 費 用 ではなく 不 動 産 の 価 値 や 耐 久 年 数 を 延 ばすための 経 費 を 意 味 する 通 常 の 修 繕 費 が 費 用 扱 いされるのに 対 して CAPEX は 資 産 計 上 され 減 価 償 却 の 対 象 となる 11 キャップレート(Capitalization Rate の 略 )は 還 元 利 回 りとも 呼 ばれている 不 動 産 価 格 は NOI とキャ ップレートを 算 定 して 求 められるのが 一 般 的 である 12 導 管 性 とは 不 動 産 の 証 券 化 をする SPC( 特 別 目 的 会 社 )や 投 資 法 人 において 賃 貸 料 収 入 などの 所 得 に 法 人 税 が 課 税 されないようにするための 税 務 上 の 基 準 である 投 資 家 への 二 重 課 税 を 防 ぐための 措 置 であり 投 資 法 人 では 配 当 可 能 利 益 の 90% 超 を 分 配 するという 導 管 性 要 件 を 満 たす 必 要 がある 13 コベナンツとは 債 権 者 と 債 務 者 の 間 で 結 ばれる 一 定 の 特 約 条 項 銀 行 融 資 や 社 債 において 債 権 者 側 に 不 利 益 が 生 じた 場 合 に 契 約 の 解 除 や 条 件 変 更 などができるよう 契 約 書 等 の 書 面 上 に 記 載 されている 約 束 事 項 である

7 / 9 5.まとめにかえて 一 般 財 団 法 人 日 本 不 動 産 研 究 所 の 不 動 産 投 資 家 調 査 によれば (J-REIT 市 場 が 誕 生 した) 2001 年 から 2007 年 までのキャップレート 水 準 は 一 貫 して 低 下 傾 向 にあった その 後 2008 年 のリーマン ショック 等 の 影 響 によって 反 転 し 上 昇 したが 2010 年 10 月 の 日 銀 による 資 産 買 入 等 の 基 金 14 の 導 入 以 降 は 横 ばいからやや 低 下 傾 向 にあるようだ 15 現 在 私 募 REIT の 注 目 が 高 まっている 要 因 として 昨 今 の アベノミクス 政 策 による 影 響 もあるといわれており 私 募 REIT が 適 切 な 投 資 対 象 として 判 断 できる 側 面 もあるとみられる 2013 年 4 月 の 日 銀 金 融 政 策 決 定 会 合 では J-REIT( 上 場 REIT)の 買 入 れについて 年 間 約 300 億 円 に 相 当 するペースで 増 加 するように 買 入 れを 行 うことが 決 定 された 異 次 元 緩 和 政 策 によ り 不 動 産 価 格 の 上 昇 期 待 が 呼 び 込 まれているといえよう さらに 金 融 緩 和 のもう 一 つの 狙 いである 長 期 金 利 の 低 下 を 促 すことは 私 募 REIT にとって 追 い 風 となる 面 もあるだろう 長 期 金 利 の 低 下 を 通 じて 銀 行 の 貸 出 金 利 が 低 水 準 で 推 移 すると レバレッジが 掛 かる 不 動 産 ファン ド 全 体 においてリファイナンスリスクが 低 減 される レバレッジ 水 準 が 高 い 上 場 REIT ほどでは ないが 私 募 REIT にとってもリスクが 抑 制 され より 安 定 したファンド 運 営 の 実 現 が 期 待 でき る 私 募 REIT は 中 長 期 での 安 定 運 用 を 目 的 とした 商 品 であるが 市 場 規 模 はまだ 小 さく 将 来 の 姿 は 不 透 明 と 判 断 する 投 資 家 も 多 い しかしながら 従 来 他 の 不 動 産 プロダクトで 課 題 と されていた 価 格 変 動 リスク 出 口 リスクを 低 減 した 商 品 であることへの 評 価 は 高 く 今 後 は 市 場 が 拡 大 する 可 能 性 もある 次 ページに 私 募 REIT の 投 資 の 際 に 参 考 とすべきガイドライン の 試 案 を 示 しているが 今 後 の 市 場 動 向 を 予 想 する 上 でも 当 該 ガイドラインで 提 示 した 項 目 の 評 価 は 有 効 といえるだろう 14 中 央 銀 行 としては 異 例 のリスク 性 資 産 買 入 れの 狙 いは リスク プレミアムの 縮 小 である ここで 不 動 産 市 場 におけるリスク プレミアムを 内 部 収 益 率 -10 年 物 国 債 利 回 り(リスクフリーレート) とし キャッ プレートを 内 部 収 益 率 - 成 長 率 とすると リスク プレミアムはキャップレートと 類 似 の 関 係 といえる 15 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー 株 式 会 社 ビジネスキーワード 2013.04.18 不 動 産 キ ャップレート 参 照 http://www.tohmatsu.com/view/ja_jp/jp/knowledge/fa/51f92bbcf4b1e310vgnvcm3000003456f70arcrd.html

8 / 9 図 表 2 私 募 REIT の 投 資 ガイドライン 試 案 項 目 内 容 カテゴリー コア バリューアッド オポチュニティ 等 の 投 資 戦 略 ファンド 名 目 論 見 書 に 記 載 の 名 称 を 正 式 名 称 とする 総 資 産 規 模 発 行 時 の 総 資 産 総 額 ( 発 行 見 込 み 額 でも 可 ) さらに 可 能 であれば 中 長 期 目 標 額 も 確 認 運 用 会 社 の 概 要 基 本 項 目 運 用 会 社 名 実 質 的 に 運 用 を 主 導 する 会 社 の 正 式 名 称 設 立 母 体 独 立 系 の 場 合 沿 革 を 確 認 ( 十 分 な 業 歴 はあるか) 本 店 支 店 複 数 個 所 ある 場 合 は 全 て 確 認 運 用 資 産 規 模 運 用 会 社 ( 全 体 )の 運 用 資 産 規 模 販 売 会 社 名 海 外 金 融 機 関 の 場 合 販 売 拠 点 が 日 本 国 内 にあるかどうかも 確 認 監 査 法 人 名 聞 き 慣 れない 会 社 の 場 合 には 概 要 を 確 認 関 係 者 の 不 正 行 為 等 のチェック 体 制 利 害 関 係 人 及 び 主 要 株 主 等 との 取 引 状 況 利 益 相 反 に 対 するチェック 体 制 を 確 認 運 用 開 始 時 期 ファンド 組 成 時 期 等 を 確 認 運 用 方 針 運 用 哲 学 運 用 戦 略 を 前 提 とした 内 容 と 相 違 がないかを 確 認 収 益 の 源 泉 運 用 戦 略 を 前 提 とした 内 容 と 相 違 がないかを 確 認 投 資 対 象 運 用 内 容 目 標 (1) 資 産 別 比 率 オフィス 住 宅 などの 用 途 別 さらに 細 かい 分 類 別 ( 物 件 別 )の 資 産 比 率 実 質 目 標 (2) 地 域 地 域 別 ( 都 道 府 県 別 東 京 大 阪 などの 都 市 圏 と 地 方 別 )の 資 産 比 率 実 質 目 標 運 用 体 制 リスク 管 理 体 制 ファンド 運 営 に 関 わる 関 係 各 社 の 関 連 性 を 概 念 図 等 で 確 認 し 不 動 産 の 取 得 や 売 却 時 の 意 思 決 定 プロセス 外 部 専 門 家 との 連 携 体 制 コンプライアンス 体 制 ( 内 部 管 理 利 益 相 反 対 策 ルールなど)の 確 認 投 資 家 情 報 属 性 投 資 家 数 主 要 投 資 家 の 投 資 額 などを 確 認 目 標 リターン( 年 率 ) 目 論 見 書 等 に 明 確 に 定 められているか 運 用 会 社 の 考 え 方 や 複 数 リターン 値 についても 詳 細 を 確 認 投 資 口 の 払 戻 し 方 法 具 体 的 な 手 段 条 件 ( 払 戻 し 制 限 解 約 手 数 料 等 ) スケジュール 等 についての 詳 細 な 明 記 レバレッジを 考 慮 した 上 での 収 益 性 レバレッジ 水 準 を 考 慮 に 入 れた 上 での 他 ファンドとの 収 益 性 や 上 位 デットのコスト(スプ レッド)の 妥 当 性 について 検 証 する 組 み 入 れ 不 動 産 物 件 の 質 築 年 数 立 地 建 物 の 質 について 確 認 修 繕 費 増 加 の 可 能 性 について 検 証 テナント 状 況 賃 貸 契 約 期 間 テナント 数 テナント 業 種 の 分 散 状 況 信 用 力 など 稼 働 状 況 稼 働 率 と 稼 働 率 向 上 に 向 けた 対 策 等 について 検 証 耐 震 基 準 PML 値 新 耐 震 基 準 を 満 たしているかどうか PML 値 については 物 件 単 位 またはポートフォリ オ 単 位 で20% 以 下 を 基 準 とする 土 地 の 個 別 的 要 因 地 盤 の 液 状 化 土 壌 汚 染 についての 対 策 について 確 認 安 全 性 ス ク リー ニ ン グ 項 目 収 益 性 流 動 性 リスク 管 理 上 の 制 約 事 項 LTV 水 準 借 入 状 況 地 域 ジャンル 個 別 物 件 等 の 投 資 制 約 並 びに 運 用 スタイル 出 口 戦 略 売 却 ルールが 商 品 内 容 説 明 書 ガイドライン 等 に 明 確 に 定 められ 現 時 点 において 守 られているか 複 数 のLTV( 時 価 ベース 簿 価 ベース 敷 金 補 償 金 考 慮 後 ベース)から レバレッジ 水 準 を 評 価 借 入 先 金 融 機 関 借 入 金 額 期 間 適 用 金 利 コミットメントラインの 活 用 長 期 固 定 金 利 比 率 DSCR 等 について 確 認 組 入 不 動 産 の 収 益 性 NOI 利 回 り インタレストカバレッジレシオ 等 を 確 認 物 件 取 得 価 格 の 妥 当 性 不 動 産 鑑 定 評 価 額 との 比 較 不 動 産 インデックス 等 から 算 出 されるキャップレートを 使 っ て 運 用 資 産 のキャップレート 水 準 を 比 較 投 資 法 人 の 格 付 ( 調 達 コスト) 外 部 格 付 会 社 による 投 資 法 人 の 発 行 体 格 付 について 確 認 運 用 会 社 へ 支 払 う 報 酬 総 資 産 残 高 に 占 める 資 産 管 理 報 酬 の 割 合 を 比 較 投 資 口 の 換 金 方 法 具 体 的 な 換 金 方 法 について 確 認 主 な 払 戻 し 条 件 払 戻 しにかかる 条 件 ( 払 戻 し 制 限 解 約 手 数 料 等 ) スケジュール 等 について 確 認 ( 出 所 ) 一 般 社 団 法 人 不 動 産 証 券 化 協 会 (ARES) ARES 私 募 不 動 産 ファンドガイドライン 等 を 参 考 に 大 和 総 研 作 成

9 / 9 参 考 文 献 一 般 財 団 法 人 不 動 産 証 券 化 協 会 (2012) 不 動 産 投 資 短 期 観 測 調 査 第 15 回 調 査 結 果 の 概 要 2012 年 12 月 格 付 投 資 情 報 センター(2012) 私 募 REIT の 格 付 方 法 2012 年 9 月 25 日 格 付 投 資 情 報 センター(2010) J-REIT の 格 付 方 法 2010 年 8 月 24 日 三 菱 UFJ 信 託 銀 行 不 動 産 コンサルティング 部 (2008) 不 動 産 マーケットはこうなる 日 経 BP 社