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Microsoft Word - 目次.doc

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

18 国立高等専門学校機構

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

Microsoft PowerPoint - エントリー04_結婚TextVoice

スライド 1

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

(\202g22\214\366\225\\.xls)

公表表紙

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定款

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

スライド 1

Microsoft Word - A04◆/P doc

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

●幼児教育振興法案

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

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Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

答申第585号

公営住宅法施行令の一部を改正する政令―公営住宅法施行令例規整備*

 

2 前 項 前 段 の 規 定 にかかわらず 年 俸 制 教 職 員 から 申 し 出 があった 場 合 においては 労 使 協 定 に 基 づき その 者 に 対 する 給 与 の 全 額 又 は 一 部 を 年 俸 制 教 職 員 が 希 望 する 金 融 機 関 等 の 本 人 名 義 の 口

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 243,7 2 級 185,8 37,8 3 級 4 級 222,9 354,7 ( 注 )

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

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財政再計算結果_色変更.indd

私 達 が 調 査 手 法 を 研 究 した 背 景 リクルートワークス 研 究 所 ワーキングパーソン 調 査 (2000 年 ~ 隔 年 実 施 ) 首 都 圏 在 住 の18~59 歳 で 働 く 個 人 6,500 人 ( )を 対 象 に 就 業 実 態 意 識 を 調 査 調 査 実 施

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

主要生活道路について

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

1 総括

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

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類 ( 番 号 を 記 載 ) 施 設 名 事 所 名 所 在 事 開 始 年 月 日 事 規 模 ( 定 員 ) 公 益 事 必 要 な 者 に 対 し 相 談 情 報 提 供 助 言 行 政 や 福 祉 保 健 医 療 サービス 事 者 等 との 連 絡 調 整 を 行 う 等 の 事 必 要

技 能 労 務 職 平 均 年 齢 歳,7 平 均 給 料 月 額 歳 7,,8, 歳,9,57, 7,7 7,9 9,5 - (8,85) (5,) 類 似 団 体 5. 歳 9,8 9, 85, ( 注 ) 平 均 給 料 月 額 とは 平 成 5 年 月 日 現 在 における

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

調査結果の概要

平成16年度

( 教 育 職 員 免 許 状 の 取 得 ) 第 9 条 教 育 職 員 免 許 状 ( 幼 稚 園 教 諭 二 種 免 許 状 )を 取 得 しようとする 者 は 教 育 職 員 免 許 法 に 基 づき 別 表 2に 掲 げる を 修 得 しなければならない 2 教 育 職 員 免 許 状 の

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

Microsoft Word - 公表資料(H22).doc

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Microsoft Word - A6001A.doc

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(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

130117_『高齢社会をむかえた東京23区の将来 人口と建物の関係から見て

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事 業 概 要 利 用 時 間 休 館 日 使 用 方 法 使 用 料 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 や 課 題 < 松 山 駅 前 駐 輪 場 > JR 松 山 駅 を 利 用 する 人 の 自 転 車 原 付 を 収 容 する 施 設 として 設 置 され 有 料 駐 輪 場 の 利 用

平成22年12月27日

m07 北見工業大学 様式①

Microsoft PowerPoint - 390

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

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Q5 育 児 休 業 を 請 求 する 際 の 事 務 手 続 は? A5 育 児 休 業 を 請 求 しようとする 職 員 は, 育 児 休 業 承 認 請 求 書 ( 様 式 第 1 号 )に 子 の 氏 名 や 請 求 する 期 間 等 を 記 入 し, 育 児 休 業 を 始 めようとする1

答申書

第4回税制調査会 総4-1

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< 調 査 結 果 > 住 宅 購 入 資 金 を 平 均 贈 与 額 564 万 円 親 子 が 同 じ 居 住 地 域 だと 贈 与 額 増 える 傾 向 Q. お 子 様 が 住 宅 購 入 の 際 に あなたが 贈 与 した 購 入 資 金 の 金 額 を 教 えてください ( 対 象 :

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

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PowerPoint プレゼンテーション

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

発 表 の 流 れ 1 事 業 概 要 2 評 価 票 の 記 載 内 容 について 3 指 標 について 4 事 業 内 容 について 5 提 案 のまとめ 2

(3) 善 通 寺 市 の 状 況 善 通 寺 市 においては 固 定 資 産 税 の 納 期 前 前 納 に 対 する 報 奨 金 について 善 通 寺 市 税 条 例 の 規 定 ( 交 付 率 :0.1% 限 度 額 :2 万 円 )に 基 づき 交 付 を 行 っています 参 考 善 通 寺

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 分 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

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スライド 1

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目 次 都 市 づくりの 全 体 構 想 偏 1. 都 市 づくりの 理 念 と 目 標 1 1. 都 市 づくりの 理 念 と 将 来 像 1 2. 都 市 づくりの 目 標 とテーマ 2 3. 計 画 期 間 3 4. 将 来 人 口 フレーム 3 2. 将 来 都 市 構 造 4 1. 将 来

Microsoft Word - 2章.doc

別紙3

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類 ( 番 号 を 記 載 ) 施 設 名 事 所 名 所 在 事 開 始 年 月 日 事 規 模 ( 定 員 ) 公 益 事 1 必 要 な 者 に 対 し 相 談 情 報 提 供 助 言 行 政 や 福 祉 保 健 医 療 サービス 事 者 等 との 連 絡 調 整 を 行 う 等 の 事 必

(Microsoft Word - \213\213\227^\201E\222\350\210\365\212\307\227\235\214\366\225\\\201iH \)\201iHP\227p\201j.doc)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) (H25.4.1) (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.7.1) (H25.4.1) (H25.7.1)

(1) 団 体 への 問 い 合 わせ 件 数 平 成 20 年 8 月 から 平 成 20 年 11 月 までの 間 に 団 体 への 所 謂 家 出 行 方 不 明 者 に 関 する 捜 索 支 援 への 問 い 合 わせ 総 数 は 26 件 であり 月 平 均 :6.5 人 である 8 月

Transcription:

提 出 日 : 平 成 24 年 1 月 17 日 高 齢 助 産 師 における 人 生 に 影 響 を 与 えた 人 物 の 個 人 回 想 効 果 The effect of individual life review about important person in elderly midwives 臨 床 心 理 学 研 究 科 臨 床 心 理 学 専 攻 1000-100714 土 居 照 代 指 導 教 員 長 田 由 紀 子 教 授 問 題 と 目 的 年 を 重 ね, 命 に 限 りがあることを 意 識 するようになると, 人 は 過 去 に 思 いをめぐらせ 自 分 の 人 生 をふり 返 ることが 多 くなると 言 われている 従 来, 高 齢 者 の 過 去 への 回 想 は, 老 いの 繰 り 言 や 現 実 からの 逃 避 などと 否 定 的 な 心 理 過 程 として 捉 えられがちであ ったが,アメリカの 精 神 科 医 バトラー(Butler,R.N.,1963)が, 回 想 は 死 が 近 づいてく ることにより 誰 にでも 生 じる 自 然 な 行 為 で, 過 去 の 未 解 決 の 課 題 をとらえ 直 し 再 統 合 に 導 く 積 極 的 な 役 割 をもつと 提 唱 して 以 来, 肯 定 的 な 側 面 が 注 目 されるようになった その 後, 回 想 法 は, 欧 米 を 中 心 に 広 がり 臨 床 実 践 や 研 究 が 進 められ, 我 が 国 でも 高 齢 者 に 関 わる 医 療 福 祉 介 護 心 理 等 の 様 々な 分 野 で 取 り 入 れられている これまでの 回 想 研 究 のテーマはライフイベントに 関 するものが 多 く( 津 田,2007; 野 村, 1998;Wong&Watt,1991), 人 物 をテーマにしたものはみあたらない しかし, 人 は 一 生 の 間 に 多 くの 人 物 と 出 会 い,さまざまな 影 響 を 受 ける したがって, 過 去 の 出 来 事 だけ でなく, 過 去 に 出 会 った 人 物 に 焦 点 をしぼった 回 想 についての 研 究 が 必 要 であると 考 えた 一 方, 研 究 対 象 者 は,これまでの 多 くは 在 宅 高 齢 者, 施 設 居 住 高 齢 者,デイサービス 利 用 者, 認 知 症 やうつ 病 を 有 する 高 齢 者, 終 末 期 ケアにある 高 齢 者 などであった( 野 村,2001) 特 定 の 職 業 に 就 いていた 高 齢 者 の 研 究 としては, 地 域 在 住 の 退 役 軍 人 (25 名 : 平 均 年 齢 85 歳 )を 対 象 にしたもの(McMahon,A.W. & Rhudick,P.J.,1964)があるが, 他 には みあたらなかった 本 研 究 では, 女 性 の 専 門 職 である 助 産 師 の 話 を 聞 く 機 会 を 得 た 際, 命 をこの 世 に 送 り 出 すことを 仕 事 とし 職 業 婦 人 としての 先 駆 者 でもある 助 産 師 が 年 を 重 ねた 時, 誰 をどのよう に 思 い 出 すのであろうかということを 考 えた これまでの 研 究 では, 助 産 師 の 活 動 史 ( 灘, 2011)やその 役 割 の 研 究 ( 小 林,2008),また, 助 産 師 自 身 の 仕 事 意 欲 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 ( 北 川,2011)や 助 産 師 教 育 における 課 題 の 研 究 ( 中 本 ら,2009) 等 がある しかし,

助 産 師 自 身 が 影 響 を 受 けた 人 物 について 語 る 回 想 研 究 はなされていない そこで, 本 研 究 では, 高 齢 助 産 師 を 対 象 に 人 生 に 影 響 を 与 えた 人 物 をテーマにした 個 人 回 想 法 を 実 施 し,その 回 想 内 容 を 質 的 に 分 析 するとともに, 回 想 前 後 の 心 理 的 変 化 も 合 わせて 検 討 することを 目 的 とした 回 想 内 容 の 分 析 と 心 理 的 効 果 を 合 わせて 検 証 するこ とは, 高 齢 化 社 会 を 迎 えた 現 代 において, 臨 床 現 場 だけでなく, 高 齢 者 がより 健 康 で 快 適 な 日 常 生 活 を 送 るために 地 域 社 会 の 中 でも 役 に 立 つ 意 義 ある 研 究 であると 考 える 方 法 65 歳 以 上 の 高 齢 助 産 師 11 名 ( 平 均 年 齢 76.9 歳, 標 準 偏 差 9.0 歳 )を 対 象 に 個 人 回 想 法 の 面 接 調 査 と 回 想 前 後 の 心 理 変 化 を 測 る 質 問 紙 調 査 を 実 施 した 期 間 は,2011 年 5 月 から 7 月 で, 基 本 的 に 週 1 回 の 間 隔 で 2 回 の 半 構 造 化 面 接 を 行 った 人 生 に 影 響 を 与 えたと 思 われる 重 要 な 人 物 を 身 内 と 身 内 以 外 から1 人 ずつ 挙 げてもらい,1 セッション(1 時 間 か ら 1 時 間 半 )ごとに 一 人 ずつ 話 を 聞 いた 尚, 話 は 毎 回 許 可 を 得 てから IC レコーダーに 録 音 し, 止 めたい 時 は 途 中 辞 退 もできることを 伝 えるなど 十 分 に 倫 理 的 配 慮 をしながら 進 めた 個 人 回 想 法 の 質 的 分 析 には, 修 正 版 グラウンデッド セオリー アプローチ(modified grounded theory approach;m-gta)を 採 用 した また, 心 理 的 変 化 の 測 定 には, 主 観 的 な 気 分 状 態 を 客 観 的 かつ 多 面 的 に 測 定 することができる 気 分 調 査 票 ( 坂 野 ら,1994), および 現 時 点 の 自 己 に 対 する 全 体 的 な 評 価 を 測 定 することができ, 状 態 自 尊 感 情 の 変 化 が あった 時 にはその 変 化 もみることができる 状 態 自 尊 感 情 尺 度 ( 阿 部 今 野,2007)を 使 用 した 合 わせて,フェイスシートで 年 齢 や 健 康 状 態 などの 情 報 を 収 集 した 結 果 1. 面 接 前 後 の 心 理 的 変 化 気 分 調 査 票 の 5 つの 下 位 尺 度 と 状 態 自 尊 感 情 尺 度 の 信 頼 性 を Cronbach のα 係 数 を 用 い て 検 討 したのち 分 析 に 用 いた 最 初 に, 身 内 と 身 内 以 外 共 に 話 を 聞 くことができた 9 名 の 対 象 者 の 結 果 について, 身 内 と 身 内 以 外 に 分 けてプレテストとポストテストで 対 応 のある t 検 定 を 行 った また, 状 態 自 尊 感 情 については, ポジティブな 人 間 関 係 を 想 起 し た 回 想 (14 ケース)と ネガティブな 人 間 関 係 を 想 起 した 回 想 (6 ケース)の 結 果 につ いても,プレテストとポストテストで 対 応 のある t 検 定 を 行 った その 結 果, 身 内 の 回 想 では 爽 快 感 (t(8)=-2.73,p<.05)と 不 安 感 (t(8)=2.67,p<.05)で 有 意 差 がみられ,

身 内 以 外 の 回 想 では 爽 快 感 (t(8)=-2.24,p<.10)と 疲 労 感 (t(8)=1.86,p<.10)で 有 意 傾 向 がみられた 状 態 自 尊 感 情 については, 身 内 身 内 以 外 共 に 有 意 差 はみられな かったが, ネガティブな 人 間 関 係 を 想 起 した 回 想 前 後 で 有 意 傾 向 (t(5)=-2.21,p<.10) がみられた 2. 回 想 内 容 の 質 的 分 析 本 研 究 では, 分 析 テーマを 高 齢 助 産 師 が 人 生 に 影 響 を 与 えた 人 物 について 回 想 する 際 のプロセス とし, 分 析 焦 点 者 を 高 齢 助 産 師 とした 逐 語 化 したデータから 14 の 概 念 を 生 成 し, 概 念 間 の 関 係 を 考 え 収 束 化 して 6 つのカテゴリーを 生 成 した そして,その 結 果 を 概 念 間,カテゴリー 間 の 関 係 を 説 明 する 結 果 図 に 表 わし,その 内 容 をストーリーラ インとして 文 章 で 説 明 した 全 体 のストーリーラインは 次 の 通 りである ( 内 はカテゴリー 名 を,< > 内 は 概 念 名 を 示 す) 高 齢 助 産 師 が 自 身 に 影 響 を 与 えた 人 物 について 回 想 する 際 には, ポジティブ な 人 間 関 係 を 想 起 する 場 合 (14 ケース)と, ネガティブな 人 間 関 係 を 想 起 する 場 合 (6 ケース)に 分 かれた ポジティブな 人 間 関 係 を 回 想 する 場 合 は,その 人 物 の< 素 晴 ら しい 人 間 性 >について 語 り, 語 り 手 にとって 生 き 方 の< 目 標 となる 人 >になっていた そ して,その 中 には< 助 産 師 を 目 指 すきっかけ>になったものもあった ネガティブな 人 間 関 係 を 回 想 する 場 合 は,< 逆 らえぬ 人 生 の 転 機 を 与 えた 人 >により 自 身 の 人 生 を 操 作 され, 自 己 決 定 できなかったことに 対 し<やりそこなったことへの 後 悔 >が 生 じていた しかし, どちらの 人 間 関 係 からも< 仕 事 を 続 ける 上 で 助 けられた>ことが 語 られ, 出 会 いが 助 けに つながった と 捉 えられていた その 助 けがあったおかげで 助 産 師 の 仕 事 が 続 けられたと 語 られた 助 産 師 の 仕 事 は 忙 しく, 私 生 活 と 両 立 をする 上 でも 辛 く 大 変 な 思 いをしたが, 教 えられたことを 活 かす ことで 乗 り 切 ることができたようだ 多 くの< 苦 労 >があり 助 産 師 の 仕 事 を 辞 めたいと 思 うことさえあったが,<その 人 物 から 学 んだこと>が 精 神 的 にも 実 質 的 にも 支 えとなり 仕 事 を 続 けることができたと 捉 えられていた そして,その 人 物 の 回 想 をしたことが 自 身 の 人 生 についてふり 返 ることにもつながり, その 人 物 の 影 響 の 語 りから 人 生 の 統 合 へ と 展 開 していった その 人 物 から 得 たものは 意 識 的, 無 意 識 的 に 関 わらず,< 学 んだことを 自 分 の 中 にとり 入 れていった>ことで 内 在 化 し, 子 や 孫, 後 進 の 助 産 師 に< 受 け 継 いだことを 伝 えていく>ことが 使 命 だと 捉 えられていた また 同 時 に, < 人 生 をふり 返 り 評 価 する>ことも 行 われ,< 恵 まれた 人 生 であった>と 肯 定 的 に 評 価 す

る 場 合 と,< 結 果 的 に 良 い 人 生 であった>と 受 容 的 に 評 価 する 場 合 に 分 かれた 人 生 に 影 響 を 与 えた 人 物 のことを 語 る 過 程 が, 自 身 の 人 生 をふり 返 り 評 価 することへと 展 開 し,ど ちらの 評 価 からも<ありがたい 思 い>が 湧 いて, 最 終 的 には 感 謝 の 気 持 ちに 至 る とい うプロセスがみられた 考 察 本 研 究 では, 高 齢 助 産 師 に 対 し 個 人 回 想 法 を 実 施 し, 人 生 に 影 響 を 与 えた 人 物 について 語 る 際 の 回 想 内 容 の 質 的 分 析 と, 回 想 前 後 の 心 理 的 変 化 を 検 討 した 従 来 から 回 想 内 容 の 質 的 分 析 の 重 要 性 が 指 摘 され, 高 齢 者 の 回 想 類 型 を 分 類 した 研 究 は 数 多 くあるが, 回 想 内 容 のプロセスまで 質 的 に 分 析 されてきたとは 言 いがたい 本 研 究 では, 職 業 婦 人 の 先 駆 者 である 助 産 師 が 年 を 重 ね 自 身 の 人 生 をふり 返 る 際,どのような 人 物 を 想 起 し,その 影 響 に ついてどのように 語 るのか,その 内 容 を M-GTA で 分 析 することで 回 想 過 程 の 展 開 を 明 ら かにした 回 想 の 過 程 においては, 人 生 に 影 響 を 与 えた 人 物 についての 語 りが, 自 分 自 身 の 人 生 を ふり 返 り 自 己 についての 語 りへとつながっていくという 展 開 がみられた 野 村 (2008)は, 自 己 を 語 ることの 機 能 として,1 経 験 を 組 織 化 する,2 人 生 を 意 味 づける,3 自 我 同 一 性 を 維 持 するということを 挙 げており, 自 己 に 密 接 に 関 わる 一 部 経 験 を 組 織 化 するためには, それを 語 ることを 要 し,それぞれの 発 達 段 階 における 自 我 同 一 性 の 達 成 には, 自 己 が 生 き てきた 歴 史 の 意 味, 今 まさに 自 己 が 存 在 する 意 味 や,これから 生 きていく 意 味 への 模 索 が 含 まれるとしている 本 研 究 の 回 想 調 査 の 際 に, 対 象 者 から 普 段 こんなに 深 くまとめて 話 したことはなかった 聞 いてくれてありがとう といった 感 想 が 聞 かれたことからも, 他 者 に 語 ることで 経 験 が 組 織 化 され, 人 生 を 評 価 することで 自 身 の 人 生 を 意 味 づけ, 過 去 から 現 在,そして 未 来 へと 連 なる 時 間 軸 のなかに, 自 己 の 連 続 性 を 見 出 す 主 観 的 な 感 覚 で ある 自 我 同 一 性 の 達 成 維 持 へとつながったと 考 えられる 影 響 を 与 えた 人 物 の 想 起 は, ポジティブな 人 間 関 係 とネガティブな 人 間 関 係 に 分 かれたが,どちらからも 学 ぶことがあ り, 紆 余 曲 折 を 経 ながらも 一 貫 した 連 続 性 をもち 現 在 の 自 分 へとつながっている そして, ありがたさの 意 味 には 違 いはあっても, 感 謝 の 気 持 ちに 至 ることで 人 生 の 統 合 へと 結 びつ いていた 回 想 の 前 後 での 心 理 的 効 果 としては, 身 内 の 回 想 では 爽 快 感 が 増 し, 不 安 感 が 減 少 した 一 方, 先 行 研 究 ( 野 村 橋 本,2000; 野 村,2009)で 効 果 が 報 告 されている 自 尊 感 情 の 改

善 については, 身 内 身 内 以 外 の 回 想 共 に 有 意 な 効 果 はみられなかった 自 尊 感 情 に 有 意 な 変 化 がみられなかった 理 由 としては, 本 研 究 の 対 象 者 が 回 想 前 から 自 尊 感 情 が 高 かった ことが 考 えられる 実 際 に 先 行 研 究 ( 阿 部 今 野,2007)の 自 尊 感 情 得 点 と 比 較 したとこ ろ, 本 研 究 の 対 象 者 の 平 均 値 の 方 が 高 かった また, 人 が 生 まれ 出 た 時 に 一 番 に 出 会 うの が 私 たちである, 二 つの 命 を 同 時 にあずかる 責 任 のある 仕 事 である といった 発 言 から も, 誇 りを 持 って 仕 事 をしてきたことがうかがえた しかし, 本 研 究 の 結 果 は,あくまで 女 性 の 専 門 職 である 助 産 師 として 仕 事 をしてきた 高 齢 者 の 個 人 回 想 の 結 果 であり, 高 齢 者 全 般 について 言 えるものではない 今 後 は, 他 の 職 業 や 職 業 の 有 無 による 違 いも 検 討 していく 必 要 があると 考 える また 野 村 橋 本 (2001) の 研 究 では, 老 年 期 の 回 想 と 適 応 度 の 関 連 に 性 差 が 認 められていることから, 男 女 差 によ る 検 討 が 必 要 であろう 一 方,テーマをライフイベントではなく 人 物 に 焦 点 をあてたこと から, 心 理 的 変 化 を 測 定 する 指 標 も 再 検 討 する 必 要 があると 考 える 本 研 究 で 明 らかとな った 結 果 がどれほどの 高 齢 者 に 共 通 して 適 用 し 得 るかを 検 証 するためには, 多 様 な 高 齢 者 を 対 象 とした 研 究 を 継 続 して 行 う 必 要 がある

参 考 引 用 文 献 阿 部 美 帆 今 野 裕 之 (2007): 状 態 自 尊 感 情 尺 度 の 開 発,パーソナリティ 研 究,16 16,36-46. Butler,R.N.(1963):The life review:an interpretation of reminiscence in the aged. Psychiatry,26 26,65-76. 小 林 美 代 子 (2008): 助 産 婦 が 果 たした 役 割 と 女 たちとのかかわり 昭 和 20 年 代 に 活 躍 した 助 産 婦 の 語 りから, 新 潟 青 陵 大 学 紀 要,8,21-30. 黒 川 由 紀 子 (2005): 回 想 法 高 齢 者 の 心 理 療 法 誠 信 書 房 pp 23-26. McMahon,A.W.& Rhudick,P.J.(1964):Reminiscing:Adaptational significance in the aged.archives of General Psychiarity,10,292-298. 灘 久 代 (2011): 開 業 助 産 師, 加 納 繁 代 姉 の 活 動 史, 徳 島 文 理 大 学 研 究 紀 要,82 82,91-96. 中 本 朋 子 野 﨑 美 紀 重 安 日 登 美 柳 美 穂 子 山 下 満 枝 (2009): 新 人 助 産 師 の 職 場 適 応 に 影 響 する 要 因 と 助 産 師 教 育 における 課 題, 山 口 県 立 大 学 学 術 情 報, 2, 48-52. 野 村 晴 夫 (2008): 自 己 を 語 ることを 想 起 すること 心 理 療 法 場 面 を 手 ががりとしたその 機 能 関 連 の 探 索, 心 理 学 評 論,51(1) 51(1),99-113. 野 村 信 威 橋 本 宰 (2000): 高 齢 者 における 回 想 の 質 と 適 応 との 関 連 について(6), 日 本 心 理 学 会 第 64 回 大 会 発 表 論 文 集,991. 野 村 信 威 橋 本 宰 (2001): 老 年 期 における 回 想 の 質 と 適 応 との 関 連, 発 達 心 理 学 研 究, 12(2),75-86. 野 村 信 威 (2009): 地 域 高 齢 者 に 対 する 個 人 回 想 法 の 自 尊 感 情 への 効 果 の 検 討, 心 理 学 研 究,80(1) 80(1),42-47. 野 村 豊 子 (1998): 回 想 法 とライフレビヴュー その 理 論 と 技 法 中 央 法 規 pp61-66. 野 村 豊 子 (2001): 回 想 法 ハンドブック Q&A による 計 画,スキル, 効 果 評 価 回 想 法 ライフレヴュー 研 究 会 ( 編 ) pp 4-5. 坂 野 雄 二 福 井 知 美 熊 野 宏 昭 堀 江 はるみ 川 原 健 資 山 本 晴 義 野 村 忍 末 松 弘 行 (1994): 新 しい 気 分 調 査 票 の 開 発 とその 信 頼 性 妥 当 性 の 検 討, 心 身 医 学,34 34,629-636. 津 田 理 恵 子 (2007): 回 想 法 への 期 待 実 践 研 究 から 考 える 文 献 展 望 関 西 福 祉 学 大 学 紀 要,11 11, 317-332. Wong,P.T.P.,&Watt,L.M.,(1991):What types of reminiscence are associated with successful aging?,psychology and Aging,8,272-279.