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とする ( 減 免 額 の 納 付 ) 第 6 条 市 長 は 減 免 を 受 け た 者 が 偽 り そ の 他 不 正 な 方 法 に よ り 減 免 の 決 定 を 受 け た こ と を 知 っ た と き 前 の 申 告 が あ っ た と き 又 は 同 条 第 2 項 の 規 定 によ

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3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

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(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

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[ 租 税 判 例 研 究 会 ] 居 住 用 財 産 の 特 別 控 除 共 有 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 してその 敷 地 を 譲 渡 した 場 合 第 40 回 2011 年 ( 平 成 23 年 )8 月 5 日 発 表 平 仁 MJS 租 税 判 例 研 究 会 は 株 式 会 社 ミロク 情 報 サービスが 主 催 する 研 究 会 です MJS 租 税 判 例 研 究 会 についての 詳 細 は MJS コーポレートサイト 内 租 税 判 例 研 究 会 のページをご 覧 ください <MJS コーポレートサイト 内 租 税 判 例 研 究 会 のページ> http://www.mjs.co.jp/seminar/kenkyukai/

2011.8.5 MJS 租 税 判 例 研 究 会 居 住 用 財 産 の 特 別 控 除 共 有 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 してその 敷 地 を 譲 渡 した 場 合 ( 東 京 高 裁 平 成 22 年 7 月 15 日 判 決 判 時 2088 号 63 頁 TAINS コート Z888-1538) 税 理 士 青 山 学 院 大 学 会 計 プロフェッション 研 究 科 客 員 教 授 平 仁 事 案 の 概 要 本 件 は 宅 地 を 譲 渡 したとしてその 譲 渡 所 得 に 対 する 確 定 申 告 をした 原 告 が 当 該 譲 渡 は 租 税 特 別 措 置 法 35 条 1 項 ( 平 成 18 年 改 正 前 )に 定 める 居 住 用 財 産 の 譲 渡 所 得 の 特 別 控 除 の 要 件 を 満 たすとして 更 正 の 請 求 をしたところ 更 正 すべき 理 由 がない 旨 の 通 知 処 分 を 受 けたことから 当 該 通 知 処 分 の 取 り 消 しを 求 めたものである 1. 原 告 は 乙 と 丙 の 長 女 であり 兄 の 丁 弟 の 戊 の 2 人 の 兄 弟 がいる 2. 乙 は 平 成 11 年 5 月 11 日 に 死 亡 本 件 土 地 及 び 本 件 土 地 に 存 する 本 件 建 物 のうち 持 分 1/4を 保 有 3. 丁 は 平 成 13 年 4 月 10 日 死 亡 本 件 建 物 のうち 持 分 3/4を 保 有 丁 所 有 本 件 建 物 持 分 は 妻 の 己 が 相 続 により 取 得 4. 平 成 15 年 11 月 1 日 遺 産 分 割 協 議 成 立 乙 所 有 本 件 建 物 持 分 及 び 本 件 土 地 のうち 持 分 1/4を 原 告 が 取 得 乙 所 有 本 件 土 地 のうち 持 分 3/4を 丁 ( 代 襲 相 続 により 己 )が 取 得 5. 平 成 16 年 6 月 29 日 ~7 月 4 日 本 件 建 物 の 一 部 ( 原 告 所 有 部 分 )を 取 り 壊 し 6. 平 成 16 年 7 月 7 日 原 告 本 件 建 物 持 分 己 への 贈 与 を 起 因 とする 所 有 権 移 転 登 記 ( 贈 与 日 平 成 16 年 7 月 3 日 ) 7. 平 成 18 年 3 月 10 日 原 告 小 田 原 税 務 署 に 確 定 申 告 ( 譲 渡 所 得 1,613 万 円 余 所 得 税 額 210 万 円 余 ) 8. 平 成 18 年 12 月 27 日 原 告 小 田 原 税 務 署 に 更 正 の 請 求 ( 居 住 用 財 産 の 譲 渡 所 得 の 特 例 の 適 用 があるとして 譲 渡 所 得 ゼロ 税 額 ゼロ) 9. 平 成 19 年 4 月 25 日 被 告 小 田 原 税 務 署 長 本 件 通 知 処 分 平 成 19 年 6 月 20 日 原 告 異 議 申 立 平 成 19 年 9 月 19 日 被 告 異 議 申 立 棄 却 平 成 19 年 10 月 15 日 原 告 審 査 請 求 平 成 20 年 4 月 18 日 裁 決 ( 棄 却 ) 平 成 20 年 10 月 2 日 訴 訟 提 起 -1 -

当 事 者 の 主 張 原 告 の 主 張 被 告 の 主 張 < 争 点 1> 本 件 譲 渡 に 本 件 特 別 控 除 の 適 用 があるか 否 か 居 住 用 の 家 屋 とその 敷 地 の 用 に 供 されてい 納 税 者 が 居 住 用 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 し その る 土 地 を 譲 渡 する 方 法 としては 家 屋 と 土 地 敷 地 のみを 譲 渡 した 場 合 に 残 存 する 家 屋 が を 一 体 として 売 却 する 方 法 だけではなく 家 居 住 の 用 に 供 し 得 ない 場 合 には 本 件 特 別 控 屋 を 取 り 壊 して 土 地 を 更 地 にした 上 で 売 却 除 を 適 用 することができると 解 するとして する 方 法 も 一 般 的 な 不 動 産 取 引 として 行 わ も 本 件 残 存 家 屋 部 分 には 本 件 共 用 部 分 があ れているが 本 件 特 別 控 除 の 趣 旨 からは こ り 現 実 にも 己 が 居 住 していることから 機 のような 場 合 も 措 置 法 35 条 1 項 に 定 める 能 的 にみて 独 立 した 一 個 の 居 住 用 の 家 屋 と 家 屋 とともにその 敷 地 を 譲 渡 した 場 合 に 該 して 存 在 しているものと 認 められる 当 すると 解 するべきである したがって 個 人 がその 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 の 全 部 を その 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 して 当 該 土 地 を 譲 渡 した 場 合 には 本 件 特 別 控 除 の 適 用 が ある また 居 住 用 家 屋 の 一 部 を 譲 渡 した 場 合 であ っても 当 該 譲 渡 した 部 分 以 外 が 機 能 的 に 見 て 独 立 した 居 住 用 の 家 屋 と 認 められない 場 合 には 譲 渡 によって 自 己 の 所 有 する 居 住 用 家 屋 を 失 ったといえ 当 該 譲 渡 についても 本 件 特 別 控 除 の 適 用 はあると 解 されているこ とからすれば 個 人 がその 居 住 の 用 に 供 して いる 家 屋 の 一 部 を その 敷 地 の 用 に 供 されて いる 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 して 当 該 土 地 を 譲 渡 した 場 合 取 り 壊 され なかった 残 部 が 機 能 的 にみて 独 立 した 居 住 用 の 家 屋 と 認 められないときは 本 件 特 別 控 除 の 適 用 がある 原 告 及 び 己 は 乙 の 相 続 財 産 に 係 る 遺 産 分 割 原 告 は 本 件 建 物 を 原 告 の 居 住 部 分 と 己 の 居 の 協 議 に 当 たり 本 件 建 物 の 共 有 関 係 及 び 本 住 部 分 とに 区 分 し その 上 で 本 件 譲 渡 に 本 件 建 物 における 生 活 関 係 を 解 消 する 方 法 に 件 特 別 控 除 を 適 用 することができると 主 張 ついて 協 議 をし その 結 果 として 本 件 建 物 する しかし 原 告 及 び 己 は 物 理 的 に 区 切 を 2 つに 分 割 し 原 告 が 取 得 する 本 件 建 物 の りのない 本 件 建 物 を 共 有 してこれに 居 住 し 分 割 部 分 を 取 り 壊 し また 当 該 土 地 を 2 つ 日 常 生 活 を 営 む 上 で 重 要 な 意 味 を 有 する 本 -2 -

に 分 筆 し 原 告 が 取 得 する 土 地 を 更 地 にして 件 共 用 部 分 を 共 用 し 本 件 建 物 への 水 道 及 び 第 三 者 に 売 却 し 原 告 がその 売 却 代 金 を 取 得 電 気 の 供 給 に 係 る 契 約 についてはいずれも して 他 に 転 居 するとの 合 意 をした そして 己 が 契 約 し 電 気 水 道 代 全 額 を 支 払 ってい 遅 くとも 平 成 16 年 5 月 ころまでに 本 件 家 た このような 状 況 からすれば 原 告 及 び 己 屋 部 分 を 取 り 壊 して 本 件 土 地 を 更 地 として が 本 件 建 物 のうち 原 告 の 居 住 部 分 と 己 の 居 譲 渡 することを 可 能 とするため 己 が 本 件 家 住 部 分 とを 区 分 し それぞれ 完 全 に 独 立 した 屋 部 分 を 取 り 壊 すことに 同 意 するとともに 生 活 をしていたとはいえないから 原 告 の 上 原 告 が 己 に 本 件 建 物 の 持 分 1/4を 譲 渡 す 記 主 張 はその 前 提 を 欠 く る 旨 を 合 意 をした そして この 合 意 に 基 づ また 原 告 は 本 件 建 物 を 原 告 が 専 有 し 起 居 いて 同 年 6 月 29 日 から 同 年 7 月 4 日 まで していた 部 分 とそれ 以 外 の 部 分 に 分 割 し 原 の 間 に 本 件 家 屋 部 分 が 取 り 壊 され そのこ 告 が 当 該 専 有 する 部 分 を 己 がそれ 以 外 の 部 ろ 本 件 建 物 の 持 分 1/4が 己 に 譲 渡 された 分 をそれぞれ 取 得 したと 主 張 する しかし ところ 遅 くとも 本 件 家 屋 部 分 が 取 り 壊 され 上 記 原 告 が 取 得 したとされる 部 分 は 区 分 所 た 時 点 で 己 が 上 記 合 意 に 基 づいて 本 件 残 存 有 の 対 象 ではなく 1 個 の 独 立 した 物 でもな 家 屋 部 分 の 単 独 所 有 権 を 取 得 したものと 解 いから 独 立 の 所 有 権 の 対 象 とはならず 原 される 告 の 上 記 主 張 はその 前 提 を 欠 く 本 件 建 物 に 以 上 のとおり 原 告 及 び 己 は その 共 有 物 で 係 る 原 告 の 共 有 部 分 1/4は 本 件 建 物 の 全 あった 本 件 建 物 をその 持 分 及 び 居 住 実 態 に 体 に 及 んでいるのであり 原 告 は 本 件 家 屋 応 じて 分 割 し 原 告 が 取 得 した 分 割 部 分 であ 部 分 の 取 り 壊 し 後 も 本 件 残 存 家 屋 部 分 の 持 る 本 件 家 屋 部 分 を 取 り 壊 して 更 地 になった 分 1/4を 有 していた したがって 本 件 家 本 件 土 地 を 売 却 したものである そして 本 屋 部 分 の 取 り 壊 しにより 原 告 の 居 住 の 用 に 件 家 屋 部 分 は 原 告 が 起 居 等 の 日 常 生 活 を 行 供 している 家 屋 の 全 部 を 取 り 壊 したことに い その 生 活 の 拠 点 として 使 用 していた 場 所 はならない であり 原 告 の 居 住 の 用 に 供 していた 家 屋 に 該 当 する 他 方 原 告 と 己 は 義 理 の 姉 妹 の 関 係 にすぎず 電 気 代 ガス 代 水 道 代 等 の 公 共 料 金 も 使 用 人 数 に 応 じ 半 額 を 原 告 が 己 に 支 払 うなど 生 計 も 別 であったことから 社 会 通 念 上 原 告 と 同 居 することが 通 常 であると は 認 められず 己 の 居 住 の 用 に 供 されていた 家 屋 部 分 は 原 告 の 居 住 の 用 に 供 されている 家 屋 には 該 当 しない < 争 点 2> 原 告 が 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとする 旨 を 記 載 した 確 定 申 告 書 を 提 出 しなかったことにつき やむを 得 ない 事 情 があったといえるか 否 か 措 置 法 35 条 1 項 の 趣 旨 を 達 成 するためには 措 置 法 35 条 3 項 は 同 条 1 項 の 適 用 を 受 け -3 -

本 来 同 項 の 要 件 に 該 当 する 場 合 にはすべて 本 件 特 別 控 除 を 適 用 すべきであるといえる しかし 課 税 庁 としては 納 税 者 による 情 報 提 供 がなければ 本 件 特 別 控 除 の 適 用 があるか 否 かを 判 断 することができないし また 本 件 特 別 控 除 が 適 用 されることを 望 まない 納 税 者 の 意 思 に 反 してまでその 適 用 を 強 制 す ることは 妥 当 でない そこで 措 置 法 35 条 2 項 は 確 定 申 告 書 に 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとする 旨 及 び 同 条 1 項 の 要 件 に 該 当 する 旨 の 事 情 を 記 載 することを 求 めると ともに 財 務 省 令 で 定 める 書 類 の 添 付 を 求 め 同 項 に 該 当 する 事 情 等 の 情 報 を 納 税 者 側 から 提 供 することを 求 めている 他 方 で 措 置 法 35 条 2 項 の 規 定 を 機 械 的 に 適 用 すると 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 望 まない 者 への 適 用 が 排 除 されるのみではなく 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 望 む 者 についても 確 定 申 告 書 への 記 載 等 がないという 理 由 のみで 本 件 特 別 控 除 の 適 用 が 排 除 される 結 果 が 生 じ るおそれがある そこで 措 置 法 35 条 3 項 は 確 定 申 告 書 への 記 載 等 がなかったことに ついて やむを 得 ない 事 情 があるとき には 本 件 特 別 控 除 の 適 用 がある 旨 を 明 らかにし たものであり 同 項 は その 真 意 から 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 望 まない 選 択 を 行 った 者 が 更 正 の 請 求 を 行 うことを 排 除 するための 規 定 である したがって やむを 得 ない 事 情 があるとき に 該 当 する 場 合 は 幅 広 く 認 めら れるべきであり 納 税 者 に 対 して 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 拒 否 することが 不 当 又 は 酷 にな る 場 合 を 広 くいうと 解 するべきである 本 件 において 原 告 は 小 田 原 税 務 署 を 4 回 訪 問 し 担 当 官 に 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 望 む 旨 を 伝 えた 上 で それが 認 められるか 否 かを 相 談 するという 慎 重 な 対 応 をしたが いずれ るための 手 続 に 厳 格 な 様 式 行 為 を 備 えるこ とを 要 求 する 結 果 として 生 じ 得 るであろう 不 都 合 を 防 止 する 趣 旨 であるところ 確 定 申 告 書 に 特 例 を 適 用 する 旨 を 記 載 し かつ 必 要 書 類 を 添 付 する 行 為 は 納 税 者 の 課 税 上 の 選 択 権 の 行 使 としての 意 味 を 持 つものであ るから いったん 選 択 権 を 行 使 した 納 税 者 に ついて 当 該 選 択 の 変 更 を 容 易 に 認 めた 場 合 には 租 税 債 権 の 早 期 安 定 を 阻 害 することに なる したがって 同 条 3 項 に 定 める やむ を 得 ない 事 情 とは 天 災 その 他 納 税 者 の 責 めに 帰 すことのない 事 由 により 確 定 申 告 書 を 提 出 すること 又 は 確 定 申 告 書 に 特 例 の 適 用 を 受 けようとする 旨 を 記 載 すること 若 し くはそのための 資 料 を 添 付 することが 不 可 能 であったと 認 められるような 客 観 的 事 情 を 指 すものであり 納 税 者 個 人 の 主 観 的 事 情 はこれに 当 たらないと 解 される 原 告 は 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとす る 旨 を 記 載 した 確 定 申 告 書 を 提 出 しなかっ たのは 原 告 がその 適 用 を 受 けたい 旨 を 告 げ て 小 田 原 税 務 署 で 相 談 をした 際 相 談 に 応 対 -4 -

の 際 も 本 件 特 別 控 除 の 適 用 がない 旨 の 回 答 を 受 けた また 原 告 は 税 理 士 にも 本 件 特 別 控 除 の 適 用 について 相 談 したが 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 ける 前 提 で 確 定 申 告 を 行 っ た 場 合 に 更 正 処 分 を 受 けることがないとの 確 信 まではないとの 回 答 を 受 けた さらに 本 件 のような 事 例 に 係 る 判 例 等 の 先 例 もな い かかる 状 況 の 下 で 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 ける 前 提 で 確 定 申 告 を 行 えば 後 に 更 正 処 分 を 受 けることは 明 らかであり 訴 訟 にお いて 敗 訴 する 危 険 性 もあった このような 場 合 更 正 処 分 及 び 過 少 申 告 加 算 税 の 賦 課 決 定 処 分 がされることを 承 知 の 上 で 課 税 庁 の 見 解 に 反 する 申 告 を 納 税 者 に 強 制 することは 納 税 者 に 酷 であるし いったん 課 税 庁 の 見 解 に 従 った 申 告 をした 後 に 更 正 の 請 求 を 認 め る 方 が 納 税 者 の 事 前 の 納 税 者 の 義 務 の 履 行 を 確 保 することになり 被 告 の 利 益 につなが る 現 実 に 過 少 申 告 加 算 税 を 支 払 う 危 険 を 避 けるため いったん 課 税 庁 の 見 解 に 従 った 申 告 を 行 った 後 に 更 正 の 請 求 を 行 うことは 一 般 に 行 われている 課 税 庁 の 見 解 に 従 った 申 告 を 行 った 後 に 更 正 の 請 求 がされた 場 合 自 らの 見 解 が 正 しい のであれば 課 税 庁 としては 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 がないことを 理 由 に 更 正 すべき 理 由 がない 旨 の 通 知 処 分 を 行 えば 足 りるはず である 課 税 庁 の 見 解 が 誤 りであったと 課 税 庁 が 認 識 しながら 課 税 庁 の 誤 った 見 解 に 従 った 納 税 者 に 対 し 確 定 申 告 書 上 の 選 択 がな いことを 理 由 に 更 正 の 請 求 を 認 めないこと は いわゆる 合 法 性 の 原 則 からみても 不 当 で あるし 課 税 庁 が 納 税 者 に 誤 った 助 言 をして おきながら その 助 言 に 従 ったことを 理 由 に 過 大 な 租 税 の 支 払 を 行 った 納 税 者 の 救 済 をしないことは 合 法 性 の 原 則 から 是 認 され した 税 務 職 員 が 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 け られない 旨 指 導 したことによるものである と 主 張 する しかし 仮 にこのような 事 実 が あったとしても 一 般 に 税 務 相 談 は 税 務 署 側 で 具 体 的 な 調 査 を 行 うこともなく 相 談 者 の 一 方 的 な 申 立 てに 基 づき その 申 立 ての 範 囲 内 で 行 政 サービスとしての 納 税 申 告 をす る 際 の 参 考 とするために 税 務 署 の 一 応 の 判 断 を 示 すものであって 仮 に その 相 談 が 課 税 にかかわる 個 別 具 体 的 なものであったと しても その 助 言 内 容 どおりの 納 税 申 告 をし た 場 合 には その 申 告 内 容 を 是 認 することま でを 意 味 するものではなく 最 終 的 にいかな る 税 務 申 告 をすべきかは 納 税 義 務 者 の 判 断 と 責 任 に 任 されている したがって 原 告 が 主 張 するような 相 談 の 事 実 があったという ことをもって 措 置 法 35 条 3 項 に 規 定 する やむを 得 ない 事 情 があったということは できない 原 告 が 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとす る 旨 を 記 載 した 確 定 申 告 書 を 提 出 しなかっ た 理 由 は 本 件 土 地 の 譲 渡 について 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 があるか 否 かについて 税 理 士 等 の 専 門 家 や 税 務 職 員 の 見 解 などを 聴 取 した 上 で 十 分 に 検 討 した 結 果 過 少 申 告 加 算 税 の 対 象 になるのではないかとの 懸 念 を 持 ったことなどから 自 ら 同 項 の 適 用 を 受 けな いことを 選 択 したというものであるから 原 告 の 個 人 的 な 事 情 によるものであるし 原 告 は 所 得 税 について 相 当 な 知 識 があるか あ るいは 税 について 専 門 的 知 識 を 有 する 税 理 士 等 の 専 門 家 に 相 談 した 上 で 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとする 旨 の 確 定 申 告 書 を -5 -

ない 提 出 した 上 で 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けよ うとする 旨 の 確 定 申 告 書 を 提 出 するか 否 か の 判 断 をしたものであるから 確 定 申 告 書 の 記 載 と 原 告 の 意 思 との 間 に 錯 誤 があったと はいえない 東 京 地 裁 平 成 21 年 11 月 4 日 判 決 (1)ア 措 置 法 35 条 1 項 は 土 地 又 はその 土 地 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 に 関 しては 災 害 により 当 該 土 地 の 上 に 存 する 家 屋 が 滅 失 した 場 合 を 除 いては 個 人 の 居 住 の 用 に 供 し 又 は 供 されていた 家 屋 が 現 存 し かつ その 家 屋 とともにその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 等 の 譲 渡 がされる 場 合 のみを 本 件 特 別 控 除 の 対 象 としており 家 屋 を 任 意 に 取 り 壊 すなど した 上 でその 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 のみの 譲 渡 をする 場 合 については 直 接 の 定 め を 置 いておらず このような 場 合 については 基 本 的 にその 適 用 をすることは 想 定 されてい ないものと 解 される しかし その 上 に 家 屋 の 存 する 土 地 の 取 引 において 当 該 家 屋 を 必 要 としない 買 主 が 当 該 家 屋 を 売 主 の 負 担 において 取 り 壊 すことを 求 めることがしばしば 見 られるとの 公 知 の 事 情 や 上 記 に 述 べた 措 置 法 35 条 1 項 の 趣 旨 からすれば 個 人 が そ の 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 した 上 当 該 土 地 のみの 譲 渡 をした 場 合 は 上 記 の 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 さ れている 土 地 とともに 譲 渡 した 場 合 に 準 ずるものとして 措 置 法 35 条 1 項 の 要 件 に 該 当 し 得 ると 解 することができる 一 方 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 の 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 の 一 部 を 更 地 として 譲 渡 するために 当 該 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 し その 取 壊 し 部 分 の 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 の 部 分 の 譲 渡 をした 場 合 については 措 置 法 35 条 1 項 の 文 理 のほか 建 物 の 所 有 権 その 他 の 権 利 の 対 象 としての 特 性 に 照 らし 同 項 にいう 家 屋 の 譲 渡 が 当 該 家 屋 の 全 体 の 譲 渡 を 意 味 するものと 解 されることを 勘 案 すると 当 該 家 屋 の 全 体 が 取 り 壊 された 場 合 と 当 然 には 同 列 に 論 じ 難 いが この 一 部 の 取 壊 しが 当 該 部 分 の 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 の 部 分 を 更 地 として 譲 渡 するために 必 要 な 限 度 のものであり かつ 上 記 の 取 壊 しによって 当 該 家 屋 の 残 存 部 分 がその 物 理 的 形 状 等 に 照 らし 居 住 の 用 に 供 し 得 なくなったということができるときは 当 該 家 屋 の 全 体 が 取 り 壊 された 場 合 に 準 ず るものとして 当 該 譲 渡 につき 措 置 法 35 条 1 項 を 適 用 し 得 ると 解 される そして 上 記 に 述 べたところは 取 り 壊 された 家 屋 が 共 有 物 であったとの 一 事 をもって 直 ちに 異 なって 解 すべき 根 拠 は 見 当 たらない イ そこで 本 件 について 検 討 するに 事 実 によれば 平 成 16 年 6 月 から 7 月 にかけて 本 件 家 屋 部 分 が 取 り 壊 された 後 も 本 件 残 存 家 屋 部 分 の 1 階 には 本 件 共 用 部 分 及 び 居 室 が 残 存 するとともに その 2 階 には 取 壊 し 前 の 居 室 が 従 前 どおり 残 存 し かつ 己 が 上 記 取 壊 し 後 も 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 居 住 し 続 けたのであるから その 取 壊 しにより 本 件 残 存 家 屋 -6 -

部 分 が 居 住 の 用 に 供 し 得 なくなったということはできない (2)ア 原 告 は 本 件 家 屋 部 分 を 取 り 壊 すことは 原 告 の 居 住 の 用 に 供 していた 家 屋 の 全 体 を その 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 である 本 件 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 したものといえるから 本 件 譲 渡 につき 本 件 特 別 控 除 の 適 用 がある 旨 主 張 する しかし 事 実 及 び 証 拠 によれば 本 件 建 物 にあっては 別 紙 図 面 に 示 されているように 本 件 家 屋 部 分 に 属 しそこに 存 する 2 部 屋 の 居 室 の 唯 一 の 出 入 口 となっていた 縁 側 と 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 属 するその2 階 への 階 段 のいわゆる 踊 り 場 とは 連 続 する 構 造 となっており これらの 間 を 遮 断 する 隔 壁 等 の 建 物 の 構 成 部 分 は 存 在 しなかったことが 認 められ また 既 に 述 べたように 本 件 建 物 にあっては 玄 関 台 所 浴 室 及 びトイレが 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 属 する 1 階 の 本 件 共 用 部 分 にそれぞれ 各 1 箇 所 に 設 けられているのみであり 平 成 16 年 当 時 原 告 は 上 記 の 本 件 共 用 部 分 を 己 と 共 用 していたものと 推 認 され 本 件 残 存 家 屋 部 分 にもこれらの 設 備 が 残 存 しているところである このような 本 件 建 物 の 構 造 及 び 利 用 状 況 に 照 らすと 本 件 建 物 につき 実 質 的 には 本 件 家 屋 部 分 と 本 件 残 存 家 屋 部 分 の 2 棟 の 建 物 であったと 評 価 することはできず また 本 件 家 屋 部 分 につき 構 造 上 区 分 されることに より 独 立 して 住 居 としての 用 途 に 供 することができるものに 当 たると 評 価 することもでき ないことに 加 え 本 件 の 事 実 経 過 の 下 においては 本 件 家 屋 部 分 の 取 壊 し 後 も 本 件 残 存 家 屋 部 分 につき 原 告 が 持 分 4 分 の 1 を 有 し これを 己 に 贈 与 したと 評 価 されることなども 併 せ 考 慮 すれば 平 成 16 年 6 月 から 7 月 に 行 われた 本 件 建 物 中 の 本 件 家 屋 部 分 の 取 壊 しをも って 原 告 がその 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 全 部 を 取 り 壊 したと 評 価 することはできない また 原 告 は 原 告 と 己 との 間 の 共 有 物 分 割 の 合 意 により 本 件 建 物 が 本 件 家 屋 部 分 と 本 件 残 存 家 屋 部 分 とに 現 物 分 割 され 原 告 が 本 件 家 屋 部 分 の 所 有 権 を 取 得 してその 全 体 を 取 り 壊 し 他 方 己 が 本 件 残 存 家 屋 部 分 の 単 独 所 有 権 を 取 得 した 旨 を 主 張 する しかし 本 件 建 物 の 構 造 等 からすれば 原 告 と 己 との 合 意 をもって 直 ちに 本 件 家 屋 部 分 と 本 件 残 存 家 屋 部 分 とがそれぞれ 別 個 の 所 有 権 の 客 体 になると 解 することはできない ま た 本 件 建 物 につき 各 登 記 がされており 他 方 本 件 家 屋 部 分 が 取 り 壊 された 時 点 で 己 が 当 然 に 本 件 残 存 家 屋 部 分 につき 単 独 で 所 有 権 を 有 することとなるとする 合 意 等 がされたこ とを 認 めるに 足 りる 証 拠 はない したがって 原 告 の 上 記 主 張 を 採 用 することはできない イ 原 告 は 本 件 建 物 のうち 原 告 が 居 住 の 用 に 供 している 部 分 といえるのは 本 件 家 屋 部 分 及 び 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 属 する 本 件 共 用 部 分 のみであったところ 本 件 家 屋 部 分 の 取 壊 しにより 上 記 のうち 本 件 共 用 部 分 のみが 残 存 し 原 告 との 関 係 では 本 件 共 用 部 分 のみでは 機 能 的 に 見 て 独 立 して 居 住 の 用 に 供 し 得 なくなったとして 本 件 譲 渡 につき 本 件 特 別 控 除 の 適 用 がある 旨 主 張 する しかし 原 告 の 上 記 の 主 張 は 建 物 の 一 部 の 取 壊 しの 場 合 について 広 く 本 件 特 別 控 除 の 適 用 があるとするもので その 前 提 において 問 題 があるというべきである また 原 告 は -7 -

平 成 16 年 当 時 己 とともに 本 件 建 物 に 居 住 していたところ 本 件 建 物 の 構 造 は 別 紙 図 面 の とおりであったことに 加 え 己 が 原 告 の 義 姉 であり 原 告 及 び 己 が 乙 及 び 丁 の 生 前 から 長 期 間 にわたって 本 件 建 物 に 居 住 していて 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば これらの 者 が 死 亡 するまでの 間 は 本 件 建 物 に 居 住 していた 親 族 間 の 関 係 は 平 穏 であり その 死 亡 後 も 生 活 状 況 としては 基 本 的 に 従 前 のものを 継 続 するものであったと 認 められること 現 に 本 件 建 物 への 水 道 及 び 電 気 の 供 給 に 係 る 契 約 は 己 名 義 でされていたことなどを 勘 案 すれば 本 件 家 屋 部 分 及 び 本 件 共 用 部 分 について 親 族 間 の 情 宜 を 基 礎 とした 事 実 上 の 区 分 を 超 え て それらの 部 分 のみを 原 告 の 居 住 の 用 に 供 することと 定 められていたと 認 めることには 疑 問 を 差 し 挟 む 余 地 が 残 るというべきである そして 本 件 においては 本 件 建 物 は その 一 部 取 壊 し 後 もいまだその 経 済 的 効 用 を 維 持 しているのであるから 原 告 が 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 居 住 し 続 けずに 転 居 したとしても 措 置 法 35 条 1 項 は 適 用 されないというべきであり 原 告 の 上 記 主 張 を 採 用 することはでき ない 高 裁 における 当 事 者 の 主 張 控 訴 人 ( 原 告 )の 主 張 措 置 法 35 条 の 解 釈 について ア 特 例 の 趣 旨 - 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 っ た 個 人 の 保 護 措 置 法 35 条 1 項 は 原 判 決 も 正 しく 説 示 し ているとおり 個 人 が 自 ら 居 住 の 用 に 供 して いる 家 屋 又 はその 敷 地 等 を 譲 渡 するような 場 合 は これに 代 わる 居 住 用 財 産 を 取 得 する のが 通 常 であるなど 一 般 の 資 産 の 譲 渡 に 比 して 特 殊 な 事 情 があり 担 税 力 も 高 くない 例 が 多 いことなどを 考 慮 して 設 けられた 特 例 である 要 するに 措 置 法 35 条 1 項 は 自 己 の 所 有 する 住 居 ( 居 住 用 の 土 地 建 物 )を 譲 渡 して 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 った 個 人 は 住 居 の 再 取 得 の 必 要 性 が 生 じるなど 担 税 力 が 高 くない ことを 考 慮 して その 個 人 を 保 護 する 政 策 目 的 で 設 けられた 規 定 である したがって 措 置 法 35 条 1 項 の 解 釈 は このような 趣 旨 に 従 い 解 釈 されなけれ ばならない イ 居 住 用 土 地 のみを 譲 渡 被 控 訴 人 の 主 張 措 置 法 35 条 1 項 は 本 件 特 別 控 除 の 特 例 の 対 象 として 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 し ている 家 屋 で 政 令 で 定 めるものの 譲 渡 若 し くは 当 該 家 屋 とともにするその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 若 しくは 当 該 土 地 の 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 を 規 定 し 土 地 等 のみの 譲 渡 については 災 害 により 滅 失 した 当 該 家 屋 の 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 若 しくは 当 該 土 地 の 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 に 限 って 対 象 とすると 規 定 しており 居 住 用 家 屋 の 譲 渡 を 伴 わない 土 地 のみの 譲 渡 については 当 該 居 住 用 家 屋 が 災 害 によって 滅 失 した 場 合 を 除 いて 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けること を 想 定 していないものである もっとも 家 屋 の 存 する 土 地 の 取 引 におい て 当 該 家 屋 を 必 要 としない 買 主 が 当 該 家 屋 を 売 主 の 負 担 において 取 り 壊 すことを 求 めることがしばしば 見 られるとの 不 動 産 取 引 の 実 態 に 照 らし その 土 地 を 更 地 として 譲 -8 -

措 置 法 35 条 1 項 は 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 され ている 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 した 上 当 該 土 地 のみの 譲 渡 をした 場 合 にも 適 用 がある これは 措 置 法 35 条 1 項 の 立 法 趣 旨 から 1 個 人 が 自 己 の 所 有 する 住 居 ( 土 地 建 物 )を 売 却 するため 建 物 を 取 壊 し 更 地 となった 土 地 を 売 却 するという 一 連 の 行 為 を 行 った 場 合 にも 個 人 は 一 連 の 行 為 の 結 果 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 い 住 居 の 再 取 得 の 必 要 性 が 生 じその 個 人 の 担 税 力 が 高 くない ため その 個 人 を 保 護 する 必 要 性 があるからであり 2 自 己 の 所 有 する 住 居 ( 土 地 建 物 )を 売 却 する 方 法 として 建 物 を 取 り 壊 して 更 地 として 売 却 した 場 合 に も 税 制 上 の 保 護 を 与 えないと 実 質 上 自 己 の 所 有 する 住 居 の 処 分 に 制 限 が 加 わること になり 相 当 ではないからである つまり 条 文 を 形 式 的 に 読 めば 建 物 を 取 壊 して 更 地 と なった 土 地 を 売 却 することは 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 とともに 譲 渡 をした には 該 当 しないのではないかとの 疑 問 が 生 じるが 住 居 の 売 却 方 法 として 建 物 を 取 壊 して 更 地 となった 土 地 を 売 却 するとい う 一 連 の 行 為 による 譲 渡 方 法 を 認 めないと 自 己 の 所 有 する 住 居 の 売 却 によって 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 い 新 たな 住 居 を 取 得 する 必 要 性 が 生 じた 個 人 を 保 護 することができ ないから 立 法 趣 旨 から この 場 合 にも 要 件 を 満 たすと 解 されているのである したがっ て 自 己 の 所 有 する 住 居 の 売 却 のための 一 連 の 行 為 の 結 果 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 い 新 たな 住 居 の 取 得 の 必 要 性 が 生 じる 場 合 に は 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 があるのであっ て 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 の 有 無 の 判 断 基 準 は 一 連 の 行 為 の 結 果 自 己 の 所 有 する 渡 する 目 的 で 居 住 用 家 屋 を 取 り 壊 した 上 当 該 土 地 のみを 譲 渡 した 場 合 については 居 住 用 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 とともに 譲 渡 した 場 合 に 準 ずるものとして 措 置 法 通 達 により 一 定 の 条 件 のもと 本 件 特 別 控 除 の 適 用 対 象 として 取 り 扱 われてい る さらに 当 該 家 屋 の 一 部 のみの 譲 渡 であって も その 一 部 譲 渡 の 後 に 残 った 部 分 が 機 能 的 にみて 独 立 した 居 住 用 家 屋 と 認 められない 場 合 には 譲 渡 人 は その 譲 渡 によって 居 住 用 家 屋 を 失 うこととなるから その 譲 渡 は 当 該 家 屋 の 全 部 の 譲 渡 とみるのがその 実 態 に 合 致 する そこで 通 達 上 では その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 又 は 当 該 家 屋 でその 居 住 の 用 に 供 されなくなったものを 区 分 して 所 有 権 の 目 的 としその 一 部 のみを 譲 渡 した 場 合 又 は 2 棟 以 上 の 建 物 から 成 る 一 構 えの その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 のうち 一 部 のみを 譲 渡 したような 場 合 には 当 該 譲 渡 し た 部 分 以 外 の 部 分 が 機 能 的 にみて 独 立 した 居 住 用 家 屋 と 認 められない 場 合 に 限 り 当 該 譲 渡 は 居 住 用 家 屋 の 全 部 の 譲 渡 と 同 視 でき るとして 措 置 法 35 条 1 項 が 規 定 する 譲 渡 に 該 当 するものとして 取 り 扱 うことにした ものである このように 措 置 法 35 条 1 項 は 例 外 的 に 認 められる 優 遇 措 置 であることからすれば 租 税 負 担 公 平 の 原 則 から 不 公 平 の 拡 大 を 防 止 するため 解 釈 の 狭 義 性 厳 格 性 が 要 請 さ れるというべきであり 当 該 規 定 を 受 けた 措 置 法 通 達 35-2 及 び 同 35-5 で 準 用 する 同 31 の 3-10 は 厳 格 に 適 用 されるべきであり 疑 義 を 差 しはさむことのないような 形 式 的 基 準 をもって 運 用 されるべきものである -9 -

住 居 を 失 い 新 たな 住 居 の 取 得 の 必 要 性 が 生 じたかどうか である ウ 単 独 所 有 の 家 屋 の 一 部 取 壊 しの 議 論 単 独 所 有 の 居 住 用 の 家 屋 の 一 部 を 取 壊 し 更 地 となった 敷 地 を 売 却 する 場 合 について は 全 部 取 壊 しの 場 合 とは 異 なり 個 人 は 自 己 の 所 有 する 居 住 用 家 屋 の 権 利 全 てを 失 うのではなく その 一 部 を 保 持 しているか ら 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 はできないので はないかとの 論 点 が 生 じてくる しかし こ の 点 についても 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 い 住 居 の 再 取 得 の 必 要 性 が 生 じる 個 人 の 保 護 という 立 法 趣 旨 から 残 存 家 屋 が 物 理 的 にみ て 居 住 可 能 でない 場 合 には たとえ 所 有 権 を 有 する 残 存 家 屋 が 存 続 しても 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 は 認 められている このように 物 理 的 に 居 住 可 能 かという 論 点 が 生 じるの は 自 己 の 所 有 する 建 物 が 存 続 する 場 合 だけ であって 自 己 の 所 有 する 建 物 が 存 在 しない 場 合 には 当 然 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 はある から 物 理 的 な 居 住 可 能 性 の 要 件 の 論 点 は 生 じてこない エ 共 有 物 である 住 居 の 売 却 共 有 物 である 住 居 ( 土 地 建 物 )の 持 分 を 全 部 譲 渡 する 場 合 他 の 共 有 者 もその 処 分 に 同 意 する 場 合 には 他 の 共 有 者 と 共 に 土 地 建 物 を 売 却 し あるいは 建 物 全 部 を 取 壊 して 更 地 となった 土 地 を 売 却 することができる ま た 他 の 共 有 者 が 同 意 すれば 個 人 の 有 する 住 居 の 持 分 全 部 を 他 の 共 有 者 に 売 却 するこ ともできる これらの 場 合 について 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 があることについて 争 いは ない しかし 他 の 共 有 者 が 上 記 の 同 意 をしない 場 合 には 建 物 の 一 部 を 取 壊 して 残 存 家 屋 とその 敷 地 の 単 独 所 有 権 を 他 の 共 有 者 に 取 - 10 -

得 させ 自 らは 更 地 となった 土 地 の 所 有 権 を 取 得 するという 方 法 で 共 有 物 の 分 割 を 行 い その 更 地 となった 土 地 を 売 却 する 以 外 には 共 有 物 である 住 居 の 譲 渡 方 法 はない この 場 合 も 1 個 人 は 一 連 の 行 為 の 結 果 自 己 が 持 分 を 有 する 住 居 を 失 い 住 居 の 再 取 得 の 必 要 性 が 生 じその 個 人 の 担 税 力 は 高 くない ため その 個 人 を 保 護 する 必 要 性 があるし また 2 自 己 が 持 分 を 有 する 住 居 ( 土 地 建 物 )を 売 却 する 方 法 としてかかる 一 連 の 行 為 により 更 地 となった 土 地 を 売 却 した 場 合 に も 税 制 上 の 保 護 を 与 えないと 実 質 上 共 有 物 である 住 居 の 処 分 に 制 限 が 加 わり 共 有 者 の 保 護 を 単 独 所 有 者 に 比 べ 不 当 に 低 くする ことになって 相 当 ではない したがって 措 置 法 35 条 1 項 は その 立 法 趣 旨 から 上 記 の 一 連 の 行 為 により 更 地 となった 土 地 を 売 却 した 場 合 にも 当 然 に 適 用 があるといえ る 上 記 の 一 連 の 行 為 により 共 有 物 である 住 居 の 持 分 の 全 部 を 譲 渡 する 場 合 は 単 独 所 有 の 建 物 を 一 部 取 壊 した 場 合 と 建 物 を 一 部 取 壊 しているという 表 面 上 の 共 通 性 はあるが 前 者 の 場 合 には 個 人 は 住 居 の 権 利 全 部 を 譲 渡 しているのに 対 し 後 者 の 場 合 には 住 居 の 一 部 譲 渡 であるという 大 きな 相 違 がある 後 者 の 場 合 には 一 部 譲 渡 であるがゆえに 権 利 を 有 する 残 存 家 屋 が 居 住 可 能 かという 物 理 的 形 状 の 論 点 が 生 じることになるが 前 者 の 場 合 には そもそも 全 部 譲 渡 しているがゆ えに 物 理 的 形 状 の 論 点 は 生 じない 形 式 的 な 判 断 である 点 について 共 有 物 である 住 居 ( 土 地 建 物 )について そ の 建 物 の 一 部 を 取 壊 して 残 存 家 屋 + 敷 地 と 更 地 の2つに 分 け 共 有 者 間 で 共 有 物 を 分 割 する 場 合 形 式 的 には この 分 割 中 の 一 時 点 で 残 存 家 屋 の 持 分 を 共 有 者 全 員 が 有 -11 -

している 時 点 が 生 じる 原 審 は その 時 点 を 形 式 的 にとらえ 残 存 家 屋 に 対 する 持 分 を 控 訴 人 が 有 したとする しかし 控 訴 人 と 訴 外 己 は 共 有 物 である 住 居 ( 土 地 建 物 )を 残 存 家 屋 + 敷 地 と 更 地 の2つに 分 け 残 存 家 屋 + 敷 地 を 己 が 取 得 し 更 地 を 控 訴 人 が 取 得 するとい う 方 法 で 共 有 物 の 分 割 を 行 ったのであり 残 存 家 屋 についての 控 訴 人 の 持 分 全 部 の 己 へ の 贈 与 は 対 抗 要 件 としての 登 記 を 備 えるた めの 法 技 術 ないし 便 法 にすぎない かかる 形 式 的 な 理 由 により 住 居 の 持 分 全 部 を 譲 渡 し その 結 果 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 い 新 たに 住 居 を 取 得 する 必 要 の 生 じた 控 訴 人 に 対 して 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 を 拒 否 することは 立 法 趣 旨 に 反 し 著 しく 不 当 で ある 事 実 誤 認 について 原 判 決 は 本 件 家 屋 部 分 が 取 り 壊 された 時 点 で 己 が 当 然 に 本 件 残 存 家 屋 部 分 につき 単 独 で 所 有 権 を 有 することとなるとする 合 意 等 がされたことを 認 めるに 足 りる 証 拠 はな い との 事 実 認 定 を 行 った しかし 本 件 建 物 の 一 部 を 取 壊 し 残 存 家 屋 の 単 独 所 有 権 を 己 が 取 得 することについて 事 前 の 合 意 があったことは 多 数 の 証 拠 が 存 在 するうえ その 事 実 の 存 在 を 否 定 する 証 拠 は 存 在 しない しかも 被 控 訴 人 もこの 事 実 につき 不 知 と 述 べるのみで 積 極 的 には 争 っていない 以 上 のとおり 共 有 物 である 建 物 を 取 壊 して 残 存 家 屋 の 単 独 所 有 権 を 訴 外 己 に 取 得 させ その 登 記 を 行 うことについて 当 事 者 間 に 同 意 があったことは 証 拠 上 明 らかであり 原 判 決 には 事 実 誤 認 がある 控 訴 人 は 本 件 家 屋 部 分 が 取 り 壊 された 時 点 で 己 が 当 然 に 本 件 残 存 家 屋 部 分 について 単 独 で 所 有 権 を 有 することにする 旨 の 事 前 の 合 意 ( 以 下 本 件 合 意 という )があった と 主 張 するが 上 記 事 前 の 合 意 があったこと の 証 拠 として 提 出 された 控 訴 人 の 弟 である 戊 の 日 記 には 具 体 的 に 控 訴 人 と 己 が 合 意 し たことを 示 すような 記 載 は 認 められず その ほか 控 訴 人 と 己 とが 事 前 に 上 記 合 意 に 至 っ たことを 示 す 客 観 的 な 証 拠 は 認 められない から 原 判 決 の 認 定 が 事 実 誤 認 であるとする 控 訴 人 の 主 張 は 失 当 といわざるを 得 ない 仮 に 本 件 合 意 があった 場 合 本 件 家 屋 部 分 の 取 壊 し 時 点 において 己 は 当 然 に 残 存 家 屋 部 分 につき 単 独 で 所 有 権 を 有 することに なるため 本 件 家 屋 部 分 の 取 壊 しをもって 控 訴 人 の 居 住 用 家 屋 の 全 部 を 取 り 壊 したとみ ることができるようにも 思 われる しかしな - 12 -

がら 措 置 法 35 条 1 項 は 例 外 的 に 認 めら れる 優 遇 措 置 であることからすれば 租 税 負 担 公 平 の 原 則 から 不 公 平 の 拡 大 を 防 止 する ため 解 釈 の 狭 義 性 厳 格 性 が 要 請 されると いうべきであり 実 質 に 踏 み 込 まないとその 有 無 を 判 断 できない 本 件 合 意 を その 解 釈 に 持 ち 込 むべきではないというべきである また 本 件 合 意 があったとしても 本 件 建 物 は 本 件 家 屋 部 分 と 本 件 残 存 家 屋 部 分 とに 区 分 して 所 有 できる 構 造 にはなかったのであ るから 本 件 合 意 の 内 容 は 本 件 家 屋 部 分 の 取 壊 しと 同 時 に 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 係 る 控 訴 人 の 共 有 持 分 4 分 の 1 を 己 へ 移 転 するこ とを 内 容 とするものと 解 さざるを 得 ない そ うすると 取 り 壊 された 本 件 家 屋 部 分 は 控 訴 人 と 己 が 共 有 する 家 屋 の 一 部 分 であると 解 さざるを 得 ず また 本 件 残 存 家 屋 部 分 に 係 る 控 訴 人 の 共 有 持 分 は 取 壊 しではなく 己 への 共 有 持 分 の 移 転 により 失 われたもの と 解 さざるを 得 ない 東 京 高 裁 平 成 22 年 7 月 15 日 判 決 < 認 定 事 実 > 被 控 訴 人 は 本 件 建 物 取 毀 しに 関 する 合 意 の 成 立 を 争 っているが 上 記 認 定 の 控 訴 人 と 己 の 本 件 建 物 一 部 取 り 毀 しに 至 るまでの 本 件 建 物 での 居 住 の 実 情 とその 経 緯 本 件 遺 産 分 割 の 内 容 さらに 実 際 に 本 件 建 物 が 己 の 居 住 部 分 を 除 いて 取 り 壊 され 控 訴 人 が 本 件 建 物 から 転 居 するに 至 った 経 緯 に 照 らすと 本 件 合 意 がなされたとみるのが 当 事 者 の 合 理 的 意 思 解 釈 として 素 直 な 見 方 というべきであり これに 沿 う 証 拠 も 存 在 するものである も っとも その 後 本 件 建 物 の 控 訴 人 の 共 有 持 分 4 分 の 1 について 己 に 対 し 平 成 16 年 7 月 7 日 付 けで 同 月 3 日 贈 与 を 原 因 とする 所 有 権 移 転 登 記 が 経 由 されていることは 本 件 合 意 の 存 在 と 矛 盾 するとの 見 方 もあり 得 ると 思 われる しかしながら 当 事 者 間 の 合 意 として は 一 棟 の 建 物 の 一 部 についてその 所 有 権 を 移 転 することは 可 能 というべきであり 実 際 に 移 転 部 分 についてこれを 建 物 として 取 得 し 登 記 上 も 反 映 させるためには 区 分 建 物 とし ての 実 態 を 整 えるための 作 業 が 必 要 となるところ 最 終 的 には 取 り 毀 しが 予 定 されていた ためにそのような 措 置 を 採 らず 本 件 建 物 取 毀 しに 関 する 合 意 を 踏 まえて 本 件 のような 便 宜 の 登 記 が 経 由 されたとみるのが 相 当 である( 本 件 合 意 の 趣 旨 からすると 当 事 者 の 合 理 - 13 -

的 意 思 解 釈 としては 本 件 建 物 の 一 部 取 り 毀 しに 際 しては その 部 分 に 対 する 己 の 共 有 持 分 の 放 棄 がなされることとの 見 合 いで 残 存 家 屋 部 分 に 対 する 控 訴 人 の 共 有 持 分 の 放 棄 が されることが 合 意 されていたとみるべきであり 贈 与 ではなく 放 棄 としたほうが 権 利 の 実 体 に 沿 うものである ) そして 他 に 本 件 合 意 の 成 立 についての 上 記 認 定 を 覆 すに 足 る 証 拠 はない < 争 点 1> (1) 措 置 法 35 条 1 項 に 定 める 本 件 特 別 控 除 は 個 人 が 自 ら 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 又 はその 敷 地 等 を 譲 渡 するような 場 合 は これに 代 わる 居 住 用 財 産 を 取 得 するのが 通 常 であ るなど 一 般 の 資 産 の 譲 渡 に 比 して 特 殊 な 事 情 があり 担 税 力 も 高 くない 例 が 多 いことな どを 考 慮 して 設 けられた 特 例 であると 解 される そして 措 置 法 35 条 1 項 は 土 地 又 はそ の 土 地 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 に 関 しては 災 害 により 当 該 土 地 の 上 に 存 する 家 屋 が 滅 失 し た 場 合 を 除 いては 個 人 の 居 住 の 用 に 供 し 又 は 供 されていた 家 屋 が 現 存 し かつ その 家 屋 とともにその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 等 の 譲 渡 がされる 場 合 を 本 件 特 別 控 除 の 対 象 としており 家 屋 を 任 意 に 取 り 壊 すなどした 上 でその 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 のみ の 譲 渡 をする 場 合 については 直 接 の 定 めが 置 かれていない ところで その 上 に 家 屋 の 存 する 土 地 の 取 引 において 当 該 家 屋 を 必 要 としない 買 主 が 当 該 家 屋 を 売 主 の 負 担 において 取 り 壊 すことを 求 めることがしばしば 見 られるのは 公 知 の 事 情 であり 上 記 に 述 べた 措 置 法 35 条 1 項 の 趣 旨 からすれば 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 した 上 当 該 土 地 のみの 譲 渡 をした 場 合 は 上 記 の 家 屋 をその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 と ともに 譲 渡 をした 場 合 に 準 ずるものとして 措 置 法 35 条 1 項 の 要 件 に 該 当 すると 解 するこ とができる( 措 置 法 通 達 35-2 参 照 ) 問 題 となるのは 本 件 のように 土 地 建 物 について 共 有 持 分 を 有 する 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 部 分 の 敷 地 に 相 当 する 部 分 を 分 割 取 得 し これに 代 わる 居 住 資 産 を 取 得 するために 当 該 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 部 分 を 取 り 壊 し そのうえで 分 割 取 得 し た 土 地 を 更 地 で 譲 渡 した 場 合 である このような 場 合 についても 個 人 が 自 ら 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 又 はその 敷 地 等 を これに 代 わる 居 住 用 財 産 を 取 得 するために 譲 渡 すると いう 点 では 同 じであり 一 般 の 資 産 の 譲 渡 に 比 して 特 殊 な 事 情 があり 担 税 力 も 高 くない ということができるものである 確 かに 措 置 法 35 条 1 項 の 文 理 のほか 建 物 の 所 有 権 の 権 利 の 対 象 としての 特 性 に 照 ら し 同 項 にいう 家 屋 の 譲 渡 が 当 該 家 屋 の 全 体 の 譲 渡 を 予 定 しているとはいえるが 一 方 で 建 物 については 一 棟 の 建 物 であっても 所 有 者 がこれを 区 分 したときは その 区 分 した 建 物 の 所 有 権 の 譲 渡 は 許 されるというべきであり また 共 有 建 物 にあっては 共 有 建 物 を 分 割 し 区 分 所 有 建 物 として 譲 渡 する 場 合 や 共 有 持 分 自 体 を 消 滅 させるような 場 合 を 想 定 すると 一 棟 の 建 物 のうちの 一 部 の 譲 渡 であっても これがその 敷 地 部 分 の 譲 渡 との 関 - 14 -

係 で 単 独 所 有 建 物 の 譲 渡 ないしは 取 り 毀 しと 同 視 できる 場 合 があるというべきであって そのような 場 合 には 措 置 法 35 条 1 項 の 要 件 に 該 当 すると 解 すべきである そうであるとすれば 土 地 上 に 一 棟 の 建 物 が 存 する 場 合 において 土 地 建 物 それぞれに ついて 共 有 持 分 を 有 し 同 建 物 に 居 住 する 者 同 士 が お 互 いの 共 有 持 分 に 相 当 する 土 地 部 分 の 分 割 に 加 え 建 物 についてもお 互 いの 取 得 する 土 地 上 の 建 物 部 分 についてこれを 建 物 として 区 分 することに 合 意 し そのうえで 一 方 が 自 らが 分 割 取 得 した 共 有 土 地 部 分 上 に 存 する 建 物 部 分 を 取 り 壊 したうえで その 敷 地 に 相 当 する 共 有 土 地 部 分 を 譲 渡 し 他 の 共 有 者 が 同 じく 分 割 取 得 した 土 地 上 の 残 存 家 屋 について 単 独 で 所 有 権 を 取 得 し その 結 果 分 割 取 得 した 共 有 土 地 部 分 を 譲 渡 した 共 有 者 が 建 物 の 共 有 持 分 を 喪 失 したと 認 められる 場 合 においては これを 全 体 としてみる 限 りは 共 有 者 の 一 人 が 自 らの 土 地 上 に 存 する 自 らが 所 有 し 居 住 する 建 物 を 取 り 壊 したうえで その 敷 地 部 分 を 譲 渡 した 場 合 と 同 視 することが できるというべきである もっとも 建 物 所 有 権 の 取 得 という 点 について これを 厳 格 にみた 場 合 取 り 毀 しの 対 象 となる 建 物 部 分 についても 区 分 建 物 としての 要 件 が 備 わっていることが 必 要 となるが 物 理 的 な 意 味 では 建 物 の 分 割 は 可 能 であるというべきであって 上 記 のような 一 連 の 手 続 をとり 共 有 当 事 者 間 の 合 意 を 経 て 最 終 的 には 建 物 部 分 の 取 り 毀 しに 至 ることからする と あえて そこまでの 要 件 を 求 めるのは 相 当 とはいえないから( 本 件 特 別 控 除 を 受 ける ためだけに いったん 区 分 建 物 としての 形 状 を 整 えるための 工 事 をし そのうえで 建 物 を 取 り 壊 せとは 言 い 難 い ) 建 物 部 分 取 り 壊 しの 結 果 分 割 取 得 した 共 有 土 地 部 分 を 譲 渡 し た 共 有 者 が 建 物 の 共 有 持 分 を 喪 失 したという 要 件 を 満 たせば 足 りると 考 えるものである 結 局 上 記 のような 一 連 の 手 続 の 結 果 残 存 家 屋 につき 他 の 共 有 者 がこれを 単 独 取 得 し ていれば( 言 い 換 えると 残 存 家 屋 につき 土 地 を 譲 渡 した 共 有 者 の 権 利 が 存 在 しなけれ ば) 措 置 法 35 条 1 項 の 要 件 を 満 たすと 解 すべきである なお 被 控 訴 人 は 措 置 法 35 条 1 項 は 例 外 的 に 認 められる 優 遇 措 置 であることからす れば 租 税 負 担 公 平 の 原 則 から 不 公 平 の 拡 大 を 防 止 するため 解 釈 の 狭 義 性 厳 格 性 が 要 請 されるというべきであり 当 該 規 定 を 受 けた 措 置 法 通 達 35-2 及 び 同 35-5 で 準 用 する 同 31 の 3-10 は 厳 格 に 適 用 されるべきであり 疑 義 を 差 しはさむことのないような 形 式 的 基 準 を もって 運 用 されるべきものであると 主 張 する しかしながら 土 地 とその 土 地 上 にある 一 棟 の 建 物 をそれぞれ 共 有 したうえで 生 計 を 異 にして 建 物 内 で 生 活 している 本 件 の 控 訴 人 と 己 のような 例 を 想 定 すると 土 地 を 分 割 し 併 せて 建 物 も 実 質 的 に 分 割 すべく 自 らの 居 住 部 分 のみを 取 り 壊 してその 敷 地 を 譲 渡 した 者 について 残 存 家 屋 部 分 が 建 物 として 残 るとの 理 由 だけで 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 の 余 地 を 一 切 否 定 するのは 措 置 法 35 条 1 項 と これを 受 けた 措 置 法 通 達 35-2 の 趣 旨 に 照 らしても 相 当 とはいえないと 考 えるものである そして 上 記 のような 限 定 的 な 要 件 のもとで 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 の 余 地 を 認 めること は 措 置 法 35 条 1 項 とこれを 受 けた 措 置 法 通 達 35-2 の 趣 旨 に 沿 うだけでなく 法 35 条 1 項 の 解 釈 の 狭 義 性 厳 格 性 に 反 するとはいえないというべきである - 15 -

(2)そこで 本 件 について 検 討 すると 事 実 によれば 控 訴 人 と 己 は 本 件 遺 産 分 割 に より 旧 199 番 1 の 土 地 と 本 件 建 物 について それぞれの 共 有 持 分 を 有 していたところ 前 記 認 定 の 本 件 建 物 取 毀 しに 関 する 合 意 本 件 建 物 を 二 つに 分 割 し 控 訴 人 が 取 得 する 本 件 建 物 の 分 割 部 分 ( 控 訴 人 居 住 部 分 )を 取 り 壊 すとともに それぞれの 居 住 部 分 に 対 応 し て 旧 199 番 1 の 土 地 を 二 筆 に 分 筆 し 控 訴 人 が 取 得 する 本 件 土 地 についてはその 上 に 存 す る 本 件 建 物 の 分 割 部 分 を 取 り 壊 して これを 更 地 にしたうえで 第 三 者 に 売 却 し 控 訴 人 が その 売 却 代 金 を 取 得 して 転 居 することとし 一 方 で 己 は 旧 199 番 1 の 残 りの 土 地 と 同 地 上 の 残 存 家 屋 を 取 得 する 旨 の 合 意 をしたうえで 控 訴 人 が 自 らが 取 得 した 本 件 土 地 上 に 存 する 本 件 建 物 部 分 を 取 り 壊 してその 敷 地 に 相 当 する 本 件 土 地 を 第 三 者 に 譲 渡 し 一 方 で 己 が 単 独 で 残 存 家 屋 について 所 有 権 を 取 得 したというのであり 本 件 合 意 の 趣 旨 としては 本 件 建 物 の 一 部 取 り 毀 しに 際 しては その 部 分 に 対 する 己 の 共 有 持 分 の 放 棄 がなされるこ との 見 合 いで 残 存 家 屋 部 分 に 対 する 控 訴 人 の 共 有 持 分 の 放 棄 がなされることが 合 意 され ていたものとみるべきであるから 控 訴 人 は 上 記 一 連 の 手 続 の 結 果 本 件 建 物 の 共 有 持 分 を 喪 失 したことが 明 らかである(なお 己 に 対 し 平 成 16 年 7 月 7 日 付 けで 同 月 3 日 贈 与 を 原 因 とする 控 訴 人 の 本 件 建 物 の 共 有 持 分 4 分 の 1 の 所 有 権 移 転 登 記 が 経 由 されてい るが これは 便 宜 上 なされた 措 置 で 実 体 とは 符 合 しないことは 前 記 認 定 のとおりである 実 体 的 には 控 訴 人 は 本 件 建 物 取 毀 しに 関 する 合 意 により 本 件 建 物 の 一 部 取 り 毀 しの 際 に 残 存 家 屋 に 対 する 共 有 持 分 を 放 棄 したものとみるべきである ) そうすると 以 上 の ような 経 緯 に 照 らす 限 り 控 訴 人 による 本 件 土 地 の 第 三 者 への 譲 渡 は 自 らの 所 有 する 土 地 上 に 存 する 自 らが 所 有 し 居 住 する 建 物 を 取 り 壊 したうえで その 敷 地 部 分 を 第 三 者 に 譲 渡 した 場 合 と 同 視 することができるというべきであり 措 置 法 35 条 1 項 の 要 件 に 該 当 する と 解 するのが 相 当 である < 争 点 2> 控 訴 人 は 平 成 18 年 3 月 10 日 小 田 原 税 務 署 長 あてに 本 件 確 定 申 告 書 を 提 出 したが その 際 控 訴 人 は 本 件 譲 渡 に 係 る 長 期 譲 渡 所 得 の 金 額 を 1613 万 3655 円 納 付 すべき 税 額 を 210 万 0600 円 と 記 載 する 一 方 で 本 件 譲 渡 について 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとす る 旨 の 記 載 をしなかったことが 認 められる そこで 控 訴 人 について 措 置 法 35 条 3 項 が 規 定 する やむを 得 ない 事 情 があったと いえるかについて 検 討 する 措 置 法 35 条 3 項 が 規 定 する やむを 得 ない 事 情 とは 天 災 その 他 本 人 の 責 めに 帰 すこ とができない 客 観 的 事 情 があって 居 住 用 財 産 の 譲 渡 所 得 の 特 別 控 除 の 制 度 趣 旨 に 照 らし 納 税 者 に 対 して その 適 用 を 拒 否 することが 不 当 又 は 酷 となる 場 合 をいうものと 解 するの が 相 当 である これを 本 件 についてみると 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば 控 訴 人 は 実 弟 である 戊 と - 16 -

ともに 本 件 確 定 申 告 書 を 提 出 するに 際 して 再 三 にわたり 小 田 原 税 務 署 を 訪 れ 担 当 官 に 対 して 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 を 望 む 旨 伝 え これが 認 められるかどうかについて 相 談 したが 小 田 原 税 務 署 からは いずれの 相 談 に 際 しても 本 件 は 建 物 の 一 部 譲 渡 であるか ら 認 められないとの 回 答 がなされたこと 控 訴 人 は 戊 を 通 じて 本 件 の 補 佐 人 である 林 税 理 士 とも 相 談 したが 本 件 については 判 例 も 前 例 もない 難 解 な 問 題 であるとのことで あり 後 に 処 分 を 受 けて 加 算 税 を 課 せられた 場 合 のリスクは 大 きいと 考 え 本 件 の 特 別 控 除 を 適 用 しての 申 請 を 断 念 したこと しかし その 後 に 林 税 理 士 から 法 律 の 解 釈 が 不 明 であるために 加 算 税 が 課 せられることを 避 けるために 税 務 署 の 見 解 に 従 った 申 告 をせざる を 得 なかった 場 合 にも 1 年 以 内 であれば 更 正 の 請 求 を 行 うことができるとの 助 言 を 得 て 平 成 18 年 12 月 27 日 に 小 田 原 税 務 署 長 に 対 して 更 正 の 請 求 をしたことが 認 められる 本 件 譲 渡 に 本 件 特 別 控 除 の 適 用 があるといえるかについての 判 断 は2で 述 べたとお りであって 原 審 と 当 審 は 判 断 を 異 にするものである このような 本 件 における 法 律 解 釈 の 難 しさに 加 え 上 記 のような 控 訴 人 が 本 件 譲 渡 について 更 正 の 請 求 をするに 至 った 経 緯 に 照 らすと 控 訴 人 が 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとする 旨 を 記 載 した 確 定 申 告 書 を 提 出 しなかったことについては 措 置 法 35 条 3 項 が 規 定 する やむを 得 ない 事 情 があっ たと 認 めるのが 相 当 である 検 討 本 件 は < 争 点 1> 共 有 物 であった 1 の 建 物 の 一 部 を 取 り 壊 し その 敷 地 の 用 に 供 され ていた 土 地 を 分 筆 した 上 で 取 り 壊 した 建 物 の 用 に 供 されていた 土 地 を 更 地 として 売 却 し た 場 合 に 措 置 法 35 条 1 項 の 特 別 控 除 を 用 いることができるのか < 争 点 2> 確 定 申 告 要 件 である 特 別 控 除 を 用 いるに 当 たって 税 務 当 局 から 否 認 される 危 険 性 が 高 い 場 合 に 更 正 の 請 求 によって 特 別 控 除 を 用 いることが 許 されるのか という 2 つの 争 点 について 争 わ れた 事 例 である < 先 行 事 例 > (1) 最 高 裁 昭 和 57 年 9 月 30 日 判 決 (TAINS コート Z127-5078) 引 用 は 東 京 地 裁 昭 和 54 年 11 月 19 日 判 決 ( 行 裁 例 集 30 巻 11 号 1884 頁 TAINS コート Z109-4502) 措 置 法 35 条 1 項 は 個 人 がその 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 とともにその 敷 地 の 用 に 供 し ている 土 地 の 譲 渡 をした 場 合 の 譲 渡 所 得 について 特 別 控 除 を 認 めているが その 趣 旨 は 右 のような 居 住 用 財 産 の 譲 渡 によって 住 居 を 失 った 場 合 には これに 代 わる 新 たな 住 居 を 取 得 しなければならなくなるのが 通 常 であることを 考 慮 して 右 譲 渡 による 税 負 担 をでき るだけ 軽 減 しようとしたものである このような 立 法 趣 旨 からすると 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 を その 敷 地 の 用 に 供 している 土 地 を 更 地 として 譲 渡 する 目 的 で 取 り 壊 した 上 当 該 土 地 のみを 譲 渡 した 場 合 には 家 屋 を 敷 地 とともに 譲 渡 した 場 合 に 準 ず るものとして 措 置 法 35 条 1 項 に 該 当 すると 解 するのが 相 当 であり 更 にそれにとどまらず - 17 -

本 件 のように 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 の 敷 地 の 一 部 を 更 地 として 譲 渡 す るために 当 該 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 し その 取 壊 部 分 の 敷 地 を 譲 渡 した 場 合 にも 右 取 壊 し が 敷 地 を 更 地 にするために 必 要 な 限 度 のものであり かつ 右 取 壊 しによつて 残 存 家 屋 が 居 住 の 用 に 供 し 得 なくなつたときは これに 代 わる 新 たな 住 居 の 取 得 を 必 要 とすることにな るのであるから 右 譲 渡 につき 措 置 法 35 条 1 項 を 拡 張 適 用 する 余 地 があるものと 解 される 本 件 土 地 売 却 の 際 の 一 部 取 壊 しによつても 本 件 家 屋 は 居 住 者 である 原 告 及 びその 母 の 居 住 の 用 に 継 続 して 供 し 得 たものであり 原 告 らが 転 居 したのは 本 件 家 屋 が 居 住 の 用 に 供 し 得 なくなつたためではなく 本 件 残 地 を A 社 に 賃 貸 し 原 告 らの 入 居 するビルを 建 て るための 準 備 としてなされたものと 認 めるのが 相 当 であり この 認 定 を 覆 すに 足 る 証 拠 は ない (2) 京 都 地 裁 平 成 3 年 10 月 18 日 判 決 ( 判 タ 774 号 161 頁 TAINS コート Z186-6789) 認 定 事 実 によれば 本 件 建 物 は もともと 構 造 的 にみて 日 常 生 活 を 基 本 的 に 営 むための 水 道 設 備 台 所 風 呂 等 もなく 母 屋 の 付 属 建 物 として 母 屋 と 一 体 で 利 用 される 構 造 を 有 し 物 理 的 に 一 体 性 があり 実 際 にも 本 件 建 物 は 母 屋 の 付 属 建 物 として 買 い 入 れ 以 後 原 告 やその 子 供 らの 家 族 が 入 れ 替 わり 住 居 として 利 用 してきた 経 緯 があり また 原 告 は 長 女 A の 夫 D に 生 計 を 依 存 し 原 告 と D の 生 計 は 一 体 であつたこと 原 告 は 母 屋 を 利 用 せずに 本 件 建 物 で 独 立 して 生 活 していたとは 到 底 考 えられず D 及 びその 家 族 が 母 屋 に 転 入 した 昭 和 54 年 4 月 3 日 以 降 同 人 らが 母 屋 から 転 出 した 昭 和 59 年 6 月 3 日 までの 間 も 含 め その 前 後 を 通 じ 終 始 母 屋 を 利 用 していたことなどを 考 え 併 せると 本 件 建 物 は 構 造 上 利 用 上 母 屋 と 一 体 となつたその 付 属 建 物 であつて これが 原 告 主 張 のように 母 屋 と 独 立 した 居 住 用 家 屋 であるとの 事 実 が 認 められないことが 明 らかであり 右 主 張 に 副 い 本 件 建 物 と 母 屋 は 当 初 から 或 いは 途 中 からベニヤの 壁 で 仕 切 られていたとか 原 告 はもともと 独 立 した 建 物 に 居 住 していて これを 出 て 他 人 に 賃 貸 していた 独 立 の 家 屋 である 母 屋 を 明 け 渡 して 貰 つてこれに 入 居 したという 原 告 本 人 尋 問 の 結 果 の 一 部 は 各 証 拠 弁 論 の 全 趣 旨 に 照 らし 遽 かに 措 信 できず 他 にこれを 認 めるに 足 る 的 確 な 証 拠 がない 証 拠 を 総 合 すれば 以 下 の 事 実 が 認 められ 右 認 定 に 反 する 証 拠 がない (1) 母 屋 には もともと 関 西 電 力 のメーターが 設 置 され 実 際 に 使 用 されており 電 気 設 備 があつた (2) 母 屋 には 従 来 から 水 道 設 備 があり 水 道 が 使 用 されていた (3) 原 告 は 昭 和 56 年 から 同 57 年 にかけて 母 屋 を 改 造 し 母 屋 には 洗 面 所 便 所 浴 室 等 がある 右 認 定 事 実 によれば 母 屋 にはもともと 基 本 的 日 常 生 活 を 営 むに 必 要 な 設 備 が 整 つていたことが 認 め られること さらに 事 実 によれば 原 告 及 び A あるいは 原 告 の 次 男 C 及 びその 家 族 は 本 件 譲 渡 後 に 残 存 する 母 屋 に 居 住 しているのであるから 残 存 した 母 屋 は 本 件 譲 渡 によ つて 何 ら 生 活 上 の 機 能 を 失 われなかつたことが 明 らかであるから 母 屋 はもともとそれ - 18 -

だけで 独 立 した 生 活 機 能 を 有 する 居 住 用 の 家 屋 であり 本 件 譲 渡 後 もその 機 能 を 維 持 し ていることが 認 められる 先 行 事 例 を 検 討 するに < 争 点 1>については 居 住 用 財 産 を 譲 渡 した 場 合 には 通 常 新 たに 居 住 用 代 替 資 産 の 取 得 がなされること 通 常 の 居 住 用 財 産 であれば 特 別 控 除 額 の 範 囲 内 で 居 住 用 代 替 資 産 を 取 得 できると 考 えられること を 考 慮 した 措 置 法 35 条 1 項 の 立 法 趣 旨 に 即 して 居 住 用 財 産 の 一 部 を 取 り 壊 した 結 果 残 存 家 屋 が 居 住 の 用 に 供 さなくなっ た 場 合 には 一 部 取 り 壊 しにより 更 地 にした 居 住 用 に 供 されていた 土 地 の 譲 渡 に 措 置 法 35 条 1 項 の 特 別 控 除 を 用 いることができる と 考 えられてきたものといえる 本 件 では 原 告 と 己 との 共 有 財 産 であった 本 件 建 物 のうち 原 告 が 居 住 する 部 分 に 当 た る 原 告 が 相 続 により 取 得 した 持 分 1/4を 取 り 壊 すとともに 原 告 から 持 分 1/4を 己 に 贈 与 した 場 合 に 残 存 家 屋 に 己 及 びその 家 族 が 居 住 しているから 先 行 事 例 から 判 断 す れば 措 置 法 35 条 1 項 の 特 別 控 除 の 適 用 はないものと 考 えられる しかし 原 告 は 自 己 の 居 住 する 居 住 用 財 産 を 取 り 壊 して 更 地 にして 譲 渡 した 上 で 自 己 の 居 住 用 代 替 資 産 を 取 得 しているのであるから 原 告 の 居 住 の 実 体 からすれば 措 置 法 の 立 法 趣 旨 に 合 致 した 状 況 にはある 地 裁 は 従 来 からの 先 例 に 従 い 居 住 用 資 産 の 一 部 が 取 り 壊 されたとはいえ 残 存 家 屋 が 居 住 の 用 に 供 し 得 ない 状 況 になっていないことを 鑑 み 措 置 法 35 条 1 項 の 特 別 控 除 の 適 用 はないものと 判 断 した 措 置 法 35 条 1 項 が 政 策 税 制 である から 本 件 のように 家 屋 の 一 部 取 壊 し 土 地 の 譲 渡 後 も 残 存 部 分 で 居 住 を 継 続 できる 場 合 にまで 本 件 特 例 を 認 め ることは 妥 当 ではなく 判 示 は 妥 当 である 1 とも 考 えられる しかし 先 行 事 例 (1)が 判 示 したように 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 に 拡 張 解 釈 の 余 地 を 残 しているのは 居 住 用 財 産 の 処 分 は 一 般 の 資 産 の 譲 渡 に 比 して 特 殊 な 事 情 にあり 担 税 力 が 弱 いことなどを 考 慮 する という 同 条 項 の 趣 旨 にあることは 明 らかであり かかる 趣 旨 を 徹 底 させれば 一 連 の 行 為 の 結 果 自 己 の 所 有 する 住 居 を 失 い 新 たな 住 居 の 取 得 の 必 要 性 が 生 じたかどうか により 本 件 特 別 控 除 の 適 用 の 有 無 を 判 断 するというXの 主 張 も 一 理 あるように 思 える しかし 裁 判 所 としては 措 置 法 35 条 1 項 の 規 定 を 空 文 化 する ようなかかる 解 釈 を 採 ることには 抵 抗 があったのではないか そこで 控 訴 審 裁 判 所 は 自 ら 判 示 するように 限 定 的 な 要 件 のもとで 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 を 余 地 を 認 め 同 条 項 の 適 用 の 範 囲 に 一 定 の 限 定 を 付 した 2 と 捉 える 向 きもある 控 訴 審 判 決 は 認 定 事 実 において 被 控 訴 人 は 本 件 建 物 取 毀 しに 関 する 合 意 の 成 立 を 1 村 野 清 文 居 住 用 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 し その 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 を 譲 渡 した 場 合 に 租 税 特 別 措 置 法 35 条 ( 居 住 用 財 産 の 譲 渡 所 得 3000 万 円 特 別 控 除 ) 適 用 を 認 めなかっ た 事 例 RETIO78 号 (2010) 133 頁 2 橋 本 浩 史 同 一 建 物 に 居 住 しその 敷 地 を 共 有 する 者 の 間 で 土 地 建 物 を 分 割 し 一 方 が 分 割 取 得 した 建 物 部 分 を 取 り 壊 し その 敷 地 部 分 を 第 三 者 に 譲 渡 した 場 合 において 租 税 特 別 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 が 認 められた 事 例 税 経 通 信 2011 年 2 月 号 (2011) 198 頁 - 19 -

争 っているが 上 記 認 定 の 控 訴 人 と 己 の 本 件 建 物 一 部 取 り 毀 しに 至 るまでの 本 件 建 物 での 居 住 の 実 情 とその 経 緯 本 件 遺 産 分 割 の 内 容 さらに 実 際 に 本 件 建 物 が 己 の 居 住 部 分 を 除 いて 取 り 壊 され 控 訴 人 が 本 件 建 物 から 転 居 するに 至 った 経 緯 に 照 らすと 本 件 合 意 が なされたとみるのが 当 事 者 の 合 理 的 意 思 解 釈 として 素 直 な 見 方 というべき であり 本 件 合 意 の 趣 旨 からすると 当 事 者 の 合 理 的 意 思 解 釈 としては 本 件 建 物 の 一 部 取 り 毀 しに 際 しては その 部 分 に 対 する 己 の 共 有 持 分 の 放 棄 がなされることとの 見 合 いで 残 存 家 屋 部 分 に 対 する 控 訴 人 の 共 有 持 分 の 放 棄 がされることが 合 意 されていたとみるべきであり 贈 与 ではなく 放 棄 としたほうが 権 利 の 実 体 に 沿 うものである と 事 実 認 定 しており 事 実 認 定 において 原 告 が 共 有 物 件 の 持 分 を 放 棄 し 自 己 所 有 部 分 のみを 取 り 壊 し その 居 住 の 用 に 供 していた 土 地 を 譲 渡 したものと 認 定 したことによって 残 存 家 屋 には 原 告 の 持 分 は なく 原 告 の 居 住 の 用 に 供 されていないから 措 置 法 35 条 1 項 の 適 用 の 余 地 があるとした 判 決 の 射 程 距 離 が 限 定 される 事 例 判 決 として 判 示 されたものと 考 えるべきであろう また < 争 点 2>については 画 期 的 な 判 決 であるといえよう 本 件 における 法 律 解 釈 の 難 しさに 加 え 上 記 のような 控 訴 人 が 本 件 譲 渡 について 更 正 の 請 求 をするに 至 った 経 緯 に 照 らすと 控 訴 人 が 本 件 特 別 控 除 の 適 用 を 受 けようとする 旨 を 記 載 した 確 定 申 告 書 を 提 出 しなかったことについては 措 置 法 35 条 3 項 が 規 定 する やむを 得 ない 事 情 があっ たと 認 めるのが 相 当 である との 判 示 は 法 解 釈 の 困 難 性 により 依 頼 者 である 納 税 者 に 不 利 益 を 与 えることなく 納 税 者 の 意 図 する 納 税 行 為 を 実 行 する 上 で 更 正 の 請 求 の 使 い 勝 手 は 良 くなった 3 と 評 価 できよう しかし 納 税 者 の 事 情 は 裁 判 所 も 指 摘 するように しばしば 見 られる 日 常 的 な 話 であるにもかかわらず 納 税 者 の 負 担 が 控 訴 審 まで 継 続 した 事 実 は 重 い 4 のであり 問 題 の 早 期 解 決 を 図 るためにも 不 服 申 立 制 度 の 改 正 が 急 が れるところである また 本 件 においては 4 度 にわたり 税 務 署 に 相 談 する 等 の 行 動 がなさ れているが 文 書 回 答 制 度 を 効 果 的 に 用 いる 必 要 性 が 高 かった 事 例 であったともいえよう 3 後 藤 健 吉 共 有 家 屋 の 一 部 を 取 り 壊 して 敷 地 譲 渡 した 場 合 に 特 別 控 除 の 適 用 はあるか? 特 別 控 除 の 適 用 を 受 ける 旨 の 記 載 をしなかったことが やむを 得 ない 事 情 に 該 当 するか? 税 理 士 界 1278 号 (2011) 15 頁 4 林 仲 宣 谷 口 智 紀 居 住 用 財 産 の 特 別 控 除 税 務 弘 報 59 巻 3 号 (2011) 69 頁 - 20 -

参 考 条 文 租 税 特 別 措 置 法 ( 居 住 用 財 産 の 譲 渡 所 得 の 特 別 控 除 ) 第 三 十 五 条 個 人 が その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 で 政 令 で 定 めるものの 譲 渡 ( 当 該 個 人 の 配 偶 者 その 他 の 当 該 個 人 と 政 令 で 定 める 特 別 の 関 係 がある 者 に 対 してするもの 及 び 所 得 税 法 第 五 十 八 条 の 規 定 又 は 第 三 十 三 条 から 第 三 十 三 条 の 四 まで 第 三 十 七 条 第 三 十 七 条 の 四 第 三 十 七 条 の 七 若 しくは 第 三 十 七 条 の 九 の 二 から 第 三 十 七 条 の 九 の 五 までの 規 定 の 適 用 を 受 けるものを 除 く 以 下 この 条 において 同 じ ) 若 しくは 当 該 家 屋 とともにするその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 若 しくは 当 該 土 地 の 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 ( 譲 渡 所 得 の 基 因 となる 不 動 産 等 の 貸 付 けを 含 む 以 下 この 条 において 同 じ )をした 場 合 又 は 災 害 により 滅 失 した 当 該 家 屋 の 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 若 しくは 当 該 土 地 の 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 若 しくは 当 該 家 屋 で 当 該 個 人 の 居 住 の 用 に 供 されなくなつたものの 譲 渡 若 しくは 当 該 家 屋 で 当 該 個 人 の 居 住 の 用 に 供 されなくなつたものとともにするその 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 若 し くは 当 該 土 地 の 上 に 存 する 権 利 の 譲 渡 を これらの 家 屋 が 当 該 個 人 の 居 住 の 用 に 供 されな くなつた 日 から 同 日 以 後 三 年 を 経 過 する 日 の 属 する 年 の 十 二 月 三 十 一 日 までの 間 にした 場 合 には 当 該 個 人 がその 年 の 前 年 又 は 前 々 年 において 既 にこの 項 又 は 第 三 十 六 条 の 二 第 三 十 六 条 の 五 第 四 十 一 条 の 五 若 しくは 第 四 十 一 条 の 五 の 二 の 規 定 の 適 用 を 受 けている 場 合 を 除 き これらの 全 部 の 資 産 の 譲 渡 に 対 する 第 三 十 一 条 又 は 第 三 十 二 条 の 規 定 の 適 用 に ついては 次 に 定 めるところによる 一 第 三 十 一 条 第 一 項 中 長 期 譲 渡 所 得 の 金 額 ( とあるのは 長 期 譲 渡 所 得 の 金 額 から 三 千 万 円 ( 長 期 譲 渡 所 得 の 金 額 のうち 第 三 十 五 条 第 一 項 の 規 定 に 該 当 する 資 産 の 譲 渡 に 係 る 部 分 の 金 額 が 三 千 万 円 に 満 たない 場 合 には 当 該 資 産 の 譲 渡 に 係 る 部 分 の 金 額 とし 同 項 第 二 号 の 規 定 により 読 み 替 えられた 第 三 十 二 条 第 一 項 の 規 定 の 適 用 を 受 ける 場 合 には 三 千 万 円 から 同 項 の 規 定 により 控 除 される 金 額 を 控 除 した 金 額 と 当 該 資 産 の 譲 渡 に 係 る 部 分 の 金 額 とのいずれか 低 い 金 額 とする )を 控 除 した 金 額 ( とする 二 第 三 十 二 条 第 一 項 中 短 期 譲 渡 所 得 の 金 額 ( とあるのは 短 期 譲 渡 所 得 の 金 額 から 三 千 万 円 ( 短 期 譲 渡 所 得 の 金 額 のうち 第 三 十 五 条 第 一 項 の 規 定 に 該 当 する 資 産 の 譲 渡 に 係 る 部 分 の 金 額 が 三 千 万 円 に 満 たない 場 合 には 当 該 資 産 の 譲 渡 に 係 る 部 分 の 金 額 )を 控 除 した 金 額 ( とする 2 前 項 の 規 定 は その 適 用 を 受 けようとする 者 の 同 項 に 規 定 する 資 産 の 譲 渡 をした 日 の 属 する 年 分 の 確 定 申 告 書 に 同 項 の 規 定 の 適 用 を 受 けようとする 旨 及 び 同 項 の 規 定 に 該 当 する 事 情 の 記 載 があり かつ 当 該 譲 渡 による 譲 渡 所 得 の 金 額 の 計 算 に 関 する 明 細 書 その 他 財 務 省 令 で 定 める 書 類 の 添 附 がある 場 合 に 限 り 適 用 する 3 税 務 署 長 は 確 定 申 告 書 の 提 出 がなかつた 場 合 又 は 前 項 の 記 載 若 しくは 添 附 がない 確 - 1 -

定 申 告 書 の 提 出 があつた 場 合 においても その 提 出 又 は 記 載 若 しくは 添 附 がなかつたこと についてやむを 得 ない 事 情 があると 認 めるときは 当 該 記 載 をした 書 類 並 びに 同 項 の 明 細 書 及 び 財 務 省 令 で 定 める 書 類 の 提 出 があつた 場 合 に 限 り 第 一 項 の 規 定 を 適 用 することが できる 租 税 特 別 措 置 法 通 達 ( 居 住 用 土 地 等 のみの 譲 渡 ) 35-2 その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 ( 当 該 家 屋 でその 居 住 の 用 に 供 されなくなったもの を 含 む 以 下 この 項 において 同 じ )を 取 り 壊 し その 家 屋 の 敷 地 の 用 に 供 されていた 土 地 等 ( 土 地 及 び 土 地 の 上 に 存 する 権 利 をいう 以 下 35-5 までにおいて 同 じ )を 譲 渡 し た 場 合 (その 取 壊 し 後 当 該 土 地 等 の 上 にその 土 地 等 の 所 有 者 が 建 物 等 を 建 築 し 当 該 建 物 等 とともに 譲 渡 する 場 合 を 除 く )において 当 該 土 地 等 の 譲 渡 が 次 に 掲 げる 要 件 のす べてを 満 たすときは 当 該 譲 渡 は 措 置 法 第 35 条 第 1 項 に 規 定 する 譲 渡 に 該 当 するものと して 取 り 扱 う ただし その 居 住 の 用 に 供 している 家 屋 の 敷 地 の 用 に 供 されている 土 地 等 のみの 譲 渡 であっても その 家 屋 を 引 き 家 して 当 該 土 地 等 を 譲 渡 する 場 合 には 当 該 譲 渡 は 同 項 に 規 定 する 譲 渡 に 該 当 しない (1) 当 該 土 地 等 の 譲 渡 に 関 する 契 約 が その 家 屋 を 取 り 壊 した 日 から 1 年 以 内 に 締 結 さ れ かつ その 家 屋 を 居 住 の 用 に 供 されなくなった 日 以 後 3 年 を 経 過 する 日 の 属 する 年 の 12 月 31 日 までに 譲 渡 したものであること (2) その 家 屋 を 取 り 壊 した 後 譲 渡 に 関 する 契 約 を 締 結 した 日 まで 貸 付 けその 他 の 用 に 供 していない 当 該 土 地 等 の 譲 渡 であること ( 居 住 用 財 産 を 譲 渡 した 場 合 の 長 期 譲 渡 所 得 の 課 税 の 特 例 に 関 する 取 扱 いの 準 用 ) 35-5 その 者 が 譲 渡 した 家 屋 若 しくは 土 地 等 が 措 置 法 第 35 条 第 1 項 に 掲 げる 資 産 に 該 当 するかどうか 又 はこれらの 資 産 の 譲 渡 が 同 項 に 規 定 する 譲 渡 に 該 当 するかどうかの 判 定 等 については 31 の 3-2 31 の 3-6 から 31 の 3-15 まで 31 の 3-17 31 の 3-18 及 び 31 の 3-20 から 31 の 3-27 までに 準 じて 取 扱 うものとする - 2 -