Report.1 ミャンマーの 住 宅 事 情 と 住 宅 金 融 市 場 について 住 宅 金 融 支 援 機 構 調 査 部 主 任 研 究 員 1996 年 早 稲 田 大 学 教 育 学 部 卒 業 住 宅 金 融 公 庫 入 庫 2001 年 経 理 部 市 場 資 金 室 2002 年 ファニーメイ 特 別 研 修 派 遣 証 券 業 務 部 総 合 企 画 部 業 務 企 画 部 近 畿 支 店 等 を 経 て 2015 年 4 月 より 現 職 要 旨 1. ミャンマーの 住 宅 及 び 住 宅 金 融 の 市 場 は 国 主 導 で 整 備 が 進 められようとしているが その 動 きは 緒 に 就 いたばかり 2. 同 国 建 設 省 (MOC)の 都 市 住 宅 開 発 局 (DUHD)は 2011 年 から20 年 間 で 全 国 にて100 万 戸 の 住 宅 供 給 戸 数 を 目 指 すが 5 千 万 人 超 の 人 口 に 鑑 みるとその 戸 数 はまだ 少 ない 3. 住 宅 金 融 市 場 の 整 備 については 中 低 所 得 者 の 住 宅 取 得 支 援 のため 建 設 住 宅 開 発 銀 行 (CHDB)が2013 年 に 設 立 されたばかり 4. 住 宅 金 融 市 場 の 発 展 には それを 支 える 銀 行 システム 信 用 情 報 照 会 登 記 などの 制 度 も 同 時 進 行 的 に 整 備 が 必 要 5. ミャンマー 全 土 での 住 宅 ローン 供 給 や その 原 資 の 継 続 的 な 確 保 も 大 きな 課 題 で 安 定 的 な 住 宅 金 融 市 場 の 構 築 には なお 時 間 を 要 するが 先 進 国 の 知 見 も 共 有 した 着 実 な 発 展 を 期 待 ミャンマー 連 邦 共 和 国 (Republic of the Union of Myanmar 以 下 ミャンマー と 表 記 )は アジア 最 後 の フロンティア と 呼 ば れ 今 年 3 月 にアウン サン スー チー 氏 の 率 いる 国 民 民 主 連 盟 (National League for Democracy:NLD)が 政 権 交 代 を 成 し 遂 げたことも 相 まって 国 際 社 会 から 今 後 の 経 済 発 展 などが 注 目 されてい る そのミャンマーについて まずは 内 政 経 済 情 勢 と 住 宅 事 情 を 概 観 し 主 としては 住 宅 金 融 市 場 の 状 況 をみて いくと 共 に 今 後 の 同 市 場 の 発 展 について 考 えていきたい 米 国 が 対 ミャンマー 経 済 制 裁 を 課 したことが 国 内 産 業 に 深 刻 な 打 撃 を 与 えた 2010 年 に 実 施 された 総 選 挙 で 連 邦 連 帯 開 発 党 (Union Solidarity and Development Party: USDP)が 約 8 割 の 議 席 を 確 保 し その 後 アウン サン スー チー 氏 の 自 宅 軟 禁 は 解 除 され 2011 年 にはテイン セイン 文 民 政 権 が 発 足 した 民 主 化 や 経 済 改 革 等 の 断 行 が 欧 米 諸 国 の 評 価 を 受 け 経 済 制 裁 が 段 階 的 に 解 除 さ れ 経 済 発 展 の 兆 しが 見 えてきた 2015 年 11 月 の 総 選 挙 では アウン サン スー チー 氏 の 率 いる 国 民 民 主 連 盟 が 全 議 席 の6 割 弱 を 獲 得 して 歴 史 的 勝 利 を 収 めたのは 記 憶 に 新 しいところである ミャンマーは 1886 年 に 英 領 インドに 編 入 されたが 1948 年 に 独 立 した 1962 年 に 発 足 したネ ウィン 政 権 は 主 要 産 業 の 国 有 化 等 社 会 主 義 経 済 政 策 を 推 進 するも 失 敗 し 1988 年 にはクーデターにより 軍 事 政 権 が 成 立 した しかし 2003 年 のアウン サン スー チー 氏 の 拘 束 を 受 け ミャンマーの1 人 当 たりのGDPは1,228ドルで ASEAN 加 盟 10ヵ 国 のうち9 番 目 と 出 遅 れている( 図 表 1) しかし 文 民 政 権 誕 生 後 の 経 済 制 裁 の 段 階 的 な 解 除 を 契 機 とし て 同 国 の 発 展 が 注 目 されており 今 年 3 月 の 国 民 民 主 連 盟 へ 政 権 移 行 後 も 大 きな 政 治 的 混 乱 は 見 られておらず 今 後 の 更 なる 民 主 化 や 経 済 発 展 が 期 待 されているところ である 40
人 口 ( 万 人 ) GDP( 億 ドル) 1 人 当 たりGDP(ドル) シンガポール 547 3,079 56,287 ブルネイ 41 171 41,460 マレーシア 3,060 3,381 11,049 タイ 6,866 4,048 5,896 インドネシア 25,217 8,886 3,524 フィリピン 9,943 2,846 2,862 ベトナム 9,063 1,859 2,051 ラオス 690 117 1,693 ミャンマー 5,142 631 1,228 カンボジア 1,531 166 1,081 合 計 ( 平 均 ) 62,100 25,184 4,055 参 考 日 本 12,706 46,024 36,222 ( 出 典 )IMF World Economic Outlook Database, October 2015 (1) 関 連 諸 制 度 ミャンマーでは 憲 法 上 土 地 はすべて 国 が 所 有 するも のとされており 個 人 や 法 人 の 所 有 は 認 められていない もっとも 土 地 の 利 用 権 は 認 められており 60 年 間 の 権 利 とされることが 多 い また 延 長 も 可 能 となっている 土 地 の 利 用 が 許 可 される 要 件 は 場 所 によって 異 なるが 許 可 利 用 地 には 建 物 を 建 てることが 認 められている 登 記 の 制 度 はあるが 不 動 産 の 権 利 変 動 に 関 する 登 記 となっており 登 記 を 対 抗 要 件 とするという 概 念 はなく 日 本 とは 性 質 を 異 にしている 建 築 基 準 や 建 築 確 認 制 度 に 関 しては 根 拠 となる 法 律 の 制 定 が 準 備 されているものの まだ 成 立 には 至 ってい ない ただし 根 拠 法 が 成 立 していない 現 段 階 でも ヤン ゴンでは 市 開 発 委 員 会 (Yangon City Development Committee:YCDC)の 規 制 部 局 によって 建 築 許 可 制 度 が 運 用 されている また 信 用 情 報 機 関 については まだ 設 立 されていない が 今 年 1 月 に 成 立 した 銀 行 金 融 機 関 法 ( 英 語 版 未 公 表 のため 最 終 的 な 内 容 は 定 かではない)の 法 案 段 階 で は その 設 立 が 認 められている 状 況 である (2) 住 宅 政 策 ミャンマーの 住 宅 政 策 は 建 設 省 (Ministry of Construction:MOC)の 都 市 住 宅 開 発 局 (Department of Urban and Housing Development:DUHD)が 担 っ ている 同 省 によると 都 市 住 宅 開 発 局 が2006 年 ~ 2010 年 の5 年 間 に 供 給 した 住 宅 は 8,000 戸 程 度 である 同 局 は 今 後 ミャンマー 各 地 において 住 宅 開 発 プロジェクトを 策 定 し 民 間 部 門 による 供 給 と 併 せて 2011 年 からの20 年 間 に 全 国 で100 万 戸 の 住 宅 を 供 給 する 計 画 を 立 てている しか し 足 元 では 同 計 画 を 達 成 するためのペースには 達 してい ない 模 様 であり そもそも 人 口 が5 千 万 人 を 超 える 国 家 規 模 であることに 鑑 みると その 計 画 戸 数 はまだ 充 分 なもの ではないと 考 えられる (3) 住 宅 概 況 ミャンマーでは 特 に 最 大 都 市 ヤンゴン 市 内 で 多 くの 再 開 発 が 進 んでいる その 一 例 に 同 市 内 のヤンキン 地 区 で 進 む 再 開 発 プ ロジェクトがある この 土 地 は 元 は 軍 用 地 であるが シン ガポールの 開 発 企 業 などが 高 層 マンション 5つ 星 ホテ ル ショッピングモールなどを 建 設 予 定 で 同 プロジェクトは 41
Report.1 ゴールデン シティ と 呼 ばれる 開 発 エリアは 約 33ha( 東 京 ドーム 約 7 個 分 )に 渡 り 9 棟 の33 階 建 て 高 層 マンション を 建 設 予 定 だという( 図 表 2) しかし このようなマンションは 一 般 市 民 から 見 ると 高 嶺 の 花 である 近 年 はミャンマーでも 不 動 産 価 格 が 高 騰 している 同 国 建 設 省 の 都 市 住 宅 開 発 局 のプロジェクト 物 件 も 例 外 で はなく 2014 年 に 販 売 が 開 始 されたヤンゴン 管 区 のシュエ リンバン(Shwe Lin Ban) 地 区 プロジェクトのマンションで は 床 面 積 が 約 30m2の 住 戸 の 価 格 が 現 地 通 貨 で 約 1,200 万 チャット( 約 110 万 円 1 )であった また 2015 年 に 販 売 が 開 始 された 同 じくヤンゴン 管 区 のエーヤワン ヤダナ (Ayeyarwun Yadana) 地 区 プロジェクトのマンション では 床 面 積 が 先 程 の 約 2 倍 となる 約 60m2の 住 戸 が 価 格 は 約 5 倍 の 約 6,000 万 チャット( 約 550 万 円 )になっている 国 のプロジェクトでありながら このような 価 格 では 到 底 一 般 市 民 には 手 が 届 かないとの 批 判 の 声 も 一 部 新 聞 な どで 報 道 されているところである 同 国 の 製 造 業 作 業 員 の 平 均 年 収 (2014 年 )は 約 185 万 チャット( 約 17 万 円 )で あり 確 かにこれらの 物 件 の 値 段 はかなり 高 いことが 解 る 一 方 で 都 心 部 から 少 し 離 れると 写 真 ( 図 表 3)のよ うな 低 所 得 者 層 が 住 む 質 素 な 住 宅 が 多 く 見 受 けられる 2014 年 にミャンマー 政 府 が 実 施 した 国 勢 調 査 によると 国 全 体 での 賃 貸 住 宅 居 住 世 帯 の 割 合 が7%なのに 対 して 持 ち 家 居 住 世 帯 の 割 合 は86%とかなり 高 い( 図 表 4) な お 国 が 供 給 する 住 宅 への 居 住 世 帯 割 合 は3%に 留 まって いる ただ 持 ち 家 の 割 合 が 高 いとは 言 え 国 の 住 宅 全 体 で 木 造 住 宅 ( 多 くが 草 葺 屋 根 や 波 板 葺 屋 根 と 思 われる) が41% 竹 作 りの 家 が37%を 占 めており 住 宅 の 質 が 充 実 しているとは 言 い 難 い( 図 表 5) また 家 庭 での 灯 りにつ 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 41% 37% 7% 4% 11% 1 1チャット=0.09197 円 で 換 算 (2016.4.18 現 在 ) HP Exchange-Rates.org を 参 照 42
いては 通 常 の 電 気 の 占 める 割 合 が32%に 留 まる 一 方 蝋 燭 が21%を 占 めており 料 理 に 使 う 燃 料 については 農 村 部 では 薪 が 86%を 占 めるなど 昔 ながらの 暮 らしぶりが 色 濃 く 残 っていることが 解 る 以 上 のように ミャンマーの 住 宅 については まだまだ 今 後 の 整 備 が 待 たれる まずは 国 主 導 での 住 宅 に 関 連 す る 法 律 や 諸 制 度 を 含 めた 住 宅 整 備 に 向 けた 動 きが 必 要 と 考 えられる 次 に ミャンマーの 住 宅 金 融 の 状 況 について 見 ていきた い ての 記 載 はない なお 報 道 では この 他 にはマンダレー 管 区 とエーヤワン ヤダナ 地 区 での 同 局 の2つのプロジェ クトへの 建 設 住 宅 開 発 銀 行 による 個 人 向 け 住 宅 ローンの 実 施 が 伝 えられている シュエリンバン 地 区 の 物 件 での 個 人 向 け 住 宅 ローンの 融 資 条 件 は 融 資 金 利 12%( 固 定 金 利 ) 融 資 期 間 8 年 融 資 率 上 限 70% 融 資 手 数 料 1%となっ ている 1 戸 当 たりの 物 件 価 格 は1,200 万 チャット( 約 110 万 円 ) 程 度 なので 融 資 率 70%の 前 提 で 積 算 すると 毎 月 の 返 済 額 は 約 14 万 チャット( 約 1.3 万 円 ) 程 度 となる 報 道 によると 公 務 員 が 優 先 して 募 集 対 象 とされたということ である (1) 建 設 住 宅 開 発 銀 行 (Construction and Housing Development Bank:CHDB) 建 設 住 宅 開 発 銀 行 は2013 年 に 国 内 で 唯 一 の 住 宅 金 融 専 門 の 政 府 系 金 融 機 関 として 中 低 所 得 者 層 の 住 宅 取 得 支 援 を 目 的 として 設 立 された 資 本 金 は 国 からだけでなく 民 間 企 業 からも 拠 出 されている 2015 年 3 月 末 で590 億 チャット( 約 54 億 円 )の 資 本 金 を 保 有 し 総 資 産 額 は 約 1,847 億 チャット( 約 170 億 円 )で 2014 年 度 には 約 38 億 チャット( 約 3.5 億 円 )の 当 期 純 利 益 を 上 げている 住 宅 事 業 者 などに 対 する 住 宅 建 設 資 金 融 資 と 一 般 国 民 に 対 する 個 人 向 け 住 宅 ローンの 両 方 を 手 掛 けるが ここ では 後 者 について 見 ていきたい 建 設 住 宅 開 発 銀 行 による 個 人 向 け 住 宅 ローン 実 績 はま だ 少 ない 模 様 だ 彼 らのディスクロージャー 誌 によると 都 市 住 宅 開 発 局 のプロジェクトであるヤンゴン 管 区 のシュエリ ンバン 地 区 の 物 件 に 対 して 50 億 チャット( 約 4.6 億 円 )の 個 人 向 け 住 宅 ローン 用 の 資 金 を 確 保 しているということで ある しかし これ 以 外 の 住 宅 ローン 用 資 金 の 確 保 につい 建 設 住 宅 開 発 銀 行 は 当 面 主 に 都 市 住 宅 開 発 局 が 予 定 している 住 宅 供 給 プロジェクトの 物 件 に 対 して 住 宅 ロー ンを 提 供 していくものと 考 えられる よって まだ 同 行 は 政 府 のプロジェクト 以 外 の 物 件 についても 国 民 に 対 して 広 く 住 宅 ローンを 供 給 するような 状 況 にまでは 至 っていな い なお 同 行 は 現 在 ヤンゴン 市 内 の 本 店 以 外 に 同 市 以 外 の 地 域 も 含 め 2015 年 末 で6つの 支 店 を 構 えており 3つの 支 店 の 開 店 も 予 定 しているが ミャンマー 全 国 をカ バーするまでにはなっていない とはいえ 同 行 は 国 全 体 の 銀 行 システムが 未 発 達 な 中 で 国 の 住 宅 供 給 プロジェクトと 連 携 しながら 着 実 に 住 宅 ローン 制 度 の 整 備 に 取 り 組 んでいる 今 後 の 住 宅 金 融 市 場 整 備 の 先 導 的 な 役 割 を 果 たしていくであろう (2) 民 間 金 融 機 関 民 間 金 融 機 関 においても 住 宅 ローンは 扱 われている が 融 資 期 間 は 基 本 的 に1 年 間 となっている 1 年 毎 に 融 資 を 一 定 期 間 継 続 していくことも 可 能 だが 実 質 的 には 商 品 として 成 り 立 っておらず 民 間 金 融 機 関 から 住 宅 ローン はほとんど 供 給 されていない 状 況 である 43
Report.1 (3) 今 後 の 住 宅 金 融 の 発 展 に 向 けた 課 題 1つ 目 は 銀 行 システム 登 記 信 用 情 報 といった 社 会 的 インフラの 整 備 についてである その 整 備 には 時 間 を 要 するものと 思 われるが これらの 発 展 がなければ 住 宅 金 融 の 発 展 も 難 しい 例 えば 返 済 金 の 回 収 には 銀 行 の 口 座 引 き 落 としが 必 要 になってくるが 国 民 の 銀 行 口 座 保 有 率 は23%と 低 い これは 過 去 に 廃 貨 が3 度 も 行 われたこ となどを 背 景 とする 国 民 の 貨 幣 や 銀 行 に 対 する 信 頼 度 の 低 さからきている まずは こういった 銀 行 システムの 整 備 普 及 が 待 たれる また 競 売 の 制 度 も 整 っておらず 筆 者 がミャンマーの 関 係 者 に 競 売 制 度 を 説 明 した 際 には 家 から 人 を 追 い 出 すのか といった 反 応 であった これ らの 整 備 には 建 設 省 だけでなく 計 画 財 務 省 や 中 央 銀 行 など 他 省 等 の 協 力 も 必 要 になる また ミャンマーの 金 融 は 規 制 金 利 下 にあり 預 金 金 利 の 下 限 が8%で 貸 出 金 利 の 上 限 は13%となっている リスク 管 理 を 行 う 上 で 必 要 と なる 適 切 な 住 宅 ローン 金 利 の 設 定 が 困 難 になることなども 考 えられ この 規 制 金 利 も 今 後 の 課 題 である 2つ 目 は 住 宅 金 融 制 度 そのものの 整 備 についてであ る 融 資 審 査 債 権 管 理 といった 住 宅 ローンを 扱 うに 当 たっての 基 本 的 なノウハウや 信 用 リスク ALMリスクなどの リスク 管 理 能 力 などもまだまだ 不 足 しているものと 考 えられ る それらのシステム 対 応 についても 同 様 だ このような 状 況 下 では まずは 公 務 員 や 優 良 企 業 社 員 といった 中 間 層 より 上 の 階 層 に 対 する 融 資 で 手 馴 れることにより 業 務 を 軌 道 に 乗 せ データ 蓄 積 も 行 いながら 事 業 執 行 能 力 を 高 めていくというのが 堅 実 であるとも 考 えられる 住 宅 金 融 内 銀 行 が28 行 しかない 日 本 において 旧 住 宅 金 融 公 庫 が 全 国 の 金 融 機 関 に 対 して 委 託 制 度 を 採 っていたように 建 設 住 宅 開 発 銀 行 が 他 の 民 間 銀 行 等 にその 業 務 を 委 託 することも 考 えられるが そもそも 銀 行 の 数 が 少 ない その 一 方 で 国 民 の 移 動 通 信 端 末 (スマートフォン 等 )の 保 有 率 は 国 全 体 では33% 都 市 部 では64%と 比 較 的 高 い( 図 表 6) ミャンマ ー で は 僧 侶 が 道 を 歩 きス マ ホ し な が ら 歩 く 姿 もよく 見 られるほどだ これらの 移 動 通 信 端 末 をう まく 活 用 し 全 国 をカバーすることは 今 後 考 え 得 る 手 段 かも しれない 4つ 目 は 継 続 的 な 住 宅 ローン 原 資 の 確 保 についてであ る 銀 行 システムが 未 整 備 で 国 内 の 資 金 を 吸 い 上 げる 仕 組 み 等 が 整 っていない 状 況 のなかで まずはドナー( 世 界 銀 行 アジア 開 発 銀 行 JICA 等 )からの 譲 許 性 資 金 を 獲 得 することが 住 宅 金 融 制 度 を 立 ち 上 げていくうえで 有 効 な 手 段 として 考 えられる 政 府 開 発 援 助 (ODA)のケー スで 多 く 見 かけるのは 道 路 や 電 力 等 のインフラ 整 備 だが 住 宅 も 国 民 生 活 を 支 えて 国 の 経 済 発 展 に 大 きな 役 割 を 果 たす また 住 宅 金 融 制 度 が 整 ってきた 後 に 国 内 資 金 等 をどう 継 続 的 に 住 宅 ローンの 原 資 として 確 保 していくかも 課 題 となってくる もっとも ミャンマーの 経 済 発 展 はこれ から 期 待 されるものであり まだ 富 が 預 金 等 として 国 民 や 企 業 に 行 き 渡 っている 状 況 ではないが 途 上 国 で 見 られる プロビデントローン 制 度 ( 勤 労 者 の 給 与 から 定 期 的 に 資 金 を 確 保 し 特 定 の 目 的 にその 資 金 を 活 用 する 制 度 )や 日 本 で 以 前 に 旧 住 宅 金 融 公 庫 が 財 政 投 融 資 を 活 用 して 住 宅 ローンを 供 給 していたような 制 度 の 作 り 込 みの 検 討 も 今 後 必 要 になってくるものと 考 えられる 制 度 の 整 備 には 後 述 するが その 経 験 を 有 する 国 からの 技 術 支 援 (Technical Assistance)も 有 益 となってくる であろう 3つ 目 は 全 国 での 住 宅 ローン 提 供 についてである 先 述 のとおり 建 設 住 宅 開 発 銀 行 は 支 店 を 有 するものの そ の 数 はまだ 限 定 的 である なお ミャンマーでは 現 在 国 44
2013 年 5 月 安 倍 総 理 大 臣 は 日 本 国 総 理 大 臣 としては 36 年 振 りにミャンマーを 公 式 訪 問 し その 後 も2014 年 11 月 にASEAN 関 連 首 脳 会 議 出 席 のため 同 国 を 訪 問 して 当 時 のテイン セイン 大 統 領 と 首 脳 会 談 を 行 っている 会 談 では 円 借 款 や 無 償 資 金 技 術 協 力 を 順 次 進 める 旨 が 表 明 されるなど 同 国 を 強 く 支 援 していく 姿 勢 が 示 されて いる 2016 年 1 月 には 首 都 ネピドーで 開 催 された 日 本 の 国 土 交 通 省 とミャンマー 建 設 省 との 第 3 回 日 緬 建 設 次 官 級 会 合 において 住 宅 及 び 都 市 開 発 に 係 る 協 力 覚 書 が 交 換 され 両 分 野 における 両 省 間 の 協 力 関 係 の 強 化 が 確 認 されたところである また 2015 年 11 月 にはミャンマーの 建 設 住 宅 開 発 銀 行 及 び 建 設 省 から6 名 が 国 土 交 通 省 の 招 聘 により 来 日 し 住 宅 金 融 支 援 機 構 において ワークショップが 開 催 され 住 宅 ローンの 手 続 き 等 についての 実 務 研 修 と 情 報 交 換 が 行 われた 同 研 修 生 6 名 は 帰 国 後 住 宅 ローン 開 発 チームの 中 核 メンバーとして 活 躍 し 住 宅 金 融 支 援 機 構 とも 引 き 続 き 連 携 している 一 方 建 設 住 宅 開 発 銀 行 は 中 国 の4 大 商 業 銀 行 の 一 つである 中 国 工 商 銀 行 (Industrial and Commercial Bank of China:ICBC)や 韓 国 の 国 民 銀 行 と 協 力 覚 書 (MOU:Memorandum of Understanding)を 交 換 している また 欧 州 への 職 員 派 遣 等 も 行 っているようであ る 日 本 としては 同 行 の 他 国 との 動 きもよく 踏 まえながら 時 宜 を 得 た 支 援 を 行 っていく 必 要 があると 考 える 上 述 のとおり 日 本 国 全 体 でのミャンマーへの 支 援 が 強 化 される 中 で 住 宅 都 市 開 発 及 び 住 宅 金 融 分 野 におい ( 参 考 文 献 ) 外 務 省 (2013.5.27) 安 倍 総 理 大 臣 のミャンマー 訪 問 ( 概 要 と 評 価 ) 外 務 省 (2014.11.12) 日 ミャンマー 首 脳 会 談 外 務 省 (2016.1.19) ミャンマー 連 邦 共 和 国 基 礎 データ 国 土 交 通 省 (2014.8.1) アジアにおける 建 設 不 動 産 分 野 の 法 律 制 度 整 備 支 援 に 向 けた 調 査 結 果 概 要 について(ベト ナム ミャンマー) 国 土 交 通 省 (2016.2.3) 第 3 回 日 緬 建 設 次 官 級 会 合 の 開 催 に ついて( 報 告 ) 法 務 省 (2013.3.8) ミャンマー 連 邦 共 和 国 法 制 度 調 査 報 告 書 財 務 省 財 務 総 合 政 策 研 究 所 (2016.3) ミャンマーにおける 金 融 アクセスの 現 状 と 課 題 JE TRO(2014.12.16) 在 アジア オセアニア 日 系 企 業 実 態 調 査 大 和 総 研 (2015.8) ミャンマー 第 3 版 M yanmar BUSINESS TODAY( 日 本 語 版 )(2014.3.31) シ ンガポール 不 動 産 会 社 ヤンゴン 市 内 に 巨 大 施 設 建 設 計 画 ミ ャンマー 株 式 ニュース(2014.6.11) シュエリンバンの 低 価 格 住 宅 が 販 売 へ ミ ャンマー 株 式 ニュース(2015.4.8) ダゴンセイカン 郡 区 の 低 価 格 住 宅 10 月 に 販 売 開 始 W ORLD BANK GROUP(2015.4) The Global Findex Database 2014 IMF(2016.1) World Economic Outlook Database, October 2015 THE REPUBLIC OF THE UNION OF MYANMAR, Ministry of Construction(2014.3) The Current Situation and Future Trend of BUILDING CONSTRUCTION and HOUSING SECTOR in Myanmar THE REPUBLIC OF THE UNION OF MYANMAR, Ministry of Immigration and Population, Department of Population(2015.5) The 2014 Myanmar Population and Housing Census Central Bank of Myanmar(2016.4.18) Interest Rate(%) Construction and Housing Development Bank(2014.7.31) CHD BANK ANNUAL REPORT 2013-2014 Construction and Housing Development Bank(2015.10.31) CHD BANK ANNUAL REPORT 2014-2015 The Myanmar Times(2015.3.17) CHDB pushes for funding for plans to finance mortgages for homeowners The Myanmar Times(2016.1.7) Housing project prices spark public anger ても 支 援 が 実 施 されている 状 況 であり 今 後 これらの 支 援 を 梃 子 にした ミャンマーの 各 分 野 における 着 実 な 発 展 を 期 待 したい 本 稿 の 意 見 にわたる 部 分 については 筆 者 個 人 の 意 見 で あって 住 宅 金 融 支 援 機 構 の 見 解 ではありません 45