財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 1 第 16 章 連 結 会 計 Part 3 9. 連 結 剰 余 金 計 算 書 の 作 成 9.1 連 結 剰 余 金 計 算 書 の 目 的 個 別 財 務 諸 表 では 貸 借 対 照 表 の 末 尾 と 損 益 計 算 書 の 末 尾 は 当 期 未 処 分 利 益 で 一 致 するが 連 結 財 務 諸 表 では 一 致 せず 連 結 剰 余 金 計 算 書 を 挟 むことによって 両 者 間 の 接 合 関 係 が 成 立 する 連 結 剰 余 金 計 算 書 は 連 結 貸 借 対 照 表 に 示 される 連 結 剰 余 金 ( 資 本 剰 余 金 と 利 益 剰 余 金 の 合 計 額 )の 増 減 を 示 す 計 算 書 である 連 結 剰 余 金 計 算 書 では 主 として 親 会 社 及 び 子 会 社 の 利 益 処 分 に 係 わる 金 額 を 中 心 に 損 益 計 算 書 に 表 されない 連 結 剰 余 金 の 増 減 が 記 載 される 連 結 剰 余 金 計 算 書 Ⅰ 利 益 剰 余 金 期 首 残 高 Ⅱ 利 益 剰 余 金 減 少 高 ( 減 算 ) 1. 配 当 金 2. 役 員 賞 与 Ⅲ 当 期 純 利 益 ( 加 算 ) Ⅲ 利 益 剰 余 金 期 末 残 高 9.2 利 益 処 分 利 益 処 分 は 利 益 剰 余 金 減 少 高 のことである 子 会 社 の 利 益 処 分 をそのまま 連 結 すると 子 会 社 の 処 分 全 額 を 親 会 社 が 負 担 することとなるので 子 会 社 の 利 益 処 分 については 以 下 の 連 結 修 正 仕 訳 が 必 要 である 例 P 社 は S 社 発 行 済 株 式 の 60%を 所 有 する 親 会 社 である 当 期 において S 社 は 利 益 処 分 として 配 当 金 300 円 役 員 賞 与 100 円 を 行 った 9.3 子 会 社 の 配 当 金 の 修 正 親 会 社 への 配 当 : 親 会 社 への 配 当 は 連 結 上 は 単 なる 資 金 の 移 動 に 過 ぎないのでそ れを 取 り 消 す 修 正 仕 訳 を 行 う ( 借 ) 受 取 配 当 金 180 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 減 少 高 180 上 の 仕 訳 は 正 確 には 以 下 のような 仕 訳 である 連 結 P/L ( 借 ) 受 取 配 当 金 180 ( 貸 ) 当 期 純 利 益 180 連 結 S/S ( 借 ) 当 期 純 利 益 180 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 減 少 高 180 連 結 B/S ( 借 ) 仕 訳 なし ( 貸 ) 仕 訳 なし
財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 2 少 数 株 主 への 配 当 : 少 数 株 主 への 配 当 は 利 益 剰 余 金 の 減 少 ではなく 少 数 株 主 持 分 の 減 少 と 考 える ( 借 ) 少 数 株 主 持 分 120 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 減 少 高 120 上 の 仕 訳 は 正 確 には 以 下 のような 仕 訳 である 連 結 P/L ( 借 ) 仕 訳 なし ( 貸 ) 仕 訳 なし 連 結 S/S ( 借 ) 利 益 剰 余 金 期 末 残 高 120 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 減 少 高 120 連 結 B/S ( 借 ) 少 数 株 主 持 分 120 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 120 利 益 剰 余 金 減 少 高 = 配 当 金 連 結 剰 余 金 期 末 残 高 (S/S)= 利 益 剰 余 金 (B/S)である 親 会 社 にたいするもの= 受 取 配 当 金 と 相 殺 結 局 子 会 社 の 配 当 = となるので 利 益 子 会 社 にたいするもの= 少 数 株 主 持 分 と 相 殺 剰 余 金 計 算 書 の 配 当 金 は 親 会 社 が 利 益 処 分 した 配 当 分 だけとなる 9.4 子 会 社 の 役 員 賞 与 の 修 正 子 会 社 の 役 員 賞 与 の 負 担 分 は 親 会 社 の 負 担 分 と 少 数 株 主 の 負 担 分 とに 分 けられる 子 会 社 における 会 計 上 の 処 理 ( 利 益 剰 余 金 減 少 高 100 / 現 金 100)では 親 会 社 の 負 担 分 が 100%であるので 少 数 株 主 の 負 担 分 を 少 数 株 主 持 分 に 負 担 させる 連 結 修 正 仕 訳 を 行 う ( 借 ) 少 数 株 主 持 分 40 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 減 少 高 40 上 の 仕 訳 は 正 確 には 以 下 のような 仕 訳 である 連 結 P/L ( 借 ) 仕 訳 なし ( 貸 ) 仕 訳 なし 連 結 S/S ( 借 ) 利 益 剰 余 金 期 末 残 高 40 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 減 少 高 40 連 結 B/S ( 借 ) 少 数 株 主 持 分 40 ( 貸 ) 利 益 剰 余 金 40 利 益 剰 余 金 減 少 高 = 役 員 賞 与 連 結 剰 余 金 期 末 残 高 (S/S)= 利 益 剰 余 金 (B/S)である 親 会 社 負 担 分 = 連 結 S/Sの 役 員 賞 与 結 局 子 会 社 の 役 員 賞 与 = となる 子 会 社 負 担 分 = 少 数 株 主 持 分 と 相 殺
財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 3 10. 持 分 法 10.1 持 分 法 の 意 義 持 分 法 は 持 分 法 適 用 会 社 の 財 政 状 態 及 び 経 営 成 績 のうち 親 会 社 に 属 する 部 分 のみを 貸 借 対 照 表 の 投 資 額 (A 社 株 式 )または 損 益 計 算 書 の 持 分 法 による 投 資 損 益 ( 持 分 法 投 資 損 益 ) に 反 映 させる 方 法 である このため 持 分 法 は 1 行 連 結 (ワン ライン コンソリデーショ ン)と 呼 ばれることもある また 原 則 的 に 損 益 の 結 果 は 連 結 も 持 分 法 も 同 じとなる 10.2 持 分 法 が 適 用 される 会 社 持 分 法 が 適 用 される 会 社 は 関 連 会 社 および 非 連 結 子 会 社 である 10.3 持 分 法 の 手 続 投 資 日 の 処 理 : 通 常 の 有 価 証 券 の 取 引 と 同 様 取 得 原 価 で 計 上 する ( 借 ) A 社 株 式 1,000 ( 貸 ) 現 金 預 金 1,000 投 資 差 額 の 消 去 : 持 分 法 適 用 会 社 (A 社 )の 資 産 負 債 を 時 価 評 価 し 取 得 原 価 と 較 べて 差 異 がある 場 合 には 投 資 差 額 とし 連 結 調 整 勘 定 と 同 様 に 20 年 以 内 に 償 却 する 1 取 得 原 価 > 純 資 産 持 分 額 のケース ( 借 ) 持 分 法 投 資 損 益 2 ( 貸 ) A 社 株 式 2 2 取 得 原 価 < 純 資 産 持 分 額 のケース ( 借 ) A 社 株 式 3 ( 貸 ) 持 分 法 投 資 損 益 3 当 期 純 利 益 の 認 識 : 持 分 法 適 用 会 社 (A 社 )が 当 期 純 利 益 を 計 上 した 場 合 には そ の 内 持 分 比 率 の 分 を 簿 価 に 加 える ( 借 ) A 社 株 式 50 ( 貸 ) 持 分 法 投 資 損 益 50 未 実 現 利 益 の 消 去 : 持 分 法 では ダウン ストリーム アップ ストリームに 拘 わ らず 親 会 社 の 持 分 比 率 に 相 当 する 未 実 現 利 益 のみを 消 去 する ( 借 ) 持 分 法 投 資 損 益 10 ( 貸 ) A 社 株 式 10 受 取 配 当 金 の 処 理 : 持 分 法 適 用 会 社 (A 社 )が 利 益 処 分 を 行 った 場 合 親 会 社 は 受
財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 4 取 配 当 金 として 処 理 している( 現 金 40 / 受 取 配 当 金 40) しかしながら 親 会 社 は A 社 の 当 期 純 利 益 をすでに 認 識 している(A 社 株 式 50 / 持 分 法 投 資 損 益 50)ので 受 取 配 当 金 をそのままにしておくと 利 益 の 二 重 計 上 になる そこで 受 取 配 当 金 を 消 去 する 仕 訳 が 必 要 になる ( 借 ) 受 取 配 当 金 40 ( 貸 ) A 社 株 式 40 役 員 賞 与 の 処 理 : 持 分 法 適 用 会 社 (A 社 )が 利 益 処 分 において 役 員 賞 与 を 行 った 場 合 には 親 会 社 は A 社 において 費 用 が 発 生 したものとみなして 持 分 比 率 の 分 だけ 簿 価 を 減 少 させる ( 借 ) 持 分 法 投 資 損 益 6 ( 貸 ) A 社 株 式 6 持 分 法 による 投 資 損 益 は 利 益 については 営 業 外 収 益 費 用 については 営 業 外 費 用 に 計 上 する
財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 5 [ 問 題 16-1] 1.わが 国 の 連 結 財 務 諸 表 原 則 について 述 べた 次 の 文 章 のうち 正 しいものを 1 つ 選 びなさ い A 親 会 社 が 所 有 している 子 会 社 の 株 式 は 親 会 社 所 有 の 子 会 社 株 式 として 貸 借 対 照 表 の 資 本 の 部 に 資 本 の 控 除 項 目 として 表 示 される B 少 数 株 主 損 益 は 損 益 計 算 書 の 税 金 等 調 整 前 当 期 純 利 益 の 次 に 表 示 される C 借 方 発 生 の 連 結 調 整 勘 定 は 固 定 資 産 の 無 形 固 定 資 産 の 部 に 記 載 される D 貸 方 発 生 の 連 結 調 整 勘 定 の 当 期 償 却 額 は 損 益 計 算 書 の 特 別 利 益 の 部 に 表 示 される 2. 被 投 資 会 社 が 親 会 社 に 対 して 現 金 配 当 を 支 払 った 原 価 法 と 持 分 法 の 会 計 処 理 方 法 を 利 用 した 場 合 親 会 社 の 投 資 勘 定 にはどのような 影 響 が 発 生 するか 次 の 組 み 合 せのうち 正 しいものを 1 つ 選 びなさい 原 価 法 持 分 法 A 減 少 する 影 響 なし B 影 響 なし 減 少 する C 増 加 する 影 響 なし D 影 響 なし 増 加 する 3.わが 国 の 連 結 財 務 諸 表 原 則 について 述 べた 次 の 文 章 のうち 正 しいものを 1 つ 選 びなさ い A 連 結 貸 借 対 照 表 の 作 成 に 当 たっては 支 配 獲 得 日 において 子 会 社 のすべての 資 産 及 び 負 債 を 時 価 に 評 価 替 しなければならない B 親 会 社 は すべての 子 会 社 を 連 結 の 範 囲 に 含 めなければならない C 資 本 の 部 は 資 本 金 資 本 準 備 金 利 益 準 備 金 及 び 連 結 剰 余 金 に 区 分 して 記 載 しな ければならない D アップ ストリームによる 未 実 現 損 益 の 消 去 は 全 額 消 去 持 分 按 分 負 担 方 式 による 4.わが 国 の 連 結 財 務 諸 表 原 則 について 述 べた 次 の 文 章 のうち 正 しくないものを 1 つ 選 び なさい A 連 結 貸 借 対 照 表 の 作 成 に 当 たっては 支 配 獲 得 日 において 子 会 社 の 資 産 及 び 負 債 を 部 分 時 価 評 価 法 か 又 は 全 面 時 価 評 価 法 のいずれかの 方 法 で 時 価 に 評 価 替 しなければ ならない
財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 6 B ダウン ストリームによる 未 実 現 損 益 の 消 去 は 全 額 消 去 親 会 社 負 担 方 式 による C 借 方 発 生 の 連 結 調 整 勘 定 は 固 定 資 産 の 無 形 固 定 資 産 の 部 に 記 載 される D 親 会 社 が 所 有 している 子 会 社 の 株 式 は 親 会 社 所 有 の 子 会 社 株 式 として 貸 借 対 照 表 の 資 本 の 部 に 資 本 の 控 除 項 目 として 表 示 される [ 問 題 16-2] 以 下 の 各 取 引 について (1) 原 価 法 による 場 合 と(2) 持 分 法 による 場 合 の P 社 の 仕 訳 を 行 ないなさい なお 投 資 勘 定 については S 社 株 式 勘 定 を 使 用 するものとする 1 P 社 は S 社 の 発 行 済 株 式 50 株 のうち 20 株 を 1 株 70 円 で 現 金 購 入 した この 時 の S 社 の 資 本 勘 定 ( 時 価 も 同 じ)は 3,000 円 である 2 S 社 は 当 期 純 利 益 500 円 を 計 上 した 3 S 社 は 上 記 2の 利 益 のうち 300 円 を 現 金 配 当 し P 社 は 持 分 相 当 額 の 配 当 金 を 現 金 で 受 け 取 った ( 借 ) ( 貸 ) 4 さらに S 社 は 上 記 2の 利 益 のうち 100 円 の 役 員 賞 与 金 を 現 金 で 支 払 った
財 務 報 告 論 2009( 太 田 浩 司 ) Lecture Note 16 7 5 投 資 消 去 差 額 の 償 却 を 20 年 均 等 償 却 で 行 った