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2015 年 4 月 第 146 号 エグゼクティブ ニュース テーマ:ヨーロッパの 苦 悩 EU の 試 練 ユーロ の 危 機 執 筆 者 : 前 駐 ベルギー 大 使 坂 場 三 男 氏 要 旨 ( 以 下 の 要 旨 は 2 分 10 秒 でお 読 みいただけます ) 今 年 (2015 年 )のヨーロッパは 新 年 早 々のパリでイスラム 過 激 派 によるマホメッ ト 風 刺 画 掲 載 の 新 聞 社 襲 撃 から 年 が 明 けました EU( 欧 州 連 合 ) 内 では 1990 年 台 後 半 から 人 の 移 動 の 自 由 が 認 められ アラブ 諸 国 から 流 入 したイスラム 人 口 の 増 加 で 深 刻 な 人 種 宗 教 の 対 立 を 引 き 起 こしています 一 方 EU の 共 通 通 貨 ユーロを 巡 りギリ シャなどの 大 幅 赤 字 国 が 資 金 流 出 に 直 面 して ユーロ 崩 壊 の 危 機 も 懸 念 されています このように 経 済 規 模 では 北 アメリカを 上 回 り 世 界 一 のヨーロッパが 今 大 きな 試 練 に 立 たされています 今 回 は EU の 本 部 を 首 都 ブリュッセルに 置 く 前 駐 ベルギー 大 使 坂 場 三 男 氏 に ヨーロッパ EU ユーロの 現 状 と 今 後 について 解 説 していただきます ヨーロッパ 諸 国 (50 か 国 )は 旧 西 欧 を 中 心 に 1993 年 に EU( 現 在 28 カ 国 )として 統 合 を 果 たし 安 定 した 経 済 成 長 と 欧 州 モデル と 呼 ばれる 社 会 保 障 で 発 展 を 遂 げて 来 ました 2002 年 には EU 共 通 通 貨 のユーロが 導 入 されています(EU から 19 カ 国 加 盟 ) しかし 米 国 発 のリーマンショック(2008 年 ) 等 の 影 響 で EU 諸 国 の 成 長 率 は 大 幅 に 低 下 しました この 中 でドイツだけが 一 強 となり 欧 州 中 央 銀 行 (ECB)では 今 年 3 月 から 量 的 緩 和 の 緊 急 措 置 を 発 表 しましたが 今 後 高 い 成 長 率 を 実 現 できるか 不 透 明 です ユーロは 東 西 統 一 ドイツで 強 固 となったドイツを 警 戒 するフランス 等 がマルクの 消 滅 と 引 換 えにまとめられた 政 治 的 な 決 定 の 賜 物 です ユーロは 導 入 国 に 対 し 財 政 政 策 などを 監 督 する 制 度 がなく 財 政 基 盤 の 弱 いギリシャ 等 では 財 政 赤 字 から 資 金 流 出 が 続 き EU と ECB では 多 額 の 協 調 融 資 を 行 う 対 応 を 余 儀 なくされています ギリシャでは 緊 縮 財 政 に 反 対 する 政 権 が 発 足 し ユーロを 巡 る 危 機 はなお 予 断 を 許 しません また ヨーロッパでは EU 発 足 とユーロ 創 設 で モノとカネ の 市 場 統 合 が 進 み 次 には ヒト の 移 動 の 自 由 でその 統 合 を 深 化 させようと シェンゲン 協 定 (1997 年 ) が 結 ばれました(22 ヵ 国 ) しかし これが 東 欧 諸 国 からの 安 い 労 働 力 の 流 入 を 招 き イスラム 教 徒 難 民 の 増 加 によるイスラム 過 激 主 義 の 台 頭 がテロを 引 き 起 こしています 昨 年 4 月 にはロシアが 隣 国 ウクライナを 編 入 し 周 辺 諸 国 に 深 刻 な 脅 威 を 引 き 起 こし ました 現 在 欧 米 諸 国 ではロシアに 対 する 制 裁 措 置 を 打 ち 出 していますが EU とロシ アは 実 体 経 済 面 で 相 互 に 密 接 な 関 係 にあり ウクライナ 問 題 は 勝 者 のいない 国 際 紛 争 に なる 気 配 が 濃 厚 です このようにヨーロッパでは 閉 塞 感 が 漂 い 欧 州 統 合 が 民 意 を 反 映 することなく 進 行 し ている 状 況 を 指 して 民 主 主 義 の 赤 字 と 言 われます しかし 加 盟 国 国 民 の 直 接 選 挙 で 選 ばれた 欧 州 議 会 とその 執 行 機 関 欧 州 委 員 会 との 議 員 内 閣 制 度 的 な 仕 組 みが 確 立 されれば EU は 国 家 連 合 としての 民 主 的 な 制 度 整 備 が 進 むものと 期 待 されます 共 通 通 貨 ユーロもそのメリットが 多 く ユーロに 生 じた 隙 間 を 埋 める 努 力 が 求 めら れます 欧 州 委 員 会 では 2010 年 代 の 経 済 社 会 戦 略 欧 州 2020 や 多 額 の 官 民 投 資 計 画 を 策 定 しており その 成 果 が 期 待 されます EU ユーロの 崩 壊 との 過 激 な 見 出 しに 振 り 回 されることなく 再 生 への 備 えを 怠 ってはならない と 結 ばれています --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 太 陽 グラントソントン エグゼクティブ ニュース バックナンバーはこちらから http://www.grantthornton.jp/library/newsletter/ 本 ニュースレターに 関 するご 意 見 ご 要 望 をお 待 ちしております Tel: 03-5770-8916 e-mail: mc@jp.gt.com 太 陽 グラントソントン マーケティングコミュニケーションズ 担 当 藤 澤 清 江 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- Grant Thornton Japan is a member firm within Grant Thornton International Ltd ('Grant Thornton International'). Grant Thornton International and the member firms are not a worldwide partnership. Services are delivered by the member firms independently. Grant Thornton Japan. All right reserved.

テーマ:ヨーロッパの 苦 悩 EUの 試 練 ユーロ の 危 機 前 駐 ベルギー 大 使 坂 場 三 男 1. 混 迷 を 深 めるヨーロッパ ヨーロッパの 2015 年 はパリで 発 生 したイスラム 過 激 派 によるテロ 事 件 で 始 まった マホメットを 揶 揄 する 風 刺 画 を 掲 載 した 新 聞 社 とユダヤ 系 の 商 店 が 襲 われ 警 察 官 2 名 を 含 む 15 名 が 殺 害 された この 事 件 は 表 現 の 自 由 を 封 殺 しようとするイスラム 過 激 派 に 対 する 広 範 な 大 衆 の 怒 り を 惹 起 し それが 強 い 反 イスラム 感 情 のうねりになって いる 2001 年 9 月 11 日 に 米 国 で 起 きた 同 時 多 発 テロ 事 件 が 米 国 民 の 反 イスラム 感 情 を 大 きく 刺 激 した 構 図 に 似 ているが ヨーロッパではアラブ 諸 国 などからの 移 民 流 入 によ るイスラム 人 口 が 2 千 万 人 以 上 に 膨 らみ 地 元 の 極 右 勢 力 や 人 種 差 別 主 義 者 と 摩 擦 を 繰 り 返 してきた 背 景 があるだけに 事 態 は 別 の 意 味 でより 深 刻 である 若 者 の 失 業 率 が 高 い 労 働 事 情 も 状 況 を 複 雑 にしている 米 国 ではイスラム 過 激 派 との 闘 いは 国 家 安 全 保 障 の 問 題 であったが ヨーロッパでは 同 時 に 人 種 宗 教 の 対 立 という 社 会 問 題 としての 側 面 が 色 濃 い 政 治 家 や 有 識 者 が 人 種 的 偏 見 に 警 鐘 を 鳴 らせば 鳴 らすほど 一 般 大 衆 レベ ルにおいて 排 外 主 義 的 な 風 潮 が 広 がるという 悪 循 環 にはまり 込 んでいる 大 衆 の 怒 り の 矛 先 は 身 近 にいるアラブ イスラム 系 の 住 民 に 向 かうと 同 時 に これらの 移 民 を 受 け 入 れてきた 政 府 の 対 応 や 人 の 移 動 の 自 由 を 定 めたEUのシェンゲン 協 定 の 是 非 の 問 題 にまで 発 展 しつつある ヨーロッパの 経 済 状 況 がもう 少 し 良 ければ 雇 用 も 改 善 し 社 会 に 希 望 も 見 えてくる 筈 だが 2007 年 の 金 融 危 機 や 2008 年 のリーマンショック 以 降 世 界 的 な 景 気 低 迷 の 中 にあって なかなか 状 況 打 開 の 糸 口 が 見 えて 来 ない 加 えて 2010 年 からはギリシャの 債 務 危 機 に 端 を 発 する 南 欧 諸 国 の 財 政 赤 字 の 問 題 とこれへの 対 応 の 遅 れから 欧 州 単 一 通 貨 ユーロ に 対 する 国 際 的 な 信 認 が 薄 れている 今 年 1 月 にギリシャの 総 選 挙 で 反 緊 縮 派 が 政 権 をとったことは 事 態 を 更 に 複 雑 にし 混 迷 の 度 を 深 める 結 果 となっている 他 方 デフレ 対 策 としてこの 3 月 か ら 欧 州 中 央 銀 行 (ECB)はユーロ 誕 生 後 初 めてとなる 量 的 金 融 緩 和 に 着 手 してお り 欧 州 債 券 市 場 で 南 欧 諸 国 ( 特 にイタリア スペイン)の 国 債 利 回 りが 大 幅 に 低 下 し たことで 財 政 規 律 の 問 題 が 再 浮 上 している EU 条 約 は 加 盟 国 に 財 政 赤 字 の 抑 制 を 求 め 債 務 国 の 債 務 を 肩 代 わりすることを 禁 止 している(いわゆる 非 救 済 条 項 )が 新 た な 事 態 は 対 応 を 誤 れば タガのゆるみ を 齎 し(もたらし) 別 の 意 味 でユーロの 信 認 を 損 なうリスクを 抱 えることになる ECBの 読 み 通 り 景 気 回 復 が 得 られるかも 不 透 明 である こうした 中 で 昨 年 3 月 に 発 生 したウクライナ 問 題 は 欧 州 各 国 特 にロシアと 国 境 を 接 する 国 々に 安 全 保 障 の 面 で 深 刻 な 脅 威 を 生 み 出 している 冷 戦 終 結 後 20 年 を 超 える 平 穏 な 時 代 が 突 然 終 焉 し 今 や ヨーロッパでは 新 冷 戦 という 言 葉 も 聞 かれる 旧 ユーゴからイラク アフガニスタンまで 域 外 の 紛 争 解 決 に 関 与 して 来 たヨーロッパは 改 めて 域 内 防 衛 の 重 要 さを 思 い 知 らされている また ウクライナの 問 題 は 一 連 の 対 ロ 制 裁 措 置 によって 深 刻 な 経 済 問 題 にもなっている 貿 易 や 投 資 やエネルギー 供 給 の 面 で ロシアとの 関 係 を 発 展 させてきた 多 くの 欧 州 諸 国 にとって ロシアとの 関 係 悪 化 による 経 済 的 ダメージはアジアに 住 む 我 々が 想 像 するより 遥 かに 大 きい クリミア 半 島 から 東 部 ウクライナをめぐるロシアとの 角 逐 (かくちく)は 俄 かには 打 開 の 糸 口 が 見 えず 長 Grant Thornton Japan. All right reserved. 2

期 戦 の 様 相 を 呈 しており 相 互 に 引 くに 引 けない 状 況 になっている ロシアを 政 治 的 経 済 的 パートナーとする 外 交 戦 略 は 見 直 しを 迫 られている 昨 年 5 月 の 欧 州 議 会 選 挙 では 極 右 勢 力 やEU 懐 疑 派 と 呼 ばれる 政 党 が 議 席 を 伸 ばし た EUの 東 方 拡 大 によって 欧 州 市 民 を 歓 喜 させた 欧 州 統 合 の 進 展 はわずか 10 年 で 大 きな 失 望 に 変 わりつつある こうした 流 れは 今 後 EU 各 国 で 行 われる 国 内 選 挙 にも 影 響 を 及 ぼし 既 成 政 党 にとって 深 刻 な 危 機 をもたらすのではないかとの 見 方 も 出 ている 伝 統 的 にヨーロッパを 牽 引 して 来 た 政 治 勢 力 の 支 持 基 盤 は 確 実 に 蝕 まれている 今 ヨ ーロッパは 第 二 次 世 界 大 戦 後 最 大 の 危 機 に 直 面 していると 言 っても 過 言 ではなく この 局 面 を 打 開 できなければ 長 期 的 な 混 迷 の 時 代 に 陥 ることになる 欧 州 統 合 のプロセ スにもブレーキがかかり 最 悪 の 場 合 は プロセスの 後 退 のリスクすらある さて これからヨーロッパはどこに 向 かうのか 2015 年 ヨーロッパの 人 々は 自 らにこの 疑 問 を 問 い 続 けなければならない 2. 長 引 く 経 済 低 迷 とデフレ 懸 念 20 世 紀 の 後 半 から 21 世 紀 の 初 め ヨーロッパ 諸 国 は 欧 州 統 合 の 果 実 を 享 受 し 安 定 した 経 済 成 長 を 達 成 して 欧 州 モデル と 呼 ばれる 充 実 した 社 会 保 障 制 度 を 確 立 して 来 た 特 に ドイツや 北 欧 諸 国 は 経 済 の 構 造 改 革 を 進 めて 財 政 の 安 定 化 を 図 りつつ 同 時 に 雇 用 状 況 を 改 善 するという 難 しい 舵 取 りに 一 定 の 成 果 を 収 め 強 い ヨーロッパ を 体 現 した これに 対 し ギリシャ イタリア スペイン ポルトガルと いった 南 欧 諸 国 (とアイルランド)はユーロ 圏 の ぬくもり に 包 まれ 強 いヨーロ ッパ の 余 得 にも 与 かって(あずかって) 分 不 相 応 にも 見 えた 給 与 年 金 の 上 昇 とその 結 果 としての 生 活 水 準 の 向 上 を 享 受 して 来 たのである 北 のヨーロッパが 作 った 製 品 が 南 のヨーロッパに 大 量 に 輸 出 され これを 買 うためのお 金 も 北 から 南 へとじゃぶじゃぶ 流 れ 込 んだ 不 思 議 なことに 誰 もこれを 不 審 に 思 わなかった こうした 様 相 に 変 化 が 見 え 始 めたのは 2007 年 頃 からである 米 国 発 の 金 融 危 機 (サブプライムローン 問 題 と リーマンショック)は 対 米 依 存 度 を 深 めていた 欧 州 金 融 機 関 を 直 撃 EU 加 盟 国 のGD Pの 成 長 率 は 大 幅 に 低 下 し 失 業 率 も 上 昇 した(2008 年 のEU 成 長 率 は 前 年 の 2.9%か ら 0.9%に 低 下 ユーロ 圏 は 0.8%) ユーロ 圏 をリードするドイツがインフレ 気 味 の 経 済 状 況 を 危 惧 して 緊 縮 財 政 に 転 じ 金 融 を 引 き 締 める 必 要 を 唱 え 始 めた 矢 先 の 出 来 事 で ある この 年 の 直 接 投 資 の 落 ち 込 みは 激 しく 域 内 投 資 が 45.7% 域 外 への 投 資 が 26.8% 域 外 からの 投 資 が 52.1%という 惨 状 になった この 影 響 は 翌 2009 年 に 更 に 顕 著 に 現 れ EU 全 体 のGDP 成 長 率 は 4.2% うちユーロ 圏 は 4.5%に 落 ち 込 み 貿 易 額 も 輸 出 が 18.3% 輸 入 が 20.9%というかつてない 大 幅 減 少 となった その 上 2009 年 末 にはギリシャの 財 政 赤 字 の 粉 飾 事 件 が 勃 発 するという 泣 き 面 に 蜂 の 事 態 が 生 起 したのである その 後 も EU 諸 国 のマクロ 経 済 状 況 は 改 善 しないどころか 悪 化 の 一 途 を 辿 ってい る 特 に ユーロ 圏 では 2010 年 と 2011 年 こそそれぞれ 2.0% 1.6%の 経 済 成 長 を 見 せたものの 2012 年 が 0.8% 2013 年 が 0.5% そして 昨 年 も 0.9%にとどまって いる 消 費 者 物 価 指 数 も 昨 年 は 0.4%に 落 ち 込 み 昨 年 12 月 からは 4 ヵ 月 連 続 でマイナ ス( 各 々 0.2% 0.6% 0.3% 0.1%)を 記 録 し デフレが 懸 念 される 状 態 にな っている( 今 年 3 月 欧 州 中 央 銀 行 <ECB>が 発 表 した 2015 年 の 消 費 者 物 価 見 通 し 改 定 値 は 0.0%) 個 々の 国 を 見 ると ドイツの 孤 軍 奮 闘 だけが 目 立 ち 一 強 多 弱 の 時 代 になっていることを 覗 わせる こうした 状 況 を 打 開 するための 窮 余 の 一 策 として とられた 措 置 がECBによる 量 的 金 融 緩 和 である 今 年 3 月 9 日 に 着 手 されたこの 緊 急 措 置 ではユーロ 域 内 の 金 融 機 関 から 月 600 億 ユーロのペースで 国 債 などを( 向 こう Grant Thornton Japan. All right reserved. 3

1 年 半 に 亘 って) 買 い 取 り 続 けることが 予 定 されており 1 兆 ユーロを 超 える 大 量 のお カネが 市 場 に 流 れ 込 むことで 物 価 を 押 し 上 げることが 期 待 されている 日 米 両 国 で 既 に とられている 措 置 だが 19 ヵ 国 が 参 加 するユーロ 圏 においては 財 政 政 策 が 十 分 に 統 一 されている 訳 ではなく 国 債 金 利 が 低 下 すれば 再 び 安 易 な 国 債 発 行 に 走 り 財 政 規 律 の タガが 外 れる 懸 念 なしとしない ドイツなど 緊 縮 派 の 国 々では 自 国 納 税 者 の 負 担 が 増 え ることへの 不 満 が 増 幅 されつつある 欧 州 委 員 会 は 今 年 の 域 内 の 実 質 成 長 率 を 1.3% 来 年 を 1.9%と 予 測 し ECBは 2017 年 に 2%を 超 えるという 強 気 の 景 気 見 通 しを 発 表 しているが ユーロ 安 原 油 安 及 び 超 低 金 利 の 追 い 風 はあるものの 域 内 外 の 需 要 の 弱 さもあってその 実 現 を 懐 疑 的 に 見 る 専 門 家 も 多 いようである( 表 1) 実 質 GDP 成 長 率 ( 表 1) EU 諸 国 の 経 済 見 通 し(2015 年 ) 失 業 率 インフレ 率 財 政 収 支 対 GDP 比 政 府 債 務 残 高 対 GDP 比 ドイツ 1.1% 5.1% 1.2% 0.0% 72.4% フランス 0.7% 10.4% 0.7% -4.5% 98.1% イタリア 0.6% 12.6% 0.5% -2.7% 133.8% スペイン 1.7% 23.5% 0.5% -4.6% 101.2% ポルトガル 1.3% 13.6% 0.6% -3.3% 125.1% ギリシャ 2.9% 25.0% 0.3% -0.1% 168.8% 英 国 2.7% 5.7% 1.6% -4.4% 89.5% ユーロ 圏 1.5% ( 1.0%) 11.3% 0.0% ( 0.7%) -2.4% 94.8% EU28 ヵ 国 1.3% 10.0% 0.1% -2.7% 88.3% 3. 欧 州 単 一 通 貨 ユーロ の 危 機 欧 州 委 員 会 2014 年 11 月 6 日 公 表 但 し 赤 字 は 2015 年 2 月 緑 字 は 同 3 月 修 正 分 ギリシャの 債 務 危 機 が 2010 年 春 に 発 生 して 5 年 になる この 間 ユーロ の 崩 壊 が 懸 念 されたが 何 とか 持 ちこたえている 欧 州 単 一 通 貨 ユーロ の 創 設 はEUの 歴 史 における 一 大 事 業 であったが その 崩 壊 プロセスには 創 設 時 の 何 倍 ものエネルギーが 必 要 になると 言 われている まさに 重 大 過 ぎて 崩 壊 させられない のである ユー ロ の 創 設 は 1992 年 にオランダのマーストリヒトで 開 催 された 欧 州 首 脳 会 議 の 場 で 決 定 された この 1992 年 という 年 はベルリンの 壁 が 崩 壊 し 東 西 ドイツが 統 一 されてから 2~3 年 後 のことである 統 一 ドイツは 人 口 が 8 千 万 人 欧 州 最 大 の 国 家 になった 第 二 次 世 界 大 戦 の 記 憶 が 完 全 に 消 え 去 った 訳 ではない 欧 州 の 国 々 特 にフランスにとって はドイツの 統 一 は 冷 戦 の 終 結 を 象 徴 する 出 来 事 として 歓 迎 される 一 方 で 過 去 の 忌 まわ しい 戦 争 の 記 憶 が 頭 をよぎるのは 避 けがたかった 特 に 世 界 最 強 の 通 貨 と 言 われたド イツ マルクが 欧 州 を 支 配 するのではないかという 懸 念 は 実 に 深 刻 であった フランス からすれば 東 西 ドイツの 統 一 を 認 める 代 償 としてマルクの 消 滅 ( 新 たな 欧 州 単 一 通 貨 の Grant Thornton Japan. All right reserved. 4

創 設 )をドイツに 要 求 したのだと 言 われている ユーロ の 誕 生 は 一 見 して 市 場 統 合 の 当 然 の 帰 結 であるが その 本 質 は 欧 州 の 安 全 保 障 にかかわる 優 れて 政 治 的 な 決 定 であ り この 点 を 見 落 とすと ユーロ の 防 衛 にかける 独 仏 両 国 をはじめとする 欧 州 諸 国 の 確 固 たる 決 意 を 見 誤 うことになる 統 一 ドイツの 側 からも 自 国 通 貨 を 放 棄 する 見 返 りとして ユーロ 導 入 国 が 財 政 規 律 を 厳 格 に 守 り 物 価 を 安 定 的 に 保 つことを 要 求 した いわゆる 安 定 成 長 協 定 (SGP) である ドイツにとって 物 価 の 安 定 はナチス ドイツが 台 頭 した 時 代 の 悪 夢 を 再 び 呼 び 起 こさないために 不 可 欠 の 政 策 であり 第 二 次 大 戦 後 ブンデスバンク(ドイツ 中 央 銀 行 )が 死 守 して 来 た 絶 対 方 針 だった 安 定 成 長 協 定 の 骨 子 は 国 の 債 務 残 高 をGD Pの 60% 以 下 にすることと 財 政 赤 字 を 3% 以 下 にすることであり インフレ 率 は 2% 未 満 でそれに 近 いレベルに 保 つことである ユーロ 圏 諸 国 がこの 協 定 を 順 守 すれば 欧 州 単 一 通 貨 ユーロ は 域 内 経 済 の 安 定 的 発 展 に 寄 与 し 国 際 的 な 信 認 も 得 ることが 出 来 る 筈 だった フランクフルトには 欧 州 中 央 銀 行 (ECB)が 設 立 され ユーロ 圏 統 一 金 融 政 策 に 移 行 した ユーロ の 正 式 導 入 は 1999 年 1 月 実 際 にユーロ 紙 幣 硬 貨 を 市 民 が 手 にしたのは 2002 年 1 月 で マーストリヒト 条 約 の 調 印 から 10 年 の 歳 月 が 過 ぎて いた 現 在 ユーロ を 導 入 しているEU 諸 国 は 19 ヵ 国 このほかに 非 EU 国 ながらユ ーロを 自 国 通 貨 としている 国 が 6 ヵ 国 (モナコ バチカンなど)ある モンテネグロや コソボのようにユーロ 圏 との 合 意 なしに 言 わば 勝 手 に ユーロ を 自 国 通 貨 にしている ところもある 新 通 貨 ユーロ は 米 ドルに 肩 を 並 べる 国 際 通 貨 になることが 期 待 され たが 実 際 の 道 のりは 極 めて 厳 しい 誕 生 当 初 こそ 欧 州 各 国 が 単 一 通 貨 のメリットを 享 受 したものの 導 入 国 による 財 政 政 策 ( 国 債 の 発 行 権 を 含 む)と 税 制 はバラバラであり 銀 行 も 共 通 の 監 督 下 になく 各 国 が 好 き 勝 手 に 振 る 舞 える 状 況 が ユーロ の 信 認 に 大 きな 問 題 を 投 げかけることが 分 かって 来 た 安 定 成 長 協 定 に 定 める 財 政 赤 字 3% 以 下 のルールは 景 気 低 迷 期 の 財 政 支 出 増 によって 独 仏 両 国 ですら 守 れず いわんや 南 欧 諸 国 にとっては 厳 しすぎることが 判 明 したのである その 最 大 の 事 例 が 2009 年 末 に 暴 露 さ れたギリシャの 大 幅 な 財 政 赤 字 だった ギリシャは 2001 年 にユーロを 導 入 したが 安 定 成 長 協 定 を 守 っていることを 偽 装 し 2009 年 10 月 の 政 権 交 代 を 機 に 財 政 統 計 を 粉 飾 していたことが 暴 露 された 何 と 2008 年 のギリシャの 財 政 赤 字 は 5.0%どころか 7.7%だったし 2009 年 の 赤 字 見 通 しに 至 っては GDP 比 3.7% と 発 表 されていたものが 何 と 15.4%に 更 に 悪 化 している 2010 年 に 入 るとギリシャの 国 債 は 暴 落 し これを 大 量 に 保 有 していた 欧 米 諸 国 ( 特 に フランス ドイツ 英 国 )の 金 融 機 関 の 中 には 経 営 破 綻 するところも 出 た キプロス(2008 年 のユーロ 導 入 国 )のような 小 さな 国 は 多 額 の 不 良 債 権 をかかえて 外 国 投 資 ファンドの 餌 食 となり 財 政 基 盤 の 弱 いイタリア スペイン ポルトガルなどの 南 欧 諸 国 でも 資 金 流 出 が 続 き 国 際 金 融 市 場 で 資 金 が 調 達 出 来 ない 危 機 に 陥 ったのである こうした ユ ーロ の 危 機 を 克 服 するため EUとECBはIMFの 協 力 を 得 ながら ギリシャに 合 計 で 2,600 億 ユーロを 協 調 融 資 し ユーロ 導 入 国 全 体 の 信 認 を 守 るために 7500 億 ユー ロという 巨 額 の 資 金 を 積 み 上 げ 欧 州 安 定 メカニズム(ESM) という 融 資 保 証 の 制 度 を 構 築 せざるを 得 なかった 他 方 これを 契 機 に 域 内 金 融 機 関 に 対 する ECB の 監 督 権 限 が 大 幅 に 強 化 (2014 年 11 月 から 稼 働 )され 単 一 破 綻 処 理 制 度 の 創 設 (2016 年 1 月 運 用 開 始 予 定 )と 合 わせて 多 年 の 懸 案 だった 銀 行 同 盟 が 事 実 上 成 立 した( 預 金 保 険 制 度 の 統 一 については 協 議 継 続 中 )し 2011 年 に 導 入 された ヨーロピアン セメスター 制 度 によって 加 盟 国 政 府 の 予 算 に 対 する 欧 州 委 員 会 の 事 前 審 査 も 厳 格 に 行 われるようになった 更 に 2013 年 に 発 効 した 新 財 政 協 約 では 各 国 の 単 年 度 財 政 赤 字 をGDP 比 Grant Thornton Japan. All right reserved. 5

で 0.5% 以 下 にすること しかも 締 約 国 に 対 して 国 内 法 によって 財 政 規 律 を 定 めるこ とまで 求 めており 結 果 として 共 通 財 政 政 策 に 向 けて 一 歩 近 付 くことになったのは 不 幸 中 の 幸 いだったかも 知 れない しかし 今 年 の 1 月 にギリシャで 行 われた 総 選 挙 で 緊 縮 財 政 路 線 に 反 対 する 政 権 が 誕 生 したことは 沈 静 化 しつつあった ギリシャ 危 機 を 再 燃 させている 財 政 再 建 策 の 継 続 をめぐるEUとギリシャ 新 政 権 との 交 渉 は 2 月 末 に 一 先 ず 決 着 し 同 国 への 金 融 支 援 は 4 ヵ 月 間 延 長 されることになったが 新 政 権 が 提 示 した 財 政 構 造 改 革 案 の 中 身 は 詰 まっておらず 4 月 末 に 設 定 された 合 意 期 限 まで 更 に 攻 防 が 続 くことになり 状 況 は 予 断 を 許 さない 4. 国 際 テロとシェンゲン 協 定 市 場 統 合 の 深 化 のプロセスにおいて モノとカネ の 次 は ヒト である しかし 人 の 移 動 の 自 由 は 市 民 生 活 に 直 結 するため 同 一 の 文 化 と 生 活 レベルの 国 の 間 で 進 められる 必 要 がある 欧 州 において 最 初 に 国 境 検 問 の 廃 止 を 決 めたのは 1985 年 ドイツ フランスとベネルクス 諸 国 の 5 ヵ 国 の 間 だった シ ェンゲン 協 定 と 呼 ばれるこの 合 意 はEUの 枠 外 で 取 り 決 められたものだが 1997 年 の アムステルダム 条 約 においてEUの 合 意 事 項 として 取 り 込 まれた しかし EU 諸 国 の 中 には 英 国 のようにこれに 参 加 しない 国 もあり 現 在 は 域 外 国 を 含 む 22 ヵ 国 がシェン ゲン 協 定 の 当 事 国 になっている 当 事 国 の 間 では 査 証 の 免 除 と 出 入 国 審 査 の 共 通 化 が 図 られ 警 察 当 局 の 捜 査 協 力 や 刑 事 司 法 協 力 も 進 んでいる 一 般 国 民 や 海 外 からの 旅 行 者 にとっては 真 に 有 り 難 い 制 度 である しかし 今 シェンゲン 協 定 は 多 くの 試 練 に 晒 されている その 第 一 が 労 働 者 の 域 内 移 動 に 関 わる 問 題 である 21 世 紀 に 入 ってEUが 東 方 に 拡 大 し 東 欧 諸 国 がこの 協 定 に 参 加 するようになると これらの 国 々からの 労 働 者 が 高 い 賃 金 を 求 めて 西 欧 諸 国 に 流 入 するようになり あちこちで 摩 擦 を 引 き 起 こしている 経 済 が 低 迷 する 西 欧 諸 国 では 若 者 を 中 心 に 失 業 者 が 増 えており そこに 東 欧 諸 国 から 労 働 者 が 流 入 して 安 い 賃 金 で 働 くため 職 を 荒 らすライバルと 見 做 されている 更 に 事 態 を 悪 化 させているのは 夢 を 抱 いて 西 欧 まで 来 たものの 結 局 職 を 見 つけられず 浮 浪 者 や 物 乞 いになったり 犯 罪 に 走 る 者 が 出 てきていることだ 治 安 の 悪 化 は 相 当 に 深 刻 である もう 一 つは 難 民 の 受 け 入 れに 関 わる 問 題 である アフリカや 中 東 アラブ 諸 国 から 亡 命 して 来 る 者 は 後 を 絶 た ず 一 旦 いずれかの 国 で 難 民 として 認 定 されればシェンゲン 域 内 を 自 由 に 移 動 出 来 るた め 難 民 認 定 制 度 の 共 通 化 は 図 られてはいるものの 依 然 として 取 扱 いにバラツキがあ り これがシェンゲン 参 加 国 の 間 で 摩 擦 を 引 き 起 こしている 特 に 北 アフリカからの 難 民 流 入 が 頻 繁 なイタリア(およびスペイン)にとっては 実 に 悩 ましい 事 態 になってい る 国 連 によればイタリアには 昨 年 だけで 海 を 渡 って 到 着 した 難 民 が 14 万 人 を 超 える ( 洋 上 転 覆 による 溺 死 者 は 3500 人 ) 現 在 ヨーロッパにおけるイスラム 教 徒 の 人 口 は 2 千 万 人 を 超 えると 言 われており 若 者 がイスラム 過 激 主 義 に 染 まりテロに 走 る 傾 向 が 強 まっていることも 警 察 当 局 を 悩 ませている 彼 らは シェンゲン 域 内 を 自 由 に 移 動 出 来 るため 容 疑 者 を 追 跡 するのがますます 難 しくなっている 人 の 移 動 の 自 由 を 定 めるシェンゲン 協 定 の 理 想 と テロや 一 般 犯 罪 の 多 発 という 現 実 との 間 には 余 りにも 深 い 溝 が 出 来 ている 今 年 2 月 EUの 非 公 式 首 脳 会 議 はテロ 阻 止 を 目 的 とする 域 外 との 国 境 管 理 強 化 の 方 針 を 打 ち 出 しており この 6 月 から 新 たな 国 境 警 備 措 置 が 導 入 される 航 空 機 乗 客 情 報 の 共 有 などが 柱 だが どこまで 実 効 性 のあるものになるか 疑 問 なしとしない Grant Thornton Japan. All right reserved. 6

5. ウクライナ 問 題 とヨーロッパの 安 全 保 障 2014 年 3 月 ロシアが 隣 国 ウクライナの 領 土 (クリミア 半 島 )を 強 引 に 編 入 すると いう 事 態 が 発 生 し 欧 米 諸 国 を 震 撼 させた 東 西 冷 戦 の 終 結 から 四 半 世 紀 ヨーロッパ の 人 々は 域 内 の 軍 事 的 紛 争 から 完 全 に 解 放 されたと 信 じていた 冷 戦 期 にワルシャワ 条 約 機 構 と 対 峙 していたNATOは 域 内 防 衛 の 任 務 を 二 の 次 にして イラクやアフガニ スタンにおける 危 機 管 理 に 重 点 を 移 していたのである 1994 年 の パートナーシ ップ 協 力 協 定 (PCA) を 基 礎 にロシアとの 対 話 と 協 力 を 深 めていた 欧 米 諸 国 にとっ て 突 然 のロシアの 軍 事 侵 攻 は 青 天 の 霹 靂 以 外 の 何 物 でもなかった 冷 戦 終 結 後 東 欧 諸 国 や 旧 ソ 連 圏 の 国 々を 次 々にEUやNATOの 加 盟 国 にする 欧 米 諸 国 の 政 治 攻 勢 を ロシアの 人 々( 特 にプーチン 大 統 領 らの 守 旧 派 )がどういう 思 いで 耐 え 忍 んでいたかの 心 情 を 完 全 に 読 み 違 えていた 事 実 1990 年 に 東 西 ドイツが 統 一 した 際 に これを 容 認 したロシアはEU/NATOが( 東 欧 諸 国 はともかく)ウクライナやベラルーシ モ ルドバなど 旧 ソ 連 構 成 国 には 手 を 出 さない(ロシア 国 境 に 西 側 兵 力 を 展 開 しない)と 了 解 したに 違 いない こうした 事 情 を 最 もよく 知 っていたのは 旧 東 独 出 身 であるドイツの メルケル 首 相 (ロシア 語 が 流 暢 )だった 筈 である 欧 州 政 治 の 機 微 に 疎 い 米 国 に 引 き ずられた という 思 いが 彼 女 の 心 底 にはあるのではないか ロシアと 再 び 対 峙 することになった 欧 米 諸 国 はロシアに 対 する 制 裁 措 置 を 次 々に 打 ち 出 すが 当 然 のごとくロシアも 対 抗 措 置 を 取 る 現 在 東 ウクライナをめぐっては 去 る 2 月 12 日 の 停 戦 合 意 にも 拘 らず 一 触 即 発 の 状 況 が 続 いており 状 況 次 第 で 相 互 に 追 加 的 な 制 裁 報 復 措 置 の 応 酬 があるかも 知 れない しかし 次 の 措 置 があるとすれば それは 相 互 にダメージが 及 ぶ 実 体 経 済 面 での 措 置 にならざるを 得 ない しかし 冷 戦 終 結 後 にEU 諸 国 とロシアの 経 済 関 係 は 相 当 に 緊 密 化 しており 域 内 経 済 が 低 迷 するEU 諸 国 にとって 余 りに 時 期 が 悪 すぎる 感 がある 金 融 危 機 が 発 生 した 2007 年 以 降 に 限 っ ても 相 互 の 貿 易 量 は 漸 増 している 2013 年 の 実 績 で 見 ると 対 ロ 輸 出 が 1194 億 ユーロ で 全 輸 出 の 2.6%( 域 外 輸 出 の 6.8%) 対 ロ 輸 入 は 2053 億 ユーロで 全 輸 入 の 4.6% ( 域 外 輸 入 の 12.1%)に 上 る( 表 2) ( 表 2) EU 諸 国 の 域 外 貿 易 の 推 移 ( 単 位 :10 億 ドル %) 輸 出 輸 入 07 年 11 年 12 年 13 年 07 年 11 年 12 年 13 年 総 貿 易 額 3,881 4,337 4,515 4,567 3,990 4,414 4,552 4,429 域 外 比 率 31.9% 35.3% 37.3% 38.2% 35.7% 38.2% 39.4% 38.0% 米 国 6.7% 6.0% 6.5% 6.3% 4.5% 4.2% 4.5% 4.4% 中 国 1.8% 3.1% 3.2% 3.2% 5.8% 6.6% 6.4% 6.3% ロ シ ア 2.3% 2.5% 2.7% 2.6% 3.6% 4.5% 4.7% 4.6% A S E A N 1.4% 1.6% 1.8% 1.8% 2.0% 2.1% 2.1% 2.2% 日 本 1.1% 1.1% 1.2% 1.2% 2.0% 1.5% 1.4% 1.3% ( 出 所 :EU 統 計 局 ) これをEUと 日 本 の 貿 易 額 に 比 較 して 見 ると EUからの 輸 出 額 で 2 倍 強 輸 入 で 3. 5 倍 になる 特 に 輸 入 額 が 多 いのはロシアの 原 油 ガスを 大 量 に 買 っているからであり 一 部 のEU 諸 国 はエネルギー 源 の 大 半 をロシアに 頼 っている EU 全 体 の 域 外 からのエ ネルギー 輸 入 (2012 年 )で 見 るとガスの 32% 石 油 の 33% 石 炭 の 27%がロシアから の 輸 入 (ロシアから 見 れば 80% 以 上 がEU 向 け 輸 出 )であり これに 加 えて EUは ロシアから 核 エネルギー 燃 料 (ウラン)の 割 り 当 てを 受 けている これではとても ロ Grant Thornton Japan. All right reserved. 7

シアからのエネルギー 輸 入 禁 止 といった 勇 ましい 措 置 はとれない この 3 月 EU 首 脳 は 欧 州 委 員 会 が 2 月 に 発 表 した エネルギー 同 盟 戦 略 案 をめぐって 協 議 しているが ロシアへのエネルギー 依 存 を 短 期 間 に 減 らすことは 困 難 であろう そこで 降 って 湧 いた のが 国 際 エネルギー 市 場 における 原 油 価 格 の 暴 落 である 主 要 な 原 油 輸 出 国 であるロシ アにとっては 経 済 の 根 幹 を 直 撃 するダメージであり 輸 入 国 である 大 半 のEU 諸 国 にと っては 天 の 配 剤 とも 言 うべき 僥 倖 (ぎょうこう)になっている ウクライナ 問 題 を 解 決 する(ロシアが 政 策 転 換 する)のは 軍 事 でも 政 治 でもなく 原 油 価 格 になるかも 知 れ ないと 見 る 専 門 家 もいる 相 互 制 裁 と 原 油 価 格 下 落 のダブル パンチで 今 年 のロシア 経 済 は 通 貨 ルーブルの 暴 落 もあって GDPの 伸 び 率 が 4~7%のマイナス 2 ケタ 台 のイ ンフレになると 見 られており 欧 米 諸 国 との 我 慢 比 べにどこまで 耐 えられるのかという 見 方 である いずれにしても ウクライナ 問 題 は 勝 者 のいない 国 際 紛 争 になる 気 配 が 濃 厚 である 1954 年 にフルシチョフ 第 一 書 記 首 相 (ウクライナ 出 身 )の 気 紛 れ で 手 放 したク リミア 半 島 の 奪 還 に 成 功 し ウクライナの 東 部 (および 南 部 )で 影 響 力 を 浸 透 させてい るロシアにとって 全 てがプーチン 大 統 領 の 思 惑 通 りに 事 が 展 開 しているようにも 見 え るが 支 払 っている 代 償 も 極 めて 大 きい 国 際 社 会 から 孤 立 し G8 からも 価 値 観 を 共 有 し 得 ない 国 として 排 除 されている プーチン 大 統 領 の 悲 願 と 言 われていた ユ ーラシア 連 合 結 成 の 夢 もウクライナの 不 参 加 が 決 定 的 となることで 実 質 的 な 意 味 を 失 っている 他 方 欧 米 諸 国 から 見 ると 経 済 的 に( 特 にエネルギー 資 源 の 供 給 面 で)ロ シアに 大 きく 依 存 し 破 産 国 家 の 様 相 を 呈 するウクライナを 自 陣 営 に 取 り 込 むこと は 巨 額 の 負 債 の 共 同 保 証 人 になるようなもので (それでなくとも 経 済 が 低 迷 する 現 状 においては) 荷 が 重 すぎる 全 ての 当 事 者 にとって 進 むもならず 戻 るもならない 状 態 は 当 面 の 間 続 かざるを 得 ず 誠 に 不 幸 な 状 況 と 言 わざるを 得 ない 6. ヨーロッパはどこに 向 かうのか 今 ヨーロッパには 政 治 経 済 社 会 の 全 ての 面 で 深 刻 な 閉 塞 感 が 漂 っている 市 井 の 人 々の 間 には 欧 州 の 統 合 や 単 一 通 貨 ユーロ の 導 入 が 諸 悪 の 根 源 であるかのような 不 満 が 増 大 しているように 見 受 ける 特 に EU のエリート 官 僚 ( 欧 州 委 員 会 だけで 3 万 人 以 上 の 国 際 公 務 員 がいる)が 自 分 たちの 知 ら ないうちに 次 々と 国 境 の 垣 根 が 取 り 払 われる 一 方 それがもたらす 負 の 側 面 に 何 の 手 も 打 っていないという 鬱 屈 (うっくつ)した 感 情 は 強 い 最 近 ヨーロッパでは 民 主 主 義 の 赤 字 という 言 葉 が 聞 かれるようになった 欧 州 統 合 のプロセスが 民 意 を 反 映 する ことなく 進 行 している 状 況 を 指 す 表 現 である 2005 年 に 欧 州 憲 法 条 約 が 国 民 投 票 に 付 され フランスやオランダで 否 決 されて 葬 り 去 られた 筈 なのに その 後 2007 年 末 に リスボン 条 約 が 出 来 たときは 議 会 の 批 准 だけで 発 効 し 欧 州 憲 法 条 約 の 骨 格 をなす 機 構 改 革 が 実 現 しているのはどうしてなのか EUの 大 統 領 職 は 欧 州 理 事 会 常 任 議 長 に 衣 を 変 え EU 外 相 職 は 外 交 安 全 保 障 上 級 代 表 という 名 前 で 創 設 されている ユーロ 導 入 時 の 安 定 成 長 協 定 の 縛 り(しばり)で 不 況 打 開 のための 国 別 の 景 気 刺 激 策 も 打 てず 貿 易 が 赤 字 になっても 為 替 の 切 り 下 げで 調 整 することが 出 来 ない 何 も 良 いことはない ではないか という 民 衆 の 思 いは 特 に 南 欧 諸 国 においてポピュリズムの 政 治 を 生 み ナ ショナリスト 的 言 論 がメデイアを 風 靡 している それでは これからのEUはどこに 向 かい 欧 州 単 一 通 貨 ユーロ はどうなるのか 私 は ヨーロッパの 将 来 を 占 う 鍵 は 欧 州 議 会 の 役 割 にあると 思 っている 昨 年 5 月 の 欧 州 議 会 議 員 の 選 挙 では 極 右 勢 力 やEU 懐 疑 派 議 員 の 議 席 増 が 話 題 となったが これは 各 国 の 国 内 議 会 選 挙 と 異 なり 足 切 りのない 比 例 選 挙 制 度 が 初 めて 全 てのEU 加 盟 国 で 導 Grant Thornton Japan. All right reserved. 8

入 された 結 果 であり 議 会 内 における 各 党 各 会 派 の 勢 力 図 には 大 きな 変 化 は 起 こって いない むしろ 過 去 最 低 の 投 票 率 の 低 さ(42.54%)の 方 を 心 配 しなければならない 先 述 の 民 主 主 義 の 赤 字 の 問 題 を 解 決 するには 加 盟 国 国 民 の 直 接 選 挙 で 選 ばれた 欧 州 議 会 こそ 立 法 権 を 強 化 し 欧 州 委 員 会 への 監 視 機 能 を 十 全 に 果 たす 必 要 があるのでは ないか 確 かに 2009 年 末 に 発 効 したリスボン 条 約 によって 欧 州 議 会 によるEU 予 算 及 び 国 際 条 約 の 承 認 権 限 は 格 段 に 強 化 され (EU 理 事 会 との 共 同 決 定 ではあるが) 立 法 権 も 付 与 された それと 今 回 のユンケル 欧 州 委 員 長 (ルクセンブルグ 元 首 相 )の 選 出 プロセスで 欧 州 議 会 が 決 定 的 に 重 要 な 役 割 を 果 たしたことにも 注 目 しなければならな い 議 会 最 大 会 派 が 推 薦 した 委 員 長 候 補 を 選 任 した 初 めての 事 例 であり いわば 議 院 内 閣 制 度 に 近 い 仕 組 みが 見 えてきた 欧 州 委 員 会 の 中 立 性 が 損 なわれるのではないか との 懸 念 の 声 はあるが 議 会 の 勢 力 図 と 無 関 係 に 欧 州 委 員 長 が 決 まる 方 がむしろ 不 自 然 であろう また 議 院 内 閣 制 度 (のような 仕 組 み)が 確 立 されれば 欧 州 議 会 議 員 選 挙 への 各 国 国 民 の 関 心 も 高 まることが 期 待 される 現 在 のEUが 欧 州 合 衆 国 になるこ とはないであろうが 国 家 連 合 としての 民 主 的 な 制 度 整 備 が 着 実 に 進 められる 可 能 性 はある 最 後 に 共 通 通 貨 の 将 来 はどうか 先 述 の 通 り ギリシャでの 総 選 挙 でEU 懐 疑 色 の 強 い 政 権 が 誕 生 したことで 同 国 が ユーロ から 離 脱 する 可 能 性 まで 予 測 する 向 きが あるが ユーロ 圏 からの 離 脱 はそれにとどまることの 何 倍 もの 不 都 合 を 覚 悟 する 必 要 が ある 財 政 規 律 を 緩 めることは 当 座 の 不 満 解 消 にはなろうが 新 たな 自 国 通 貨 ( 準 備 に 数 年 を 要 する)の 信 認 は 地 に 落 ち スーパー インフレが 発 生 する 一 方 財 政 赤 字 を 埋 め 合 わせるための 国 内 外 での 資 金 調 達 は 困 難 となり 市 中 銀 行 からは 預 金 が 大 量 に 流 出 して 国 民 経 済 が 破 綻 することは 目 に 見 えている 輸 出 企 業 や 観 光 産 業 にとってのメリッ トも 長 期 金 利 の 上 昇 によって 帳 消 しにされるどころか 破 産 の 連 鎖 が 起 こる 可 能 性 すら ある そもそも EU 条 約 の 解 釈 上 ユーロ からは 離 脱 するがEUには 留 まるとい う 選 択 肢 はないはずであり 然 りとすればEU 脱 退 によってEUから 得 ている 各 種 の 補 助 金 も 当 然 なくなる 私 は 2010 年 以 降 に ユーロ の 管 理 体 制 がそれ 以 前 に 較 べて 格 段 に 良 く 整 備 されたことに 注 目 している まだまだ 隙 間 は 残 っているが ユーロ 圏 諸 国 は 問 題 が 発 生 する 都 度 この 隙 間 を 埋 める 努 力 を 辛 抱 強 く 続 けるであろう そもそもEUの 歴 史 は 危 機 の 発 生 を 契 機 に 統 合 が 進 化 するという 焼 け 太 り の 歴 史 な のである EU ユーロ 経 済 の 近 未 来 を 予 想 すれば デフレ 懸 念 も 昨 今 の 原 油 価 格 の 暴 落 もあっ て 向 こう 数 年 はゼロ%すれすれの 状 況 が 続 くと 見 られるが 世 界 的 な 景 気 回 復 を 待 た ずとも 現 在 の 地 道 な 研 究 開 発 投 資 (GDPの 3%)の 結 果 が 欧 州 産 業 の 国 際 競 争 力 強 化 という 形 で 現 れ ユーロ 安 の 追 い 風 を 受 ければ 中 長 期 的 にはEU 域 外 への 輸 出 が ますます 伸 長 することになるのではないか 10 年 間 の 経 済 社 会 戦 略 目 標 として 設 定 さ れた 2000 年 代 の リスボン 戦 略 と 2010 年 代 の 欧 州 2020 の 成 果 は 軽 視 すべきで はない ユンケル 欧 州 委 員 長 が 提 唱 している 官 民 投 資 計 画 (3150 億 ユーロ)も 今 年 半 ばにはスタートする また 今 後 日 EU 間 のEPAが 締 結 されれば ビジネス チャンスが 拡 大 すると 同 時 にお 互 いの 経 済 競 争 も 熾 烈 になるだろう 我 々としては E U(ユーロ)の 崩 壊 といったメディアの 過 激 な 見 出 しに 振 り 回 されることなく その 再 生 にこそ 備 えを 怠 ってはならない これが 2012 年 から 14 年 にかけてブリュッセルで 生 活 した 私 の 実 感 である 以 上 Grant Thornton Japan. All right reserved. 9

執 筆 者 紹 介 坂 場 三 男 1949 年 茨 城 県 出 身 前 駐 ベルギー 大 使 学 歴 職 歴 1973 年 横 浜 市 立 大 学 文 理 学 部 卒 業 1973 年 外 務 省 入 省 2004 年 中 南 米 局 長 2006 年 外 務 報 道 官 2008 年 駐 ベトナム 大 使 2010 年 特 命 全 権 大 使 政 府 代 表 (イラク 復 興 支 援 調 整 気 候 変 動 文 化 交 流 担 当 ) 2012 年 駐 ベルギー 大 使 兼 NATO 日 本 政 府 代 表 2014 年 外 務 省 退 官 2015 年 横 浜 市 立 大 学 教 授 Grant Thornton Japan. All right reserved. 10