広 島 地 方 裁 判 所 委 員 会 ( 第 35 回 ) 議 事 概 要 第 1 開 催 日 時 平 成 28 年 5 月 16 日 ( 月 ) 午 前 9 時 45 分 第 2 開 催 場 所 広 島 地 方 裁 判 所 第 一 会 議 室 第 3 出 席 者 [ 委 員 ] 江 種 則 貴, 大 久 保 隆 志, 後 藤 友 之, 小 西 洋, 佐 々 木 和 宏, 髙 尾 ひとみ, 平 岡 真, 宮 崎 英 一, 矢 仲 徹 太 郎, 横 山 繁 夫, 吉 村 薫 ( 敬 称 略 五 十 音 順 ) [ 事 務 担 当 者 ] 山 頭 刑 事 首 席 書 記 官, 岡 田 刑 事 次 席 書 記 官, 清 山 事 務 局 長, 清 家 事 務 局 次 長, 倉 迫 総 務 課 長, 別 府 総 務 課 課 長 補 佐 第 4 議 事 ( 発 言 者 : 委 員 長, 委 員 ) 1 新 任 委 員 の 紹 介 新 任 委 員 の 横 山 委 員, 吉 村 委 員 から 自 己 紹 介 がされた 2 議 事 裁 判 員 裁 判 について 裁 判 員 裁 判 を 傍 聴 し, 裁 判 員 裁 判 の 分 かりやすさなどについて 意 見 交 換 が 行 われた( 意 見 交 換 の 内 容 は 別 紙 のとおり) 3 次 回 期 日 及 びテーマ 等 について 平 成 28 年 6 月 16 日 ( 木 ) 午 後 3 時 から, 引 き 続 き 裁 判 員 裁 判 について 意 見 交 換 することとした - 1 -
( 別 紙 ) ~ 冒 頭 手 続 から 争 点 整 理 等 の 結 果 顕 出 までを 傍 聴 して~ 予 想 以 上 に 丁 寧 にゆっくり 裁 判 員 に 分 からせようと 説 明 している 努 力 をして いたことが 印 象 に 残 った このような 話 し 方 であれば, 裁 判 員 はレジュメを 見 ながら 聞 いておられたので,よく 分 かったのではないか 検 察 官 の 冒 頭 陳 述 はあっさりしすぎていたように 思 う 弁 護 人 の 冒 頭 陳 述 の 方 が 目 的 意 識 がはっきりとしていて 良 かった 裁 判 員 裁 判 の 傍 聴 は 初 めてだったが, 検 察 官 も 弁 護 人 も 非 常 にゆっくり 分 か りやすく 説 明 していた 検 察 官 は, 昔 は 早 口 で,ただ 起 訴 状 を 読 んでいるだけ というイメージであったが, 本 日 の 裁 判 では, 争 点 を 明 示 しているというのが 印 象 的 だった 一 方 で, 灰 皿 で 胸 部 を 殴 ったかどうかが 争 点 ということだが, なぜそこが 争 点 なのか,なぜ 重 要 なのかという 説 明 がなく,よく 分 からなかっ た 推 測 だが, 被 害 者 の 方 が 心 臓 病 を 患 っていたという 話 もあったので, 被 告 人 が そのことを 知 っていて,そこを 殴 れば 致 命 傷 に 至 ると 分 かって 殴 ったかどうかが 言 いたかったのではないかとは 思 うが,はっきりとした 説 明 はなかった 犯 罪 が 成 立 することは 認 めておきながら, 胸 部 を 殴 ったかどうかが 争 点 とな った 理 由 について, 次 回, 今 日 傍 聴 していただいた 裁 判 の 裁 判 長 に 聞 いてみる ことしたい 今 の 点 は, 単 に, 死 体 の 胸 に 叩 いた 跡 があったが, 被 告 人 が 胸 を 叩 いた 記 憶 が ないと 言 ったので, 弁 護 人 としてはそれを 主 張 しないといけなくなったのではな いかと 思 う 胸 を 叩 いていても 叩 いていなくても 量 刑 としては 変 わらないと 思 う が, 言 い 分 が 違 うので 争 点 としているのだと 思 う それから, 分 かりやすさ については, 裁 判 員 裁 判 が 始 まった 当 初 は 冒 頭 陳 述 にパワーポイントを 使 うことが 望 ましいとされていたようだが,その 後 は, 必 ずしもそうではなくなった 検 察 官 の 主 張 が 淡 泊 なのは, 冒 頭 陳 述 なのでこんなものかと 思 う 逆 に, 弁 護 人 の 主 張 は 長 いと 思 ったが, 皆 さんには 印 象 が 良 いようなので, 最 初 に 被 告 人 について 酌 むべき 事 情 を 言 った 方 がいいのかとも 思 った - 2 -
検 察 官 は 客 観 的 な 事 実 を 述 べていただけで, 被 告 人 が,なぜ 殺 意 を 持 って 殺 害 現 場 に 行 ったのかという 理 由 が 述 べられていなかった 一 方 で, 弁 護 人 は, どういう 経 緯 でお 金 を 奪 うことになったのかということなどもきちんと 述 べら れていた 検 察 官 と 弁 護 人 とで 事 前 に 法 廷 でどのような 主 張 をするかというこ とを 擦 り 合 わせているのか 公 判 前 整 理 手 続 で 擦 り 合 わせをしているので,お 互 いにどのようなことを 言 う 予 定 かは 分 かっている しかし, 普 通, 検 察 官 と 弁 護 人 は 主 張 が 相 容 れず 争 っているため,それぞれアナザーストーリーを 持 っている 最 近 は, 冒 頭 陳 述 は, 主 張, 立 証 の 道 標 であり,ある 程 度 分 かっていただけ ればよく, 論 告 や 弁 論 で 言 うことを 先 に 言 ってしまうと 混 乱 させるのではないか ということで,このようなストーリーで 立 証 するといった 骨 格 だけを 言 うように している ただ, 今 日 の 検 察 官 の 冒 頭 陳 述 はメリハリがないという 気 はした ケースバ イケースではあるが, 弁 護 人 の 冒 頭 陳 述 で 初 めて 分 かった 事 実 もあるので, 検 察 官 としても 最 初 からそこも 触 れて 主 張 しても 良 かったのかもしれない 相 手 に 言 わせておいて, 後 で 否 定 するというストーリーを 描 いているのかも しれないが, 単 に 材 料 がないのかなとも 思 った 冒 頭 陳 述 は, 理 屈 だけで 言 えば, 証 明 したい 事 実 の 適 示 で 足 りる しかし, 裁 判 員 にどのような 印 象 を 与 えるか, 裁 判 員 の 感 情 を 動 かすことを 言 うことの 影 響 力 は 大 きいので, 弁 護 人 としては,ここで 裁 判 員 の 印 象 を 強 めておこうと いう 戦 略 は 賢 明 かもしれない そうだとすると, 検 察 官 はもう 少 し 説 明 すべき であったし, 裁 判 員 裁 判 の 対 象 ではない 事 件 と 同 じように 冒 頭 陳 述 を 証 明 した い 事 実 の 適 示 のみに 抑 えた 形 だと, 結 果 は 出 ないように 思 う 検 察 官 と 弁 護 人 との 事 前 の 擦 り 合 わせがあるのであれば, 弁 護 人 が 言 おうと していることに 対 して 検 察 官 も 作 戦 を 考 えれば 勝 算 が 高 くなるのではないか 検 察 官 は 淡 々と 事 実 を 述 べるが, 論 点 になるところの 理 由 はとても 弱 かったと 思 う ただし,ゆっくりと 説 明 されており, 分 かりやすさの 点 は 工 夫 されてい ると 感 じた 裁 判 長 がフランクな 話 し 方 をしていると 思 った 被 告 人 の 話 は 一 部 聞 き 取 り - 3 -
にくいところもあったが, 裁 判 長 が 発 言 内 容 が 分 かったかどうかを 裁 判 員 に 確 認 しながら 進 めており, 良 いと 思 った 検 察 官 も 弁 護 人 も 話 すスピードや 声 の 大 きさが 適 切 だったし, ここが 争 点 で,ここをよく 検 討 していただきた い と, 裁 判 員 に 言 っていたので 分 かりやすかった 検 察 官 が 強 取, 被 告 人 という 言 葉 を 使 っておられたが, 弁 護 人 の 使 われる 言 葉 との 差 があり,バランスが 悪 いというか 違 和 感 を 覚 えた 思 ったより 分 かりやすかった このくらい 丁 寧 に 進 められていると 思 ってい なかった 証 拠 が 出 て 分 かるようなこと 以 外 に, 被 告 人 がいつお 金 を 奪 おうと 思 ったかとか,これまでの 被 告 人 と 被 害 者 との 関 係 や 時 間 の 流 れを 考 えるとい ったことを 一 週 間 詰 めてやるというのはかなり 大 変 であり, 裁 判 員 にとっては 精 神 的 にも 肉 体 的 にもきついだろうなと 思 った 3 点 ほど 気 付 いたことがある 一 つ 目 は, 裁 判 長 が, 被 告 人 によく 声 掛 けをしていると 思 った 教 師 が 生 徒 に 話 すような 語 り 口 調 で 話 されていることに 驚 いた 分 かりやすく, 被 告 人 の 気 持 ちを 落 ち 着 かせる 意 図 もあると 思 うが, 柔 らかかった これは, 被 告 人 によっ ても 違 うのだろうか 二 つ 目 は, 検 察 官 の 資 料 は,そこまで 複 雑 ではないので, 裁 判 員 の 方 も 資 料 を 見 ることと 陳 述 を 聞 くこととのバランスが 取 れていたと 思 うが, 弁 護 人 の 資 料 は, 裁 判 員 の 方 が 読 む 方 に 集 中 されていたようで, 陳 述 を 聞 くこととのバランス が 気 になった 三 つ 目 は, 検 察 官 は 簡 潔 に 説 明 されていたので 分 かりやすく, 主 張 が 明 確 で あったが, 弁 護 人 は 逆 に 陳 述 が 長 かったので, 言 いたいことの 印 象 が 残 らなかっ た ~ 証 拠 書 類, 証 拠 物 の 取 調 べを 傍 聴 して~ 先 ほどの 冒 頭 手 続 とは 打 って 変 わって, 難 しい 専 門 用 語 が 続 出 して 非 常 に 分 かりにくかった また, 証 拠 によって, 何 を 立 証 しようとしているのかという 目 的 が 分 からなかった 当 時 のニュースで 放 送 された 防 犯 カメラの 映 像 では, 犯 行 現 場 に 行 く 前 に 被 告 人 は 何 も 持 っていなかったと 記 憶 しているが,レジ 袋 - 4 -
の 話 は, 何 のために 説 明 されたのか, 何 とどのようにつながっているのか 説 明 がなかったので, 分 からなかった 公 訴 事 実 に 争 いのない 部 分 については,もう 少 し 簡 略 化 した 上 で,この 証 拠 はこのことを 立 証 するのに 役 立 つということを 説 明 した 方 が, 分 かりやすいと 思 う もっと 簡 潔 にできるところがあるのではないか せっかく, 争 点 を 整 理 して 明 らかにしたのだから, 争 いのないところは 簡 略 化 して, 争 点 にフォーカスし た 方 が 良 かったと 思 う 例 えば 領 置 した という 言 葉 について, 意 味 は 分 かるが, 普 通 は 使 わない ので, 簡 単 な 言 葉 に 言 い 換 えても 良 いと 思 う それから, 医 学 用 語 が 大 変 多 く,それをそんなに 正 確 に 言 う 必 要 があるのだろうかと 思 った 胸 のところ に 血 の 塊 があった と 言 っても 良 いと 思 う 専 門 用 語 を2 度 使 った 後 で 分 かり やすい 言 葉 に 言 い 換 えられていたが, 後 で 言 い 換 えるのであれば, 最 初 から 言 い 換 えればよいのではないかと 思 う 正 確 さと 分 かりやすさを 考 えて,そうさ れたのかもしれないが, 医 学 用 語 についてもう 少 し 優 しい 言 い 換 えにしても 良 いのではないかと 思 う 争 点 の 胸 を 叩 いたかどうかというところについても, 胸 の 傷 の 説 明 をされた ときに,この 証 拠 で 胸 部 に 傷 害 を 与 えたと 一 言 言 われた 方 が 良 いと 思 う それから, 御 遺 体 の 写 真 が 示 される 前 に,これから 御 遺 体 の 写 真 をお 見 せする ということを 二 度 くらい 予 告 して 裁 判 員 のショックを 和 らげるような 配 慮 をして おられて 良 いと 思 った 今 日 取 り 調 べられた 証 拠 が, 捜 査 段 階 で 作 成 した 調 書 をまとめ 直 したものと いうことであれば, 分 かりやすく 言 い 換 えても 良 かったのではないか 裁 判 長 が 二 度 ほど 原 証 拠 はこうなっているのかと 確 認 していたので, 分 かり やすくするために 原 証 拠 を 言 い 換 えたことによって, 言 い 換 えたことが 別 の 概 念 と 結 びついて 原 証 拠 の 射 程 と 違 うものが 出 て,かえって 分 かりにくくなった のではないかとも 思 った 医 師 が 次 回 尋 問 されるので, 今 日 は 資 料 を 割 愛 するという 話 だったが,あま り 複 雑 でない 資 料 であれば, 今 日, 準 備 されていても 参 考 になったのではない - 5 -
か また, 難 しい 資 料 であれば, 次 回 医 師 に 尋 問 するときに 取 調 べが 行 われた 方 が 分 かりやすいのではないかと 思 う その 点 について,なぜ, 御 指 摘 があった 資 料 を 本 日 取 調 べをしなかったのか について, 次 回 裁 判 長 に 聞 いてみることにしたい 地 裁 委 員 会 では, 裁 判 員 裁 判 をテーマとして, 既 に10 回 くらい 意 見 交 換 さ れているようなので, 過 去 の 議 事 概 要 を 委 員 の 方 に 見 ていただいた 方 が, 意 見 交 換 の 際 の 参 考 になると 思 うので 御 検 討 いただきたい 以 上 - 6 -