海外調査報告書



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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

スライド 1

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

公表表紙

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36


スライド 1

m07 北見工業大学 様式①

39_1

18 国立高等専門学校機構

 

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

財政再計算結果_色変更.indd

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

別紙3

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

厚 生 年 金 は 退 職 後 の 所 得 保 障 を 行 う 制 度 であり 制 度 発 足 時 は 在 職 中 は 年 金 を 支 給 しないこととされていた しかしながら 高 齢 者 は 低 賃 金 の 場 合 が 多 いと いう 実 態 に 鑑 み 在 職 者 にも 支 給 される 特 別

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

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資料2 年金制度等について(山下委員提出資料)

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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Microsoft PowerPoint - 【資料5】社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し(案)について

16 日本学生支援機構

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ


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[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

波佐見町の給与・定員管理等について


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(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

弁護士報酬規定(抜粋)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

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職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

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Microsoft Word - 公表資料(H22).doc


養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

注 記 事 項 (1) 当 四 半 期 連 結 累 計 期 間 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 : 無 (2) 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 : 有 ( 注 ) 詳 細 は 添 付 資 料 4ページ 2.サマリー 情 報 (

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 現 況 ( 平 成 22 1 号 給 の 給 料 月 額 137,9 188,9 226,7 266,4 294,3 最 高 号 給 の 給 料 月 額 247,9 314,9 362,8 399,9 415,1 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制

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( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

資料1:勧告の仕組みとポイント 改【完成】

Taro-H19退職金(修正版).jtd

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(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 ( 単 位 : 円 ) 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 413,

退職手当とは

2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 (H20.4.1) 96.7 (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.4.1), (H25.4.1) 参 考 値 98.3 (H25.7.1) (H20.4.1) (H25.4

( 注 )1 ラスパイレス 指 数 とは 全 地 方 公 共 団 体 の 一 般 行 政 職 の 給 料 月 額 を 一 の 基 準 で 比 較 するため の 職 員 数 ( 構 成 )を 用 いて 学 歴 や 経 験 年 数 の 差 による 影 響 を 補 正 し の 行 政 職 俸 給 表 (

第 7 条 職 員 の 給 与 に 関 する 規 程 ( 以 下 給 与 規 程 という ) 第 21 条 第 1 項 に 規 定 す るそれぞれの 基 準 日 に 育 児 休 業 している 職 員 のうち 基 準 日 以 前 6 月 以 内 の 期 間 にお いて 在 職 した 期 間 がある 職

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35

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第25回税制調査会 総25-1

(\202g22\214\366\225\\.xls)

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 3 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 級 3 級 4 級 5 級 6 級 単 位 : ( ) 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 137, 163,7 4,9 31,4 71, 33,3 359,7 最 高 号 給 の 給 料 月 額

別紙3

4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

申 請 免 除 申 請 免 除 ( 学 生 以 外 ) 学 生 納 付 特 例 制 度 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 法 定 免 除 世 帯 構 成 図 表 1 国 民 年 金 保 険 料 の 免 除 の 種 類 と 所 得 基 準 本 人 世 帯 主 配 偶 者 の 所 得 に 応 じて 免

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

Transcription:

財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 制 度 分 科 会 海 外 調 査 報 告 書 平 成 19 年 6 月

財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 制 度 分 科 会 海 外 調 査 報 告 書 財 政 制 度 等 審 議 会 財 政 制 度 分 科 会 は 北 米 欧 州 で 進 められている 中 長 期 の 財 政 健 全 化 の 取 組 みにつき 実 地 調 査 を 行 うため 今 般 下 記 のとおり 海 外 調 査 を 実 施 した 本 報 告 は この 調 査 結 果 を 取 りまとめたものである 記 1 北 米 日 程 :2007( 平 成 19) 年 3 月 21 日 ~27 日 出 張 者 : 井 堀 利 宏 委 員 長 谷 川 幸 洋 委 員 訪 問 先 : 米 国 : 大 統 領 府 行 政 管 理 予 算 局 (OMB) 財 務 省 議 会 予 算 局 (CBO) 下 院 歳 出 委 員 会 シンクタンク(CBPP)ほか カナダ: 財 務 省 カンファレンスボード オブ カナダ カールトン 大 学 公 共 政 策 学 部 2 欧 州 日 程 :2007( 平 成 19) 年 3 月 25 日 ~3 月 31 日 出 張 者 : 岩 崎 慶 市 委 員 土 居 丈 朗 委 員 訪 問 先 : 英 国 : 財 務 省 地 方 コミュニティー 省 ドイツ: 連 邦 財 務 省 ベルリン 州 財 務 省 フランス: 経 済 財 政 産 業 省 経 済 協 力 開 発 機 構 (OECD) スウェーデン: 財 務 省 スウェーデン 地 方 政 府 連 合 会 (SKL) 注 スウェーデンは 事 務 局 のみで 対 応

目 次 はじめに 第 1 部 主 要 国 における 長 期 の 財 政 推 計 の 取 組 み I 米 国 1 Ⅱ 英 国 22 Ⅲ ドイツ 30 Ⅳ EU 40 第 2 部 主 要 国 における 政 府 間 の 財 政 調 整 第 1 章 財 政 調 整 制 度 の 国 際 比 較 55 第 2 章 各 国 の 財 政 調 整 制 度 Ⅰ 英 国 67 Ⅱ フランス 78 Ⅲ ドイツ 93 Ⅳ スウェーデン 109 Ⅴ カナダ 122 第 3 部 主 要 国 における 中 期 の 歳 出 管 理 Ⅰ 米 国 135 Ⅱ 英 国 151 おわりに

は じ め に 1990 年 代 末 に 改 善 した 欧 米 主 要 先 進 国 の 財 政 状 況 は 2000 年 代 に 入 って 経 済 の 低 迷 や 大 規 模 減 税 の 実 施 歳 出 増 などの 要 因 から 再 び 悪 化 した その 後 世 界 経 済 の 全 体 的 な 回 復 や 各 国 の 財 政 健 全 化 努 力 により 財 政 状 況 は2000 年 代 半 ばから 徐 々に 改 善 し 今 後 も 改 善 傾 向 が 続 く 見 込 みである 米 国 では 過 去 最 高 の5,210 億 ドルと 見 込 まれた2004 年 度 の 連 邦 財 政 赤 字 を2009 年 度 までに 半 減 させるとの 目 標 が2006 年 度 中 に 達 成 され ドイツでは マーストリヒト 条 約 の 過 剰 財 政 赤 字 の 判 断 基 準 である 一 般 政 府 財 政 赤 字 対 GDP 比 3%を2002 年 から2005 年 まで4 年 連 続 で 超 過 していたが 2006 年 には 同 1.7%まで 大 幅 に 改 善 され 2007 年 は1 月 からの 付 加 価 値 税 (VAT) 引 上 げなどによ りさらに 改 善 する 見 通 しである このような 財 政 状 況 の 好 転 にもかかわらず 主 要 先 進 国 は 財 政 健 全 化 努 力 の 姿 勢 を 堅 持 している その 背 景 には 人 口 の 高 齢 化 が 急 速 に 進 む 中 で 改 革 なしには 社 会 保 障 関 係 支 出 の 急 増 により 財 政 の 持 続 可 能 性 が 保 たれないという 強 い 危 機 感 が 見 受 けられる 2007 年 1 月 の 上 院 予 算 委 員 会 の 公 聴 会 において 米 国 連 邦 準 備 制 度 理 事 会 (FRB)のバ ーナンキ 議 長 は 2010 年 代 以 降 の 社 会 保 障 支 出 の 急 増 により 債 務 残 高 対 GDP 比 が 拡 散 的 に 拡 大 していく 議 会 予 算 局 (CBO)の 推 計 結 果 を 引 用 し 現 在 の 財 政 状 況 を 嵐 の 前 の 静 けさ と 喩 えて 財 政 の 持 続 可 能 性 について 強 い 懸 念 を 示 している このような 中 今 回 の 調 査 では 欧 米 主 要 先 進 国 における 中 長 期 の 財 政 健 全 化 の 取 組 みに 関 し 以 下 の3 点 に 焦 点 を 当 てた 一 つ 目 は 主 要 国 地 域 における 長 期 財 政 推 計 の 取 組 みである 21 世 紀 に 入 り 主 要 先 進 国 では 将 来 の 人 口 動 態 の 変 化 を 踏 まえて50 年 から75 年 程 度 の 長 期 間 を 対 象 とした 財 政 推 計 の 取 組 みを 進 めている 本 報 告 書 では 米 国 英 国 及 びドイツのほか 2006 年 に 公 表 された 欧 州 委 員 会 の 財 政 の 持 続 可 能 性 レポートについても 言 及 している 二 つ 目 は 昨 今 の 地 方 団 体 の 財 政 力 調 整 の 議 論 に 関 し 中 央 の 税 収 比 率 が 高 い 英 国 及 びフランス 地 方 が 中 央 と 同 等 の 税 源 を 有 するドイツ スウェーデン 及 びカナダの 財 政 調 整 制 度 の 動 向 を 調 査 した 上 で 諸 外 国 における 財 政 調 整 を 目 的 とした 財 政 移 転 の 規 模 中 央 地 方 の 税 源 比 率 と 財 政 調 整 を 目 的 とした 財 政 移 転 の 財 源 負 担 の 所 在 との 関 係 など の 整 理 を 試 みた 三 つ 目 は 中 期 的 な 歳 出 管 理 の 取 組 みである 米 国 の1990 年 代 の 財 政 健 全 化 に 大 きく 貢 献 したと 言 われるキャップ 制 ペイ アズ ユー ゴー 原 則 や 英 国 が1990 年 代 後 半 か ら 実 施 しているスペンディング レビューについて 各 年 度 の 予 算 プロセスとの 関 係 を 踏 まえて 改 めて 調 査 整 理 した なお 本 報 告 書 の 文 中 の 意 見 にわたる 部 分 については 個 人 的 な 見 解 も 含 まれており 必 ずしも 各 国 当 局 等 の 公 式 な 見 解 等 ではない 場 合 があることを 予 め 申 し 添 える

第 1 部 主 要 国 における 長 期 の 財 政 推 計 の 取 組 み Ⅰ 米 国 米 国 では 連 邦 議 会 に 置 かれた 調 査 分 析 機 関 である 議 会 予 算 局 (CBO)と 行 政 府 の 大 統 領 府 行 政 管 理 予 算 局 (OMB)が それぞれ 長 期 財 政 推 計 を 作 成 公 表 している 以 下 ではそれぞれの 特 色 を 踏 まえながら その 取 組 みについて 記 述 する Ⅰ-1 議 会 予 算 局 (CBO) 1. 作 成 の 背 景 経 緯 ポイント 歳 入 歳 出 措 置 について 様 々な 施 策 の 提 案 が 行 われる 議 会 に 対 して 客 観 的 なデータ に 基 づき 政 策 の 選 択 肢 を 示 すため 2003 年 以 降 2 年 に1 回 公 表 (2005 年 12 月 のも のが 最 新 ) 推 計 の 目 的 は 主 に 人 口 高 齢 化 に 伴 う 医 療 費 の 増 加 など 長 期 的 な 連 邦 財 政 が 直 面 す る 重 圧 を 検 証 し 債 務 残 高 など 財 政 の 持 続 可 能 性 に 与 える 影 響 を 解 説 すること CBOでは 1990 年 代 から 長 期 財 政 推 計 の 公 表 を 行 っているが 2003 年 から 現 在 の ように 2050 年 までの 連 邦 財 政 について 歳 出 で3パターン 歳 入 で2パターンを 想 定 し これらを 組 み 合 わせた6つのシナリオについて 推 計 を 行 っている 最 新 の 推 計 は 2005 年 12 月 に 公 表 されている 1 2005 年 の 報 告 書 では 人 口 高 齢 化 に 伴 う 医 療 費 の 増 加 など 今 後 数 十 年 間 に 連 邦 財 政 が 直 面 する 重 圧 等 を 検 証 し 6つのシナリオが 債 務 残 高 など 財 政 の 持 続 可 能 性 に 与 え る 影 響 を 解 説 している 6つのシナリオは 議 会 が 将 来 直 面 する 財 政 に 関 する 選 択 の 広 範 囲 かつ 長 期 的 側 面 並 びにその 選 択 の 財 政 及 び 経 済 的 影 響 を 捉 えることを 目 的 とし て 設 計 されている 推 計 結 果 はすべて 対 GDP 比 で 示 されている 1 報 告 書 は 以 下 のホームページアドレスにおいて 公 表 されている http://www.cbo.gov/ftpdocs/69xx/doc6982/12-15-longtermoutlook.pdf - 1 -

2. 推 計 の 概 要 ポイント 推 計 対 象 は 連 邦 政 府 の 財 政 状 況 推 計 期 間 は45 年 間 人 口 動 態 の 前 提 は 年 金 の 将 来 推 計 に 用 いられる 人 口 推 計 を 使 用 主 な 経 済 前 提 については 労 働 生 産 性 上 昇 率 を1.6%( 実 質 ) 長 期 金 利 を3.2%( 実 質 )としている 人 口 動 態 に 連 動 する 歳 出 は 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア( 高 齢 者 等 医 療 保 険 ) 及 びメディケイド( 低 所 得 者 医 療 扶 助 ) 年 金 は 将 来 推 計 に 基 づき 高 齢 化 に 伴 い 増 加 医 療 は メディケア メディケイドの1 人 当 たり 費 用 の 伸 び 率 が 11 人 当 た りGDP 成 長 率 +2.5% 2 一 人 当 たりGDP 成 長 率 +1.0% 31 人 当 たりGDP 成 長 率 並 みの3 通 りで 推 計 人 口 動 態 に 連 動 する 歳 出 以 外 の 歳 出 は 概 ねGDP 成 長 率 物 価 上 昇 率 等 に 連 動 (3 通 りの 推 計 ) 歳 入 は 対 GDP 比 18.3%で 一 定 とする 前 提 と 対 GDP 比 が 上 昇 し2050 年 に23.7% に 達 するという 前 提 の2パターンを 提 示 (1) 推 計 期 間 更 新 頻 度 推 計 対 象 等 CBOは2 年 に 一 度 長 期 財 政 推 計 (The Long-Term Budget Outlook)を 公 表 してい る 対 象 期 間 は2050 年 までの 約 45 年 間 となっている 推 計 の 対 象 は 連 邦 政 府 統 合 予 算 2 であり 歳 入 歳 出 財 政 収 支 市 中 保 有 債 務 残 高 3 のほか 社 会 保 障 ( 年 金 ) メデ ィケア メディケイド 利 払 費 国 防 費 といった 主 な 歳 出 項 目 と 個 人 所 得 税 収 につい て 推 計 を 行 っている (2) 経 済 前 提 2005 年 12 月 の 長 期 財 政 推 計 の 報 告 書 では 本 文 中 に 経 済 前 提 に 関 する 詳 しい 記 述 はないものの 付 表 で 毎 年 の 経 済 前 提 の 計 数 が 示 されており 10 年 ごとにみれば 以 下 のようになっている また CBOの 資 料 によれば 実 質 労 働 生 産 性 上 昇 率 は 1.6% と 想 定 されている 2 財 政 収 支 の 区 分 として オン バジェット 予 算 と 連 邦 政 府 の 業 務 でありながら 予 算 の 対 象 から 区 別 するオフ バジ ェット 予 算 ( 郵 便 事 業 と 社 会 保 障 信 託 基 金 が 該 当 )に 分 けて 区 分 する 方 法 もあるが 連 邦 政 府 の 財 政 収 支 は 通 常 オ フ バジェット 予 算 を 含 んだ 統 合 予 算 ベースで 表 される 3 市 中 保 有 債 務 残 高 とは 連 邦 政 府 債 務 残 高 から 社 会 保 障 基 金 が 余 剰 資 金 で 購 入 するする 国 債 等 の 政 府 機 関 向 け 債 務 を 除 いたもの - 2 -

( 表 1)CBOの 経 済 前 提 (%) 実 質 GD P 成 長 率 平 均 賃 金 上 昇 率 消 費 者 物 価 指 数 上 昇 率 実 質 賃 金 上 昇 率 実 質 平 均 金 利 実 質 平 均 失 業 率 潜 在 GDP デフレータ 上 昇 率 全 要 素 生 産 性 上 昇 率 2005 3.7 5.1 3.1 2.0 1.1 5.2 2.3 1.4 2010 2.9 3.5 2.2 1.3 3.1 5.2 1.8 1.0 2020 1.9 3.2 2.2 1.0 3.3 5.2 1.8 1.3 2030 1.7 3.3 2.2 1.1 3.2 5.2 1.9 1.3 2040 2.1 3.5 2.2 1.3 3.2 5.2 1.9 1.3 2050 1.9 3.3 2.2 1.1 3.2 5.2 1.9 1.3 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] これをみると 2005 年 は 実 質 GDP 成 長 率 が 実 質 平 均 金 利 を 大 幅 に 上 回 っているも のの 2010 年 以 降 は 実 質 平 均 金 利 が 実 質 GDP 成 長 率 を 上 回 る 前 提 が 置 かれている ことが 分 かる 人 口 動 態 の 前 提 は 公 的 年 金 基 金 の 財 政 状 況 と 将 来 推 計 が 示 されているOASDI ( 老 齢 遺 族 障 害 保 険 ) 信 託 基 金 理 事 会 年 次 報 告 書 4 の 中 位 推 計 5 を 使 用 している なお CBOの 報 告 書 には 人 口 構 成 に 関 して 以 下 のような 記 述 がある ベビーブーム 世 代 6 の 引 退 は 米 国 の 人 口 構 成 にとって 重 大 かつ 長 期 にわたる 変 化 の 前 兆 となり 労 働 年 代 と 退 職 世 代 の 構 成 のバランスを 大 きく 変 えるだろう 65 歳 以 上 の 割 合 は 2005 年 の 12%から 2030 年 には 19%になると 予 測 される 一 方 20 歳 から 64 歳 までの 割 合 は 60%から 56%に 落 ちると 予 測 される その 結 果 社 会 保 障 ( 年 金 ) 受 給 者 一 人 当 たりの 労 働 者 の 数 は 今 後 30 年 間 で 大 きく 下 落 し 現 在 の 3.3 人 から 2030 年 には 2.1 人 になると 推 計 される 移 民 や 出 生 率 が 大 幅 に 変 わらない 限 り この 計 数 は 2030 年 の 後 もゆるやかに 下 落 を 続 けるだろう (3) 高 齢 化 関 連 支 出 の 前 提 人 口 動 態 の 影 響 を 織 り 込 む 支 出 は 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア 及 びメディケイド である 1970 年 以 来 政 策 変 更 を 含 むさまざまな 要 因 により 一 人 当 たりのメディケ ア 登 録 者 の 年 間 給 付 は 一 人 当 たりGDP 成 長 率 よりも 2.9% 大 きく 増 加 しており 報 告 書 では このGDPを 超 過 する 増 加 率 を 超 過 費 用 増 加 率 と 呼 んでいる 4 社 会 保 障 法 (Social Security Act)により OASDI 理 事 会 (The OASDI Board of Trustees: 財 務 長 官 労 働 長 官 保 健 福 祉 長 官 社 会 保 障 庁 長 官 等 6 名 で 構 成 )は 毎 年 OASI( 老 齢 遺 族 保 険 ) 及 びDI( 障 害 保 険 ) 信 託 基 金 の 財 政 状 況 を 議 会 に 報 告 しなければならないこととされている 5 CBOの 資 料 によれば 主 な 前 提 は 以 下 のとおりである 出 生 率 :2 死 亡 率 : 毎 年 0.7%ずつ 減 少 移 民 : 毎 年 約 90 万 人 の 純 増 6 CBOは ベビーブーム 世 代 を 1946 年 から 1964 年 にかけて 生 まれた 人 々としている - 3 -

( 図 1)1970 年 以 降 のメディケア 費 用 の 要 因 ( 対 GDP 比 %) 一 人 当 たりGDP 成 長 率 を 超 過 する 増 加 人 口 高 齢 化 効 果 ( 注 )(この 図 の 基 点 となっている)1970 年 のメディケア 支 出 は 対 GDP 比 で0.7% 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] この 超 過 費 用 増 加 率 については 2.5% 1% 0%の3つのパターンを 想 定 して いる (ⅰ) 超 過 費 用 増 加 率 2.5%: 過 去 の 平 均 的 水 準 (メディケア:2.9%(1970-2004 年 ) メディケイド 2.4%(1975-2004 年 )) (ⅱ) 超 過 費 用 増 加 率 1%:メディケア 信 託 基 金 理 事 会 の 年 次 報 告 書 で 用 いられて いる 前 提 (ⅲ) 超 過 費 用 増 加 率 0%: 特 段 の 根 拠 なし CBOは コスト 抑 制 のための 医 療 システム 全 体 の 大 きな 変 革 なしにはこの 経 路 を 辿 るこ とはないとしている 超 過 費 用 増 加 率 が 2.5%の 場 合 メディケア メディケイド 向 けの 連 邦 政 府 支 出 は 2005 年 の 対 GDP 比 4.2%から 2050 年 には 同 22%に 達 する また この 増 加 率 が1% の 場 合 2050 年 には 同 12.6%となると 推 計 している ( 図 2) 異 なる 超 過 費 用 増 加 率 の 前 提 の 下 でのメディケア メディケイド 向 け 連 邦 支 出 の 推 移 ( 対 GDP 比 %) 実 績 推 計 超 過 費 用 増 加 率 :2.5% 超 過 費 用 増 加 率 :1% 超 過 費 用 増 加 率 :0% 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] - 4 -

社 会 保 障 ( 年 金 ) 関 連 支 出 は 人 口 高 齢 化 に 伴 い 現 行 法 の 下 では 2005 年 の 対 GDP 比 4.2%から 2050 年 には 同 6.4%まで 50% 上 昇 すると 推 計 されている なお この 推 計 では OASDI 信 託 基 金 の 財 政 状 況 にかかわらず 現 状 の 確 定 給 付 は 全 て 支 払 われることを 前 提 としている 7 ( 図 3) 社 会 保 障 ( 年 金 ) 向 け 支 出 の 推 移 (1962 年 ~2050 年 ) ( 対 GDP 比 %) 実 績 推 計 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] ( 表 2)CBOの 高 齢 化 関 連 支 出 の 前 提 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア メディケイド シナリオ1 高 歳 出 / 低 歳 入 現 行 法 の 下 で 予 定 された 給 付 を 行 う 超 過 費 用 増 加 率 2.5% 超 過 費 用 増 加 率 2.5% シナリオ2 中 歳 出 / 低 歳 入 シナリオ3 低 歳 出 / 低 歳 入 シナリオ4 高 歳 出 / 高 歳 入 シナリオ5 中 歳 出 / 高 歳 入 同 左 同 左 同 左 同 左 同 左 超 過 費 用 増 加 率 1.0% 超 過 費 用 増 加 率 1.0% 超 過 費 用 増 加 率 なし 超 過 費 用 増 加 率 なし 超 過 費 用 増 加 率 2.5% 超 過 費 用 増 加 率 2.5% 超 過 費 用 増 加 率 1.0% 超 過 費 用 増 加 率 1.0% シナリオ6 低 歳 出 / 高 歳 入 超 過 費 用 増 加 率 なし 超 過 費 用 増 加 率 なし 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] (4)その 他 の 歳 出 項 目 の 前 提 CBOは 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア 及 びメディケイド 以 外 の 歳 出 について そ の 他 の 義 務 的 経 費 国 防 費 非 国 防 裁 量 的 経 費 という3つのカテゴリーに 分 類 して それぞれ 前 提 を 置 いている 7 2007 年 4 月 のOASDI 信 託 基 金 理 事 会 年 次 報 告 書 によれば OASDIの 2006 年 末 の 積 立 金 額 は 約 2 兆 ドル( 対 GDP 比 15.5%) 今 後 しばらくの 間 資 産 は 増 加 すると 見 込 まれているが 大 量 のベビーブーム 世 代 の 退 職 開 始 などに より 2017 年 には 給 付 が 社 会 保 障 税 収 入 を 上 回 り 2027 年 には 給 付 が 利 子 収 入 を 含 めた 収 入 を 上 回 ると 見 込 まれ そ の 結 果 2041 年 には 積 立 金 が 枯 渇 すると 見 込 まれている - 5 -

( 表 3)CBOのその 他 の 歳 出 項 目 の 前 提 その 他 の 義 務 的 経 費 国 防 プログラ ム 非 国 防 裁 量 的 プログラム シナリオ1 高 歳 出 / 低 歳 入 過 去 20 年 の GDP 比 の 平 均 (2.6%)に 固 定 2024 年 ま で は 2006 年 将 来 防 衛 計 画 に 関 するCBO の 費 用 推 計 8 に 従 い それ 以 降 はインフ レ 連 動 過 去 20 年 の GDP 比 の 平 均 (3.6%)にな る 2007 年 ま で 減 少 し そ の 後 一 定 シナリオ2 中 歳 出 / 低 歳 入 同 左 2024 年 に( 過 去 20 年 の 平 均 である) 4,060 億 ドル ( 2005 年 の 貨 幣 価 値 )に なるまで 徐 々 に 減 少 し そ れ 以 降 は イ ンフレ 連 動 同 左 シナリオ3 低 歳 出 / 低 歳 入 対 GDP 比 で みて 毎 年 1% 減 少 同 左 2007 年 よ り 後 は インフ レ 連 動 シナリオ4 高 歳 出 / 高 歳 入 過 去 20 年 の GDP 比 の 平 均 (2.6%)に 固 定 2024 年 ま で は 2006 年 将 来 防 衛 計 画 に 関 するCBO の 費 用 推 計 に 従 い それ 以 降 はインフレ 連 動 過 去 20 年 の 平 均 的 GDP 比 (3.6%)にな る 2007 年 ま で 減 少 し そ の 後 一 定 シナリオ5 中 歳 出 / 高 歳 入 同 左 2024 年 に( 過 去 20 年 の 平 均 である) 4,060 億 ドル ( 2005 年 の 貨 幣 価 値 )に なるまで 徐 々 に 減 少 し そ れ 以 降 は イ ンフレ 連 動 同 左 シナリオ6 低 歳 出 / 高 歳 入 対 GDP 比 で みて 毎 年 1% 減 少 同 左 2007 年 よ り 後 は インフ レ 連 動 歳 入 に 計 上 されず 支 出 を 相 殺 する 収 入 として 計 上 されるメディケア 受 給 者 が 支 払 う 保 険 料 収 入 を 除 く 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] (5) 歳 入 の 前 提 歳 入 については 2つの 前 提 が 置 かれている 一 つは 歳 入 の 水 準 が 過 去 30 年 間 の 平 均 であるGDP 比 18.3%に 安 定 するという 前 提 である もう 一 つは 歳 入 が 現 行 の 法 規 定 に 従 った 経 路 を 辿 るという 前 提 である 後 者 の 前 提 では 例 えば 2001 年 及 び 2003 年 のいわゆるブッシュ 減 税 9 が 法 の 規 定 どおりにその 大 半 が2010 年 末 で 失 効 する こと 代 替 ミニマム 税 (Alternative Minimum Tax, AMT) 10 の 適 用 範 囲 が 物 価 スライド しないことによって 大 幅 に 拡 大 すること より 高 い 税 率 が 適 用 される 所 得 階 層 に 属 す る 納 税 者 の 割 合 が 増 えること(ブラケット クリープ 効 果 ) 等 により 個 人 所 得 税 の 平 均 税 率 が 過 去 のどの 時 代 の 水 準 よりも 高 くなり 2050 年 の 歳 入 の 対 GDP 比 は 23.7%まで 増 加 すると 推 計 されている 8 2006 年 将 来 防 衛 計 画 に 関 するCBOの 費 用 推 計 は 以 下 のホームページアドレスにおいて 公 表 されている http://www.cbo.gov/ftpdocs/67xx/doc6786/10-17-lt_defense.pdf 9 2001 年 の 減 税 は 規 模 が 11 年 間 で 約 1 兆 3,500 億 ドル 主 な 内 容 は 個 人 所 得 税 に 関 する 税 率 の 段 階 的 引 下 げ 子 女 税 額 控 除 の 引 上 げ 婚 姻 ペナルティの 段 階 的 解 消 及 び 代 替 ミニマム 税 の 基 礎 控 除 額 の 拡 大 並 びに 遺 産 税 の 段 階 的 廃 止 及 び 贈 与 税 率 の 引 下 げとなっており 2010 年 までの 時 限 措 置 である 2003 年 の 減 税 は 規 模 が 11 年 間 で 約 3,500 億 ドル 主 な 内 容 は 2001 年 減 税 の 前 倒 し 施 行 並 びに 配 当 所 得 及 びキャ ピタルゲイン 減 税 (2008 年 までの 時 限 措 置 )である 10 代 替 ミニマム 税 とは 高 額 所 得 者 について 通 常 の 税 額 計 算 と 税 制 優 遇 項 目 を 除 いた 別 の 税 額 計 算 の2 種 類 の 計 算 を 行 わせ 高 い 方 の 税 額 を 採 用 する 制 度 のこと - 6 -

また 歳 入 の 推 計 について CBOの 担 当 官 は 税 収 が 高 くなると 遵 法 意 識 が 減 少 する 可 能 性 があり 増 税 が 労 働 や 資 本 の 供 給 を 通 じて 経 済 に 影 響 を 与 え 得 る メディ ケア 等 による 連 邦 歳 出 の 増 加 に 対 処 するために 消 費 税 が 必 要 という 考 えがある また ガソリン 税 等 は 実 質 価 格 の 変 化 により 税 収 が 変 化 する 可 能 性 がある このように 歳 入 のシナリオは 経 済 的 政 治 的 不 確 実 性 が 高 い と 述 べていた ( 表 4)CBOの 歳 入 の 前 提 個 人 所 得 税 シナリオ1 高 歳 出 / 低 歳 入 2014 年 ま で 対 GDP 比 で みて 徐 々に 増 加 し それ 以 降 は 全 歳 入 の 対 GDP 比 が 18.3%とな るように 調 整 シナリオ2 中 歳 出 / 低 歳 入 シナリオ3 低 歳 出 / 低 歳 入 シナリオ4 高 歳 出 / 高 歳 入 シナリオ5 中 歳 出 / 高 歳 入 同 左 同 左 現 行 法 に 従 う 同 左 同 左 社 会 保 障 税 現 行 法 に 従 う 同 左 同 左 同 左 同 左 同 左 その 他 の 税 対 GDP 比 で 2014 年 の 水 準 に 固 定 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] 同 左 同 左 同 左 同 左 同 左 シナリオ6 低 歳 出 / 高 歳 入 - 7 -

コラム1: 米 国 の 主 な 公 的 年 金 医 療 制 度 1. 社 会 保 障 ( 年 金 ) 米 国 の 公 的 年 金 制 度 は 老 齢 遺 族 障 害 保 険 (Old-Age, Survivors, and Disability Insurance: OASDI)と 呼 ばれる 一 般 的 制 度 と 公 務 員 鉄 道 職 員 などの 一 定 の 職 員 のみを 対 象 とする 個 別 の 制 度 とに 大 別 されるが これらの 中 核 であるOASDIは 連 邦 政 府 が 運 営 し 被 用 者 や 自 営 業 者 の 大 部 分 が 加 入 しており 2006 年 には1 億 6,185 万 人 が 社 会 保 障 税 を 納 入 し 4,886 万 人 が 給 付 を 受 けている OASDIの 財 源 は 事 業 主 被 用 者 及 び 自 営 業 者 から 徴 収 される 社 会 保 障 税 ( 税 率 は 課 税 対 象 所 得 の 12.4% 労 使 折 半 )であり 連 邦 の 一 般 会 計 とは 別 に 社 会 保 障 基 金 (オフ バジェット)として 管 理 され 全 額 米 国 債 により 運 用 されている 最 低 拠 出 年 限 は 10 年 であり 給 付 開 始 は 現 在 原 則 65 歳 8か 月 であるが 2027 年 にかけて 徐 々に 67 歳 に 引 き 上 げられることとされている 2.メディケア( 高 齢 者 等 医 療 保 険 ) メディケアとは 65 歳 以 上 の 高 齢 者 障 害 者 等 を 対 象 とする 医 療 保 険 であり 2006 年 におい て 4,320 万 人 ( 高 齢 者 3,630 万 人 障 害 者 700 万 人 )をカバーしている 運 営 は 連 邦 政 府 によって 行 われ 民 間 事 業 者 が 提 供 するプランを 除 き 以 下 の3つのプランがある なお パートAとパ ートBはそれぞれ 別 の 信 託 基 金 により 管 理 されている (HI trust fund, SMI trust fund) 1 パートA: 入 院 保 険 (Hospital Insurance: HI) 主 に 入 院 費 用 をカバーし 社 会 保 障 ( 年 金 ) 有 資 格 者 は 全 員 が 対 象 となる 財 源 は 社 会 保 障 税 ( 税 率 は 課 税 対 象 所 得 の 2.9% 労 使 折 半 )が 主 体 本 人 又 は 配 偶 者 による 10 年 以 上 の 社 会 保 障 税 の 納 付 が 必 要 であり 未 納 の 場 合 は 保 険 料 の 納 付 が 必 要 となる CBOの 推 計 によれば 2007 年 度 の 給 付 支 出 額 は 2,003 億 ドルでメディケア 給 付 全 体 の 47.2% 2 パートB: 補 足 的 医 療 保 険 (Supplementary Medical Insurance: SMI) 主 に 医 師 報 酬 をカバー( 任 意 加 入 ) 財 源 は 保 険 料 収 入 ( 全 体 の 1/4)と 連 邦 政 府 の 一 般 財 源 (3/4)からなる 2007 年 度 の 給 付 支 出 額 は 1,774 億 ドルでメディケア 給 付 全 体 の 41.8% 3 パートD: 処 方 せん 薬 給 付 (Prescription Drug Benefits) 処 方 せん 薬 をカバー( 任 意 加 入 ) 財 源 は 保 険 料 と 連 邦 政 府 の 一 般 財 源 が 主 体 一 部 州 政 府 からの 移 転 等 がある 2007 年 度 の 給 付 支 出 額 は 470 億 ドルでメディケア 給 付 全 体 の 11.1% 3.メディケイド( 低 所 得 者 医 療 扶 助 ) メディケイドとは 一 定 の 要 件 を 備 えた 低 所 得 者 を 対 象 とする 医 療 扶 助 制 度 であり 2004 年 時 点 で 5,700 万 人 をカバーしている 運 営 は 州 政 府 によって 行 われ 受 給 要 件 や 給 付 内 容 そのも のは 州 が 定 めるが 連 邦 政 府 は 給 付 条 件 等 に 一 定 のガイドラインを 設 けて 補 助 金 を 交 付 している メディケイドの 費 用 に 占 める 連 邦 政 府 の 支 出 割 合 は 連 邦 医 療 補 助 比 率 (Federal Medical Assistance Percentage:FMAP)と 呼 ばれ 各 州 の 一 人 当 たり 平 均 所 得 を 一 人 当 たり 全 国 平 均 と 比 較 して 決 定 される 2007 年 度 に 関 しては 最 高 は 75.89%(ミシシッピ 州 )から 最 低 は 50%(17 州 )となっている - 8 -

3. 推 計 結 果 の 概 要 ポイント 3 通 りの 歳 出 前 提 2 通 りの 歳 入 前 提 で 合 計 6 通 りのシナリオを 提 示 中 位 の 歳 出 と 低 位 の 歳 入 の 組 み 合 わせのシナリオで 債 務 残 高 対 GDP 比 が2050 年 に250%に 達 する 高 齢 化 と 医 療 費 の 増 加 に 伴 うメディケア 及 びメディケイドの 歳 出 増 が 顕 著 2080 年 には メディケア メディケイド 及 び 社 会 保 障 ( 年 金 ) 向 け 支 出 が 利 払 費 以 外 の 歳 出 に 占 める 割 合 がすべてのシナリオで4 分 の3を 超 える (1)6 通 りのシナリオの 推 計 結 果 CBOは 前 述 の 歳 入 に 関 する 前 提 2つ 歳 出 に 関 する 前 提 3つを 組 み 合 わせた6 つのシナリオについて 推 計 を 行 っている それぞれのシナリオは 以 下 のような 歳 出 と 歳 入 の 前 提 の 組 合 せとなっている 歳 出 歳 入 低 高 高 シナリオ1 シナリオ4 中 シナリオ2 シナリオ5 低 シナリオ3 シナリオ6 CBOは それぞれの 歳 入 と 歳 出 の 経 路 は 基 本 的 に 現 行 政 策 又 は 長 期 の 歴 史 的 経 験 を 反 映 しているが 医 療 費 の 超 過 費 用 増 加 率 を0としているシナリオ3 及 びシナリ オ6については 現 行 政 策 や 過 去 のトレンドから 見 ると 実 現 可 能 性 は 低 いとしている 6つのシナリオによる 財 政 収 支 対 GDP 比 の 推 移 と 債 務 残 高 対 GDP 比 の 推 移 は 以 下 のようになっている ( 図 4) 各 シナリオにおける 財 政 収 支 対 GDP 比 の 推 移 ( 対 GDP 比 %) 20 10 0 10 実 績 3.3 推 計 シナリオ6 シナリオ3 シナリオ5 シナリオ2 12.2 0.8 6.3 20 30 シナリオ4 シナリオ1 19.4 24.3 37.5 40 2004 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050( 年 ) 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] - 9 -

( 図 5) 各 シナリオにおける 債 務 残 高 対 GDP 比 の 推 移 ( 対 GDP 比 %) 500 実 績 推 計 400 300 200 37.3 100 0 シナリオ1 シナリオ4 シナリオ2 シナリオ5 シナリオ3 シナリオ6 449.4 286.4 256.0 95.9 34.3 100 123.7 200 2004 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 ( 年 ) 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] (2) 歳 入 の 前 提 で 分 類 した 各 シナリオの 分 析 歳 入 を 対 GDP 比 で 18.3%に 維 持 するシナリオでは 超 過 費 用 増 加 率 を0としてい るシナリオ3を 除 き 債 務 残 高 が 発 散 していくことが 示 されている 財 政 赤 字 対 GD P 比 が 着 実 に 増 加 することにより 債 務 残 高 対 GDP 比 は 2004 年 の 37.3%から シ ナリオ1では 2030 年 に 140% 近 くに 達 し 2050 年 には 約 450%となり シナリオ2 では 2030 年 に 100% 近 くになり 2050 年 には 256%となる 歳 入 が 対 GDP 比 で 増 加 していくシナリオでは 債 務 残 高 の 見 通 しはいくらか 改 善 されるものの 財 政 の 安 定 性 は 保 証 されていない 高 歳 出 のシナリオ4では 赤 字 が 急 激 に 増 大 し 2050 年 には 債 務 残 高 対 GDP 比 は 290% 近 くに 達 するという 結 果 が 示 されている 中 歳 出 のシナリオ5では シナリオ4よりも 収 支 は 均 衡 に 近 づくが 債 務 残 高 対 GDP 比 を 安 定 させるためには 更 なる 税 収 増 又 は 歳 出 の 削 減 が 必 要 となっ ている また このシナリオでは 2050 年 にプライマリー バランスがGDP 比 で 1.6%となると 推 計 されているため 債 務 の 純 増 が 続 くことになる したがって 低 歳 出 のシナリオ6のみが 債 務 残 高 対 GDP 比 を 減 少 させるという 結 果 となっている (3) 人 口 動 態 に 連 動 する 支 出 と 医 療 費 の 前 提 いずれのシナリオにおいても 2050 年 では メディケア メディケイド 及 び 社 会 保 障 ( 年 金 )を 合 わせた 歳 出 が 利 払 費 を 除 く 歳 出 全 体 の4 分 の3を 超 えることとなり 歳 出 の 大 部 分 をこれら3つのプログラムが 占 める 見 通 しとなっている また 3つの 歳 出 経 路 に 関 する 最 も 重 要 な 前 提 は 政 府 の 主 要 な 医 療 プログラムであ - 10 -

るメディケア メディケイドの 超 過 費 用 増 加 率 であり 現 行 政 策 の 下 では 超 過 費 用 増 加 率 は 推 計 期 間 を 通 じて 平 均 1%を 超 える 可 能 性 が 高 いとされている したがっ て GDP 成 長 率 の 伸 びと 同 じとの 前 提 を 置 くシナリオ3 及 びシナリオ6の 低 めの 歳 出 経 路 は 現 行 の 医 療 政 策 が 大 きく 変 更 されない 限 り 他 の 歳 出 経 路 よりも 可 能 性 が 低 く このようなかなり 楽 観 的 なシナリオに 基 づいて 長 期 的 な 財 政 戦 略 を 検 討 する ことは 危 険 であるとしている (4) 政 策 提 案 の 例 示 CBOはいくつかの 政 策 提 案 の 効 果 を 分 析 しており 以 下 のような 推 計 結 果 が 示 さ れている (ⅰ) 2037 年 までに 年 金 とメディケアの 完 全 給 付 を( 報 告 書 公 表 時 の 65 歳 程 度 から) 70 歳 に 引 き 上 げると 2つのプログラム 合 わせて 2050 年 において 対 GDP 比 で 1.6%の 削 減 効 果 がある (ⅱ) 年 金 給 付 を 賃 金 から 物 価 スライドに 変 更 し メディケアの 資 格 を( 現 行 の 65 歳 から)67 歳 に 引 き 上 げた 場 合 2050 年 において 対 GDP 比 で 1.9%の 削 減 効 果 が ある ただし いずれの 場 合 も 超 過 費 用 増 加 率 が1%を 超 える 場 合 これらの 提 案 でも 十 分 でないとしている - 11 -

コラム2:バーナンキFRB 議 長 の 議 会 証 言 連 邦 準 備 制 度 理 事 会 (FRB)のバーナンキ 議 長 は 2007 年 1 月 18 日 上 院 予 算 委 員 会 の 公 聴 会 で 証 言 し CBOのシナリオ2の 推 計 結 果 を 引 用 しながら 債 務 残 高 の 加 速 的 な 増 加 について 警 鐘 を 鳴 らし 公 的 年 金 医 療 制 度 について 早 期 に 意 味 のある 行 動 をとらないと 米 国 経 済 は 深 刻 な 痛 手 を 負 うとして 持 続 可 能 な 予 算 の 作 成 の 必 要 性 を 議 会 に 対 して 訴 えた 以 下 はCBO 推 計 と 債 務 累 増 の 経 済 的 問 題 点 に 言 及 した 部 分 の 仮 訳 である 連 邦 政 府 は 連 邦 統 合 予 算 の 財 政 赤 字 が 向 こう 数 年 間 で 安 定 化 又 は 改 善 されるとして いるが 残 念 ながら 我 々は 嵐 の 前 の 静 けさのようなものを 経 験 している すなわち (1) 人 口 動 態 の 変 化 ( 高 齢 化 の 進 展 ) (2) 医 療 コストの 増 加 を 背 景 に メディケア メディケイド 社 会 保 障 ( 年 金 ) 等 のエンタイトルメント プログラム ( ) 関 連 支 出 は 今 後 急 増 することが 予 想 される CBOによる 長 期 財 政 推 計 の 中 位 推 計 (シナリオ2) によれば 連 邦 財 政 赤 字 は 2030 年 までに 2006 年 度 の 財 政 赤 字 対 GDP 比 1.9%の 4 倍 以 上 に 相 当 する 同 9%に 上 昇 する 同 様 にCBOの 予 測 では 市 中 保 有 債 務 残 高 対 GDP 比 は 現 状 の 37%から 2030 年 までに 100% 近 くに 拡 大 し それ 以 降 も 指 数 関 数 的 な 増 加 が 見 込 まれ 将 来 にわたって 加 速 的 に 拡 大 し 続 ける このような 債 務 残 高 の 拡 大 は 財 政 危 機 を 誘 発 するだろう これに 対 処 するには 大 幅 な 支 出 削 減 か 増 税 又 は 両 者 の 組 み 合 わせしかないだろう このCBOの 推 計 には 財 政 赤 字 が 経 済 に 与 える 影 響 といった 弊 害 は 考 慮 されてい ない しかしながら CBOのシナリオどおり 債 務 残 高 財 政 赤 字 が 悪 化 するとすれ ば 米 国 経 済 への 影 響 は 深 刻 である すなわち 政 府 債 務 の 急 増 により 民 間 資 本 形 成 に 使 われるべき 資 本 が 吸 収 される 結 果 実 質 所 得 の 伸 びが 鈍 化 し 生 活 水 準 の 向 上 も 抑 制 されよう さらに 財 政 不 均 衡 に 対 する 解 決 策 が 不 透 明 であることにより 消 費 者 企 業 投 資 家 の 信 頼 感 が 損 なわれ 投 資 と 成 長 に 悪 影 響 を 与 えよう 力 強 い 経 済 成 長 によって 財 政 圧 力 をある 程 度 和 らげることは 可 能 であり その 他 の 条 件 を 一 定 とすれば 景 気 刺 激 的 な 財 政 政 策 は 有 益 であるだろう しかしながら 経 済 成 長 それ 自 体 ではこの 国 に 差 し 迫 っている 財 政 問 題 は 解 決 しそうにない 要 約 すれば 人 口 動 態 の 変 化 と 医 療 コストの 増 加 により 今 後 数 十 年 にわたりエン タイトルメント プログラム 関 連 の 連 邦 政 府 支 出 の 急 増 が 見 込 まれる 早 期 に 意 味 の ある 行 動 がとられなければ 米 国 経 済 が 著 しく 弱 められる 可 能 性 があり 将 来 世 代 が そのコストの 大 半 を 負 うことになろう 議 会 が 直 面 する 課 題 は 簡 単 でも 単 純 でもない が 持 続 可 能 であり かつ 米 国 の 長 期 的 な 需 要 に 見 合 う 道 筋 の 上 で 予 算 を 作 成 するこ との 便 益 は 非 常 に 大 きい エンタイトルメント プログラムとは 連 邦 政 府 が 法 的 な 適 格 基 準 を 満 たしている 人 に 支 払 又 は 援 助 を 行 うことを 法 的 に 義 務 づけられているプログラムのことをいう - 12 -

( 表 5)CBOの 推 計 結 果 シナリオ1( 高 歳 出 / 低 歳 入 ) ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2004 2010 2020 2030 2040 2050 歳 入 19.3 17.9 20.5 16.6 17.6 18.3 18.3 18.3 18.4 個 人 所 得 税 9.1 8.1 10.2 7.1 8.4 9.0 9.1 9.1 9.3 歳 出 22.0 21.9 18.4 19.9 20.9 24.9 32.1 42.2 55.8 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 5.0 6.0 6.4 6.6 メディケア 1.3 1.9 2.3 2.6 3.6 5.8 8.8 12.2 16.0 メディケイド 0.5 0.8 1.2 1.5 1.7 2.3 3.2 4.4 5.9 国 防 費 5.0 5.3 3.0 4.0 3.5 3.1 2.7 2.3 2.0 その 他 8.7 6.5 5.5 6.2 5.8 5.4 5.0 4.5 4.0 利 払 費 2.0 3.2 2.2 1.4 2.1 3.4 6.5 12.4 21.4 財 政 収 支 2.7 4.0 2.1 3.3 3.4 6.6 13.8 23.9 37.5 市 中 保 有 債 務 残 高 26.4 43.1 34.5 37.3 43.5 69.6 137.9 261.0 449.4 シナリオ2( 中 歳 出 / 低 歳 入 ) ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2004 2010 2020 2030 2040 2050 歳 入 19.3 17.9 20.5 16.6 17.6 18.3 18.3 18.3 18.3 個 人 所 得 税 9.1 8.1 10.2 7.1 8.4 9.0 9.1 9.1 9.3 歳 出 22.0 21.9 18.4 19.9 20.5 22.7 27.1 32.1 37.7 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 5.0 6.0 6.3 6.4 メディケア 1.3 1.9 2.3 2.6 3.3 4.7 6.4 7.6 8.6 メディケイド 0.5 0.8 1.2 1.5 1.7 2.3 2.8 3.4 4.0 国 防 費 5.0 5.3 3.0 4.0 3.4 2.5 2.0 1.7 1.5 その 他 8.7 6.5 5.5 6.2 5.8 5.4 5.3 5.1 4.9 利 払 費 2.0 3.2 2.2 1.4 2.1 2.8 4.6 8.0 12.4 財 政 収 支 2.7 4.0 2.1 3.3 2.9 4.4 8.8 13.8 19.4 市 中 保 有 債 務 残 高 26.4 43.1 34.5 37.3 42.1 56.2 96.9 165.3 256.0 シナリオ3( 低 歳 出 / 低 歳 入 ) ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2004 2010 2020 2030 2040 2050 歳 入 19.3 17.9 20.5 16.6 17.6 18.3 18.3 18.3 18.3 個 人 所 得 税 9.1 8.1 10.2 7.1 8.4 9.0 9.1 9.1 9.3 歳 出 22.0 21.9 18.4 19.9 19.9 19.3 19.8 19.7 19.1 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 5.0 5.9 6.2 6.3 メディケア 1.3 1.9 2.3 2.6 3.2 3.9 4.6 5.0 5.1 メディケイド 0.5 0.8 1.2 1.5 1.5 1.5 1.6 1.8 1.9 国 防 費 5.0 5.3 3.0 4.0 3.4 2.4 2.0 1.7 1.4 その 他 8.7 6.5 5.5 6.2 5.5 4.5 3.8 3.2 2.7 利 払 費 2.0 3.2 2.2 1.4 2.0 2.0 1.8 1.9 1.8 財 政 収 支 2.7 4.0 2.1 3.3 2.3 1.0 1.5 1.4 0.8 市 中 保 有 債 務 残 高 26.4 43.1 34.5 37.3 40.9 38.3 36.6 37.6 34.3-13 -

シナリオ4( 高 歳 出 / 高 歳 入 ) ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2004 2010 2020 2030 2040 2050 歳 入 19.3 17.9 20.5 16.6 17.8 20.3 21.7 22.8 23.7 個 人 所 得 税 9.1 8.1 10.2 7.1 8.6 11.1 12.4 13.6 14.6 歳 出 22.0 21.9 18.4 19.9 20.9 24.3 29.9 37.7 48.0 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 5.0 6.0 6.4 6.6 メディケア 1.3 1.9 2.3 2.6 3.6 5.8 8.8 12.2 16.0 メディケイド 0.5 0.8 1.2 1.5 1.7 2.3 3.2 4.4 5.9 国 防 費 5.0 5.3 3.0 4.0 3.5 3.1 2.7 2.3 2.0 その 他 8.7 6.5 5.5 6.2 5.8 5.4 5.0 4.5 4.0 利 払 費 2.0 3.2 2.2 1.4 2.1 2.7 4.3 7.9 13.6 財 政 収 支 2.7 4.0 2.1 3.3 3.1 3.9 8.3 14.9 24.3 市 中 保 有 債 務 残 高 26.4 43.1 34.5 37.3 43.1 54.2 91.2 165.5 286.4 シナリオ5( 中 歳 出 / 高 歳 入 ) ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2004 2010 2020 2030 2040 2050 歳 入 19.3 17.9 20.5 16.6 17.8 20.3 21.6 22.8 23.7 個 人 所 得 税 9.1 8.1 10.2 7.1 8.6 11.1 12.4 13.6 14.6 歳 出 22.0 21.9 18.4 19.9 20.5 22.0 25.0 27.6 30.0 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 5.0 6.0 6.3 6.4 メディケア 1.3 1.9 2.3 2.6 3.3 4.7 6.4 7.6 8.6 メディケイド 0.5 0.8 1.2 1.5 1.7 2.3 2.8 3.4 4.0 国 防 費 5.0 5.3 3.0 4.0 3.4 2.5 2.0 1.7 1.5 その 他 8.7 6.5 5.5 6.2 5.8 5.4 5.3 5.1 4.9 利 払 費 2.0 3.2 2.2 1.4 2.0 2.1 2.5 3.5 4.7 財 政 収 支 2.7 4.0 2.1 3.3 2.7 1.7 3.4 4.8 6.3 市 中 保 有 債 務 残 高 26.4 43.1 34.5 37.3 41.7 40.8 50.3 70.6 95.9 シナリオ6( 低 歳 出 / 高 歳 入 ) ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2004 2010 2020 2030 2040 2050 歳 入 19.3 17.9 20.5 16.6 17.8 20.3 21.6 22.7 23.7 個 人 所 得 税 9.1 8.1 10.2 7.1 8.6 11.1 12.4 13.6 14.6 歳 出 22.0 21.9 18.4 19.9 19.9 18.7 17.6 15.2 11.5 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.4 4.3 4.2 4.2 4.2 5.0 5.9 6.2 6.3 メディケア 1.3 1.9 2.3 2.6 3.2 3.9 4.6 5.0 5.1 メディケイド 0.5 0.8 1.2 1.5 1.5 1.5 1.6 1.8 1.9 国 防 費 5.0 5.3 3.0 4.0 3.4 2.4 2.0 1.7 1.4 その 他 8.7 6.5 5.5 6.2 5.5 4.5 3.8 3.2 2.7 利 払 費 2.0 3.2 2.2 1.4 2.0 1.3 0.3 2.6 5.9 財 政 収 支 2.7 4.0 2.1 3.3 2.1 1.7 4.0 7.5 12.2 市 中 保 有 債 務 残 高 26.4 43.1 34.5 37.3 40.5 23.1 9.7 56.1 123.7 出 典 The Long-Term Budget Outlook [CBO (2005b)] - 14 -

Ⅰ-2 大 統 領 府 行 政 管 理 予 算 局 (OMB) 1. 作 成 の 背 景 経 緯 ポイント 大 統 領 の 予 算 提 案 を 織 り 込 んだ 推 計 として 1996 年 以 降 毎 年 の 予 算 教 書 の 中 で 公 表 (2007 年 2 月 のものが 最 新 ) 潜 在 的 な 財 政 課 題 に 対 する 警 鐘 を 鳴 らすための 有 効 なツールと 位 置 づけられてい る 大 統 領 の 予 算 提 案 に 含 まれる 義 務 的 経 費 削 減 を 行 わない 場 合 の 影 響 等 も 推 計 OMBでは 1990 年 代 初 頭 に 長 期 的 な 財 政 課 題 の 問 題 が 認 識 され 始 めたことから この 影 響 を 予 測 するために 1996 年 以 降 毎 年 の 予 算 教 書 において5 年 又 は10 年 間 の 中 期 財 政 見 通 しを 延 伸 した 推 計 を 行 っている 2007 年 2 月 に 公 表 された2008 年 度 予 算 教 書 における 推 計 が 最 新 のものである 11 OMBの 長 期 財 政 推 計 は 大 統 領 が 提 案 する 政 策 の 下 での 将 来 の 財 政 の 姿 を 予 想 し 潜 在 的 な 財 政 課 題 に 対 する 警 鐘 を 鳴 らすための 有 効 なツールと 位 置 づけられている また 大 統 領 が 行 った 予 算 提 案 の 効 果 を 示 すために 予 算 提 案 に 含 まれる 義 務 的 経 費 の 削 減 を 行 わない 場 合 の 推 計 結 果 も 示 されている なお 推 計 結 果 はCBOと 同 様 に すべて 対 GDP 比 で 示 される 2. 推 計 の 概 要 ポイント 推 計 対 象 は 連 邦 政 府 の 財 政 状 況 推 計 期 間 は75 年 間 人 口 動 態 の 前 提 は 年 金 の 将 来 推 計 に 用 いられる 人 口 推 計 を 利 用 主 な 経 済 前 提 については GDP 成 長 率 2.5%( 実 質 ) 労 働 生 産 性 上 昇 率 2.3%( 実 質 ) 長 期 金 利 3.0%( 実 質 )としている 人 口 動 態 に 連 動 する 歳 出 は 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア 及 びメディケイド 年 金 は 将 来 推 計 に 基 づき 高 齢 化 に 伴 い 増 加 メディケア メディケイドの1 人 当 たり 費 用 の 伸 び 率 が1 人 当 たりGDP 成 長 率 +1%と 想 定 人 口 動 態 に 連 動 する 歳 出 以 外 の 歳 出 は 大 統 領 提 案 に 基 づき 延 伸 し 長 期 的 にはG DP 成 長 率 等 に 連 動 歳 入 の 長 期 前 提 は 対 GDP 比 18.3%( 過 去 40 年 間 の 平 均 )で 一 定 11 推 計 結 果 は 以 下 のホームページアドレスにおいて 公 表 されている http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2008/pdf/apers/assumptions.pdf - 15 -

(1) 推 計 期 間 更 新 頻 度 推 計 対 象 等 OMBは 毎 年 大 統 領 予 算 教 書 の 中 で 長 期 財 政 推 計 (The Long-Run Budget Outlook) を 公 表 している 対 象 期 間 は2080 年 までの 約 75 年 間 で 連 邦 政 府 統 合 予 算 を 対 象 とし ている 歳 入 歳 出 財 政 収 支 と 市 中 保 有 債 務 残 高 のほか 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディ ケア メディケイド 利 払 費 といった 主 な 歳 出 項 目 について 推 計 を 行 っている また 原 則 として 予 算 教 書 で 提 案 している 政 策 効 果 を 織 り 込 んだ 推 計 を 行 っている OMB の 担 当 官 によれば 75 年 間 という 推 計 期 間 は 現 役 の 最 も 若 い 労 働 世 代 の 生 涯 をカバ ーする 期 間 として 設 定 されている とのことであった (2) 経 済 前 提 経 済 成 長 率 物 価 上 昇 率 金 利 といった 経 済 前 提 は 通 常 は 予 算 教 書 の 前 提 を 延 伸 している 最 新 の 予 算 教 書 では 最 終 年 度 となる2012 年 度 の 主 な 経 済 指 標 は 消 費 者 物 価 指 数 :2.3% 長 期 金 利 5.3%となっている OMBの 担 当 官 によると 長 期 推 計 では 実 質 GDP 成 長 率 は2.5% 労 働 生 産 性 上 昇 率 は2.3% 労 働 供 給 上 昇 率 は0.2% と 置 いている とのことであった 生 産 性 については ベースラインとなる 前 提 と 代 替 的 前 提 が 示 されている ベース ラインとなる 前 提 は 過 去 のトレンドを 引 用 しており 2000 年 以 降 の 年 平 均 の 上 昇 率 と 同 じ2.3%としている 代 替 的 前 提 では 上 下 それぞれ0.25% 変 化 させている また 長 期 金 利 ( 実 質 )については OMBの 担 当 官 によれば 予 算 教 書 の 最 終 年 度 (2012 年 度 )の 推 計 値 が 安 定 すると 想 定 し 本 年 度 は 約 3.0%としている 金 利 と 成 長 率 の 関 係 については 動 学 的 効 率 性 のような 理 論 を 基 にした 推 計 は 行 っておらず リンクは ない とのことであった 人 口 動 態 については OMBの 担 当 官 によれば 最 初 の10 年 間 は 予 算 の 前 提 を 用 い るが その 後 は 社 会 保 障 ( 年 金 )の 推 計 の 前 提 を 使 用 している とのことであった 移 民 及 び 死 亡 率 に 関 する 長 期 的 前 提 は 以 下 のようになっている (ⅰ) 出 生 率 は 1.9 から 2.0 の 間 (ⅱ) 移 民 は 年 平 均 90 万 人 の 純 増 (ⅲ) 死 亡 率 は 減 少 して 長 寿 化 が 進 むと 予 想 女 性 の 平 均 寿 命 は 2004 年 の 79.6 年 か ら 2080 年 は 85.1 年 に 男 性 の 平 均 寿 命 は 2004 年 の 74.7 年 から 2080 年 は 81.8 年 に 延 びると 想 定 している なお 出 生 率 移 民 死 亡 率 について それぞれ 代 替 的 前 提 下 での 財 政 収 支 も 示 さ れている (3) 高 齢 化 関 連 支 出 の 前 提 人 口 動 態 の 影 響 を 織 り 込 む 支 出 は 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア 及 びメディケイド - 16 -

としている メディケア 関 連 支 出 は メディケア プログラムにかかる 費 用 を 抑 制 するための 政 府 提 案 を 反 映 して 推 計 されている この 提 案 が 実 施 されれば 2006 年 5 月 のメディケ ア 信 託 基 金 理 事 会 報 告 書 に 比 べて 今 後 75 年 間 で8 兆 ドルの 収 支 改 善 効 果 があるとして いる 2006 年 5 月 のメディケア 信 託 基 金 理 事 会 報 告 書 では 年 齢 及 び 性 別 調 整 後 の 一 人 当 たり 給 付 の 伸 び 率 が 一 人 当 たりGDP 成 長 率 を 毎 年 1% 上 回 ると 想 定 しているが この 想 定 はOMBの 推 計 でも 使 用 されている メディケア メディケイド 関 連 支 出 は 2005 年 度 の 対 GDP 比 3.9%から2080 年 度 には 同 9.5%まで 上 昇 すると 推 計 している なお 代 替 的 前 提 として 一 人 当 たり 医 療 費 の 伸 びを 上 下 それぞれ0.25% 変 化 させ た 際 の 財 政 収 支 も 示 されている 社 会 保 障 ( 年 金 ) 関 連 支 出 は 2005 年 度 の 対 GDP 比 4.2%から2080 年 度 には 同 6.3% まで 上 昇 すると 推 計 している なお 現 在 大 統 領 が 提 案 している 社 会 保 障 ( 年 金 ) 改 革 の 効 果 については その 全 体 像 が 定 まっていないことから その 効 果 を 織 り 込 んで いない (4)その 他 の 歳 出 項 目 の 前 提 裁 量 的 支 出 については 人 口 と 経 済 がともに 成 長 していく 場 合 公 的 サービスに 対 する 需 要 は 同 程 度 のペースで 拡 大 すると 見 込 まれることから GDP 成 長 率 と 同 じペ ースで 伸 びると 想 定 している なお OMBの 担 当 官 は ( 人 口 動 態 に 関 連 する 支 出 項 目 として 整 理 されることがある) 教 育 については 州 や 地 方 政 府 の 役 割 が 大 きく 連 邦 の 支 出 割 合 が 低 いため GDP 比 一 定 との 単 純 な 前 提 を 置 いている と 述 べてい た メディケア メディケイド 及 び 社 会 保 障 ( 年 金 ) 以 外 の 義 務 的 経 費 については 政 府 提 案 を 織 り 込 みベースライン 推 計 を 行 っているが 代 替 的 前 提 として 改 革 を 行 わな かった 場 合 の 財 政 収 支 も 示 されている なお OMBの 担 当 官 は メディケイド 以 外 の 低 所 得 プログラムは 今 後 貧 困 率 が 低 下 すると 見 込 まれることから 対 GDP 比 で 減 少 すると 予 想 している と 述 べていた (5) 歳 入 の 前 提 歳 入 に 関 する 推 計 については 直 近 の5 年 間 は 予 算 教 書 における 政 府 提 案 の 下 での 歳 入 見 通 しに 基 づき それ 以 降 は 過 去 40 年 間 の 平 均 である 対 GDP 比 18.3%になると の 前 提 が 置 かれている また 代 替 的 前 提 として 長 期 的 に 対 GDP 比 が18.6% 及 び 18.0%となる 場 合 の 財 政 収 支 も 示 されている - 17 -

3. 推 計 結 果 の 概 要 ポイント 財 政 赤 字 対 GDP 比 が 拡 大 し 債 務 残 高 対 GDP 比 は 2060 年 度 に82% 2080 年 度 に160%に 達 する 大 統 領 予 算 提 案 の 義 務 的 経 費 削 減 を 行 わない 場 合 債 務 残 高 対 GDP 比 は2060 年 度 に130% 2080 年 度 に262%に 達 する 高 齢 化 と 医 療 費 の 増 加 に 伴 うメディケア 及 びメディケイドの 支 出 増 が 顕 著 メディケア メディケイド 及 び 社 会 保 障 ( 年 金 ) 向 け 支 出 が 利 払 費 以 外 の 歳 出 に 占 める 割 合 が2080 年 度 には4 分 の3 近 くまで 増 加 前 述 のようにOMBは 原 則 として 大 統 領 予 算 の 政 策 効 果 を 織 り 込 んだ 推 計 をベース ラインとしているが 2008 年 度 予 算 教 書 では 義 務 的 経 費 に 係 る 政 策 が 行 われなかった 場 合 の 推 計 結 果 も 示 されている 2つの 推 計 結 果 は 以 下 のとおりである ( 表 6)OMBの 推 計 結 果 ( 対 GDP 比 %) 1980 1990 2000 2005 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 歳 入 19.0 18.0 20.9 17.6 18.3 18.3 18.3 18.3 18.3 18.3 18.3 18.3 歳 出 21.7 21.8 18.4 20.2 18.9 17.8 19.7 21.4 23.0 24.9 27.2 29.7 裁 量 的 支 出 10.1 8.7 6.3 7.9 6.6 4.8 4.8 4.8 4.8 4.8 4.8 4.8 義 務 的 支 出 9.6 9.9 9.8 10.8 10.6 12.0 14.0 15.1 15.5 16.0 16.5 16.9 社 会 保 障 ( 年 金 ) 4.3 4.3 4.2 4.2 4.2 4.9 5.8 6.0 6.0 6.1 6.2 6.3 メディケア 1.1 1.7 2.0 2.4 2.7 3.4 4.5 5.3 5.7 5.9 6.1 6.1 メディケイド 0.5 0.7 1.2 1.5 1.4 1.9 2.2 2.5 2.8 3.0 3.2 3.6 その 他 3.7 3.2 2.4 2.7 2.3 1.8 1.5 1.3 1.1 1.0 1.0 0.9 利 払 費 1.9 3.2 2.3 1.5 1.7 1.0 0.8 1.6 2.7 4.1 5.9 8.0 財 政 収 支 2.7 3.9 2.4 2.6 0.6 0.5 1.4 3.1 4.7 6.6 8.9 11.4 基 礎 的 財 政 収 支 0.8 0.6 4.7 1.1 1.2 1.5 0.5 1.6 2.0 2.5 3.0 3.4 市 中 保 有 債 務 残 高 26.1 42.0 35.1 37.5 35.2 18.7 17.1 31.5 53.6 82.0 117.5 160.3 義 務 的 経 費 に 係 る 予 算 教 書 の 提 案 を 実 施 しなかった 場 合 義 務 的 支 出 9.6 9.9 9.8 10.8 10.7 12.3 14.6 16.1 17.0 17.8 18.7 19.6 財 政 収 支 2.7 3.9 2.4 2.6 0.7 0.1 2.3 4.9 7.5 10.7 14.6 19.0 基 礎 的 財 政 収 支 0.8 0.6 4.7 1.1 1.0 1.2 1.1 2.6 3.5 4.3 5.3 6.1 市 中 保 有 債 務 残 高 26.1 42.0 35.1 37.5 35.5 21.1 24.4 47.6 83.3 130.3 189.7 262.1 出 典 OMB 資 料 - 18 -

( 図 6) 債 務 残 高 対 GDP 比 の 推 移 (% 対 GDP 比 ) 300 250 実 績 推 計 262.1 200 150 義 務 的 経 費 削 減 を 行 わない 場 合 160.3 100 50 37.5 大 統 領 の 予 算 提 案 を 反 映 したベースライン 0 2005 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 ( 年 度 ) 出 典 OMB 資 料 から 作 成 ベースライン 推 計 では 債 務 残 高 対 GDP 比 が 2060 年 度 に 82% 2080 年 度 に 160% に 達 する 結 果 となっている 12 大 統 領 が 提 案 している 義 務 的 経 費 削 減 を 行 わない 場 合 は 債 務 残 高 対 GDP 比 が 2060 年 度 に 130% 2080 年 度 に 262%に 達 する 結 果 となっている 社 会 保 障 ( 年 金 ) メディケア 及 びメディケイドの3つのプログラムは 2005 年 度 においては 利 払 費 以 外 の 連 邦 歳 出 の 約 43%であるが ベビーブーム 世 代 が 70 代 から 80 代 になる 2035 年 度 には これら3つのプログラムは 予 算 教 書 で 提 案 されている 改 革 が 実 行 されたとしても 同 歳 出 の 約 3 分 の2に 達 し 推 計 期 間 の 終 期 である 2080 年 度 には 約 4 分 の3まで 上 昇 するとし 予 算 の 柔 軟 性 と 新 しい 課 題 への 政 府 の 対 応 力 が 著 しく 弱 まるとしている なお 前 述 のように 医 療 費 歳 入 等 の 前 提 を 代 替 的 なものにした 場 合 の 財 政 収 支 への 影 響 についても 示 されている( 表 7 参 照 ) 12 OMBのベースラインと 2005 年 12 月 のCBO 報 告 書 のシナリオ2は 歳 入 のGDP 比 を 18.3%に 固 定 し 一 人 当 たり 医 療 費 の 伸 びを 一 人 当 たりGDP 成 長 率 +1%とするなど 基 本 となる 前 提 が 共 通 しているものの 2050 年 度 の 債 務 残 高 はOMB 推 計 では 対 GDP 比 53.6%であるのに 対 し CBOのシナリオ2の 推 計 では 同 250%に 達 する 結 果 と なっている この 違 いは OMBの 推 計 が 1 大 統 領 提 案 の 歳 出 削 減 を 織 り 込 んでいること 2 足 元 の 税 収 増 を 織 り 込 んでいること 3 成 長 率 の 前 提 をやや 高 く 置 いていること などによるものと 考 えられる - 19 -

( 表 7) 代 替 的 前 提 下 での 財 政 収 支 (% 対 GDP 比 ) 2005 2010 2030 2050 2080 ベースライン 2.6 0.6 1.4 4.7 11.4 医 療 費 の 増 加 率 高 位 (+0.25%) 2.6 0.6 1.6 6.0 15.7 低 位 ( 0.25%) 2.6 0.6 1.1 3.5 7.6 歳 入 歳 入 対 GDP 比 18.0% 2.6 0.6 1.9 5.6 13.0 歳 入 対 GDP 比 18.6% 2.6 0.6 0.8 3.8 9.8 生 産 性 高 位 (+0.25%) 2.6 0.4 0.5 3.0 7.9 低 位 ( 0.25%) 2.6 0.8 2.3 6.6 15.7 出 生 率 高 位 2.6 0.6 1.2 3.7 6.8 低 位 2.6 0.6 1.5 5.9 17.4 移 民 高 位 2.6 0.5 0.6 3.2 8.7 低 位 2.6 0.7 1.9 5.8 13.5 増 減 なし 2.6 0.9 3.4 9.2 20.8 平 均 寿 命 低 位 2.6 0.6 1.0 3.4 7.9 高 位 2.6 0.6 1.7 6.2 16.0 出 典 OMB 資 料 - 20 -

< 参 考 文 献 > ( 和 文 ) 西 野 健 (2005) 欧 米 主 要 国 における 最 近 の 税 制 改 正 の 動 向 財 政 金 融 統 計 月 報 第 636 号 財 務 省 財 務 総 合 政 策 研 究 所. ( 英 文 ) Congressional Budget Office [CBO]. (2005a) The Long-Term Implications of Current Defense Plans and Alternatives: Summary Update for Fiscal Year 2006. (2005b) The Long-Term Budget Outlook. Office of Management and Budget [OMB]. (2007a) Appendix, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2008. (2007b) Budget of the United States Government, Fiscal Year 2008. (2007c) Historical Tables, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2008. O Sullivan, Jennifer. (2007) Medicare: A Primer, Congressional Research Service Report for Congress, RL33712. The Board of Trustees, Federal Hospital Insurance and the Federal Supplementary Medical Insurance Trust Funds. (2006) The 2006 Annual Report of the Board of Trustees of the Federal Hospital Insurance and the Federal Supplementary Medical Insurance Trust Funds. The Board of Trustees, Federal Old-Age and Survivors Insurance and Disability Insurance Trust Funds. (2006) The 2006 Annual Report of the Board of Trustees of the Federal Old-Age and Survivors Insurance and Disability Insurance Trust Funds. (2007) The 2007 Annual Report of the Board of Trustees of the Federal Old-Age and Survivors Insurance and Disability Insurance Trust Funds. (インターネット ホームページ) 議 会 予 算 局 (CBO) URL; http://www.cbo.gov/ 行 政 管 理 予 算 局 (OMB) URL;http://www.whitehouse.gov/omb/ 政 府 印 刷 局 (GPO) 連 邦 政 府 予 算 URL;http://www.gpoaccess.gov/usbudget/index.html - 21 -

Ⅱ 英 国 1. 作 成 の 背 景 経 緯 ポイント 英 国 では 1980 年 代 後 半 から 90 年 代 前 半 にかけて 財 政 赤 字 が 拡 大 し 公 債 残 高 が 累 増 した こうした 状 況 に 陥 った 最 大 の 要 因 は 明 確 で 透 明 性 の 高 い 財 政 政 策 の 目 標 がなかったことであるとの 反 省 に 基 づき 財 政 政 策 の 新 しい 枠 組 みとして 1998 年 に 財 政 安 定 化 規 律 (The Code for Fiscal Stability)が 議 会 の 承 認 を 経 て 制 定 された 同 規 律 に 基 づく 見 通 しを 補 完 するため プレ バジェットレポートの 付 属 資 料 とし て 約 50 年 間 を 対 象 とする 長 期 財 政 推 計 (Long-term public finance report)が2002 年 から 毎 年 公 表 されている( 最 新 の 長 期 財 政 推 計 は2006 年 12 月 に 公 表 ) 英 国 では 1980 年 代 後 半 から 90 年 代 前 半 に 景 気 循 環 の 影 響 を 十 分 に 考 慮 せずに 財 政 運 営 を 行 った 結 果 財 政 赤 字 の 拡 大 公 的 債 務 の 累 増 公 的 資 産 の 縮 小 が 生 じた こうした 状 況 に 陥 った 最 大 の 要 因 は 明 確 で 透 明 性 の 高 い 財 政 政 策 の 目 標 がなかった ことであるとの 反 省 に 基 づき ブレア 政 権 下 の 財 政 政 策 の 新 しい 枠 組 みとして 1998 年 に 財 政 安 定 化 規 律 (The Code for Fiscal Stability)が 議 会 の 承 認 を 経 て 制 定 された 1 同 規 律 の 目 的 は 財 政 運 営 に 関 する 原 則 の 明 示 と 政 府 の 報 告 義 務 の 強 化 によって 財 政 政 策 及 び 債 務 管 理 政 策 の 透 明 性 と 説 明 責 任 を 向 上 させ 長 期 的 に 維 持 可 能 で 健 全 な 財 政 状 況 を 確 保 することにある この 目 的 を 達 成 するため 同 規 律 は 経 済 見 通 しの 作 成 等 政 府 に 対 して 様 々な 要 請 を 行 っているが その 中 で 世 代 間 の 影 響 と 財 政 政 策 の 持 続 可 能 性 を 解 明 するため 財 務 省 に 対 し 財 政 上 の 重 要 な 項 目 についての 見 通 しに 関 する 少 なくとも 10 年 以 上 の 実 証 的 な 予 測 の 提 示 を 義 務 付 けている( 参 考 参 照 ) 同 規 定 に 基 づき 財 務 省 は 次 年 度 予 算 の 方 針 などについて 議 会 に 対 して 説 明 を 行 う 経 済 財 政 戦 略 報 告 書 (Economic and Fiscal Strategy Report)において 1999 年 以 降 毎 年 将 来 30 年 間 の 長 期 的 な 財 政 見 通 し(Illustrative long-term fiscal projections 以 下 財 政 見 通 し という )を 公 表 している また 財 政 見 通 しを 補 完 するため 予 算 案 の 公 表 に 先 立 って 前 年 の 12 月 頃 に 予 算 編 成 方 針 を 明 らかにするプレ バジェットレ ポート(Pre-Budget Report)の 付 属 資 料 として より 詳 細 かつ 長 期 間 を 対 象 とする 長 期 財 政 推 計 である Long-term public finance report( 以 下 長 期 報 告 書 という )を 2002 年 から 毎 年 公 表 している 1 英 国 は 基 本 的 に 成 文 法 の 国 ではなく 財 政 安 定 化 規 律 についても 議 会 承 認 は 不 要 であったが 規 律 の 権 威 を 高 め それ によって 拘 束 性 を 強 化 するために 政 府 側 があえて 議 会 の 承 認 を 得 たという 経 緯 がある - 22 -

財 政 見 通 しの 推 計 期 間 は 30 年 であるが 長 期 報 告 書 の 推 計 期 間 は 約 50 年 である こ れは 30 年 間 では 人 口 動 態 の 変 化 による 財 政 への 影 響 を 測 るには 短 すぎ 年 金 のシス テムや 医 療 制 度 の 性 質 を 考 慮 した 場 合 50 年 以 上 の 推 計 が 必 要 との 考 えに 基 づく 2 長 期 報 告 書 の 位 置 づけはあくまでもガイダンスであり 短 期 あるいは 中 期 の 政 策 を 制 約 するものではないが その 内 容 を 踏 まえて 政 策 が 変 更 されることはありうる なお 長 期 報 告 書 は 全 5 章 で 構 成 されており 1 章 : 概 要 2 章 : 長 期 的 社 会 経 済 の 動 向 3 章 : 財 政 の 持 続 可 能 性 評 価 の 方 法 4 章 : 推 計 の 前 提 5 章 : 結 論 となっ ている 以 下 2006 年 12 月 に 公 表 された 最 新 の 長 期 報 告 書 について 記 述 する 3 ( 参 考 ) 財 政 安 定 化 規 律 ( 抄 ) 19. 財 務 省 は 原 則 として 予 算 期 間 中 に 経 済 財 政 戦 略 報 告 書 (EFSR)を 公 表 しなければ ならない ただし 会 計 年 度 中 に 複 数 の 予 算 が 組 まれる 場 合 EFSRは 最 初 の1つだけで よい 財 政 運 営 について 明 示 された 原 則 に 照 らし EFSRは 以 下 の 点 を 満 たさなければな らない a.~c.( 略 ) d. 世 代 間 の 影 響 と 財 政 政 策 の 持 続 可 能 性 を 解 明 できるように 財 政 上 の 重 要 な 項 目 について の 見 通 しに 関 する 少 なくとも10 年 以 上 先 までの 実 証 的 な 予 測 を 提 示 する この 予 測 は 信 頼 できる 前 提 に 基 づいていなければならない 2. 推 計 の 概 要 ポイント 財 務 省 が 作 成 し 対 象 範 囲 は 一 般 政 府 対 象 期 間 は 2006 年 度 から 2055 年 度 まで 人 口 推 計 は 年 金 数 理 庁 (Government Actuary s Department)の 数 値 を 使 用 経 済 成 長 率 は 労 働 生 産 性 上 昇 率 と 雇 用 率 の 変 化 率 から 算 出 労 働 生 産 性 上 昇 率 は 推 計 期 間 を 通 じて2%で 固 定 長 期 金 利 は 推 計 期 間 を 通 じて3%( 実 質 )で 固 定 政 府 支 出 は 現 行 の 施 策 から 変 更 がないという 前 提 で 主 な 支 出 分 野 ごとに 年 齢 別 の 一 人 当 たり 支 出 額 を 推 計 し これを 労 働 生 産 性 上 昇 率 等 で 延 伸 した 上 で 各 年 度 におけ る 年 齢 別 の 人 口 と 掛 け 合 わせて 全 体 の 支 出 額 を 推 計 歳 入 は 現 行 の 施 策 から 変 更 がないという 前 提 で 主 な 歳 入 分 野 ごとに 年 齢 別 の 一 人 当 たり 負 担 額 を 推 計 し これを 労 働 生 産 性 上 昇 率 で 延 伸 した 上 で 各 年 度 における 年 齢 別 の 人 口 と 掛 け 合 わせて 全 体 の 歳 入 額 を 決 定 している 2 英 国 財 務 省 からのヒアリングによる 3 長 期 報 告 書 は 以 下 のホームページアドレスにおいて 公 表 されている http://www.hm-treasury.gov.uk/pre_budget_report/prebud_pbr06/assoc_docs/prebud_pbr06_adlongterm.cfm - 23 -

(1) 推 計 期 間 更 新 頻 度 等 作 成 機 関 は 財 務 省 で 推 計 期 間 は 2006 年 度 から 2055 年 度 まで 対 象 範 囲 は 一 般 政 府 (General government)としている 4 11~12 月 に 公 表 されるプレ バジェットレポ ートの 付 属 書 類 として 2002 年 から 毎 年 公 表 している(2002 年 は 11 月 2003 年 か らは 12 月 ) (2) 経 済 前 提 1 人 口 前 提 長 期 報 告 書 の 前 提 となる 人 口 動 態 の 変 化 は 年 金 数 理 庁 (Government Actuary s Department(GAD))が 作 成 する 人 口 動 態 推 計 の 数 値 を 用 いており 2006 年 の 長 期 報 告 書 では 2005 年 10 月 に 公 表 された 2004 年 の 推 計 値 を 使 用 している 5 年 金 数 理 庁 の 推 計 の 対 象 期 間 は 2074 年 までであり 出 生 率 (Fertility) 寿 命 (Longevity) 及 び 移 民 (Migration)に 関 して それぞれ 基 本 (Principal) 高 位 (High variation) 低 位 (Low variation) 及 びその 他 の 前 提 を 置 いて 複 数 の 結 果 を 示 している 長 期 報 告 書 では このうち 基 本 ケースの 数 値 を 使 用 している( 表 1 参 照 ) ( 表 1) 人 口 推 計 の 前 提 ( 基 本 ケース) 基 本 ケース 出 生 率 1.74 平 均 寿 命 男 81.4 女 85.0 一 年 間 の 純 移 民 数 145,000 ( 注 1) 平 均 寿 命 は 2031 年 生 まれの 人 間 の 平 均 寿 命 上 記 前 提 に 基 づき 英 国 の 人 口 は 2004 年 には 5980 万 人 であるが 2055 年 には 6950 万 人 に 達 する 見 込 みとされている また 英 国 では 特 に 2010 年 以 降 に 高 齢 化 が 進 むと 予 測 されているが 65 歳 以 上 の 者 が 人 口 に 占 める 割 合 は 1990 年 代 半 ば では 25%であったものが 2040 年 には 42% 2050 年 には 45%とその 割 合 の 増 加 は 比 較 的 緩 やかなものとなっている 2 経 済 成 長 率 利 子 率 労 働 生 産 性 上 昇 率 は 推 計 期 間 を 通 じて 直 近 50 年 の 労 働 生 産 性 上 昇 率 の 平 均 値 の 4 後 述 するフィスカル ギャップ(Fiscal Gap)の 計 算 については サスティナビリティ ルールとの 整 合 性 を 持 たせる ため 一 般 政 府 に 公 的 企 業 を 加 えた 公 的 部 門 (Public Sector)を 対 象 としている 5 人 口 推 計 は 2005 年 度 までは 年 金 数 理 庁 が 行 っていたが 2006 年 1 月 に 英 国 統 計 庁 (National Statistics Office)に 権 限 が 移 管 された 次 回 の 人 口 推 計 の 公 表 は 2007 年 10 月 を 予 定 - 24 -

2%で 一 定 としている また 感 度 分 析 のために 労 働 生 産 性 上 昇 率 が 1.75% 及 び 2.25%のケースについても 推 計 結 果 が 示 されている 経 済 成 長 率 については 労 働 生 産 性 上 昇 率 と 雇 用 率 の 変 化 率 によって 得 られるとし ており 推 計 期 間 を 通 じて2%である 実 質 利 子 率 は 推 計 期 間 を 通 じて3%との 前 提 を 置 いている また 感 度 分 析 のため に 実 質 利 子 率 が 2.5% 及 び 3.5%のケースについても 推 計 結 果 が 示 されている なお 物 価 上 昇 率 については 前 提 を 置 いておらず 長 期 財 政 推 計 は 全 て 実 質 ベース で 行 われている 6 (3) 政 府 支 出 の 前 提 政 府 支 出 は 2006 年 12 月 に 公 表 されたプレ バジェット2006の 内 容 を 含 め 既 に 公 表 されている 政 策 から 変 更 がないという 前 提 で 推 計 している 具 体 的 には 項 目 ごとに 2011 年 度 時 点 での 年 齢 別 の 一 人 当 たり 支 出 額 を 推 計 し これを 労 働 生 産 性 上 昇 率 で 延 伸 した 上 で 各 年 度 における 年 齢 別 の 人 口 と 掛 け 合 わせて 全 体 の 政 府 支 出 額 を 推 計 する ただし 現 行 制 度 で 物 価 変 動 に 応 じて 支 出 が 変 化 すると している 項 目 については 物 価 上 昇 率 で 延 伸 することとしている 7 年 金 については 年 金 数 理 庁 の 推 計 を 使 用 している 高 齢 化 の 影 響 を 受 ける 支 出 (age-related)である 教 育 国 家 年 金 健 康 長 期 医 療 公 務 員 年 金 とそれ 以 外 の 支 出 に 分 けて 推 計 結 果 が 示 されており それぞれの 支 出 の 概 要 は 以 下 の 通 り 1 教 育 : 対 GDP 比 は2005 年 度 の5.5%から 安 定 的 に 推 移 し 2055 年 度 には5.2%と なる 見 込 み 2 国 家 年 金 : 対 GDP 比 は2005 年 度 の5.1%から 増 加 し 2055 年 度 には6.8%となる 見 込 み 3 医 療 : 対 GDP 比 は2005 年 度 の7.4%から 増 加 し 2055 年 度 には9.9%となる 見 込 み 4 介 護 : 対 GDP 比 は2005 年 度 の1.2%から 増 加 し 2055 年 度 には2.0%となる 見 込 み 5 公 務 員 年 金 : 対 GDP 比 は2005 年 度 の1.5%から 増 加 し 2055 年 度 には2.0%とな る 見 込 み 6 その 他 支 出 : 対 GDP 比 は2005 年 度 の20.2%から 減 少 し 2055 年 度 には18.9%と なる 見 込 み 6 英 国 財 務 省 からのヒアリングによる 7 具 体 的 には 非 年 金 社 会 保 障 移 転 (Non-pensions social transfers)が 該 当 する - 25 -

( 図 1) 政 府 支 出 の 推 移 ( 対 GDP 比 %) 2005 年 度 2015 年 度 2025 年 度 2035 年 度 2045 年 度 2055 年 度 教 育 5.5 5.3 5.3 5.3 5.2 5.2 国 家 年 金 5.1 5.1 5.4 6.2 6.4 6.8 医 療 7.4 7.6 8.3 9.1 9.5 9.9 介 護 1.2 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 公 務 員 年 金 1.5 1.8 1.9 2.0 1.9 2.0 年 齢 関 係 の 支 出 ( 計 ) 20.8 21.0 22.3 24.3 24.8 25.8 その 他 の 支 出 20.2 19.7 19.6 19.6 19.2 18.9 政 府 支 出 合 計 40.9 40.7 41.9 43.8 43.9 44.7 (4) 歳 入 の 前 提 歳 入 についても 政 府 支 出 と 同 様 2006 年 12 月 に 公 表 されたプレ バジェット2006 の 内 容 を 含 め 既 に 公 表 されている 政 策 から 変 更 がないという 前 提 で 推 計 している 具 体 的 には 項 目 ごとに 2011 年 度 時 点 での 年 齢 別 の 一 人 当 たり 負 担 額 を 推 計 し これを 労 働 生 産 性 上 昇 率 で 延 伸 した 上 で 各 年 度 における 年 齢 別 の 人 口 と 掛 け 合 わせ て 全 体 の 歳 入 額 を 推 計 する ただし 所 得 税 及 び 社 会 保 険 料 については さらに 年 齢 別 の 一 人 当 たり 負 担 額 が 雇 用 率 の 変 化 に 一 致 して 上 昇 すると 仮 定 している 推 計 の 結 果 歳 入 の 対 GDP 比 は2005 年 度 の39.2%から 増 加 し 2055 年 度 には41.6%となる 見 込 み 歳 入 の 対 GDP 比 が 増 加 する 理 由 としては 所 得 税 や 付 加 価 値 税 はGDPの 成 長 に - 26 -

寄 与 しない 退 職 者 などからも 支 払 われるため 今 後 人 口 に 占 める 高 齢 者 の 割 合 が 増 加 した 場 合 両 税 がGDPの 増 加 率 を 上 回 って 増 加 することが 挙 げられている ( 図 2) 歳 入 の 推 移 ( 対 GDP 比 %) 2005 年 度 2015 年 度 2025 年 度 2035 年 度 2045 年 度 2055 年 度 歳 入 38.4 39.8 40.5 41.2 41.2 41.6 (%) 3. 推 計 結 果 の 概 要 ポイント 高 齢 化 に 伴 い 政 府 支 出 の 対 GDP 比 は 50 年 間 で4% 程 度 増 加 する 他 方 歳 入 の 対 GDP 比 は3% 程 度 増 加 し 収 支 は 悪 化 する 財 政 規 律 であるサスティナビリティ ルールの 達 成 は 可 能 であり 他 の 先 進 諸 国 と 比 べても 長 期 的 に 財 政 は 安 定 的 であるとの 結 論 推 計 の 結 果 高 齢 化 の 影 響 を 受 ける 支 出 の 増 大 等 の 要 因 により 政 府 支 出 の 対 GDP 比 は 50 年 間 で4% 程 度 増 加 する 一 方 で 歳 入 の 対 GDP 比 は3% 程 度 増 加 するとされて いる このように 政 府 支 出 が 歳 入 を 上 回 って 推 移 する 中 で プライマリー バランスは - 27 -

悪 化 するものの 財 政 規 律 の 一 つであるサスティナビリティ ルール 8 の 達 成 は 可 能 であ り 英 国 の 財 政 状 況 は 他 の 先 進 諸 国 と 比 較 しても 長 期 的 に 見 て 安 定 的 であるとして 推 計 の 結 果 を 結 んでいる 推 計 結 果 の 詳 細 は 以 下 のとおり (1)プライマリー バランス プライマリー バランスは 2020 年 代 半 ばまでは 回 復 するものの 高 齢 化 の 進 展 に 伴 い 歳 入 の 伸 びを 上 回 って 政 府 支 出 が 増 加 し 2055 年 度 には ベースライン( 労 働 生 産 性 上 昇 率 2%)のケースで 対 GDP 比 で 1.1%となる ( 図 3)プライマリー バランスの 推 移 ( 対 GDP 比 %) (2)フィスカル ギャップ(Fiscal Gap) 長 期 報 告 書 では 特 定 の 債 務 残 高 の 水 準 を 特 定 の 期 限 で 達 成 するために 必 要 なプライ マリー バランスの 変 化 幅 であるフィスカル ギャップという 数 値 を 算 出 している 債 務 水 準 の 設 定 は 財 政 規 律 であるサスティナビリティ ルールに 基 づき 純 債 務 残 高 対 GDP 比 40%で 固 定 し 達 成 期 限 を 変 更 した 場 合 に 必 要 なフィスカル ギャップを 表 2のとおり 示 している なお フィスカル ギャップの 計 算 については サスティナビ リティ ルールとの 整 合 性 を 持 たせるため 一 般 政 府 に 公 的 企 業 を 加 えた 公 的 部 門 (Public Sector)を 対 象 としている 8 1998 年 財 政 安 定 化 規 律 に 基 づく 現 在 の 英 国 の 財 政 規 律 の 一 つ 景 気 循 環 の 一 期 間 を 通 じて ネットの 公 的 債 務 残 高 を 対 GDP 比 で 安 定 的 かつ 慎 重 なレベルに 保 たなければならないとしており 現 在 40%で 運 用 されている - 28 -

2005 年 度 の 債 務 残 高 が 40% 以 下 であるため 例 えばベースライン シナリオにおい て 目 標 年 を 2025 年 度 とした 場 合 には プライマリー バランスを 現 時 点 よりも 悪 化 さ せても 目 標 は 達 成 可 能 であるが 2055 年 度 において 目 標 を 達 成 するには 利 子 率 を3% とした 場 合 現 時 点 からプライマリー バランスを 0.75 改 善 させなければならないこ とが 示 されている ( 表 2)フィスカル ギャップ(ベースライン シナリオ( 労 働 生 産 性 上 昇 率 2%)) 利 子 率 (%) 目 標 年 度 2.5 3 3.5 2025 年 度 0.5 0.25 0.25 2035 年 度 0 0.25 0.25 2045 年 度 0.25 0.5 0.75 2055 年 度 0.5 0.75 0.75 < 参 考 文 献 > 田 中 秀 明 岩 井 正 憲 岡 橋 準 (2001) 民 間 の 経 営 理 念 や 手 法 を 導 入 した 予 算 財 政 のマネジメン トの 改 革 財 務 省 財 務 総 合 政 策 研 究 所. 厚 生 労 働 省 ホームページ 英 国 財 務 省 ホームページ - 29 -

Ⅲ ドイツ 1. 作 成 の 背 景 経 緯 ポイント 長 期 的 な 人 口 推 計 の 公 表 により 高 齢 化 が 公 共 財 政 に 及 ぼす 影 響 への 懸 念 が 高 まる とともに EUやOECDでの 国 際 的 な 議 論 の 動 向 が 契 機 となり 2005 年 6 月 に 最 初 の 長 期 財 政 推 計 が 作 成 公 表 された ドイツにおいては 2005 年 6 月 に 連 邦 財 務 省 より 長 期 的 な 財 政 の 持 続 可 能 性 に 関 す る 報 告 が 公 表 され その 中 で 初 めて2050 年 までを 推 計 期 間 とする 長 期 財 政 推 計 の 試 算 結 果 が 示 された 1 担 当 官 の 話 によれば 2005 年 に 作 成 公 表 されることとなった 背 景 には2つの 事 が 挙 げられる その 一 つは 連 邦 統 計 庁 が 公 表 した 人 口 推 計 により 今 後 年 代 が 進 むにつれてドイツが 急 速 に 高 齢 化 し 労 働 者 に 対 する 高 齢 者 の 割 合 が 急 激 に 上 昇 するという 事 実 が 明 らかになり 人 口 動 態 が 公 共 財 政 や 社 会 保 障 制 度 に 与 える 影 響 について 懸 念 され 始 めたことである 2 もう 一 つの 背 景 は 特 に2000 年 代 前 半 からOECDやEU 等 の 国 際 機 関 において 人 口 動 態 の 変 化 の 公 共 財 政 に 与 える 影 響 についての 議 論 が 行 われるようになり ドイ ツもこの 議 論 に 参 画 してきたことである EUやOECD 加 盟 国 のベビーブームの 時 期 がそれぞれ 異 なっているが 戦 後 直 後 にベビーブームを 迎 えた 米 国 3 が 早 い 時 期 から 高 齢 化 が 公 共 財 政 に 与 える 影 響 への 懸 念 をOECDの 様 々な 委 員 会 で 示 してきたこと もあり OECDでは 2000 年 時 点 で 既 に 人 口 動 態 の 変 化 が 公 共 財 政 に 及 ぼす 影 響 の 研 究 報 告 を 行 っていた また EUにおいても 2001 年 に 人 口 動 態 の 変 化 が 加 盟 国 の 財 政 に 与 える 影 響 について 議 論 する 委 員 会 (Working Group for Aging Population and Sustainability)が 設 置 されている ドイツもこれらの 活 動 に 参 画 してきたこともあり このような 国 際 的 な 議 論 を 背 景 として ドイツ 国 内 においても 人 口 動 態 が 財 政 に 及 ぼ す 影 響 について 客 観 的 に 情 報 を 提 供 するとともに 適 切 に 対 策 を 講 じうる 分 野 を 指 摘 することを 目 的 として ドイツ 独 自 の 長 期 財 政 推 計 を 作 成 公 表 するに 至 った 1 ドイツの 法 令 上 従 来 から 包 括 的 で 長 期 的 な 財 政 の 見 通 しを 示 すことが 求 められていたものの 実 際 には 行 われてこな かった 2 人 口 推 計 は 2000 年 までの 間 に 8~9 回 公 表 されてきたが 当 初 はそれほど 長 期 間 の 推 計 ではなく 30 年 程 度 であった しかし 序 々に 推 計 期 間 を 延 ばして 2050 年 までの 推 計 が 行 われるようになった 3 なお ドイツではベビーブームは 1950 年 代 半 ばからである - 30 -

2. 推 計 の 概 要 ポイント ドイツ 連 邦 財 務 省 が5 大 民 間 経 済 研 究 機 関 の 一 つIfo 研 究 所 に 委 託 して 長 期 財 政 推 計 を 作 成 推 計 期 間 は2050 年 まで 対 象 範 囲 は 一 般 政 府 ベース 次 回 の 更 新 は2008 年 夏 の 予 定 連 邦 統 計 庁 が 実 施 している 人 口 推 計 のうち 中 位 推 計 を 経 済 前 提 の 一 部 として 使 用 労 働 市 場 の 前 提 については 基 本 シナリオ(リュールップ 委 員 会 のシナリオ)とリス クシナリオ(Ifo 研 究 所 のシナリオ)の 両 方 を 採 用 労 働 生 産 性 についてはEUの 基 準 (1.75%)を 使 用 し 金 利 については 現 行 金 利 (3.5%)で 一 定 との 前 提 支 出 項 目 については 年 金 医 療 介 護 失 業 教 育 について 人 口 動 態 の 変 化 の 影 響 を 受 けるものとし その 他 の 支 出 項 目 については 対 GDP 比 一 定 との 前 提 次 回 の 更 新 では 家 族 政 策 関 連 支 出 も 人 口 動 態 の 変 化 に 影 響 を 受 ける 項 目 に 追 加 する 予 定 歳 入 については 税 収 は 対 GDP 比 で 一 定 社 会 保 険 料 について 対 GDP 比 一 定 とするケースと 人 口 動 態 の 変 化 によって 自 動 的 に 調 整 されるケースの2 通 りの 前 提 2 種 類 のサステナビリティ ギャップによって 財 政 の 持 続 可 能 性 を 評 価 (1) 作 成 機 関 更 新 頻 度 等 1 作 成 機 関 長 期 的 な 財 政 の 持 続 可 能 性 に 関 する 報 告 4 は 連 邦 財 務 省 より 公 表 されている が 長 期 財 政 推 計 の 作 成 はドイツの5 大 研 究 所 5 の 一 つであるIfo 研 究 所 (ミュンヘン) に 委 託 されている なお 担 当 官 の 話 によれば 長 期 財 政 推 計 を 政 府 から 独 立 した 研 究 機 関 に 外 注 したことについて 長 期 財 政 推 計 の 客 観 性 信 憑 性 を 高 めるという 点 で 利 点 があったとのことである 2 推 計 期 間 対 象 範 囲 推 計 期 間 は2050 年 まで 対 象 範 囲 は 一 般 政 府 ベースとされている 3 更 新 頻 度 更 新 頻 度 については 2005 年 6 月 の 公 表 以 降 現 在 まで 更 新 されていないが 担 当 官 4 英 語 のタイトルは Report on the Sustainability of Public Finances http://www.bundesfinanzministerium.de/cln_04/nn_3790/de/service/downloads/abt I/Monatsbericht/Downloads/0609121a1001,t emplateid=raw,property=publicationfile.pdf 5 1ドイツ 経 済 研 究 所 (ベルリン) 2Ifo 経 済 研 究 所 (ミュンヘン) 3キール 世 界 経 済 研 究 所 4ハレ 経 済 研 究 所 及 び5ライン ウェストファーレン 経 済 研 究 所 (エッセン)で 構 成 されるドイツの 民 間 経 済 研 究 機 関 であり 年 2 回 の 経 済 予 測 をドイツの 他 主 要 国 についても 公 表 している - 31 -

の 話 によれば 2008 年 夏 に 更 新 される 予 定 であり その 後 も 総 選 挙 ごと 6 に 更 新 さ れる 予 定 となっている (2) 経 済 前 提 : 人 口 前 提 成 長 率 金 利 1 人 口 前 提 長 期 財 政 推 計 の 前 提 となる 人 口 の 推 移 については 連 邦 統 計 庁 が 毎 年 公 表 している 人 口 推 計 が 使 用 されている 同 推 計 においては 平 均 余 命 と 移 民 の 前 提 の 違 い(それ ぞれ 高 位, 中 位, 低 位 の3パターン)により9 通 りの 見 通 しが 示 されているが 長 期 財 政 推 計 においては その 中 で 平 均 余 命 と 移 民 が 中 位 となるケースのみを 前 提 として 採 用 している ( 表 1)20~64 歳 の 人 口 に 対 する 65 歳 以 上 の 人 口 の 比 率 (%) 2001 2010 2020 2030 2040 2050 低 位 27.5 32.8 36.8 48.5 55.3 56.4 中 位 27.5 32.6 36.4 47.3 53.1 54.5 高 位 27.5 32.6 36.1 46.5 52 53.8 なお 担 当 官 の 話 によれば 今 後 の 人 口 推 計 においては 出 生 率 が 向 上 するシナリ オ 7 も 追 加 される 予 定 とのことであり 次 回 の 長 期 財 政 推 計 ではそのシナリオも 用 い られる 予 定 とのことであった 2 経 済 成 長 率 金 利 経 済 成 長 率 については 労 働 生 産 性 の 伸 びと 労 働 力 の 推 計 から 算 出 されているが 労 働 力 を 推 計 するための 労 働 市 場 に 関 する 前 提 について 2つのシナリオが 用 意 され ている 具 体 的 には 基 本 シナリオとして 社 会 保 障 制 度 改 革 を 検 討 するために2002 年 に 設 置 されたリュールップ 委 員 会 8 の 報 告 における 経 済 前 提 が 採 用 されているが 一 方 で Ifo 研 究 所 はリュールップ 委 員 会 が 置 く 経 済 前 提 は 楽 観 的 に 過 ぎると 判 断 し たため Ifo 研 究 所 で 別 に 設 定 した 経 済 前 提 をリスクシナリオとして 採 用 している それぞれのシナリオは 以 下 の 表 2のとおりである 6 選 挙 を 経 た 一 政 権 につき 一 回 は 更 新 するという 意 味 なお 総 選 挙 は4 年 ごとに 行 われる 7 現 在 の 長 期 財 政 推 計 における 出 生 率 に 関 する 前 提 は 1.4 で 一 定 とされている 8 2002 年 11 月 に 当 時 のシュミット 保 健 社 会 相 の 諮 問 会 議 として 社 会 保 障 制 度 に 関 する 財 政 の 持 続 可 能 性 についての 改 革 案 を 答 申 することを 目 的 として バート リュールップ 教 授 を 委 員 長 として 発 足 された 委 員 会 委 員 会 は4つのワ ーキンググループ( 年 金 医 療 介 護 総 括 )に 分 割 され 各 分 野 において 議 論 が 重 ねられた 後 2003 年 8 月 に 社 会 保 障 改 革 案 答 申 を 行 った - 32 -

( 表 2) 長 期 財 政 推 計 のモデル 計 算 の 前 提 2010 2020 2030 2040 2050 人 口 動 態 人 口 ( 百 万 人 ) 83.1 82.8 81.2 78.5 75.1 高 齢 者 人 口 割 合 (%) 32.6 36.4 47.3 53.1 54.5 労 働 市 場 の 前 提 ( 基 本 シナリオ) 男 性 (20-64)の 労 働 参 加 率 (%) 86.3 86.2 86.9 87.7 87.2 女 性 (20-64)の 労 働 参 加 率 (%) 71.9 72.9 76.2 77.3 76.6 雇 用 者 数 ( 百 万 人 ) 39.3 39.1 37.7 36.1 34.0 失 業 率 (%) 7.3 6.3 3.9 3.3 3.3 労 働 市 場 の 前 提 (リスクシナリオ) 男 性 (20-64)の 労 働 参 加 率 (%) 86.2 85.0 85.1 86.4 86.1 女 性 (20-64)の 労 働 参 加 率 (%) 72.9 73.9 75.0 76.5 75.9 雇 用 者 数 ( 百 万 人 ) 39.5 38.8 36.1 34.5 32.7 失 業 率 (%) 7.2 7.0 6.5 6.2 5.9 経 済 に 関 する 前 提 労 働 生 産 性 上 昇 率 (%) 1.5 1.7 1.7 1.8 1.8 実 質 GDP 成 長 率 (%) 基 本 シナリオ 1.9 1.7 1.4 1.3 1.1 リスクシナリオ 2.0 1.5 1.0 1.3 1.2 実 質 長 期 金 利 (%) 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 両 シナリオでは 労 働 参 加 率 や 失 業 率 などの 労 働 市 場 に 関 する 見 通 しが 異 なってい るが 特 に 失 業 率 については 人 口 動 態 の 変 化 が 構 造 的 失 業 者 数 にどのように 影 響 す るかについてコンセンサスが 得 られておらず 人 口 が 減 少 すれば 構 造 的 失 業 者 が 自 然 に 減 少 するという 見 解 と そうとは 限 らず 失 業 率 は 変 化 しないと 見 積 もるべきである とする 見 解 がある 労 働 生 産 性 上 昇 率 については EU 及 びOECDにおいては 就 業 者 1 人 当 たり 1.75%とされている また 金 利 については 長 期 財 政 推 計 作 成 時 の 金 利 水 準 (3.5%) で 推 計 期 間 にわたって 一 定 とすることとされている 9 なお 物 価 上 昇 率 については 特 に 想 定 されておらず 長 期 財 政 推 計 は 全 て 実 質 ベースで 行 われている 9 なお 担 当 官 の 話 によれば 長 期 財 政 推 計 の 作 成 過 程 で GDP 成 長 率 に1%を 上 乗 せして 実 質 金 利 とする 方 法 も 検 討 さ れたが 結 局 採 用 されなかったとのことである - 33 -

(3) 政 府 支 出 及 び 収 入 の 前 提 1 政 府 支 出 の 前 提 一 般 政 府 支 出 の 推 計 については 人 口 動 態 の 変 化 により 公 的 年 金 医 療 介 護 教 育 失 業 対 策 等 の 支 出 に 影 響 が 及 ぶことが 想 定 されている この 人 口 動 態 の 変 化 が 及 ぼす 影 響 の 枠 組 みは ドイツ 独 自 のものではなく EUで 合 意 を 得 たものとなって いる 10 一 方 他 の 分 野 の 支 出 については 連 邦 政 府 により 閣 議 決 定 された 中 期 財 政 計 画 (2004-2008 年 度 )を 反 映 させるとともに 2009 年 度 以 降 は 対 GDP 比 で 一 定 と 仮 定 されている それぞれの 項 目 の 見 通 しの 概 要 は 以 下 のとおりである (ⅰ) 年 金 :2004 年 に 実 施 された 年 金 制 度 改 革 11 により 支 出 の 伸 びはかなりの 程 度 抑 制 されており 2003 年 度 時 点 での 対 GDP 比 が 11.9%であるのに 対 し 2010 年 度 時 点 では 11.3%に 低 下 する 見 通 し しかしながらその 後 は 増 加 に 転 じ 2050 年 度 には 14.7%となる 見 通 し (ⅱ) 医 療 :2003 年 11 月 に 医 療 保 険 現 代 化 法 12 が 成 立 した 効 果 により 医 療 に 関 す る 支 出 は 2003 年 度 で 対 GDP 比 6.6%であったところ 2005 年 度 には 6.0%に 低 下 しかしながら 2015 年 度 ごろからは 再 び 増 加 に 転 じ 2050 年 度 には 7.7%に 達 する 見 込 み (ⅲ) 介 護 : 現 在 の 支 出 はおよそ 対 GDP 比 で 0.8%であるが 2050 年 度 には 1.8% に 上 昇 する 見 通 し (ⅳ) 教 育 訓 練 :15 歳 から 24 歳 の 間 の 者 の 教 育 訓 練 への 参 加 の 増 加 高 度 な 教 育 への 嗜 好 というトレンドがあるにも 拘 わらず 公 的 支 出 の 対 GDP 比 はわずかに 減 少 (4.1% 3.6%)する 見 通 し (ⅴ) 失 業 : 労 働 市 場 の 前 提 の 置 き 方 に 左 右 されるが いずれにしても 支 出 の 対 GD P 比 が 唯 一 大 きく 減 少 している その 原 因 として 経 済 が 回 復 している ことに 加 え 2005 年 より 施 行 されたハルツ 第 Ⅳ 法 により これまでの 失 業 者 への 手 厚 い 給 付 が 大 幅 に 切 り 下 げられるとともに 就 業 意 欲 の 阻 害 が 改 善 されたことにより 失 業 者 が 減 少 し 失 業 給 付 が 減 少 する 見 込 10 担 当 官 の 話 によれば 人 口 動 態 の 変 化 により 影 響 を 受 ける 支 出 項 目 の 枠 組 みの 見 直 しは3 年 から5 年 に 一 度 行 われて おり 次 回 の 2008 年 の 更 新 に 当 たっては 27 カ 国 が 同 じ 基 準 を 用 いて 長 期 財 政 推 計 を 作 成 する 予 定 であるとのこと 11 2004 年 の 公 的 年 金 保 険 持 続 法 の 制 定 により 持 続 可 能 性 要 素 ( 被 保 険 者 と 年 金 受 給 者 の 割 合 の 変 化 率 )を 年 金 スライ ド 式 に 導 入 することが 決 定 されたほか 失 業 者 及 び 高 齢 パートタイマーの 早 期 年 金 受 給 制 度 の 支 給 開 始 年 齢 を 2006 年 から 2008 年 にかけて 60 歳 から 63 歳 に 引 き 上 げることが 決 定 された 12 抜 本 的 な 医 療 制 度 改 革 として 2004 年 1 月 より 施 行 されており ⅰ) 公 的 医 療 保 険 の 給 付 対 象 の 見 直 し ⅱ) 診 察 費 用 の 自 己 負 担 額 の 拡 大 ⅲ) 医 薬 品 の 自 己 負 担 の 拡 大 ⅳ) 保 険 料 率 引 下 げ( 疾 病 金 庫 平 均 14.4%から 13.6%へ 引 下 げ)などが 実 施 されている - 34 -

みであることが 挙 げられる 13 これら 人 口 動 態 の 変 化 に 影 響 を 受 ける 支 出 項 目 の 合 計 は 対 GDP 比 で 2003 年 度 の 25.3%から 2012 年 度 に 23.6%まで 低 下 した 後 上 昇 に 転 じ 2030 年 度 には 25.8% 2050 年 度 には 27.8%に 上 昇 する この 結 果 は これまで 実 施 されてきた 制 度 改 革 の 効 果 により 2030 年 度 までは 現 在 とほぼ 同 じ 水 準 に 留 まるという 見 通 しを 示 す 一 方 より 長 期 的 には 人 口 動 態 の 変 化 による 支 出 増 加 を 抑 制 して 財 政 の 持 続 可 能 性 を 確 保 するためには 更 なる 対 応 が 必 要 となることを 示 している ( 表 3) 人 口 動 態 の 変 化 による 公 的 支 出 の 変 化 ( 対 GDP 比 ) (%) 年 金 医 療 介 護 教 育 訓 練 失 業 保 険 合 計 2003 11.9 7.4 4.1 2.9 25.3 2010 11.3 6.9 3.9 2.4 23.7 2020 12.3 7.5 3.6 2.0 24.5 2030 13.6 8.2 3.7 1.3 25.8 2040 14.2 9.0 3.6 1.1 26.8 2050 14.7 9.5 3.6 1.1 27.8 なお 担 当 官 の 話 によれば ドイツでは 今 後 家 族 政 策 に 力 を 入 れていく 予 定 であり 次 回 の 更 新 に 当 たっては 人 口 構 成 の 変 化 から 直 接 影 響 を 受 ける 項 目 として 従 来 の 年 金 医 療 介 護 失 業 教 育 の5 項 目 に 加 え 家 族 政 策 への 財 源 手 当 てを 加 える 予 定 であるとのことである 2 歳 入 ( 税 社 会 保 険 料 )の 前 提 歳 入 については 対 GDP 比 で 一 定 となるケースと 保 険 料 が 人 口 動 態 の 変 化 によ って 自 動 的 に 調 整 されることを 想 定 したケースの2 通 りが 想 定 されている ただし 担 当 官 の 話 によれば 事 後 的 な 調 査 によると 歳 入 を 対 GDP 比 で 一 定 とする 前 提 の 方 が 現 実 にあてはまっているとのことであった 13 従 前 は 失 業 者 に 対 して 1 失 業 手 当 ( 失 業 当 初 ) 又 は2 失 業 扶 助 ( 失 業 手 当 受 給 期 間 終 了 後 )を 給 付 する 制 度 があ り このほかに いわゆる 生 活 保 護 に 相 当 する3 社 会 扶 助 制 度 が 存 在 していた このうち 1 及 び2については 就 労 能 力 に 着 目 した 制 度 になっておらず 特 に2については 前 職 の 賃 金 の 57%の 水 準 を 無 期 限 に 給 付 するものであることか ら 就 労 意 欲 を 減 退 させるものといわれていた このような 状 況 を 踏 まえ ハルツ 第 Ⅳ 法 が 2005 年 1 月 から 施 行 されて おり 従 来 の 失 業 扶 助 と 社 会 扶 助 を 再 編 整 理 し 就 労 能 力 の 有 無 に 着 目 して 失 業 者 のうち 就 労 能 力 のある 者 には 失 業 給 付 Ⅱを 就 労 能 力 のない 者 には 社 会 扶 助 の 制 度 により 給 付 することとした このうち 失 業 給 付 Ⅱについては 給 付 水 準 ( 基 本 的 に ベルリンを 含 む 旧 連 邦 州 では 月 額 345 ユーロ 新 連 邦 州 では 月 額 331 ユーロの 定 額 給 付 )を 大 幅 に 切 り 下 げているばかりではなく 就 労 忌 避 者 への 制 裁 が 課 されるなど 就 労 に 対 するインセンティブの 強 化 がなされている - 35 -