平成7年4月28日最高裁判決で示された「その意図を外部からも覗い得る特段の行動」の意義(解釈)についての一考察



Similar documents
<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

国 税 通 則 法 の 見 直 しについて(23 年 度 改 正 ) 税 務 調 査 手 続 の 明 確 化 更 正 の 請 求 期 間 の 延 長 処 分 の 理 由 附 記 等 国 税 通 則 法 の 大 幅 な 見 直 しを 実 施 主 な 改 正 事 項 1. 税 務 調 査 手 続 ( 平

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc

特 定 が 必 要 であり, 法 7 条 の 裁 量 的 開 示 を 求 める 第 3 諮 問 庁 の 説 明 の 要 旨 1 本 件 開 示 請 求 について 本 件 開 示 請 求 は, 処 分 庁 に 対 して, 特 定 法 人 が 大 森 税 務 署 に 提 出 した, 特 定 期 間 の

答申書

2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

4 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 若 しくはその 委 任 を 受 けた 者 又 は 監 査 委 員 の 監 査 に 応 じなければ ならない ( 状 況 報 告 ) 第 7 条 承 認 コミュニティ 組 織 は 市 長 が 必 要 と 認 めるときは 交 付 金 事 業 の 遂 行 の


疑わしい取引の参考事例

< F2D E633368D86816A89EF8C768E9696B18EE688B5>

(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

弁護士報酬規定(抜粋)

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

答申第585号

定款

PowerPoint プレゼンテーション

に 公 開 された 映 画 暁 の 脱 走 ( 以 下 本 件 映 画 1 という ), 今 井 正 が 監 督 を 担 当 し, 上 告 人 を 映 画 製 作 者 として 同 年 に 公 開 された 映 画 また 逢 う 日 まで ( 以 下 本 件 映 画 2 という ) 及 び 成 瀬 巳

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

Microsoft Word 第1章 定款.doc

Microsoft Word - 20年度(行個)答申第2号.doc

無罪判決後の勾留に関する意見書

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

加 算 税 制 度 の 見 直 し 等 1. 現 行 制 度 の 概 要 関 税 においては 国 税 ( 輸 入 貨 物 に 対 する 内 国 消 費 税 を 含 む 以 下 同 じ ) の 制 度 と 同 様 の 過 少 申 告 加 算 税 無 申 告 加 算 税 及 び 重 加 算 税 の 制

学校法人日本医科大学利益相反マネジメント規程

ような 厚 生 年 金 基 金 関 係 の 法 改 正 がなされており (2)については 平 成 16 年 10 月 1 日 から (1) 及 び(3)については 平 成 17 年 4 月 1 日 から 施 行 されている (1) 免 除 保 険 料 率 の 凍 結 解 除 ( 母 体 企 業 (

第1章 簿記の一巡

3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ

国 税 クレジットカード 納 付 の 創 設 国 税 のクレジットカード 納 付 については マイナンバー 制 度 の 活 用 による 年 金 保 険 料 税 に 係 る 利 便 性 向 上 に 関 するアクションプログラム( 報 告 書 ) においてその 導 入 の 方 向 性 が 示 されている

Taro13-01_表紙目次.jtd

第 1 監 査 の 請 求 1 請 求 人 姫 路 市 廣 野 武 男 2 請 求 年 月 日 姫 路 市 職 員 措 置 請 求 ( 住 民 監 査 請 求 政 務 調 査 費 の 返 還 に 係 る 法 定 利 息 の 不 足 以 下 本 件 請 求 という )に 係 る 請 求 書 は 平 成

Microsoft Word - 2 答申概要.doc

(1) 社 会 保 険 等 未 加 入 建 設 業 者 の 確 認 方 法 等 受 注 者 から 提 出 される 施 工 体 制 台 帳 及 び 添 付 書 類 により 確 認 を 行 います (2) 違 反 した 受 注 者 へのペナルティー 違 反 した 受 注 者 に 対 しては 下 記 のペ

目 次 1 報 酬 給 与 額 事 例 1 報 酬 給 与 額 に 含 める 賞 与 の 金 額 が 誤 っていた 事 例 1 事 例 2 役 員 退 職 金 ( 役 員 退 職 慰 労 金 )を 報 酬 給 与 額 として 申 告 して いなかった 事 例 1 事 例 3 持 株 奨 励 金 を

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

第 8 条 乙 は 甲 に 対 し 仕 様 書 に 定 める 期 日 までに 所 定 の 成 果 物 を 検 収 依 頼 書 と 共 に 納 入 する 2 甲 は 前 項 に 定 める 納 入 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする 3 検 査 不 合 格 となった 場 合 甲 は

Taro-データ公安委員会相互協力事

中国会社法の改正が外商投資企業に与える影響(2)

スライド 1

固定資産評価審査申出とは

(3) 区 分 所 有 法 第 7 条 の 先 取 特 権 の 実 行 滞 納 管 理 費 等 に 係 る 債 権 は 区 分 所 有 法 第 7 条 の 先 取 特 権 の 被 担 保 債 権 となってい るため 債 務 名 義 ( 確 定 判 決 等 )を 取 得 せずとも 先 取 特 権 の

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

若 しくは 利 益 の 配 当 又 はいわゆる 中 間 配 当 ( 資 本 剰 余 金 の 額 の 減 少 に 伴 うものを 除 きます 以 下 同 じです )を した 場 合 には その 積 立 金 の 取 崩 額 を 減 2 に 記 載 す るとともに 繰 越 損 益 金 26 の 増 3 の

積 み 立 てた 剰 余 金 の 配 当 に 係 る 利 益 準 備 金 の 額 は 利 益 準 備 金 1 の 増 3 に 記 載 します ⑸ 平 成 22 年 10 月 1 日 以 後 に 適 格 合 併 に 該 当 しない 合 併 により 完 全 支 配 関 係 がある 被 合 併 法 人 か

(ⅴ) 平 成 28 年 4 月 1 日 から 平 成 35 年 12 月 31 日 までの 期 間 未 成 年 者 に 係 る 少 額 上 場 株 式 等 の 非 課 税 口 座 制 度 に 基 づき 証 券 会 社 等 の 金 融 商 品 取 引 業 者 等 に 開 設 した 未 成 年 者 口

既 存 建 築 物 の 建 替 市 街 化 調 整 区 域 で 許 可 を 不 要 とする 取 扱 いについて 既 存 建 築 物 の 建 替 は 以 下 の1)~3)をすべて 満 たしている 場 合 に 可 能 です 1) 建 替 前 の 建 築 物 ( 以 下 既 存 建 築 物 という )につ

鳥 取 国 民 年 金 事 案 177 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 昭 和 37 年 6 月 から 38 年 3 月 までの 国 民 年 金 保 険 料 については 納 付 していたものと 認 められることから 納 付 記 録 を 訂 正 することが 必 要 である 第 2 申

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

3 地 震 保 険 の 割 引 地 震 保 険 に 加 入 されている 場 合 耐 震 改 修 後 保 険 料 の 割 引 (10%)が 受 けられる 場 合 があ ります ご 加 入 の 保 険 会 社 にお 問 合 せになり 宅 耐 震 改 修 証 明 書 の 写 し あるいは 固 定 資 産

<4D F736F F D F936F985E8C9A927A95A892B28DB88B408AD68BC696B18B4B92F E646F63>

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

税制面での支援

第1章 総則

1

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親

異 議 申 立 人 が 主 張 する 異 議 申 立 ての 理 由 は 異 議 申 立 書 の 記 載 によると おおむね 次 のとおりである 1 処 分 庁 の 名 称 の 非 公 開 について 本 件 審 査 請 求 書 等 について 処 分 庁 を 非 公 開 とする 処 分 は 秋 田 県

. 負 担 調 整 措 置 8 (1) 宅 地 等 調 整 固 定 資 産 税 額 宅 地 に 係 る 固 定 資 産 税 額 は 当 該 年 度 分 の 固 定 資 産 税 額 が 前 年 度 課 税 標 準 額 又 は 比 準 課 税 標 準 額 に 当 該 年 度 分 の 価 格 ( 住 宅

Microsoft Word - 答申第143号.doc

Ⅴ Ⅵ 目 予 算 編 成 のフローチャートと 決 算 書 類 19 図 表 6 予 算 編 成 のフローチャート 20 図 表 7 収 支 報 告 書 貸 借 対 照 表 財 産 目 録 備 品 台 帳 モデル 21 滞 納 金 回 収 に 関 する 管 理 会 社 の 業 務 と 役 割 25

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

中根・金田台地区 平成23年度補償説明業務

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

<4D F736F F D2091E F18CB48D C481698E7B90DD8F9590AC89DB816A2E646F63>

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

4 5 6 県 内 に 所 在 する 営 業 所 等 のうち 主 たるものから 本 県 分 を 一 括 納 入 県 内 に 所 在 する 各 営 業 所 等 から 当 該 営 業 所 等 分 を 納 入 この 場 合 において 特 別 徴 収 義 務 者 の 事 務 処 理 システム 上 必 要 あ

の 購 入 費 又 は 賃 借 料 (2) 専 用 ポール 等 機 器 の 設 置 工 事 費 (3) ケーブル 設 置 工 事 費 (4) 防 犯 カメラの 設 置 を 示 す 看 板 等 の 設 置 費 (5) その 他 設 置 に 必 要 な 経 費 ( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

< F2D D D837C815B B8EC08E7B97768D80>

( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補 助 金 の 額 は 第 5 条 第 2 項 の 規 定 による 無 線 LAN 機 器 の 設 置 箇 所 数 に 1 万 5 千 円 を 掛 けた 金 額 と 第 5 条 第 3 項 に 規 定 する 補 助 対 象 経 費 の2 分 の1のいずれか 低

公文書非公開決定処分に関する諮問について(答申)

とする (1) 多 重 債 務 や 過 剰 債 務 を 抱 え 返 済 が 困 難 になっている 人 (2) 債 務 整 理 を 法 律 専 門 家 に 依 頼 した 直 後 や 債 務 整 理 途 上 の 人 (3) 収 入 よりも 生 活 費 が 多 くお 金 が 不 足 がちで 借 金 に 頼

兵庫県公立学校教職員等財産形成貯蓄事務取扱細則

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

連結計算書

Taro-契約条項(全部)

とする ( 減 免 額 の 納 付 ) 第 6 条 市 長 は 減 免 を 受 け た 者 が 偽 り そ の 他 不 正 な 方 法 に よ り 減 免 の 決 定 を 受 け た こ と を 知 っ た と き 前 の 申 告 が あ っ た と き 又 は 同 条 第 2 項 の 規 定 によ

二 資本金の管理

<4D F736F F D B8E968BC695E58F CA A2E646F63>

Microsoft Word - 不正アクセス行為の禁止等に関する法律等に基づく公安

第 3 諮 問 庁 の 説 明 要 旨 1 本 件 対 象 公 文 書 の 性 質 (1) 本 件 非 公 開 部 分 異 議 申 立 人 は 原 決 定 において 非 公 開 とした 部 分 のうち 家 屋 評 価 調 書 ( 一 棟 総 括 表 ) 中 の 課 税 床 面 積 非 木 造 家 屋

< F2D C93FA967B91E5906B8DD082CC94ED8DD0>

の 基 礎 の 欄 にも 記 載 します ア 法 人 税 の 中 間 申 告 書 に 係 る 申 告 の 場 合 は 中 間 イ 法 人 税 の 確 定 申 告 書 ( 退 職 年 金 等 積 立 金 に 係 るものを 除 きます ) 又 は 連 結 確 定 申 告 書 に 係 る 申 告 の 場

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

< E95FB8CF689638AE98BC689FC90B390A CC8CA992BC82B582C982C282A282C E90E096BE8E9E8E9197BF2E786477>

<4D F736F F D208E9197BF A955B895E93AE82CC8B4B90A C982C282A282C42E646F6378>

10 期 末 現 在 の 資 本 金 等 の 額 次 に 掲 げる 法 人 の 区 分 ごとに それぞれに 定 める 金 額 を 記 載 します 連 結 申 告 法 人 以 外 の 法 人 ( に 掲 げる 法 人 を 除 きます ) 法 第 292 条 第 1 項 第 4 号 の5イに 定 める

別 添 巡 回 連 絡 実 施 要 領 第 1 趣 旨 この 要 領 は 埼 玉 県 地 域 警 察 運 営 規 程 ( 平 成 15 年 埼 玉 県 警 察 本 部 訓 令 第 51 号 以 下 運 営 規 程 という ) 第 5 条 第 2 項 第 4 号 イの 規 定 に 基 づき 巡 回 連

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第076号.doc

Transcription:

論 説 平 成 7 年 4 月 28 日 最 高 裁 判 決 で 示 された その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 意 義 ( 解 釈 )についての 一 考 察 - 重 加 算 税 が 賦 課 される 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるのは 具 体 的 にいかなる 行 為 をいうのか( 過 少 申 告 行 為 そのもの は 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるか) - 山 口 大 学 経 済 学 部 教 授 安 住 修 一 SUMMARY 所 得 金 額 の 全 部 又 は 一 部 を 申 告 しない 不 申 告 行 為 やつまみ 申 告 が 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 であ る 隠 ぺい 又 は 仮 装 行 為 と 認 定 し 得 るか 否 かについて 平 成 7 年 4 月 28 日 の 最 高 裁 第 二 小 法 廷 判 決 ( 以 下 本 判 決 という )において 重 加 算 税 を 課 するためには 重 加 算 税 制 度 の 趣 旨 にかんがみれば 架 空 名 義 の 利 用 や 資 料 の 隠 匿 等 の 積 極 的 な 行 為 が 存 在 したことまで 必 要 であると 解 するのは 相 当 でなく 納 税 者 が 当 初 から 所 得 を 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 をした 上 その 意 図 に 基 づく 過 少 申 告 をした 場 合 には 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 が 満 たされると 解 すべきである との 考 え 方 が 示 され その 後 この 部 分 を 援 用 した 下 級 審 の 判 例 が 出 されている 本 稿 は 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 に 関 する 本 判 決 の 考 え 方 に 疑 義 を 抱 く 筆 者 が 国 税 通 則 法 の 規 定 や 重 加 算 税 制 度 の 趣 旨 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 に 関 する 学 説 や 過 去 の 裁 判 例 ( 特 に 平 成 6 年 11 月 22 日 最 高 裁 第 三 小 法 廷 判 決 (いわゆる ことさら 申 告 の 判 決 )) 等 の 検 討 を 通 じ て 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 である 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となる 行 為 は 具 体 的 にいかなる 行 為 をい うのかを 明 らかにするとともに 本 判 決 の 意 義 や 解 釈 について 新 たなる 観 点 からの 考 察 を 試 みたものである ( 税 大 ジャーナル 編 集 部 ) 93

目 次 Ⅰ はじめに 95 1 問 題 提 起 95 2 取 引 の 開 始 から 申 告 書 が 提 出 されるまでの 事 象 の 経 過 95 Ⅱ 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 意 義 ( 再 解 釈 )についての 検 討 の 手 順 96 Ⅲ 具 体 的 な 検 討 96 1 重 加 算 税 が 賦 課 される 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるのは 具 体 的 にいかなる 行 為 かにつ いての 一 般 的 な 検 討 96 (1) 条 文 の 規 定 からの 検 討 96 (2) 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 や 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 の 関 係 からの 検 討 97 (3) 過 去 の 判 例 からみた 検 討 98 (4) 重 加 算 税 が 賦 課 される 要 件 としての 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 対 象 についての 結 論 99 Ⅳ 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 で 示 された その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 意 義 ( 解 釈 )の 検 討 101 1 問 題 の 所 在 101 2 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 定 義 とその 性 格 101 (1) 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 定 義 とその 性 格 101 (2) 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 における 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 101 3 学 説 102 (1) 学 説 102 (2) 学 説 に 対 する 個 人 的 意 見 102 4 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 概 要 102 (1) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 102 (2) 1 審 ( 平 成 5 年 3 月 29 日 神 戸 地 裁 判 決 )の 判 決 要 旨 103 (3) 2 審 ( 平 成 6 年 6 月 28 日 大 阪 高 裁 判 決 )の 判 決 要 旨 103 5 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 の 概 要 103 (1) 事 件 の 概 要 103 (2) 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 要 旨 103 (3) 1 審 ( 平 成 4 年 3 月 23 日 京 都 地 裁 判 決 )の 要 旨 104 (4) 控 訴 審 ( 平 成 5 年 4 月 27 日 大 阪 高 裁 判 決 ) 104 6 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 再 解 釈 105 (1) 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 に 対 する 基 本 的 な 見 解 105 (2) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 に 対 する 概 括 的 意 見 105 (3) 判 決 で 示 された 個 別 の 部 分 に 対 する 意 見 106 (4) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 再 解 釈 108 7 結 論 108 補 足 108 94

Ⅰ はじめに 1 問 題 提 起 平 成 7 年 4 月 28 日 最 高 裁 第 二 小 法 廷 判 決 ( 以 下 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 という ) 1 に おいて 重 加 算 税 を 課 するためには 重 加 算 税 制 度 の 趣 旨 にかんがみれば 架 空 名 義 の 利 用 や 資 料 の 隠 匿 等 の 積 極 的 な 行 為 が 存 在 したことまで 必 要 であると 解 するのは 相 当 でなく 納 税 者 が 当 初 から 所 得 を 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 をした 上 その 意 図 に 基 づく 過 少 申 告 をした 場 合 には 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 が 満 たされると 解 すべきである と いう 考 え 方 が 示 され その 後 の 判 決 等 におい てこの 部 分 を 援 用 した 下 級 審 の 判 例 2 が 出 されている しかしながら 判 決 文 において その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 が 具 体 的 にいかなる 行 為 かが 示 されず また 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 として 過 少 申 告 に 力 点 を 置 いた 表 現 がされているところから 一 般 論 と していかなる 具 体 的 行 為 が 個 々の 事 例 で そ の 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 に 該 当 するか 明 確 でなく また 重 加 算 税 賦 課 の 要 件 として 従 来 の 判 例 において 確 立 して いた 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 することが 要 件 とされ 過 少 申 告 行 為 そのものは 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 ではない という 考 え 方 が 曖 昧 と なり さらに 所 得 を 過 少 に 申 告 する 意 図 と その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 とはいかなる 関 係 にあるかなどが 不 明 確 な 状 況 のもとで 過 少 申 告 の 意 図 と 具 体 的 に 何 を 指 すか 不 明 確 な 何 らかの 行 為 である そ の 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 が あれば 重 加 算 税 を 賦 課 し 得 るとの 考 え 方 は 条 文 や 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 や 過 去 の 判 例 か ら 勘 案 すると 疑 義 もあるので 条 文 の 規 定 等 の 観 点 から 重 加 算 税 賦 課 要 件 である 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となる 行 為 は 具 体 的 にいかなる 行 為 をいうのかを 明 らかにし 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 意 義 や 解 釈 を 検 討 することとした 2 取 引 の 開 始 から 申 告 書 が 提 出 されるま での 事 象 の 経 過 重 加 算 税 の 賦 課 において 具 体 的 にどの 行 為 が 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるかを 明 確 に 考 えるためには 所 得 発 生 の 原 因 となる 取 引 の 開 始 から 所 得 税 等 の 申 告 書 が 提 出 されるま での 経 過 を 所 得 発 生 原 因 事 実 とそれに 付 随 する 原 始 帳 票 や 帳 簿 の 作 成 との 関 係 をも 考 慮 しながら 概 観 しておくことが 有 用 である と 考 える 3 取 引 の 開 始 から 申 告 書 が 提 出 されるまで の 経 過 の 概 要 は 次 のとおりである 1 いろいろ 取 引 が 行 われ これらの 取 引 等 が 所 得 発 生 原 因 事 実 になる 2 所 得 発 生 原 因 事 実 があればその 事 実 を 証 明 するものとしての 請 求 書 領 収 書 伝 票 などの 書 類 が 通 常 残 る なお 書 類 が 残 らない 場 合 は 所 得 発 生 原 因 事 実 を 取 引 等 の 都 度 直 接 帳 簿 に 記 載 することになる 3 書 類 がある 場 合 は 後 に 請 求 書 領 収 書 伝 票 などを 基 に 帳 簿 を 作 成 する 4 所 得 税 の 青 色 申 告 者 や 法 人 税 の 場 合 であれば その 帳 簿 を 基 に 申 告 書 を 作 成 する 5 作 成 した 申 告 書 を 税 務 署 長 に 提 出 す る したがって 所 得 発 生 原 因 事 実 である 取 引 等 が 行 われれば その 事 実 は 必 ず 帳 簿 又 原 始 帳 票 たる 書 類 により 記 録 され 記 録 された 取 引 等 の 事 実 を 立 証 するその 帳 簿 等 を 基 に 申 告 書 が 作 成 される また 正 しい 課 税 標 準 又 は 税 額 等 は 税 務 調 査 等 を 通 じ 必 ず 記 録 され 帳 簿 又 は 原 始 帳 票 たる 書 類 という 証 拠 を 基 に 客 観 的 に 立 証 されることとなっており 帳 簿 又 は 原 始 帳 票 による 証 拠 がそろえば その 計 算 結 果 として 正 しい 課 税 標 準 又 は 税 額 等 は 機 械 的 に 算 出 95

される 仕 組 みになっている Ⅱ 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 意 義 ( 再 解 釈 )に ついての 検 討 の 手 順 重 加 算 税 が 賦 課 される 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるのは 具 体 的 にいかなる 行 為 をいうの か いいかえれば 過 少 申 告 行 為 そのものは 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるかという 問 題 につ いて 一 般 的 な 検 討 を 加 えた 上 で その 具 体 的 な 例 として 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 で 示 された 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 とされる 過 少 申 告 する 意 図 及 びその 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 意 義 及 びその 是 非 の 検 討 ( 再 解 釈 ) を 平 成 6 年 11 月 22 日 最 高 裁 第 三 小 法 廷 判 決 (いわゆる ことさら 申 告 の 判 決 4 ( 以 下 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 という ))での 考 えとの 関 連 も 考 慮 しつつ 次 の 観 点 から 検 討 を 加 え た 上 で 考 えることとしたい 1 重 加 算 税 が 賦 課 される 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるのは 具 体 的 にいかなる 行 為 かに ついての 一 般 的 な 検 討 (1) 条 文 の 規 定 からの 検 討 (2) 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 や 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 との 関 係 からの 検 討 (3) 過 去 の 判 例 からみた 検 討 (4) 重 加 算 税 が 賦 課 される 要 件 としての 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 対 象 についての 結 論 2 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 意 義 の 検 討 (1) 問 題 の 所 在 (2) 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 定 義 とそ の 性 格 イ 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がある 場 合 ロ 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 (3) 学 説 (4) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 概 要 (5) 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 の 概 要 (6) 平 成 7 年 日 最 高 裁 判 決 の 再 解 釈 (7) 結 論 Ⅲ 具 体 的 な 検 討 1 重 加 算 税 が 賦 課 される 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるのは 具 体 的 にいかなる 行 為 かに ついての 一 般 的 な 検 討 (1) 条 文 の 規 定 からの 検 討 イ 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 とな る 事 実 の 解 釈 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるものは 具 体 的 に 何 かを 条 文 5 に 則 して 考 察 すると 納 税 者 がその 国 税 の 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となるべき 事 実 の 全 部 又 は 一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し たところに 基 づき 納 税 申 告 書 を 提 出 したと き に 重 加 算 税 が 賦 課 されるとの 文 言 規 定 の 解 釈 として 課 税 標 準 又 は 税 額 等 とは 国 税 通 則 法 ( 以 下 通 則 法 という )19 条 1 項 によれば 同 法 2 条 6 号 のイからニまでに 掲 げる 事 項 をいい イからニまでに 掲 げる 事 項 とは 申 告 書 の 記 載 事 項 そのものであること から その 計 算 の 基 礎 となる 事 実 は 申 告 書 の 記 載 事 項 には 含 まれないものを 指 すと 考 えられる したがって 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 には 申 告 書 の 記 載 事 項 で ある 課 税 標 準 又 は 税 額 等 以 外 の 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 として の 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 が 該 当 すると 解 すべきであ る 6 そして 重 加 算 税 における 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるのは 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 であるから 隠 ぺ い 仮 装 の 対 象 は 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 帳 票 としての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 であり 課 税 標 準 又 は 税 額 等 は 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 外 とするの が 文 理 に 即 した 解 釈 として 相 当 であると 考 えられる ロ 脱 税 犯 と 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 の 相 違 か らの 検 討 これに 関 連 して 脱 税 犯 7 と 重 加 算 税 を 統 96

一 的 に 考 えるべきであるという 見 方 がある が 脱 税 犯 における 偽 りその 他 不 正 行 為 に より 税 額 を 免 れる という 税 額 そのものの 脱 税 を 問 題 とする 規 定 の 仕 方 と 税 額 そのもの ではなく 税 額 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 不 正 手 段 を 問 題 とする 重 加 算 税 の 規 定 の 仕 方 は 明 らかに 規 定 の 仕 方 が 異 なり また 脱 税 ( 税 額 をごまかすこと)を 阻 止 することを 目 的 とする 脱 税 犯 と 税 額 等 ではなく 過 少 申 告 ( 税 額 )の 基 礎 となる 事 実 の 隠 ぺい 又 は 仮 装 行 為 を 阻 止 することを 目 的 とする 重 加 算 税 の 趣 旨 は 異 なることを 踏 まえて 条 文 は 書 き 分 けられていることから 両 者 を 同 様 に (あるいは 混 同 して) 解 釈 する 判 例 や 学 説 が 見 受 けられるが 両 者 の 文 理 上 の 相 違 を 無 視 するもので 疑 問 といえる (2) 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 や 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 の 関 係 からの 検 討 イ 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 からの 検 討 (イ) 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 は その 所 得 を 基 礎 づける 事 実 を 隠 し 税 務 調 査 を 困 難 に するような 操 作 をすることを 防 止 し 真 実 の 追 究 を 困 難 ならしめる 行 為 を 防 止 す ることにあると 考 えられる 税 額 や 所 得 額 等 の 課 税 標 準 は 証 拠 に より 結 果 として 算 出 されるものであるが 計 算 の 前 提 として 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 帳 票 とし ての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 をその 証 拠 として 活 用 するものであり この 証 拠 の 部 分 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し 税 務 調 査 を 困 難 にし 正 しい 税 額 の 算 出 に 必 要 な 正 確 な 証 拠 入 手 を 困 難 にすることにこそ 重 加 算 税 の 立 法 趣 旨 があると 考 えるべき である その 理 由 は 正 確 な 帳 簿 及 び 帳 簿 等 の 証 拠 さえ 備 わっていれば たとえ 納 税 者 が 過 少 申 告 をしたとしても 証 拠 により 適 正 な 税 額 や 所 得 額 等 の 課 税 標 準 は 算 出 が 可 能 といえるからである また 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 典 型 例 とし て 挙 げられる 二 重 帳 簿 の 作 成 売 上 除 外 架 空 仕 入 れ 若 しくは 架 空 経 費 の 計 上 棚 卸 資 産 の 一 部 除 外 取 引 上 の 他 人 名 義 の 使 用 虚 偽 答 弁 証 拠 書 類 の 改 ざん 等 は いずれも 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 に 係 る 証 拠 の 部 分 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 するものが 例 示 されており 過 少 申 告 そのものに 対 する 例 は 例 示 されていないことからも 重 加 算 税 の 立 法 趣 旨 は 証 拠 の 部 分 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 することを 防 止 することにある ことが 覗 える (ロ) 重 加 算 税 の 立 法 趣 旨 において どうし て 基 礎 となる 事 実 と 課 税 標 準 又 は 税 額 等 とを 分 けるのかについては 課 税 標 準 又 は 税 額 等 を 隠 ぺい 仮 装 する 行 為 は 過 少 申 告 加 算 税 を 課 すことによって 制 裁 は 加 えられていると 考 えられるから 過 少 申 告 加 算 税 によってはいまだ 制 裁 が 加 え られていない 部 分 すなわち 基 礎 とな る 事 実 の 隠 ぺい 仮 装 に 対 して 過 少 申 告 加 算 税 の 上 乗 せである 重 加 算 税 を 課 すこととなる 8 いいかえれば 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 隠 ぺい 仮 装 に 対 しては 過 少 申 告 加 算 税 が 課 されているわけで 重 加 算 税 はこ の 過 少 申 告 以 外 の 上 乗 せ 分 という 性 格 を 有 している そこで 重 加 算 税 の 要 件 と しては 基 礎 となる 事 実 という 課 税 標 準 又 は 税 額 等 とは 異 なるものの 隠 ぺ い 仮 装 が 要 求 されることになると 考 え られる ロ 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 の 関 係 から の 検 討 重 加 算 税 は 過 少 申 告 加 算 税 に 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となるべき 事 実 の 隠 ぺい 又 は 仮 装 という 不 正 手 段 ( 特 別 事 由 )が 加 わ った 場 合 に 当 該 基 礎 となる 税 額 に 対 し 過 少 申 告 加 算 税 におけるよりも 重 い 一 定 比 率 を 乗 じて 得 られる 金 額 の 制 裁 を 課 す 97

ることとしたものであり 結 局 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 の 関 係 については 両 者 はその 過 少 申 告 加 算 税 という 性 格 を 有 す る 点 では 同 一 のものであり 過 少 申 告 加 算 税 と 重 加 算 税 の 唯 一 の 違 いは 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となるべき 事 実 に 対 する 不 正 手 段 ( 特 別 事 由 )が 加 わったかどうかにすぎ ないというのが 過 去 の 判 例 で 確 定 した 見 解 といえる 9 したがって 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 は 過 少 申 告 に 対 する 加 算 税 という 点 では 全 く 違 いがなく 重 加 算 税 は 過 少 申 告 加 算 税 に 不 正 手 段 ( 特 別 事 由 )が 加 わった 点 で 差 異 が 生 じるというこの 両 者 の 関 係 から も 過 少 申 告 とは 別 個 のものである 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 不 正 手 段 ( 特 別 事 由 )に こそ 重 加 算 税 賦 課 の 意 義 があることは 明 らかであるといえる ハ 以 上 のような 重 加 算 税 賦 課 の 立 法 趣 旨 や 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 の 関 係 を 考 えると 税 務 調 査 を 困 難 にする 対 象 として は 帳 簿 等 の 取 引 等 を 立 証 する 記 録 を 基 に 算 出 される 結 果 としての 計 数 である 税 額 や 所 得 額 等 の 課 税 標 準 を 対 象 とするので はなく 税 額 や 所 得 額 等 の 課 税 標 準 を 算 出 する 基 となる 証 拠 としての 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 を 対 象 とすべきであると 考 えるべきであ る (3) 過 去 の 判 例 からみた 検 討 イ 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 について 過 去 の 判 例 等 において 次 の 点 に 関 する 考 え 方 には 争 いがないものとして 確 定 されたものと 認 識 しうると 考 えられる 1 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺ い 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 し こ れに 合 わせた 過 少 申 告 がされたことを 要 するものである 2 故 意 を 要 するのは 事 実 の 隠 ぺい 又 は 仮 装 についてであり 過 少 申 告 について ではない 3 故 意 があるというためには 当 該 納 税 者 が 隠 ぺいし 又 は 仮 装 行 為 と 評 価 され るべき 客 観 的 事 実 を 意 図 的 に 実 現 した ことが 必 要 である 4 重 加 算 税 の 賦 課 は 行 政 上 の 制 裁 であ って 刑 事 責 任 を 定 めたものではないか ら その 手 段 としての 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 結 果 としての 過 少 申 告 の 事 実 とがあ れば 成 立 する また 重 加 算 税 は 手 段 行 為 結 果 その 間 の 因 果 関 係 の 全 てを 認 識 して 隠 ぺい 仮 装 行 為 に 及 んだ 場 合 に 初 めて 成 立 するというものではない ロ しかし 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たすか どうかについて ことさら 申 告 が 問 題 となった 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 と その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 が 問 題 となった 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 で 示 された 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 についての 考 え 方 は 従 来 の 判 例 とやや 趣 を 異 にすると 思 われ るので これらの 判 決 の 意 味 するところは 何 かについて 検 討 することとする なお 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 は 昭 和 53 年 から 昭 和 55 年 分 の 貸 金 業 者 の 所 得 税 に 係 わる 事 案 であり 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 は 昭 和 60 年 から 62 年 分 の 株 式 等 の 売 買 に よる 所 得 税 に 係 わる 事 案 である ハ 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 に 関 連 する 判 例 の 考 え 方 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるものは 具 体 的 に 何 かを 考 えるに 当 たって その 前 段 階 と してこれに 関 して 参 考 となる 過 去 の 判 例 で 示 された 考 え 方 を 整 理 してみることす る (イ) 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 定 義 について 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるものは 具 体 的 に 何 かを 考 えるために まず 隠 ぺい 仮 装 行 為 が 判 例 でどのように 定 義 づけ られているかをみることとする 隠 ぺい 仮 装 するとは 故 意 に 税 額 等 98

の 計 算 の 基 礎 となるべき 事 実 を 隠 匿 し 又 は 作 為 的 に 虚 偽 の 事 実 を 付 加 して 調 査 を 妨 げる 行 為 をいい 事 実 を 隠 ぺい す るとは 事 実 を 隠 匿 しあるいは 脱 漏 する ことを 事 実 を 仮 装 するとは 所 得 財 産 あるいは 取 引 上 の 名 義 を 装 う 等 事 実 を 歪 曲 することをいい いずれも 行 為 の 意 味 を 認 識 しながら 故 意 に 行 うことを 要 すると 解 すべきであるとの 考 えが 過 去 の 判 例 10 で 数 多 く 示 されている (ロ) 重 加 算 税 賦 課 要 件 としての 故 意 を 要 する 対 象 は 何 か 重 加 算 税 は 刑 事 犯 である 脱 税 犯 の 場 合 の 刑 事 罰 と 異 なり 行 政 上 の 制 裁 であ り 重 加 算 税 賦 課 に 関 し 故 意 を 要 する のは 事 実 の 隠 ぺい 又 は 仮 装 についてであ り 過 少 申 告 についてではないというの が 過 去 の 判 例 の 立 場 である これらのことは 過 去 の 最 高 裁 第 二 小 法 廷 判 例 ( 昭 和 62 年 5 月 8 日 判 決 11 )で 重 加 算 税 を 課 し 得 るためには 納 税 者 が 故 意 に 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 と なる 事 実 の 全 部 又 は 一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺい 仮 装 行 為 を 原 因 と して 過 少 申 告 を 発 生 したものであれば 足 りる 重 加 算 税 賦 課 に 関 し 過 少 申 告 の 認 識 ( 故 意 )は 必 要 ない などと 述 べられ ている (ハ) 隠 ぺいし 又 は 仮 装 行 為 に 対 する 故 意 と は 何 か 隠 ぺいし 又 は 仮 装 行 為 に 対 する 故 意 に 関 して 隠 ぺいし 又 は 仮 装 行 為 に 対 する 故 意 があるというためには 当 該 納 税 者 が 隠 ぺいし 又 は 仮 装 行 為 と 評 価 されるべ き 客 観 的 事 実 を 意 図 的 に 実 現 したことが 必 要 であるというのが 判 例 12 の 考 え 方 で ある (ニ) 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺ い 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 必 要 か 両 者 の 関 係 はいかにあるべきか 重 加 算 税 の 賦 課 に 当 たっては 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 し これに 合 わ せた 過 少 申 告 がされたことを 要 するもの であり 通 則 法 68 条 1 項 による 重 加 算 税 を 課 しえるためには 納 税 者 が 故 意 に 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 全 部 又 は 一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺい 仮 装 行 為 を 原 因 として 過 少 申 告 を 発 生 したものであれば 足 りるもの であり 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 過 少 申 告 の 関 係 については 両 者 は 原 因 と 結 果 の 関 係 であるというのが 過 去 の 判 例 13 で 確 立 された 考 え 方 である このように 重 加 算 税 の 賦 課 に 当 たって 過 去 の 判 例 では 過 少 申 告 行 為 と 隠 ぺ い 仮 装 行 為 は 別 個 のものとされ 前 者 が 結 果 で 後 者 が 原 因 となる 関 係 にあると いうのが 通 例 である (4) 重 加 算 税 が 賦 課 される 要 件 としての 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 対 象 についての 結 論 イ 重 加 算 税 の 規 定 は 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 を 所 得 計 算 の 基 礎 となる 事 実 とし 過 少 申 告 はその 結 果 であると 明 記 されており 過 少 申 告 そのものを 問 題 とする 脱 税 犯 や 更 正 の 除 斥 期 間 制 限 の 規 定 の 仕 方 と 文 章 的 に 区 別 した 記 述 とされていることから 文 理 解 釈 上 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 は 所 得 計 算 の 基 礎 となる 事 実 であり 過 少 申 告 は 対 象 とならないと 考 えるのが 相 当 である ロ 重 加 算 税 の 制 度 趣 旨 は その 所 得 を 基 礎 づける 事 実 を 隠 し 税 務 調 査 を 困 難 にする ような 操 作 をすることを 防 止 することで あり 所 得 計 算 の 前 提 としての 帳 簿 等 の 証 拠 の 部 分 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し 税 務 調 査 を 困 難 にすること いいかえれば 正 しい 税 額 の 算 出 に 必 要 な 正 確 な 証 拠 入 手 を 困 難 にすることにこそ 重 加 算 税 の 立 法 趣 旨 が あり 正 確 な 証 拠 の 結 果 として 算 出 される 過 少 申 告 そのものは 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 と 99

する 必 要 がないといえる 重 加 算 税 の 賦 課 に 当 たって 重 要 なのは 計 算 結 果 としての 所 得 税 の 額 や 課 税 標 準 額 ではなく 所 得 税 の 額 や 課 税 標 準 額 を 導 く 客 観 的 証 拠 としての 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 帳 票 としての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 であり これを 隠 ぺい 等 することによって 信 憑 性 のある 証 拠 を 危 うくすることを 防 ぐこと であるといえる ハ そこで 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 とは 明 確 に 区 別 して 考 えるべきである 前 者 は 脱 税 犯 や 更 正 の 除 斥 期 間 制 限 の 規 定 のよ うに 税 額 そのものの 歪 曲 を 問 題 視 するも のであるが 後 者 は 重 加 算 税 の 規 定 のよう に 税 額 そのものではなくその 算 出 の 基 礎 となる 事 実 の 歪 曲 を 問 題 視 するものであ り 両 者 はその 目 的 とするものが 一 義 的 に は 異 なるといえる ニ 重 加 算 税 と 過 少 申 告 加 算 税 の 関 係 につ いては 両 者 はその 過 少 申 告 加 算 税 という 性 格 を 有 する 点 では 同 一 のもの すなわち 過 少 申 告 の 点 では 違 いがないのであり 過 少 申 告 加 算 税 と 重 加 算 税 の 唯 一 の 違 いは 過 少 申 告 に 不 正 手 段 ( 特 別 事 由 )が 加 わっ たかどうか 税 額 そのものではなくその 算 出 の 基 礎 となる 事 実 に 対 する 歪 曲 が 加 わ ったかどうかという 違 いがあるのみであ るという 観 点 からも 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 は 所 得 計 算 の 基 礎 となる 事 実 であり 過 少 申 告 は 対 象 とならないと 考 えるべきである ホ 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 必 要 かについて 過 去 の 判 例 から 判 断 して 重 加 算 税 の 賦 課 の 要 件 として 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 し これに 合 わせた 過 少 申 告 がされたこ とを 要 すると 解 すべきであり また 故 意 を 要 するのは 基 礎 となる 事 実 の 隠 ぺい 又 は 仮 装 についてであり 過 少 申 告 について ではないというのが 過 去 の 判 例 で 確 定 さ れたものといえる へ 以 上 のことから 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 は 所 得 計 算 の 基 礎 となる 事 実 であり 過 少 申 告 は 対 象 とならないと 考 えるべきという 結 論 になる ト 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 は 所 得 計 算 の 基 礎 となる 事 実 ということとなり それは 基 本 的 には 所 得 発 生 原 因 事 実 そのものをいう と 解 すべきであるが 租 税 法 の 分 野 では 適 正 公 平 性 を 確 保 するため 客 観 性 のある 証 拠 による 税 額 等 の 立 証 を 要 する 観 点 から その 所 得 発 生 原 因 事 実 を 証 拠 付 けるもの としての 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 資 料 としての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 は 所 得 発 生 原 因 事 実 と 裏 表 の 関 係 にある と 認 識 しえることから 所 得 発 生 原 因 事 実 と 一 体 のものとして 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 と なると 解 すべきである しかし 所 得 税 の 額 や 課 税 標 準 額 ( 所 得 額 等 )は 所 得 発 生 原 因 事 実 の 結 果 として 算 出 されるものであるから 事 実 と 一 体 の ものと 考 えられず 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 と ならないと 考 えるのが 相 当 である チ 申 告 書 が 提 出 されるまでの 経 過 の 各 行 為 について 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 となるも のは 何 かを 考 察 すると 文 理 解 釈 上 前 記 Ⅰの2の1から3の 対 象 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 であ って 1から3を 基 に 算 出 した 結 果 という べき 税 額 や 所 得 額 などを 表 す4 5の 申 告 書 の 作 成 や 提 出 は 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 では ないという 結 論 になる リ 以 上 の 検 討 から 結 論 としては 隠 ぺい 仮 装 の 具 体 的 対 象 は 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 帳 票 と しての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 であり 過 少 申 告 行 為 そのものは 隠 ぺい 仮 装 の 対 100

象 とならないと 考 えるべきである Ⅳ 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 で 示 された その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 意 義 ( 解 釈 )の 検 討 1 問 題 の 所 在 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 にお いて 例 えば 真 実 の 所 得 と 異 なることを 知 りながら 所 得 金 額 の 一 部 をつまみ 出 して 過 少 な 所 得 金 額 を 記 載 した 納 税 申 告 書 を 提 出 する いわゆる つまみ 申 告 が 行 われた 場 合 などに これが 通 則 法 68 条 1 項 の 要 件 を 充 足 するか 否 かが 問 題 となる これに 関 連 して 注 目 すべき 判 決 として 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 及 び 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 が 出 され 最 高 裁 としてのこの 点 に 関 する 考 え 方 が 一 応 示 されたといえるので これらの 判 決 の 意 義 やその 文 言 をどう 解 釈 すべきかを 検 討 することとする 2 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 定 義 とその 性 格 これらの 判 決 はいずれも 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 における 重 加 算 税 賦 課 の 要 否 であるので まずその 前 段 階 として 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 とはいかなるもの かを 検 証 する (1) 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 定 義 とそ の 性 格 国 税 通 則 法 精 解 ( 平 成 16 年 改 訂 版 ) 14 に よれば 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 としては 事 実 の 隠 ぺいは 二 重 帳 簿 の 作 成 売 上 除 外 架 空 仕 入 れ 若 しくは 架 空 経 費 の 計 上 棚 卸 資 産 の 一 部 除 外 等 によるもの 事 実 の 仮 装 は 取 引 上 の 他 人 名 義 の 使 用 虚 偽 答 弁 等 その 他 証 拠 書 類 の 改 ざんが 挙 げられている これらの 行 為 はいずれも 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 に 対 し 隠 ぺい 仮 装 行 為 を 行 うものであり 過 少 申 告 に 対 し 隠 ぺい 仮 装 行 為 を 行 うものでは ない また 税 額 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 を 積 極 的 行 為 として 歪 曲 するものであるから 客 観 性 をもった 隠 ぺい 仮 装 の 事 実 として 立 証 が 容 易 である さらに これらの 行 為 は 税 額 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 を 積 極 的 に 隠 ぺ い 仮 装 するものであり 意 図 的 に 所 得 発 生 原 因 事 実 やその 証 拠 としての 帳 簿 及 び 請 求 書 等 を 歪 曲 するものであることから 隠 ぺ い 仮 装 行 為 の 目 的 であり 結 果 でもある 過 少 申 告 ( 脱 税 )の 意 図 が 推 認 できるといえる まとめると 重 加 算 税 賦 課 の 要 件 としての 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 は その 行 為 の 対 象 を 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 原 始 帳 票 とするものであり 過 少 申 告 を 対 象 とするも のではないこと これらの 行 為 は 帳 簿 の 改 ざ ん 等 積 極 的 行 為 なので 帳 簿 等 の 隠 ぺい 仮 装 である 立 証 が 容 易 であるであること 意 図 的 に 所 得 発 生 原 因 事 実 等 を 歪 曲 するものであ ることからその 目 的 である 過 少 申 告 ( 脱 税 ) の 意 図 が 推 認 できることに 特 徴 や 性 格 があ るといえる (2) 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 における 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がなく 真 実 の 所 得 と 異 なることを 知 りながら 所 得 金 額 の 一 部 をつまみ 出 して 過 少 な 所 得 金 額 を 記 載 した 納 税 申 告 書 を 提 出 する いわゆる つま み 申 告 が 行 われた 場 合 さらにもっと 一 般 的 には 原 始 帳 票 や 帳 簿 を 保 存 しないこと 原 始 帳 票 や 帳 簿 を 税 理 士 や 課 税 庁 へ 提 出 し ないあるいは 所 得 発 生 原 因 事 実 を 告 げない という 消 極 的 行 為 である 不 作 為 行 為 しかな い 場 合 にも 通 則 法 68 条 1 項 の 要 件 を 充 足 すると 考 えられるかが 問 題 となる 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 及 び 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 は 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 に 該 当 し これらの 場 合 でも 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たすのか それはどういう 条 件 を 充 足 すれば 可 能 かを 各 判 決 間 の 関 係 も 考 慮 し つつ 検 討 を 加 えていくこととする 101

3 学 説 (1) 学 説 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 にも 通 則 法 68 条 1 項 の 要 件 を 充 足 すると 考 えら れるかに 関 連 して 帳 簿 等 には 記 載 せず あ るいは 帳 簿 等 には 正 確 に 記 載 していても 申 告 書 の 内 容 を 偽 って 記 載 して 過 少 申 告 する 場 合 に 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たすか 否 か について 学 説 は 大 きく 2 つに 分 かれている 1 積 極 説 ( 品 川 芳 宣 教 授 ) 事 実 関 係 総 合 判 断 説 15 事 実 関 係 から 見 てその 不 申 告 や 虚 偽 申 告 が 課 税 を 免 れることを 意 図 して 作 為 的 に 行 われていると 認 定 できるとき には これを 一 つの 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 認 定 すべきであり 不 申 告 や 虚 偽 申 告 行 為 が 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 認 定 しえるか 否 かについては 通 則 法 68 条 の 立 法 趣 旨 所 得 税 法 上 の 記 帳 義 務 制 度 等 を 考 慮 し それらの 行 為 の 前 後 における 事 実 関 係 を 総 合 して 判 断 すべき 2 消 極 説 ( 碓 井 光 明 教 授 ) 一 般 的 な 記 帳 義 務 を 課 していない 今 日 においては 記 録 を 残 していないこと のみでは 隠 ぺいの 要 件 を 満 たしていな いものと 解 すべき (2) 学 説 に 対 する 個 人 的 意 見 申 告 行 為 そのものを 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 認 定 することについては 前 記 のとおり 条 文 の 文 理 や 制 度 趣 旨 及 び 過 去 の 判 例 の 考 え 方 か ら 勘 案 して 疑 問 が 残 るが 原 始 帳 票 や 帳 簿 を 保 存 しないこと 原 始 帳 票 や 帳 簿 を 税 理 士 や 課 税 庁 へ 提 出 しないあるいは 所 得 発 生 原 因 事 実 を 告 げないという 消 極 的 行 為 である 不 作 為 行 為 が 積 極 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 の 法 的 評 価 ができるどうかの 解 釈 として 国 税 通 則 法 68 条 の 立 法 趣 旨 等 を 考 慮 し それ らの 行 為 の 前 後 における 事 実 関 係 を 総 合 し て 判 断 すべきとする 点 については 積 極 説 に 賛 同 するところである 4 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 概 要 16 (1) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 イ 判 決 のポイント 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 として 過 少 申 告 する 意 図 及 びその 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 を 必 要 とした ロ 事 件 の 概 要 昭 和 60 年 から 62 年 分 の 所 得 について 確 定 申 告 したが 株 式 等 の 売 買 による 所 得 につ き 雑 所 得 として 申 告 すべきであるのに これ を 申 告 書 に 全 く 記 載 しなかった しかし 納 税 者 は 売 買 について 取 引 の 名 義 を 架 空 に したり その 資 金 の 出 納 のために 隠 れた 預 金 口 座 を 設 けたりするようなことはしなかっ た ハ 平 成 7 年 最 高 裁 の 判 決 要 旨 上 告 人 は 顧 問 税 理 士 や 証 券 会 社 の 担 当 者 から 注 意 を 受 けていたので 株 式 等 の 売 買 に よる 所 得 があった 場 合 の 課 税 要 件 を 十 分 に 知 っており また 売 買 による 各 年 の 所 得 の 額 も 認 識 していた しかし 上 告 人 は 売 買 による 所 得 を 雑 所 得 として 申 告 し 納 税 する つもりがなく その 計 算 すらしていなかった そして 税 理 士 から 課 税 要 件 を 満 たしてい れば 申 告 が 必 要 であると 何 度 も 念 を 押 され 所 得 の 有 無 について 質 問 を 受 け 資 料 の 提 示 を 求 められたにもかかわらず 確 定 的 な 脱 税 の 意 思 に 基 づいて 税 理 士 に 対 し 課 税 要 件 を 満 たす 所 得 はない 旨 を 答 え 他 の 所 得 に 関 する 資 料 を 交 付 しながら 株 式 等 の 取 引 に 関 する 資 料 を 全 く 示 さなかった 重 加 算 税 を 課 するためには 納 税 者 のした 過 少 申 告 行 為 そのものが 隠 ぺい 仮 装 に 当 た るというだけでは 足 りず 過 少 申 告 行 為 その ものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 し これに 合 わせた 過 少 申 告 がされ たことを 要 するものである しかし 重 加 算 税 制 度 の 趣 旨 にかんがみれば 架 空 名 義 の 利 用 や 資 料 の 隠 匿 等 の 積 極 的 な 行 為 が 存 在 し たことまで 必 要 であると 解 するのは 相 当 で 102

なく 納 税 者 が 当 初 から 財 産 を 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 をした 上 その 意 図 に 基 づ く 過 少 申 告 をした 場 合 には 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 が 満 たされると 解 すべきである これを 本 件 について 見 ると 上 告 人 は 3 ヵ 年 にわたって 株 式 等 の 売 買 による 前 記 多 額 の 雑 所 得 を 申 告 すべきことを 熟 知 しなが ら あえて 申 告 書 にこれを 全 く 記 載 しなかっ たのみならず 確 定 申 告 書 の 作 成 を 顧 問 税 理 士 に 依 頼 した 際 に 同 税 理 士 から その 都 度 同 売 買 による 所 得 の 有 無 について 質 問 を 受 け 資 料 の 提 出 も 求 められたにもかかわらず 確 定 的 な 脱 税 の 意 思 に 基 づいて 所 得 のある ことを 税 理 士 に 対 して 秘 匿 し 何 らの 資 料 も 提 供 することなく 同 税 理 士 に 過 少 な 申 告 を 記 載 した 確 定 申 告 書 を 作 成 させ これを 被 上 告 人 に 提 出 したというものである 右 によれば 上 告 人 は 当 初 から 所 得 を 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 をしたものであ るから その 意 図 に 基 づいて 上 告 人 のした 本 件 の 過 少 申 告 行 為 は 通 則 法 68 条 1 項 所 定 の 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たすものという べきである (2) 1 審 ( 平 成 5 年 3 月 29 日 神 戸 地 裁 判 決 ) 17 の 判 決 要 旨 原 告 は 申 告 しなければならないことを 熟 知 し 確 定 的 な 脱 税 の 意 思 に 基 づいて 税 理 士 に 所 得 を 隠 し 税 理 士 から 資 料 の 提 出 を 求 められたのに 提 出 せず その 所 得 部 分 を 脱 漏 させて ことさら 所 得 金 額 を 過 少 にした 虚 偽 の 内 容 の 申 告 書 を 税 理 士 に 作 成 させて 提 出 した 原 告 の 行 為 は その 所 得 を 基 礎 づける 事 実 を 隠 し その 真 相 の 追 究 を 困 難 にするもので 所 得 税 の 徴 収 を 納 税 者 にゆだねた 趣 旨 を 没 却 する 行 為 ということができるから 通 則 法 68 条 1 項 にいう 隠 ぺい 又 は 仮 装 行 為 に 該 当 する 税 理 士 は たんなる 履 行 補 助 者 にすぎない ものということはできず 税 理 士 が 適 正 な 納 税 義 務 の 実 現 を 図 るため 何 度 も 注 意 し 資 料 の 提 出 を 求 めたにもかかわらず 株 式 等 の 取 引 による 所 得 があったことを 隠 し その 部 分 に 該 当 する 資 料 を 提 出 しなかった 原 告 の 行 為 は 隠 ぺい 又 は 仮 装 行 為 に 該 当 する (3) 2 審 ( 平 成 6 年 6 月 28 日 大 阪 高 裁 判 決 ) 18 の 判 決 要 旨 確 定 的 な 脱 税 の 意 思 に 基 づいて 右 の 取 引 資 料 を 全 く 保 存 せず 税 理 士 から 資 料 の 提 出 を 求 められたのに 提 出 せず 自 己 の 株 式 等 の 売 買 により 所 得 があったことを 隠 匿 し その 所 得 部 分 を 脱 漏 させて ことさら 所 得 金 額 を 過 少 にした 虚 偽 の 内 容 の 申 告 書 を 税 理 士 に 作 成 させて 提 出 させた( 少 なくとも 同 条 項 の 規 定 にいう 事 実 の 隠 ぺい をした) 行 為 は 隠 ぺい 又 は 仮 装 行 為 に 該 当 する 通 則 法 68 条 1 項 にいう 隠 ぺい 又 は 仮 装 行 為 には 必 ずしも 積 極 的 に 税 務 調 査 を 困 難 に するような 操 作 をすることを 要 しない 19 5 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 の 概 要 (1) 事 件 の 概 要 納 税 者 は サラリーマン 金 融 業 を 営 む 白 色 申 告 者 で 昭 和 39 年 ころから 貸 金 業 開 始 50 年 ころからは 店 舗 を 拡 充 し 全 国 に 15 店 舗 ( 提 出 資 料 の 10 店 舗 より 多 い)を 有 するよ うになり 相 当 な 経 済 活 動 を 行 っていたが 昭 和 53 年 から 昭 和 55 年 分 の 所 得 税 を 適 正 に 申 告 しなかった (2) 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 要 旨 被 上 告 人 は 会 計 帳 簿 類 や 取 引 記 録 等 によ り 自 らの 事 業 規 模 を 正 確 に 把 握 していたも のと 認 められるにもかかわらず 確 定 申 告 に おいて 3 年 間 にわたり 最 終 申 告 に 係 る 総 所 得 金 額 の 約 3%に 過 ぎない 額 を 申 告 したばか りでなく その 後 2 回 ないし 3 回 にわたる 修 正 申 告 を 経 た 後 初 めて 飛 躍 的 に 多 額 の 最 終 申 告 をするに 至 っているのである しかも 確 定 申 告 後 の 税 務 調 査 に 際 して 真 実 よりも 103

少 なく 店 舗 数 を 記 載 した 本 件 資 料 を 提 出 し ているが それによって 昭 和 54 年 分 の 総 所 得 金 額 を 計 算 すると 損 失 しか 算 出 されない 結 果 となり 本 件 資 料 の 内 容 は 虚 偽 のもので あるといわざるを 得 ない 右 のとおり 被 上 告 人 は 真 実 の 所 得 金 額 を 隠 ぺいする 態 度 行 動 をできる 限 り 貫 こう としているのであって 申 告 当 初 から 真 実 の 所 得 金 額 を 隠 ぺいする 意 図 を 有 していた ことはもちろん 税 務 調 査 があれば 更 に 隠 ぺいのための 具 体 的 工 作 を 行 うことも 予 定 していたことも 明 らかといわざるを 得 ない 以 上 のような 事 情 からすると 被 上 告 人 は 本 件 確 定 申 告 の 時 点 において 白 色 申 告 のた め 当 時 帳 簿 の 備 付 け 等 につきこれを 義 務 付 ける 税 法 上 の 規 定 がなく 真 実 の 所 得 の 調 査 解 明 に 困 難 が 伴 う 状 況 を 利 用 し 真 実 の 所 得 金 額 を 隠 ぺいしようという 確 定 的 な 意 図 の 下 に 必 要 に 応 じ 事 後 的 にも 隠 ぺいのための 具 体 的 工 作 を 行 うことも 予 定 しつつ 会 計 帳 簿 類 から 明 らかに 算 出 し 得 る 所 得 金 額 の 大 部 分 を 脱 漏 し 所 得 金 額 をことさら 過 少 に 記 載 した 内 容 虚 偽 の 確 定 申 告 書 を 提 出 したこ とは 明 らかである したがって 本 件 確 定 申 告 書 は 単 なる 過 少 申 告 行 為 にとどまるもの でなく 仮 装 隠 ぺいに 基 づき 納 税 申 告 書 を 提 出 した 場 合 に 当 たる (3) 1 審 ( 平 成 4 年 3 月 23 日 京 都 地 裁 判 決 ) 20 の 要 旨 証 拠 書 類 の 廃 棄 は 不 自 然 であり 最 終 修 正 との 格 差 が 極 めて 大 きい 確 定 申 告 後 の 調 査 において 会 計 帳 簿 類 の 一 部 を 秘 匿 して 提 出 せず 提 出 した 利 息 収 入 明 細 書 は その 収 入 の 一 部 を 隠 ぺいし 過 少 に 記 載 されていた これらの 事 実 を 合 わせ 考 え ると 原 告 は 本 件 確 定 申 告 の 提 出 前 に 会 計 帳 簿 類 等 に 工 作 を 加 える 等 して 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 の 基 礎 となる 事 実 の 一 部 を 隠 ぺ いし これに 基 づき 過 少 な 本 件 確 定 申 告 書 を 提 出 した 事 実 を 推 認 することができる (4) 控 訴 審 ( 平 成 5 年 4 月 27 日 大 阪 高 裁 判 決 ) 21 控 訴 審 は 1 審 判 決 を 取 り 消 し 控 訴 人 の 請 求 を 認 容 した 判 決 要 旨 は 次 のとおりである 重 加 算 税 を 課 すためには 納 税 者 が 故 意 に 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 の 基 礎 となる 事 実 の 一 部 を 隠 ぺいし 右 行 為 に 基 づいて 過 少 の 結 果 が 発 生 することが 必 要 であり 事 実 として の 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 過 少 の 納 税 申 告 書 の 提 出 行 為 とは 別 々であることが 必 要 であると ともに 右 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 過 少 申 告 行 為 が 存 在 しているだけで 重 加 算 税 の 要 件 を 充 足 するものではなく 右 両 者 の 間 に 因 果 関 係 が 存 在 することが 必 要 である 正 しい 総 所 得 金 額 と 申 告 者 の 申 告 額 との 間 の 格 差 のみによって ことさら 申 告 の 行 為 に 該 当 するということはできず その 他 に 申 告 者 の 過 少 申 告 に 至 った 経 緯 等 の 事 情 を 総 合 判 断 して その 妥 当 性 を 判 断 すべきであ る 過 少 申 告 があってもこれだけでは 重 加 算 税 賦 課 の 要 件 を 充 足 しない 控 訴 人 は 正 常 な 会 計 帳 簿 類 を 作 成 しており 控 訴 人 が 会 計 帳 簿 類 を 破 棄 したのは 被 控 訴 人 側 において 控 訴 人 の 本 件 抗 争 年 度 の 収 入 支 出 の 額 を 控 訴 人 が 推 測 できた 後 である その 他 の 認 定 事 実 を 考 慮 すると 控 訴 人 が 各 確 定 申 告 及 び 各 修 正 申 告 において 過 少 な 総 所 得 金 額 を 申 告 した 行 為 がことさらな 過 少 申 告 であるとい うことはできない さらに 過 少 な 申 告 が 隠 ぺい 仮 装 の 行 為 による 不 正 な 経 理 に 基 づ くものであると 認 めるに 足 りる 証 拠 もない ( 以 下 は 確 定 申 告 期 限 後 に 提 出 した 資 料 等 についての 判 断 部 分 の 要 旨 ) 虚 偽 の 内 容 の 記 載 が 含 まれる 文 書 である 本 件 資 料 と 修 正 申 告 書 の 記 載 内 容 とは 直 接 の 関 連 性 がない 隠 ぺい 仮 装 の 行 為 の 存 否 は 確 定 申 告 書 提 出 時 を 中 心 に 判 断 すべきであって 右 期 限 後 104

の 隠 ぺい 仮 装 行 為 は 確 定 申 告 書 提 出 時 にお ける 隠 ぺい 仮 装 の 行 為 の 存 否 を 推 認 させる 一 間 接 事 実 となるに 過 ぎない 本 件 各 係 争 年 度 の 各 確 定 申 告 時 に 具 体 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 が 存 在 し これに 基 づい て 確 定 申 告 がなされたとの 主 張 立 証 はなく 右 認 定 事 実 は 各 時 点 における 具 体 的 な 隠 ぺ い 仮 装 行 為 の 存 在 を 認 める 間 接 事 実 ともな らない 本 件 資 料 の 提 出 は 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たさない 6 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 再 解 釈 (1) 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 に 対 する 基 本 的 な 見 解 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 としての 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 対 象 の 検 討 における 前 述 の 結 論 (1 の (4) 参 照 )のとおり 重 加 算 税 の 賦 課 には 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 する 必 要 があり さらに 過 少 申 告 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 結 果 としての 過 少 申 告 が されたことを 要 すると 解 すべきであり また 隠 ぺい 仮 装 の 具 体 的 対 象 は 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 帳 票 としての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 であり 過 少 申 告 行 為 そのものは 隠 ぺい 仮 装 の 対 象 とならないと 考 えるべきである (2) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 に 対 する 概 括 的 意 見 イ 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 で 重 加 算 税 を 課 す るためには 納 税 者 のした 過 少 申 告 行 為 そ のものが 隠 ぺい 仮 装 に 当 たるというだけ では 足 りず 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 し これに 合 わせた 過 少 申 告 がされたこと を 要 するものである とし 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 過 少 申 告 は 別 のものである 必 要 があるという 過 去 の 判 例 とも 整 合 性 のあ る 考 え 方 を 採 用 する 一 方 で 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 として 過 少 申 告 する 意 図 及 びその 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 を 要 するとし その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 とは 具 体 的 にどのような 行 為 かを 示 さないまま 過 少 申 告 の 点 を 強 調 した 表 現 は 基 礎 事 実 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 過 少 申 告 の 区 別 を 不 明 確 にするもの であり 過 少 申 告 の 面 が 強 調 された 結 果 税 額 をごまかす( 過 少 に 申 告 する) 脱 税 犯 における 要 件 と 過 少 申 告 ではなく 過 少 申 告 の 基 となる 事 実 を 隠 ぺい 仮 装 する 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 混 同 する 恐 れが 生 じ 正 確 性 を 欠 くものとなったといえるのでは ないか ロ 条 文 の 規 定 や 立 法 趣 旨 や 過 去 の 判 例 か らみた 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 としての 隠 ぺ い 仮 装 行 為 の 対 象 の 基 本 的 考 え 方 からす ると 特 段 の 行 為 の 対 象 は 所 得 税 の 額 や 課 税 標 準 額 を 導 く 客 観 的 証 拠 としての 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 資 料 としての 請 求 書 領 収 書 な どの 書 類 であるべきであり 所 得 税 の 額 や 課 税 標 準 額 はその 対 象 外 とすべきである が 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 を した 上 その 意 図 に 基 づく 過 少 申 告 をした 場 合 には 重 加 算 税 賦 課 が 満 たされると 解 すべきである とした 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 は 結 果 部 分 である 過 少 申 告 の 意 図 に 力 点 がおかれ 特 段 の 行 動 も 過 少 申 告 の 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 るものいいかえれば 過 少 申 告 の 意 図 を 体 現 したものと 解 される ものとなり 明 確 に 区 別 すべき 過 少 申 告 と 過 少 申 告 の 基 となる 事 実 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 の 違 いが 曖 昧 となったことは 過 少 申 告 以 外 の 客 観 的 な 証 拠 部 分 の 歪 曲 排 除 にそ の 趣 旨 がある 重 加 算 税 の 解 釈 としては 疑 問 が 残 る ハ 脱 税 犯 では 税 額 をごまかす( 過 少 に 申 告 する)ことを 防 ぐことが 基 本 的 に 重 要 な 刑 事 罰 であり その 手 段 としての 不 正 な 行 105

為 は 税 額 をごまかすことの 修 飾 語 にすぎ ない 一 方 重 加 算 税 では 過 少 申 告 はそ れが 意 図 的 なものであれ 過 失 によるもの であれ 過 少 申 告 そのものはさほど 重 要 で はなく( 過 少 申 告 そのものは 過 少 申 告 加 算 税 によって 制 裁 済 みである) 過 少 申 告 ( 所 得 )を 基 礎 づける 証 拠 事 実 を 隠 すことにそ の 本 質 がある 行 政 罰 である 重 加 算 税 の 本 質 は 過 少 申 告 ではなく 過 少 申 告 の 基 となる 事 実 を 隠 ぺい 仮 装 する ことにあり 条 文 上 の 文 言 も 異 なるこの 両 者 を 混 同 すべきではない 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 は 処 罰 要 件 として の 詐 欺 その 他 不 正 の 行 為 と 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 とをできるだけ 近 づけようとする 意 図 があったのではないかと 理 解 できる が 両 者 は 条 文 の 規 定 や 立 法 趣 旨 を 異 にす ることから 両 者 を 同 一 化 することは 疑 問 であるといえる ニ 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 位 置 づけとして は 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 は 平 成 6 年 最 高 裁 判 決 の 解 決 の 方 向 が 誤 っているとして 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 必 要 なのだとい うことをあえて 指 摘 し 典 型 的 な 基 礎 とな る 事 実 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 ではないから それと 評 価 できるような 特 段 の 行 為 が 必 要 であるとした 点 では 正 しいといえるが 重 加 算 税 賦 課 要 件 として 過 少 申 告 の 意 図 という 主 観 的 要 件 を 要 求 し 過 少 申 告 の 意 図 が 外 部 から 覗 える 特 段 の 行 動 があれば 重 加 算 税 を 賦 課 しうるとした 点 では 過 少 申 告 の 意 図 が 外 部 から 覗 える 特 段 の 行 動 とは 何 を 指 すか 明 確 にされておらず 事 案 における 特 段 の 行 動 として 推 認 でき る 行 為 は 税 理 士 に 対 する 所 得 の 不 告 知 や その 証 拠 書 類 の 不 提 出 などという 消 極 的 行 為 である 不 作 為 行 為 であることからす ると これらの 不 作 為 行 為 を 過 少 申 告 の 意 図 が 外 部 から 覗 える 特 段 の 行 動 といえる かも 疑 問 である (3) 判 決 で 示 された 個 別 の 部 分 に 対 する 意 見 イ その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 についての 疑 問 納 税 者 が 当 初 から 財 産 を 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 をした 上 その 意 図 に 基 づく 過 少 申 告 をした 場 合 という 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 解 釈 については その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 とは 特 段 の 行 動 から 税 額 を 過 少 にするという 意 図 が 読 み 取 れるというように 一 般 的 に 理 解 されていると 思 われるが 特 段 の 行 動 につき 事 案 における 具 体 的 な 行 動 として 推 測 しえる 税 理 士 に 対 する 所 得 の 不 告 知 やその 証 拠 書 類 の 不 提 出 という 消 極 的 行 為 は 税 額 を 過 少 にするという 意 図 がある か 否 かで 異 ならない 外 見 的 には 不 作 為 行 為 である 税 理 士 に 対 する 所 得 の 不 告 知 やその 証 拠 書 類 の 不 提 出 などという 消 極 的 行 為 は 不 作 為 行 為 という 行 為 それ 自 体 では 意 図 的 である 場 合 と 意 図 的 でなくうっかりした 場 合 と 全 く 同 じであり また 脱 税 の 意 図 が 推 認 で きる 積 極 的 な 帳 簿 の 改 ざんと 違 って 不 作 為 行 為 なるがゆえに 不 作 為 行 為 からは 脱 税 の 意 図 の 推 認 もできないと 思 われる 過 少 申 告 の 意 図 とは 所 得 計 算 等 の 基 礎 となる 事 実 を 歪 曲 する 行 為 における 内 心 の 意 思 としての 目 的 であり 典 型 的 な 隠 ぺ い 仮 装 行 為 のような 積 極 的 な 行 為 の 場 合 には 過 少 申 告 の 意 図 は 推 認 できるといえ るが 特 段 の 行 動 が 不 作 為 行 為 である 場 合 にはその 外 見 から 過 少 申 告 の 意 図 は 推 認 できない そこで 過 少 申 告 の 意 図 は 特 段 の 行 動 と は 別 個 独 立 に 認 定 されるべきものではな いかという 疑 問 がわく 不 作 為 行 為 の 場 合 における 過 少 申 告 の 106

意 図 の 存 在 は 消 極 的 行 為 である 税 理 士 に 対 する 所 得 発 生 原 因 事 実 の 不 告 知 や 原 始 資 料 の 不 提 出 という 特 段 の 行 動 とは 別 に 課 税 対 象 となる 取 引 内 容 に 精 通 し 所 得 の 発 生 を 十 分 認 識 しているのに 適 正 な 申 告 をしないとか あるいは 申 告 後 の 虚 偽 答 弁 などにより 適 正 な 所 得 税 額 をごまかそう とした 等 の 事 実 に 基 づき 判 断 されるべき ものである ロ その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 定 義 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 でいう その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 に 対 応 す べき 一 般 的 な 場 合 の その 意 図 を 外 部 から も 覗 い 得 る 行 動 とは 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 のような 行 為 を 指 すべきものと 考 えられ これらの 行 為 は 積 極 的 な 行 為 と して 意 図 的 に 証 拠 としての 帳 簿 等 を 歪 曲 するものであるゆえに 行 為 の 目 的 である 過 少 申 告 の 意 図 も 推 認 できるものである しかし 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 とい えない 場 合 における 客 観 的 に 表 現 される 行 動 は 税 理 士 に 対 する 所 得 の 不 告 知 やそ の 証 拠 書 類 の 不 提 出 というような 消 極 的 行 為 であり このような 消 極 的 行 為 だけで は 積 極 的 な 二 重 帳 簿 のような 隠 ぺい 仮 装 行 為 といえないが これらの 不 作 為 行 為 と は 別 に 過 少 申 告 の 意 図 が 認 定 されれば こ れらの 不 作 為 行 為 が 過 少 申 告 の 意 図 のも とに 意 図 的 に 証 拠 書 類 等 を 提 出 しなかっ たものと 法 的 に 評 価 され 積 極 的 な 行 為 で ある 証 拠 書 類 等 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 法 的 に 同 等 と 評 価 できるものとなることが 考 えられる そこで その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 解 釈 としては 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 がない 場 合 における 税 理 士 に 対 する 証 拠 書 類 等 の 不 提 出 等 の 行 為 が 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 である その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 行 動 と 同 等 と 法 的 評 価 ができる 場 合 における 証 拠 書 類 等 の 不 提 出 等 の 消 極 的 行 為 ( 不 作 為 行 為 ) を 表 現 するものを 指 すと 解 すべきである ハ 証 拠 書 類 等 の 不 提 出 等 の 消 極 的 行 為 ( 不 作 為 行 為 )が 隠 ぺい 仮 装 行 為 に 該 当 するた めの 要 件 (イ) 重 加 算 税 の 賦 課 の 要 否 に 当 たっては 不 作 為 行 為 である 特 段 の 行 動 が 積 極 的 に 税 額 の 計 算 根 拠 となる 帳 簿 や 書 類 や 取 引 事 実 を 隠 ぺい 仮 装 するものと 法 的 に 同 等 と 評 価 できるかどうかが 肝 要 で ある (ロ) 税 理 士 に 対 し 所 得 を 告 げないあるい は 原 始 資 料 を 提 出 しないという 消 極 的 行 為 ( 不 作 為 行 為 )が 積 極 的 な 典 型 と しての 所 得 発 生 原 因 事 実 や 原 始 資 料 の 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 に 評 価 できるか について 消 極 的 行 為 とは 別 個 に 認 定 さ れる 過 少 に 申 告 する 意 図 がある 場 合 に は この 消 極 的 行 為 は 単 なる 所 得 の 不 告 知 や 資 料 の 不 提 出 にとどまるものでは なく 過 少 申 告 の 意 図 ( 脱 税 の 意 図 )と いう 目 的 をもって 意 図 的 に 所 得 発 生 原 因 事 実 を 告 げないあるいは 原 始 資 料 を 提 出 しないと 認 定 でき 積 極 的 な 事 実 や 資 料 の 隠 ぺい 行 為 等 と 法 的 に 同 等 なも のと 評 価 され 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 充 たすと 考 えられる ここで 過 少 に 申 告 す る 意 図 の 存 在 は 消 極 的 行 為 を 積 極 的 行 為 と 法 的 に 同 等 の 価 値 に 評 価 しえるか について 有 力 な 判 断 材 料 を 提 供 するも のといえる (ハ) 税 理 士 に 対 し 原 始 資 料 や 帳 簿 等 を 提 出 しない(ロ)の 行 為 以 外 の 消 極 的 行 為 ( 不 作 為 行 為 )である 原 始 資 料 や 帳 簿 を 保 存 しないことについても これらの 行 為 と は 別 個 に 認 定 される 不 作 為 行 為 の 目 的 である 客 観 的 に 立 証 された 過 少 申 告 の 意 図 ( 脱 税 の 意 図 )という 主 観 的 要 件 が 加 わる 場 合 には これらの 不 作 為 行 為 は 107

過 少 申 告 の 意 図 ( 脱 税 の 意 図 )という 目 的 をもって 意 図 的 に 原 始 帳 票 や 帳 簿 を 保 存 しなかったと 法 的 に 評 価 でき 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 と 評 価 しう るときには 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 た すと 考 えられるのではないか (4) 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 の 再 解 釈 イ その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 の 解 釈 としては 特 段 の 行 動 は 消 極 的 行 為 である 不 作 為 行 為 を 指 し それだけ では 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 判 断 できないが 消 極 的 行 為 とは 別 個 に 過 少 に 申 告 する 意 図 が 認 定 され この 消 極 的 行 為 が 積 極 的 行 為 である 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 と 判 断 さ れる 場 合 には 特 段 の 行 動 である 消 極 的 行 為 が 過 少 申 告 の 意 図 ( 正 確 には 過 少 申 告 を 目 的 とした 所 得 発 生 原 因 事 実 の 不 告 知 や 原 始 資 料 の 不 提 出 の 意 図 )を 外 部 からも 覗 い 得 るものとして 客 観 性 を 有 するものと なり 積 極 的 行 為 である 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 の 行 為 ありとして 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たすと 考 えられる ロ 事 案 に 即 して 考 えると 税 理 士 に 対 し 株 式 等 の 取 引 による 所 得 があったことを 隠 し その 部 分 に 該 当 する 資 料 を 提 出 しなか った 消 極 的 行 為 である 不 作 為 行 為 である 納 税 者 の 行 為 の 評 価 については 不 作 為 行 為 とは 別 個 に 客 観 的 に 過 少 申 告 の 意 図 が 認 定 されうる 本 事 案 においては これらの 行 為 は 積 極 的 行 為 である 客 観 的 証 拠 とし ての 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 帳 簿 作 成 の 基 となる 原 始 資 料 としての 請 求 書 領 収 書 などの 書 類 を 隠 ぺい 仮 装 した 行 為 と 法 的 に 同 等 に 評 価 できるといえる なお 税 理 士 に 対 する 答 弁 で 株 式 等 の 取 引 による 所 得 はありません という 発 言 については 所 得 そのものではなく 株 式 等 の 取 引 による 所 得 が 発 生 するような 取 引 事 実 もなく 株 式 等 の 取 引 による 所 得 に 関 する 資 料 もないという 趣 旨 と 解 釈 して 所 得 の 背 後 にある 客 観 的 証 拠 としての 所 得 発 生 原 因 事 実 や 原 始 資 料 としての 書 類 を 隠 ぺい 仮 装 した 行 為 と 法 的 に 同 等 な 行 為 として 隠 ぺい 仮 装 行 為 に 該 当 すると 判 断 しえたのではないかと 考 えられる 22 重 加 算 税 の 賦 課 における 要 点 は 税 理 士 に 対 し 正 しい 税 額 や 所 得 額 を 告 知 しない ことではなく 所 得 の 背 後 にある( 所 得 計 算 の 基 礎 となる) 所 得 発 生 原 因 事 実 を 告 げ ないあるいは 原 始 資 料 を 提 出 しないこと が 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 に 評 価 できるかどうかにあるからである 7 結 論 結 論 的 には 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 が ない 場 合 の 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 としては 過 少 申 告 行 為 とは 別 に 原 始 資 料 や 帳 簿 を 税 理 士 や 課 税 庁 へ 提 出 しない 等 の 不 作 為 行 為 で あるいわば 特 段 の 行 動 の 存 在 があり この 不 作 為 行 為 の 法 的 評 価 として この 不 作 為 行 為 とは 別 個 に 客 観 的 に 過 少 申 告 の 意 図 が 認 定 されることにより この 不 作 為 行 為 が 意 図 的 になされたといえることに 加 え 不 作 為 行 為 が 過 少 申 告 の 意 図 を 目 的 としてもったもの すなわち その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 として 客 観 性 を 有 するものと 評 価 され 要 すれば この 不 作 為 行 為 が 典 型 的 な 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 同 等 と 評 価 されることが 必 要 であると 考 えられる その 際 に 不 作 為 行 為 が 隠 ぺい 仮 装 行 為 といえるかどうか 判 断 する 対 象 は 前 記 Ⅲ 1(4)チのとおり 前 記 Ⅰの 2 の1から3の 対 象 所 得 発 生 原 因 事 実 や 帳 簿 及 び 請 求 書 領 収 書 などの 原 始 書 類 であって 1から3を 基 に 算 出 した 結 果 というべき 税 額 や 所 得 額 など を 表 す4 5の 申 告 書 の 作 成 や 提 出 ではない 補 足 平 成 6 年 最 高 裁 の 判 決 においては 会 計 帳 簿 類 から 明 らかに 算 出 し 得 る 所 得 金 額 の 大 部 分 を 脱 漏 し 所 得 金 額 をことさら 過 少 に 記 108

載 した 内 容 虚 偽 の 確 定 申 告 書 を 提 出 したこ とをもって 仮 装 隠 ぺいに 基 づき 納 税 申 告 書 を 提 出 した 場 合 に 当 たるとしたが 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 としては 過 少 申 告 そのものとは 別 に 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 仮 装 隠 ぺい 行 為 が 必 要 であり また 仮 装 隠 ぺい 行 為 の 対 象 は 過 少 申 告 そのものでなく その 計 算 の 基 礎 となる 事 実 であるという 過 去 の 判 例 と 考 え を 異 にするものであり 脱 税 犯 の 要 件 と 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 混 同 するもので 妥 当 では ないと 考 えるが 確 定 的 な 脱 税 の 意 図 が 別 途 認 定 しえた 本 事 案 において 確 定 申 告 後 の 調 査 において 会 計 帳 簿 類 の 一 部 を 秘 匿 して 提 出 せず 提 出 した 利 息 収 入 明 細 書 は その 収 入 の 一 部 を 隠 ぺいし 過 少 に 記 載 されていた 認 定 事 実 からすると 確 定 申 告 前 にも 会 計 帳 簿 類 の 不 提 出 という 不 作 為 行 為 や 原 始 帳 票 の 不 実 記 載 の 行 為 の 存 在 を 推 認 することが でき これらの 行 為 を 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 で いう 特 段 の 行 動 ととらえることも 可 能 であ り 所 得 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 仮 装 隠 ぺい 行 為 に 該 当 するとして 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 満 たすと 判 断 できたのではないか 1 平 成 7 年 最 高 裁 判 決 ( 民 集 49 巻 4 号 1193 頁 ) の 関 連 部 分 のみ 抜 粋 重 加 算 税 を 課 するためには 納 税 者 のした 過 少 申 告 行 為 そのものが 隠 ぺい 仮 装 に 当 たるという だけでは 足 りず 過 少 申 告 行 為 そのものとは 別 に 隠 ぺい 仮 装 と 評 価 すべき 行 為 が 存 在 し これに 合 わせた 過 少 申 告 がされたことを 要 するもので ある しかし 重 加 算 税 制 度 の 趣 旨 にかんがみれ ば 架 空 名 義 の 利 用 や 資 料 の 隠 匿 等 の 積 極 的 な 行 為 が 存 在 したことまで 必 要 であると 解 するのは 相 当 でなく 納 税 者 が 当 初 から 所 得 を 過 少 に 申 告 することを 意 図 し その 意 図 を 外 部 からも 覗 い 得 る 特 段 の 行 動 をした 上 その 意 図 に 基 づく 過 少 申 告 をした 場 合 には 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 が 満 た されると 解 すべきである 2 横 浜 地 裁 判 決 平 成 11 年 4 月 12 日 ( 税 資 242 号 86 頁 ) 東 京 裁 判 決 平 成 14 年 2 月 6 日 ( 税 資 252 号 86 頁 ) 東 京 裁 判 決 平 成 16 年 1 月 30 日 ( 訟 務 月 報 51 巻 8 号 2183 頁 ) 東 京 裁 判 決 平 成 17 年 1 月 28 日 ( 判 例 タイムズ 1204 号 171 頁 ) 東 京 裁 判 決 平 成 17 年 7 月 28 日 ( 平 成 15 年 ( 行 ウ) 第 379 号 第 614 号 ) 名 古 屋 裁 判 決 平 成 17 年 11 月 24 日 ( 判 例 タイムズ 1204 号 114 頁 ) 3 訟 務 月 報 平 成 8 年 1 月 第 42 巻 第 1 号 別 冊 訟 務 座 談 会 227 頁 以 下 4 民 集 48 巻 7 号 1379 頁 5 国 税 通 則 法 68 条 第 1 項 は 過 少 申 告 加 算 税 の 規 定 に 該 当 する 場 合 において 納 税 者 がその 国 税 の 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となるべ き 事 実 の 全 部 又 は 一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺいし 又 は 仮 装 したところに 基 づき 納 税 申 告 書 を 提 出 していたときは 当 該 納 税 者 に 対 し 重 加 算 税 を 賦 課 する 旨 規 定 している 6 訟 務 月 報 平 成 8 年 1 月 第 42 巻 第 1 号 別 冊 訟 務 座 談 会 225 頁 以 下 7 所 得 税 法 238 条 は 偽 りその 他 不 正 の 行 為 に より 確 定 所 得 申 告 に 係 る 所 得 税 の 額 につき 所 得 税 を 免 れ 又 は 純 損 失 の 繰 戻 しによる 還 付 の 規 定 による 所 得 税 の 還 付 を 受 けた 者 は 5 年 以 下 の 懲 役 若 しくは 5 百 万 円 以 下 の 罰 金 等 に 処 する 旨 規 定 している 8 訟 務 月 報 平 成 8 年 1 月 第 42 巻 第 1 号 別 冊 訟 務 座 談 会 の 発 言 9 最 高 裁 第 一 小 法 廷 昭 和 58 年 10 月 27 日 判 決 国 税 通 則 法 65 条 の 規 定 による 過 少 申 告 加 算 税 と 同 法 68 条 1 項 の 規 定 による 重 加 算 税 とは と もに 申 告 納 税 方 式 による 国 税 について 過 少 な 申 告 を 行 った 納 税 者 に 対 する 行 政 上 の 制 裁 として 賦 課 されるものであって 同 一 の 修 正 申 告 又 は 更 正 に 係 るものである 限 り その 賦 課 及 び 税 額 計 算 の 基 礎 を 同 じくし ただ 後 者 の 重 加 算 税 は 前 者 の 過 少 申 告 加 算 税 の 賦 課 要 件 に 該 当 することに 加 えて 当 該 納 税 者 がその 国 税 の 課 税 標 準 等 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となるべき 事 実 の 全 部 又 は 109

一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺいし 又 は 仮 装 したところに 基 づき 納 税 申 告 書 を 提 出 す るという 不 正 手 段 を 用 いたとの 特 別 事 由 が 存 す る 場 合 に 当 該 基 礎 となる 税 額 に 対 し 過 少 申 告 加 算 税 におけるよりも 重 い 一 定 比 率 を 乗 じて 得 られる 金 額 の 制 裁 を 課 することとしたものと 考 えられる ( 訟 務 月 報 30 巻 4 号 739 頁 ) 10 隠 ぺい 仮 装 するとは 申 告 納 税 制 度 をと る 所 得 税 について 租 税 をほ 脱 する 目 的 を 持 って 故 意 に 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となるべき 事 実 を 隠 匿 し 又 は 作 為 的 に 虚 偽 の 事 実 を 付 加 して 調 査 を 妨 げる 行 為 をいう ( 平 成 4 年 3 月 23 日 京 都 地 裁 判 決 訟 務 月 報 39 巻 5 号 899 頁 ) 事 実 を 隠 ぺい するとは 事 実 を 隠 匿 しある いは 脱 漏 することを 事 実 を 仮 装 するとは 所 得 財 産 あるいは 取 引 上 の 名 義 を 装 う 等 事 実 を 歪 曲 することをいい いずれも 行 為 の 意 味 を 認 識 しながら 故 意 に 行 うことを 要 すると 解 すべきで ある ( 昭 和 50 年 6 月 23 日 和 歌 山 地 裁 判 決 税 資 82 号 70 頁 ) 11 訟 務 月 報 34 巻 1 号 149 頁 12 法 68 条 1 項 による 重 加 算 税 を 課 しえるた めには 納 税 者 が 故 意 に 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 全 部 又 は 一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺい 仮 装 行 為 を 原 因 として 過 少 申 告 を 発 生 したものであることが 必 要 であ り ここでいう 故 意 があるというためには 当 該 納 税 者 が 隠 ぺいし 又 は 仮 装 行 為 と 評 価 されるべ き 客 観 的 事 実 を 意 図 的 に 実 現 したことが 必 要 で ある ( 平 成 5 年 8 月 10 日 仙 台 地 裁 判 決 税 資 198 号 482 頁 ) 13 国 税 通 則 法 68 条 に 規 定 する 重 加 算 税 は 同 法 65 条 ないし 67 条 に 規 定 する 各 種 の 加 算 税 を 課 すべき 納 税 義 務 違 反 が 事 実 の 隠 ぺい 又 は 仮 装 と いう 不 正 な 方 法 に 基 づいて 行 われた 場 合 に 違 反 者 に 対 して 課 される 行 政 上 の 制 裁 であって 故 意 に 納 税 義 務 違 反 を 犯 したことに 対 する 制 裁 では ないから( 最 高 裁 昭 和 45 年 9 月 11 日 判 決 参 照 ) 同 法 68 条 1 項 による 重 加 算 税 を 課 しえるために は 納 税 者 が 故 意 に 課 税 標 準 又 は 税 額 等 の 計 算 の 基 礎 となる 事 実 の 全 部 又 は 一 部 を 隠 ぺいし 又 は 仮 装 し その 隠 ぺい 仮 装 行 為 を 原 因 として 過 少 申 告 を 発 生 したものであれば 足 り それ 以 上 に 申 告 に 際 し 納 税 者 において 過 少 申 告 の 認 識 を 有 していることまでも 必 要 とするものではない ( 最 高 裁 第 二 小 法 廷 昭 和 62 年 5 月 8 日 判 決 訟 務 月 報 34 巻 1 号 149 頁 ) なお この 判 決 の 基 礎 となる 事 件 は 架 空 人 名 義 による 株 式 売 買 を 行 い 実 際 に 利 得 を 得 たもの で 納 税 者 の 過 少 申 告 等 ( 無 申 告 を 含 む)を 行 う ことについての 認 識 株 式 売 買 による 利 得 があっ たことの 認 識 が 必 要 との 納 税 者 の 主 張 が 排 斥 さ れた 事 例 である 14 志 場 徳 郎 ほか 編 671 頁 ( 大 蔵 財 務 協 会 2004) 15 品 川 芳 宣 重 加 算 税 税 務 事 例 21 巻 1 号 58 頁 ~59 頁 ( 財 経 詳 報 社 1989)では 税 法 や 事 実 関 係 の 不 知 から 生 じた 単 なる 一 部 申 告 漏 れや 無 申 告 という 不 申 告 行 為 及 び 計 算 違 い 等 による 虚 偽 申 告 行 為 が 隠 ぺい 仮 装 行 為 でないことは 国 税 通 則 法 68 条 の 立 法 趣 旨 や 文 言 解 釈 から 肯 定 し 得 ることが 当 然 としても 事 実 関 係 全 体 から 見 て その 不 申 告 や 虚 偽 申 告 が 課 税 を 免 れることを 意 図 して 作 為 的 に 行 われていると 推 認 できるとき には これを 一 つの 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 認 定 すべ きであろう この 場 合 作 為 的 な 不 申 告 行 為 や 虚 偽 申 告 行 為 であるか 何 をもって 推 認 できるかに ついては 問 題 のあるところであろうが 1 不 自 然 な 多 額 な 所 得 金 額 の 申 告 除 外 2 合 理 的 な 理 由 もないのに 借 名 等 で 申 告 したり 取 引 する 行 為 3 申 告 書 に 架 空 の 経 費 項 目 を 加 えたり 虚 偽 の 証 拠 書 類 を 添 付 する 行 為 4 記 帳 能 力 がありながら 証 拠 隠 滅 を 意 図 して 帳 簿 を 備 え 付 けなかったり 原 始 記 録 を 保 存 しないで 行 う 不 申 告 行 為 5 不 申 告 や 虚 偽 申 告 後 の 税 務 調 査 における 非 協 力 虚 偽 答 弁 虚 偽 資 料 の 提 出 等 が 複 合 して 行 われている 場 合 には それぞれ 事 実 関 係 の 実 態 に 応 じて 作 為 的 な 不 申 告 行 為 や 虚 偽 申 告 行 為 と 推 認 し 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 判 断 し 得 るであろう したがって 不 110

申 告 や 虚 偽 申 告 行 為 が 隠 ぺい 仮 装 行 為 と 認 定 し えるか 否 かについては 国 税 通 則 法 68 条 の 文 言 にのみ 拘 泥 すべきではなく 同 条 の 立 法 趣 旨 を 考 慮 し それらの 行 為 の 前 後 における 事 実 関 係 を 総 合 して 判 断 すべきであろう とその 詳 細 が 述 べ られている 16 金 子 宏 租 税 法 ( 第 13 版 ) 604 頁 ( 弘 文 堂 2008) 佐 藤 孝 一 国 税 通 則 の 法 解 釈 と 実 務 1196 頁 近 藤 ジュリスト 1073 号 313 頁 17 税 資 194 号 1112 頁 18 税 資 201 号 631 頁 19 前 掲 ( 注 16)の 金 子 宏 租 税 法 ( 第 13 版 ) の 603 頁 では いわゆる つまみ 申 告 は つ まみ 出 して 申 告 した 部 分 以 外 の 所 得 の 隠 蔽 に 基 づく 過 少 申 告 として 重 加 算 税 の 対 象 となると 解 すべきであろう と 述 べられており この 問 題 については 佐 藤 英 明 いわゆる つまみ 申 告 と 重 加 算 税 租 税 制 度 における 主 観 的 要 件 重 視 の 傾 向 について 総 合 税 制 研 究 8 号 72 頁 参 照 と 脚 注 がされている 品 川 芳 宣 第 3 版 附 帯 税 の 研 究 ( 財 経 詳 報 社 2002)357 頁 で いわゆる 事 実 関 係 総 合 判 断 説 を 採 用 して 本 件 は 重 加 算 税 の 賦 課 要 件 を 充 足 していると 述 べられている 20 税 資 188 号 894 頁 21 税 資 188 号 894 頁 22 訟 務 月 報 平 成 8 年 1 月 第 42 巻 第 1 号 別 冊 訟 務 座 談 会 225 頁 111