韓 国 における 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 をめぐる 政 治 Title : 女 性 の 独 自 組 織 の 組 織 化 と 社 会 的 連 携 を 中 心 に Author(s) 金, 美 珍 Citation Issue 2016-03-18 Date Type Thesis or Dissertation Text Version none URL http://hdl.handle.net/10086/27762 Right Hitotsubashi University Repository
博 士 論 文 要 旨 韓 国 における 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 をめぐる 政 治 女 性 の 独 自 組 織 の 組 織 化 と 社 会 的 連 携 を 中 心 に 1. 論 文 の 構 成 序 章 第 1 節 問 題 意 識 と 研 究 の 目 的 第 2 節 先 行 研 究 第 3 節 分 析 視 角 第 4 節 調 査 の 概 要 第 5 節 論 文 の 構 成 及 び 概 要 一 橋 大 学 大 学 院 社 会 学 研 究 科 博 士 後 期 課 程 SD101030 金 美 珍 第 Ⅰ 部 歴 史 的 な 背 景 第 1 章 周 辺 部 労 働 者 をめぐる 歴 史 的 背 景 第 1 節 民 主 化 以 降 社 会 運 動 の 変 化 第 2 節 労 働 者 大 闘 争 以 降 の 労 働 体 制 の 変 化 第 3 節 非 正 規 雇 用 の 問 題 と 労 働 運 動 の 戦 略 的 対 応 第 2 章 女 性 労 働 運 動 をめぐる 歴 史 的 背 景 はじめに 第 1 節 1970 代 ~1990 年 代 における 労 働 運 動 と 女 性 労 働 者 第 2 節 1980 年 ~1990 年 代 における 女 性 運 動 と 女 性 労 働 運 動 第 3 節 1997 年 以 降 の 新 たな 女 性 労 働 運 動 の 登 場 第 Ⅱ 部 組 織 分 析 第 3 章 独 自 組 織 の 分 析 第 1 節 韓 国 女 性 団 体 連 合 (KWAU)の 組 織 と 活 動 上 の 特 性 第 2 節 韓 国 女 性 労 働 組 合 (KWTU)の 組 織 と 活 動 上 の 特 性 第 3 節 周 辺 部 女 性 労 働 をめぐる 独 自 組 織 の 特 性 第 Ⅲ 部 社 会 的 連 携 の 多 様 性 第 4 章 非 正 規 職 保 護 法 の 法 制 化 過 程 における 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 第 1 節 非 正 規 職 保 護 法 制 定 過 程 における 特 徴 と 社 会 運 動 団 体 の 関 わり 第 2 節 非 正 規 雇 用 問 題 の 社 会 的 争 点 化 と 非 正 規 共 同 対 策 委 員 会 (2000 年 ) 第 3 節 労 使 政 委 員 会 審 議 の 段 階 における 非 正 規 共 同 対 策 委 員 会 (2000 年 )の 関 わり 第 4 節 国 会 審 議 段 階 における 社 会 的 連 携 の 関 与 第 5 章 最 低 賃 金 の 引 上 げをめぐる 社 会 的 連 携 第 1 節 最 低 賃 金 引 上 げ 過 程 における 代 表 性 の 問 題 と 社 会 運 動 団 体 の 関 与 1
第 2 節 韓 国 における 最 低 賃 金 制 度 第 3 節 最 低 賃 金 連 帯 (2002 年 ~)の 連 携 関 係 の 内 実 終 章 2. 博 士 論 文 要 旨 内 容 本 論 文 は 1990 年 代 以 降 の 韓 国 における 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 がいかに 代 表 されたかを 明 らかにすること を 目 的 としている 周 辺 部 労 働 者 とは 非 正 規 雇 用 インフォーマル 部 門 での 労 働 や 失 業 などにより 労 働 市 場 の 中 心 から 排 除 されている 労 働 者 を 指 す かれらの 多 くは 労 働 市 場 における 低 い 地 位 によって 経 済 的 不 安 定 に 陥 っており また 既 存 の 労 使 関 係 からもこぼれ 落 ち 自 らの 利 害 を 代 表 する 手 段 を 持 たないという 問 題 を 抱 え ている こうした 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 を 代 表 するため 1990 年 代 末 以 降 韓 国 では 2 つの 新 たな 戦 略 的 運 動 が 現 れた それは これまで 既 存 の 労 働 組 合 から 排 除 されてきた 周 辺 部 労 働 者 の 問 題 を 取 り 上 げる 新 たな 労 働 運 動 組 織 の 登 場 であり 市 民 運 動 (Civic Movement)による 労 働 問 題 への 関 与 である 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 をめぐる 全 体 的 なダイナミズムを 捉 えるため 本 論 文 では 既 存 の 労 働 組 合 の 取 り 組 みを 視 野 に 入 れた 上 で 第 1 に 新 たな 労 働 運 動 組 織 による 組 織 化 過 程 を 明 らかにすることと 第 2 に 労 働 組 合 と 社 会 運 動 との 社 会 的 連 携 関 係 に 注 目 し 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 がどのように 政 策 過 程 に 反 映 されるかを 解 明 するという 2 つの 研 究 課 題 を 設 定 した その 際 新 たな 労 働 運 動 組 織 の 代 表 的 な 事 例 として 正 規 職 中 心 の 既 存 の 労 働 組 合 の 流 れとは 一 線 を 画 し いち 早 く 女 性 の 非 正 規 雇 用 問 題 に 取 り 組 んできた 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)と 韓 国 女 性 労 働 組 合 (KWTU)という 女 性 労 働 運 動 組 織 に 焦 点 を 絞 っている その 上 で これらの 組 織 が 参 加 した 労 働 組 合 と 社 会 運 動 との 社 会 的 連 携 その 中 でも 非 正 規 職 保 護 法 の 法 制 化 と 最 低 賃 金 引 上 げに 影 響 を 与 えるために 形 成 された 非 正 規 共 同 対 策 委 員 会 (2000 年 ) 非 正 規 法 共 同 対 策 委 員 会 (2004 年 )と 最 低 賃 金 連 帯 (2002 年 ~) の 事 例 をとり 上 げている 新 しい 労 働 運 動 組 織 と 社 会 的 連 携 の 実 践 の 詳 細 を 捉 えるために 以 下 の 2 つの 分 析 視 角 を 設 定 した 第 1 は 労 働 NGO と 労 働 組 合 という 異 なる 形 態 の 女 性 労 働 運 動 組 織 による 活 動 を 総 合 的 包 括 的 に 捉 えるため 女 性 の 独 自 組 織 という 視 角 の 導 入 である つまり 独 自 組 織 の 定 義 を 職 場 で 団 体 交 渉 力 を 持 つ 労 働 組 合 とい う 狭 義 のそれに 限 定 せず 職 場 と 生 活 空 間 及 び 市 民 社 会 領 域 にまたがる 組 織 として 拡 張 して 理 解 し その 活 動 形 式 を 労 働 者 の 日 常 生 活 及 び 市 民 運 動 の 変 化 と 連 動 させて 捉 えようとするのである こうした 視 角 に 基 づき 本 論 文 では 2 つの 女 性 労 働 運 動 組 織 間 の 協 力 関 係 の 形 成 過 程 を 歴 史 的 な 脈 絡 から 把 握 し 女 性 非 正 規 労 働 者 の 利 害 代 表 をめぐって 両 組 織 がいかなる 役 割 分 担 関 係 をつくり 出 してきたのかを 多 角 的 に 分 析 している これによっ て 女 性 非 正 規 労 働 者 をめぐる 独 自 組 織 の 取 り 組 みの 多 様 性 を 把 握 することができるからである 加 えて 第 2に 社 会 的 連 携 の 形 成 過 程 及 び 各 参 加 団 体 の 役 割 を 検 討 する 際 には 連 携 関 係 を 形 成 する4つの 要 素 共 通 の 関 心 連 携 の 構 造 参 加 団 体 の 能 力 とコミットメント 連 携 活 動 のスケール に 基 づいた 分 析 を 行 2
い 既 存 の 労 働 組 合 市 民 運 動 と 女 性 の 独 自 組 織 とがどのような 役 割 を 果 たしたのかを 明 らかにする その 上 で 社 会 的 連 携 が 政 策 決 定 に 影 響 力 を 展 開 する 場 として 政 策 アリーナの 内 部 と 外 部 を 設 定 し 非 正 規 職 保 護 法 の 法 制 化 と 最 低 賃 金 の 引 上 げという 主 要 政 策 決 定 過 程 において 参 加 諸 団 体 が 相 互 に 果 たした 役 割 関 係 を 分 析 しようとした こうした 独 自 組 織 と 社 会 的 連 携 を 分 析 する 際 には 女 性 労 働 運 動 組 織 と 非 正 規 職 保 護 法 の 法 制 化 と 最 低 賃 金 引 上 げの 政 策 過 程 に 参 加 した 運 動 諸 団 体 に 関 する 第 1 次 資 料 に 加 え 2009 年 から 2014 年 まで 関 係 者 を 対 象 に 実 施 したインタビュー 調 査 及 び 参 与 観 察 から 得 られたデータを 用 いている これらの 資 料 は 女 性 労 働 運 動 組 織 や 社 会 的 連 携 に 参 加 した 運 動 諸 団 体 の 結 成 の 背 景 や 歴 史 組 織 運 営 や 活 動 また 非 正 規 保 護 法 の 法 制 化 や 最 低 賃 金 に 関 する 諸 団 体 の 問 題 意 識 などを 把 握 する 上 で 不 可 欠 である とりわけ 社 会 的 連 携 の 形 成 過 程 及 び 各 参 加 団 体 の 歴 史 に 関 しては 聖 公 会 大 学 民 主 資 料 館 で 段 ボール 箱 詰 めの 未 開 封 の 状 態 で 保 管 されていた 資 料 を 整 理 し た 上 で 用 いており これらによって 労 働 運 動 研 究 においてこれまで 研 究 の 対 象 として 注 目 されてこなかった 新 たな 労 働 運 動 組 織 と 市 民 運 動 団 体 の 活 動 及 び 役 割 を 実 証 的 に 解 明 することが 可 能 となる 以 上 の 問 題 意 識 と 分 析 視 角 に 基 づき つづく 本 文 では 歴 史 的 背 景 組 織 分 析 社 会 的 連 携 の 事 例 分 析 という 3つの 部 分 に 分 け 考 察 を 行 った 第 Ⅰ 部 では 周 辺 部 労 働 者 の 増 加 と それに 対 する 取 り 組 みが 登 場 する 歴 史 的 背 景 を 検 討 した まず 第 1 章 では 1987 年 の 民 主 化 以 降 市 民 社 会 及 び 労 働 体 制 労 働 市 場 労 使 関 係 労 働 政 治 の 変 化 に 焦 点 を 置 い た 市 民 社 会 領 域 においては 民 主 化 以 降 経 済 以 外 の 問 題 に 積 極 的 に 関 わっていた 市 民 運 動 が アジア 通 貨 危 機 以 降 経 済 構 造 の 変 化 中 間 層 の 崩 壊 により 貧 困 失 業 社 会 的 安 全 網 非 正 規 雇 用 の 問 題 などへの 関 与 が 増 加 するという 変 化 が 見 られた さらに 労 働 市 場 においては アジア 通 貨 危 機 以 降 大 企 業 正 規 中 心 の 安 定 的 な 内 部 労 働 市 場 が 縮 小 すると 同 時 に 中 小 企 業 非 正 規 雇 用 を 中 心 とする 外 部 労 働 市 場 が 拡 大 するなど 労 働 市 場 の 二 重 構 造 化 が 顕 著 になってきた これに 対 して 労 使 関 係 においては 正 規 職 労 働 者 を 中 心 とする 労 働 組 合 から 非 正 規 労 働 者 が 排 除 されてきた さらに 1987 年 民 主 化 以 前 の 労 働 運 動 を 主 導 していた 民 主 労 働 運 動 勢 力 は アジア 通 貨 危 機 以 降 合 法 的 なナショナルセンターとして 認 定 され 労 働 者 の 代 表 として 政 策 過 程 に 参 加 できたものの この 参 加 は 非 正 規 雇 用 の 増 加 をもたらす 労 働 の 柔 軟 化 政 策 に 合 意 する 代 わりに 得 られたもの であった 以 上 の 検 討 から 導 き 出 されたのは 非 正 規 雇 用 が 労 働 市 場 労 使 関 係 労 働 政 治 から 排 除 されてきた こと 及 び 市 民 社 会 がその 受 け 皿 になってきた 動 向 である さらに 周 辺 性 という 視 点 を 中 心 に 女 性 非 正 規 雇 用 の 実 態 を 考 察 したうえ その 実 態 と 非 正 規 労 働 者 をめぐる 既 存 の 労 働 組 合 の 取 り 組 みの 間 にずれがあったこ とを 明 らかにした 第 2 章 では 女 性 労 働 の 独 自 組 織 の 起 源 を 1970 年 代 の 軍 事 独 裁 政 権 に 対 抗 してきた 民 主 労 働 組 合 運 動 と 1980 年 代 の 女 性 運 動 の 分 化 から 探 り 組 織 形 態 の 特 徴 活 動 内 容 の 変 化 を 考 察 した 1970 年 代 の 民 主 労 働 組 合 運 動 と 1980 年 代 の 女 性 運 動 という 2 つの 流 れから 始 まった 韓 国 の 女 性 労 働 をめぐる 運 動 は 1987 年 に 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)の 結 成 につながった 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)は 進 歩 的 との 評 価 を 集 める 3
女 性 運 動 の 連 合 体 である 韓 国 女 性 団 体 連 合 (KWAU)との 密 接 な 関 係 に 基 づき 女 性 労 働 を 改 善 する 法 制 化 運 動 を 主 導 してきた だが 1990 年 代 半 ば 以 降 は 女 性 運 動 のテーマが 多 様 化 していくなか 低 所 得 層 女 性 をめぐる 労 働 のイシューは 女 性 運 動 の 中 心 課 題 から 遠 ざかるに 至 っていた また 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)は 交 渉 力 を 持 たない NGO という 限 界 に 直 面 し 女 性 のみの 労 働 組 合 である 韓 国 女 性 労 働 組 合 (KWTU)を 結 成 するに 至 った こうした 歴 史 的 背 景 を 踏 まえた 上 で 第 Ⅱ 部 の 組 織 分 析 では 第 3 章 において 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)と 韓 国 女 性 労 働 組 合 (KWTU)の 組 織 と 活 動 上 の 特 性 を 分 析 した 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)は 周 辺 部 労 働 者 を 対 象 とした 生 活 と 就 労 の 支 援 サービスの 提 供 と 政 策 対 応 に 関 するアドボカシーという 生 活 空 間 と 市 民 社 会 領 域 にまたがる 活 動 を 担 ってきている 具 体 的 には 韓 国 女 性 労 働 者 会 (KWWA)は 労 働 相 談 貧 困 女 性 の 自 立 支 援 女 性 労 働 者 の 職 業 訓 練 職 業 斡 旋 家 事 労 働 者 の 組 織 化 といった 生 活 と 就 労 の 支 援 サ ービスを 提 供 するとともに アドボカシーなどの 政 策 対 応 活 動 を 担 ってきた これに 対 し 韓 国 女 性 労 働 組 合 (KWTU)は 多 様 な 業 種 にわたる 女 性 非 正 規 労 働 者 を 組 織 化 し 団 体 交 渉 を 行 うなど 職 場 における 利 害 に 基 づ いた 女 性 非 正 規 労 働 者 の 当 事 者 組 織 として 位 置 づけられる 第 Ⅲ 部 社 会 的 な 連 携 の 多 様 性 では 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 が 政 策 過 程 にいかに 反 映 されるのかを 社 会 的 連 携 を 中 心 に 考 察 した 第 4 章 では 非 正 規 職 保 護 法 の 制 定 に 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 が 反 映 される 過 程 を 社 会 的 争 点 化 労 使 政 委 員 会 審 議 国 会 審 議 という 3 つの 段 階 に 分 け 各 政 策 過 程 において 労 働 組 合 独 自 組 織 及 び 他 の 社 会 運 動 がいかに 連 携 関 係 を 形 成 し また これらの 連 携 活 動 が 政 策 決 定 過 程 にどの ような 影 響 を 与 えたかを 考 察 した その 考 察 から 社 会 的 争 点 化 労 使 政 委 員 会 審 議 の 段 階 で 形 成 され た 非 正 規 共 同 対 策 委 員 会 (2000 年 )の 事 例 では 非 正 規 雇 用 の 不 安 定 性 が 社 会 正 義 の 観 点 から 生 活 の 質 を 脅 かすものとして 共 通 に 認 識 されたことによって 多 様 な 運 動 団 体 が 社 会 的 連 携 の 結 集 に 繋 がっていたこ とを 解 明 した さらに 各 団 体 における 連 携 関 係 への 参 画 の 程 度 は 多 様 であったが なかでも 労 働 組 合 のみな らず 市 民 運 動 団 体 女 性 労 働 の 独 自 組 織 などの 積 極 的 な 関 与 が 確 認 できた 一 方 2004 年 発 表 された 政 府 案 に 反 対 するため 結 成 された 非 正 規 法 共 同 対 策 委 員 会 (2004 年 )は 非 正 規 職 保 護 の 法 案 が 国 会 で 審 議 される 際 に さまざまな 圧 力 をかけた これによって 同 法 案 は 国 会 審 議 の 段 階 で 労 使 が 直 接 議 論 できる 労 使 政 代 表 者 会 議 という 政 策 決 定 の 場 が 設 けられた しかし 非 正 規 法 共 同 対 策 委 員 会 (2004 年 )に 参 加 していた 諸 参 加 団 体 間 の 利 害 関 心 がくいちがっていたために さらに 仲 介 団 体 の 求 心 力 の 低 下 によって 社 会 的 連 携 に 参 加 した 労 働 組 合 と 他 の 社 会 運 動 間 の 関 係 は 解 散 に 至 らざるをえなかった こう した 非 正 規 職 保 護 法 をめぐる 社 会 的 連 携 の 考 察 を 通 じて 同 法 の 法 制 化 過 程 において 大 きく 影 響 を 与 えていたの は 労 働 組 合 の 組 織 的 な 動 員 よりも 市 民 社 会 における 社 会 的 連 携 であったことが 明 らかになった 第 5 章 では 最 低 賃 金 連 帯 (2002 年 ~)の 事 例 を 中 心 に 労 働 組 合 と 周 辺 部 労 働 者 の 独 自 組 織 及 びその 他 の 社 会 運 動 団 体 の 役 割 について 検 討 した 各 参 加 団 体 の 役 割 は 次 の 3 点 が 明 らかになった 第 1 は 韓 国 労 総 民 主 労 総 といった 既 存 の 労 働 組 合 による 政 策 過 程 のインサイダーの 役 割 と 政 策 過 程 と 他 の 4
社 会 運 動 とをつなぐ 架 け 橋 としての 役 割 である 両 組 合 は その 専 門 性 やインサイダーとしての 位 置 を 保 ちつ つ 最 低 賃 金 連 帯 (2002 年 ~)という 社 会 的 連 携 において 幹 事 団 体 の 役 割 を 担 っていたのである 第 2 は 最 低 賃 金 に 直 接 的 な 影 響 を 受 けている 当 事 者 を 組 織 化 した 団 体 の 存 在 が 政 策 過 程 に 参 加 する 労 働 組 合 に 正 当 性 を 与 えていたことである その 代 表 的 な 例 としては 韓 国 女 性 労 働 組 合 (KWTU)と 韓 国 青 年 ユニオンがあ る 第 3 は 社 会 的 な 影 響 力 と 道 徳 的 な 権 威 に 基 づく 支 援 の 役 割 である 参 与 民 主 社 会 と 人 権 のための 市 民 連 帯 や 経 済 正 義 実 践 市 民 連 合 といった 社 会 的 な 影 響 力 をもつ 市 民 運 動 団 体 の 参 加 を 得 て 周 辺 部 労 働 者 の 抱 える 低 賃 金 の 問 題 が 社 会 的 経 済 的 公 正 の 観 点 から 押 し 出 されるようになった これらの 参 加 諸 団 体 の 役 割 が 相 互 補 完 的 に 作 用 し 最 低 賃 金 に 対 する 社 会 的 な 関 心 が 寄 せられた 結 果 最 低 賃 金 連 帯 (2002 年 ~)という 社 会 的 連 携 関 係 の 形 成 が 使 用 者 側 や 政 府 にも 圧 迫 をかける 有 効 な 戦 略 となったのである 終 章 では これまでの 議 論 を 総 括 するとともに 今 後 の 課 題 を 提 示 した 以 上 の 本 論 文 の 考 察 を 通 じて 以 下 の 知 見 を 提 示 することができる 第 1 は 女 性 労 働 運 動 組 織 間 における 相 互 補 完 的 な 協 力 関 係 あるいは 役 割 分 担 関 係 である 本 論 文 で 検 討 した 2 つの 女 性 労 働 運 動 組 織 は 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 と 深 く 関 与 しつつ 多 面 的 な 活 動 を 展 開 してきた これらの 組 織 は 労 働 NGO と 労 働 組 合 という 異 なる 組 織 形 態 を 持 つことによって 幅 広 い 活 動 領 域 を 担 うことができ またそれを 可 能 とする 明 確 な 役 割 分 担 関 係 を 有 していた この 点 から 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 を 代 表 するためには 活 動 範 囲 を 労 働 条 件 の 改 善 や 雇 用 安 定 といった 職 場 における 活 動 だけ に 留 めることなく 職 場 生 活 市 民 社 会 領 域 をつなぐ 多 面 的 な 活 動 を 展 開 することが 周 辺 部 労 働 者 の 現 実 に 合 致 した 戦 略 となりうるとの 示 唆 を 得 ることができるだろう 第 2 に 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 を 政 策 過 程 に 反 映 するにあたって 現 に 労 働 組 合 以 外 の 多 様 なアクターが 関 与 した 事 実 が 重 要 である 社 会 的 連 携 に 参 加 した 運 動 団 体 の 特 徴 を 運 動 分 野 政 治 的 志 向 民 主 化 運 動 への 関 わり 方 という 歴 史 的 な 経 緯 運 動 スタイルなどを 基 準 に 分 類 して 検 討 した 結 果 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 をめぐ る 政 策 過 程 には 既 存 の 労 働 組 合 をはじめ 民 衆 運 動 市 民 運 動 女 性 運 動 などに 関 わるさまざまな 諸 団 体 が 参 加 していたことが 明 らかになった 本 論 文 における 非 正 規 共 同 対 策 委 員 会 (2000 年 ) 非 正 規 法 共 同 対 策 委 員 会 (2004 年 ) 及 び 最 低 賃 金 連 帯 (2002 年 ~)の 分 析 から 浮 かび 上 がったのは 韓 国 における 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 には 既 存 の 労 働 組 合 以 外 の 女 性 の 独 自 組 織 を 始 めとした 新 たな 労 働 運 動 組 織 及 び 市 民 運 動 団 体 の 参 加 による 社 会 的 連 携 とその 裾 野 の 広 がりが 決 定 的 な 役 割 を 果 したという 事 実 である こう した 知 見 は 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 の 代 表 において 既 存 の 労 働 組 合 の 取 り 組 みだけに 注 目 する 視 角 を 越 え て 周 辺 部 労 働 者 の 独 自 組 織 の 取 り 組 みと 市 民 社 会 とりわけ 市 民 運 動 といった 社 会 運 動 の 役 割 を 分 析 の 射 程 に 取 りこんだ 本 論 文 の 独 自 の 方 法 視 角 から 明 らかにしえたと 言 うことができるだろう 本 論 文 が 取 り 上 げた 1997 年 のアジア 通 貨 危 機 から 非 正 規 職 保 護 法 が 制 定 された 2006 年 までの 約 10 年 間 は 民 主 化 運 動 勢 力 の 支 持 を 基 盤 としていた 金 大 中 政 権 と 盧 武 鉉 政 権 によって 政 治 社 会 における 民 主 化 改 革 が 行 われると 同 時 に アジア 通 貨 危 機 の 影 響 を 受 け 新 自 由 主 義 政 策 が 本 格 的 に 展 開 しはじめた 時 期 である とりわ け この 時 期 から 既 存 の 労 働 組 合 に 包 摂 されない 労 働 者 層 の 増 加 によって 労 働 者 の 代 表 性 に 対 する 懐 疑 の 念 が 社 5
会 的 に 強 くなり 労 働 組 合 の 衰 退 が 顕 著 になってきた 本 論 文 は 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 をめぐって 市 民 運 動 及 び 新 たな 労 働 運 動 組 織 労 働 組 合 の 間 に 連 携 形 成 の 動 きが 顕 在 化 し 始 めた 時 期 に 注 目 し その 経 緯 を 捉 えた 本 論 文 で 明 らかにしてきたように 韓 国 の 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 の 動 きは 新 しい 労 働 運 動 組 織 と 市 民 運 動 が 既 存 の 労 働 組 合 の 影 響 力 低 下 を 補 って 余 りあるかたちでなされてきた 民 主 化 政 権 に 続 く 保 守 政 権 李 明 博 政 権 と 朴 槿 恵 政 権 期 において 新 自 由 主 義 政 策 がより 一 層 加 速 化 されている 今 日 新 たな 労 働 運 動 組 織 及 びの 社 会 的 連 携 の 動 向 が 今 後 の 周 辺 部 労 働 者 の 利 害 代 表 をめぐる 労 働 政 治 にどのように 影 響 を 与 えるかについて 本 論 文 の 分 析 視 角 を 用 いつつフォローアップする 必 要 がある 6