Ⅵ 環 境 保 全 型 農 業 と 土 壌 管 理 1 有 機 質 肥 料 の 利 用 技 術 (1) 水 田 での 利 用 技 術 ア 有 機 質 肥 料 の 種 類 と 特 性 (ア) 有 機 質 肥 料 の 施 用 効 果 有 機 質 肥 料 は 肥 料 取 締 法 では 植 物 油 かす 類 魚 肥 類 骨 粉 類 肉 かす 粉 末 等 の 動 植 物 質 の 普 通 肥 料 をいう 土 壌 中 での 分 解 が 穏 やかに 長 時 間 持 続 するために 作 物 に よる 吸 収 利 用 率 が 高 く 環 境 に 対 する 負 荷 が 少 ないとされている その 反 面 必 要 以 上 の 施 用 は 地 下 水 の 硝 酸 態 窒 素 汚 染 等 の 環 境 負 荷 に 直 結 する 可 能 性 もあるので 作 物 の 吸 収 特 性 にあった 合 理 的 な 施 肥 を 行 う 必 要 がある 有 機 質 肥 料 の 効 果 は 三 要 素 だ けでなく 微 量 要 素 も 含 み 濃 度 障 害 を 生 じにくく 土 壌 の 理 化 学 性 生 物 性 の 改 善 に 効 果 があるなど 優 れた 性 質 がある (イ) 有 機 質 肥 料 の 成 分 と 留 意 点 有 機 質 肥 料 は 種 類 が 多 く 成 分 含 有 量 は 種 類 によって 異 なる 有 機 質 肥 料 のうち 植 物 質 肥 料 は 主 に 各 種 の 油 かす 類 で 窒 素 が 多 く 含 まれ 少 量 のリン 酸 とカリも 含 ま れるが 窒 素 の 肥 効 は 速 効 性 から 緩 効 性 まで 幅 が 広 い 動 物 質 肥 料 は 主 に 魚 家 畜 に 由 来 する 原 料 で 作 られる 魚 かす 類 は 窒 素 とリン 酸 を 含 み 窒 素 の 肥 効 は 速 効 性 であ る 骨 粉 類 はリン 酸 含 量 が 高 く その 肥 効 は 緩 効 性 である また 一 般 的 に 有 機 質 肥 料 はカリ 含 有 率 が 低 いため カリ 要 求 性 の 高 い 作 物 を 栽 培 する 場 合 には 家 畜 ふん 堆 肥 や 椰 子 殻 灰 などカリ 含 有 率 の 高 い 有 機 質 肥 料 の 併 用 が 必 要 となる 注 意 骨 粉 類 については BSEの 関 係 から 牛 の 脊 柱 等 が 混 入 していない 物 として 農 林 水 産 省 の 確 認 を 受 けて 製 造 されたものであること (ウ) 主 な 有 機 質 肥 料 の 特 性 a 植 物 質 肥 料 [なたね 油 かす] なたね 種 子 を 炒 って 蒸 熱 圧 搾 するか またはさらに 溶 剤 で 油 脂 を 浸 出 した 残 りか すで 入 手 しやすい 公 定 規 格 によれば 含 有 すべき 主 成 分 は 窒 素 4.5% 以 上 リ ン 酸 2% 以 上 カリ1% 以 上 である 肥 効 は 有 機 質 肥 料 としては 早 く 効 く [ 大 豆 油 かす] 大 豆 から 油 を 搾 った 残 りかす あるいは さらに 溶 剤 で 油 脂 を 浸 出 した 残 りカス で 肥 料 成 分 に 富 んでいる なたね 油 かすに 比 べて 窒 素 とカリが 多 く 公 定 規 格 に よれば 窒 素 6% 以 上 リン 酸 1% 以 上 カリ1% 以 上 である 肥 効 はやや 遅 効 性 で ある [ 米 ぬか 油 かす] 米 ぬかから 油 を 搾 った 残 りかすであり 含 有 すべき 主 成 分 は 窒 素 2% 以 上 リ ン 酸 4% 以 上 カリ1% 以 上 である 肥 効 はやや 遅 効 性 である b 動 物 質 肥 料 [ 魚 かす] 生 魚 を 煮 沸 して 油 を 搾 った 残 りかすで 含 有 すべき 主 成 分 は 窒 素 4% 以 上 リ ン 酸 3% 以 上 窒 素 とリン 酸 の 合 計 値 が12% 以 上 とされている 肥 効 は 速 効 性 であ る - 144 -
イ 水 田 に 施 用 された 有 機 質 資 材 及 び 肥 料 の 窒 素 無 機 化 特 性 一 般 的 に 有 機 質 肥 料 は 肥 効 が 長 く 続 くために 窒 素 の 後 効 きによって 米 の 品 質 食 味 を 低 下 させる 要 因 となるので 施 用 する 肥 料 の 成 分 と 施 肥 量 には 充 分 留 意 する 必 要 があ る また 米 ぬかや 油 かす 類 の 植 物 性 有 機 物 を 湛 水 直 前 に 施 用 すると 異 常 還 元 やガスの 発 生 を 招 きやすく 移 植 後 の 活 着 や 初 期 生 育 が 劣 る そのため 栽 培 前 年 秋 にわらと 共 に すき 込 むか 春 に 施 用 する 場 合 は 耕 耘 から 湛 水 代 かきまでの 時 間 を 出 来 るだけ 長 くす る 栽 培 前 年 秋 に 施 用 した 各 資 材 肥 料 の 肥 効 の 目 安 ( 窒 素 無 機 化 率 )は 以 下 の3つのタ イプに 区 分 できる ( 図 Ⅵ-1-(1)-1 参 照 ) 1 初 期 型 培 養 前 の 窒 素 無 機 化 率 が 高 く 湛 水 後 の 増 加 が 小 さいため 初 期 生 育 が 良 好 で 肥 培 管 理 がしやすいタイプ 大 豆 油 かす なたね 油 かす 魚 かす 脱 脂 米 ぬかなど 2 中 間 型 培 養 前 の 窒 素 無 機 化 率 は 低 いが 湛 水 後 の 増 加 が 大 きいため 生 育 中 盤 での 無 機 化 量 が 多 く 多 用 すると 千 粒 重 の 低 下 未 熟 粒 の 増 加 を 招 きやすいタイプ 蒸 製 皮 粉 乾 燥 菌 体 生 米 ぬか 発 酵 鶏 ふん 豚 ぷん 堆 肥 など 3 持 続 型 培 養 期 間 に 関 わらず 窒 素 無 機 化 率 が 低 く 地 力 窒 素 発 現 量 の 底 上 げにつながる 土 づく り 肥 料 タイプ 牛 ふん 堆 肥 60 50 窒 素 無 機 化 率 % 40 30 20 初 期 型 中 間 型 持 続 型 10 0 0 200 400 600 800 1000 1200 有 効 積 算 温 度 (15 以 上 の 積 算 温 度 ) 図 各 タイプ( 平 均 値 )の 無 機 化 パターン 図 Ⅵ-1-(1)-1 蒸 製 骨 粉 大 豆 油 かす なたね 油 かす 魚 かす 蒸 製 皮 粉 では 水 稲 一 作 期 間 中 に 窒 素 無 機 化 率 が 概 ね50%に 達 するが 他 の 肥 料 及 び 資 材 では3~30%と 低 い そのため 二 作 目 以 降 土 壌 中 に 残 存 する 肥 料 の 残 効 を 考 慮 しなければならない また 市 販 のボカシ 肥 料 はいずれも 無 機 態 窒 素 量 が 多 いため 基 肥 を 春 施 用 する 場 合 や 穂 肥 としての 利 用 に 向 いて いると 考 えられる ( 表 Ⅵ-1-(1)-1) 各 肥 料 の 無 機 態 窒 素 含 有 率 及 び 無 機 化 特 性 から 推 定 されるコシヒカリの 基 肥 施 肥 基 準 は 以 下 のとおりとなるが 圃 場 の 地 力 差 肥 料 のロット メーカーにより 肥 効 が 異 なること が 予 想 されるため 実 際 の 施 用 に 当 たっては80% 程 度 の 安 全 率 を 見 込 んだ 方 が 良 い - 145 -
表 Ⅵ-1-(1)-1 有 機 質 肥 料 の 無 機 化 特 性 窒 素 含 有 率 無 機 化 率 現 物 施 用 量 有 機 質 の 種 類 ( 現 物 N%) % kg/10a 大 豆 油 かす 7.2 70 30~50 なたね 油 かす 5.3 60 50~70 米 ぬか 2.4 35 240~280 米 ぬか 油 かす 2.8 40 180~240 魚 かす 7.0 50 50~70 蒸 製 骨 粉 4.0 60 80~100 発 酵 鶏 糞 2.4 50 180~200 ボカシ 肥 料 約 4.0 60 80~100 平 坦 地 ( 粘 質 土 壌 ) 化 学 肥 料 で 窒 素 成 分 2~3kg/10a 相 当 表 Ⅵ-1-(1)-2 水 田 での 利 用 を 前 提 とした 場 合 の 有 機 質 肥 料 の 無 機 化 特 性 ( 無 機 化 %) 無 機 化 期 間 培 養 前 2 週 3 週 4 週 6 週 10 週 タイプ 資 材 名 称 積 算 温 度 0 210 315 420 630 1050 大 豆 かす 61.5 64.4 60.6 71.7 68.9 69.9 蒸 製 肉 骨 粉 26.8 24.7 25.5 26.7 24.9 31.1 1 速 効 オルガリッチ 26.4 29.0 25.8 35.1 31.2 31.7 タイフ なたね 油 かす 38.7 50.4 47.0 56.8 48.5 49.6 魚 かす 35.5 42.0 40.3 47.2 45.8 45.6 米 ぬか 油 かす 23.6 31.7 27.4 35.9 30.4 35.2 ネカシ 有 機 ( 三 井 東 圧 ) 8.1 14.9 13.4 17.4 14.7 17.9 みのりエキス( 片 倉 チッカリン) 8.7 19.5 18.4 21.9 22.4 25.5 2 中 間 蒸 製 皮 粉 17.9 33.4 39.3 50.2 53.6 62.0 タイフ 乾 燥 菌 体 2.7 8.3 5.1 7.1 8.8 11.4 天 然 ボカシ 肥 料 ( 富 士 見 ) 1.4 4.5 2.5 3.1 4.6 6.8 米 ぬか 4.2 22.7 20.8 24.7 24.3 27.9 発 酵 鶏 糞 2.4 11.3 10.6 13.7 11.1 16.8 3 持 続 牛 ふん 堆 肥 0.5 6.1 3.4 5.2 4.8 6.1 タイフ 豚 ぷん 堆 肥 -0.2 0.9-2.2 0.0 0.2 2.8 豚 ぷん 堆 肥 で- 表 示 があるのは 無 機 態 窒 素 の 吸 収 ( 窒 素 飢 餓 )があるためで 堆 肥 製 造 時 の 副 資 材 が 分 解 しにくい 未 熟 なものが 混 入 されていたものと 考 えられる 一 般 には 牛 糞 堆 肥 より 分 解 は 早 いものが 多 い ( 牛 ふんも 乳 用 牛 と 肉 牛 では 大 きく 違 う) 1 初 期 タイフ : 培 養 前 の 窒 素 無 機 化 率 が 高 く( 既 に 分 解 され 無 機 化 している ) 湛 水 後 の 増 加 が 小 さいため 初 期 生 育 が 良 好 で 後 半 の 窒 素 発 現 が 少 ないことから 一 般 肥 料 と 同 様 に 使 いやすい 2 中 間 タイフ : 培 養 前 の 窒 素 無 機 化 率 は 低 いが 湛 水 後 の 増 加 が 大 きいタイプで 生 育 中 盤 で 無 機 化 量 が 多 く 多 用 するすると 生 育 のコントロールが 難 しい 3 持 続 タイフ : 培 養 期 間 にかかわらず 無 機 化 率 が 低 く 土 壌 へ 蓄 積 され 地 力 窒 素 発 現 量 の 底 上 げとなる 基 本 的 に 土 づくり 肥 料 的 なタイプである ウ 有 機 物 の 基 肥 施 用 量 の 考 え 方 水 田 に 施 用 された 有 機 物 の 一 部 は 水 稲 一 作 期 間 中 に 分 解 されず 連 用 によって 土 壌 に 肥 料 成 分 が 残 存 し 過 剰 生 育 等 の 不 安 定 な 生 育 を 招 く 危 険 性 があるので 二 作 目 以 降 の 窒 素 無 機 化 量 を 考 慮 して 基 肥 施 用 量 を 加 減 する 必 要 がある - 146 -
表 計 算 を 用 いて2 年 目 以 降 の 残 存 有 機 物 からの 窒 素 発 現 量 を 推 定 すると 有 機 物 を 継 続 して 施 用 している 圃 場 での 窒 素 発 現 量 の 予 測 が 可 能 である 推 定 に 使 用 した 有 機 物 の 窒 素 無 機 化 率 は 未 発 酵 有 機 物 である 米 ぬか 米 ぬか 油 かすは 初 年 目 と2 年 目 以 降 を 変 えず 堆 肥 化 されて 分 解 されにくい 窒 素 を 多 く 含 む 畜 ふん 堆 肥 発 酵 鶏 ふんでは2 年 目 以 降 を 低 く 設 定 する その 結 果 有 機 物 施 用 区 の 窒 素 発 現 量 と 対 照 区 の 発 現 量 から 算 出 した 有 機 物 由 来 の 窒 素 発 現 量 と 推 定 値 には 高 い 相 関 が 得 られる( 表 Ⅵ-1-(1)-2 図 Ⅵ -1-(1)-3) 表 Ⅵ-1-(1)-3 推 定 値 計 算 に 用 いた 窒 素 無 機 化 率 Ra Rb 米 ぬか 0.28 0.28 計 算 方 法 米 ぬか 油 かす 0.35 0.35 1 年 目 量 =N Ra 豚 ぷん 堆 肥 0.20 0.075 2 年 目 量 = (N-(N Ra:1 年 目 )) Rb 牛 ふん 堆 肥 0.05 0.025 3 年 目 量 =(N-(1 年 目 +2 年 目 )) Rb 発 酵 鶏 ふん 0.20 0.10 Ra= 初 年 目 の 無 機 化 率 Rb=2 年 目 以 降 の 無 機 化 率 表 Ⅵ-1-(1)-2 例 -1 残 存 有 機 物 による 窒 素 発 現 量 の 推 定 ( 計 算 例 ) N Ra Rb 初 年 目 2 年 目 3 年 目 4 年 目 米 ぬか 油 かす 初 年 目 5.2 0.35 0.25 1.82 0.85 0.63 0.48 2 年 目 4.8 0.35 0.25 1.68 0.78 0.59 3 年 目 3.5 0.35 0.25 1.23 0.57 4 年 目 0.00 推 定 値 N mg/100g 乾 土 1.82 2.53 2.64 1.63 N: 投 入 窒 素 量 (kg/10a) 注 )4 年 目 は 有 機 物 投 入 前 の 推 定 値 Ra: 初 年 度 の 窒 素 無 機 化 率 Rb:2 年 目 以 降 の 窒 素 無 機 化 率 表 Ⅵ-1-(1)-3 例 -2: 施 用 堆 肥 の 窒 素 量 =Nの 牛 ふん 堆 肥 (Ra:0.05 Rb:0.025)を 施 用 した 場 合 施 用 N 量 1 年 目 2 年 目 3 年 目 4 年 目 5 年 目 1 年 目 2.1Kg 0.105 0.05 0.049 0.047 0.046 2 年 目 2.1 0.105 0.05 0.049 0.047 3 年 目 2.1 0.105 0.05 0.049 4 年 目 2.1 0.105 0.05 5 年 目 2.1 0.105 合 計 無 機 化 量 0.015 0.155 0.204 0.251 0.297 初 年 目 2 年 目 3 年 目 初 年 目 有 機 物 2 年 目 有 機 物 3 年 目 有 機 物 推 定 値 mg/100g 乾 土 4 3 2 1 y = 1.020 x R 2 = 0.723 4 年 目 施 用 前 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 Nmg/100g 乾 土 施 用 有 機 物 の 無 機 化 量 ( 計 算 例 ) 0 0 1 2 3 4 実 測 値 mg/100g 乾 土 図 残 存 有 機 物 由 来 の 窒 素 発 現 量 と 無 機 化 特 性 から 推 定 した 推 定 値 ( 農 総 研, 中 之 島 平 成 10 年 秋 ) 図 Ⅵ-1-(1)-2 有 機 物 の 無 機 化 量 ( 計 算 値 ) 図 Ⅵ-1-(1)-3 残 存 有 機 由 来 窒 素 量 - 147 -
エ 本 田 への 有 機 質 肥 料 の 施 用 法 水 稲 有 機 栽 培 を 行 う 場 合 には 初 期 生 育 の 確 保 特 に 良 好 な 活 着 と 初 期 分 げつの 確 保 が 重 要 となる 米 ぬか 油 かす 類 などの 未 発 酵 の 植 物 性 有 機 物 未 熟 堆 肥 等 の 春 施 用 は 湛 水 代 かき 後 に 土 壌 を 異 常 還 元 させ ワキの 発 生 による 根 腐 れなど 苗 の 活 着 初 期 生 育 を 抑 制 する また 窒 素 の 後 ぎきが 心 配 されるため これらの 有 機 質 肥 料 の 基 肥 施 用 は 秋 施 用 が 基 本 である 動 物 性 有 機 物 ボカシ 肥 料 は 春 施 用 に 向 いていると 考 えられ るが 耕 うんから 湛 水 代 かきまでの 時 間 をできるだけ 確 保 する 水 稲 の 有 機 栽 培 における 施 肥 例 を 以 下 に 示 す 施 肥 例 試 験 圃 場 A 圃 場 細 粒 灰 色 低 地 土 ( 東 和 統 ) 5 月 11 日 移 植 B 圃 場 細 粒 強 グライ 土 ( 田 川 統 ) 5 月 2 日 移 植 供 試 品 種 栽 培 様 式 コシヒカリ 稚 苗 機 械 移 植 A 圃 場 ( 有 機 物 連 用 米 ぬか 米 ぬか 油 かす3 年 目, 豚 ぷん 堆 肥 牛 糞 堆 肥 2 年 目 ) 秋 施 用 ( 各 有 機 物 ) 春 施 用 ( 発 酵 鶏 糞 ) 穂 肥 ( 発 酵 鶏 糞 ) 項 目 施 用 量 N 施 用 量 N 施 用 量 N 区 名 ( 現 物 kg/a) ( 成 分 kg/a) ( 現 物 kg/a) ( 成 分 kg/a) ( 現 物 kg/a) ( 成 分 kg/a) 化 学 肥 料 - - - 0.30-0.20 米 ぬか 20.0 0.46 12.5 0.30 6.3 0.15 米 ぬか 油 かす 20.0 0.58 12.5 0.30 6.3 0.15 豚 ぷん 堆 肥 83.3 1.25 12.5 0.30 6.3 0.15 牛 ふん 堆 肥 125.0 1.07 12.5 0.30 6.3 0.15 B 圃 場 ( 有 機 物 連 用 2 年 目 ) 秋 施 用 ( 各 有 機 物 ) 春 施 用 ( 発 酵 鶏 糞 ) 穂 肥 ( 発 酵 鶏 糞 ) 項 目 施 用 量 N 施 用 量 N 施 用 量 N 区 名 ( 現 物 kg/a) ( 成 分 kg/a) ( 現 物 kg/a) ( 成 分 kg/a) ( 現 物 kg/a) ( 成 分 kg/a) 化 学 肥 料 - - - 0.3-0.2 米 ぬか 21.7 0.50 16.2 0.39 10.8 0.26 米 ぬか 油 かす 21.7 0.62 16.2 0.39 10.8 0.26 豚 ぷん 堆 肥 72.2 1.09 16.2 0.39 10.8 0.26 牛 ふん 堆 肥 126.4 1.08 16.2 0.39 10.8 0.26 このように 有 機 栽 培 では 一 作 期 間 に 投 入 する 投 入 窒 素 量 が9~17kg/10aと 非 常 に 多 くなる それは 前 述 のとおり 有 機 物 が 一 作 期 間 に 全 て 分 解 されないためであり 連 用 する 上 で 土 壌 中 に 残 存 する 有 機 物 からの 窒 素 放 出 を 考 慮 して 施 用 量 を 減 ずる 必 要 がある - 148 -
表 Ⅵ-1-(1)-4 収 量 及 び 収 量 構 成 要 素 と 玄 米 窒 素 含 有 量 (%) A 圃 場 収 穫 期 精 玄 米 重 総 籾 数 登 熟 歩 合 精 玄 米 玄 米 窒 素 稈 長 穂 長 穂 数 千 粒 重 含 有 率 (cm) (cm) ( 本 /m2) (kg/a) ( 千 粒 /m2) (%) (g) ( 乾 物 %) 化 学 肥 料 94.6 19.0 301 47.0 24.9 82.4 22.1 1.08 米 糠 97.0 17.9 317 53.1 32.0 78.1 21.5 1.16 米 糠 油 かす 97.6 18.4 301 49.8 27.5 84.2 21.7 1.09 豚 ぷん 堆 肥 97.6 18.4 299 51.5 29.7 85.7 21.9 1.14 牛 ふん 堆 肥 93.9 18.0 285 47.5 25.0 88.4 22.1 1.12 B 圃 場 収 穫 期 精 玄 米 重 総 籾 数 登 熟 歩 合 精 玄 米 玄 米 窒 素 稈 長 穂 長 穂 数 千 粒 重 含 有 率 (cm) (cm) ( 本 /m2) (kg/a) ( 千 粒 /m2) (%) (g) ( 乾 物 %) 化 学 肥 料 89.4 19.1 331 55.0 29.6 82.0 21.9 1.14 米 糠 88.6 18.7 306 49.2 29.1 88.2 21.0 1.10 米 糠 油 かす 87.7 18.5 291 54.2 32.3 83.8 21.1 1.15 豚 ぷん 堆 肥 88.0 18.7 289 49.5 26.4 86.2 21.3 1.09 牛 ふん 堆 肥 90.4 18.6 306 53.1 31.6 89.7 21.2 1.08 10 9 8 7 A 圃 場 B 圃 場 収 穫 期 穂 揃 い 期 幼 穂 形 成 期 最 高 分 げつ 期 6 5 4 3 2 1 0 化 学 肥 料 米 糠 米 糠 油 かす 豚 ぷん 堆 肥 牛 ふん 堆 肥 化 学 肥 料 米 糠 米 糠 油 かす 豚 ぷん 堆 肥 牛 ふん 堆 肥 N mg/100g 乾 土 図 稲 体 窒 素 吸 収 量 の 推 移 ( 平 成 10 年 ) 図 Ⅵ-1-(1)-4 収 量 はいずれも 化 学 肥 料 区 並 に 得 られ 登 熟 歩 合 の 向 上 が 見 られた 有 機 物 施 用 区 での 精 玄 米 千 粒 重 は 化 学 肥 料 区 よりも 小 さめであったが 玄 米 窒 素 含 有 率 は 化 学 肥 料 区 と 同 等 であっ た( 表 Ⅵ-1-(1)-4 ) 有 機 物 施 用 区 の 稲 体 窒 素 吸 収 量 は 最 高 分 げつ 期 までは 化 学 肥 料 区 並 で あったが 最 高 分 げつ 期 から 幼 穂 形 成 期 までの 吸 収 量 が 化 学 肥 料 区 を 上 回 る 傾 向 が 見 られた ( 図 Ⅵ-1-(1)-4 ) これは 中 間 型 の 無 機 化 特 性 を 示 す 発 酵 鶏 ふんを 基 肥 に 用 いたためであ り 籾 数 は 増 加 したものの 精 玄 米 千 粒 重 が 小 さめになったものと 推 測 された このことから 水 稲 の 有 機 栽 培 における 本 田 への 有 機 質 肥 料 の 施 用 は 植 物 性 有 機 物 の 場 合 は 栽 培 前 年 の 秋 施 用 を 基 本 とし 春 に 施 用 する 場 合 には 動 物 性 有 機 物 ボカシ 肥 料 などが 望 ましいが 耕 うんから 湛 水 代 かきまでの 時 間 を 出 来 るだけ 長 くする 中 間 型 の 無 機 化 特 性 を 示 す 有 機 質 肥 料 は 多 量 に 施 用 しない 土 壌 の 窒 素 供 給 量 ( 地 力 窒 素 )が 増 加 した 段 階 で 生 育 が 過 剰 にならないよう 減 肥 する - 149 -
(2) 園 芸 畑 での 利 用 技 術 畜 産 堆 肥 や 有 機 質 肥 料 は 有 用 資 源 の 有 効 利 用 ということで 今 後 活 用 される 場 面 が 多 くなると 考 えられる しかし 有 効 養 分 組 成 が 一 定 でないことがあることや 組 成 バランス が 化 学 肥 料 ほど 明 確 でないことなどの 問 題 も 少 なくはない これらのことなどは 今 後 の 研 究 調 査 等 に 負 う 部 分 が 大 きいが 当 面 は その 養 分 組 成 養 分 溶 出 肥 効 特 性 を 事 前 に 把 握 しながら 使 用 する 必 要 がある ア 有 機 質 肥 料 の 利 用 化 学 肥 料 のみに 頼 った 施 肥 は 地 力 の 減 耗 をきたす 原 因 にもなるので 有 機 質 肥 料 の 活 用 は 重 要 である 化 学 肥 料 への 依 存 が 小 さい 施 肥 体 系 に 移 行 し 地 力 の 維 持 向 上 等 を 図 る 必 要 がある 有 機 質 肥 料 の 利 用 は 土 壌 の 理 化 学 性 や 土 壌 微 生 物 の 活 動 条 件 を 改 善 するうえでも 重 要 である また 近 年 100% 有 機 物 由 来 の 有 機 質 肥 料 や 化 学 肥 料 と 有 機 質 肥 料 を 配 合 した 肥 料 が 多 く 市 販 されている 成 分 が 保 証 されており 作 物 の 生 育 に 適 合 した 肥 効 を 備 えてい るので 特 性 を 把 握 の 上 積 極 的 に 活 用 する 具 体 的 な 利 用 方 法 有 機 質 肥 料 や 堆 肥 などを 化 学 肥 料 代 替 として 使 う 場 合 5~10 年 連 用 すると 投 入 有 機 物 の 窒 素 含 量 と 同 様 な 窒 素 が 毎 年 土 壌 から 供 給 されることとなることから 必 要 量 の 半 量 を 施 用 する 場 合 各 種 有 機 質 資 材 をどれくらい 施 用 すれば 対 応 可 能 かを 計 算 した 表 が 下 表 である 表 Ⅴ-1-(2)-1 窒 素 施 用 基 準 の 半 量 を 有 機 質 で 補 給 する 場 合 の 資 材 施 用 量 資 材 ( 現 物 t/ 年 ) 作 物 名 わら 堆 ふん 尿 堆 肥 木 質 混 合 堆 肥 ハ ーク 堆 汚 泥 コン 必 要 N 量 kg 肥 牛 ふん 豚 ふん 鶏 ふん 牛 ふん 豚 ふん 鶏 ふん 肥 ホ スト /10a N 量 4 7 14 18 6 9 9 5 15 大 豆 2 0.3 0.1 - - 0.2 0.1 0.1 0.2 - ハ レイショ 11 1.4 0.8 0.4 0.3 0.9 0.6 0.6 1.1 0.4 トマト 30 3.8 2.1 1.1 0.8 2.5 1.7 1.7 3.0 1.0 ネギ 23 2.9 1.6 0.8 0.6 1.9 1.3 1.3 2.3 0.8 ホウレンソウ 15 1.9 1.1 0.5 0.4 1.3 0.8 0.8 1.5 0.5 インケ ン 10 1.3 0.7 0.4 0.3 0.8 0.6 0.6 1.0 0.3 梨 25 3.1 1.8 0.9 0.7 2.1 1.4 1.4 2.5 0.8 出 典 : 有 機 廃 棄 物 資 源 化 大 辞 典 :p8より5 抜 粋 注 意 :この 表 は 栽 培 期 間 中 に 必 要 な 養 分 供 給 量 の 半 量 を 有 機 質 の 連 用 で 対 応 する 場 合 の 数 値 であり 連 用 後 土 壌 供 給 量 が 安 定 した 状 態 での 施 用 量 である 例 えば トマトは 施 肥 量 が30kg./10a 必 要 とする 場 合 の 半 量 =15kgを 豚 糞 で 施 用 する 場 合 は 豚 糞 堆 肥 はton 当 たり9kg 窒 素 を 含 むことから15/9=1.66で1.7 記 載 されている イ 減 化 学 肥 料 栽 培 の 考 え 方 減 化 学 肥 料 栽 培 を 進 めるため 堆 肥 や 有 機 質 肥 料 を 利 用 することとなるが 堆 肥 で 化 学 肥 料 の 代 替 を 行 う 場 合 初 期 の 窒 素 不 足 による 生 育 不 良 となることが 多 いため 初 期 生 育 確 保 に 化 学 肥 料 や 有 機 質 入 り 肥 料 を 使 用 して 初 期 生 育 を 確 保 し その 後 有 機 質 肥 料 - 150 -
や 鶏 ふんなど 肥 効 が 早 い 資 材 を 使 うなど 施 用 する 有 機 質 肥 料 等 の 無 機 化 特 性 を 十 分 考 慮 して 進 めることが 重 要 である そして 基 本 となる 土 壌 からの 窒 素 成 分 の 供 給 は 長 年 の 堆 肥 施 用 で 補 うこととなるが 代 表 的 な 堆 肥 の 中 でも 牛 ふん 堆 肥 では 無 機 化 率 は 低 く( 全 窒 素 の 内 当 年 度 は5~10% 程 度 ) 豚 ぷん 堆 肥 で20% 前 後 など 各 堆 肥 など の 内 有 効 化 する 量 は 少 ないことを 理 解 し 使 用 する 肥 料 的 効 果 を 狙 った 堆 肥 の 利 用 で は 豚 ぷんなど 中 間 タイプの 肥 効 特 性 を 示 す 堆 肥 の 利 用 が 有 利 となる コラム 水 稲 の 水 管 理 を 湛 水 管 理 とすると 施 肥 法 は 変 わってくるの? 水 稲 の 湛 水 管 理 は 最 近 では カドミウムの 吸 収 抑 制 対 策 技 術 の 一 つとして 実 施 されて いますが 従 来 から 泥 炭 質 土 壌 などの 排 水 不 良 田 や 鉄 含 量 の 低 い 老 朽 化 水 田 では 湛 水 管 理 により 硫 化 水 素 が 発 生 して 根 腐 れ 等 が 生 じるなど 秋 落 ち 現 象 がおこることが 問 題 視 されてきました この 結 果 秋 落 ち 水 田 では 根 腐 れ 対 策 として 無 硫 酸 根 肥 料 が 多 く 用 いられてきました 一 方 湛 水 管 理 での 土 壌 還 元 によるカドミウムの 不 可 給 化 には 土 壌 中 のイオウが 有 効 であり 塩 安 系 の 無 硫 酸 根 肥 料 のみの 連 年 施 用 は 問 題 を 生 じる 可 能 性 が 懸 念 されますが 現 状 では カドミウムの 吸 収 抑 制 効 果 が 低 下 するという 報 告 はあ りません - 151 -