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Transcription:

上 越 教 育 大 学 内 附 属 小 学 校 内 高 田 教 育 研 究 会 教 育 創 造 vol.169 掲 載 特 集 子 どもの 学 びをつなぐ スタートカリキュラム 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 をつなぐ 生 活 科 の 教 科 特 性 とスタートカリキュラム 上 越 教 育 大 学 大 学 院 教 授 木 村 吉 彦 はじめに 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 生 活 編 では スタートカリキュラム という 用 語 が 明 記 され(45 頁 ) 幼 児 期 の 遊 び 中 心 の 生 活 経 験 を 踏 まえた 合 科 的 関 連 的 な 学 習 の 導 入 が 低 学 年 教 育 に 必 要 であり その 中 核 を 担 うのが 生 活 科 であることが 強 調 された 生 活 科 のもつ 幼 保 小 連 携 上 の 重 要 性 はこれからもますます 強 調 されていくであろう 本 稿 で は 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 の 違 い 両 者 をつなぐ 生 活 科 の 特 性 そして スタートカリ キュラム について その 定 義 や 意 味 付 け そして 作 成 のポイントについて 述 べ 現 在 の 我 が 国 の 学 校 教 育 の 重 要 課 題 の 一 つである 幼 保 小 連 携 及 びスタートカリキュラムの 理 論 的 な 背 景 を 明 らかにする Ⅰ 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 の 違 いと 両 者 をつなぐ 生 活 科 1. 幼 児 期 から 新 入 児 童 期 の 子 どもの 学 び 子 どもにとって 小 学 校 への 入 学 とは 遊 び 中 心 の 生 活 から( 教 科 ) 学 習 中 心 の 生 活 へと 生 活 スタイルが 大 きく 変 わることである 幼 児 期 の 子 どもたちは 遊 びながら 様 々な 資 質 や 能 力 を 身 に 付 けているが 小 学 校 以 降 は 学 びや 育 ちが 点 数 化 されたり 行 動 内 容 によって 判 断 評 価 されたりする どちらも 学 び 育 ち ( 様 々な 力 や 資 質 能 力 を 身 に 付 け ていく 姿 )は 共 通 であるが その 質 が 違 っていると 言 わざるを 得 ない そもそも 連 携 とは 同 じ 目 的 を 持 つ 者 が 互 いに 連 絡 を 取 り 協 力 しあって 物 事 を 行 うこと であり 単 なる 5 歳 児 と 小 学 校 1 年 生 だけの 問 題 ではない 幼 保 小 連 携 の 鍵 は 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 について それぞれの 教 師 がお 互 いをよく 理 解 し 合 い 双 方 の 子 どもの 育 ちにつなげることである 異 校 種 間 連 携 にとってのキーワードは 相 互 理 解 と 互 恵 性 (お 互 いにメリットが 見 いだせる 活 動 具 体 的 には 交 流 授 業 など)で ある ここでは まずはじめに 遊 びの 意 義 を 明 らかにすることで 幼 児 教 育 と 生 活 科 の 共 通 部 分 の 意 味 を 確 認 する 次 に 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 の 違 いを 教 育 の 目 的 論 方 法 論 評 価 論 の3 観 点 から 明 らかにし 両 者 をつなぐことで 幼 児 期 から 新 入 児 童 期 の 連 続 的 な 学 びを 保 つ 生 活 科 の 特 質 を 明 らかにする 2. 遊 びの 意 義 幼 児 期 から 新 入 児 童 期 の 学 びをつなぐ 要 素 幼 児 の 生 活 の 中 心 をなす 遊 びには 子 どもの 成 長 にとってどんな 意 味 があるだろうか - 1 -

遊 びとは 自 分 で 見 付 けた 課 題 を 自 分 なりの 方 法 で 自 分 の 力 で 実 現 達 成 すること のできる 自 己 実 現 体 験 ( 活 動 )である そこでは 自 己 選 択 自 己 決 定 の 機 会 がふんだん に 与 えられる やったぁ! という 思 い 自 分 もなかなかやるもんだ という 思 い ぼくもやればできる という 思 い これらの 達 成 感 自 己 肯 定 感 が 自 分 づくりの 原 点 で ある 自 分 づくり すなわち 主 体 性 の 源 の 提 供 これが 遊 びのもつ 一 番 の 意 義 である 自 分 の 好 きな 遊 び( 自 分 で 決 めた 課 題 )に 没 頭 専 念 集 中 でき 自 分 の 力 で 実 現 を 果 た すという 自 己 実 現 の 経 験 から ぼくは 縄 跳 びが 大 好 きです 私 は 鉄 棒 が 得 意 です というような 自 分 は~ができます 自 分 は~が 大 好 きです 自 分 は~が 得 意 です という 自 分 を 意 識 自 覚 することができるようになる 一 方 小 学 校 学 習 指 導 要 領 の 生 活 科 以 外 の 従 来 教 科 で 言 えば 漢 字 や 計 算 のように 課 題 は 自 分 で 決 められない 覚 える 内 容 が 最 初 から 決 められていて 児 童 にとっては 常 に 外 からの 課 題 としてやってくる そして その 課 題 に 自 分 はどう 対 応 するのか(どの ように 習 得 活 用 できるか)が 求 められる それが 小 学 校 以 上 の 教 育 である もちろん 私 たちおとなも 常 に 外 から 課 題 が 与 えられて それにどう 応 えるかが 問 われる 外 から の 課 題 に 応 える 力 の 前 提 となる 内 なる 課 題 への 対 応 力 をつくるのが 幼 児 教 育 の 遊 びであり 生 活 科 の 遊 び 的 要 素 であり そこではぐくまれる 主 体 性 なのである 自 分 の 課 題 を 自 分 で 決 めて その 実 現 に 邁 進 努 力 する その 経 験 の 積 み 重 ねが やがて 外 から 与 えられた 課 題 にも 対 応 できる 力 へとつながっていく このような 自 己 実 現 の 体 験 が 幼 児 期 から 新 入 児 童 期 に 最 も 必 要 とされる 学 びである さらに 言 えば 私 たちおとなにとっても 言 えることであるが 外 からの 課 題 に 対 して 仕 方 がないから 言 われたとおりに 対 応 するしかない では 真 の 意 味 の 資 質 能 力 の 向 上 にはつながらないであろう やはり 外 からの 課 題 であっても その 内 容 を 自 分 なり に 受 け 止 め 直 し 内 なる 課 題 として 捉 え 直 し その 対 応 策 を 考 察 判 断 実 行 するこ とで 真 の 自 分 自 身 の 資 質 能 力 向 上 につながる 客 観 的 には 外 からの 課 題 であっても 自 分 自 身 の 内 なる 課 題 として 受 け 止 め 直 し 対 応 することが 私 たちの 一 生 の 課 題 である つまり 遊 び とは 子 どものみならず 私 たち 人 間 にとって 人 生 の 根 本 課 題 に 対 応 するため の 原 体 験 なのである 3. 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 の 違 い 1 教 育 目 的 の 観 点 から 幼 稚 園 教 育 要 領 や 保 育 所 保 育 指 針 の 中 の ねらい を 具 体 的 に 見 てみると それらは 育 てたい 子 ども 像 であり 子 どもを 育 てる 方 向 性 を 示 したものである 例 えば 領 域 健 康 のねらいの(2)は 次 のようになっている (2) 自 分 の 体 を 十 分 に 動 かし 進 んで 運 動 しようとする このねらいは 自 分 の 体 を 十 分 に 動 かし 進 んで 運 動 しようとすることのできる 子 ど も つまり 運 動 好 きの 子 どもを 育 てるという めざす 子 ども 像 を 示 している 幼 児 教 育 のねらいは その 方 向 に 子 どもを 育 てようという 提 案 を 意 味 している サッカーで 運 動 好 きになってもよいし 縄 跳 びで 運 動 好 きの 子 どもになってもかまわない また シュ ートが 上 手 かどうか 縄 跳 びが 何 回 跳 べるかは 特 に 問 われない このように 子 どもの 育 ちの 方 向 性 を 示 す 教 育 目 標 のことを 方 向 目 標 ( 一 般 目 標 とも 言 う) と 言 う - 2 -

一 方 小 学 校 ではどうだろうか なわとび 名 人 カード というものを 多 くの 小 学 校 で 出 している 教 科 体 育 の 目 標 として 運 動 好 きの 子 どもを 育 てたい という 方 向 目 標 もあるはずではあるが 実 際 の 授 業 となると 例 えば 1 年 生 では 前 回 り30 回 以 上 跳 べないと なわとび 名 人 としてのスタンプはもらえない このような 教 育 目 標 を 到 達 目 標 と 言 う このように 小 学 校 教 育 では その 達 成 度 到 達 度 を 中 心 に 学 習 が 展 開 さ れる それに 対 して 幼 児 教 育 ではその 子 が 育 っている 方 向 性 を 大 事 にし どこまでで きるかの 到 達 目 標 は 基 本 的 に 問 わない 方 向 目 標 中 心 か 到 達 目 標 中 心 かが 教 育 目 的 論 から 見 た 両 者 の 違 いである もちろん どっちがよいわるいの 問 題 ではない 2 教 育 方 法 の 観 点 から 幼 児 教 育 の 基 本 は 環 境 を 通 して 行 う 教 ( 保 ) 育 である これは 子 どもが 自 分 か ら 進 んで 動 き 出 したくなるような 教 ( 保 ) 育 環 境 設 定 に 基 づく 教 育 保 育 が 展 開 される ことを 意 味 する これを 間 接 教 育 と 言 う すなわち 間 接 教 育 とは 教 ( 保 ) 育 のねらいや 目 標 を 学 習 ( 保 育 ) 環 境 に 反 映 させることによって 学 習 者 ( 子 ども)の 主 体 的 な 活 動 を 誘 発 しよ うとする 教 育 の 方 法 のことである そのとき 学 習 ( 保 育 ) 環 境 を 構 成 する 要 素 として 人 的 環 境 物 的 環 境 の 二 つが 考 えられる 一 方 教 科 書 を 使 って 行 われる 方 法 に 代 表 される 直 接 教 育 が 小 学 校 以 上 の 教 育 方 法 の 中 心 である 何 頁 を 開 きなさい そこを 読 みなさい というように 教 師 のねらいや 意 図 を 直 接 指 示 命 令 することで 行 われる 教 育 方 法 である 間 接 教 育 を 中 心 として 教 育 保 育 が 展 開 されるのが 幼 児 教 育 直 接 教 育 を 中 心 として ( 教 科 学 習 中 心 の) 教 育 が 展 開 されるのが 小 学 校 教 育 である ここでも どちらがよい わるいの 問 題 ではない 幼 児 教 育 にあっても 次 はお 食 事 だから 手 を 洗 いましょうね といった 直 接 的 な 指 示 による 保 育 も 行 われるからである 3 教 育 評 価 の 観 点 から 幼 児 教 育 では その 子 のかつての 姿 と 今 の 姿 を 比 べてその 伸 び を 明 らかにすることで 子 ど も 理 解 を 大 切 にする この 評 価 のあり 方 を 個 人 内 評 価 と 言 う これは 他 者 との 比 較 によ らないので 明 らかに 絶 対 評 価 である 幼 児 教 育 の 評 価 では 徹 底 した 絶 対 評 価 が 基 本 で ある 個 人 内 評 価 とは 子 どもを 全 人 的 に 捉 えながら 行 う 保 育 教 育 にとって 重 要 な 評 価 のあ り 方 である さらに 言 えば 幼 稚 園 幼 児 指 導 要 録 では 子 どもの 姿 を 文 章 により 記 述 し 特 に 成 長 の 著 しかった 領 域 についての 子 どもの 姿 を 書 き 出 すことが 求 められている 一 方 ここ20 年 ほど 小 学 校 以 上 の 学 校 教 育 においても 絶 対 評 価 が 主 流 になってい る 小 学 校 では 教 育 目 標 を 子 どもの 姿 で 書 き 出 した 評 価 規 準 を 指 導 案 に 書 き 出 す これが 目 標 準 拠 評 価 と 呼 ばれる 小 学 校 教 育 での 絶 対 評 価 のあり 方 である 最 終 的 に は ABCによる 段 階 評 価 を 指 導 要 録 に 書 き 出 さなくてはならない ここで 大 切 な ことは 評 価 の 基 本 = 子 ども 理 解 という 発 想 である これは 幼 児 教 育 や 生 活 科 の 評 価 の 基 本 でもある はじめに 子 ども 理 解 あり に 徹 することこそが 現 在 の 学 校 評 価 の 基 本 であ ることを 意 味 している 結 論 としては 幼 児 教 育 の 評 価 は 個 人 内 評 価 という 徹 底 した 絶 対 評 価 に 基 づく 一 方 小 学 校 では 目 標 準 拠 評 価 という 教 師 のねらいと 子 どもの 発 達 実 態 に 即 した 絶 対 評 価 が - 3 -

求 められている 4. 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 をつなぐものとしての 生 活 科 次 に 生 活 科 の 教 科 特 性 を やはり3つの 観 点 から 明 らかにしよう 1 教 育 目 的 の 観 点 から 生 活 科 の 究 極 的 な 目 標 は 自 立 への 基 礎 を 養 う という 抽 象 的 な 内 容 である 人 間 が 独 り 立 ちするための 基 礎 的 部 分 を 育 てるという 子 ども 像 と 育 てたい 方 向 性 が 示 されてい る これは 明 らかに 方 向 目 標 である しかし 実 際 の 授 業 では 子 どもたちが 独 り 立 ちに 向 かってどのくらい 育 ったかを 見 取 りつつ また 独 り 立 ちするための 資 質 能 力 を 到 達 目 標 や 行 動 目 標 として 設 定 して 授 業 を 展 開 して 構 わない 例 えば この 単 元 を 通 して 子 ども 達 が 自 分 の 考 えを 人 前 で 堂 々と 発 表 できるように 指 導 しよう( 自 己 表 現 力 の 育 成 ) という 到 達 目 標 ( 行 動 目 標 )を 設 定 して 活 動 に 取 り 組 んでよい つま り 生 活 科 の 場 合 個 々の 単 元 や 個 々の 児 童 に 対 しては 具 体 的 な 到 達 目 標 ( 行 動 目 標 ) を 設 定 することは 可 能 であるし 全 く 問 題 はない このように 生 活 科 の 教 育 目 標 は 到 達 目 標 を 内 に 含 んだ 方 向 目 標 なのである この ように 教 育 目 標 を 構 造 化 して 考 えることで 生 活 科 実 践 がよりスムーズに 展 開 できる 2 教 育 方 法 の 観 点 から 例 えば 秋 をさがそう という 単 元 では 教 師 がどんぐりを 教 室 に 持 ってきて 見 せて これが 秋 ですよ 覚 えなさい と 教 えるようなことはしない そうではなく 低 学 年 教 師 は 子 どもたちに 秋 を 見 つけさせようとして 公 園 に 連 れて 行 き 子 どもたちが 自 分 か ら 秋 を 見 つけるように 仕 組 む 秋 を 見 つけさせたいという 教 師 のねらいが 反 映 された 公 園 という 教 育 環 境 ( 物 的 環 境 )に 子 どもを 連 れ 出 し 子 どもが 自 分 から 秋 を 見 つけたく なるような 言 葉 がけをして( 人 的 環 境 としての 教 師 として) 授 業 をする これは まさ しく 間 接 教 育 の 考 え 方 による 教 育 方 法 である 一 方 教 室 に 戻 ったら 作 文 シートや 学 習 カードに 今 日 の 活 動 や 感 想 を 書 く 時 間 を 設 ける このとき 教 師 は カードや 作 文 に 書 いてね と 直 接 指 示 をする 生 活 科 の 方 法 論 の 基 本 は あくまで 子 どもが 自 ら 動 き 出 したくなるような 学 習 環 境 を 設 定 す ることであり 教 え 込 み 指 示 命 令 は 極 力 控 えなければならない しかし 同 時 に 振 り 返 りや 記 録 を 残 す 作 業 も 重 要 である このように 生 活 科 の 方 法 論 の 基 本 は 間 接 教 育 であり 教 え 込 み 指 示 命 令 は 極 力 控 えるが 適 宜 直 接 教 育 も 取 り 入 れた 指 導 が 行 われる 3 教 育 評 価 の 観 点 から 生 活 科 では 対 象 が 小 学 校 低 学 年 ということもあり 絶 対 評 価 の 考 え 方 を 基 本 にして 評 価 活 動 を 進 めなくてはならない 他 児 との 比 較 によるのではなく まさにその 子 の 伸 び を 認 めて 褒 めてあげることが 基 本 である しかし 小 学 校 なので 指 導 案 の 中 には 評 価 規 準 が 書 き 出 されてある その 目 標 に 関 してどのような 姿 を 見 せているか そして その 目 標 に 対 してどのレベルにまで 達 しているかを 見 極 めるのが 生 活 科 の 評 価 活 動 にな る 他 者 と 比 べることはないが 教 師 の 設 定 したねらい すなわち 評 価 規 準 に 忠 実 に 学 習 活 動 を 展 開 することが 求 められる 従 って 生 活 科 の 評 価 は 評 価 規 準 (A B Cに よる 評 価 )を 前 提 とした 個 人 内 評 価 である - 4 -

さらに 言 えば 生 活 科 においては いいとこ 見 つけ が 評 価 ( 子 ども 理 解 )の 原 則 である そのことで 児 童 の 自 己 肯 定 感 を 引 き 出 し 生 きる 自 信 を 与 え 自 立 への 基 礎 づくりにつなが る このことが やがては 生 きる 力 育 成 という 現 代 日 本 の 学 校 教 育 の 究 極 目 標 に 結 び ついていく 4 幼 小 連 携 の 鍵 を 握 る 教 科 としての 生 活 科 以 上 から 生 活 科 の 場 合 教 育 目 的 は 到 達 目 標 を 内 に 含 んだ 方 向 目 標 教 育 方 法 は 間 接 教 育 中 心 で 適 宜 直 接 教 育 を 取 り 入 れる 教 育 評 価 は 評 価 規 準 を 前 提 とした 個 人 内 評 価 である このように 生 活 科 は 幼 児 教 育 と 小 学 校 教 育 の 両 方 の 性 格 を 併 せ 持 つ 教 科 であり 幼 保 小 連 携 の 鍵 を 握 る 教 科 である それは 生 活 科 が 幼 児 期 から 新 入 児 童 期 の 学 び をつなぐ 役 割 を 果 たしていることを 意 味 している Ⅱ スタートカリキュラムと 生 活 科 実 践 生 活 科 は 教 科 の 性 格 上 国 語 音 楽 図 工 など 他 教 科 等 との 関 連 が 深 く 今 回 の 改 訂 においてもますますその 必 要 性 が 強 調 された 同 時 に 他 教 科 ( 国 語 音 楽 図 工 )の 指 導 要 領 においても 指 導 計 画 の 作 成 と 内 容 の 取 扱 い のなかで 低 学 年 における 生 活 科 との 積 極 的 な 関 連 が 明 示 された 生 活 科 の 学 習 指 導 に 当 たっては 低 学 年 教 育 全 体 を 視 野 に 入 れて 他 教 科 等 との 関 連 を 図 りながら 進 めていくことがますます 求 められ ている 今 改 訂 において 生 活 科 の 指 導 計 画 作 成 と 内 容 の 取 扱 い の 中 に 特 に 第 1 学 年 入 学 当 初 においては 生 活 科 を 中 心 とした 合 科 的 な 指 導 を 行 うなどの 工 夫 をすること が 付 加 され この 文 言 を 基 に 解 説 第 4 章 指 導 計 画 作 成 上 の 配 慮 事 項 の(3)に スタートカリキュラムの 編 成 が 新 入 児 童 の 小 学 校 生 活 への 適 応 を 促 し 小 1プロブ レムなどの 問 題 解 決 に 効 果 的 であるという 見 解 が 示 された 以 上 のような スタートカリキュラム 作 成 の 必 要 性 を 確 認 した 上 で 解 説 を 基 に しながら ここでは それぞれのキーワードについての 筆 者 なりの 定 義 付 けを 行 う 合 科 的 な 指 導 と 関 連 的 な 指 導 との 区 別 については 解 説 の 文 言 だけでは 理 解 しにくいた め 筆 者 の 思 いきった 見 解 を 以 下 に 書 き 出 す 1.スタートカリキュラムとは スタートカリキュラムとは 新 入 児 童 の 入 学 直 後 約 1ヶ 月 間 において 児 童 が 幼 児 期 に 体 験 してきた 遊 び 的 要 素 とこれからの 小 学 校 生 活 の 中 心 をなす 教 科 学 習 の 要 素 の 両 方 を 組 み 合 わせた 合 科 的 関 連 的 な 学 習 プログラムのことである とりわけ 入 学 当 初 の 生 活 科 を 中 核 とした 合 科 的 な 指 導 は 児 童 に 明 日 も 学 校 に 来 たい という 意 欲 をかき 立 て 幼 児 教 育 から 小 学 校 教 育 への 円 滑 な 接 続 をもたらし 新 入 児 童 の 小 学 校 へのスムー ズな 適 応 を 促 してくれることが 期 待 される 2. 合 科 的 な 指 導 とは 合 科 的 な 指 導 とは 学 習 のねらいとして 抽 象 度 の 高 い 方 向 目 標 ( 育 てたい 子 ども の 全 体 像 を 示 した 教 育 目 標 )を 定 め その 目 標 を 達 成 するために 遊 び 的 要 素 の 強 い 活 - 5 -

動 や 教 科 にも 連 動 するような 活 動 を 取 り 入 れ 児 童 の 登 校 意 欲 や 学 習 意 欲 を 高 めるよう な 指 導 のことである 例 えば がっこうだいすき という 単 元 名 にし 目 標 を 学 校 が 大 好 きになり 明 日 も 学 校 に 来 たいと 思 える 子 ども を 育 てることと 設 定 したとする 実 際 の 活 動 の 中 には ゲームや ダンスといった 遊 び 的 な 活 動 と 並 行 して 例 えば 学 校 探 検 ( 生 活 科 ) 自 己 紹 介 ( 国 語 ) 友 だち 何 人?( 算 数 ) 校 歌 を 歌 おう( 音 楽 ) 自 画 像 で 自 己 紹 介 ( 図 工 )などを 取 り 入 れ やがて 様 々な 教 科 学 習 に 結 びつく 活 動 を 遊 びながら 展 開 していくことが 考 えられ る スタートカリキュラムは 育 てたい 子 ども 像 = 活 動 を 中 心 とした 学 習 全 体 のねらい が 先 にある 合 科 的 指 導 が 相 応 しいと 考 える 生 活 科 の 持 つ 教 科 目 標 の 抽 象 度 の 高 さ( 自 立 への 基 礎 を 養 う)と 学 習 の 自 由 度 の 大 き さ( 学 習 の 大 枠 は 教 師 が 決 めるが 具 体 的 な 活 動 や 学 習 内 容 は 子 どもが 決 められる)が スタートカリキュラムをより 効 果 的 にするのである スタートカリキュラムが 生 活 科 を 中 核 とした 合 科 的 な 指 導 計 画 に 基 づくことが 望 ましいという 理 由 は ここにある 3. 関 連 的 な 指 導 とは 一 方 関 連 的 な 指 導 とは ある 一 つの 教 科 の 目 標 を 中 心 に 据 え その 目 標 を 達 成 する ために 他 教 科 の 活 動 を 取 り 入 れて 行 う 学 習 指 導 プログラムのことである 例 えば 生 活 科 でアサガオ 栽 培 に 取 り 組 み アサガオさんとともだち という 単 元 を 設 定 し アサ ガオに 強 い 愛 着 を 持 ち ぼく わたしのアサガオ という 意 識 を 高 める という 目 標 を 設 定 したとする アサガオに 愛 着 を 持 たせるために 学 習 カードに 絵 や 作 文 をかく 活 動 ( 図 工 国 語 ) アサガオの 花 や 種 の 数 を 数 える 活 動 ( 算 数 ) アサガオのつるでリース を 作 る 活 動 ( 図 工 このとき まだ 緑 が 残 っているので 切 りたくないという 子 が 出 る 命 の 問 題 = 道 徳 )などを 関 連 させることで 生 活 科 のねらい( 継 続 的 な 栽 培 活 動 を 通 し てアサガオの 生 長 と 自 分 自 身 の 成 長 に 気 付 く)をより 確 実 に 達 成 することが 可 能 となる もちろん 学 級 での 話 し 合 い 活 動 ( 特 活 )も 生 活 科 学 習 では 大 変 重 要 である 生 活 科 の 日 常 的 継 続 的 な 活 動 を 他 教 科 や 領 域 学 習 の 素 材 とすることで 様 々な 側 面 からの 表 現 力 を 身 に 付 けることができる 同 時 に 生 活 科 は 学 級 集 団 作 りにとっても 有 効 な 学 習 活 動 である これは 低 学 年 教 育 全 体 として 取 り 入 れたい 学 習 スタイルである 題 材 は 生 活 で 表 現 は 他 教 科 で 学 習 することで 様 々な 教 科 との 関 連 も 重 要 であるという 生 活 科 の 教 科 特 性 を 象 徴 するのが 関 連 的 な 指 導 である 合 科 的 指 導 関 連 的 指 導 の 両 方 の 活 用 によって 新 入 児 童 の 教 科 学 習 への 接 続 がよりスムーズに 果 たされることにつながる Ⅲ スタートカリキュラムの 意 義 と 作 成 のポイント 1. 小 1プロブレムの 克 服 子 どもにとっては 遊 び 中 心 の 生 活 から 教 科 学 習 中 心 の 生 活 へと 生 活 スタイルが 変 化 することは かなり 大 きな 段 差 である これまでは 自 分 で 決 めた 課 題 ( 自 分 のした い 遊 び)を 自 分 で 達 成 する( 自 分 の 力 で 実 現 する) 生 活 が 中 心 であったが 教 科 学 習 で は 外 から 来 る 課 題 に 自 分 がどのように 対 処 するのか( 知 識 技 能 の 習 得 が 中 心 )が 問 わ れるからである - 6 -

それと 同 時 に 自 力 での 登 下 校 時 間 割 に 基 づく 生 活 施 設 設 備 の 違 い 等 々 子 ども 目 線 からすれば 多 くの 段 差 が 観 られる そのとき これまで 経 験 してきた 遊 び の 要 素 を 多 く 含 んだ 活 動 に 基 づく 日 々が 送 れることは 子 どもにとって 小 学 校 で もこれまでやってきたことが 通 用 するのだ という 自 信 が 持 てるきっかけになる これ が スムーズな 適 応 を 生 み 出 すというスタートカリキュラムの 第 一 の 意 義 である ただし ここで 確 認 しておきたいことがある それは スタートカリキュラムが 小 1プ ロブレム 対 策 のための 対 症 療 法 を 意 味 するものではない ということである スタートカ リキュラムは 生 活 科 設 立 の 趣 旨 である 子 どもの 発 達 実 態 に 基 づき 一 人 一 人 の 子 ど も 理 解 をもとに 学 習 を 進 める という 発 想 に 基 づいたカリキュラムであり 文 字 通 り 生 活 科 本 来 の 趣 旨 に 則 った 学 習 活 動 であることをここで 確 認 する 2. 子 どもも 安 心 保 護 者 も 安 心 先 生 も 安 心 1.で 述 べたことは 子 どもにとっての 安 心 プログラムと 言 える それに 加 え 全 校 体 制 でスタートカリキュラムに 取 り 組 むことで 保 護 者 や 担 任 教 師 も 安 心 して 新 入 児 童 と 関 わることができる 具 体 的 には 以 下 のようなプランニングと 実 践 がスタートカリキ ュラム 作 成 のポイントとなる 1 保 護 者 も 安 心 1 週 間 ごとの 教 育 目 標 が 週 の 初 めにあらかじめ 示 され かつ 明 日 の 持 ち 物 や 活 動 予 定 を 知 らせてもらうことで 保 護 者 は 安 心 して 子 どもたちを 学 校 に 送 り 出 すことができる 特 に 1 週 間 の 予 定 表 を 事 前 配 布 され 各 教 科 の 配 当 時 数 等 が 示 さ れていると ちゃんと 勉 強 しているんだ と 喜 んでくれる 全 校 を 挙 げて 保 護 者 に 説 明 責 任 を 果 たすことで 保 護 者 からの 理 解 と 協 力 が 得 られる 2 先 生 も 安 心 担 任 のみならず 入 学 後 約 1ヶ 月 間 は 管 理 職 養 護 教 諭 少 人 数 指 導 教 諭 特 別 支 援 教 諭 また 保 護 者 によるボランティアサポーター 等 様 々なおとなに 新 入 児 童 を 見 守 ってもらいたい そうすることで 子 ども 達 は 安 心 感 と 安 定 感 を 持 つことが でき 担 任 の 先 生 も 焦 らず じっくり 自 分 の 担 任 する 子 ども 達 の 様 子 ( 実 態 )を 見 取 る ことができる たった 一 人 で30 人 もの 新 入 児 童 を 世 話 することの 大 変 さを 考 えると 複 数 教 員 での 世 話 は 担 任 に 心 の 余 裕 を 与 えてくれる それによって 担 任 教 諭 は 子 ども 理 解 を 第 一 の 課 題 とする 低 学 年 教 育 のあるべき 姿 を 実 感 することができる 3. 小 学 校 生 活 に 必 要 な 生 活 習 慣 形 成 小 1プロブレムなどでも 論 じられているが 学 校 生 活 に 必 要 な 生 活 習 慣 (ルール 遵 守 の 精 神 や 規 範 意 識 )を 身 に 付 けなくては 新 入 児 童 のその 後 の 小 学 校 生 活 に 支 障 をきた してしまう 既 に 述 べたように スタートカリキュラムでは 遊 び 的 要 素 の 多 い 活 動 か ら 小 学 校 生 活 に 入 るので 子 どもたちは 楽 しみながら 相 手 意 識 をもって 先 生 との 接 し 方 友 達 との 接 し 方 を 学 ぶことができる また 生 活 科 の 学 校 探 検 などを 学 習 活 動 の 中 核 にする 場 合 が 多 いので 廊 下 の 歩 き 方 や おとなへのあいさつの 仕 方 自 己 紹 介 ( 自 己 主 張 )の 仕 方 等 々 人 間 関 係 づくりの 基 礎 基 本 を 学 ぶことができる 多 くの 学 校 では ソーシャルスキルトレーニング をスタートカリキュラムに 取 り 入 れて いると 思 われるが 楽 しみながら かつ 達 成 感 成 就 感 ( 自 己 充 実 感 や 自 己 肯 定 感 ) を 経 験 しながら 社 会 性 を 身 に 付 けるように 指 導 してほしい - 7 -

おわりに この 時 期 の 自 己 中 心 性 とは 自 分 にとって 身 近 なものについてはよく 学 ぶ(よく 覚 え る よく 身 に 付 ける)という 特 徴 をもっている 従 って 自 分 の 好 きな 遊 びや 自 ら 選 ん だ 活 動 に 没 頭 する 体 験 が 重 要 である この 体 験 が 集 中 力 を 生 み 人 間 としての 主 体 性 の 源 を 創 る また この 時 期 の 諸 感 覚 をフルに 使 った 活 動 が 感 覚 ( 感 性 ) 的 な 課 題 発 見 力 を 育 てる 遊 びの 意 義 においても 述 べたが とりわけこの 時 期 に 育 つ 集 中 力 は ぼ くは~が 大 好 きです わたしは が 得 意 です などと 自 信 を 持 って 自 分 を 前 面 に 出 す 力 ( 主 体 的 に 生 きる 力 )に 結 びつく これが 文 字 通 り 自 立 ( 独 り 立 ち)への 基 礎 である 生 活 科 が 最 も 大 切 にする 自 己 肯 定 感 は 幼 児 期 から 児 童 期 初 期 にかけての 自 己 実 現 体 験 や 成 就 感 達 成 感 経 験 がもたらしてくれるものであり 主 体 的 に 生 きる 人 生 のスタートラインを 示 してくれるものである スタートカリキュラムとは 人 生 のスタートカリキュラムである とはこのことを 意 味 する 参 考 引 用 文 献 文 部 科 学 省 小 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 生 活 編 ( 日 本 文 教 出 版 2008) 木 村 吉 彦 編 著 小 学 校 新 学 習 指 導 要 領 の 展 開 生 活 科 編 ( 明 治 図 書 2008) 篠 原 孝 子 田 村 学 編 著 こうすればうまくいく 幼 稚 園 保 育 所 と 小 学 校 の 連 携 ポイント (ぎょうせい 2009) 高 階 玲 治 編 集 幼 小 中 高 の 連 携 一 貫 教 育 の 展 開 ( 教 育 開 発 研 究 所 2009) 木 村 吉 彦 監 修 仙 台 市 教 育 委 員 会 編 スタートカリキュラムのすべて 仙 台 市 発 信 幼 小 連 携 の 新 しい 視 点 (ぎょうせい 2010) - 8 -