中 国 における 地 方 財 政 問 題 と 地 方 債 発 行 の 実 行 可 能 性 についての 研 究 李 建 偉 中 国 国 務 院 発 展 研 究 中 心 マクロ 経 済 研 究 部 副 処 長
1. 中 国 の 地 方 財 政 が 直 面 している 主 要 な 問 題 1.1. 分 税 制 改 革 実 施 後 中 央 と 地 方 における 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 不 平 等 な 配 分 が 地 方 の 財 政 難 を 招 来 している 中 央 と 地 方 の 財 政 関 係 は 詰 まるところ 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 配 分 の 問 題 である 改 革 の 初 期 段 階 (1978~1984 年 )では 計 画 経 済 体 制 の 影 響 を 大 きく 受 けて 中 央 の 財 政 では 事 務 処 理 権 が 財 政 管 理 権 をはるかに 上 回 り 地 方 政 府 の 財 政 では 財 政 管 理 権 が 事 務 処 理 権 を 大 きく 上 回 っていた この 時 期 の 中 央 と 地 方 の 財 政 関 係 は 地 方 が 中 央 を 支 援 し ているというものであった 1980 年 において 中 央 が 財 政 収 入 と 支 出 に 占 める 割 合 はそれぞ れ 24.52%と 54.26%となっており 地 方 についてはそれぞれ 75.48%と 45.74%であった 1985~1993 年 までの 間 は 中 央 と 地 方 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 は 基 本 的 に 対 等 であっ た 1985~1992 年 までは 中 央 と 地 方 での 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 格 差 は 3 ポイント 以 内 となっており 1993 年 もわずか 6 ポイントにとどまっていた ただし 中 央 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 は 年 々 下 降 傾 向 にあり 地 方 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 は 年 々 増 加 しつつ あった 中 央 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 が 全 体 に 占 める 比 率 は 1985 年 の 38.39%と 39.68% から 1993 年 には 22.02%と 28.26%に 減 少 しており 地 方 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 につい ては 1985 年 の 61.61%と 60.32%から 1993 年 には 77.98%と 71.74%に 増 加 している 1994 年 に 分 税 制 改 革 が 実 施 されてからは 中 央 の 財 政 管 理 権 が 大 幅 に 向 上 し 地 方 の 財 政 管 理 権 は 大 幅 に 減 少 したが 一 方 中 央 と 地 方 の 事 務 処 理 権 の 変 化 の 幅 は 比 較 的 小 さい ものとなっている 1994~2002 年 の 中 央 の 財 政 管 理 権 の 比 率 の 平 均 は 52%で 地 方 の 財 政 管 理 権 の 比 率 の 平 均 は 48% 中 央 の 事 務 処 理 権 の 比 率 の 平 均 は 30%で 地 方 の 事 務 処 理 権 の 比 率 の 平 均 は 70%となっている このうち 2002 年 における 中 央 の 財 政 管 理 権 の 比 率 は 55%で 事 務 処 理 権 の 比 率 は 30.7% 地 方 の 財 政 管 理 権 の 比 率 は 45%で 事 務 処 理 権 の 比 率 は 69.3%となっている 分 税 制 改 革 の 実 施 によって 財 政 管 理 権 は 中 央 に 集 中 し 中 央 のマクロコントロール 能 力 が 強 化 されて 一 部 の 地 区 主 に 中 西 部 地 区 では 中 央 が 移 転 支 出 を 強 化 したことにより 全 体 的 に 財 政 収 支 が 改 善 した ただし 事 務 処 理 権 は 財 政 管 理 権 に 伴 って 必 要 なだけ 中 央 へと 集 約 されてはいないため 地 方 財 政 は 苦 境 に 陥 った 例 えば 教 育 衛 生 等 は 明 ら かに 公 共 事 業 としての 特 性 を 有 する 支 出 項 目 であるが これらは 分 税 制 実 施 後 も 依 然 と して 主 に 地 方 の 財 政 で 賄 われており この 2 つの 支 出 が 地 方 財 政 支 出 の 約 20%を 占 めてい る 他 に 資 金 源 泉 が 存 在 しないという 状 況 にあっては 地 方 財 政 による 公 共 事 業 への 支 出 は その 他 の 地 方 支 出 を 圧 迫 するのみであり これにより 地 方 財 政 は 苦 境 に 陥 っている
図 1 1978~2002 年 の 中 央 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 変 化 状 況 (%) 60 財 政 管 理 権 事 務 処 理 権 50 40 30 20 10 0 1978 1980 1985 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 図 2.1978~2002 年 地 方 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 変 化 状 況 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 財 政 管 理 権 事 務 処 理 権 1978 1980 1985 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
1.2. 分 税 制 改 革 実 施 後 中 西 部 地 区 では 全 体 的 な 地 方 財 政 収 支 の 状 況 は 改 善 されたが 中 西 部 の 地 方 財 政 収 支 難 という 問 題 につい ては 抜 本 的 な 解 決 が 図 られていない 分 税 制 改 革 の 実 施 により 中 央 のマクロコントロール 能 力 は 増 強 され 地 域 経 済 の 発 展 の 不 均 衡 を 改 善 するために 中 西 部 地 区 に 対 する 財 政 的 な 支 持 が 増 強 された 中 西 部 地 区 の 地 方 財 政 収 支 は 全 体 的 に 改 善 しており 2001 年 の 中 部 と 西 部 地 区 の 地 方 財 政 収 入 は わ ずかに 1,734 億 元 と 1,477 億 元 であるが 財 政 支 出 は 3,552 億 元 と 3,791 億 元 にも 達 してい る この 中 部 と 西 部 地 区 の 1,818 億 元 と 2,314 億 元 の 収 支 差 額 は 中 央 財 政 による 移 転 支 出 の 結 果 であり すなわち 中 西 部 地 区 の 財 政 収 入 に 対 する 中 央 財 政 の 移 転 支 出 が 当 該 地 域 の 地 方 財 政 収 入 を 超 えているということである また 2001 年 の 中 央 財 政 の 東 部 地 区 財 政 に 対 する 移 転 はわずか 1,200 億 元 であった ただし 中 央 財 政 の 中 西 部 地 区 財 政 に 対 する 移 転 支 出 は 中 西 部 地 区 の 地 方 財 政 収 支 難 という 問 題 の 抜 本 的 な 解 決 を 図 るものではない な ぜなら 中 央 財 政 の 移 転 支 出 は 主 に インフラ 整 備 農 業 支 援 社 会 保 障 政 策 性 補 助 金 行 政 事 業 団 体 行 政 管 理 などの 特 定 の 領 域 に 集 中 しており 多 額 の 支 出 が 専 用 の 特 別 支 出 とされていることが 挙 げられる 教 育 衛 生 都 市 建 設 維 持 等 の 地 方 財 政 が 支 出 を 負 担 す る 事 業 は 依 然 として 中 西 部 地 区 の 限 りある 財 政 収 入 という 制 約 を 受 けているのである 一 方 東 部 地 区 については 中 央 財 政 の 移 転 支 出 が 比 較 的 少 なく 分 税 制 の 実 施 により 中 央 に 上 納 される 税 収 が 比 較 的 多 いため 相 対 的 には 財 政 収 入 は 流 出 する 一 方 であり こ れに 加 えて 東 部 地 区 では 教 育 衛 生 都 市 建 設 維 持 などの 公 共 事 業 への 資 金 投 入 が 多 いこ とから 自 ずと 他 の 事 業 への 支 出 が 圧 迫 され 結 果 として 地 方 財 政 に 同 様 の 困 難 な 事 態 を もたらしている 表 1.2001 年 の 中 国 の 地 域 別 財 政 収 支 状 況 財 政 支 出 財 政 収 入 収 支 差 額 地 方 合 計 ( 万 元 ) 131,345,584 78,032,999-53,312,585 東 部 57,913,234 45,915,954-11,997,280 中 部 35,523,276 17,344,350-18,178,926 西 部 37,909,074 14,772,695-23,136,379 構 成 (%) 東 部 44.09 58.84 22.50 中 部 27.05 22.23 34.10 西 部 28.86 18.93 43.40
表 2.2001 年 の 中 国 の 地 域 別 財 政 支 出 構 成 支 出 項 目 地 方 合 計 東 部 中 部 西 部 インフラ 整 備 費 12.54 11.94 10.25 15.61 潜 在 事 業 開 発 費 4.58 6.36 3.67 2.72 地 質 探 査 費 0.53 0.21 0.73 0.83 科 技 三 項 ( 新 製 品 試 作 中 間 テスト 重 要 科 学 技 術 事 業 ) 費 1.08 1.37 1.05 0.67 流 動 資 金 0.07 0.03 0.09 0.11 農 村 支 援 費 1.90 2.03 1.64 1.93 農 業 総 合 開 発 費 0.83 0.71 0.95 0.92 農 林 水 利 気 象 部 門 事 業 費 3.50 2.33 3.60 5.21 工 業 交 通 事 業 費 0.89 0.85 0.95 0.91 流 通 部 門 事 業 費 0.17 0.11 0.23 0.19 文 化 娯 楽 スポーツ 放 送 事 業 費 2.44 2.50 2.26 2.51 教 育 事 業 費 15.50 16.25 14.95 14.87 科 学 事 業 費 0.67 0.85 0.52 0.54 衛 生 経 費 4.24 4.68 3.49 4.29 税 務 等 部 門 費 4.74 4.82 4.97 4.39 弔 慰 金 社 会 福 祉 救 済 金 2.02 1.86 2.36 1.94 行 政 事 業 団 体 費 4.33 3.35 4.68 5.50 社 会 保 障 費 5.69 2.88 9.60 6.31 国 防 支 出 費 0.09 0.08 0.09 0.11 行 政 管 理 8.98 8.04 8.88 10.50 外 交 外 事 費 0.07 0.07 0.08 0.07 武 装 警 察 費 0.14 0.13 0.12 0.16 警 察 検 察 庁 裁 判 所 支 出 6.59 7.22 6.20 6.01 都 市 維 持 費 4.32 5.52 3.86 2.94 政 策 性 補 助 金 3.37 1.94 6.47 2.66 貧 困 地 域 支 援 費 1.02 0.28 0.88 2.27 海 域 開 発 建 設 費 0.01 0.01 0.01 0.00 特 別 支 出 1.74 2.09 1.68 1.26 その 他 支 出 7.94 11.49 5.75 4.58
1.3. 分 税 制 改 革 実 施 後 各 地 区 には 財 政 管 理 権 が 上 級 機 関 へ 集 約 さ れつつあるという 現 象 が 存 在 しており これが 県 及 び 郷 鎮 等 の 末 端 財 政 に 困 難 を 生 じさせる 主 要 な 原 因 となっている 1994 年 に 分 税 制 による 財 政 体 制 改 革 が 実 施 されてから 中 央 政 府 は 主 要 な 税 種 である 増 値 税 の 75%を 中 央 の 収 入 とし 地 方 に 配 分 するのは 徴 収 コストが 嵩 む 一 部 の 税 種 のみとし ている 1994 年 の 分 税 制 改 革 は 中 央 の 財 政 収 入 を 如 何 に 向 上 させるかという 点 のみを 考 慮 しており 地 方 税 の 有 効 性 をほとんど 省 みていないため 結 果 として 経 済 が 発 達 して いない 県 郷 の 財 政 収 入 は 著 しく 減 少 している さらに 省 市 の 大 部 分 では 分 税 制 実 施 に より 地 区 内 部 でも 財 政 管 理 権 が 中 央 へと 集 約 されつつあるか または 中 央 税 収 の 返 還 が 保 留 されていることにより 県 郷 等 の 末 端 組 織 の 財 政 運 営 はより 一 層 困 難 さを 増 している 西 部 地 区 の 甘 粛 省 と 東 部 地 区 の 江 蘇 省 を 例 にとると 分 税 制 改 革 初 期 の 1995 年 には 甘 粛 省 と 江 蘇 省 の 県 と 市 の 財 政 収 入 が 省 全 体 の 財 政 に 占 める 割 合 はそれぞれに 上 昇 しており 1992 年 との 比 較 では 33.37 ポイントと 1.43 ポイントの 上 昇 となっている 一 方 県 と 市 の 財 政 支 出 が 省 全 体 の 財 政 支 出 に 占 める 割 合 はそれぞれに 下 降 しており 1992 年 との 比 較 では 1.75 ポイントと 28.48 ポイント 減 少 している 分 税 制 改 革 初 期 には この 2 つの 省 は 財 政 管 理 権 の 下 級 政 府 への 移 譲 事 務 処 理 権 の 上 級 政 府 への 集 約 という 状 況 にあった しかしながら この 状 況 はその 後 逆 転 し 財 政 が 上 級 政 府 に 大 幅 に 集 約 され 事 務 処 理 権 は 大 幅 に 下 級 政 府 へ 移 譲 されることになり 1995 年 との 比 較 では 1999 年 に 甘 粛 省 と 江 蘇 省 の 県 市 の 財 政 収 入 が 省 全 体 の 財 政 収 入 に 占 める 割 合 は それぞれ 18.28 ポイントと 2.41 ポイント 減 少 し 県 市 の 財 政 支 出 が 省 全 体 の 財 政 支 出 に 占 める 割 合 はそれぞれ 6.33 ポイン トと 14.27 ポイント 上 昇 している このような 財 政 管 理 権 の 上 級 政 府 集 約 事 務 処 理 権 の 下 級 政 府 移 譲 という 逆 転 現 象 は 県 市 の 財 政 運 営 に 困 難 をもたらす 主 要 な 原 因 となってい る 表 3. 分 税 制 改 革 前 後 における 甘 粛 省 の 県 市 財 政 収 支 が 省 全 体 の 財 政 収 支 に 占 める 割 合 の 変 化 (%) 1992 1995 1999 県 市 収 入 が 全 省 収 入 に 占 める 割 合 27.67 61.04 42.76 県 市 支 出 が 全 省 支 出 に 占 める 割 合 7.88 6.13 12.46
表 4. 江 蘇 省 の 県 市 財 政 収 支 が 省 全 体 の 財 政 収 支 に 占 める 割 合 の 変 化 (%) 1992 1995 1999 県 市 収 入 が 全 省 収 入 に 占 める 割 合 47.45 48.88 46.46 県 市 支 出 が 全 省 支 出 に 占 める 割 合 58.87 30.39 44.66 1.4. 末 端 財 政 で 扶 養 している 人 口 が 過 剰 となっている 郷 鎮 の 状 況 については 現 状 では 全 国 規 模 での 完 全 な 統 計 資 料 が 不 足 している しかし ながら 研 究 ( 趙 陽 2003)の 結 果 から 90 年 代 後 半 以 降 は 財 政 体 制 上 の 原 因 によって 県 郷 の 財 政 が 苦 境 に 陥 っていることが 明 らかになっている これは 90 年 代 中 後 期 の 末 端 財 政 運 営 における 重 要 な 特 徴 の 1 つであり 同 時 に 農 民 の 負 担 を 日 増 しに 増 加 させている 深 刻 な 体 制 上 の 原 因 ともなっている 第 九 次 5 ヵ 年 計 画 の 後 半 から わが 国 の 多 くの 地 区 県 郷 では 公 務 員 の 給 料 の 問 題 がクローズアップされているが これは 一 部 の 地 区 で の 県 郷 職 員 の 人 員 過 多 経 費 の 無 駄 遣 いといった 問 題 に 関 わるものであり さらに 一 部 の 地 区 では 県 郷 の 財 政 が 極 めて 困 難 になっていることにも 関 わっている なかでも 重 要 な 要 因 として 省 以 下 の 財 政 体 制 が 今 もなお 整 備 されていないということが 挙 げられる 統 計 によれば 全 国 の 県 郷 級 財 政 で 扶 養 している 人 口 は 地 方 財 政 で 扶 養 している 人 口 全 体 の 70%を 占 めているが 県 郷 の 財 力 は 全 国 の 地 方 財 政 の 財 力 のわずか 40%を 占 める に 過 ぎない わが 国 の 省 級 財 政 が 地 方 財 政 の 総 収 入 に 占 める 割 合 は 1994 年 の 16.8%から 2000 年 には 28.8%に 増 加 しており これは 省 級 の 財 政 が 過 剰 な 速 度 で 収 入 を 集 中 させて いる 一 方 で 省 級 財 政 地 方 市 級 財 政 から 県 郷 財 政 への 移 転 支 出 力 が 著 しく 不 足 して いるということを 意 味 している 各 省 の 全 体 的 な 財 力 から 見 れば 公 務 員 の 給 料 支 払 いを 保 証 することは さほど 大 きな 問 題 となるはずはない 各 省 の 給 料 支 出 が 財 政 支 出 全 体 に 占 める 割 合 は 全 国 平 均 が 40% 最 高 の 青 海 省 で 61% 最 低 の 上 海 で 10%となっている 1.5. 農 村 の 税 金 制 度 改 革 実 施 後 末 端 財 政 の 収 支 難 の 状 況 がよりい っそう 顕 在 化 している 1994 年 の 分 税 制 改 革 実 施 により 消 費 税 関 税 はすべて 中 央 税 に 転 化 され 増 値 税 の 75% は 中 央 に 上 納 され 企 業 所 得 税 は 中 央 と 地 方 で 分 割 共 有 することとなっている さらに 近 年 急 速 に 増 加 している 個 人 所 得 税 も 2002 年 からは 地 方 税 から 中 央 と 地 方 の 共 有 税 へと 変 更 されている 地 方 政 府 の 財 政 収 入 の 源 泉 は 主 に 増 値 税 の 分 割 分 営 業 税 企 業 所 得 税 の 分 割 分 及 び 個 人 所 得 税 の 分 割 分 となっており 2002 年 は この 4 項 目 の 税 収 が 地 方 財
政 収 入 の 65.4%を 占 めていることから これらが 省 市 地 方 財 政 収 入 の 主 体 といえる ただ し 県 郷 の 末 端 財 政 の 収 入 については 家 畜 屠 殺 税 農 業 税 及 び 農 業 特 産 税 耕 地 占 用 税 が 大 きな 比 重 を 占 めており とりわけ 工 業 が 発 達 していない 農 業 地 区 では 財 政 収 入 の 主 体 となっている 2001 年 は 家 畜 屠 殺 税 農 業 税 と 農 業 特 産 税 耕 地 占 用 税 等 の 4 項 目 の 税 収 が 地 方 の 財 政 収 入 の 4.47%を 占 め 2002 年 には 5.72%に 上 昇 している 農 業 税 は 県 郷 の 末 端 財 政 収 入 においては 特 殊 な 地 位 にあり 農 村 の 税 金 制 度 改 革 は 必 然 的 に 県 郷 の 末 端 財 政 収 支 に 重 大 な 影 響 を 与 えている 可 能 性 がある 調 査 の 結 果 からは 農 村 の 税 金 制 度 改 革 実 施 により 県 郷 の 末 端 財 政 はより 一 層 困 難 な 状 況 に 陥 っていることが 明 らか になった 一 例 を 挙 げると 山 東 省 の 臨 沂 市 では 2002 年 に 実 施 された 第 一 段 階 の 農 村 税 金 体 制 改 革 により 農 業 関 係 の 財 政 収 入 が 2001 年 の 13.5 億 元 から 2002 年 には 7.6 億 元 と なって 5.9 億 元 減 少 している その 一 方 で 省 財 政 による 地 区 改 革 の 助 成 金 ではこの 不 足 を 補 てんすることができないことから 県 郷 の 財 政 はより 一 層 苦 境 に 陥 っている 表 5.2001 年 の 地 方 財 政 における 収 入 源 泉 の 構 成 (%) 増 値 税 ( 付 加 価 値 税 ) 17.19 家 畜 屠 殺 税 0.32 営 業 税 23.70 農 業 税 2.10 企 業 所 得 税 20.97 農 業 特 産 税 1.56 企 業 所 得 税 還 付 -0.10 畜 産 税 0.01 個 人 所 得 税 9.18 耕 地 占 用 税 0.49 資 源 税 0.86 契 約 税 2.01 固 定 資 産 投 資 調 節 税 0.20 国 有 資 産 経 営 収 益 0.73 都 市 建 設 維 持 税 4.88 国 有 企 業 計 画 欠 損 金 補 填 -3.35 不 動 産 税 2.93 行 政 関 係 費 用 徴 収 4.76 印 紙 税 0.91 罰 金 徴 収 没 収 収 入 4.57 都 市 土 地 使 用 税 0.85 海 域 用 地 鉱 区 使 用 収 入 0.05 土 地 増 値 税 0.13 特 別 項 目 収 入 3.22 車 両 船 舶 使 用 免 許 税 0.32 その 他 の 収 入 1.54
表 6.2002 年 の 地 方 財 政 における 収 入 源 泉 の 構 成 (%) 増 値 税 18.17 家 畜 屠 殺 税 0.12 営 業 税 26.95 農 業 税 3.76 企 業 所 得 税 13.13 農 業 特 産 税 1.17 企 業 所 得 税 退 税 -0.03 畜 産 税 0.02 個 人 所 得 税 7.11 耕 地 占 用 税 0.67 資 源 税 0.88 契 約 税 2.81 固 定 資 産 投 資 調 節 税 0.09 国 有 資 産 経 営 収 益 1.00 都 市 建 設 維 持 税 0.55 国 有 企 業 計 画 欠 損 金 補 填 -2.51 不 動 産 税 3.32 行 政 関 係 費 用 徴 収 6.04 印 紙 税 0.83 罰 金 徴 収 没 収 収 入 4.64 都 市 土 地 使 用 税 0.90 海 域 用 地 鉱 区 使 用 収 入 0.04 土 地 増 値 税 0.24 特 別 項 目 収 入 3.46 車 両 船 舶 使 用 免 許 税 0.34 その 他 の 収 入 1.36 表 7. 農 村 税 金 改 革 前 後 における 臨 沂 市 の 農 業 関 係 財 政 収 入 への 影 響 の 比 較 ( 単 位 : 億 元 ) 改 革 前 (2001 年 ) 第 一 段 階 改 革 後 (2002 年 ) 第 二 段 階 改 革 後 (2003 年 ) 三 提 五 統 ( 郷 村 に 農 業 税 ( 農 業 特 産 税 9.5 よる 費 用 徴 収 ) 収 入 を 含 む) 収 入 6.4 農 業 税 収 入 5.8 農 業 税 ( 農 業 特 産 税 を 含 む) 収 入 1.8 郷 村 公 益 事 業 金 1.2 家 畜 屠 殺 税 0.5 政 策 外 調 達 資 金 分 配 * 1.7 合 計 13.5 合 計 7.6 合 計 5.8 1.6. その 他 の 原 因 地 方 における 財 政 難 の 原 因 には 上 述 の 5 項 目 のほかにも 地 方 政 府 による 越 権 投 資 が 招 いている 大 量 の 隠 れた 債 務 などの 多 岐 にわたる 原 因 が 含 まれている 2. 地 方 財 政 問 題 の 解 決 策 と 地 方 債 発 行 の 必 要 性 地 方 における 財 政 難 を 解 決 するには 収 入 の 増 加 と 支 出 の 節 減 という 2 つの 方 法 しかな い これは 中 央 と 地 方 省 市 と 県 郷 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 合 理 的 な 配 分 に 関 わる 問 題 であり さらには 地 方 行 政 の 体 制 改 革 にも 関 わる 問 題 である ただし 公 共 財 政 体 制 の
構 築 と 経 済 と 社 会 の 協 調 的 な 発 展 という 見 地 からは 地 方 政 府 にその 償 還 能 力 の 範 囲 内 で 地 方 債 の 発 行 を 認 めるということが 実 現 性 のある 選 択 肢 であるといえよう 2.1. 中 央 と 地 方 末 端 組 織 の 財 政 と 省 市 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 を 合 理 的 に 配 分 することにより 地 方 財 政 問 題 の 解 決 を 図 る と いう 手 段 には 限 界 がある 以 上 に 述 べた 分 析 からも 明 らかなとおり 中 央 と 地 方 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 配 分 は 合 理 的 ではなく 地 方 の 財 政 管 理 権 は 中 央 へと 集 約 されつつあって これが 地 方 財 政 に 困 難 を 来 しており とりわけ 県 郷 の 末 端 組 織 の 財 政 に 困 難 をもたらす 重 要 な 原 因 となっ ている したがって 短 期 的 に 見 れば 中 央 と 地 方 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 省 市 財 政 と 県 郷 の 末 端 財 政 の 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 を 合 理 的 に 配 分 することが 地 方 の 財 政 難 とりわけ 末 端 組 織 の 財 政 難 を 解 決 するための 有 効 な 手 立 てである 例 を 挙 げると 中 小 学 教 育 農 村 医 療 衛 生 施 設 等 の 公 共 事 業 に 対 する 中 央 の 資 金 投 入 を 拡 大 し 省 市 財 政 の 財 政 管 理 権 集 約 の 範 囲 を 縮 小 して 県 郷 末 端 財 政 により 大 きな 財 政 管 理 権 を 付 与 することな どである しかしながら ここでは 以 下 に 述 べる 理 由 により 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 の 合 理 的 な 配 分 は 地 方 の 財 政 難 解 決 の 手 段 としては 限 りがある ということに 着 目 しなければなら ない (1) 1990 年 以 降 中 西 部 地 区 と 東 部 地 区 の 経 済 発 展 の 格 差 は 拡 大 する 一 方 であり 東 部 地 区 と 西 部 地 区 の GDP 規 模 の 比 率 は 1990 年 の 1.8 対 3.29 から 2002 年 には 2.2 対 4.37 にまで 増 加 している 地 域 経 済 の 発 展 が 不 均 等 であり 東 部 西 部 地 区 の 収 入 格 差 が 広 が り 続 けているという 現 状 にあっては 中 央 が 財 政 管 理 権 を 集 約 して マクロコントロール 能 力 の 強 化 を 図 ることは 必 須 の 措 置 である 現 時 点 では 中 央 財 政 が 中 西 部 地 区 の 経 済 発 展 のために 行 う 移 転 支 出 の 規 模 と 能 力 には 限 りがあり 中 央 の 財 政 管 理 権 を 圧 縮 すること は 中 央 の 中 西 部 地 区 に 対 する 移 転 支 出 能 力 をより 弱 体 化 することになるであろう
図 3. 中 国 の 東 部 地 区 と 中 西 部 地 区 における 経 済 発 展 格 差 の 変 化 5 4 3 東 部 / 西 部 2 1 0 東 部 / 中 部 1985 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 (2) 中 央 政 府 は 交 通 高 等 教 育 特 大 規 模 のインフラ 施 設 建 設 社 会 保 障 等 の 全 国 規 模 での 経 済 と 社 会 の 協 調 発 展 に 関 わる 公 共 事 業 施 設 の 提 供 者 であることから 十 分 な 資 金 を 必 要 としており 中 央 の 財 政 管 理 権 を 圧 縮 することは 中 央 政 府 によるマクロコントロー ル 能 力 を 弱 めることになり 経 済 と 社 会 の 持 続 的 協 調 的 な 発 展 にも 不 利 となる 1999 年 以 降 は 国 の 財 政 支 出 のうちで 工 業 交 通 運 輸 業 文 化 教 育 衛 生 事 業 補 償 救 済 事 業 に 対 する 支 出 が 上 昇 に 転 じており 2001 年 以 降 は 国 の 財 政 支 出 の 平 均 増 加 率 を 超 えている 図 4.1991~2002 年 の 国 の 財 政 支 出 と 工 業 交 通 運 輸 業 文 化 教 育 衛 生 事 業 補 償 救 済 事 業 支 出 の 増 加 率 の 変 化 35 30 25 財 政 支 出 20 15 10 5 0 工 業 交 通 運 輸 業 文 化 教 育 衛 星 事 業 補 償 救 済 事 業 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
(3) 資 金 に 限 りがあるなかで 中 央 政 府 の 移 転 支 出 構 造 を 調 整 し 建 設 事 業 に 係 る 支 出 を 圧 縮 して 教 育 と 農 村 衛 生 医 療 事 業 に 対 する 投 入 を 増 加 するなどの 措 置 を 講 じれば 地 方 とりわけ 県 郷 の 末 端 財 政 の 収 支 状 況 を 改 善 することにはなるが これは 同 時 に 他 の 移 転 支 出 を 用 いる 事 業 に 対 する 投 入 にも 影 響 を 与 えることになるので 地 方 の 財 政 難 とい う 問 題 を 抜 本 的 に 解 決 することは 不 可 能 である また 中 西 部 地 区 のインフラ 施 設 建 設 に 対 する 投 入 を 削 減 し 中 西 部 の 農 村 教 育 と 医 療 衛 生 に 対 する 投 入 を 増 加 すれば 中 西 部 の 県 郷 財 政 の 財 政 難 を 緩 和 することになるが インフラ 整 備 投 資 の 削 減 は 中 西 部 地 区 経 済 の 長 期 的 な 発 展 にも 悪 影 響 を 及 ぼすことになるであろう なぜならば 産 業 構 造 の 向 上 と 工 業 化 を 加 速 することは 工 業 化 の 段 階 での 経 済 成 長 を 促 す 原 動 力 の1つであり イン フラ 施 設 の 拡 大 は 産 業 構 造 の 向 上 または 工 業 化 を 促 すための 基 礎 であるからに 他 ならな い また 発 展 の 段 階 という 見 地 からいえば 経 済 が 飛 躍 するための 重 要 な 前 提 となるの は インフラ 施 設 への 投 資 が 持 続 的 に 増 加 することである 中 部 西 部 地 区 と 東 部 地 区 の 経 済 発 展 格 差 が 広 がり 続 けているのは 地 理 的 な 環 境 や 歴 史 的 な 基 盤 などの 理 由 のほかに も 次 の 2 つの 重 要 な 原 因 を 挙 げることができる (1) 中 西 部 地 区 では 住 民 の 教 育 水 準 が 東 部 地 区 に 比 べて 著 しく 劣 っているということ これはすなわち 人 材 資 源 の 蓄 積 水 準 が 低 いということである (2) 中 西 部 地 区 は 工 業 化 の 水 準 が 東 部 地 区 に 比 べて 著 しく 立 ち 遅 れており 2002 年 の 東 部 地 区 の 第 一 次 産 業 の 増 加 率 が GDP の 増 加 率 のわずか 10.1%に 寄 与 するに 過 ぎず 先 進 諸 国 の 平 均 水 準 に 近 接 しているのに 比 べ 中 部 地 区 と 西 部 地 区 は それぞれ 18%と 19.2%となっており これは 東 部 地 区 の 1990~1993 年 の 水 準 に 相 当 する 数 値 である これは すなわち 工 業 化 の 水 準 でいえば 中 西 部 地 区 は 東 部 地 区 に 10 年 前 後 の 遅 れをとっているということを 意 味 するものである 表 8.1990~2002 年 の 東 部 地 区 と 中 西 部 地 区 の 高 校 卒 業 以 上 の 人 数 の 比 率 (%) 地 区 1990 1996 1998 2000 2002 東 部 地 区 14.45 12.31 14.91 17.78 19.65 中 部 地 区 13.43 11.68 13.49 15.47 16.31 西 部 地 区 11.05 10.35 10.77 12.35 13.95 2.2. 地 方 行 政 体 制 改 革 を 深 化 させ 末 端 財 政 の 扶 養 人 口 を 削 減 する ことにより 地 方 財 政 難 の 解 決 を 図 るという 手 段 の 限 界 県 郷 の 末 端 財 政 が 苦 境 に 陥 っている 大 きな 原 因 の 1 つは 財 政 で 扶 養 している 人 口 が 過 多 であることにあり このため 地 方 行 政 体 制 改 革 を 深 化 させて 財 政 で 扶 養 している
人 口 を 減 少 させることも 末 端 組 織 の 財 政 難 を 解 決 するための 重 要 な 手 立 てである しか しながら この 対 策 にも 次 に 述 べるような 限 界 がある 県 郷 の 末 端 財 政 が 扶 養 している 人 口 では 農 村 の 中 小 学 校 の 教 員 が 占 める 割 合 が 極 めて 高 くなっている 調 査 ( 樊 麗 明 2003)によれば 山 東 省 臨 沂 市 の 5 つの 郷 鎮 財 政 が 扶 養 している 人 口 のうち 教 師 がその 70% 以 上 を 占 めており 最 高 の 郷 鎮 では 80%に 達 していた こうしたことから 単 純 に 行 政 事 業 機 構 を 改 革 して これらが 養 っている 人 口 を 圧 縮 することは 県 郷 の 財 政 難 の 抜 本 的 な 解 決 を 図 ることにはならないといえる 表 9. 臨 沂 市 の 各 郷 鎮 財 政 が 扶 養 している 人 口 の 構 成 と 比 率 鄭 旺 鎮 大 田 庄 郷 新 庄 鎮 文 鎮 洙 辺 鎮 教 師 ( 人 ) 465 217 400 497 460 その 他 の 行 政 事 業 職 員 ( 人 ) 112 100 150 130 180 財 政 で 扶 養 している 人 口 の 合 計 ( 人 ) 577 317 550 627 640 教 師 が 財 政 で 扶 養 している 人 口 の 合 計 に 占 める 割 合 80.59% 68.45% 72.73% 79.27% 71.88% その 他 の 行 政 事 業 職 員 が 財 政 で 扶 養 している 人 口 の 合 計 に 占 める 割 合 19.41% 31.55 % 27.27% 20.73% 28.12% 2.3. 地 方 政 府 に 地 方 債 発 行 を 認 めることの 必 要 性 財 政 管 理 権 と 事 務 処 理 権 を 合 理 的 に 配 分 し 地 方 財 政 で 扶 養 している 人 口 を 圧 縮 する 等 の 地 方 の 財 政 難 解 決 の 方 法 には 限 界 があることから 地 方 の 財 政 難 を 解 決 するために 実 現 性 のある 手 段 は 地 方 債 の 発 行 を 認 めることである 以 下 にその 理 由 を 述 べる 1. 新 たな 工 業 化 の 時 期 にあって 都 市 化 が 急 速 に 発 展 していることから 大 量 の 財 政 投 資 需 要 が 生 じており 地 方 債 の 発 行 によってインフラ 施 設 建 設 に 融 資 することが 必 要 となっ ている 中 国 の 経 済 は 目 下 のところ 工 業 化 の 中 期 段 階 にあり 一 般 的 な 国 の 工 業 化 発 展 の 法 則 に 従 えば 工 業 化 の 中 期 段 階 は 農 業 人 口 を 非 農 業 産 業 に 振 り 向 ける 重 要 な 時 期 に 当 たっ ている 近 年 におけるわが 国 の 工 業 化 と 都 市 化 の 発 展 状 況 から 見 ると 1996 年 に 再 び 工 業 化 と 重 工 業 化 の 段 階 に 入 ってからは 都 市 化 も 急 速 に 進 展 している 都 市 部 の 人 口 が 総 人 口 に 占 める 割 合 は 1996 年 の 30.48%から 2003 年 には たちまち 40.53%にまで 上 昇 し 上 昇 率 では 1980 年 から 1995 年 までの 15 年 間 の 上 昇 率 に 相 当 する 1978~2003 年 の 中 国 の 都 市 化 の 変 化 状 況 から 見 れば 今 後 の 7 年 間 中 国 は 都 市 化 の 快 速 発 展 の 段 階 にあり 2010 年 には 都 市 部 の 人 口 が 総 人 口 に 占 める 割 合 は 66%に 達 するものと 予 測 される 都 市 化 の 加 速 は 必 然 的 に 都 市 部 のインフラ 建 設 に 対 する 投 資 需 要 を 招 くことになる 1978~
2002 年 における 中 国 の 都 市 部 人 口 と 都 市 道 路 の 舗 装 距 離 の 相 関 関 係 を 見 てみると 都 市 の 人 口 が 1 ポイント 増 加 するごとに 都 市 道 路 の 舗 装 距 離 は 0.74 ポイント 増 加 している 都 市 道 路 の 舗 装 はインフラ 建 設 の 基 本 であり 都 市 化 の 水 準 が 都 市 インフラ 投 資 に 対 する 需 要 を 引 き 上 げていることを 表 すものとなっている 予 測 によれば 2010 年 には 中 国 の 都 市 化 水 準 は 66%に 達 し 都 市 部 の 人 口 は 年 間 7.9%の 増 加 が 見 込 まれており(2010 年 には 中 国 の 人 口 は 13.5 億 人 都 市 部 の 人 口 は 8.91 億 人 に 達 するものと 予 測 されている) インフ ラへの 投 資 は 毎 年 5.84% 以 上 の 増 加 が 求 められることになる 2002 年 における 中 国 の 中 央 政 府 の 財 政 支 出 のうち インフラ 整 備 に 係 る 支 出 は 3,143 億 元 公 共 交 通 と 商 業 への 支 出 は 232 億 元 であり これに 基 づいて 試 算 すれば 2010 年 は 財 政 支 出 のうち インフラ 整 備 と 都 市 公 共 交 通 と 商 業 への 支 出 規 模 は 少 なくとも 4,947 億 元 と 365 億 元 が 必 要 となる インフラはその 大 部 分 が 公 共 事 業 施 設 にあたることから 政 府 による 投 資 を 必 要 としてい る また 都 市 部 のインフラ 建 設 は 地 方 財 政 の 職 権 範 囲 であることから その 大 部 分 は 地 方 の 財 政 で 賄 われることになる インフラ 建 設 は 1 回 の 投 資 金 額 が 大 きく 巨 額 のイン フラ 整 備 投 資 または 公 共 交 通 事 業 投 資 を 募 る 必 要 が 生 じることから 地 方 の 当 年 の 財 政 収 入 に 頼 ってインフラ 施 設 の 建 設 を 行 うことは 明 らかに 現 実 的 ではない 各 国 の 実 績 経 験 か ら 見 ても 債 務 償 還 能 力 の 範 囲 内 で 特 別 地 方 債 を 発 行 することが 実 現 性 のある 選 択 とい えるであろう 図 5. 中 国 における 都 市 化 の 変 化 と 発 展 の 動 向 70 60 50 y = 6E-06x 4 + 0.0019x 3-0.0676x 2 + 1.3223x + 16.3 R 2 = 0.9958 多 項 式 ( 都 市 部 の 人 口 が 全 国 の 人 口 に 占 める 割 合 ) 40 30 20 10 0 都 市 部 の 人 口 が 全 国 の 人 口 に 占 める 割 合 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002
都 市 道 路 の 舗 装 距 離 と 都 市 人 口 の 相 関 関 係 : LOG(road) = 0.5413*LOG(road(-1)) + 0.7400*LOG(city) - 6.5906 (3.85) (2.36) (-2.21) R2=0.9519, 調 整 後 R2=0.945,DW 統 計 値 =1.603 うち road city は 都 市 道 路 の 舗 装 距 離 と 都 市 部 の 人 口 を 表 し カッコ 内 の 数 字 は t 値 で ある 2. 教 育 と 農 村 医 療 衛 生 施 設 の 建 設 には 大 量 の 投 資 が 必 要 であり すべてを 中 央 財 政 に 頼 っ ていては 解 决 できない 教 育 支 出 は 末 端 財 政 支 出 の 重 要 な 内 容 であり 貧 困 地 域 では 県 郷 財 政 支 出 の 大 部 分 を 占 めている 教 育 支 出 はその 規 模 も 巨 額 であり 2002 年 の 社 会 文 教 費 支 出 は 5,924 億 元 で 財 政 支 出 の 26.87%を 占 めており 郷 鎮 財 政 においては 文 教 費 支 出 は 財 政 支 出 の 約 70% 以 上 を 占 めるに 至 っている この 支 出 には 学 費 雑 費 等 の 住 民 負 担 による 支 出 は 含 まれて おらず 2002 年 の 都 市 部 住 民 1 人 あたりの 教 育 文 化 娯 楽 に 対 する 消 費 支 出 は 平 均 388.68 元 農 村 住 民 1 人 あたりの 教 育 文 化 娯 楽 に 対 する 消 費 支 出 は 平 均 14.33 元 となっており 当 年 の 人 口 に 基 づいて 計 算 すれば 全 国 住 民 の 教 育 文 化 娯 楽 に 対 する 消 費 支 出 は 2,063.59 億 元 である これに 財 政 支 出 の 分 を 加 えると 社 会 文 教 費 用 の 支 出 は 合 計 で 8,000 億 元 近 くとなり 2002 年 の 全 国 財 政 収 入 (18,003.64 億 元 )の 42.26% 中 央 財 政 収 入 (10,388.64 億 元 )の 76.9%を 占 めている このような 巨 額 の 文 教 費 用 支 出 をすべて 中 央 財 政 で 賄 うと すれば 短 期 間 ではとても 実 現 できるものではない 長 期 的 に 見 れば 教 育 に 対 する 投 資 は 人 材 資 源 を 蓄 積 するための 重 要 な 手 立 てであり 今 後 の 地 方 経 済 の 発 展 を 決 定 付 ける 要 素 の 1 つでもあることから 地 方 政 府 が 特 別 地 方 債 を 発 行 することにより 教 育 投 資 の 不 足 という 問 題 を 解 決 することにはフィジビリティがある このほか 多 岐 にわたる 要 因 によ り 農 村 では 医 療 衛 生 の 発 展 が 立 ち 遅 れているため その 解 決 には 大 量 の 資 金 を 投 入 して 農 村 医 療 衛 生 施 設 を 建 設 する 必 要 がある これについての 投 資 は 中 央 財 政 による 1 年 につ き 数 百 億 元 の 資 金 のみに 頼 っていては 到 底 解 決 が 図 れるものではなく 現 状 の 末 端 財 政 からは 支 出 ができず 生 活 の 維 持 で 精 一 杯 という 懐 具 合 では 地 方 財 政 に 頼 ることも 解 決 の 手 立 てにはならない 医 療 衛 生 施 設 の 建 設 も 1 回 の 投 資 額 が 比 較 的 大 きい 事 業 であるこ とから 地 方 債 の 発 行 によって 融 資 を 募 るのは やはり 実 現 性 がある 選 択 といえよう
図 6.1978~2002 年 の 財 政 支 出 において 社 会 文 教 費 用 が 占 める 割 合 の 変 化 (%) 30.00 25.00 20.00 15.00 10.00 5.00 0.00 1978 1985 1991 1993 1995 1997 1999 2001 3. 政 府 債 券 の 発 行 権 を 中 央 政 府 に 集 中 させることは リスクのコントロールには 有 益 であ るが 経 済 と 社 会 の 発 展 における 国 債 の 役 割 を 全 面 的 に 発 揮 させることは 困 難 である 現 在 政 府 債 券 の 発 行 権 は 中 央 政 府 に 集 中 しているが 1994 年 に 制 定 された 中 華 人 民 共 和 国 予 算 法 の 第 28 条 では 地 方 の 各 級 予 算 は 歳 入 に 応 じた 歳 出 決 定 収 支 バラン スを 保 つという 原 則 に 従 って 編 成 し 赤 字 は 計 上 しない また 法 令 と 国 務 院 に 別 段 の 定 めがある 場 合 を 除 いて 地 方 政 府 は 地 方 政 府 債 券 を 発 行 してはならない と 定 められてい る この 規 定 は 政 府 債 券 の 規 模 をコントロールして 財 政 リスクを 防 御 し 中 央 政 府 の マクロコントロール 能 力 を 強 化 するには 有 利 であるが 中 央 政 府 が 発 行 する 債 券 は 主 に 全 国 規 模 でのインフラの 建 設 または 公 共 事 業 施 設 の 供 給 に 用 いられるため 地 方 政 府 には 必 要 な 融 資 の 手 段 がなく 地 方 の 公 共 事 業 施 設 の 供 給 についても 予 算 上 の 制 約 が 生 じるこ とから 長 期 的 に 見 ても 経 済 と 社 会 の 発 展 に 不 利 となっている
3. 地 方 債 発 行 に 具 備 すべき 必 要 条 件 と 計 画 案 選 択 3.1. 地 方 債 の 発 行 に 具 備 すべき 基 本 条 件 地 方 債 と 現 行 の 財 政 体 制 が 対 立 する 点 は 予 算 法 の 第 28 条 では 地 方 政 府 に 地 方 債 の 発 行 を 認 めていないことにある 従 って 地 方 債 を 発 行 するに 際 しては まず 現 行 の 予 算 法 を 改 正 する 必 要 がある ただし 地 方 債 発 行 の 可 否 は 予 算 法 改 正 の 問 題 のみに とどまるものではなく 現 行 の 体 制 の 下 では 地 方 債 の 発 行 は 重 大 な 財 政 リスクをもたら す 可 能 性 があるため 厳 格 な 地 方 財 政 リスクのコントロール 体 系 を 確 立 しなければならな い 1. 地 方 の 財 政 運 営 に 対 する 有 効 な 監 視 制 御 体 制 を 確 立 する 中 国 の 経 済 体 制 は 20 年 余 りに 及 ぶ 市 場 化 改 革 を 経 て 市 場 経 済 の 枠 組 みがほぼできあ がっている しかしながら 経 済 体 制 の 転 換 はいまだに 完 成 しておらず 地 方 政 府 の 財 政 運 営 に 対 しては 有 効 な 法 的 監 視 体 制 が 欠 如 しているために 規 範 化 されていない 行 為 も 数 多 く 存 在 している このような 行 為 は 地 方 に 大 量 の 隠 れた 債 務 を 生 じさせる 主 たる 原 因 と なっており さらに 今 後 地 方 債 発 行 を 認 めるにあたっての 重 大 な 隠 れたリスクの 源 泉 と もなっている こうしたことから 地 方 債 を 発 行 するに 際 しては まず 地 方 政 府 の 財 政 運 営 を 有 効 に 監 視 制 御 する 体 制 を 確 立 する 必 要 があり 具 体 的 には 予 算 収 入 と 予 算 支 出 に ついての 厳 格 な 法 規 を 制 定 して 地 方 政 府 の 財 政 運 営 を 規 範 化 することなどが 挙 げられる 2. 厳 格 な 地 方 債 発 行 のコントロール 体 制 を 確 立 する アジアの 金 融 危 機 と 世 界 経 済 の 衰 退 が 国 内 経 済 に 与 えたショックを 緩 和 するために 中 国 政 府 は 1998 年 以 降 拡 張 的 な 財 政 政 策 をとってきた 財 政 赤 字 は 1998 年 の 約 500 億 元 から 2002 年 には 3,000 億 元 に 膨 らみ 2002 年 の 財 政 赤 字 が GDP に 占 める 割 合 は 3.04% に 達 した 2003 年 の 財 政 赤 字 は 3,198 億 元 で GDP に 占 める 割 合 は 2.74%に 減 少 している この 赤 字 状 況 は 債 券 発 行 の 権 限 が 完 全 に 中 央 政 府 のコントロール 下 にあるなかで 実 現 し たものである 地 方 政 府 の 財 政 運 営 が 規 範 化 されておらず 厳 格 なコントロール 体 制 が 欠 如 している 現 況 にあって 地 方 政 府 に 地 方 債 の 発 行 を 認 めれば 政 府 の 債 務 規 模 は 調 整 不 能 となり 財 政 赤 字 がさらに 膨 らむ 可 能 性 があり その 一 方 で 地 方 政 府 の 財 政 リスクは 最 終 的 に 中 央 政 府 に 転 嫁 されることになるであろう したがって 地 方 債 の 発 行 を 推 進 するためには 厳 格 な 地 方 債 発 行 のコントロール 体 制 を 確 立 して 地 方 財 政 リスクの 過 剰 な 膨 張 を 防 ぎ これを 中 央 に 移 転 集 約 することによ り 厳 格 な 財 政 リスク 制 御 の 体 制 を 確 立 しなければならない 3. 地 方 債 発 行 市 場 の 監 督 体 系 を 整 備 する
地 方 政 府 の 財 政 運 営 に 対 する 監 視 制 御 体 制 と 地 方 債 発 行 体 制 を 確 立 した 後 には 地 方 債 発 行 市 場 の 監 督 体 系 を 確 立 する 必 要 がある これには 国 内 債 券 市 場 の 整 備 地 方 政 府 の 信 用 評 価 債 券 格 付 けの 制 度 と 仲 介 組 織 の 確 立 などがあり これらはいずれも 地 方 債 の 発 行 を 市 場 化 するための 基 礎 となるものである 3.2. 地 方 債 発 行 案 の 選 択 地 方 債 発 行 の 必 要 条 件 を 具 備 した 後 は 地 方 債 の 発 行 に 際 してもまずパイロットプラン を 実 施 して 実 証 を 得 てから 段 階 的 に 全 国 へと 拡 大 していく 必 要 がある 地 方 債 事 業 につ いては 地 方 の 都 市 インフラ 建 設 教 育 または 農 村 医 療 衛 生 施 設 の 建 設 をパイロットプラ ン 事 業 として 選 定 することができ 計 画 案 の 実 施 に 際 しては 以 下 の 選 択 肢 が 考 えられる 1. 最 初 に 東 部 の 経 済 発 達 地 区 でパイロットプランを 実 施 し 徐 々に 中 西 部 地 区 に 拡 大 して いく 長 所 :リスクが 少 なく 地 方 債 発 行 の 改 革 案 を 打 ち 出 しやすい 短 所 : 経 済 発 達 地 区 自 体 は 財 政 収 支 難 の 問 題 が 比 較 的 少 なく 立 ち 遅 れた 地 区 の 財 政 難 の 解 決 とはならない 2. 財 政 難 にある 中 西 部 の 立 ち 遅 れた 地 区 でパイロットプランを 実 施 し 徐 々に 全 国 へと 拡 大 していく 長 所 : 地 方 の 財 政 難 解 決 に 対 する 地 方 債 の 役 割 を 十 分 に 示 すことができる 短 所 :リスクが 比 較 的 高 く 多 方 面 にわたる 付 帯 措 置 が 必 要 となるため 地 方 債 の 発 行 は 今 後 の 債 務 償 還 問 題 に 直 面 することになり 推 進 の 難 易 度 が 高 くなる 3. 経 済 発 達 地 区 と 立 ち 遅 れた 地 区 で 同 時 にパイロットプランを 実 施 し 両 方 の 実 績 を 得 て から 全 国 へと 拡 大 する 長 所 :それぞれの 地 区 での 地 方 債 発 行 の 実 証 経 験 を 同 時 に 得 ることができるため 早 期 の 地 方 債 発 行 制 度 の 整 備 にとって 有 益 である 短 所 : 立 ち 遅 れた 地 区 での 実 証 事 業 は 成 功 率 が 比 較 的 低 くなる