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再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

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一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

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月号 Vol.68( 通巻 713 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX

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(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

Web 版 Vol.59( 通巻 704 号 ) 中高齢寡婦加算 ( 遺族基礎年金の4 分の3) 779,300 円 3/4=584,475 円 584,500 円 (100 円単位 ) (2) 老齢厚生年金の年金額の算定式 平成 30 年度の本来水準と従前額保障 図表

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被用者年金一元化法

52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

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退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

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発行所 一般財団法人 年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX 月号 Vol.77 通巻722号

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

Microsoft Word -

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( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

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2010年金7号_H1

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平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

政策課題分析シリーズ16(付注)

Web 版 Vol.69( 通巻 714 号 ) 図表 1 年金生活者支援給付金の概要 高齢者への給付金 ( 老齢年金生活者支援給付金 ) 何回かご覧になっている資料だと思いますので 支給要件 や 保険料納付済期間に基づく給付額 など制度の概要 ( 基本的事項 ) につ

他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

Microsoft Word - 概要

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被用者年金一元化法による追加費用削減について 昨年 8 月に社会保障 税一体改革関連法の一つとして被用者年金一元化法が成立 一元化法では 追加費用財源の恩給期間にかかる給付について 以下の配慮措置を設けた上で 負担に見合った水準まで一律に 27% 減額することとし 本年 8 月まで ( 公布から 1

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

被用者年金一元化パンフ.indd

Microsoft Word - 概要

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Microsoft Word - (差替)170620_【総務部_厚生課_櫻井望恵】論文原稿

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第14章 国民年金 

ブック 1.indb

介護保険・高齢者福祉ガイドブック

新規裁定当該期間 ( 月又は年度 ) 中に新たに裁定され 年金受給権を得た者が対象であり 年金額については裁定された時点で決定された年金額 ( 年額 ) となっている なお 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が65 歳に到達した以降 老齢基礎年金及び老齢厚生年金 ( 本来支給もしくは繰下げ支給 ) を

年金・社会保険セミナー

年金・社会保険セミナー

短期給付の掛金率の改定について


例 言 厚生年金保険被保険者厚生年金保険被保険者については 平成 27 年 10 月 1 日から被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律が施行されたことに伴い 厚生年金保険法第 2 条の5の規定に基づき 以下のように分類している 1 第 1 号厚生年金被保険者第 2

平成 27 年 10 月から全国市町村職員共済組合連合会 ( 以下 市町村連合会 1 ) が年金の決定 支払いを行います ~ 各種届出等の手続き及び各種相談は 今までどおり共済組合で行います ~ 平成 24 年 8 月 22 日に公布された 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部

老齢基礎年金 老齢基礎年金は 国民年金の加入者であった方の老後の保障として給付され 65 歳になったときに支給されます 老齢基礎年金は 保険料納付済期間 ( 厚生年金保険や共済組合の加入期間を含む ) と保険料免除期間などを合算した資格期間が 10 年以上ある場合に 終身にわたって受け取ることができ

「公的年金からの特別徴収《Q&A

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Microsoft Word - T2-11-1_紙上Live_生計維持_13分_

Microsoft Word - 退職後の年金ver15_最終版HP用_231216

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2909_0 概要

平成 30 年 1 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 6 千億円 (1.3%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

平成 30 年 2 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 7 千億円 (1.4%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

任意継続組合員制度 この制度は 退職の日の前日まで引き続き 1 年以上組合員であった方が退職したときに 掛金 ( 所属所の負担金分も含めた額 ) を負担することによって 2 年間在職中と同様の短期給付 ( 任意継続組合員の期間内に発生した傷病手当金 出産手当金 休業手当金 育児休業手当金 介護休業手

受けているときは これらの年金総額が 230 万円となるように計算されます 計算例 1. 単一の共済年金が支給されている場合 事例 1 退職共済年金 + 老齢基礎年金を受給している方の場合 現在の年金額退職共済年金 210 万円老齢基礎年金 60 万円 (= 組合員期間に係る基礎年金相当額 ) 退職

(1) 厚生労働省の課長通知の内容及び 厚生年金基金制度への影響 について 平成 27 年 9 月 30 日付厚生労働省課長通知 ( 下記リンクをご参照ください ) 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律等の 施行に伴う企業年金関係通知の一部改正等について 課長通知

2906_0 概要

【資料8】振替加算の総点検とその対応について

2 厚年と国年の加入期間がある人 昭和 36 年 3 月以前 20 歳未満および 60 歳以後の厚年の被保険者期間 昭和 36 年 3 月以前の厚年期間のみの人 坑内員 船員 ( 第 3 種被保険者 ) の場合 昭和 61 年 3 月までの旧船員保険の

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平成25年4月から9月までの年金額は

【作成中】2903_0 概要

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

年金支給開始年齢図 特別支給の ( 給料比例部分 ) 昭和 29 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 特別支給の退職共済年金 昭和 25 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 退職共済年金 経過的職域加算額 ( 旧職域部分 ) 退職等年金給付 ( 年金払い退職給付 ) 平成 27 年 9 月までの組合

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基金解散時の最低積立基準額の算定 最低保全給付 ( 控除前 ) 規約に定める最低保全給付の区分ごとに基準日における加入員 受給者等の区分に応じ計算する 各給付区分において 受給者又は受給待期脱退者でかつ加入員である者については 規約に定める残余財産の分配方法に準じて最低保全給付を計上する 将来期間に

Microsoft Word - T2-06-1_紙上Live_老齢(1)_①支給要件(9分)_

必要書類 全員 該当者のみ 加給年金額対象者有の場合 年金請求書戸籍抄本または住民票 年金証書 ( 写 ) 請求者で年金受給している方 ( 障害 遺族給付含む ) 遺族厚生 ( 共済 ) 年金 障害厚生 ( 共済 ) 年金年金受給選択申出書 *1 等受給権を有する方雇用保険被保険者証 ( 写 )*2

04 件数表280205(東京)

(4) 厚生年金給付の種類と概要 項目特別支給の (65 歳まで ) 給付内容 要件 次の要件をすべて満たしているときに 支給開始年齢から65 歳にあるまでの間 受給できます 1 支給開始年齢以上であること 2 厚生年金被保険者期間が1 年以上であること 3 受給資格期間が10 年以上であること 用

2.5% % 1 88,000 ~ 93,000 13, , ,000 93,000 ~ 101,000 15, , , ,000 ~ 107,000 16, , ,00

PowerPoint プレゼンテーション

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年発 第 1 号平成 2 9 年 3 月 1 7 日 日本年金機構理事長 殿 厚生労働省年金局長 ( 公印省略 ) 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令 の公布について 公的年金制度の持続可

の対象外となります ( 年金には, 厚生年金部分と年金払い退職給付部分があり, この 場合, 厚生年金部分のみに養育特例が適用されます ) 2

Microsoft Word - T2-04-1_紙上Live_被保険者期間と届出_(13分)_

労働法令のポイント に賞与が分割して支払われた場合は 分割した分をまとめて 1 回としてカウントし また 臨時的に当該年に限り 4 回以上支払われたことが明らかな賞与については 支払い回数にカウントしない ( 賞与 として取り扱われ に該当しない ) ものとされている 本来 賞与 として取り扱われる


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図 1 60 歳 61 歳 62 歳 63 歳 64 歳 65 歳 生年月日 60 歳到達年度 特別支給の 男性 S24.4.2~S 平成 21~24 年度 女性 S29.4.2~S 平成 26~29 年度 男性 S28.4.2~S 女性 S33.4.2~S35.

被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案要綱第一改正の趣旨被用者年金制度については 多様な生き方や働き方に公平な社会保障制度を目指す平成二十四年二月十七日の閣議決定 社会保障 税一体改革大綱 に基づき 公的年金制度の一元化を展望しつつ 今後の制度の成熟化や少子 高齢

Microsoft Word - T2-06-2_紙上Live_老齢(2)_①年金額・マクロ(12分)_

調布市要綱第  号

退職後の健康保険の任意継続ってなに?

年金制度の体系 現状 ( 平成 26 年 3 月末現在 ) 加入員数 48 万人 加入者数 18 万人 加入者数 464 万人 加入者数 788 万人 加入員数 408 万人 国民年金基金 確定拠出年金 ( 個人型 D C ) 確定拠出年金 ( 企業型 DC) 厚生年金保険 被保険者数 3,527

<ワンストップサービスの実現 ( 公的年金給付総合情報連携システム )> 一元化後に始まる厚生年金業務の実施形態のこと 4つの実施機関が保有する被保険者の情報を 日本年金機構の管理システムを通じて互いにやりとりできるようにする また 厚生年金の相談 請求 届出等を全ての窓口 または一度の手続きで済ま

Ⅱ 厚生年金の給付の種類と受給要件 1 特別支給の老齢厚生年金 (65 歳になるまで ) 次の要件を全て満たしている方に 支給開始年齢から 65 歳になるまでの間 支給されます (1) 支給開始年齢以上であること (2) 厚生年金被保険者期間が 1 年以上であること (3) 受給資格期間が 10 年

Transcription:

2016. 3.15 3 月号 Vol.36( 通巻 681 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 105-0003 東京都港区西新橋 1-10-2 TEL. 03-3501-4791 FAX. 03-3502-0086 http://kurassist.jp E-mail: info@kurassist.jp Lectures about The Pension 10 一元化が施行されておよそ半年が経過しました 実務の年金相談では 年金事務所で共済組合の決定した特別支給の老齢厚生年金の年金額をウインドウマシンでみることができないなど 当初設計したとおりにシステムが稼働していない情報を聴きます 今月号では ご質問をいただいた事例について回答を申し上げます 引き続き 質問については受け付けておりますので 最後のご意見欄にご記入ください なお 質問は一般論ではなく 具体的な事例で 対象者の生年月日 年金額 年金加入歴等をご記入ください 一元化前に特老厚 ( 一般厚年 ) が発生 一元化後に 4 号厚年の特老厚が発生したら 激変緩和措置はどうなるのか? 私学事業団に加入中の女性の場合 (1) 年金相談員からの相談内容 相談内容 昭和 30 年 3 月 28 日生まれ女性 短大卒業後 民間に勤めた ( 一般厚年 : 日本年金機構 ) あと 市役所で保育士として任用となり ( 市町村職員共済組合 ) その後 結婚退職 子どもが独立したので 平成 20 年 4 月より私立学校法人の幼稚園の先生になり ( 私学事業団 ) 平成 28 年 3 月の現在も在職中です この方の激変緩和措置はどうなるのでしょうか? なお 一般厚年の受給権の発生した当時 ( 平成 27 年 3 月 60 歳 ) の総報酬月額相当額は 30 万円であり 現在も変わっていません 平成 28 年 3 月になり 61 歳となって 地共済厚年と私学厚年の受給権が発生します ( 勤務年数 年金受給額等はフィクションです ) (2) 年金加入図と年金見込額 相談内容から 相談対象者の 年金加入歴 と 年金見込額 は 図表 1 図表 2 のようになります 図表 1 年金加入歴

Web 版 Vol.36( 通巻 681 号 ) 2016. 3.15 01 図表 2 年金見込額 被用者年金見込額 - 年額 -(< 基本月額 > は < > 内に表示した ) (3) 一元化前後の在職年金の支給停止額の算定 ( 激変緩和措置の適用判定 ) 一元化前の在職老齢年金の支給停止および一元化後の在職年金の支給停止の算定方法など 基本的な事項については すでに 年金広報 の平成 27 年 9 月号で記してありますので ご参照ください http://kurassist.jp/nenkin-kouhou/vol30/pro-lecture/pro-lecture-02.html なお 激変緩和措置などの詳細を知りたい方は 長沼明著 年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識 ( 日本法令 ) をご参照ください ( 拙著は 自治体の図書館に入庫している事例が多いと聞いています 図書館からお借りすることもできますし あるいは amazon honto などで購入することもできます) 一元化前の支給停止額 厚生年金 : 私学事業団に加入中のため 支給停止なし厚生年金の基本月額 1 万円は 私学事業団に加入中のため 一元化前は支給停止はありません したがって 低在老などの支給停止の算定式を用いるまでもありません 一元化後の支給停止額 本来の支給停止額 ( 原則 ) (30 万円 +1 万円 28 万円 ) 2=15,000 円 一元化前にいずれか1つの年金受給権が発生しており 一元化の施行日をまたいで 在職中であるので 激変緩和措置が適用となります 激変緩和措置については 次のように 1 上限 1 割と235 万円保障と3 本来の支給停止額 ( 原則 ) を比べ 一番少ない金額が一元化後の支給停止額となります

Web 版 Vol.36( 通巻 681 号 ) 2016. 3.15 02 < 激変緩和措置の適用 > 一元化が施行された平成 27 年 10 月時点では 特別支給の老齢厚生年金の年金額 月額 1 万円は 支給停止されることなく 全額支給されます (4) 一元化後に3 号厚年 4 号厚年にもとづく特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生したときは どうなるのか? この状態で 一元化後の平成 28 年 3 月に 3 号厚年期間にもとづく特別支給の老齢厚生年金 ( 地共済厚年 ) と4 号厚年期間にもとづく特別支給の老齢厚生年金 ( 私学厚年 ) の受給権が発生した場合は 在職年金の支給停止額の算定はどうなるのでしょうか? なかなかむずかしい事例です 激変緩和措置の適用も判定に悩むところです 本来の支給停止額 ( 原則 ) は 3 号厚年期間にもとづく特別支給の老齢厚生年金 ( 地共済厚年 : 月額 2 万円 ) と4 号厚年期間にもとづく特別支給の老齢厚生年金 ( 私学厚年 : 月額 1 万 2500 円 ) の受給権が発生したので 次のように算定します 本来の支給停止額 ( 原則 ) { 30 万円 +(1 万円 +2 万円 +1 万 2500 円 ) 28 万円 } 2=31,250 円 激変緩和措置の適用の判定一元化前にいずれか1つの年金受給権が発生しており 一元化の施行日をまたいで 在職中という要件を満たしているので 激変緩和措置が適用となります ( 適用にならない事例については (6) を参照 ) すなわち 本事例については 一般厚年が一元化施行前に受給権が発生しているため 地共済厚年および私学厚年についても 激変緩和措置の対象となります ただし 激変緩和措置を適用する場合には 一元化前の支給停止額 ( 調整前支給停止額 ) を 次のように計算して用いることとされています ( 一元化前に受給権が発生していたとみなして 支給停止額を算定すると考えるとわかりやすいかと思います ) ここがなかなかむずかしいところです

Web 版 Vol.36( 通巻 681 号 ) 2016. 3.15 03 < 激変緩和措置の適用 > (5) 支給停止額を各実施機関の年金額で按分 経過的職域加算額は? 一元化後の支給停止額を按分 支給停止額が16,250 円と求められました この支給停止額を 各実施機関から支給される基本月額の合計額を分母とし 各実施機関ごとに支給される基本月額の年金額を分子において按分すると 各実施機関の支給停止する年金額が求められます 次のようになります 支給停止額を各実施機関ごとに按分 a 一般厚年 b 地共済厚年 c 私学厚年 16,250 円 (1 万円 )/(1 万円 +2 万円 +1 万 2500 円 )=3823.52 円 3,824 円 16,250 円 (2 万円 )/(1 万円 +2 万円 +1 万 2500 円 )=7647.05 円 7,647 円 16,250 円 (1 万 2500 円 )/(1 万円 +2 万円 +1 万 2500 円 )=4779.41 円 4,779 円 ( なお 支給停止額を求める算定式は 法律上は年単位である ここでは 激変緩和のしくみを理解するため 月単位で計算しているので 端数処理についても厳密ではありません 以下 同じ ) これらの算定式により 各実施機関から支給される基本月額の支給停止額を求めることができました それぞれの実施機関から支給される年金額( 月額単位 ) 各実施機関から支給される年金額は 次のとおりとなります A 日本年金機構 ( 特別支給の老齢厚生年金 ) 10,000 円 3,824 円 =6,176 円 B 全国市町村職員共済組合連合会 ( 特別支給の老齢厚生年金 経過的職域加算額 ) (20,000 円 7,647 円 )+2,000 円 =14,353 円 C 私学事業団 ( 特別支給の老齢厚生年金 ) (12,500 円 4,779 円 )+(0 円 )=7,721 円 < 私学事業団に加入中のため 経過的職域加算額 1,250 円は支給停止となるため 0 円表示とした > 合計 (A+B+C) 6,176 円 +14,353 円 +7,721 円 =28,250 円

Web 版 Vol.36( 通巻 681 号 ) 2016. 3.15 04 < 激変緩和措置が適用されるかどうか 経過的職域加算額が支給されるかどうかは 拙著 平成 28 年度版一元化ガイドシート 社会保険研究所 350 円 ( 税別 ) にコンパクトにまとめられており 計算式も例示されていますので 年金相談会に持参すると便利です> http://www.shaho.co.jp/shaho/shop/detail.php?no=156 一元化前後とその後を比較すると( 月額単位 ) 一元化前は 私学事業団に加入していましたので 一般厚年が月額 1 万円 支給停止なしで 全額支給されていました 一元化施行後も61 歳となる平成 28 年 3 月までは同じでしたが 平成 28 年 3 月に地共済厚年 月額 2 万 2 千円 ( 基本月額 2 万円 + 経過的職域加算額 月額 2 千円 ) と私学厚年 月額 1 万 3750 円 ( 基本月額 1 万 2500 円 + 経過的職域加算額 月額 1250 円 ) の受給権が発生し トータルで 4 万 5,750 円の年金額を受給できる予定だったのですが 激変緩和措置による支給停止額 16,250 円と自制度加入による経過的職域加算額の支給停止額 1,250 円で トータルで1 万 7,500 円が支給停止となり 月額支給される年金額は2 万 8,250 円となり 一元化前の 1 万円から比べると 新たな年金受給額は 3 万 5,750 円が増えましたが 実際に受給できる金額として増えたのは 1 万 8,250 円ということになります (6) 激変緩和措置が適用されない事例とは? 激変緩和措置は 一元化前にいずれかひとつの年金の受給権が発生しており かつ 一元化の施行日をまたいで在職している年金受給者に適用されます ただし 次のような事例には 適用されませんので 注意が必要です たとえば 1 号厚年に基づく厚生年金の受給権者が 一元化の日をまたいで 厚生年金保険の被保険者 (1 号厚年 ) であり 一元化後に たとえば 3 号厚年期間にもとづく厚生年金の受給権が発生したような場合には 激変緩和措置の適用とはなりません 一元化施行の時点で 激変緩和措置の適用を受ける年金の受給権が発生していないのだから その後に受給権の発生する年金についても 激変緩和措置の適用はない と理解するとわかりやすいかもしれません 詳しい事例は 長沼明著 年金相談員のための被用者年金一元化と共済年金の知識 ( 日本法令 ) の214ページ 215ページをご参照ください