高砂報第 202 号 平成 21 年 3 月 26 日 第 124 回 葛飾高砂会 報告書 加藤内科クリニック 真砂慶一郎 井出正担当 加藤院長 加藤管理栄養士校正 平成 21 年 3 月 26 日 ( 木 ) 午後 1 時から同 2 時 30 分まで クリニックB 1 集会室にて開かれました 甘い果物の摂りすぎが大きな問題だということを しっかりと勉強いたしました 1. くだものはどのくらい食べられる? フルクトース ( 果糖 ) とは加藤光敏院長 (1) 糖質とは? 1 週間前に講演で福井まで往復してきました 火曜日クリニック終了後列車に飛び乗り 米原経由で夜中前には福井の宿泊先に着きました 翌日の午前中に私と加藤則子管理栄養士が2 時間の講演 午後は他の方々の発表にコメンテータとして残りました その午後 主催側の一人である笈田先生のコメントの中で印象に残った話がありました 福井では秋になると血糖が悪くなるとのことです その理由は柿のある家が多く その柿を食べ過ぎるため 血糖値が上がり 血糖コントロールの状態が悪くなる患者さんが多いということです このように果物を食べると血糖は上がります 本日はこの柿などのくだものに含まれる果糖 ( フルクトース ) について勉強しましょう でもそのお陰で 以前から読まなければと思っていた 糖の代謝の本 を一冊精読することが出来ました いつもより用語が多いのですが ご了承下さい
糖質は炭水化物 (carbohydrate) の一種で 昔 含水炭素 と聞いた方もいるでしょう 炭素に水がついた形の化合物です 糖質は生命維持と生活活動のエネルギーとして最も重要な栄養素です 化学構造は (C n H 2n O n )(n 3) の組成になります では糖質の分類を見てみましょう (2) 植物の糖質 動物の糖質 : 案外皆さん聞き覚えのあるものもあるでしょう! 1 植物の糖質デンプン ( グルコース ) イヌリン( フルクトース ) コンニャクマンナン ( マンノース グルコース ) セルロース( グルコース ) アラビアガム( ガラクトース アラビノース他 ) 寒天( ガラクトース ) 2 動物の糖質 グリコーゲン ( グルコース ): ブドウ糖を吸収して すぐに燃やさない時には 肝臓や筋肉に そのブドウ糖が 次々とつながり グリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられています 就寝時に血糖を測ったら低かったが 翌朝に血糖を測ったら高かった 変じゃない? それはグリコーゲンから糖が出される為です グリコーゲン キチン キトサン (N-アセチルグルコサミン グルコサミン) ヒアルロン酸 ( グルクロン酸 ) ブドウ糖( ブドウ糖 ) (3) 糖質の種類 ( 単糖類 二糖類 オリゴ糖 糖アルコール 多糖類 ) ------------- 何と結合しているかによって種類が分かれます 1. 単糖類 : 人が利用できてエネルギーになったりするのはブドウ糖 ( グルコース ) ブドウ糖は単糖類ですから消化されなくても 腸の方からすぐに吸収されます そのため 低血糖の際にはもっとも効果的です その他 果糖 ( フルクトース ) ガラクトースがあります ブドウ糖は 果実 ブドウ酒 食物の根 ( さつまいも等 ) コーンシロップなどに含まれています 多糖類はブドウ糖などに分解され体に吸収されます 体の中に吸収されると酸化されて水と二酸化炭素になり そのときエネルギーを発生します 使用されなかった残りはグリコーゲンや 中性脂肪のグリセロールになり 脂肪組織に貯蔵されます 果糖 ( フルクトース ) は 蜂蜜や果実に含まれます バナナ等は常食にしない方が良いと思います 毎日朝食はバナナという患者さんがいますが 確か
にエネルギーの割にはブドウ糖濃度 ( 血糖測定しているのはこれなので ) の上昇は少なめですが 体にとって危険な糖質をとっていることになります 蜂蜜は天然で健康に良いのですが 果糖が多く含まれていることも忘れないで下さい 2 二糖類 : ブドウ糖 + 果糖 = 蔗糖 ガラクトース+ブドウ糖 = 乳糖 ( ラクトース ) ブドウ糖 +ブドウ糖 = 麦芽糖 ( マルトース ) これを忘れないと理解が深まります 蔗糖 ( ショ糖 ) はスクロース 砂糖です スクロースはブドウ糖と果糖がくっついてできます これは主要な甘味料で フルーツ 野菜 蜂蜜 サトウキビなどに含まれています 奈良の正倉院にも砂糖の記載があり 主に江戸時代から 口内細菌の増殖で虫歯になりますが イライラの鎮静作用に用いられてきました ( 笑い ) 砂糖が庶民の口に入ったのは江戸時代からです その時代の頭骸骨を調べると農民のものには 殆ど虫歯がなく 武士と裕福な商人には虫歯が見られます! マルトース ( 麦芽糖 ) これは医療機関で インスリン不足時にすぐにブドウ糖を使わずに 手術の際にエネルギーの源として マルトースを入れたものを点滴に利用したりします マルトースはブドウ糖が2つプラスされたもので 自然界になく デンプンの酵素分解でできます また マルトースはインスリンの関与なしに細胞内へ入り マルターゼでグルコースになりますので 上記のように糖尿病でインスリン作用不足のときのエネルギー補給 ( 医療用 ) に使われます ラクトース ( 乳糖 ) これはブドウ糖とα-D-ガラクトースで出来ていて 乳腺中で産生されます 甘さはブドウ糖の1/6 位です 3. 糖アルコール 糖の還元基が還されてアルコールの基になったもので 多価アルコールです ソルビトール----- 果実にも存在し 蔗糖に似た甘みがあります 消化管からよく吸収され ブドウ糖と同じエネルギーの価値があります
マニトール---- 果実の中に含まれています 消化されにくいのでブドウ糖の約半分のエネルギーです 医療機関では眼圧降下や脳圧低下の治療の際に 点滴に利用されます キシリトール----イチゴなどの果物や野菜に含まれています 虫歯の細菌 ( ミュータンス菌 ) などには利用されないので シュガーレス チューインガム ( キシリトールガム ) として用いられています 4 多糖類 ------- 種類が多い糖類です グリコーゲン--- 肝臓と筋肉に貯蔵されます 肝臓の中にグリコーゲン顆粒が見えます 絶食によって 顆粒は減少したり 消失します その他 ---- デンプン セルロース デキストリン等があります 5オリゴ糖 ---- オリゴのお蔭! というコマーシャルの言葉がありましたがご存知ですか それは お腹の中の腸内細菌を防ぐのに オリゴ糖でビフィズス菌などを増殖させて お腹の調子をよくするということです オリゴ糖は2ヶ以上の単糖がグリコシド結合という結合でつながったものです オリゴ糖の種類としては マルトース ラクトースがありますが 低エネルギーのものは フラクトオリゴ糖 マルチトールがあります エネルギー源になるのは パラチノース トレハロース カップリングシュガーなどがあります ダイズオリゴ糖 エリスリトールなどは清涼飲料水やチューインガムなどに使用されています (4) 日本人や世界の人々はどのくらい糖質を摂っているのでしょうか? 1 現在 日本人の単純糖質摂取量は 欧米と比べればそれほど多くはありません しかし若い人を中心に日本でもアメリカ人のように増える傾向があります なお世界での蔗糖消費量は 年に 2.4% ほど増加しているとのことです 21970 年頃にフルクトース コーンシロップが作られ その後 消費量が増大しています とうもろこしを原料にして酵素を用いて糖質液にするのです 実はコーラをはじめとする多くの炭酸飲料 ジャムペースト お菓子などに大量に含まれているのです あの甘さは蔗糖と思っている方が多いのですが 大量生産されるコーンシロップが多いのです さらにこのコーンシロップは人間にとって55% 程度が黄金比でもっとも甘美に何度も摂りたくなる甘さなのです! また遺伝子組み換え
食品反対といっても 米国などで遺伝子組み換えコーンをもとに大量に生産されるものを輸入すればいかがなものでしょうか? アメリカ カナダ メキシコなどはコーンシロップの大量輸出国です 3このように果糖は清涼飲料水に大量に含まれています それを忘れないで下さい 以前に皆さんと勉強した清涼飲料ケトーシス ( ペットボトル症候群 ) は このフルクトース入りのペットボトルが大きく関与していると推定されています HbA1c が15% 以上や 20% 近い 信じられないような糖尿病例は 清涼飲料水 2L 以上を毎日飲むような方にあるそうです (5) 果物は健康に良いと食べてきましたが 果糖フルクトースは なぜ健康に悪いのでしょうか? 1すべての糖は リング状の構造になっています 果糖 ( フルクトース ) は5 個のリング状になっていて 割れて開きやすい特徴があります この時に蛋白 ( タンパク ) と結びつくのが糖化現象です ヘモグロビンと多量の糖が結びつくと ヘモグロビン A 1c が高くなります 2フルクトースはブドウ糖の300 倍開環率 ( 割れて開きやすい状態 ) が高く 私たちの体にとって きわめて危険な糖である可能性があります フルクトースの血中濃度はブドウ糖の約 1/300 です しかし ブドウ糖と同じような糖の変化を実際に起こします 果糖は生体にとって危険をはらんでいる糖質なので 生体は開環の少ないブドウ糖を生体で利用しているのです 特に脳で重要です 3 果糖を摂ることに賛成の人達がいます それは果糖を摂っても血糖は 単純糖質より上がらないし インスリンの効きが悪くなりません このように インスリン抵抗性を高めないのでフルクトース ( 果糖 ) は健康に良いということで インスリン抵抗性が少ない健康的な良いものであると宣伝をしています しかし果物を過剰に摂るのは危険があると考えておいた方が無難です 野菜不足の体調のとても悪い方がくだものを摂ればお肌の張りも戻るでしょうが 過剰にとってもさらに美しくはなりません ( 笑 ) 特に果糖を多く飲み続けると 逆にインスリン抵抗性が高まり インスリンの出を悪くします 以前出たように 小太りの人が肝臓に脂肪肝炎といって肝臓に炎症を起こす (NASH ナッシュ ) のは 果糖がかなり関係するとの考えもあります
4 日本はフルクトースに対する対応が遅れています アメリカではフルクトースの扱いの大論争が以前より行なわれており 問題なしと あり との意見に分かれています 果物はデザートに 少量食べるが良いと思います のどが渇いたからといって むやみに果物を沢山食べたり ジュースを大量に飲むのは果糖の摂りすぎで 体に良くありません フルクトースはバナナなどに多量に含まれます もっとも果物はミネラルとカロリー摂取に重要です 5 日本の果物の異常さは 糖度の高さを常に競っていることです 昔に比べて糖度が異常に高い果物を無批判でありがたがってはいけません また世界の果物を日本に輸入する際 甘くないと売れません これは実に危険なことかもしれません 適量を分けて摂るのがくだものの正しい食べ方です 以上果糖の問題の重要性に気づき 最近にわか勉強をした結果を 力を入れて ( 笑い ) お話ししました! 2. 果物 & 野菜ジュース加藤則子管理栄養士果物の中に含まれている甘味成分 フルクトース ( 果糖 ) は お砂糖とちょっと似ていますが 少し味が違います 野菜ジュースを野菜だけて作ったら どんな味になるでしょうか 今 手製の野菜ジュースをつくっていますが これから皆さんに試飲をして頂きたいと思います この野菜ジュースは売られている野菜ジュースの内容のニンジン ホウレン草 アスパラガス 赤ピーマン 小松菜 クレソン カボチャ ブロッコリー 芽キャベツ セロリー レタス 白菜 タマネギ ナス 大根 キャベツの中から 家にあったニンジン キャベツなどで作りました そして この純粋野菜ジュースと市販の缶入り野菜ジュースを飲み比べてみましょう ということで 会の後半に 参加者全員で試飲しました 試飲後の感想は? 純粋野菜ジュース
それぞれの野菜本来のうま味が出ている 自然の風味があり 健 康的 どろどろしている 缶入り野菜ジュース 甘ったるい 血糖が気になる 甘くないと売れないのでは? 野菜ジュースと書いてあるが 今後は注意しよう 院長 : 売っているものに比べていまジューサーで作ったものは繊維が多く含まれています 市販のジュースは飲みやすく繊維と味が調整されていると感じました 無調整の製品もあります 連絡 : 日本糖尿病学会学術集会が来月 5 月 21 日 ( 木 )~24 日 ( 日 ) に大阪で開催されます 当院からの 演題発表 土曜はワークショップ座長 と当院より連日ありますので21 日 ( 木 ) は代診 金 土曜日と休診となります お気をつけ下さい 以上 ( 不許転載患者会使用可加藤内科クリニック加藤光敏 加藤則子 )