パンチングメタルから発生する風騒音に関する研究 孔径および板厚による影響 吉川優 *1 浅見豊 *1 田端淳 *2 *2 冨高隆 Keywords : perforated metal, low noise wind tunnel test, aerodynamic noise パンチングメタル, 低騒音風洞実験, 風騒音 1. はじめにバルコニー手摺や目隠しパネル, または化粧部材としてパンチングメタルが広く使用されている パンチングメタルに関しては, 強風時に風騒音が発生することが知られているが, その発音傾向については不明な部分が多い 本研究では基本的な発音特性および傾向を把握することを目的として風洞実験を実施する 主に, 孔径および板厚が風騒音に及ぼす影響に着目して実験結果を報告する 風洞気流は一様流とし, 吹出口から 600mm の位置に試験体を設置する 試験体は, 中心鉛直軸まわりに回転させることによりを変化させる 試験体の設置状況を図 -2および図-3に示す 2. 実験概要 実験には低騒音風洞 1) を使用する 本風洞は, 消音チャンバーおよび吸音パネルを用いることにより, 風洞装置から発生する騒音を低減し, 試験体から発生する風騒音を精度よく計測できる ( 図 -1) 図 -2 実験概要 Fig.2 Schema of the test 図 -1 低騒音風洞 Fig.1 Low noise wind tunnel *1 技術センター建築技術研究所防災研究室 *2 技術センター建築技術研究所環境研究室 図 -3 実験状況 Fig.3 Experiment situation 31-1
3. 試験体および実験条件 試験体は丸孔千鳥配置 (6 配置 ) のステンレス製パンチングメタルであり, 寸法は 70mm 70mm である 実験条件は, 孔径および板厚をパラメータとし ( 開口率は一定 ), および実験風速を変化させて計測する ( 表 -1, 図 -4, 図 -) パンチングメタルから発生する風騒音については, 自 2) 励振動に関する報告等 3) もあることから, 発音特性が気流の作用条件および振動特性に依存することが予想される 本実験では試験体の4 辺を鉄製フレームで回転治具に固定し, 剛支持としている 表 -1 実験パラメータ Table 1 Test cases 板厚 [mm] 1.0 2.0 3.0 孔径 ヒ ッチ 8φ 12p - - 開口率は φ p 全て40.2% 12φ 18p - - φ 30p ~9 ( ヒ ッチ ) 実験風速,, 計測には, 治具に固定したマイクロフォンを用いるものとし ( 実験気流の影響を受けない位置とする ), 収録データはFFTアナライザによる周波数分析を行う 4. 孔径による影響 4.1 聴感による記録 パンチングメタルの板厚を 2mm に固定し, 孔径による発音傾向の違いに着目する 実験風向および実験風速を変化させ, 風騒音の有無およびその程度を聴感に基づいて記録したものを表 -2 に示す 主な発音領域は ~8 であり, 風速の増加および孔径が大きくなるにしたがい知覚の程度が小さくなる傾向がみられる 図 -4 試験体 Fig.4 Specimen ハ ンチンク メタル ~ 表 -2 聴感による記録 Table 2 Hearing impression examination 図 - 実験風向 Fig. Wind angle 8φ φ 12φ φ 風速 風速 風速 風速 0 0 0 0 風 風 風 風 2 2 2 2 向 30 向 30 向 30 向 30 3 3 3 3 角 40 角 40 角 40 角 40 4 4 4 4 [ ] 0 [ ] 0 [ ] 0 [ ] 0 60 60 60 60 6 6 6 6 70 70 70 70 7 7 7 7 80 80 80 80 8 8 8 8 90 90 90 90 凡例 明瞭に知覚される僅かに知覚される知覚されない 31-2
4.2 計測結果 ( による変化 ) 板厚 2mm の各孔径の試験体に関して, 風速 m/s, 6~8 の計測結果を図 -6に示す 風騒音のピーク周波数は 700Hz~3kHz の領域にあり, 音圧レベルは聴感に基づく記録に概ね対応している 8φのケースは 1kHz および 2 khz 付近で顕著なピークを持ち, 最大のもので約 db に達している φのケースでは 1. khz 付近にピークを持ち, 最大で約 4 db である ピーク周波数がによらずほぼ一定であるのは, 試験体が板状であるために, ある一定以上のでは面に沿った流れが支配的になり, 剥離 付着 渦放出といった流れのパターンが定常状態になるためであると推察される [ 8φ ] [ φ ] [ 12φ ] [ φ ] [6] [6 ] [7] [7 ] [8] 図 -6 音圧レベルのパワースペクトル ( 6~8) Fig.6 Power spectrum densities of SPL (wind angle between 6and 8) 31-3
4.3 計測結果 ( 風速による変化 ) 板厚 2mm の各孔径の試験体に関して, 7 における風騒音の実験風速による変化を図 -7に示す 同図は, 実験風速.0m/s から.0m/s まで 2.m/s ピッチで行った計測結果に基づくものであり, それぞれ別途同風速で計測した試験体なし ( 治具のみ ) の計測結果との差 ( パワースペクトルにおける差分 ) をグレースケール (0~2dB) で表したものである 同図より, 実験風速 7.m/s から明瞭なピーク周波数が出現しており,1~2つのピーク周波数が風速に比例して推移していることがわかる. 板厚による影響.1 聴感による記録板厚による発音傾向の違いに着目し, 前章同様, 聴感に基づいて記録したものを表 -3に示す ~4 においては, 低風速では発音が知覚されないのに対して, 板厚 3mm, 風速 ~m/s の条件において高音域の発音が知覚された 4 ~9 においては, 孔径によらず風速 m/s の条件で聴感上中 高音域の発音が広い範囲で知覚された 風速が大きくなるにしたがって, 聴感上発音は小さくなり, 発音が知覚できる範囲も狭くなる傾向が現れている 00 1k 2k 3k 00 1k 2k 3k 00 1k 2k 3k 8φ φ 12φ φ 00 1k 2k 3k 図 -7 風騒音ピーク周波数の風速による変化 Fig.7 Variation of peak frequencies with wind speed 表 -3 聴感による記録 Table 3 Hearing impression examination φ-p 風速 φ-p 風速 φ-p 風速 t = 1mm t = 2mm t = 3mm 0 0 0 風 風 風 2 2 2 向 30 向 30 向 30 3 3 3 角 40 角 40 角 40 4 4 4 [ ] 0 [ ] 0 [ ] 0 60 60 60 6 6 6 70 70 70 7 7 7 80 80 80 8 8 8 90 90 90 φ-30p 風速 φ-30p 風速 φ-30p 風速 t = 1mm t = 2mm t = 3mm 0 0 0 風 風 風 2 2 2 向 30 向 30 向 30 3 3 3 角 40 角 40 角 40 4 4 4 [ ] 0 [ ] 0 [ ] 0 60 60 60 6 6 6 70 70 70 7 7 7 80 80 80 8 8 8 90 90 90 31-4
.2 計測結果 ( 代表的な風騒音の周波数特性 ) 前章同様に風騒音の計測を行った 前節に示した表 - 3において特徴的な傾向が確認された条件のうち, 代表的な 2 条件 ((a) - 風速 m/s,(b) 7- 風速 m/s) における周波数特性を図 -8 (a) および (b) に示す (a) :, 風速 :m/s t=2mm-φにおいて,7khz 付近にピークが確認され, t=3mm では,φ,φともに 4kHz より高周波数帯域に複数の比較的大きなピークが計測されている 両試験体を比較すると φの発音レベルの方が大きい (b) :7, 風速 :m/s t=1mm では孔径によらず,1kHz~2kHz 付近に広帯域にわたる 1 つのピークが計測されているが,φでは t=2mm において 2 つのピーク,t=3mm では t=2mm で出現したピーク周波数に近接する周波数において非常に鋭いピークを持つ発音が計測され,φとは明らかに傾向が異なる (a), 風速 m/s φ φ φ φ (b) 7, 風速 m/s 図 -8 音圧レベルのパワースペクトル Fig.8 Power spectrum densities of SPL 31-
.3 計測結果 ( による変化 ) 実験風速およびによる風騒音の変化 ( 試験体なし とのレベル差) を図 -9 (a) および (b) に示す この結果より以下の点が言える ~4 で知覚される発音は, 風速 m/s- 板厚 t=3mm で顕著であり, そのうち複数確認されるピーク周波数は, によらずほぼ一定である 4 ~9 で知覚される広周波数帯域にわたる発音は, 板厚が増すにつれてそのピーク周波数が低い帯域へとシフトし, 発音する範囲も狭くなる傾向がみられる ~8, 板厚 2mm~3mm で出現する複数のピーク周波数は, が大きくなるにつれて低い周波数へとシフトする傾向がみられる 6. まとめパンチングメタルの孔径および板厚を主なパラメータとし, 実験風速とによる風騒音の発音特性および発音傾向を低騒音風洞実験により確認した 孔径のみならず板厚によってもその発音傾向は大きく異なり, それぞれ風速やに応じて周波数特性が複雑に変化することから, 音源となる流れのパターンも複数種類であることが推察される 詳細なメカニズムの解明については今後の課題としたい φ-p 9 6 3 9 6 3 9 6 3 風速 m/s 風速 m/s 風速 m/s φ-30p 9 6 3 9 6 3 9 風速 m/s 風速 m/s t=1mm t=2mm t=3mm 1K 3K K 7K 9K 1K 3K K 7K 9K 1K 3K K 7K 9K Frequency (Hz) Frequency (Hz) Frequency (Hz) (a) φ t=1mm t=2mm t=3mm 参考文献 1) 浅見他 : 基本断面部材の風騒音に関する研究日本建築学会大会梗概集,0 2) 高久, 鈴木 : パンチングメタルから発生する風切り音に関する一考察, 日本音響学会講演論文集,04 3) 近藤他 : パンチングメタルの風による騒音, 日本機械学会機械力学 計測制御講演論文集,1991 4) 高倉他 : 建物周辺における風切り音に関する実験的研究その 4, 日本建築学会大会梗概集,1999 ) 吉川他 : パンチングメタルの風騒音に関する研究, 日本建築学会大会梗概集,07 6) 冨高他 : パンチングメタルの風騒音に関する研究, 日本建築学会大会梗概集,07 風速 m/s 6 3 1K 3K K 7K 9K 1K 3K K 7K 9K 1K 3K K 7K 9K Frequency (Hz) Frequency (Hz) Frequency (Hz) (b) φ 図 -9 風騒音ピーク周波数のによる変化 Fig.9 Variation of peak frequencies with wind angle 31-6