4 豊中市の住宅 住環境をとりまく現状のまとめ (1) 人口 世帯の状況 市全体の傾向 将来にわたる人口の減少傾向と高齢化の進展 昭和 60 年をピークに漸減した後 ここ 10 年間は 39 万人程度で推移し 平成 22 年で 38.9 万人 今後は減少傾向が続く見通し 高齢化率は年々上昇し平成 22 年で 22.0% 周辺市と比べて高くはないが 将来的な高齢化の進行が見込まれる 世帯の小規模化の進行 夫婦のみ世帯 単身世帯の割合が上昇し 世帯人員は年々減少 平成 22 年で 1 世帯当たり平均 2.34 人 高齢者のいる世帯では 高齢単身世帯の割合が周辺市よりも高い 全市的に 30~49 歳の子育て世代が多く 他都市への通勤者も多い 大阪市のベッドタウン 周辺市と比べ 子育て世代 ( 住宅の一次取得者層 ) である 30~49 歳の構成割合が高く 若年層の割合は低い 昼夜間人口比率は 89.2% で昼間の流出人口が多い とくに通勤 通学先の半数は大阪市 交通利便性の高いベッドタウンとしての特性を有する 大半を占める年間収入 500 万円未満層 700 万円以上層の減少 / 高まる 500 万円未満層の持家率 500 万円未満層が 60% 700 万円以上層は大きく減少している ここ 10 年で 500 万円未満層の持家率が上昇 地域特性 高齢化の進展が顕著な千里ニュータウン北部の一戸建住宅地と庄内 豊南町地区の密集市街地 いずれの地域も居住期間の長い世帯が多く 高齢化とともに人口減少も進んでいる 高齢者の単身化も顕著である 千里ニュータウンは計画的な住宅建設が行われた分 建設時期や居住世帯が偏っている地区がある 特に 北部の一戸建住宅地は 定住意向が強く高齢化が進んでいるほか 施設への住み替え後の住宅や相続により取得した住宅に子世帯等が入居せず 空き家のまま放置される場合が多い 庄内 豊南町地区の密集市街地は 住宅の入居者だけでなく 家主 地主や借地権者など住宅を取り巻く関係者の高齢化も進んでおり 住宅の流通 管理等が困難な状況が発生している 若年世帯が多い阪急沿線と少路駅北側 阪急沿線は小規模世帯 特に 65 歳未満の単身世帯が多い 中でも 周辺に大学等が立地する石橋や蛍池は 居住期間の短い若年単身世帯が多い 少路駅北側 ( 緑丘 向丘等 ) は 平成に区画整理が行われた住宅地であり 人口 世帯増加がみられる 居住期間が短い子育て世帯が多い 99
(2) 住宅ストックの状況 地域特性 持家の割合が高い市北部と民間賃貸住宅の割合が高い阪急沿線 持家の割合の市平均は約 50% と池田市 箕面市より低いが エリアごとに顕著な傾向が見られる 特に市北部では持家の割合が高く 80% を超える町丁目が集中している また 住戸規模の大きな一戸建 持家が多い 一方 阪急沿線の利便性が高いエリアでは 持家の割合が低く 民間賃貸住宅の割合が高い傾向にある 全市的な傾向として 近年は共同 持家 ( 分譲マンション ) の割合が上昇している 築年数の古い木造住宅が集積する庄内 豊南町地区の密集市街地 昭和 55 年以前建設の住宅の割合は 42%( 市平均 ) 特に 庄内 豊南町地区の密集市街地では 木造家屋が多く 相対的に老朽空き家が多い傾向にある 住宅の入居者だけでなく 家主 地主や借地権者など住宅を取り巻く関係者の高齢化も進んでおり 住宅の流通 管理等が困難な状況が発生している 平成 25 年 4 月から 庄内 豊南町地区の密集市街地における木造住宅等の除却費補助を実施している 空き家の状況 市全域に存在し住環境上の問題を引き起こす非流通空き家 空き家率は約 15%( 全国平均 13%) で そのうちの約 18%( 住宅戸数全体の約 2.7%) が非流通空き家 ( 二次的住宅 ( 別荘等 ) 売却用 賃貸用以外の市場に出ていない空き家 ) となっており その一部が住環境上の問題 ( 防犯上の不安 美観 雑草樹木の繁茂 家屋等の倒壊の恐れ等 ) を引き起こしている状況がある 新たな動きとして 福祉を中心とする地域の活動拠点としての空き家 空き店舗活用事例がみられる 空き家に対する行政としての対応 ( 所有者の指導等 ) に限界 関係各課 社会福祉協議会等がそれぞれの役割分担のもと 連携しながら空き地や空き家 老朽家屋等に関する相談 対応を実施している ただし ワンストップの相談窓口がない状況 空き家や老朽家屋は 危険家屋 等と判定されなければ 所有者への指導等が行いにくい状況にある また 危険家屋であっても所有者が不明の場合は対応が困難 空き家や老朽家屋の除却 取り壊しが進まない背景の一つとして 住宅用地の課税標準の特例 ( 固定資産税 都市計画税 ) があると考えられる 住宅性能の状況 不十分な耐震診断 省エネ対応 耐震診断実施率は木造一戸建で 11% 木造長屋で 3% と低い 二重窓 複層ガラス窓の設置などの省エネ対応も とりわけ賃貸住宅で進んでいない状況にある 100
平成 27 年度の耐震化率 90% を目標としており 住宅をはじめとする建築物の耐震化が急務 未だアスベスト対策がなされていない建築物が一定数残されている 不十分なバリアフリー環境の整備 バリアフリー化率 ( 高齢者のための設備がある割合 ) は持家で 63% 賃貸住宅で 32% 賃貸住宅のバリアフリー改修は 家主の許可 ( や負担 ) が必要なため難しい状況がみられる エレベーターのない古い団地の住棟では 2 階以上に居住する高齢者の外出が困難なため 近隣とのつながりがなくなる恐れがある 分譲マンションや賃貸住宅の管理の状況 マンションの管理に関する意識が不十分 マンション管理士会への相談は一部のマンションのみで 管理組合のマンション管理に対する意識は十分とはいえない 以前に比べ 分譲マンションの賃貸化や空き家化が進んでいる傾向がみられるが 相談のないマンションの管理状況は把握できていない 分譲マンションにおける入居者間のトラブルへの介入が困難 家主の高齢化による賃貸共同住宅の管理不全への懸念 個人家主の賃貸共同住宅では家主の高齢化が進んでおり 今後 管理 判断能力の低下を要因とする老朽家屋が増加することが見込まれる 老朽化した公営住宅の長寿命化対応の遅れ 公共賃貸住宅管理戸数は 17,411 戸 うち UR 賃貸住宅が 7,786 戸と多く 公営住宅 ( 市営 府営 ) は 8,176 戸 昭和 40~50 年代に建設された公営住宅の老朽化が進行しているが それらの計画修繕等が遅れている (3) 住環境の状況 未だ多く残る狭小幅員や未接道の住宅 幅員 4m 未満道路または未接道の住宅が 周辺市と比較すると池田市に次いで多い 立地特性により生じている高齢者の買い物や外出に困難な状況 駅から離れた住宅地や起伏の多い住宅地 近隣に商店がない住宅地は 高齢者の外出や買い物に不便な状況が生じている 点字ブロック 歩道勾配の改善 横断歩道の設置など 高齢者等が安全に外出できる道路空間のバリアフリー環境が不十分な地域も見られる 一部で生じている住環境の安全 安心 快適性に関する問題 周辺の街並みとの調和や圧迫感 交通安全性や地盤安全性等の内容で 新規開発物件 ( 一戸建 マンション ) の事業者と周辺住民との間に問題が発生している地域がある 住宅と他用途 ( 工場 農地等 ) が混在している地域では 騒音や野焼き等に関する苦情が多い 101
今後の展開が期待される住民発意のまちのルールづくり 住民の住環境に対する意識 関心が高い 地区計画 (11 地区 ) や景観形成協定 (3 地区 ) を締結している地区がある 地区計画は 3 地区が住民発意による一戸建住宅地における地区計画 自治会申し合わせを地区計画等へ発展させたいという相談がある 地域コミュニティの停滞化 市全体で自治会加入率が 46.8% 近隣関係の希薄化により 近所に誰が住んでいるのかわからない等 地域内のつながりが薄いという状況が見られる それにより 近隣での高齢者の見守りの関係がなくなったり 災害時に円滑な避難支援ができないことにも繋がる懸念がある 住民による自主的な地域活動の動き 良好な住環境を維持するための活動や高齢者の見守り活動等 自治会等での自主的な活動が行われている地域がある 最近の動きとして 現在 新千里東町地区では 地域自治組織 を設立し活動を展開中 他の地域でも設立に向けた取り組みが進んでいる 地域住民等と協力した管理不全家屋解消の動き 社会福祉協議会では 地域住民などと協力し 管理不全家屋のゴミの片付け相談 対応を実施している (5 年間で 200 件程度 ) (4) 住宅市場の状況 分譲住宅 賃貸住宅を中心とした住宅着工戸数の減少 住宅着工戸数は減少 横ばい傾向で 平成 24 年は 2,440 戸 持家は横ばい 分譲住宅と賃貸住宅は漸減傾向 高いポテンシャルを持つ既存住宅流通市場 豊中市の既存住宅流通は 北大阪急行沿線や阪急宝塚線沿線が中心 これらの地区では買い手が付きやすく 流通市場としてのポテンシャルは高いが 一戸建住宅の空き家が十分に流通市場に乗っていない地区もみられる 良質な住宅ストックを所有する 40 歳台 ~50 歳台の積極的な住み替えにより 流通市場が活性化されることが期待されるものの 経済的な見通しが立たない中では次のアクションを起こしにくい状況にある 住宅 土地の所有者の高齢化による既存住宅流通の停滞 庄内 豊南町地区は借地権付きの持家が多いが 借地権者 底地権者双方の高齢化により流通が停滞している 住宅 土地の所有者が高齢化し それにともなう判断能力の低下により 流通の停滞が懸念される 102
安心して中古住宅売買ができる新たな環境整備の動き 大阪府では 府内の関係団体 事業者を中心に 大阪府不動産流通活性化協議会 を立ち上げて 中古住宅売買サポート Onestate を開始 既存住宅を売買する時のトータルサポートサービス ( 建物検査 かし保険指摘項目補修見積 リフォーム付き住宅ローン 住宅アフター点検等 ) を実施 (5) 住宅確保要配慮者等の状況 増加する住宅確保要配慮者等 被生活保護世帯 障害者世帯 ひとり親世帯はいずれも増加傾向 特に母子家庭の増加傾向が顕著 要介護認定者も増加傾向で 単身世帯 高齢の夫婦のみ世帯が半数以上 在宅認定者の自宅介護ニーズは高い 高齢者の住み替えニーズにあった賃貸住宅等の不足 在宅介護ニーズは高い反面 経済的理由により住み替えが困難な高齢者もいる 低家賃で安心して居住できる賃貸住宅等が少ない 保証人が見つからない高齢単身世帯等の賃貸物件への入居が困難な状況 高齢者は定着率が高く 高齢者 = 入居拒否の要因とはならないものの 身寄りのない高齢単身世帯等が死亡した後の家財等の処理についての負担や保証人不在が入居制限に繋がっている 障害者や外国人は 共同生活を営むことができるかが入居できるかのポイントとなる 長期入院から退院後の障害者が住宅を個人で借りようとしても借りられない 家主が安心して賃貸できる仕組みの普及が不十分 最近は 商品として孤立死対応の保険がある 身寄りのない高齢単身世帯等が亡くなった後の 敷金を超える原状回復費 遺品整理費用 家賃保証等が補償される ただし 家主に十分浸透していない状況にある 空き家を転用した施設整備の動き 障害者の施設入居者の地域生活への移行のための住まい ( グループホーム等 ) が不足 施設整備については 地域の理解が得られない場合もある また 事業者がグループホームとして借りようとしても 必要な改修について家主と話がつかない場合がある 最近の動きとして UR 賃貸住宅で 4DK などの高家賃の空き住戸を障害者支援団体に賃貸し グループホームを開設するケースがある 高い市営住宅の応募倍率 / 市営住宅入居者の半数が高齢者のみ世帯 市営住宅は 応募倍率が高い ( 平成 20~25 年度平均 :20.2 倍 ) 現在 入居者の半数が高齢者のみ世帯となっている 103
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