講義「著作権制度の概要」(講師:大和淳氏)|第5回(2008年度)著作権ゼミナール

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必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

著作権

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著作隣接権 ( 文字どおり 著作権の隣にある権利 ) 実演家 ( 歌手 俳優等 ) レコード製作者放送 有線放送事業者 肖像権 パブリシティ権 ( 有名人の氏名 肖像等が持つ顧客吸引力を経済的に 利用することについて持つ権利 ) プライバシー 名誉毀損 3 宇多田ヒカルの音楽 CD の場合 作詞 作

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(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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( 注 ) 役務の提供を受ける者の本店又は主たる事務所が日本にあれば課税 ということですので 国内に本店がある法人の海外支店に対して インターネットを介してソフトウェア等を提供した場合は 提供者が国内 国外いずれの事業者であっても国内取引に該当し消費税が課税されます ( 国税庁作成の 国境を越えた役

(2) ピュア型 / キャッシュ非作成型 (Limewire,Gnutella 等 ) 検索検索検索見つかると直接接続検索検索検索 図 Limewire の仕組み 1 情報管理サーバーを持たない 2ファイルの検索はバケツリレー方式で行う 3ファイルが見つかった後はピア ツー ピア通信でファイルの送受

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資料 年 10 月 28 日 ヤフー株式会社 情報活用関連におけるニーズ 所在検索サービスの社会的ニーズ I. 課題現行著作権法 47 条の 6 においては インターネット検索サービス 1 の提供にあたり 送信可能化された著作物 の収集 蓄積および検索結果の表示のための著作物の複製 翻

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Transcription:

第 5 回 JASRAC 著作権ゼミナール 講義 : 著作権制度の概要講師 : 大和淳氏文化庁長官官房著作権課課長補佐元横浜国立大学大学院助教授 2008 年 11 月 12 日大阪国際交流センター 2 階大会議室さくら

はじめに先生方 こんにちは ただいまご紹介いただきました文化庁の大和でございます もず先生のお話の後でこれから役人がかた苦しい話をしないといけないんですけども とかく著作権というのは難しいということで 社会で関心は持たれつつもなかなか理解が進まないということで我々も苦労をしているんですが 昨今 学校現場でも情報モラル教育の一環として著作権が位置づけられるなど そういった機運も高まっております 今年の3 月に告示をされた学習指導要領でも従来ですと中学校の学習指導要領 技術家庭の中に著作権という記述がありました 新しい学習指導要領では 中学校の音楽とか美術なんかにも著作権という言葉が取り上げられております 先ほどのもず先生のお話ではないですけども 子どもたちの感性をはぐくむといった観点 これまでは コンピューター教育の一環としてみたいな切り口があったかもしれませんけども 感性 子どもたちの表現活動 鑑賞活動の一環として著作権を取り上げようというふうな機運もあるようでございます この機会に著作権について少しでも親しんでいただければと考えておりますので 1 時間半弱でございますけれども どうぞよろしくお願いいたします 本日は3 部構成に分けてお話をしたいと思います 最初が 著作権制度の概要 二番目は 教育活動と著作権 本日参加の先生方には著作権のうち最も関心があるのは どうしたら無断で使えるかといういわゆる例外規定だと思いますが それを二番目に それから 三番目に 児童生徒に対する著作権教育 つまり子どもたちに著作権に関する事項をどのように伝えていくかという内容で 以上の3 部構成でお話をしたいと思っております なお 三番目の 児童生徒に対する著作権教育 については 私の話の後に 小学校 中学校 高等学校で著作権教育を実践的に取り組んでこられた学校の事例発表がございますので むしろそちらを聞いていただくほうが有益なのかなと思いますので 私の話では文化庁の教材なんかのPRなどさせていただきたいと考えています 第 1 部 著作権制度の概要 では まず どういったものに著作権があるのか 著作物の定義 概念ですね それから その上でだれが権利を持っているのか さらに著作権 著作権と言いますけども具体的にどんな権利なのか 4 番目に その権利がいつまで存続するのか いわゆる権利の保護期間ですね それから5 番目には 著作権というのは著作物を創った人の権利なんですけれども 伝達する役割を果たす人にも法律上権利が認められておりますので いわゆる著作隣接権ということにも触れます そして 権利の概念がお分かりいただけたところで そういう著作物を利用するときにはどのような手続が必要かという原則のお話をしながら 最後に 権利を侵害された場合の法的責任の追及という形の内容でお話をしたいと思っております はじめに いくつかの事件を紹介します まず インターネットオークションでビジネスソフトの海賊版を販売したということで中学校教員が逮捕された事件 あるいは学校じゃありませんが公立の視聴覚教育ライブラリーで 市販の教育映画作品を当該視聴覚ライブ 1

ラリーのホームページにアップロードしたという事件 同じ年ではまた インターネットオークションでカーナビソフトの海賊版販売で小学校教員を逮捕という報道 それから もう1つは これは今年インターネット掲示板を通じてビジネスソフトの海賊版を販売したということで これは 高校生が逮捕されたという事件でございます このような児童生徒が法的責任を問われる事件が報道されますと やはり先生方にとっても心を痛めることになるのではなかろうかと思いますが こういった事件をどう考えるかというときに 著作権に関する意識の普及啓発が大事だとは思うんです そういった意味では 多くの先生が著作権に関する学校現場における例外規定に関心をお持ちですが 例外規定以前にそもそも基本的なルールとしての著作権を理解していただくことがまず大事なのかなと思います もちろん 子どもたちに正しく 分かりやすく指導するというのも必要なわけですけども まず 先生方ご自身が正しい理解をするということが大事になっているのではなかろうかという気がいたします そこで 私なりに分かりやすくというか なぜ そういう世の中になってきたのかというのを整理したのがこの図でございます 今日 デジタル技術 ネットワーク技術が普及して いわゆるインターネット社会と言われ そういった中で著作権が注目をされていますけども どういうことに著作権制度が関連しているんだろうか インターネット パソコン 携帯電話 デジタルカメラ ビデオあるいは衛星放送 地上波デジタルとか さまざまなメディアが出現して いろいろなコンテンツの享受 鑑賞をしたり使ったりすることが手軽にできる世の中になっていますけれども こういった便利な世の中になったことによって著作権制度について再認識されているのはなぜでしょうか 従来ですとコンテンツの流通に関するルールというのは 例えば放送局であるとか 出版社 レコード会社 映画会社 そういったコンテンツの流通を専門に取り扱う しかも設備とか技術を持った専門集団が ある程度の知識を持って作家とのコミュニケーション 契約なんかをすることによって それなりに著作物コンテンツというのは世の中に回っていたわけです しかし 今はパソコンとインターネットに接続された環境があれば だれでも放送局と同じ行為ができる だれでも出版社と同じ行為ができる 私のようなアマチュアの一私人であってもレコード会社と同じような行為ができる時代になっているわけです すなわち専門的な技術あるいは大規模な施設がなくても パソコンとインターネットがあれば個人ホームページを立ち上げてブログなんかを書くついでに他人が制作した映像の電子ファイル 音楽の電子ファイルなんかを張りつけることもできるわけです そうしたときにそれは 実は法的にはまさしく放送と同じ行為なんですね それが一般私人であってもできるようになったので 一歩間違えば個人が犯罪者にもなりかねないという状況なわけでございます そういった意味で 著作権に対する認識を改めて再確認していくことが必要だと言われているんだと思います また そういうルールがあるということを知るとともに 例えば日本のアニメとかゲーム Jポップのように海外でも評価される作品というものをどんどんこれから生み出していっ 2

て 日本の文化として世界中に発信していくことも求められているわけです そういった意味でコンテンツの創造 それから保護 活用 こういったサイクルをよりよくしていこうという動きが今国内で盛んになってきています それで 知的財産 ということが言われるわけですけれども 知的財産って何? という疑問がよく聞かれます 著作権に関するセミナーで私どもいろいろお話をして 何となくわかったような感じになるわけですけれども 最後に ところで著作権って具体的にどの部分なの? というのがどうしても最後までつきまとうわけでございます そこで 知的財産というものを考えるときに 最近 私なりに提案をしている考え方を紹介します あなたは子どもたちが異年齢の交流を進められるような地域活動に参加しているとします 地域のボランティア団体でもいいし PTA おやじの会 青年団みたいなところでもいいです そういったところで 子どもたちと一緒に何か活動をしよう この時期ですとクリスマスパーティー 夏休みですと花火大会とか盆踊り大会なんかがあり得ますが そのようなイベントを企画しました そのイベントを開催するに当たり ポスターやチラシを作成して配布することになりました そこに 何月何日何時から どこそこ公園で花火大会 クリスマスパーティーを開催 と書いたところでなかなか子どもは目にとめてくれないだろうということで イラストなどのような目にとまる絵柄とかがあればいいんじゃないのという話になります そのサークルのメンバーに絵心がある人とか写真が好きな人がいれば イラストや写真でデザインすることもできるでしょうけども そういった人もいないとすれば 人気漫画のキャラクターなんかをポスターの図柄に使ったらいいんじゃないのという話がよくありそうな話ですね そういったときに その主催者である組織は 別に商売の目的でイベントをやっているわけでもないですし ポスターやチラシを売ったりするわけでもないわけですから 経済的な取引というのはほとんど行われていない せいぜい紙を買うとかマジックを買うとか そういったことはあるかもしれませんけれども そうすると財産的な問題というのは何もないのかというと そうじゃないんじゃないでしょうか どういう意味かというと クリスマスパーティーのチラシ ポスターに人気漫画のキャラクターを図柄にしましょうということになったときに アットランダムに手に触れたある漫画雑誌のページをぺらぺらと適当にめくり たまたま開いたところを複写機にのせてコピーボタンを押したのでしょうか? 違うんですよね この絵がかわいい 子どもたちが喜びそうだ クリスマスパーティーの雰囲気に合いそうだ それをチラシにすることによってこのパーティーに行きたいと子どもたちが言うかもしれないと思ったからこそ その絵を選んでコピーしたわけです 言い換えれば価値を認めているわけです そこに気がつく必要があるんじゃないでしょうか 売り買いしないから財産権の問題は生じていないということじゃなくて あなたも価値を認めているじゃないですか それが知的財産という形のない財産なんじゃないですか と私は言うようにしているのです それから 次は学校の先生向けの話題の例なんですけれども 最近は学校の先生にも著作 3

権についてある程度知識がある方が最近は増えてきました ですけども 個別にお話していると どうもおかしいということに気がついてきまして それはこういうことじゃないかと考えるようになったのです あなたは電話をかけていますとします そこで話の内容をメモする必要が生じました しかし ペンを持っていません ちょっと具体的に考えてみると 私が仕事場にいるときに 家内から電話がかかってきたとします 電話によれば子どもが車にはねられて病院に担ぎ込まれた どこそこ病院に早く行ってということです それで 電話番号を言われるわけですけども 数字を覚えるのは苦手ですからメモしようとするんですが 手元にペンがなくてペンを探している たまたま横にある同僚の机を見ると 彼はトイレかどこかに行っているらしく席を外している 机の上には鉛筆とメモがある そのような場合 そのペンを拝借して 病院の名前と電話番号のメモをとるわけですね こういった行動というのはよくあると思いますけども 本来どうすべきなのかというのは分かりますよね 本来は このペンを借りたいときは持ち主である彼に ちょっとペンを貸して と聞き ああ いいよ と言われたらそれを借りてメモをとるんですよね ですけど たまたま彼が今どこかへ行っていない 探しに行く時間的な余裕もない 自分の手元にペンがない 時間がないという緊急事態のため ほんとうは断って使わないといけないんだけども 例外的に黙って使わせてもらって後で謝ろうと考えてメモをとっているわけですね このような原則と例外について ほとんどの人はそのとおりとよく分かっていただけると思うんですが こと著作権に関しては 学校の先生の場合 原則と例外が逆転している方が多いように思えます つまり 教育現場において子どもたちに教えるに当たっては 無断で使ってもいいのが原則 ただし 著作権法の条文に引っかかると許可を得なければならない と考えている人が多いのではないでしょうか この話を学校の先生の研修会ですると うん うん そうそうと頷く先生が多いんですけども この会場ではそうでないところを見ると 原則と例外をしっかり踏まえておられて そんなこと当たり前じゃないの と思っておられるのかもしれません それであれば非常にありがたいと思いますが 私の経験上は原則と例外を逆転してしまっている先生が多いようです 教育という非常に公益性の高いいい活動を行っている 別にそれで金もうけをしているわけじゃないし 海賊版をばらまいているわけじゃないんだから 一々断らなくてもいいんだ だけど著作権法の条文に引っかかってしまうと許可を得ないといけないんだと思ってしまっている先生が実は多いんです 著作権の研修をするにあたっては 他人の作品を利用するときには了解を得るのが原則であって 例外的に無断で使える規定があるんだということを正しく理解しないまま 例外規定を先に学習してしまうと 著作権法は利用を禁止する面倒な規制の法律だなと思ってしまうことになるんです 著作権は実は規制じゃないんです してはならないという書き方の規定は1カ所しかないんです だけども 原則と例外を逆転して理解してしまい 4

国から規制されたと誤解をしてしまうので そこで思考がストップしてしまうおそれがあるのではないかという気がします ですから そういった意味で知的財産というのはどういうものなのか 原則というものはどういうものなのかというのをまず押さえていただくと非常にこの後の話がわかりやすいんじゃないかなと思います 著作権制度の概要 さて 具体的な制度の内容に入りますけれども そもそも著作物とはどういうものかというところです 法律の定義は 思想又は感情を創作的に表現したものであって 文芸 学術 美術又は音楽の範囲に属するもの と書いていますけども 大体皆さんが思い浮かべるとおり 小説 音楽 絵画 写真 映画 コンピュータープログラム そういったものが著作物なわけでございます これは 人が自分の気持ちまたは感情を創作的に表現したものです 別に文学的価値が高いものとか 経済的に価値が高いものとは一言も書いていません 知的なあるいは文化的な創作活動の発露であればいいということです そういった意味では 子どもの作品だって著作物ですし 先生方お一人お一人が日記を書いたり知人にあてた手紙を書いたりしているのも 自分の思いをペンに託して日記や手紙に表現をしている文化的な創作活動ですので そういったものもほとんどの場合 著作物なんです 先ほどの冒頭の事件のように コマーシャルベースに載るものがマスコミで著作権事件として取り上げられますから 商品価値があるものだけが著作物だと思いがちですけども そうじゃないわけで そういった意味で最近は 1 億総クリエイター という言い方をすることもあります それでは そういった著作物についてだれが著作権を持っているのかということですが これも法律では 著作物を創作した者が著作者 と規定しています そんなことは当たり前じゃないかと言われそうですけども 実は当たり前のはずなのに誤解している人は多いんですね 学校であればどうでしょうか 例えば 教育委員会とか会社 国の役所でもそうですけども 施策の事業をPRするためにポスターや広報ビデオをつくるとします 予算を取ってデザイナー事務所とか映像プロダクションに発注して かくかくしかじかのイメージで広報ポスター 広報ビデオをつくってくれという発注をするわけですね そうした場合 予算もこちらが負担して それででき上がったものを納品させるので 発注者側が著作権を持っていると考えがちなんですけど 実はそれは違う つくった人が著作者なんです お金を払った人 注文をした人 企画をした人が著作者なんじゃないということが重要です それで 著作物の創作と同時に権利が発生します 作品をつくった時点で同時に発生するということで 無方式主義といいます 特許の場合は出願したり審査を受けたりするなど手続が必要なんですが 著作権の場合はつくれば自動的に権利が発生するしくみになっていますので 通常 著作者イコール著作権者 著作権を持っている人なんだということになるわけです 5

もちろん財産権というものは譲渡が可能ですので このようなケースもあります 著作者として小説家だとしましょう その人が小説を書きました 出版者が あなたが書いた出版物を我が社で本にさせてください ということで出版契約を結ぶ これを著作権法では許諾申請をするといいます これが原始的な状態ですけども 著作者は財産権を譲渡することができます 小説家が権利を譲渡してしまうと 著作権者はそれを譲り受けた人になります つまり小説家は著作者ではあるけども 著作権者ではなくなる 新しい著作権者が現れれば 出版社はその著作権者に許諾を得ることになります 印税を払う相手も新しい著作権者という構図になるわけです したがいまして 原則としては著作者が著作権を持つけども 権利の変動があった場合には著作権者と著作者が異なることもあるということも知識として持っておいていただければと思います さて次に 著作権という権利の内容はどんなものなのかというわけですが 大きく分けて作者の人格的な利益を保護する権利という側面と無断で されない権利という側面があるわけでございます 作者の人格的利益を保護する権利を著作者人格権 無断で されない権利というのを財産権としての著作権 これらの両方を合わせて著作者の権利と整理されています このうち まず 人格的な権利の中には 公表権 氏名表示権 同一性保持権という権利があります 自分の作品を公表するかしないかを決定できるのは作者自身である それから その作品を世に出すときに作者の名前をどのようにつけるか 本名をつけるのか ペンネームをつけるのか あるいは匿名にするのかというのを決定することができるのは作者だけである それから 同一性を保持する 裏返して言えば 作者の意に反した改変を受けない 中身を切り刻まれたり改ざんされたりしない権利を作者が持つ これらが著作者人格権の内容なんですが 要するに作品は作者の思想感情を創作的に表現した分身みたいなものですから 人格的な利益が体現されているものだという意味でこのような人格権が認められているわけです これらの著作者人格権は譲渡不能です 先ほど権利の譲渡のお話をしましたが 財産権は譲渡可能だけども 人格権は譲渡をすることができません 作者だけが持っている権利です 次に 財産権としての著作権の内訳としては 複製権 上演権 演奏権 上映権 公衆送信権 送信可能化権 口述権 展示権 頒布権 譲渡権 貸与権等々がございます すべてご紹介をする時間はありませんので 代表的なものだけご説明しますと 先ほど無断で されない権利という言い方をしましたように 例えば複製権というものは無断で複製されない権利という意味であり 作者から見て自分の作品が勝手にコピーされない権利です 上演権であれば 脚本家とかそういった戯曲作家が自分の作品が勝手にお芝居として上演されない権利 演奏権というのは 作詞家 作曲家が自分で詩とか曲をつくったものが勝手にコンサートで演奏されない権利であり その他の権利についてもそのように読んでいただければよいわけです 要するに財産権として作者は自分の作品の利用を物権的に 6

支配する権利というのが財産権としての著作権です 先ほどの出版社の例で考えると 我が社で本にさせてください いいですよ と契約を結んで 契約の条件として印税を定価の10% 払うとか ただで使ってもいいとか 半額にまけておこうとか そういうのは契約自由の原則に基づいて当事者の交渉にゆだねられているわけで 法律で幾ら払えとかいうのは何も決まっていないわけですが 少なくとも 無断で利用されない権利というのを著作者は持っているわけです 複製権のイメージをもう少しご紹介しますと 美術の著作物というものがあったとしまして これが印刷されてカレンダーに掲載される これも有形的に再製していますので複製物をつくっているわけですね ですから カレンダー会社は画家に対して あなたの書いた絵を我が社のカレンダーに印刷させていただいていいですか という契約を結んでカレンダーが商品化されているわけです 複製物というと複製画のように思いがちですけど 有形的に再製しているものはあらゆる形態があり得ますので カレンダーになる場合 美術全集に掲載される場合 さらにはTシャツにプリントされる場合というものも複製に当たるわけです さらに 例えばカレンダーに掲載された図柄を使ってコピー機でその絵をコピーするということについても 複製物をつくっているわけですね こういった場合も 元の絵画を使っているわけですから 複製の契約を結ぶ必要があるわけですけれども 別にカレンダー会社が権利を持っているわけじゃありません カレンダー会社は許可を得ただけの人にすぎませんから コピーをしようとする人が許可を受ける相手は画家になります これらのように 複製物を作成しようとする者が 法律上の権利を持っている著作者と契約を結んで複製を行うことが基本的な考え方です 著作者から見れば自分の作品が無断で複製をされない権利を持っていますので これらの行為が勝手にやられようとしていれば 勝手に商品化するのをやめろなどと言うことができる権利であり 上演権 演奏権等々についても同様でございます それと 翻訳権 翻案権 二次的著作物利用権というのがあるんですが これも分かりにくいので具体例で考えてみましょう ある外国語の原作小説があります ハリー ポッター を例としますと イギリスのJ. K. ローリングさんが英語版でハリー ポッターを執筆しました その場合 J.K. ローリングさんが著作権をイギリスはじめ 世界各国で著作権を持つわけですね 無断で複製されない権利とか 無断で口述されない権利等々を彼女が有するわけですが そのうちの1 つの権利として翻訳権 無断で翻訳されない権利というものも持っています そこに日本の松岡佑子さんがそれを日本語版に翻訳した ハリー ポッターと賢者の石 を作成することになるわけですが これは松岡佑子さんがJ.K. ローリングさんに翻訳のライセンスを得て日本語版をつくるわけです そして 日本語版は単なるコピーじゃない 翻訳という新たな創作行為を加えてでき上がっています こういった原作に依拠してでき上がった新たな著作物を二次的著作物というんですが 松岡佑子さんもその二次的著作物をつくっ 7

たから 日本語版の著作物について無断で複製されない権利や無断で口述されない権利等々の著作権を持つことになります J.K. ローリングさんは自分が作った英語の作品について権利を持ちますが 彼女からのライセンスを得て日本語版ができた場合 日本語版である新たな著作物についても 新たな権利が松岡佑子さんに対して発生しています さて 二次的著作物の利用権というのは J.K. ローリングさんは自分が創作した小説の著作権だけでなく 松岡佑子さんが獲得した権利と同じ権利を持つんだということをいいます 松岡祐子さんも複製権を持つし J.K. ローリングさんも複製権を持っているので 結局同じ権利じゃないかと思いがちですが 松岡佑子さんの持っている複製権とはすなわち日本語版として出版する権利であり J.K. ローリングさんが持っている複製権とは英語版を原作のまま無断で出版されない権利です 利用する側から言えば 日本語版を出版するのが静山社だとすると 松岡佑子さんに対して あなたが翻訳した日本語版のハリー ポッターを出版していいですか というのと同時に 同じ権利をJ.K. ローリングさんも持っていますから あなたがつくった英語版ハリー ポッターをもとにしてでき上がった日本語版を出版していいですか という許諾契約を結ぶという関係になるわけです これを二次的著作物の利用に関する原著作者の権利といいます ちょっと複雑ですけども このようにいろんな権利者がかかわり合いながらコンテンツが流通している これは翻訳小説の例ですけども 小説が映画化されたものなんかもそうですね もともと原作小説があり それをドラマ化して映画ができ上がった それをDVD 化しようとするときには 映画をつくった著作権者と複製の契約を結ぶとともに その原作となった小説家とも契約をしないといけないという構図もあり得るわけでございます さて次は そのような権利がどれぐらいの期間存続するかということなんですが 権利の発生は先ほど言いましたように創作すれば自動的に権利が発生します そして権利が消滅するのは著作者の死後 50 年後ということでございます 漫画家の手塚治虫さんが 鉄腕アトム ブラック ジャック リボンの騎士とかたくさんの著作物をつくりました 彼は平成元年に亡くなりましたから 50 年経過後 平成 51 年 12 月 31 日をもって鉄腕アトムの権利 リボンの騎士の権利 レオの権利もなくなる そうすると それ以降は著作権はなくなりますから 無断で複製されない権利とか無断で演奏されない権利というもの自体がなくなるわけですね したがって 許可を得ることなくコピーしても権利侵害にはならない しかし死後であっても50 年を経過するまでの間 権利が存続する期間については許可を得ないといけないわけです 死んでしまっているのにだれに許可を得るのということですけれども 財産権ですので 相続をしたり あるいは生前に譲渡したりという形で著作権を承継している人は存続しているわけです 現在 ご存じの先生もあるかもしれませんけども この期間を延長してほしいというクリエイター側の要望と 著作物を利用する産業界などからは 延長すべきじゃないという 保護期間の延長問題というのが国の審議会でも議論されているところですけども 簡単には結論が出ない問題なのかなと思っています 現行の制度では このような形で著作権の 8

保護期間というのが定められているわけであります さて次は 著作物を伝達する者の権利ということなんですけれども 今まで申し上げましたのは著作物をつくった人 小説家 画家 作曲家 作詞家というクリエイターを指すわけですけども 我々が著作物を鑑賞し享受する際には 伝達の役割を果たしている人も重要であるということで 国際条約の中でこういった立場の人たちを著作権制度の中で保護することになっています 実演家 これは歌手 演奏家 俳優なんかもそうですね 先ほどのもず先生がつくられた楽曲を歌う歌手といった場合 その歌手の人は詩をつくったわけじゃないんです 人がつくった詩を演じているわけですね 俳優なんかも 脚本が書かれたものに基づいて演じている しかしながら それを伝達するという準創作的な行為といいますか 評価がされて 著作者と同じような権利が認められています レコード製作者も同様です 音を固定する行為に着目して 著作権に似た権利が認められています 放送事業者につきましても 映画をつくっているのは映画会社なわけですけども それを電波に乗せて伝達しているという役割に着目して これらのものに著作権と同様の権利を認めています 先ほど著作者に 無断で されない権利 あるいは 人格的な利益を保護する権利 が認められているとご説明しましたが それと非常に似た権利であります こういったものが著作物を伝達するものにも認められています さて このように権利を持つ人が何人かある場合にどうすればいいのか 無断で してはならないわけですから許可を得ればいいわけですけども 手順としては まず 著作物であるかどうかをチェックする 単なる記号とか模様とか 著作物でないようなものであれば著作権法上の権利の問題は生じませんので 著作権法の手続を考える必要はありません 次に 権利にかかわる利用方法かどうかをチェックする 権利に関わる利用方法というのは 先ほど無断で されない権利の中に列記されていた行為を差します 例えば 私はよく新聞の切り抜きをしてスクラップブックに貼ったりしているわけですけれども 先ほど無断で されない権利という枠の中に 無断で切り抜きされない権利とか 無断でスクラップブックに張られない権利というのはなかったですね 複製 上演 演奏 公衆送信とかはありましたけれども 無断で切り抜きされない権利というのはなかった すなわち著作者にそういった権利は認められていませんので 新聞 雑誌をはさみで切り抜いてストックしておくことについて 著作者の了解を得る必要は何もないわけです しかし 複製をするのであれば次の手続にいく必要があります 上演をするのであれば 次の手続を考える必要がありますとなるわけです それでコピーだとか 演奏に当たりますと 次に保護期間の範囲か保護期間を過ぎているかチェックをする 保護期間内だということになれば 次は例外規定に当てはまるかどうかをチェック 例外規定に当てはまれば無断で使っても構わないのですが 例外規定に該当しないということになれば 著作権者から許諾を得るということになります これについては どうすればいいんですかというお問い合わせも多いんですけども 基本的には日本の民法では契約自由の原則がありますから 口頭で了解を得ることでも構わないわけです ただ 言った言わないとか 9

いや そのようなつもりではないとかいうことが往々にしてありがちですので できるだけ条件を文書にしておくことが望ましいと言われています 文化庁のホームページを見ていただきますと 手軽な契約書のつくり方のサイトもありますので もし そういった必要が生じた場合にはそのサイトも参考にしていただければと思います なお そのときに相手方となるのは通常は著作者でしょうし 譲り受けた著作権者と交渉することももちろんあります それから 最近では権利の委託を受けた団体ということもあります ご案内のJASRACというのもこの団体の1つですけれども こういったところが窓口となって契約を結ぶことができるわけでございます 著作者あるいは権利の委託を受けた団体等の間で契約を結ぶという合理的な仕組みも既に存在するわけです あるいは別の方法ですけども はじめの方で言いましたように権利は譲渡可能ですので 権利を自分が譲り受けてしまうということもあり得ます 譲り受ければ自分が権利者になるわけですから 自由に使えますよね ですから 先ほどご説明したポスターとか広報のビデオなんかは デザイナーとか映像プロダクションにもともと権利があるんだけれども 我が社が自由に使いたいので 権利を買い上げようということももちろん可能なわけです 著作者の地位は得ることはできませんが 著作権を譲り受けることによって自由に使うこともできる もちろん その場合は契約によりますし 譲渡の対価というのも必要な場合が多いんじゃないかと言われています 非常に大ざっぱに言うとこのような流れで著作物が利用できることになるわけですが 最近は生活の知恵といいますか いろんな方法で できるだけ便利に合理的にやろうという動きが各方面で進んでいます JASRACのような団体に対する許諾手続は従来からありますけども 集中的な団体によって窓口を一元化することによって 契約を合理化しよう こうすることによって コマーシャルベースで使われる音楽については便利になるでしょう 特に団体が著作権を管理する場合には利用許諾を拒否されないというメリットがあります マン ツー マンで著作者と直接交渉をする場合には 著作者が自分の権利をどのように行使しようとも自由ですから 1 億積まれても許可しないと言われるようなこともあり得るわけですけれども JASRACとかそういった団体が扱う場合は あなたには許可しないということは原則として言えないことになっています それから 自由利用マークというものがあります 文化庁では今こういった運動をしていますけども フリーソフトなんかもそうですし パワーポイント用のクリップアートもそのようですが これらはそれぞれプログラマーやイラストレーターが創作しているわけですから それらの人が著作権を持っているわけですね ですけども 著作権者があらかじめ こういった条件であれば一々連絡をとらなくても結構です と言っておいてくれると 利用者としては非常に助かるわけです 本来であればそういった表示がなければ 私は 平成 20 年 11 月 12 日に大阪でこういった講演をするに当たって あなたが書いたイラストをプレゼン資料の中にデジタルコピーをしていいですか あわせて100 人余りの人たちに上映していいですか という許可を得ないといけない可能性があるわけですが クリ 10

エイター側がそういう意思表示をしてくれることによって 著作権侵害になってしまうリスクを負うことなく円滑に流通できるわけです あるいはコンテンツ自体をつくる時点であらかじめ想定される利用方法を決めておけば その範囲であれば一々再契約を結ばなくても構わないというようにする方法もあります 技術の進歩により利用方法も便利になっているので 契約の方法についても 法律レベルではなく民民でいろんなルールが工夫されているわけであります ご参考までにJASRACのシステムをここで紹介しておきますと 音楽の場合は作詞家 作曲家という方々は全国にたくさんおられます 一人一人が権利を持っていますので 例えば 放送局 CDレンタルショップ レコード会社 コンサートの事業者など音楽を利用してビジネスをしようとする人は 利用しようとする作品ごとに権利者とコンタクトをとらないといけないということになるわけですけども 例えばラジオのリクエスト番組なんかであれば リスナーが電話でリクエストがあると あるリクエストがあったから一々作家に電話して 了解を得てから放送するなんていうことをやっていると番組なんかは成立しません そういった大量に利用することなんかを考えると 多くの権利者がある団体に権利委託をする 利用する者はその団体に対して許諾申請をし 団体を通じて利用者に利用許諾をする 許諾を得た利用者は規定に見合った使用料を団体に支払う 団体から権利者に使用料が分配される こういう流れをつくることによって 権利者はみずから一々契約に立ち会わなくて済み創作に専念できますし あるいは違法な利用者がいたとすれば その対策についても団体に任せることができるわけです 逆に利用者にとっても 最近は個人情報保護の時代ですから 一々作家の住所なんかなかなか探し当てるのは難しいですけれども 団体が預かってくれているおかげで 一人一人の住所とか電話番号を探さなくても 団体を通じて手続をすることによって 探す手間が省ける それから拒否されるリスクがないというメリットが受けられるわけです こういった事業者を著作権等管理事業者といいまして 公正な運営のために文化庁の登録とか届出義務があります 最近は規制緩和の中で いろんな事業者がこういった活動ができるようになっているわけです こういった事業団体を通じて 新しいルールをつくっていくとかいうことも可能な状況になっているわけであります ところで 無断で利用できる例外規定というのがいろんな観点からあるわけでして 教育関係については 後ほどご説明しますけれども 例えば よく誤解があるのは行政機関等の業務遂行に必要不可欠な複製というものです 今年の3 月でしたか ちょっと大きな事件になりましたけども 社会保険庁が週刊誌の記事をコピーして イントラネットで地方支所なんかに一種の配信をしたということに対して著作権者からクレームがつけられた事件がありました それは行政上必要なんだという反論を国側はしたわけですけども 公衆送信権が制限されるものではないということで 裁判では国の主張は認められなかったわけです 学校関係ですと例えば いじめについて新聞記事が載っていた場合 教職員として情報を 11

知っておくことが必要だろうということで 新聞のコピーをしている学校もひょっとしたらあるかもしれません これについては おそらく不可欠な複製とは言えないだろうと思います こういった部分について 既に地方自治体でも徐々に増えつつありますけれども 先ほどのJASRACのような文献複写に関する団体というのがありますから そこと契約することによって 一々出版社 新聞社 雑誌社ごとに許可を得なくてもいいというシステムができ上がっていますので ぜひ そういうコピーをもし行っているんであれば また 今後も継続する可能性があるんであれば 適法な利用のためにそういった集中管理システムなんかも使っていただくといいんじゃないかと思っております さて そのような無断で使ってよい条件にも当てはまらないにもかかわらず無断で使った場合に 作者側の立場でどのように自分の権利が救済されるかというのが次のお話です 著作者は無断で複製されない権利を持っているわけですから 無断で複製したものを見つけたときにその相手に対して 民事的な救済として差止請求 損害賠償請求等々ができます 勝手にコピーをするのをやめろ あるいはコピーされたことによって損害が生じたのであれば それを賠償しろということが請求できます これは 裁判を通じて求めることもできますし 裁判をしなくても相手に直接求めることもできるわけであります 相手がなかなか言うことを聞かなければ 裁判を起こすという手順かもしれません さらには刑事的な手続として 告訴をすることによって 著作権侵害が起訴され判決がおりれば10 年以下の懲役又は1,000 万円以下の罰金に処せられる可能性もあるということでございますので 皆さん方は既に著作権者ですし 子どもたちも著作権者ですから 皆さん方の権利がもし侵された場合は このような権利が行使できるということを知っておいていただきたいし ゆめゆめ責任を問われる側にならないようにしていただきたいと思うわけであります このような法的に罰せられるから著作権を守らないといけないというアプローチがいいのかどうかについては 私も従来は そういったアプローチは望ましくないと思っていましたけれども 子どもを犯罪者にするなという考え方 あるいはたかだかコピーしたぐらいで減るわけじゃなしという非常に甘い考えをしている人も多いという意味で やはりそういう法的責任を問う行為であるということも十分に自覚していただく必要があるんじゃないかなと最近思うようになってきました 罰せられるから守ろうというネガティブな発想は ほんとうはよくないなとは思うんですが 法制度としてこういう仕組みになっているというのは事実ですので 知識として持っておいていただければと思います 教育活動と著作権 さて 残り時間が限られてまいりましたけども ある意味で佳境といいますか 皆さんの関心事かもしれません 例外規定の具体的な説明に入っていきたいと思いますが まず 一番代表的なものが教育目的のための複製という規定でございます これらの規定については キーワードがあるわけですけれども いわゆる著作権制度の応用編ですので 正しく理解をしたいというときには できれば法令なんかを手元に置いて 12

参照しながら読んでいただくのが正確かなと思います どこまでだったら許されるんですかというご質問 お問い合わせが多いわけですけども 要するに他人の財産を無断で拝借することができる法的なお墨つきですから 法律の条文の要件をきっちり満たしているかどうかが問題で 漠然と大ざっぱにどこまでだったら許されるというのは なかなかご案内がしにくいことを理解していただきたいと思います 今から幾つかの例示を挙げてご説明はしますけども 最終的にはケース バイ ケースですので 法令の条文に当たっていただくのがベストかなとは思っております 35 条の教育目的のための複製について キーワードに分解しますと 無断で複製できる条件としては 学校その他の教育機関での複製 それから授業の過程で使う それから担任又は授業を受ける児童生徒が複製 それから必要と認められる限度の複製であること そして公表された著作物であることです なお これらの要件を満たした上でも著作権者の利益を不当に害しない範囲に限られます 例えば よく例示で挙げられるのがワークやドリルのたぐいです これらについて 学校でコピーするんです 授業で使うんです 担任がコピーするんです 1 冊丸ごとじゃありません 販売されているやつだから公表されています ということで規定の要件を満たすからいいじゃないかというわけにはいきません ドリルとかワークというのは学校が唯一の市場なんです 例えば 社会科の授業 国語の授業で新聞か何かの記事を切り抜いてコピーしたところで 新聞の売り上げに影響を及ぼすことは通常は考えられないわけです あるいは有名な小説の一部分をコピーしたところで 文庫本 単行本の売り上げが落ちるということは通常は考えられないわけです しかし ドリルを学校でコピーされてしまうとほかに買ってくれる人はいないわけです そういった意味でよく不当に害する例としてドリル あるいはコンピューターソフトなんかも例に挙げられます 条文ではドリルがだめとか コンピューターソフトがだめとは書いていませんけれども 原則に対する例外なんだということを前提に そのコピーについて説明できるかできないかというのを それぞれのコピーの主体が考えていく必要があるわけです 考えるのが嫌であれば許諾を得たほうが無難だということだということです 35 条の適用を受けられる典型的な例としては 例えば 新聞とか文芸作品をコピーしてプリント教材にするとか あるいは子どもたちが調べ学習でホームページとか百科事典の記事をコピーして クラスの友達に発表資料として配るというケースでこれらの条件を満たしていれば 一々許諾を得ることはないということに当たるわけです そのほか平成 1 5 年の法改正で 同時遠隔授業についてもネットワークで通信するわけですから 著作物が公衆送信されるわけですけども これらの条件を満たしている形態の授業であれば 送信をしても構わないという規定も設けられました それから 試験問題としての複製 これは考えればわかりますよね 入試問題である文芸作品とか新聞の社説を使いたいときに あらかじめ許諾を得なければならないとすれば 入試問題が事前に漏えいすることにもなりかねないわけですから 厳正な試験 検定を行うためには許諾を得るというのは事実上不可能だという意味で 学識技能に関する試験又 13

は検定の目的上必要な範囲であれば無断で複製しても構わないという規定もあります その場合 公表された著作物であること それからこれらの要件を満たした上で利益を不当に害しないのであれば 無断でコピーしても構わないことになっています なお ここで重要なのは 本日私学の方も多いですけども 私立中学校 高等学校の入試問題をつくって入試をする時点では無断でやってもいいわけですが 入試が終わって 過去問なんかを来年度の受験生のために配付するとか売るとか あるいはホームページなどでオープンにする場合 それは 入試をしているわけじゃないですね このたびの試験ではうちはこういう問題を出題しましたという報告ですね それは 試験をするために複製しているわけではありませんからこの条文の適用は受けないということで許諾を得ていただく必要があります 多くの学校では許諾を得るようにしていただいているようですけども 一部 入試であればその延長線で過去問もいいんだという誤解もあるやに聞いておりますので 正しく条文を理解していただく必要があるかなと思います なお ネット上の試験なんかをやることも多くなりましたので 同じような条件であれば構わないことになっています それから 非営利 無料 無報酬の上演 演奏等ですけれども これは文化祭とか合唱祭とかいったケースが該当します 無断で上演されない権利 無断で演奏されない権利というのが原則としてあるけれども その催しが非営利 無料 無報酬で行われるものであれば 演奏 上演 上映 口述については許諾を得る必要がないですよという規定であります これによって 音楽発表会 文化祭 それから読み聞かせの会などに際して許諾を得る必要がない あるいは校内放送でCDの音楽を流すことについて 校内放送という言葉がありますけれども 同じ建物の中で再生をする場合は演奏と扱うことになっていますので非営利 無料であれば許諾を得る必要がない なお 非営利 無料であればコピーして構わないとは規定していないことに注意する必要があります コピーをする場合は 先ほどの35 条などの条件に当てはまるか当てはまらないかということで考え直していただく必要があります 営利 無料の演奏等に関する条文で無断でやっていいと言われているのは 上演 演奏 上映 口述という行為に限られるということがポイントであります それから 同じ条文の別の項なんですが 非営利 無料の貸与 学校図書館で本を貸し出す行為があります これも公衆に対して貸与 無断で されない権利のひとつに貸与権というのがあったわけで 児童生徒に本を貸し出すというのも公衆に対する貸与に当たるわけですが この規定よって一々許諾を得なくても図書の貸し出し等ができるということになっているわけであります なお ビデオなんかの貸し出しを考えているところがもしあるとすれば それは 無断でできる施設というのは限られていることにご注意ください 公共図書館か視聴覚ライブラリーに限られていますし しかも補償金の支払いが義務づけられているという特別な取り扱いがされていますので ビデオの貸し出しなんかは学校で無断でやることはできないということになっております 14

それから これはよく活用されるケースだと思いますけれども 引用としての利用です 読書感想文とか論文 研究発表資料などに他人の著作物を持ってくるという場合に 公正な慣行に合致し 引用の目的上正当な範囲であれば許諾を得なくても構わないという規定になっております したがって レポート 報告書 感想文等々については この規定が適用できる部分も多いのではなかろうかなと思います 児童生徒に対する著作権教育 最後に 児童生徒に対する著作権教育についてでございますが 何をどのように指導するのかについては 子どもたちの実情というのはさまざまですから どれがベストという特効薬みたいなのはないと思います 地域の教材 題材 人材なんかを活用していろいろな工夫が必要かと思います 文化庁ではアンケートをしたり 教材開発をしたりしておりますけども 具体的には後ほど3 校のご発表があると思いますけども 各学校が子どもたちの実態を踏まえて創意工夫していただかなければならないものです 学習指導要領の音楽とか美術とか技術 家庭に関する記述の中や 指導要領の解説レベルでは総則や道徳などにも情報モラルの一環で著作権について記述されておりますので いろんな場面で題材を工夫しながら指導していただくことが可能なんじゃないかなと考えています 文化庁といたしましては 漫画教材とかネット上の教材とかを開発して提供しておりますので 文化庁のホームページへアクセスしていただいて 有効に活用していただくと非常にありがたいなと思っております そのほか関係団体もいろんな団体ごとに映像資料 パンフレット でネットの情報などでいろんな教材が開発され 提供されておりますので 参考になるものも多いんじゃないかなと思います 子どもたちに対する指導のあり方についてはむしろこの後の3 校の事例発表を聞いていただくほうが有意義ではなかろうかと思いますので 若干時間を超過いたしましたけれども 私の説明は以上で終わらせていただきたいと思います 長時間ご清聴ありがとうございました ( 拍手 ) 15