第26号 技術報告集

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図 -1 汚泥減量設備外観 4. 技術の概要 4.1 原理本技術は, 酸化力を持つ薬剤 ( 酸化剤 ) を用いて, 余剰汚泥中の微生物の細胞を破壊し, 微生物の可溶化処理を行う この時の可溶化率 ( 可溶化による汚泥の固形物 (SS) の減少率 (%)) は, 処理前汚泥の固形物に対して 25% を

国土技術政策総合研究所 研究資料

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反応槽 1m 3 あたりの余剰汚泥発生量 (kg/m 3 / 日 ) 2-(3)-2 高負荷運転による水質改善および省エネルギー効果について 流域下水道本部技術部北多摩二号水再生センター葛西孝司 須川伊津代 渡瀬誠司 松下勝一 1. はじめに 21 年度の制限曝気 A2O 法の調査 1 ) の過程で

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下水道計画に用いる諸元は 原則として計画策定時点の諸元とする 計画人口については 近年の人口減少傾向を踏まえ適切に考慮する なお 確定した開発計画等がある場合は それを考慮する (4) 小規模下水道の特性や地域特性 一般に流入水の水量 水質の年間変動 日間変動が大きい 維持管理が大中規模の処理場に比

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ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト 事後評価の概要について

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活性汚泥の固液分離を促進するバクテリアの分離とその利用 宇都宮大学院工学研究科  物質環境化学専攻  教授  柿井 一男

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第1編 春日井市下水道事業の現状と課題


搾乳関連排水 ( パーラー排水 ) 処理施設管理のポイント 栃木県農政部畜産振興課 環境飼料担当技師加藤大幾 掲載されている情報は平成 30 年 7 月 19 日現在のものです

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条例施行規則様式第 26 号 ( 第 46 条関係 ) ( 第 1 面 ) 産業廃棄物処理計画書 平成 30 年 6 月日 長野県知事 様 提出者 住 所 東御市下之城畔 ( 法人にあっては 主たる事業所の所在地 ) 氏 名 川西保健衛生施設組合長花岡利夫 ( 法人にあっては 名称及び代

大栄環境 ( 株 ) 和泉リサイクルセンター平井 5 工区管理型最終処分場 / 処理実績平成 26 年度契約処理 : 管理型埋立区分品目 平成 26 年 平成 27 年 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 燃え殻

淀川水系流域委員会第 71 回委員会 (H20.1 審議参考資料 1-2 河川管理者提供資料

た回分試験の開始から終了までの間 N 2 O 連続測定計 (FT-IR) を用いてガス態 N 2 O 濃度の連続測定を行った また 条件 1 3( 表 1) について 東京工業大学との共同研究により アイソトポマー技術を用いて N 2 O の生成機構の解明も合わせて行った (4) 活性汚泥採取場所本

水質

第26号 技術報告集

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公共下水道 私たちは 日常の生活や社会生活の活動のなかで たくさんの水を使っています ここで使われた水をそのまま自然に流し続けると 川や海は汚れを増していくこととなり やがて生活に必要なきれいな水が欲しいときに 手に入れることがむずかしくなってしまうようになります 必要な水を いつまでもきれいなまま

田辺市役所環境白書 < 平成 9 年度版 > より抜粋 背戸川水質検査結果まとめ 背戸川排水路水質浄化対策事業水質検査結果を平成 3 年 10 月より平成 8 年 7 月まで の水質検査結果をまとめた (1) 背戸川排水路の水質結果 BOD 除去率 61% BOD の除去率を単純に平均してみると 浄

水質

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有明海・八代海総合調査評価委員会-中間取りまとめ-

10月19日預かりMD


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参考資料

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国土技術政策総合研究所 研究資料

平成 24 年度維持管理記録 ( 更新日平成 25 年 4 月 26 日 ) 1. ごみ焼却処理施設 (1) 可燃ごみ焼却量項目単位年度合計 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 A B 炉合計焼却量 t 33, ,972

高粘度汚泥対応型汚泥乾燥機の開発,三菱重工技報 Vol.51 No.3(2014)

形状 処理状況 表 1 各系列の反応タンクの形状と処理状況 ( 平成 27 年度 ) 深槽東系 深槽西系 浅槽系 西系 東系 有効容積 (m 3 ) 寸法 ( 長さ 幅 水深 : m)

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( 速報 ) ~ 騒音 振動調査 ( 騒音 )~ 騒音レベル (db) 騒音レベル (db) 各地点の騒音調査結果 騒音調査結果まとめ (L のみ表示 ) NVR-2 NVR-3 L L L9 LAeq L L L9 LAeq 騒音レベル (db) 9 8 7

名 称 最上川流域下水道置賜浄化センター 位 置 山形県南陽市宮崎地内他 処理方式 標準活性汚泥法 処理能力 全体 20.2 千立方メートル / 日 今回 20.2 千立方メートル / 日 土木工事 ( 耐震 ) 流入渠施設 土木工事 ( 更新 ) 沈砂池施設 土木工事 ( 更新 ) 最初沈殿池施設

Water Circulation (Water in Japan is circulated as follows)

Taro-12)年報5章貯留汚泥からリン


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資料5 汚濁負荷量の状況

畜産環境情報 < 第 63 号 > 1. 畜産の汚水から窒素を除去するということはどういうことか 2. 家畜排せつ物のエネルギー高度利用 南国興産を例に 3. 岡山県の畜産と畜産環境対策 4. 兵庫県の畜産と畜産環境対策について

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第1編 春日井市下水道事業の現状と課題

平成 29 年度 一般廃棄物最終処分場の維持管理記録 施設の名称 : 弘前市埋立処分場第 2 次 ( 第 1 区画 第 2 区画 ) 施設の位置 : 弘前市大字十腰内字猿沢 埋立廃棄物の種類及び数量 ( 単位 :kg) 区分 種類 平成 29 年平成 30 年 4 月 5 月 6 月

ト ( 酢酸 ) を用いた ( 図 1) 各試薬がすでに調合されており操作性が良い また この分析方法は有害な試薬は使用しないため食品工場などでの採用が多く ISO などの国際機関も公定法として採用している F-キット ( 酢酸 ) での測定は 図 1の試薬類と試料を 1cm 角石英セル に添加し

1 終末処理場 名 称 五所川原市公共下水道五所川原市浄化センター 位 置 青森県五所川原市字幾世森地内 処理方式 標準活性汚泥法 処理能力 全体 千立方メートル / 日 今回 千立方メートル / 日 1 終末処理場工事内容 種 別 建築工事 ( 改良 ) 汚泥脱水施設 機械

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記載例[成果情報名]○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○[要約]・・・・・・・・・・・・・・・・

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国土技術政策総合研究所 研究資料

「研究会名」 ~20年度実施報告 ~

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51ディスポーザー仕様.PDF

資料4 国土交通省資料

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(2) 現況水質等 A ポンプ場から圧送される汚水の水質分析及び硫化水素濃度測定結果を表 -2 図 -2 に示す 表 -2 水質分析 計量項目 単位 計量場所ピット吐出口 BOD mg/l CODcr mg/l 硫酸イオン濃度 mg/l 全硫化物 mg/l

第42回優秀環境装置-本文.indd

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施設名施設住所項目一般埋め立てた廃棄物廃棄物 (ton) 擁壁の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 遮水工の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 周縁地下水の水質検査結果 斜里町清掃センター最終処分場斜里町以久科北 破砕ごみ 内容 生ごみ残差 合計 点検を行った年月日

第 40 回 優秀環境装置 日本産業機械工業会会長賞 株式会社石垣 1. 開発経過近年の下水道の普及及び下水処理の高度化に伴い 下水汚泥の発生量は 今後も増加するものと推察され 汚泥の安定的処理は 大都市のみならず新たに下水処理を開始した中小市町村においても緊急の課題となっている 下水汚泥の処理にお

向上を定量的に ~t' ことを目的とした. として, ~ ず国島保キ曹の 2 事績を館大寸ることな 微生物 品量 ~ を高められるという肢が挙げられる. 勺 E 主り処理汚水と混合したもの ~::. 昭島気海内の微生物 ~t. 主を-;(È Iこ保つように返送汚泥と る ~ 水処理 lζ 泡体を用い

大邱市の水道と下水道 名古屋環未来研究所 韓国大邱 ( テグ ) 市の水道と下水道 ~ 第 7 回世界水フォーラムテクニカルツアーに参加して ~ 1 大邱 ( テグ ) 市の水道 1.1 概要 大邱 ( テグ ) 市は 韓国南部に位置し 面積 km² 人口約 250 万人の韓国 第 4

資料4 検討対象水域の水質予測結果について

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様式処 3 号 最終処分場水質検査の記録 最終処分場名 : 守山南部処分場 測定対象 : 放流水 試料採取場所 : 調整槽放流水試料採取口 試料採取年月日 H H H H H H 測定結果の得られた年月日 H30.5.7

佐久平環境衛生センター包括的運転 管理業務に係る業者選定業務委託仕様書 平成 31 年 3 月 佐久平環境衛生組合

2. 水管理に関連する障害 Q 軟化装置管理上の留意点ついて, 具体的な管理方法を教えてください イオン交換樹脂は球状で粒径は mm 程度, 複雑な網目状の三次元骨格構造を呈しており, 軟水採水量はイオン交換樹脂量と原水の硬度によって決まります イオン交換樹脂は一般的に1 年

[ 廃棄物の最終処分場 ( 管理型 )] 平成 29(2017) 年度 1 施設名称 1 号管理型処分場 (1) 埋立てた廃棄物の各月ごとの種類及び数量 規則第 12 条の 7 の 2 第 8 項イ 種類汚泥燃え殻紙くずばいじん 合計 単位 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月

災害時における下水の排除・処理に関する考え方(案)

提案評価基準

排水の処理方法と日常の維持管理(1)

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S1:Chl-a 濃度 8.5μg/L S1:Chl-a 濃度 8.4μg/L B3:Chl-a 濃度 8.0μg/L B3:Chl-a 濃度 7.5μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 67.0μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 8.7μg/L S1:

S1:Chl-a 濃度 18.6μg/L S1:Chl-a 濃度 15.4μg/L B3:Chl-a 濃度 19.5μg/L B3:Chl-a 濃度 11.0μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 33.7μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 16.6μg/

2009年8月25日発行(毎月1回25日発行) コージェネレーションニュース・マンスリー

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埋立てた一般廃棄物の種類及び数量の記録 ( 平成 30 年度 ) 最終処分場名 : 第二処分場 単位 : トン 種 類 数量 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 搬入量一般廃棄物焼却灰 1, , , 合計

埋立てた一般廃棄物の種類及び数量の記録 ( 平成 30 年度 ) 最終処分場名 : 第二処分場 単位 : トン 種 類 数量 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 搬入量一般廃棄物焼却灰 1, , , 合計

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対策名 1 温室効果ガスの排出の抑制等に資する設備の選択キ未利用エネルギーの活用のための設備導水 送水 配水等における管路の残存圧力等を利用した小水力発電設備の導入 概要 地形の高低差から生じる水の位置エネルギーがある場所や導水管路 送水管路 配水池入口等で余剰圧力が利用できる場所 あるいは弁の開度

様式処 3 号 最終処分場水質検査の記録 最終処分場名 : 船見処分場 測定対象 : 放流水 試料採取場所 : 放流水槽 試料採取年月日 H H H H H 測定結果の得られた年月日 H H H30.6.6

PPP/PFI方針案

スライド 1

様式第二号の二(第八条の四の四関係)

Transcription:

余剰汚泥減量化技術の実運転状況に関する考察 日本水工設計 ( 株 ) 田中喬士 1. はじめに設計業務を実施していく中で 新技術の導入を検討する際には その技術を把握した上で 現実性かつ将来性を見据えた判断をし 設計をしている しかしながら 新技術を導入した結果 設計時点と実際の運転状況とが乖離する事例は少なくない 例えば 新機種の脱水機を導入した場合 実運転での脱水性能及び維持管理性の乖離が挙げられる 当社では 平成 16 年前後に新技術として導入が検討されていた汚泥減量化技術について複数の処理場において導入に携わった実績がある 本稿は オゾンによる汚泥減量化技術 ( 以下 オゾン減量化技術という ) を導入した A 浄化センターにおいて 平成 22 年度に実施した増設設計を通じて 余剰汚泥減量化技術の実運転状況として 汚泥減量効果 処理機能への影響 維持管理性 について確認し 設計時点と実際の運転状況から得られた知見を考察するものである 2. オゾン減量化技術の概要オゾン減量化技術は 廃棄物処理場の逼迫等により下水汚泥の処理処分費が高騰し 下水道財政を圧迫する事が予測されることから 汚泥を発生させないあるいは発生量を少なくする技術のニーズに対し開発された 日本下水道事業団では 汚泥減量化の技術評価に関する報告書 ( 平成 17 年 4 月 ) にて オゾンあるいは好気性好熱性細菌による汚泥減量化技術に関してその得失を明らかにし 下水汚泥減量化施設設計要領 をまとめている オゾンによる汚泥減量技術 は 図 21 に示すように活性汚泥の一部をオゾンの酸化作用を用いて処理することで汚泥の生物分解性を高め それを反応タンクに戻し そこの活性汚泥微生物によって CO 2 と水まで酸化分解して減量するシステムである 流入水 反応タンク 沈澱池 放流水 返送汚泥 余剰汚泥 オゾン オゾン反応槽 図 21 オゾン減量化技術の概略フロー 1 80

3. オゾン減量化技術の特徴オゾン減量化技術の汚泥処理機能上の特徴を表 31 に 水処理機能上の特徴を表 32 に示す 今回増設設計する中で 維持管理年報 月報及び維持管理者へのヒアリングにより 確認することができた実運転状況は 主に水処理機能上の特徴である 表 31 汚泥処理機能上の特徴 項目 特徴 実運転状況 の確認 1 オゾン減量化率 100% を上限に任意で設定できる 2 オゾン消費率 汚泥可溶化槽投入固形物量当たりのオゾン消費率を 0.05kgO 3 /kgss とする 3 脱水性 多重板型スクリュープレス脱水機では汚泥減量化を行わない OD 法の余剰汚泥の脱水性と同程度である 表 32 水処理機能上の特徴 項目 特徴 実運転状況 の確認 1 必要酸素量 100% 減量化時の処理における酸素必要量は 汚泥減量化を行わない場合の概ね 2 倍ある 2 処理水 BOD SS 汚泥減量化を行わない OD 法と同程度である 2 処理水 CODMn 汚泥減量化を行わない OD 法と比べ上昇する 低温時に増加することがあるが SRT を十分に確保し 4 処理水 TN 濃度 好気 無酸素運転を適切に行うことで 汚泥減量化を 行わない OD 法と同程度である 5 処理水 TP 濃度汚泥減量化を行わない OD 法と比べ上昇する 6 処理水透視度 汚泥減量化を行わない OD 法汚泥と比較して低下傾向 にある 7 MLVSS/MLSS 比汚泥減量化を行わない OD 法よりも低い値で安定する 8 SVI 汚泥減量化を行わない OD 法と比較して安定する傾向が見られる 活性汚泥の無機物含有率は 元素によって多少異なる 9 活性汚泥の 無機物含有量 が汚泥減量化を行わない OD 法活性汚泥の無機物含有率の 2~3 倍程度であり それ以上の濃縮は確認され ない 2 81

4.A 浄化センターにおける実運転状況 (1)A 浄化センターの概要 A 浄化センターの概要は表 41 に示すように 現在 水処理 3 系列中 1 系列のみ設置されている 全体計画では 汚泥処理は 2/3 汚泥減量 1/3 汚泥脱水の計画であるが 現状は汚泥減量化設備のみで脱水設備はまだ設置されておらず 初期対応で 100% の汚泥減量を実施している 表 41 A 浄化センター計画概要 項目全体計画事業計画現有施設 排除方式 処理方式汚水 分流式 オキシデーションディッチ法 汚泥オゾン減容化設備 + 直接脱水オゾン減容化設備 日平均 2,992m 3 / 日 2,263 m 3 / 日 計画汚水量 日最大 3,840m 3 / 日 2,875 m 3 / 日 計画処理水質 流入 放流 時間最大 6,138m 3 / 日 4,619 m 3 / 日 BOD 200 mg/l 200 mg/l SS 160 mg/l 160 mg/l BOD 15 mg/l 15 mg/l SS 20 mg/l 20 mg/l 3,840 m 3 / 日 3,000 m 3 / 日 1,500 m 3 / 日 処理能力 (1,500 m 3 / 日 池 2 池 (1,500 m 3 / 日 池 2 池 ) (1,500 m 3 / 日 池 1 池 ) 840 m 3 / 日 池 1 池 ) 供用開始年度 平成 16 年 4 月 放流先河川 ( 環境基準の類型 A イ BOD 2mg/l 以下 ) (2)A 浄化センターの流入状況 1 流入水量図 41 に過去 5 年間 ( 平成 17~21 年度 ) の流入水量 ( 放流水 ) の実績を示す 近年では約 700m 3 / 日流入しており OD 池 1,500m 3 / 日の処理能力に対して 流入率 47% である 2 流入水 BOD 及び COD Mn 近年では 計画水質 BOD200mg/L に対し 高い値の汚水が流入している傾向である 3 流入水量 (m3/ 日 ) 2,000 1,800 日平均 日最大 1,600 1,400 1,200 1 池能力 1,500m3/ 日 1,000 800 600 400 200 0 平成 17 年 4 月平成 17 年 7 月平成 17 年 9 月平成 17 年 12 月平成 18 年 4 月平成 18 年 7 月平成 18 年 9 月平成 18 年 12 月平成 19 年 4 月平成 19 年 7 月平成 19 年 9 月平成 19 年 12 月平成 20 年 3 月平成 20 年 6 月平成 20 年 9 月平成 20 年 12 月平成 21 年 3 月平成 21 年 6 月平成 21 年 9 月平成 21 年 12 月 図 41 平成 17~21 年度における流入実績 82

3 流入水 TN 及び TP 過去 5 年間 ( 平成 17~21 年度 ) の実績は TN は 20~50mg/L であり TP は 4~6mg/L である 4 流入水 SS 過去 3 年間 ( 平成 19~21 年度 ) の実績は 計画水質 160mg/L に対し 高い値の汚水が流入している傾向である (3) オゾン減量化設備の実運転状況オゾン減量化設備の特徴及び計画値に対して実運転状況を確認できた事項について表 42~4 及び以下に示す 全ての項目において オゾン減量化設備の特徴と同様の値が確認できた また 維持管理費及び消費電力費も計画通りの数値となった 表 42 オゾン減量化設備の特徴と実運転状況 (: 同様の特徴 : 一部同様の特徴 : 異なる特徴 ) オゾン減量化設備の特徴 実運転状況 汚泥減量化率 100% を上限に任意に設定計画では 2/3 であるが 現在は暫定的に 100% 処理水 BOD,SS 一般的な OD 法と同程度 BOD は計画値 15mg/L 以下 ( 異常値除く ) SS は計画値 20mg/L 以下であるが ( 異常値除く ) 近年徐々に高い値となっている 処理水 COD Mn 一般的な OD 法と比較し上昇する 概ね 10~20mg/L であり 一般的な OD 法の 5~ 10mg/L に対し 比較的高い 処理水 TN 低温時に増加することがある おおよそ 5~10mg/L である 近年緩やかに値が上昇している 一般的な OD 法の 5mg/L 前後に対し 比較的高い 処理水 TP 一般的な OD 法と比較し上昇する おおよそ 2~3mg/L である 一般的な OD 法の 0.5 ~2mg/L に対し 比較的高い 処理水透視度 一般的な OD 法と比較し低下する 最大 100cm 最小 12.5cm と値にはばらつきがある また近年低い値で推移している傾向にある (20 ~40cm) MLVSS/MLSS 比 一般的な OD 法と比較し低い値で安定する 最大 0.85 最小 0.5( 平均 0.7) であり 一般的な OD 法の MLVSS/MLSS 比 0.8 と比較し低い傾向にある SVI 一般的な OD 法と比較し安定する 最大 184 最小 72( 平均 124) であり SVI 指針値 200 以下を保っている 近年低い値で安定している傾向にある 4 83

表 43 計画使用電力量と実運転使用電力量との相違 (: 同様の特徴 : 一部同様の特徴 : 異なる特徴 ) 計画使用電力量 実運転使用電力量 全設備に対する電力使用量約 50% 約 50% 減量汚泥 (kgds) 当りの 使用電力量 (kwh) 約 10kWh/kgDS 1.0~16.0kWh/kgDS ( 平均 5.0kWh/kgDS) 表 44 計画点検整備費用と実点検整備費用 (: 同様の特徴 : 一部同様の特徴 : 異なる特徴 ) 計画点検整備費用 実点検整備費用 2,000~4,000 千円約 1,700 千円 (4) 維持管理性一方で オゾン減量化設備を運転管理している維持管理者の報告によると 平成 17 年 10 月に本格的に稼働したオゾン減量化設備は 安定的に運転できるまで約 2 年かかっていることが確認できた 可溶化汚泥は 活性汚泥による分解が早く OD 池のDOが急激に下がる傾向にある為 オゾン減量設備の運転時には DO 管理が必要となっている また MLSS 濃度と返送時間を調整し オゾン反応を効率化する為オゾン投入汚泥濃度の調整が必要となっている 処理水透視度 SS が悪い為 これを改善することを目的とし ポリマー注入機を平成 18 年度に設置したが 改善されていない状況である 近年 MLSS が 5,000~7,000mg/L と上昇しているが 減量汚泥量を増量すると処理水に影響が出る為 様子を見ながらの減量汚泥量を決定している 8,000 7,000 MLSS MLVSS 100.0 透視度 6,000 80.0 (mg/l) 5,000 4,000 3,000 計画値 4,000mg/L 透視度 (cm) 60.0 40.0 2,000 1,000 20.0 0 平成 17 年 4 月平成 17 年 7 月平成 17 年 9 月平成 17 年 12 月平成 18 年 4 月平成 18 年 7 月平成 18 年 9 月平成 18 年 12 月平成 19 年 4 月平成 19 年 7 月平成 19 年 9 月平成 19 年 12 月平成 20 年 3 月平成 20 年 6 月平成 20 年 9 月平成 20 年 12 月平成 21 年 3 月平成 21 年 6 月平成 21 年 9 月平成 21 年 12 月 図 42 平成 17~21 年度における MLSS MLVSS 0.0 平成 17 年 4 月平成 17 年 7 月平成 17 年 9 月平成 17 年 12 月平成 18 年 4 月平成 18 年 7 月平成 18 年 9 月平成 18 年 12 月平成 19 年 4 月平成 19 年 7 月平成 19 年 9 月平成 19 年 12 月平成 20 年 3 月平成 20 年 6 月平成 20 年 9 月平成 20 年 12 月平成 21 年 3 月平成 21 年 6 月平成 21 年 9 月平成 21 年 12 月 図 43 平成 17~21 年度における処理水透視度 5 84

5. 実運転状況に関する考察今回増設設計を実施するにあたり オゾン減量化設備の実運転状況を確認し オゾン減量化技術の特徴に対する実態を確認した (1) 汚泥減量効果及び処理水への影響について暫定的に 100% の汚泥減量を実現しており 使用量電力量 点検整備費は計画と想定の範囲内であった 汚泥減量率及び処理水に与える影響等も おおよそ当初の想定範囲内であった しかし 流入水量負荷が 50% 以下であることを考慮すると その特徴は顕著に表れ過ぎている傾向にある 特に処理水の透視度は低く SS は高い傾向にある 流入量負荷が上がった場合にはさらに悪化すると推測される この 2 項目は汚泥減量化設備の運転時間を増やすと 悪化する傾向にあり 運転時間は処理水の様子を見ながら設定している 減量汚泥量不足から近年 OD 池の MLSS が上がっている状況ある この流入水量負荷に関して オゾン減量化設備を導入した他処理場の流入水の負荷率について 表 51 に確認した ( 参考 : 平成 20 年度 汚泥減量化技の稼働状況について ( 日本下水道事業団 )) 上記報告によると 調査時点での流入水の負荷率は 50% 以下の処理場が多いことが確認された このことから 過去の実証および稼働状況の確認では 主に流入水の負荷率が低い時点でのデータ及び特徴であることが確認できた 表 51 オゾン減量化設備を導入した他処理場の流入水の負荷率 処理場名 A 浄化センター B C D E 減量化運転期間 ( 調査時点 ) 1 年 6か月 2 年 6か月 3 年 2か月 1 年 1か月 1 年 1か月 計画処理水量 (m 3 / 日 ) 1,520 1,215 1,800 1,850 3,850 計画減量化率 67% ( 設備 100%) 100% 67% 67% 67% 脱水設備 無 無 無 ( 計画有 ) 無 ( 計画有 ) 有 流入水量 (m 3 / 日 ) 400 500 1,400 800 1,900 流水水負荷率 26% 41% 83% 43% 52% 平成 20 年度 汚泥減量化技の稼働状況について ( 日本下水道事業団 ) より一部加筆修正 また オゾン処理を行うと SS の粒度分布がより小さいものに遷移するという報告もあることから 本浄化センターにおいても同様の傾向が現れ 活性汚泥の凝集力が低下し 透視度の低下及び SS 上昇の一因となっていると考えられる また 処理水の色度が上昇するとの報告もあることから透視度の低下の一因となっていると考えられる 6 85

(2) 維持管理性について維持管理性について オゾン減量化設備を導入により OD 池の DO 管理やオゾン減量化設備へ汚泥濃度調節の為の MLSS 管理 返送時間管理など維持管理における調整項目が多い事が確認できた 維持管理の簡略化が一つの目的であるオキシデーションデッチ法にオゾン減量化設備を導入した場合 維持管理の複雑性が高まることが示唆された 6. おわりに以上により 新技術を導入する設計では その技術の設計条件 特徴を確認しつつ 処理水及び電力量等に与える影響については 実証時点での負荷率等の確認が必要であることが確認された また 維持管理が容易であることなどからOD 法を選定する際 汚泥処理設備も同様の特徴を有する処理法を選定しなければ 施設全体では得られる効果は半減する 水処理と汚泥処理は一体を成すものであることはよく言われることであるが 処理性能だけではなく 維持管理性能 の面からも 一体的な評価が必要であることを再認識できた 今後も新技術の導入検討に係らず設計後の実運転状況の確認 考察し 今後の設計に生かしていきたいと考えている 参考文献 下水汚泥減量化施設設計要領平成 17 年 4 月日本下水道事業団 汚泥減量化の技術評価に関する報告書平成 17 年 4 月日本下水道事業団 汚泥減量化設備の稼働状況について平成 20 年 11 月日本下水道事業団 7 86