第 6 章 投資とは 投資 は 難しいと感じるかもしれませんが 基本的なポイントを何点か押さえれば 理解しやすいものです 投資にはリスクがつきものですが リスクの内容をきちんと知ることができれば不安は小さくなるものです とリスクの関係や リスクと上手につき合う方法 いろいろな運用商品ごとのリスクの性質をきちんと整理していきましょう 75 76
とリスク とは とは 運用を行った結果得られる損益です 収益がプラスでもマイナスでも 投資したからの差額がとなります パターン 1 が変動せずに 利息等の収益金を得た場合 利息等 パターン2 投資した商品の価格が上昇した場合 とリスクの関係 運用するときには低いリスクで高いを得ることが最も望ましいのですが 現実にはそのような商品はありません ハイリスクハイ + ローリスクロー 平均 パターン3 投資した商品の価格が下落した場合 - リスクとは リスクとは 得られる収益の不確定性を表すものです すなわち ある商品で運用したときに得られる損益がどのくらいブレるか そのブレ幅をリスクといいます 例えば商品 A は 運用結果が最も悪い場合 運用結果が最も良い場合 リスクの小さい商品は 割れの可能性も小さくなりますが 期待できるの水準も低いものとなります 大きなが期待できる商品はリスクも大きくなるので 割れする可能性も大きくなります 資産の種類によって リスクの水準はある程度特徴が見られます 例えば商品 B は 運用結果が最も悪い場合 運用結果が最も良い場合 商品 A より商品 B のほうがのブレる範囲が大きいので リスクが大きい と言えます 国内債券 海外債券 国内株式 海外株式 預貯金保険商品 リスク ( 上図はあくまで一般的な傾向であり 必ずしもこのとおりの分布とならない場合もあります ) 投資 と 貯蓄 貯蓄 は 預貯金などのようなが保証されている金融商品を保有することにより 現在のお金を将来まで取っておくために行う金融行動です したがってそのから得られる収益には多くを望んでいません これに対して 投資 とは 現在のお金を元手にして積極的に資産を増やすことを目的とした金融行動です 投資したを有効に活用し 収益を得ることを目指しています 低金利の時代が長引いている現在 手持ちの資金を有効に活用するためには 貯蓄 に 投資 を上手に組み合わせていくことが重要です 77 78 標準偏差 価格変動リスクを計測するには 標準偏差 を使います 標準偏差とは データがたくさんあるときのちらばり具合を示す指標です 平均値 約 68% 平均値を中心に左右対称にデータが散らばっているとして 約 68% のデータが収まっている範囲を示しています この標準偏差が大きいと ばらつき度合いが大きいということであり すなわちリスクが大きいと考えられます
価格変動リスクの要因 運用商品の価格変動リスクをもたらす要因については 次のようなものが考えられます 金利リスク お金を預けたり借りたりするときに適用される金利は 経済情勢 政治動向 金融市場の状況に応じて 毎日 毎時刻々と変動しています 金利水準が変動することにより債券や株式などの価格が変動します 信用リスク お金を預けている金融機関や 保有している株式や債券の発行会社が 経営不振に陥ったり倒産したりすると 元金が回収できなかったり株式や債券の価格が下落したりします 金利とは お金を借りる人 お金を借りた人は + 利息 期日に利息を加えて 返却します お金を貸す人 利息を計算するための利率をあらかじめ決めておきます お金を借りた人 お金を貸した人 = 金利 金利の変動要因 金利上昇 良い 上昇 円安 景気動向物価動向為替動向 悪い下落円高 金利下落 あくまで このような傾向が強いということで 必ずこのように変動するわけではありません インフレリスク 債券株式 債券 価格変動リスクをもたらすものではありませんが インフレ ( モノの価格が上昇すること ) が進むことにより あるモノがこれまでと同じ値段では買えなくなってしまうことが発生します 確定拠出年金のがインフレを下回ると 想定していた老後生活を送れなくなりますので注意が必要です 株式 為替リスク 円と米ドルや 円とユーロなど 異なる通貨を交換する水準を決めている為替レートも経済情勢 政治動向 金融市場の状況に応じて 毎日 毎時刻々と変動しています 外国の株式や債券に投資している場合は 為替レートが変動することにより その円貨での時価額が変動します 為替レートとは US$ ユーロ アメリカ 為替レートの変動要因円高良い上昇安定 景気動向金利動向政治動向 555 円 568 円 15 円 1 円 55 円 2, 円 3,614 円 6.5 倍 理髪料金 (1998 年 ) 3,28 円 5.6 倍 新聞購読料 (1998 年 ) 8 円 5.3 倍 郵便料金 ( 封書 ) BANK 55 円 5.1 倍 定期預金で運用した場合の元利合計 1,8 円 3.3 倍 映画鑑賞料金 4,28 円 2.1 倍 米 1kg(1998 年 ) ヨーロッパ 為替レートは 1 ドル ( または 1 ユーロなど ) が何円かを決めているものです 悪い下落不安定 円安あくまで このような傾向が強いということで 必ずこのように変動するわけではありません 197 年 1999 年 出所 内閣府 物価レポート '96~'99 日本新聞協会日本銀行 これ以外にも カントリーリスクや流動性リスクなどさまざまなリスクがあります 金利と為替の変動 199 年 1 月から 215 年 3 月までの国内 1 ヵ月もの金利とドル円為替レートの変動は次の通りでした 国内 1 ヵ月もの金利の推移 (%) 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 199 1993 1996 1999 22 25 28 211 214 ドル円為替レートの変動 17 16 15 14 13 12 11 1 9 8 7 ( 円 / ドル ) インフレとデフレ モノの値段が上昇することを英語で インフレーション といい 略して インフレ と呼びます 一般的には 経済活動が活発になるとモノに対する需要 ( モノを買おうとすること ) が増加するため モノの値段が上がりやすくなります 反対にモノの値段が下がることを英語で デフレーション といい 略して デフレ と呼びます 我が国では 199 年頃まではインフレの傾向が強い経済でしたが それ以降は物価の上昇が安定もしくは下落する傾向にあり デフレ経済などと呼ばれています これは 日本だけに限らず世界的に見ても先進国はデフレの傾向が強くなっています 199 1993 1996 1999 22 25 28 211 214 79 ( 年 ) 8 ( 年 ) 出所 日本銀行
1 株あたりの価格ドルコスト平均法等量投資法81 82 価格変動リスクを抑える方法 ドルコスト平均法 価格が変動する商品を一定の間隔で一定金額を定期的に購入していく方法を ドルコスト平均法 といいます 長期投資 価格が大きく変動する商品でも 長期間保有を続けて投資をすることにより 比較的安定したを得ることができます 株価の推移 1, 円 5 円 1, 円 1,5 円 金融市場は一時的な要因によって短期間で大きく変動することがあります 長期投資は こうした短期的な変動によるリスクを小さくできるというメリットを備えています また 短期的な投資を行うと購入や売却を繰り返すことにより手数料などのコストがふえるのに対し 長期投資ではこれらのコストを支払うことなく投資が実行できます 毎月 投資 投資額 4, 円 (%) 8 6 1 年収益率 5 年収益率 2 年収益率 46.6 株 4 購入株数 2 株 6.6 株 2 毎月 購入 4, 円 -2 投資額 5, 円 15, 円 4 株 -4-6 1975 1978 1981 1984 1987 199 1993 1996 1999 22 25 28 211 214 ( 年 ) 購入株数 上のグラフは株式を保有する期間の長さによる収益率の違いを表しています ( 東証株価指数 (TOPIX) の変動率を株式の収益率と見なしています ) 東証株価指数 (TOPIX) は東京証券取引所が算出 公表しています 投資金額を一定にして定期的に継続して投資を行う結果的に安値の時にたくさん買って 高値の時に少量を購入することとなる一般的に購入に要した平均的な価格を低く抑えることができる一般的に価格変動リスクを抑制することができる 1 年収益率 =1 年前に購入した株式を売却したときの収益率 ( 年率 ) 5 年収益率 =5 年前に購入した株式を売却したときの収益率 ( 年率 ) 2 年収益率 =2 年前に購入した株式を売却したときの収益率 ( 年率 ) 1 年収益率では最高 68% から最低 -46% まで収益率がブレていますが 2 年収益率では最高 16% 最低 -6% とそのブレ幅は小さくなっています あくまで過去の実績であり 今後を約束または示唆するものではありません ミニ 投資タイミング 市場の動向を見ながら価格が下がったときに購入し 価格が上がったときに売却すれば最大の利益を得ることができます しかしながら 購入のタイミング 売却のタイミングを適切に判断するのは投資の専門家でも難しいものです 特に売買した結果 当初の思惑とは全く逆に高いところで購入し安いところで売却してしまうことはよくあることです そこで 一定金額を定期的に 購入していくドルコスト平均法といった運用方法が有効になってくるわけです 平均購入単価 価格変動リスクのある商品で運用する場合 それまでに当該商品に投資した金額を商品を保有している単位数で割った数字を 平均購入単価と言います 例えば左ページのドルコスト平均法の場合の平均購入単価は 858.4 円で 等量投資法の場合のそれは 1, 円になります この平均購入単価を知っていれば 時価を見た時にその商品の運用で利益が出ているのか損失になっているのかすぐわかるので大変便利です
分散投資 個人型確定拠出年金の加入者は ドルコスト平均法と長期投資は特に意識しなくても実践できます リスクをコントロールする大切な方法にはもうひとつ 分散投資 があります これは確定拠出年金の制度自体に組み込まれているわけではないので 自分で運用する時に十分気をつけるべき点です 分散投資を実行するときに大切なことは 値動きの特徴が異なる商品を組み合わせる事です 値動きの特徴が似ている商品に分散した場合 市場の変化に対して同じような値動きをする商品に分散しても リスクを小さくする効果を得ることはできません 分散投資とは 運用している資産をひとつだけの商品で運用するのではなく 複数の商品に分けて運用する方法の事です 傘屋さんの例 ひとつのものに集中した場合 いくつかの商品に分散した場合 商品 A のブレ幅 商品 B のブレ幅 商品 A B に分散した時のブレ幅 値動きの特徴が異なる商品に分散した場合 市場の変化に対して異なる値動きをする商品に分散すると 一般的にリスクを小さくする効果を得ることができます 雨傘しか置いていないと 晴れた日には売り上げが伸びません 雨傘と日傘を置いておくと 晴れた日も雨の日も安定して売り上げがあがります 商品 C のブレ幅 商品 D のブレ幅 商品 C,D に分散した時のブレ幅 資産の分散 通貨の分散 資産の分散 預貯金 分散投資を行う際の分散する対象を考えて見ましょう 一口で分散投資といっても その分散する対象は資産であったり通貨であったり様々です 自分にとって有効な分散を見つけることが大切です 通貨の分散 円 銘柄の分散 株式に投資する場合は 1 つの同じ資産であっても価格変動のリスクは銘柄によって異なっています したがって 投資する銘柄数を増やすことによって価格変動リスクを低くすることができます 投資信託に投資することで 株式への分散投資が可能となります 株式 債券 ドル ユーロ 組み入れ銘柄数 83 84