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研究分担者 相馬良直 聖マリアンナ医科大学皮膚科教授 研究協力者 川上民裕 聖マリアンナ医科大学皮膚科准教授 要旨 2003 年以降のアトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬 ( 抗ヒスタミン作用のあるもの ) 治療の文献の検索 集積を行った 海外の文献は PubMed から 本邦の文献は医学中央雑誌のウェブ版から検索し 海外論文からは 54 文献 本邦論文からは 680 文献が抽出された 二重盲検法 ランダム化 対照群 10 例以上 比較群 10 例以上計 20 例以上等すべてを吟味し エビデンスレベル 1 か 2 の論文を選別した 結果 海外で 2 文献 本邦で 8 文献を選出した 塩酸フェキソフェナジン 塩酸オロバタシンといった一部の薬剤が EBM の観点から アトピー性皮膚炎に極めて有効であることが証明された しかし 他の薬剤では まだ EBM 的観点からの充分な裏づけがなされていない さらなる EBM を意識した検証が より多くの抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬で よりすすむことが望まれる はじめに抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬 ( 抗ヒスタミン作用のあるもの ) はアトピー性皮膚炎の治療薬として適応が認められ 広く使用されている しかし 日常の診療では副腎皮質ステロイド外用薬との併用で使用されることが多いため その強力な抗炎症作用にマスクされて効果が患者に実感されにくく 処方する医師にも分かりにくい 1999 年 Klein ら 1) は16 の論文のシステマティックレビューを行い アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬の有効性評価には大規模なランダム化比較試験や臨床疫学的にレベルの高い報告が少ないことから その有用性は否定的であると報告した これに対し 2003 年 Kawashima ら 2) はエビデンスレベル 1 の論文を発表し 抗アレルギー薬がアトピー性皮膚炎に奏効することを証明した これをきっかけとして 以降 本邦の報告を中心に抗アレルギー薬のアトピー性皮膚炎に対する有効性が EBM の観点から実証されつつある

研究目的 アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬治療に関する文献の検索 集積を行い その有効性と副作用 について EBM による観点から評価する 方法 2-5) 前回の抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬の EBMによる評価での有効な報告に加え ( 一部再評価も行った ) 2003 年からの新規報告もまとめて EBM 表を作成し 文献の検索 集積を行った 海外の文献は PubMed から 本邦の文献は 医学中央雑誌のウェブ版から 以下のように検索した 欧文 )PubMed から #1[atopic dermatitis OR atopic eczema] で 2003.1.1-2009.9.30, English で制限 (5641 報 ) #2[antihistamines] で 2003.1.1-2009.9.30, English で制限 (8431 報 ) #3 #1 AND #2 (194 報 ) #4 [controlled study OR comparative study OR clinical study] で 2003.1.1-2009.9.30, English で制限 (834970 報 ) #5 #3 and #4 (54 報 ) 邦文 ) 医学中央雑誌のウェブ版で 2003.1.1-2009.9.30 #1 アトピー性皮膚炎 (6377 報 ) #2 抗ヒスタミン薬 (6938 報 ) #3 抗アレルギー薬 (5206 報 ) #2 or #3 の検索結果 (9351 報 ) #1 and (#2 or #3)(680 報 ) 結果海外の論文からは 54 文献 本邦の論文からは 680 文献が抽出された 二重盲検法 ランダム化 対照群 10 例以上 比較 2,3) 群 10 例以上計 20 例以上等すべてを吟味し エビデンスレベル 1 か 2の論文を選別した 結果 海外で 2 文献 本邦 4-9, 11,12) で 8 文献を選出した 以下に 2003 年以降を中心に エビデンスレベルの高い EBM をもつ薬剤順に結果を述べる 1. 塩酸フェキソフェナジン 2,6) 有効とする報告 2 編が抽出された 特に Kawashima ら 2) の論文は 大規模なプラセボ対照二重盲験ランダム化比較 6) 試験であり EBM 上 アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬の有効性を証明した もう一つの報告では 塩酸フェキソフェナジンと副腎皮質ステロイド外用薬との併用群と副腎皮質ステロイド外用薬のみの群を比較し 併

用群で有意に瘙痒 臨床が改善した 一方 小児アトピー性皮膚炎で 塩酸フェキソフェナジンとフマル酸ケトチフェンと を比較検討した臨床治験を行い 両者間は非劣性で アトピー性皮膚炎に伴う瘙痒をともに改善し 安全性についても臨 床上問題となる有害事象が認められない結果を得た報告 7) があった 2. 塩酸オロバタシン 5) 1094 例の成人アトピー性皮膚炎に対する大規模な臨床治験があった 塩酸オロバタシン連続投与群と間欠投与群を比較検討した 連続投与群 間欠投与群とも有意に重症度が低下したが アトピー性皮膚炎の瘙痒は連続投与群で間欠投与群に比べより有意に抑制された また 患者の QOL も向上した 3. ロラタジン 9) 10) 成人と小児でそれぞれ エビデンスの高い報告があった 成人アトピー性皮膚炎で ステロイド外用に本剤を併用した群はしない群より 瘙痒が有意に減少した 小児アトピー性皮膚炎では ロラタジンとフマル酸ケトチフェンとの比較した臨床治験において 両者間は非劣性であり ロラタジンはアトピー性皮膚炎で有用 その安全性はフマル酸ケトチフェンと同程度との結果であった 4. 塩酸エビナスチン 11) 小児アトピー性皮膚炎でエビデンスの高い報告がなされた 塩酸エビナスチンとフマル酸ケトチフェンとの比較試験が行われ 両者間で非劣性 患者 医師の評価ともアトピー性皮膚炎の改善に有用であった 塩酸エビナスチンの安全性はフマル酸ケトチフェンと同程度との結果であった 5. 塩酸セチリジン顔面 頸部に中等度以上の皮疹をもつ成人アトピー性皮膚炎で タクロリムス軟膏との併用で掻痒に有効かつタクロリムス軟膏の灼熱感を有意に軽減し その併用効果が示された 12) 4) 1999 年ではあるが カナダでの大規模な安全性の報告がある 6. トシル酸スプラタスト 成人アトピー性皮膚炎で タクロリムス軟膏に本剤を併用し症状の改善が早い傾向を示した報告がみられた 13) また 難 治性顔面紅斑をもつ成人アトピー性皮膚炎で タクロリムス軟膏併用にて軟膏量が減少した報告があった 14) 7. 塩酸ヒドロキシジン マレイン酸クロルフェニラミン フマル酸クレマスチン いわゆる古典型の抗ヒスタミン薬で マレイン酸クロルフェニラミンの報告は掻痒に対して無効であった 5) 塩酸ヒドロキシ ジンやフマル酸クレマスチンに対する報告でエビデンスの高い報告は 最近はない

8. ベシル酸ペポタスチン 二重盲検法ではないが 成人アトピー性皮膚炎 72 例において有効を示した報告がある 15) 9. フマル酸エメダスチン 二重盲検法ではないが 湿疹 皮膚炎群のひとつとしての成人アトピー性皮膚炎 48 例において有効を示した報告がある 16) 10. フマル酸ケトチフェン 有効とする報告 3) が 1989 年にあり 以降は 臨床治験での比較対照薬として使われている 考按 2003 年以降 アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬の有効性に関するランダム化比較試験の文献をまとめた かつては アトピー性皮膚炎に対する抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬の有効性に関して EBM 的観点からも 否定的な見解がでていた 1) この影響なのか 海外の論文で有意義な臨床治験論文が皆無であったのに対し 本邦では 2) Kawashima 論文をはじめ 塩酸フェキソフェナジン 塩酸オロバタシンといった一部の抗アレルギー薬に極めてエビデンスレベルの高い報告がでた 今回の結果から こうした薬剤は EBM の観点から アトピー性皮膚炎に有効であることが証明された 今後 アトピー性皮膚炎における抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬の位置づけは変わってくることが予想される その動向に注目したい このように 抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬は アトピー性皮膚炎に対して 一部で有効性が確立した しかし 他の薬剤では まだ EBM 的観点からの充分な裏づけがなされていない そのため さらなる EBM を意識した検証が より多くの抗ヒスタミン薬 抗アレルギー薬で よりすすむことが望まれる そして 個々の薬剤におけるアトピー性皮膚炎への有用性の相違などが示されれば アトピー性皮膚炎治療により臨床的な貢献となるであろう 最後に アトピー性皮膚炎の皮膚症状や掻痒に対して 統一された評価法がないことが この分野の EBM 的検証を障害していると感じた アトピー性皮膚炎の評価に一定の基準ができれば これらの薬剤の有用性についてまとまった見解をつくる礎になると考える さらなる発展を期待したい 文献 1) Klein PA, Clark RAF. An evidence-based review of the efficacy of antihistamines in relieving pruritus in atopic dermatitis. Arch Dermatol 135: 1522-1525, 1999 2)Kawashima M, Tango T, Noguchi T, Inagi M, Nakagawa H, Harada S. Addition of fexofenadine to a topical corticosteroid reduces the pruritus associated with atopic dermatitis in a 1-week randomized, multicentre, double-blind, placebo-controlled,

parallel-group study. Br J Dermatol 148:1212-1221, 2003 3)Yoshida H, Niimura M, Ueda H, Imamura S, Yamamoto S, Kukita A. Clinical evaluation of ketotifen syrup on atopic dermatitis: a conparative multicenter double-blind study of ketotifen and clemastine. Ann Allergy 62: 507-512, 1989 4)Simons FER. Prospective, long-term safety evaluation of the H1-receptor antagonisit cetirizine in very young children with atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 104: 433-40, 1999 5)Munday J, Bloomfield R, Goldman M, Robey H, Kitowska GJ, Gwiezdziski Z, Wankiewicz A, Marks R, Protas-Drozd F, Mikaszewska M. Chlorpheniramine is no more effective than placebo in relieveing the symptoms of childhood atopic dermatitis with a nocturnal itching and scratching component. Dermatology 205:40-5, 2002 6)Kawakami T, Kaminishi K, Soma Y, Kushimoto T, Mizoguchi M. Oral antihistamine therapy influences plasma tryptase levels in adult atopic dermatitis. J Dermatol Sci 43:127-134, 2006 7) 中川秀己 川島眞 小児のアトピー性皮膚炎に対する塩酸フェキソフェナジンの有効性および安全性の検討第 III 相二重盲検群間比較試験 西日本皮膚科 68; 553-565, 2006 8) 川島眞 原田昭太郎 抗アレルギー薬を併用した標準的薬物療法がアトピー性皮膚炎患者の痒みと Quality of Life(QOL) に及ぼす影響に関する調査 臨床皮膚科 60; 661-667, 2006 9) 橋爪秀夫 瀧川雅浩 アトピー性皮膚炎のそう痒に対するロラタジン ( クラリチン錠 ) の臨床効果の検討 アレルギーの臨床 24; 1105-1111, 2004 10) 川島眞, 谷川原祐介, 鈴木五男, 原田昭太郎, 中川秀己, 古江増隆, 久木田淳, 中島光好 ロラタジンドライシロップの小児アトピー性皮膚炎に対する第 III 相二重盲検比較試験フマル酸ケトチフェンドライシロップに対する非劣性の検討 臨床医薬 23; 991-1016, 2007 11) 塩酸エピナスチンドライシロップ小児アトピー性皮膚炎研究会 塩酸エピナスチンドライシロップの小児アトピー性皮膚炎に対する第 III 相臨床試験フマル酸ケトチフェンドライシロップを対照薬とした二重盲検群間比較試験 西日本皮膚科 66; 60-79, 2004 12) 菅井順一 加倉井真樹, 大槻マミ太郎, 中川秀己 アトピー性皮膚炎顔面頸部皮疹に対するタクロリムス軟膏と塩酸セチリジンの併用効果の検討 皮膚病診療 30; 201-206, 2008 13) 古賀哲也 寺尾浩, 古江増隆, 濱田学, 野田淳子, 黒木りえ, 野田啓史, 佐藤恵実子 成人型アトピー性皮膚炎に伴う難治性顔面紅斑に対するタクロリムス軟膏とトシル酸スプラタストの併用効果検討 西日本皮膚科 65; 375-380, 2003 14) 竹中基 Bae Sang Jae, 佐藤伸一, 片山一朗 成人型アトピー性皮膚炎の難治性顔面紅斑に対するトシル酸スプラタストとタクロリムス軟膏の併用効果に関する検討 西日本皮膚科 67; 247-251, 2005 15) 古川福実 大谷稔男 西出武司 金原彰子 島影達也 辻岡馨 廣井彰久 秋岡嘉美 アトピー性皮膚炎患者に対するベシル酸ベポタスチンの有効性, 安全性の検討 新薬と臨床 53; 416-426, 2004 16) 石橋康正 原田昭太郎 新村真人 他 KG-2413( フマル酸エメダスチン ) の湿疹 皮膚炎群, 痒疹群および皮膚そう痒症に対する一般臨床試験 臨床医薬 10; 1919-1935, 1994