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平成 20 年度国土交通省委託 不動産取引情報提供システムの拡充に関する 調査検討業務報告書 平成 21 年 2 月

< 目次 > 1. はじめに 1 2. 不動産取引情報提供システム拡充の意義 2 (1) 消費者の不動産取引価格に対する不安感の払拭 2 (2) 不動産流通業界の更なる信頼性向上 3 (3) 不動産流通の円滑化 3 3. 不動産取引情報提供システムをめぐる現状と課題 5 (1) 現状 5 (2) 主な課題 10 4. 個人情報の保護への対応 12 (1) 対応の選択肢 12 (2) 本人の同意に基づく提供 12 (3) 加工情報の提供 13 (4) オプトアウトに基づく提供 14 (5) 拡充にあたっての基本的考え方 14 5. 拡充方策の検討 16 (1) 拡充の前提となる方策 16 (2) 情報の質的な充実を図る方策 18 (3) 情報の量的な充実を図る方策 23 (4) 機能性の向上を図る方策 25 (5) 広報周知に関する方策 25 6. 今後の進め方 27 (1) 拡充方策の実施 27 (2) 中長期的な検討課題 28

7. 検討の経緯 30 8. 不動産取引提供システムの拡充に関する検討委員会委員名簿 31 資料編 各国のインターネットによる不動産取引情報の提供状況調査 33

1. はじめに不動産は国民にとって重要な資産であり 地域経済の活性化や国民生活の向上を図る上で 不動産流通市場の整備は極めて重要な政策課題である しかしながら 不動産流通市場においては 消費者と不動産流通業者に大きな情報格差が存在しており 特に 既存住宅等の価格情報を入手することは難しいことから 実際に取引する価格の妥当性等に不安感を抱く消費者は多い このような不動産流通市場の実態を踏まえ 平成 17 年度及び 18 年度における国の成果重視事業として 指定流通機構制度に基づき不動産流通業界が保有する情報資産を活用して 不動産取引情報提供システム ( サイト名 : レインズ マーケット インフォーメーション 以下 RMI という ) を開発した 平成 19 年 4 月から本格稼働したRMIでは 指定流通機構が保有する売買の成約情報に基づく取引価格情報を 個人情報の保護の観点から物件が特定できないよう加工した上で インターネットにより提供している しかしながら RMIの利用者アンケートにおいても 提供している取引価格情報の充実に関する要望は極めて強く 今後 不動産流通市場の透明性をより一層確保する観点から 更なる情報の充実が求められているところである また 長期優良住宅の制度化等による既存住宅等の活用を推進する上で 取引価格情報の充実による不動産流通の円滑化等は 欠かすことのできない施策である このように 取引価格情報の提供体制の充実は 不動産流通市場に課せられた大きな役割であることから 不動産取引情報提供システムの拡充に関する検討委員会 を設置し これまで提供している取引価格情報に加えて どのような情報をどの程度提供することが可能か 提供にあたってどのような対応が求められるかなど RMIの拡充方策について検討を行った 本報告書は 本検討委員会での検討結果を踏まえて RMIのあり方や具体的な拡充の方向性を取りまとめたものである 1

2. 不動産取引情報提供システム拡充の意義 (1) 消費者の不動産取引価格に対する不安感の払拭不動産は 消費者が取引する商品 サービス等の中でも極めて高額な資産である しかしながら 不動産の取引価格は 個々の物件の個別性や取引時点における市場環境 当事者の取引事情等に影響を受けるとともに 最終的には当事者の主観をも含めて個別具体的に決定される したがって 消費者は手探りの状態で価格の妥当性を判断することとなり 実際の取引価格に対して何らかの不安感を抱くことつながっていると考えられる このように 不動産の取引価格は 多数の要因が複雑に関係して形成されることから 何らかの合理的な手法のみで妥当性を確保できるものではない 最終的に消費者の不安感を払拭するためには 消費者が取引価格に対して一定の 納得感 を得られることが重要である 消費者が 不動産取引において価格の妥当性を感じる (= 一定の納得感を得る ) ためには 宅地建物取引業者が 価格に関する質の高い情報を提供し 誠実な説明を尽くすことが最も重要であることはいうまでもなく 不動産流通業界において 継続的に取り組まれていることである しかしながら 宅地建物取引業者と消費者の間には大きな情報格差が存在することから 宅地建物取引業者からの説明等がいかに適切であったとしても 消費者にとってはその説明等のみが主たる判断材料となるため 消費者が取引価格の妥当性に不安感を抱く (= 十分な納得感が得られない ) ことにつながっているともいえる 消費者が価格に対して納得感を得るための手段として 消費者が能動的に価格情報を収集し 自らの目線で何らかの検討を行うことで 価格判断に至るまでのプロセスを補完することが考えられるが 消費者が能動的に入手できる情報は 地価公示等の公的な情報 売出事例 その他マクロ的な統計等に限定される その中で 消費者が自らの価格の検討を深めるために 実際に取引さ 2

れた事実 である取引価格情報を求めることは自然な流れといえる もちろん 取引価格情報も価格の判断材料の一つでしかないが 消費者にとって 事実である取引価格情報 は より有力な検討材料となり得るものである したがって 不動産取引情報提供システムがより具体的な取引価格情報を提供するなど 取引価格情報の提供に関する環境を更に整備することで 消費者が自らの価格意見をもつことはもとより 宅地建物取引業者が価格に関する説明を尽くし 消費者と十分な調整を図ることで 消費者の不動産取引価格に対する納得感をより一層高めることができると考えられる (2) 不動産流通業界の更なる信頼性向上我が国の不動産流通市場においては 取引価格情報の提供に関する明確な制度は存在せず また 各種調査の結果等からも 制度化によるオープンな情報提供について 必ずしも国民的な支持が得られているわけではない よって 不動産の取引価格情報を市場から広く集約することは難しいのが実態である その中で 宅地建物取引業法に基づき運用されているレインズには 宅地建物取引業者から年間 10 万件以上の成約情報がタイムリーに集約される 不動産流通業界の長年にわたる尽力の結晶であるレインズは 不動産流通市場を支える重要な情報インフラであり 集約された不動産情報は業界が保有する貴重な資産であることはいうまでもない 不動産流通業界が自主的にレインズの成約情報に基づく取引価格情報を市場に還元することで 消費者の保護と利便性向上をより一層推進することは極めて有意義であり ひいては不動産流通業界の信頼性の更なる向上にも資すると考えられる (3) 不動産流通の円滑化不動産取引においては 取引物件そのものの情報や価格情報などの不足が 円滑な流通を阻害する要因となることが多い したがって 不動産流通の円滑化を図るためには 取引当事者に 不動産にかかわる情報が体系的に提供され 3

ることが重要である また 長期優良住宅の制度化等による既存住宅等の活用を推進するためには 維持管理された優良な既存住宅等が 流通市場で適切に評価されることが不可欠である そのためには 取引価格情報の提供体制の充実を図ることで 既存住宅等が市場で適切に評価されるための市場整備を推進することが求められる < 不動産取引情報提供システム拡充の意義 > 4

3. 不動産取引情報提供システムをめぐる現状と課題 (1) 現状 1 不動産の取引価格情報の提供に関する制度我が国には 不動産の取引価格情報の提供に関する法制度等はなく 不動産取引情報提供システムについても 宅地建物取引業法に基づく指定流通機構制度を活用して 可能な範囲で取引価格情報を提供している その他にも 国土交通省が 登記異動情報に基づく購入者へのアンケート調査により収集した取引価格情報の加工情報を 土地総合情報システム にて提供している 一方で 諸外国では 行政機関が登記情報等の一部として不動産の取引価格情報を提供している事例も多く また 業界団体等が取引価格情報を含む詳細な不動産情報をインターネットで提供している事例もある 諸外国とは 不動産流通の仕組みなども違うことから 一概に比較することはできないが 少なくとも 不動産取引情報提供システムを含むぞれぞれの仕組みにおいて 情報の充実を検討する余地はあるものと考えられる 2 個人情報保護への対応指定流通機構に通知される成約価格を含む成約情報は 宅地建物取引業法に基づき集約されるものであり 宅地建物取引業者が守秘義務を負っていることを前提として 原則として業者間で利活用することが前提となっている インターネット等による成約情報の第三者提供については 本人からの同意を取得しているわけではないことから 成約情報そのものをサイト上で提供することはできない 物件が特定できる程度に物件の属性情報等を提供した場合 個人を特定することが可能となることから 不動産取引情報提供システムでは 個々の物件が容易に特定できないよう情報を加工した上で 取引価格情報を提供している 5

3 提供している情報 マンションと戸建住宅を対象として 次のような情報が提供されている ( 提供対象地域と提供情報件数 ) 全国を地域ごとにグルーピングし グルーピングされた地域ごとに 直近 3 ヶ月で 100 件以上の成約情報が指定流通機構に通知されている場合に 当該地域の取引価格情報を提供している 提供対象地域に特段の制限を設けていないが 提供条件を満たす地域が限られていることから 平成 21 年 1 月末時点で 北海道 宮城 埼玉 千葉 東京 神奈川 愛知 大阪 京都 兵庫 広島 福岡において取引価格情報が提供されている なお 全国で提供されている情報は 合計で約 22,000 件である ( 情報の提供方法 ) 物件の所在地などの一定の検索条件を設定すると 地域ごとに取引価格情 報が散布図形式で表示される 個々の詳細な取引価格情報については 散布 図上でウィンドウ形式にて表示される < 検索条件 ( マンションの場合 )> 項目 選択肢 地域詳細 地域に応じて選択 沿線 地域に応じて選択 間取り 指定なし 2 部屋以下 3 部屋以上 築年 指定なし 5 年以内 5 年超 10 年以内 10 年超 15 年以内 15 年超 20 年以内 20 年超 価格 下限なし 1,000 万円 ~7,000 万円 (1,000 万円単位 ) 上限なし 面積 下限なし 20m2~100m2 (20m2単位) 上限なし 駅からの距離 徒歩 10 分以内 徒歩 15 分以内 バス便 6

< 画面イメージ > 検索結果を散布図で表示 検索条件を入力 詳細情報をウィンドウで表示 ( 取引価格情報の内容 ) 本サイトで提供される取引価格情報の内容は概ね次の通りである 項目 情報内容 所在地 市区町村名のみ表示 沿線 沿線名 ( 最寄駅情報は提供していない ) 駅距離 徒歩 10 分以内 徒歩 15 分以内 バス便 価格 百万円単位 (10 万円単位を四捨五入 ) 単価 万円 / m2 ( 小数点以下を四捨五入 ) 面積 m2単位 ( 小数点以下を四捨五入 ) 築年 実際の築年に2 年の幅を持たせて表示 間取り 2 部屋以下または3 部屋以上 4 利用実績不動産取引情報提供システムへのアクセス実績は 年間で約 70 万ページビュー ( 平成 19 年度 ) となっており 全体的に低調である 平成 20 年度の利用実績も同じような水準で推移しており 現状では消費者の認知度は低いと 7

言わざるを得ない PV 100,000 92,343 RMI アクセス実績 ( 平成 19 年度 ) 80,000 60,000 65,812 54,129 51,72347,76545,361 51,974 49,23243,469 55,124 72,500 74,985 40,000 20,000 0 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 5 利用者アンケート不動産取引情報提供システムの本格稼働後に 利用者に対してWEBアンケートを実施した 回答者の属性は 不動産業に従事する者が最も多いものの その割合は 3 割強であることから 本サイトは不動産業以外の者にも利用されていると推測される また 本サイトの利用については 回答者の 5 割弱が 個人の不動産取引の参考 を目的としていることから 本サイトの主たる対象である消費者の利用もある程度確保されているといえる 不動産取引に臨む利用者の意識に関しては 7 割以上の者が 価格の相場がイメージできず不安に思う と回答している一方で 同じく 7 割以上の者が 本サイトの利用により不動産取引に対する不安感が 解消された または 多少減少した と回答しており 取引価格情報の提供は 不動産取引に臨む消費者にとって有益であると考えられる ただし 本サイトで提供する情報の内容については 回答者の 7 割弱が より多くの物件 詳細な取引価格情報の表示 を望んでいることから 利用者にとっては 情報の量と質ともに不十分といえる 8

<アンケート結果の概要 > * 回答者 209 名 回答者の属性選択肢 回答数 割合 不動産業 71 34.0% 金融機関 15 7.2% その他の業種等 123 58.8% 回答者の利用目的 * 複数回答可選択肢 回答数 回答比率 個人の不動産取引の参考として 98 46.9% 業務での不動産取引の参考として 94 45.0% 研究 学術利用目的として 15 7.2% その他 12 5.7% 特に目的は無い 11 5.3% 全体 209 100.0% 不動産価格に対するイメージ選択肢 回答数 回答比率 価格の相場がイメージできず不安に思う 148 70.8% 価格の相場がイメージできなくとも不安に思うことはない 16 7.7% 以前より価格の相場はイメージできている 38 18.2% その他 7 3.3% 不動産取引情報提供システム利用後の不動産価格に対するイメージ 選択肢 回答数 回答比率 不安感が解消された 45 21.5% 不安感が多少減った 104 49.8% 不安感はほとんど減らなかった 46 22.0% 不安感が全く減らなかった 14 6.7% 9

不動産取引情報提供システムを利用した感想 * 複数回答可 選択肢 回答数 回答比率 全体的に見やすい 使いやすい 77 36.8% もっと多くの物件 詳細な取引価格情報 ( 価格 間取り等 ) を表示してほしい 139 66.5% 現在 選択可能な地域以外の物件についても表示してほしい 27 12.9% トップページなどの説明画面が見づらい 使いづらい 11 5.3% 検索条件指定画面 ( 距離県別地域選択の図等 ) 検索結果画面 ( グラフ等 ) が見づらい 使いづらい 25 12.0% マーケット情報が見づらい 使いづらい 23 11.0% その他 31 14.8% 全体 209 100.0% (2) 主な課題 1 個人情報の保護への配慮不動産取引情報提供システムは 指定流通機構の成約情報に基づく情報提供を行っている したがって 取引価格情報の提供は 本人の同意を前提としていないため 個人情報の保護に十分な配慮をした上で 提供する情報の充実などの拡充方策を講ずる必要がある 2 消費者への普及 啓発等不動産の取引価格は多数の要因が複雑に関係して形成されることから 不動産取引情報提供システムで提供する取引価格情報のみで 価格の検討や判断を行うことは適切ではない 本サイトで提供される情報が 有効に活用されることによる不動産流通の円滑化等を図るためには 利用者 ( 特に消費者 ) に対して 本サイトの位置づけや情報提供の目的などを周知するとともに 不動産の取引価格の検討に必要な基本的な知識等を普及 啓発することが重要である 10

3 情報の充実現在 不動産取引情報提供システムで情報を提供している地域は 12 都道府県にとどまっており 情報量を拡大することで提供地域を拡大していくことが必要である また 個々の情報についても 所在地情報が市区町村までしか表示されず 交通情報についても最寄駅が表示されないなど 本サイトの利用により 各地域の全体的な相場イメージを形成することは可能であるが 具体的な価格検討を行うには情報が不足している 利用者アンケートにおいても 多数の利用者が情報の量と質の拡充を求めていることからも 取引価格情報の充実は本サイトの大きな課題である 4 機能性の向上取引価格情報は散布図上にポイントで示され 詳細情報はポイントからウィンドウ形式で個々に表示されるなど 不動産取引情報提供システムの現状の仕様は 必ずしも機能性が高いとはいえない 有益な情報の効率的な検索などを可能とすることで本サイトの利便性向上を図るためには 検索機能や表示機能などの拡充を図る必要がある 5 不動産取引情報提供システムの周知現時点のアクセス実績は低調であることから 不動産取引情報提供システムが本来の目的を達成するためには 拡充方策等の実施とあわせて 消費者を中心に周知を図ることで 本サイトの利用を促進することが不可欠である 11

4. 個人情報の保護への対応 (1) 対応の選択肢不動産取引情報提供システムが 指定流通機構に集約される成約情報に基づき取引価格情報を提供していることから 個人情報の保護に配慮して情報を提供するための選択肢として 次の 3 つが想定される 1 指定流通機構に通知される成約情報に基づく取引価格情報のインターネットによる提供について 本人から同意を取得するための仕組みを構築した上で 同意が取得できた情報を対象に提供する 2 物件の属性情報等を加工することで 容易に物件が特定できない取引価格情報を提供する 3 個人情報の保護に関する法律第 23 条 2 項に規定する措置 ( 以下 オプトアウト という ) により取引価格情報を提供する あわせて 第三者への提供について停止を求められた場合には 確実に提供を停止することができる体制を整備する 現状 不動産取引情報提供システムでは 成約情報を加工することにより 個々の物件が容易に特定できない取引価格情報を提供することで 個人情報の保護に対応している しかしながら 情報の充実などの拡充方策を講じるにあたっては 方策の内容に応じて どの対応が最も適切であるかを慎重に検討する必要がある (2) 本人の同意に基づく提供取引価格情報の第三者への提供について 本人の同意を取得することができれば 個人情報の保護に関する課題はほぼ解決されることから より詳細な情報を提供することが可能となり 容易に情報の質的拡充を図ることができる 一方で 同意を得られない情報は提供することができないため 情報量が大幅に減少することが懸念される 12

不動産取引における個人情報は本人から直接書面により取得することが一般的であるが この場合 個人情報の取得時に 不動産取引情報提供システムにおける取引価格情報の提供のために個人情報を利用することがある旨を本人に明示する必要がある ( 利用目的の明示 ) その上で 遅くとも媒介契約の締結時点で 媒介契約書またはその他の同意書等により本人からの同意を取得することとなる この場合 現状では 各業者で策定している個人情報の利用目的に 指定流通機構を通じた不動産取引情報提供システムへの情報提供は含まれていないことから 全ての指定流通機構会員業者の利用目的を改訂することが必要となる また 本人の同意は 媒介契約書により取得することが最も望ましいと考えられるが そのためには 国土交通大臣が告示する標準媒介契約約款の改訂が必要となるなど 媒介契約制度全般に大きな影響を与えることとなる 仮に その他の同意書等により個別に同意を取得する場合も 全会員業者に同意書を漏れなく展開し 取引価格情報提供のための任意の制度として その運用を徹底しなければならない あわせて 本人の同意の取得過程で レインズ上での情報交換についても 派生的に苦情等が発生することも懸念される なお システムの運用においても 指定流通機構に蓄積される成約情報について 全会員業者から同意の有無の通知を受けた上で 明確に管理する必要がある (3) 加工情報の提供容易に物件が特定できない加工情報を提供する限りにおいては 個人情報の保護に関する問題や懸念は少ないと考えられる したがって 指定流通機構に蓄積された全ての成約情報を対象として 取引価格情報を提供することができることから 情報量の確保の観点からは 加工情報の提供は有効である 一方で 個々の取引価格情報について 物件の属性情報などをより詳細に提 13

供した場合 物件の特定につながるおそれがあることから 情報の質的な充実には限界があると考えられる また 物件の特定を防ぐために どの程度情報を加工するかについては 明確な基準があるわけではなく 慎重に加工の基準を定めた上で運用することが必要である ただし 加工情報を提供した場合であっても 本人から同意を取得しているわけではないため たとえ個人情報の取扱いとして問題がなかったとしても 何らかの苦情等が発生する可能性は否定できない (4) オプトアウトに基づく提供本人の同意を取得していない個人情報を第三者に提供する仕組みとして オプトアウトに基づく提供が考えられる しかしながら オプトアウトによる個人情報の提供は あくまでも個人情報の保護に関する法律で認められた取扱いであって 第三者提供に関する本人の同意がない限りは 宅地建物取引業法に基づく守秘義務や個人情報の取扱いをめぐる民事上の問題などが必ずしも解決されるわけではない また 不動産流通において 指定流通機構制度は極めて重要な役割を担っており その本来の枠組みを超えて個人情報を取り扱うことによって 消費者が制度そのものに不信感を抱く可能性も否定できない あわせて 運用面においても 本人からの提供停止の求めが急増し 情報管理などの実務上の運用が煩雑となるとともに 結果的に情報量が減少してしまうことも懸念される 加えて 不動産取引情報提供システムにおいて情報の提供を停止したとしても ひとたびインターネット上で提供した情報については その流通を制御することは不可能であり 不適切に取引価格情報が取り扱われた場合に 有効な対応をとることができない (5) 拡充にあたっての基本的考え方個人情報の保護への対応については いずれの手段も全ての問題や課題を解 14

決できるわけではないことから 不動産取引情報提供システムの仕組みや位置づけを踏まえて最も適切な手段を選択する必要がある また 我が国では 不動産の取引価格情報の提供について 国民的なコンセンサスが十分に得られていないことにも留意しなければならない その上で 対応手段を判断するにあたっては 不動産取引情報提供システムは 法令に基づき運用される指定流通機構の成約情報を活用していること また 消費者保護や利便性向上等を目的として不動産流通業界が自主的に運用していることを前提とする必要がある このような観点から オプトアウトによる提供については 指定流通機構に通知される成約情報に依拠している本サイトの運用としては 法的な問題も含めて運用上のリスクが高い また 本人の同意に基づく提供については 媒介契約制度全般に与える影響もさることながら 各業者の実務上の負担が大きいことから あくまでも自主的な取組である本サイトの運用手段としては難しいと考えられる したがって 不動産取引情報提供システムの拡充にあたっては 従来通り 成約情報の加工情報を提供することを前提として 可能な限りの方策を検討するべきである 15

5. 拡充方策の検討 (1) 拡充の前提となる方策不動産取引情報提供システムの拡充にあたっては 情報の充実等を図る前提として 現状の課題を踏まえた利用環境の整備を行う必要がある そのためには 次のような観点から 主にトップ画面で提供するコンテンツの充実を図る必要がある 1 本サイトの位置づけの周知本サイトの信頼性向上を図り 利用者が安心して利用できるよう 本サイトの位置づけを明確に周知する必要がある 具体的には 以下に掲げる本サイトの位置づけを利用者に分かりやすく周知できるコンテンツを構築するべきである 不動産取引情報提供システムは 宅地建物取引業法に基づく指定流通機構制度を活用して 不動産流通業界が自主的に不動産の取引価格情報を消費者に可能な範囲で提供するものであること この取組は国土交通省の支援を受けていること 2 本サイトの情報提供の目的の周知利用者が 本サイトの情報提供目的を理解した上で 取引価格情報を適切に活用することができるよう 本サイトの情報提供の目的を明確に周知する必要がある 具体的には 以下に掲げる本サイトの目的を利用者に分かりやすく周知できるコンテンツを構築するべきである 不動産の取引価格情報の提供を通して 不動産取引に臨む消費者の不安感をできる限り払拭し 消費者保護と円滑な取引の更なる推進を図ることを目的としていること 不動産取引に臨む消費者に対して ある程度の相場観を持つための参考情報として取引価格情報を提供していること これによって 消費者が能 16

動的に取引価格を検討するための環境整備を図るものであること 不動産取引に限定することなく その他資産対策等を目的とした物件評価など 消費者の不動産価格情報ニーズに幅広く対応するものであること 3 取引価格情報の活用方法の普及 啓発取引価格情報が適切かつ有効に活用されるよう 特に住宅や住宅地について 価格に関する基本的な考え方 取引価格情報の具体的な活用方法などを 適切なレベル設定で消費者に普及 啓発する 具体的には 不動産の価格が多数の要因に影響されて個別に形成されるものであることなど 不動産の価格に関する基本的な考え方を示した上で 取引価格情報を活用した比較検討や時点修正などに関する基礎知識等を分かりやすく利用者に普及 啓発できるコンテンツを構築するべきである このようなコンテンツを構築するにあたっては 本サイトのトップ画面から導入される独自コンテンツの充実を図ることはもとより 消費者向けのサイトとして全面改修を予定している 不動産ジャパン のコンテンツを活用するなど 外部媒体との連携も含めて幅広く検討する必要がある 4 その他市場動向情報などの充実不動産の価格の検討には ある特定の地点の取引価格情報のみならず 全体的な市場動向等に関する情報も必要である したがって 本サイトの利用者が より有効に取引価格情報を活用するためには 市場動向等に関する情報を容易に入手することができる利用環境を整備することが重要である 本サイトは 市場動向に関する情報を表示する機能を具備しているものの 必ずしも十分な情報が提供されているわけではない したがって 主として他サイトへのリンク設定等により 市場動向等のその他の情報を充実させることが必要である ただし その他の情報を消費者に分かりやすく提供するためには 体系的に情報を整理することが前提となる 17

< 画面イメージ ( トップ画面 )> 利用ガイド等の充実 提供目的の周知 活用方法の普及 啓発 その他市場動向情報等の提供 テキスト原稿の改訂 PDF 等によるダウンロード 不動産ジャパンなどの外部媒体への体系的なリンクの設定 サイトの位置づけの周知 (2) 情報の質的な充実を図る方策 1 成約情報の加工のあり方不動産取引情報提供システムにおいて情報の質的な充実を図るにあたっては 成約情報の加工情報を提供することが前提となることから 物件の特定を防ぐための情報の加工のあり方を慎重に検討することが重要である 物件を特定するためには 主に物件の所在地と規模 ( 面積 ) に関する情報が必要であるため 本サイトに限らず その他の同種の媒体においても 所在地情報または規模情報を大幅に加工する あるいは 2 つの情報を一定程度加工することにより 物件の特定を防止している 本サイトでは 最も安全性の高い方法として 所在地情報を大幅に加工することで物件の特定を防ぐ仕様を採用している ( 所在地情報は市区町村までしか表示しない ) また 最寄駅などの物件所在地を類推させる情報も提供していない その一方で 規模情報である面積を 1 m2単位で表示し 取引価格情報を百万円単位で表示している その結果 地域における全体的な相場観 18

を把握することは可能であるが 取引価格等に関する具体的な検討を行うための情報としては活用できないのが実態である したがって 本サイトで提供する取引価格情報を本来の目的で利用可能とするためには 所在地情報の充実を図ることが必須となる 所在地情報を充実させる手段として 町名等まで表示することが考えられるが ある程度の物件の規模情報が提供されている場合 状況によっては物件が特定されるおそれがある 本サイトの取引価格情報が 本人の同意のない成約情報に基づいている以上は 物件の規模情報を大幅に加工しなければ 所在地情報を充実させることは難しい 本サイトで提供する規模情報または規模を類推させる情報としては 面積と価格 ( 総額 ) が挙げられる この 2 つの情報を非表示または大幅に加工した場合には 価格情報自体が不明確となり 情報の有用性が大幅に低下することが懸念されるが 本サイトでは価格情報として 1 m2あたりの単価情報も提供している 一般的に 不動産の価格を比較検討する場合 最終的には総額ではなく 面積あたりの単価で比較することから 面積と価格 ( 総額 ) 情報が提供されなかった場合でも 単価情報が提供されていれば有効な価格検討は可能であると考えられる 以上の検討を踏まえれば 情報の質的な拡充を図るための情報の加工手法として 面積や価格 ( 総額 ) 情報を 1 m2あたりの単価情報に一本化することが有効である その上で 所在地情報やその他の周辺情報を充実させることで 本サイトで提供する取引価格情報の有用性を引き上げることができると考えられる ただし 物件価格の比較検討は 同等程度の規模の物件であることが前提であるため 別途規模に関する情報を補完する必要があることに留意しなければならない 19

< 物件情報の加工のイメージ > 現状 所在 ( 市区町村 ) 面積 ( m2 ) 価格 ( 百万円 ) 拡充後 所在 ( 町名 ) 単価 ( 円 / m2 ) その他物件情報を追加拡充 2 具体的な方策 ( マンション ) 従来提供していた 面積 と 価格 ( 総額 ) 情報を非表示とすることを前 提として その他の情報を追加提供等することで 情報の質的充実を図るこ とが可能である 追加提供等する情報として 次のようなものが考えられる < 追加提供等を検討する情報 > 項目現状拡充後 所在地 市区町村まで表示 町名まで表示する 沿線 沿線名のみ表示 最寄駅の表示を追加 間取り 2 部屋以下または 3 部屋以上 詳細な間取り情報を追加 成約時期 提供していない 概ねの成約時期を追加提供 ( 年月 ) 周辺情報提供していない 用途地域や建ぺい率 容積率等を追加提供 これらの情報を追加提供等することで 概ね同一需給圏の情報検索が可能 となるとともに 物件の間取り情報や成約時期に関する情報等を補完するこ とができることから 取引価格情報の有用性が向上すると考えられる 20

< 画面イメージ ( 詳細表示 )> 成約時期 詳細表示 :2008 年 7 月価格 :165 百万円単価 :108 万円 / m2専有面積 :152m2所在 : 渋谷区沿線 : 小田急電鉄小田原線間取り :3 部屋以上築年 :1997 年から1998 年 詳細表示 単価 :108 万円 / m2所在 : 渋谷区代々木上原沿線 : 小田急電鉄小田原線最寄り駅 : 代々木上原間取り :3LDK 築年 :1997 年から1998 年用途地域 : 一種低層建ぺい率 : % 容積率 : % 成約時期 :2008 年 7 月 3 具体的な方策 ( 戸建 ) 本サイトの現状の仕様では 戸建住宅の価格情報については 土地と建物の総額情報のみが提供されている これは 指定流通機構の成約情報の大半が 土地と建物の価格を合算した総額で通知されているためである したが 21

って 戸建住宅については 取引価格情報を単価情報で提供することができないことから 所在地情報などの情報の質的な拡充が難しい 加えて 所在地情報をより詳細に表示することで 物件規模に関する情報などを加工した場合でも 建物の築年情報等で物件を特定される可能性がマンションよりも高くなるなどの問題も生じる また 戸建住宅の価格については 土地価格と建物価格を分けて検討することが一般的であるが 土地価格については 取引事例等との比較によって価格が検討される一方で 建物価格については 再建築価格に基づく原価法等で検討される このように 土地と建物の価格は異なる手法で検討され 特に建物価格の検討にあたっては 必ずしも取引事例等を活用するわけではないことにも留意した上で 戸建住宅の取引価格情報の拡充を実施する必要がある 以上の実態を踏まえると 戸建住宅の価格検討において 取引価格情報が必要となるのは もっぱら土地 ( 敷地 ) であり 戸建住宅の相場観が土地 ( 敷地 ) 価格を中心に形成されることからも 土地の取引価格情報を提供するとともに 建物価格の検討手法を含む戸建住宅の価格検討の基本的手法を利用者に周知するコンテンツを備えることで より正確な価格検討が可能になると考えられる また 戸建住宅の総額情報を土地 ( 敷地 ) の取引価格情報に変更することで 1 m2あたりの単価情報を提供することができるため 物件の所在地情報の提供など マンションとほぼ同じ仕様で情報の質的拡充を図ることも可能となる また このような拡充方策を講じることで 戸建住宅のみならず住宅地等の土地取引においても本サイトの取引価格情報を活用することができることからも 利用者にとってもより有益であると考えられる なお 土地の取引価格情報を提供するにあたっては 指定流通機構に通知される土地の成約情報と戸建住宅の成約情報のうち土地建物の価格の内訳が 22

判明する情報を活用することが考えられる ただし 土地の規模は 価格に大きく影響するため 一定規模以上の土地については提供の対象から除外するなど 何らかの面積要件を付すことが必要である < 画面イメージ ( トップ画面からの誘導 )> 物件種別 ( 必須 ) マンション 戸建 ( 敷地 ) および土地 戸建の建物価格についてはごちらをご参照 建物価格の検討手法に関する解説コンテンツへのリンクを設定 (3) 情報の量的な充実を図る方策不動産取引情報提供システムにおいて情報の量的充実を図る上では 提供する情報の絶対量を確保することはもとより 提供対象となる地域を拡大することが求められる 1 情報の絶対量の確保情報の絶対量については 本サイトが指定流通機構に通知される成約情報に依拠している以上 能動的に情報量を拡大することはできない ただし 現状の仕様では 成約時期に関する情報を提供していないことから 相場変動の影響が比較的少ない直近 3 ヶ月以内の成約情報を提供対象としている 本サイトの拡充方策を実施するにあたって 成約時期に関する情報を提供 23

することを前提とすれば 提供対象となる期間を拡大することで 本サイトの情報量を拡大することが可能である 妥当な提供対象期間を判断する明確な基準はないが 例えば 公示価格などの公的な情報が 1 年単位で公表されることとの比較においては 本サイトにおける提供対象期間を 1 年としても大きな問題はないものと考えられる ただし 提供対象期間を 1 年とする場合には その他市場動向情報を提供することにより 時点修正等を可能とするなど 取引価格情報がより有効に活用される環境を整備することが必要である 2 提供対象地域の拡大現状の仕様では グルーピングされた地域ごとに 直近 3 ヶ月以内で 100 件以上の成約情報が確保された地域を提供対象地域としている したがって 特に 地方圏で取引件数が少ない地域は 本格稼働以降 取引価格情報が提供できていない 現在の基準は 地域ごとに一定の情報量の確保を前提とすることで 個々の物件の特定を防ぐこと また ある程度の比較検討を可能とすることを目的として設定されたものである しかしながら 情報の加工方法を見直した上で 質的な充実を図ることで 当初の基準設定時の懸念は概ね払拭されると考えられることから 基準の見直しも可能と判断される 基準の設定について明確な判断材料があるわけではないが 現時点における指定流通機構への成約情報の通知状況を踏まえると 直近 1 年以内に 50 件以上とすることで 提供対象地域が拡大する可能性がある < 情報の量的充実を図る方策 > 項目現状拡充後情報の絶対量の確保直近 3 ヶ月の情報を提供直近 1 年の情報を提供提供対象地域の拡大 100 件以上の情報を確保した 50 件以上の情報を確保した地域が提供対象地域が提供対象 24

(4) 機能性の向上を図る方策 不動産取引情報提供システムで提供する取引価格情報を より有効かつ効率 的に活用するためには システムの機能性の改善による利用者の利便性向上を 図ることも重要である ただし システムの機能性向上には多様な方策があり かつ システム改修にかかる費用が大幅に増加する可能性がある したがって 本委員会における検討結果や利用者アンケートの結果を踏まえ て 比較的優先順位が高いと考えられる方策を以下に掲げる これ以外にも多 数の方策が考えられるが システムは日進月歩で高度化していることから 費 用対効果を十分に検証した上で 随時必要な方策を講じていくことが望まれる 1 取引価格情報を帯情報で表示する機能を追加する ( 情報の一覧性の向上 ) 2 散布図の拡大機能を追加する ( 視認性の向上 ) 3 個々の情報の拡大表示機能について グラフ上のクリック操作のみで表示 できる機能を追加する ( 操作性の向上 ) 4 地図による検索機能を追加する ( 検索の効率性の向上 ) < 帯情報のイメージ > 単価 ( 万円 /m2) 1 108 渋谷区代々木上原 所在沿線最寄り駅間取り築年用途地域成約時期建ぺい率容積率 小田急電鉄小田原線 代々木上原 3LDK 1997 年から 1998 年 一種低層 2008 年 7 月 2 110 渋谷区代々木上原 小田急電鉄小田原線 代々木上原 3LDK 2000 年から 2001 年 一種低層 2008 年 8 月 3 120 渋谷区代々木上原 小田急電鉄小田原線 代々木上原 3LDK 2000 年から 2001 年 一種低層 2008 年 9 月 情報の内容は散布図と同様 (5) 広報周知に関する方策 不動産取引情報提供システムの利用実績が低調であることから 拡充方策の 実施とあわせて広報周知を行うことで 本サイトの認知度を向上することが重 25

要である しかしながら 一般的に商業サイト等で行われている広報周知方策には 多額の費用が必要であり また 費用に対する効果が必ずしも確保されないともいわれていることから 公的サイトが同様の方策を講ずることは難しい 一方で サイトへの誘導を図る手段として 他サイトにおけるリンク設定等により 導線を確保することが効果的であるといわれている 事実 本サイトにおける利用者アンケートにおいても 回答者の 6 割弱が不動産関連ホームページまたは国土交通省のホームページからのリンクにより本サイトを知っている したがって 本サイト拡充時においては 主として関係団体等と連携した上で 消費者教育機能を有している不動産ジャパンから本サイトの利用を誘導することはもとより 指定流通機構や業界団体 個別業者が運営するサイトにおけるリンク設定を積極的に推進することで より多くの導線を確保し 地道ではあるが本サイトの周知を図るとともに 国と関係団体等が一体となって 報道発表やメディア対応 業者への周知などを 可能な限り実施することが重要である なお 本サイトの内容や目的などを利用者に分かりやすく伝えるためのサイト名称の変更など 本サイトを利用者に訴求するための工夫を幅広く検討することも必要である 26

6. 今後の進め方 (1) 拡充方策の実施不動産流通市場における取引価格情報の提供体制の充実は 消費者保護や利便性の向上等 極めて大きな意義をもつことから 不動産取引情報提供システムの拡充方策についても 極力早期に実施することが求められる しかしながら システムにかかわる技術は日々進歩しており 内容によってはシステム改修等に多額の費用が必要となることもあるため 公的な位置づけをもつ本サイトで 全ての方策をタイムリーに講じていくことは難しい側面もある したがって 講ずべき方策にしっかりと優先順位をつけた上で 限られた予算の範囲内で速やかに実施していくことが必要である 今回検討を行った拡充方策に関しては 不動産取引情報提供システムをめぐる環境を踏まえると 提供している情報の充実を実現することが最優先課題であると考えられる また 情報の充実を図る上で 本サイトの位置づけや目的を明確に周知するとともに 消費者を含む不動産流通市場のプレーヤーが 適切に取引価格情報を活用することができる環境の整備を欠かすことはできない 来年度の具体的な拡充を進めるにあたっては これらの方策の実施を優先することを前提として 可能な限り多くの方策を早期に実施することとする また 来年度に限らず 今後継続的な拡充を図っていくためには 常に課題を認識し 様々な方策を講じることが必要である しかしながら 前述の通り 本サイトには予算的な制約があることから 全ての方策を大幅なシステム改修によって行うことは難しい 今回検討した方策の中にも システム等のハードに依存しないものも含まれており テキストコンテンツなどのソフトの充実によっても 不動産取引情報提供システムを拡充し 市場整備に貢献することは十分に可能である 今後 本サイトが市場環境を踏まえた役割を果たしていくためには 行政と 27

業界が課題を共有した上で システム改修等によるハードの拡充はもとより 必ずしもハードに依存しない方策について 官民が一体となって検討し 創意工夫を凝らして着実に実現していくことが望まれる (2) 中長期的な検討課題今後 不動産取引情報提供システムの更なる拡充を図り より一層利便性の高いサイトとして運用していくにあたっての中長期的課題を次に示す 今般の拡充方策の検討において 具体的な議論を行っていないものの 本サイトの課題として行政や業界が認識した上で 官民一体となった継続的な検討が行われることが望まれる 1 賃料情報等の開示賃貸借契約に臨む消費者への情報提供はもとより 投資用不動産の取引や不動産の収益価格の検討など 多様な活用が想定されることから 指定流通機構に蓄積される成約賃料情報に基づく情報提供も 消費者を含む多くの利用者にとって有益な方策と考えられる 2 土地総合情報システムとの連携のあり方登記記録に基づく不動産の購入者へのアンケート結果に基づき取引価格情報を提供している 土地総合情報システム は 不動産取引情報提供システムと同様に国が推進する施策である 土地総合情報システムの目的は本サイトと同じであるが 取引価格情報の情報ソースが違うことから 現時点では2つのシステムが各々独立して運営されている しかしながら 本来は同じ目的をもつ公的なサイトである両システムは 一体的に運用されることが 消費者の利便性の観点からは望ましい したがって 情報の名寄せなど 解決すべき大きな課題が存在するものの 将来的な運用のあり方の検討を継続することが必要である 28

3 指定流通機構への成約情報の通知の更なる徹底等不動産取引情報提供システムで提供する情報の絶対量の確保には 指定流通機構に蓄積される成約情報の量的拡大が必要不可欠である したがって 指定流通機構への通知が法的義務とならない一般媒介契約にかかる成約情報も含めて 指定流通機構への通知について 行政と業界が一体となって更なる徹底を図ることが必要である また 詳細な取引価格情報を提供するなど 更なる情報の質的拡充を図るためには 成約情報の第三者提供に関する本人の同意を取得する仕組みのあり方について 今後の取引価格情報の提供制度等にかかわる議論の動向を踏まえつつ検討することも 本サイトの中長期的課題と考えられる 4 登録価格の活用指定流通機構には 成約情報を大きく上回る登録情報が集約されているが 登録情報における価格情報は あくまでも 売り出し価格 であることから 成約価格とは性質が異なるものである しかしながら 圧倒的な情報量である登録情報を不動産の取引価格の検討により有効に活用することができれば 不動産の取引価格にかかわる情報基盤は大幅に強化される 登録価格と成約価格の乖離率の活用等により 登録価格を概ねの成約価格に補正することも不可能ではないが 価格査定における登録価格の合理的な活用方法については 業界においても今後の詳細な議論が必要である したがって 本サイトでは成約情報と並行して提供できる状況ではないと考えられることから 価格検討手法のあり方を含めた中長期的な検討が必要と考えられる 29

7. 検討の経緯 第 1 回平成 20 年 10 月 20 日 (1) 消費者に対する取引価格情報の提供意義と本委員会の検討趣旨 (2) 不動産取引情報提供システムの概要等 1 これまでの取組 2 不動産取引情報提供システムの概要 3 取引価格情報の提供に関する意識およびアンケート調査結果 4 課題認識 (3) 不動産取引情報提供システム拡充の検討課題 ( 案 ) (4) 今後の進め方 委員及び業界団体からの意見集約平成 20 年 10 月 24 日 ~11 月 7 日 第 2 回平成 20 年 12 月 4 日 (1) 不動産取引情報提供システムの拡充に関する委員からの意見等の概要 (2) 不動産取引情報提供システム拡充方策 ( 案 ) 1 不動産取引情報提供システム拡充方策一覧表 2 米国 英国のインターネットによる取引価格情報等の一般消費者への提供の状況等 (3) 今後の進め方 第 3 回平成 21 年 1 月 28 日 (1) 不動産取引情報提供システム拡充方策 ( 最終案 ) (2) 報告書のとりまとめ 1 動産取引情報提供システムの拡充に関する調査検討業務報告書 ( 案 ) (3) 今後の進め方 30

8. 不動産取引情報提供システムの拡充に関する検討委員会委員名簿 委員長小泉允圀委員長谷部俊治熊谷則一土田あつ子一色武彦 明海大学副学長 法政大学社会学部教授 弁護士 ( 社 ) 日本消費生活アト ハ イサ ー コンサルタント協会 NACS 消費生活研究所主任研究員 ( 社 ) 全国宅地建物取引業協会連合会流通委員長 藤野茂樹 ( 社 ) 全日本不動産協会副理事長 ( 兼務 : 流通委員長 ) 臼井清春嘉屋本義明西村高志萩原正敏 ( 社 ) 不動産流通経営協会常任参与 ( 社 ) 日本住宅建設産業協会次長 ( 社 ) 不動産協会主幹 ( 財 ) 東日本不動産流通機構参与 菅尾悟 ( 社 ) 中部圏不動産流通機構企画事業委員長 下湯北照幸 松尾宣文 海堀安喜 ( 社 ) 近畿圏不動産流通機構レインズ運営委員長 ( 社 ) 西日本不動産流通機構専務理事 国土交通省総合政策局不動産業課課長 藤田真 ( 財 ) 不動産流通近代化センター副理事長 事務局 吉野愼太郎 田中大雅 国土交通省総合政策局不動産業課課長補佐 国土交通省総合政策局不動産業課流通企画係長 ( 財 ) 不動産流通近代化センター 31

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