SIGNA 甲子園全国大会 SIGNA を用いた躯幹部非造影 MRA 北里大学病院放射線部秦博文
いつもの UMT と思ってお聞きください
当院の MRI 装置 Signa LX 1.5T Ver.9.1 Signa CV/i 1.5T Ver.9.1 Signa Excite HD 1.5T Ver.12 計 4 台 Signa HDx 1.5T Ver.14 注 )HDx はつい最近 (11 月 6 日稼動 ) 導入されたばかりです
Signa HDx 1.5T Ver.14
Signa HDx の画像 ( 造影 MRA) TRICKS-XV
Signa HDx の画像 ( 造影 MRA) 3.6mm(ZIP2)/216slice Scan time=26sec AX imageからのmip LAVA-XV
Signa HDx の画像 ( 造影 MRA) 12ch body array 320 192 3mm(ZIP2) 200slice 15phase temp.res.=5sec TRICKS-XV
本日の内容 当院における躯幹部大血管の非造影 MRA SIGNA UMT から生まれた撮像技術を用いた非造影 MRA 注 ) 内容の中には研究中の内容も含まれております ご了承ください
本日の内容 当院における躯幹部大血管の非造影 MRA SIGNA UMT から生まれた撮像技術を用いた非造影 MRA
躯幹部の非造影 MRA 基本的には 大動脈疾患( 大動脈瘤 大動脈解離など ) 主要分枝の描出( 腎動脈など ) の依頼がほとんど
大動脈疾患の非造影検査 当院の基本プロトコール 位置決め画像 AX-2DfatsatFIESTA 胸部-OblSAG-2DfatsatFIESTA ( 腹部 -COR-2DfatsatFIESTA) low-b DWI ( CINE FIESTA) 使用コイルは疾患に応じて胸部 腹部で使い分ける
当院の基本プロトコール 2DfatsatFIESTA Low-b DWI
コイルの選択 使用コイルは 8(12)ch body コイル ( 感度範囲がたりない場合は body コイルで追加 ) 目的疾患が指定されている場合 TAA dissection(a) など胸部にメインの疾患がある場合はコイルの感度領域は胸部に AAA など腹部にメインの疾患がある場合はコイルの感度領域は腹部に
FIESTA は 造影剤を用いなくとも 血液が高信号に描出 ( 水 脂肪も高信号になる ) コントラストはT2/T1 呼吸同期撮影が可能( 造影 MRAは呼吸停止が必須 ) SNRが高い CINE 撮像が可能 現時点では動静脈の分離はSIGNAではできない
脂肪抑制の必要性 1.5T 装置での FIESTA は TE が out of phase になる 脂肪抑制あり 脂肪抑制なし 水 脂肪相殺作用により 脂肪に囲まれた細い血管の描出能が低下する
2D-fatsatFIESTA( ボランティア画像 ) TR/TE=3.6/1.4ms Slice=4/-1mm FOV=450mm matrix=192*288 NEX=1
主な大動脈疾患の診断ポイント 大動脈瘤 動脈瘤の位置 大きさ 壁在血栓の有無 ( 性状 ) 大動脈主要分枝との位置関係 etc 大動脈解離 解離の存在 範囲 (entry re-entry の検索 ) 偽腔開存の有無 大動脈主要分枝の解離の有無 大動脈主要分枝との位置関係 etc
症例 ) 大動脈瘤 (77 歳男性 :XP にて異常陰影 ) FIESTA 造影 MRA 造影 CT 血栓は器質化し低信号 造影 (CT MRI) 非造影 MRI 共に同様の所見 FIESTA だけで十分
症例 ) 大動脈解離 (78 歳男性 ) 造影 CT 検査にてアナフィラキシーショック歴あり 造影 MDCT FIESTA FIESTA のみでは 偽腔の有無 ( 範囲 ) が明確でない
FIESTA のコントラスト コントラストは T2/T1 に依存する 器質化した血栓 器質化していない血栓 うっ滞した血液 ( 血腫 ) FIESTA で低信号 FIESTA で高信号
FIESTA だけでは判断できないもの 大動脈瘤 動脈瘤の位置 大きさ 壁在血栓の有無 ( 性状 ) 大動脈主要分枝との位置関係 etc 大動脈解離 解離の存在 範囲 (entry re-entry の検索 ) 偽腔開存の有無 大動脈主要分枝の解離の有無 大動脈主要分枝との位置関係 etc
偽腔開存 (flow) を確認する方法は? TOF 法などの inflow imaging PC 法での流速測定 black blood imaging
black blood imaging 頚動脈のプラーク評価で用いられている T1WI(fatsat) T2WI(fatsat) 心電同期 ( 呼吸停止 ) が必要 躯幹部では広い範囲をカバーしなければならない
拡散強調画像 (DWI) black blood imaging としての DWI 肝臓の imaging において 低い b-value(10 前後 ) を用いて撮像すると 血管の信号が抑制される ( 従来の使い方 ) b-value が大きく設定しても MPG の効果によって血流信号は抑制される 血管の撮像に応用 非常に撮像時間が短い ( 呼吸停止撮像が可能 )
血管の black blood imaging としての DWI b-value の設定 low b-value コントラストは撮像法に依存 TE 短縮に伴う SNR の上昇 画像の歪みが小さい high b-value 拡散を強調している TE 延長に伴う SNR の低下 画像の歪みが大きい 当院では現在 b=50(100)s/mm 2 に設定している
撮像条件 SSEPI-DWI(PG 呼吸停止下 ) 無理なら PG のみ TR/TE=R-R による /min NEX=1 FOV=400mm Body コイル使用時は phasefov ギリギリ Matrix=128 160 Slice=6mm/0mm(24slice 必要な範囲 ) ramp-sampling on b-factor=50(mpg=all) 1 回の撮像で広い範囲を設定しない
呼吸停止 PG の有無による画像の違い Non-gate 呼吸停止のみ 呼吸停止 + PG PG のみ
拡散強調画像 ( 先ほどの症例 ) FIESTA DWI 血流がある部分は black blood になっている 血栓部分とのコントラストは明瞭である
症例 ) 偽腔開存型大動脈解離 (74 歳女性 ) FIESTA low-b DWI 造影 AX T1 偽腔の大部分は血栓化しているが 一部開存が認められる 造影 MRI と同じ所見
症例 ) 胸部大動脈瘤 (76 歳女性 ) FIESTA low-b 造影 T1WI 血栓内のわずかな血流も非造影検査でも確認できる 造影 MRA
症例 ) 偽腔非開存型大動脈解離 (68 歳男性 ) FIESTA low-b DWI FIESTA と low-b 共に偽腔の完全な血栓化が確認できる
DWI の問題点 ( 今後の課題 ) b 値の選択 low-b or high-b ( 非常に遅い血流部分の血液信号の消え残り ) 画質の改善 SNR 空間分解能 歪み ( 安定した画質の確保 )
その他の問題点 大動脈解離 解離の存在 範囲 (entry re-entry の検索 ) 偽腔開存の有無 大動脈主要分枝の解離の有無 大動脈主要分枝との位置関係 etc 2D-fatsatFIESTA の空間分解能ではなかなか厳しいのが現状 他方向からのアプローチが必要
3D-fatsatFIESTA(VCG NAVI 併用 ) WHCA を撮像するシーケンス MPR 像 ボランティア画像 Isovoxel に近い観察が可能
分枝血管の描出 ( 腎動脈 ) しかし 現段階では分枝血管の描出は可能でも 狭窄の評価などは困難 今後の課題 2D-FSFIESTA partial MIP
躯幹部大血管領域の非造影 MRA FIESTA で存在 形態を観察 不十分な情報を付加撮像でカバーする black blood imaging で血管内腔 ( 血栓 ) の観察 or 開存の確認 (CINE 画像による動態の観察 )
本日の内容 当院における躯幹部大血管の非造影 MRA SIGNA UMT から生まれた撮像技術を用いた非造影 MRA
これから 紹介する手法は研究段階です ご了承ください
四肢末梢血管の非造影 MRA の試み 造影の場合 SIGNA には TRICKS というすばらしいアプリケーションがある 非造影の場合 この領域の非造影 MRA による描出は難しい
そこで まずボランティア画像を MIP 画像 Partial-MIP 画像
使用装置 :SIGNA EXCITE HD 1.5T 撮像シーケンス :3D-TOF-SPGR
四肢末梢の MRA は造影 MRA を行っているが 非造影でどれだけ描出できるか挑戦した 過去の UMT での皆さんの数々のアイデアを参考にさせていただきました
使用コイルの選択 3inch コイル QUAD KNEE コイル
コイルの種類 3inch コイル QUAD KNEE コイル 受信専用コイル ( 送信は Body コイル ) 送受信コイル
受信専用コイルは RF パルスが Body 送信であるため コイルの受信感度範囲以外の範囲に RF パルスが印加される 撮像範囲の血管の Inflow 効果が低下する
さらに 半カブリにすることで 撮像範囲内の inflow 効果が高くなる ( 札幌医大の原田さんが UMT で報告 ) 末梢血管に応用した コイルの端
撮像部位の固定法 昨年の SIGNA 甲子園神奈川予選で秦野赤十字病院の大沢さんが Extremity コイル付属の円形クッションを使って手を固定する手法を報告された QUAD KNEE コイルは円形小径のの QD コイルであるため上記手法が効果的とした
撮像条件の設定 1 撮像断面の決定 以前川崎幸病院の谷口さん ( 当時 ) が頭頚部 MRA を冠状断の 3D-TOF で撮像でき 送受信コイルにおいて 血管描出能が高いことを UMT で報告された 撮像時間の短縮も考え 冠状断を選択した ( その際わずかに oblique にする )
2 撮像条件の設定 TR は設定可能できる最短を選択 TE は 2 サイクル目の in phase に近い TE を選択した ( 以前に GE 鵜池さんが GE-today で下肢 MRV の撮像に 2 サイクル目の in phase の TE を用いて周囲組織の信号低下を試みているのをヒントに )
TE の比較 6.9ms 9.6ms 静止組織とのコントラストは向上している
さらに 末梢血管の描出能を向上させるために MT パルスを印加して FATSAT を併用した ( これも以前に札幌 UMT の原田さんが頭部 MRA で設定されていた方法 ) MT パルス +FATSAT
normal MT FS MT + FS
以上をまとめて 使用コイル :QUAD KNEE パルスシーケンス :3D TOF SPGR TR/TE/FA=51ms( 最短 )/9.6ms/20 FOV/matrix=160mm/320 192 Slice thickness/lps=0.8mm/112 Imaging option:fc ZIP2 MT EDR Other:fatsat(CHESS) 撮像時間 :9 分 50 秒
もう一度画像を MIP 画像 Partial-MIP 画像
最後になりますが 非造影 MRA は MRI 検査のすばらしい手法の一つ 非造影 MRA の画像の意味 利点 欠点を十分理解する 新しい技術を開発していく 画質の向上につとめる 非造影の欠点を補うための撮像を考える 臨床的有用性を検証していく
ご静聴ありがとうございました