日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 第 2 事件 (1) 被告 Y1, 同 Y2 及び同毎日放送 ( 以下, この 3 被告を指して 被告ら という ) は, 原告に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 17 年 9 月 13 日から支払済みまで年 5 分の割合

Similar documents
平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

最高裁○○第000100号

最高裁○○第000100号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成  年(オ)第  号

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

最高裁○○第000100号

Unit1 権利能力等, 制限行為能力者 ( 未成年 ) 1 未成年者が婚姻をしたときは, その未成年者は, 婚姻後にした法律行為を未成年であることを理由として取り消すことはできない (H エ ) 2 未成年者が法定代理人の同意を得ないで贈与を受けた場合において, その贈与契約が負担付の

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

インターネット上の誹謗中傷対応の基礎(Web公開用)

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

* 1.請求の要旨

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

平成  年(オ)第  号

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

審決取消判決の拘束力

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

H 刑事施設が受刑者の弁護士との信書について検査したことにつき勧告

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

(イ係)

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

 

最高裁○○第000100号

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

平成  年(行ツ)第  号

市町村合併の推進状況について

0A8D6C A49256C A0

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引な勧誘により 購入者等が望まない契約を締結させられることを防止するため 事業者が勧誘行為を始める前に 相

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

PowerPoint プレゼンテーション

11総法不審第120号

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

平成  年(あ)第  号

1. 元職員による働きかけの規制 ( 第 38 条の 2 関係 )1 1 離職後に営利企業等 1に再就職した元職員(= 再就職者 ) は 離職前 5 年間に在職していた地方公共団体の執行機関の組織等 2の職員に対して 当該営利企業等又はその子法人と在職していた地方公共団体との間の契約等事務 3につい

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

PPTVIEW

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

( 指名停止の期間の特例 ) 第 4 条有資格者が一の事案により別表各号の措置要件の二以上に該当したときは 当該措置要件ごとに規定する短期及び長期の最も長いものをもってそれぞれ指名停止の期間の短期及び長期とする 2 有資格者が次の各号の一に該当することとなった場合における指名停止の期間の短期は それ

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

03宅建表01.indd

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

事実及び理由控訴人補助参加人を 参加人 といい, 控訴人と併せて 控訴人ら と呼称し, 被控訴人キイワ産業株式会社を 被控訴人キイワ, 被控訴人株式会社サンワードを 被控訴人サンワード といい, 併せて 被控訴人ら と呼称する 用語の略称及び略称の意味は, 本判決で付するもののほか, 原判決に従う

( 別紙 1) 定期監査結果の取扱基準 ( 趣旨 ) 1 この基準は 定期監査の結果の評価及び区分の基準並びに報告及び通知の手続について定める ( 監査結果の区分 ) 2 定期監査の結果 改善 是正等を要すると認められる事項については その内容により次のとおり区分する (1) 指摘事項違法又は不当な

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

4 予備調査委員会は必要に応じて 予備調査の対象者に対して関係資料その他予備調査を実施する上で必要な書類等の提出を求め又は関係者のヒアリングを行うことができる 5 予備調査委員会は 告発の受付から 30 日以内に その調査結果を研究倫理委員会に報告する 6 研究倫理委員会は その調査結果を最高管理責

別紙 答申 1 審査会の結論 委託事業者の企画提案書 及び 選考会議の資料 について行われた部分公開の決定は 妥当である 2 異議申立ての趣旨 (1) 異議申立人 ( 以下 申立人 という ) は 神戸市情報公開条例 ( 以下 条例 という ) に基づき 以下の公開請求 ( 以下 本件請求 という

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

〔問 1〕 抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

総務省が所管する地方税法ではなく 財務省が所管する国有財産法の適用を受けるとのことであり 実施機関の本件決定は失当である (2) 本件は 国税庁からの教示による公文書公開請求であり これを実施機関が非公開決定するとは言語道断である (3) 尖閣諸島の国有化は 日本と中国の外交問題に発展していることも

Ⅱ. 法第 3 条の 2 等の適用についての考え方 1. 法第 3 条の2 第 1 項の考え方について本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の 2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

日税研メールマガジン vol.111 ( 平成 28 年 6 月 15 日発行 ) 公益財団法人日本税務研究センター Article 取締役に対する報酬の追認株主総会決議の効力日本大学法学部教授大久保拓也 一中小会社における取締役の報酬規制の不遵守とその対策取締役の報酬は ( 指名委員会等設置会社以

                       H18

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

Transcription:

裁判年月日平成 20 年 9 月 26 日裁判所名神戸地裁裁判区分判決事件番号平 18( ワ )1670 号 平 18( ワ )2415 号事件名損害賠償請求事件 談合疑惑報道事件 裁判結果 平成 18 年 ( ワ ) 第 1670 号損害賠償請求事件 ( 第 1 事件 ) 平成 18 年 ( ワ ) 第 2415 号損害賠償請求事件 ( 第 2 事件 ) 兵庫県南あわじ市 以下省略 原告 ( 第 1,2 事件 ) X( 以下 原告 という ) 同訴訟代理人弁護士小西隆同田邉信好同訴訟復代理人弁護士松本隆行同白子雅人兵庫県南あわじ市 以下省略 被告 ( 第 1,2 事件 ) Y1( 以下 被告 Y1 という ) 兵庫県南あわじ市 以下省略 同 Y2( 以下 被告 Y2 という ) 上記両名訴訟代理人弁護士小田耕平同伊藤明子同戸谷嘉秀同貞本幸男大阪市 以下省略 被告 ( 第 2 事件 ) 株式会社毎日放送 ( 以下 被告毎日放送 という ) 同代表者代表取締役 A 同訴訟代理人弁護士前川宗夫同松尾吉洋 主文 1 被告毎日放送は, 原告に対し,100 万円及びこれに対する平成 17 年 9 月 13 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 原告の被告毎日放送に対するその余の請求を棄却する 3 原告の被告 Y1 及び同 Y2 に対する請求をいずれも棄却する 4 訴訟費用は, 原告に生じた費用の 20 分の 1 と被告毎日放送に生じた費用の 10 分の 1 を被告毎日放送の負担とし, 原告及び被告毎日放送に生じたその余の費用と被告 Y1 及び同 Y2 に生じた費用を原告の負担とする 5 この判決は,1 項に限り, 仮に執行することができる 事実及び理由第 1 原告の請求 1 第 1 事件被告 Y1 及び同 Y2 は, 原告に対し, 連帯して 1000 万円及びこれに対する平成 17 年 9 月 13 1

日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 第 2 事件 (1) 被告 Y1, 同 Y2 及び同毎日放送 ( 以下, この 3 被告を指して 被告ら という ) は, 原告に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 17 年 9 月 13 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え (2) 被告らは, 連帯して, 読売新聞淡路版朝刊に, 別紙 1 記載の謝罪広告を, 別紙 2 の記載条件で 1 回掲載し, かつ被告毎日放送が午後 6 時からの時間帯に放映する番組 に別紙 1 記載の謝罪広告の全内容を放送せよ 第 2 事案の概要被告 Y1 及び同 Y2( 以下, 両被告を指すときは, 被告 Y1 ら という ) は, 兵庫県南あわじ市に合併する前の兵庫県三原郡南淡町 ( 以下 旧南淡町 という ) で町長を務めていた原告について, 談合に関与した疑いがあるなどとして住民監査請求を行った上で, これを記者会見で発表し, また, 被告毎日放送は, 同住民監査請求に関するテレビ報道を行った ( 当事者間に争いがない事実 ) 第 1 事件は, 原告が, 被告 Y1 らが行った上記記者会見によって名誉を毀損されたとして, 被告 Y 1 らに対し, 不法行為 ( 民法 709 条,710 条,719 条 ) に基づき, 連帯して 1000 万円及びこれに対する平成 17 年 9 月 13 日 ( 不法行為の日 ) から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 第 2 事件は, 原告が, 被告 Y1 らと共同して被告毎日放送が行った上記テレビ報道によって名誉が毀損されたとして, 被告らに対し, 不法行為 ( 民法 709 条,710 条,719 条,723 条 ) に基づき, 連帯して 1000 万円及びこれに対する平成 17 年 9 月 13 日 ( 不法行為の日 ) から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払並びに謝罪広告の掲載及び謝罪放送を求めた事案である 1 争いのない事実及び証拠等によって容易に認定できる事実 ( 証拠等により認定した事実については末尾に証拠を掲記する ) (1) 当事者ア原告は, 南あわじ市の住民であり, 平成 17 年 1 月 10 日まで旧南淡町の町長を務めていた イ被告 Y1 は, 南あわじ市の住民であり, 平成 17 年 9 月 13 日当時, 南あわじ市の一部住民グループで構成された目安箱市民会議の事務局長であった 被告 Y2 は, 南あわじ市の住民であり, 平成 17 年 9 月 13 日当時, 上記目安箱市民会議のメンバーであった 被告毎日放送は, ニュース, スポーツ, 娯楽その他各般の番組を編集して放送することを目的とする株式会社である (2) 事実経緯等ア被告 Y1 らを中心とする旧南淡町の住民 ( 下記 ( ア ) について合計 222 名, 下記 ( イ ) について 223 名 ) は, 南あわじ市監査委員に対し, 平成 17 年 9 月 13 日, 以下の内容の住民監査請求 ( 地方自治法 242 条 1 項 ) を行った ( 以下, 合わせて 本件各監査請求 という ) ( ア ) 旧南淡町では, 原告が以前社長を務めていた株式会社 a( 以下 a 社 という ) が, 同町発注の公共工事の 44 パーセント以上を請け負っている他, 原告の親族らや a 社の元従業員の関連企業である b 株式会社 ( 以下 b 社 という ),c コンストラクション株式会社,d 開発株式会社,e 土建株式会社,f 建設株式会社及び g 建設株式会社が, 平成 16 年度発注分の公共工事の 78. 1 パーセントを請け負っている 原告の関連企業である上記 7 社が, 平成 13 年度から平成 16 年度にかけて落札 ( 随意契約を含む ) した公共工事の落札率 ( 落札価格の予定価格に占める割合 ) の平均は, 予定価格の 98 パーセントである これに対し, 兵庫県の公共工事の落札率の平均は, 予定価格の 86.9 パーセントである また, 上記各関連企業が行った指名入札については, 各社の入札価格がそれぞれ相互に近接してい 2

るという特色がある 同町は, 公共工事の入札に当たって予定価格を事前公表していなかったのであるから, 仮に, 自由競争による入札が行われていたなら, 上記各関連企業による落札価格は, 兵庫県の公共工事の落札価格と同程度である予定価格の 86.9 パーセント前後になるはずであった これらの経過からすれば, 上記関連企業が, 原告ら同町の関係者から予定価格などの入札情報の提供を受けたり, 相互に談合を繰り返していたことが想起され, そうでなければ, 予定価格の 98 パーセントという高率で落札され続けるという事態が生じるはずがない その結果, 旧南淡町は, 少なくとも兵庫県の公共工事の落札価格の予定価格に占める割合である 8 6.9 パーセントと, 上記関連企業 7 社の受けた公共工事における落札価格の予定価格に占める割合との差に相当する 11.1 パーセント前後の割合による損害を被ったことになり, その損害の総額は 16 億 5944 万 1000 円を下らない よって, 請求人は, 監査委員に対し, 同町の損害を確認の上, 入札参加業者, 落札業者などの責任を有する者に損害賠償を求めるよう, 南あわじ市長に勧告することを求める ( 以下 本件 1 監査請求 という ) ( イ ) 旧南淡町は, 平成 13 年 11 月から平成 14 年 8 月までの間, 福良浄化センター建設用地の先行取得として,a 社や h 採石株式会社が所有していた土地と建物 ( 以下 本件不動産 という ) を, 周辺土地の時価である 1 平方メートルあたり 2 万円ないし 4 万円の数倍に相当する,1 平方メートルあたり 7 万 5000 円ないし 9 万円という著しい高額で取得した 上記先行取得は, 旧南淡町の公共用地先行取得特別会計に基づくものであるが, 上記のような高額で本件不動産を先行取得しなければならない合理的理由を見出すことができず, 時価を超える先行取得費を支出したことは明らかに違法な公金の支出に該当する 上記公金を支出した旧南淡町町長, 支出手続担当者及び本件不動産の売主は, 上記違法な支出により旧南淡町が被った損害を賠償する責任がある なお, 上記公金の支出は, 本監査請求より 1 年以上前に行われたものであるが, 先行取得費の総額は明らかにされたものの, 本件不動産毎の取得価格は明らかにされなかったことから, 請求人は, 取得価格が周辺土地の数倍も高額であることを客観的に知り得なかったものであり, 本監査請求が公金支出後 1 年を経過してされたことには正当な理由がある よって, 請求人は, 監査委員に対し, 本件不動産の売主, 原告, 同先行取得に関する支出手続担当者に利得の返還を求めるよう, 南あわじ市長に勧告することを求める ( 以下 本件 2 監査請求 という ) イ被告 Y1 らは, 本件各監査請求書の提出後, 同日中に, 同請求書の写しを朝日 毎日 読売 産経 神戸の各新聞社 ( 以下 本件各新聞社 という ) に配布の上, 南あわじ市三原公民館において, 本件各新聞社の記者出席の下, 本件各監査請求書の内容を朗読するなどして記者会見を行った ( 以下 本件記者会見 という ) これを受けて, 本件各新聞社は, 翌 14 日付けの朝刊に, それぞれ本件各監査請求に関する記事を掲載した ウ被告毎日放送は, 平成 17 年 9 月 13 日午後 6 時 23 分から同 27 分にかけて, という主題で特集を組み, 別表放送内容一覧記載のとおりの放送を行った ( 以下 本件放送 といい, 個別の放送部分は同別表記載の番号で特定する また, 本件記者会見と合わせて 本件各行為 ということがある ) エ本件 2 監査請求は, 平成 17 年 9 月 29 日, 同請求に係る平成 13 年度及び平成 14 年度の用地等取得から住民監査請求期間である 1 年を徒過しており ( 地方自治法 242 条 2 項本文 ), また, 同期間内に住民監査請求をなさなかったことに正当な理由はないとして ( 同項但書 ), 却下された ( 南あ監査第 46 号 ) ( 乙 6) オ本件 1 監査請求は, 平成 17 年 10 月 13 日, 談合行為が存在したとの事実が請求人の推定にすぎないとの理由によって却下された ( 南あ監査第 74 号 ) ( 乙 4) 2 争点に対する当事者の主張 (1) 被告らによる本件各行為の名誉毀損性の有無 3

ア本件記者会見について 原告の主張 被告 Y1 らは, 本件各監査請求書の写しを本件各新聞社に配布した上で本件記者会見を行い, 同記者会見において, 自らあるいは代理人弁護士らをして, 本件各監査請求書記載の内容を読み聞かせるとともに, 当時の X 南淡町町長 ( 原告 ) らが, その関連企業などと官製談合を繰り返した疑いが濃い, X 前南淡町町長らが, 福良浄化センター建設に際して, 同人の関連企業などから買収した土地約 1 万 2 千平方メートルについても, 二, 三倍の高額で購入された ( 甲 3 の 4), 旧南淡町において, 行政の私物化がなされていたが, 行政の私物化はきちんと見直す必要がある ( 甲 3 の 3) などと発言した このように, 特定の者に対して示された表現行為であっても, その相手方が報道記者であって, 他人に伝播する可能性がある以上は公然性があるといえる そして, 本件記者会見及びそれに基づく本件各新聞社による報道は, 原告が, 官製談合という違法行為 ( 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律 2 条 5 項 3 号, 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 3 条,89 条 1 項参照 ) に関与し, また, 原告の関連会社から不当に高額の土地買収を行い, 旧南淡町に損害を与えたとの事実を摘示するものであったから, 原告の社会的評価を著しく低下させるものであって, 原告に対する名誉毀損行為に該当する 現実に, 平成 17 年 9 月 14 日付け毎日新聞には X 前町長 と実名摘示の上, 官製談合の疑いがあるとして 住民監査請求をした と ( 甲 3 の 2), 同日付け産経新聞には 当時の X 町長 と実名摘示の上, 官製談合を疑わせる不自然な形で公共工事を発注した として 住民監査請求書を 提出した と ( 甲 3 の 4), 同日付け読売新聞には 旧南淡町 町長 と同地域の住民にとっては事実上原告とわかる摘示をした上, 同町長が以前社長を務めていた建設会社など関連 7 社が談合を繰り返して落札価格をつり上げ, 損害を与えた, 町の関係者から予定価格の情報提供を受けたり, 相互に談合を繰り返していることを想起させる とし と ( 甲 3 の 3), それぞれ記載されており, 原告の名誉が実際に著しく毀損されたことは明らかである 被告 Y1 らの主張 被告 Y1 らは, 本件記者会見において, 代理人弁護士に本件各監査請求書の内容を説明, 解説させたにすぎず, そこで摘示された事実の内容は, 本件各監査請求書や添付の事実証明書の内容そのものである そして, 本件 1 監査請求は, 原告の関連会社が不正に入札情報の提供を受けたり, 相互に談合を繰り返していたことが想起されたことに基づき, それによる旧南淡町の損害の有無を監査委員において確認した上, 入札参加者等に対してその賠償を求めることについて, 本件 2 監査請求は, 旧南淡町における公共用地の先行取得に関し, 違法な公金の支出が行われたとして, 原告等に対して旧南淡町の損害の返還を求めることについて, それぞれ南あわじ市長に対する勧告を求めたものであるから, 原告が違法な行為を行ったとの事実を摘示したものではない これに対し, 原告は, 本件記者会見において原告が違法な行為を行った事実を摘示されたと主張するが, 被告 Y1 らが本件各監査請求で主張した事実は上記のとおりであって, 違法行為の主体を原告に限定した事実はなく, 首長 ( 原告 ) ら同町の関係者 との表現を用いたのは, 住民監査請求における慣用にならったものにすぎない 加えて, 住民監査請求制度が, 地方自治における住民参加の制度であり, 公共性に関わる事実に関する制度であることからすれば, 訴訟を提起する場合等に比べ, 名誉毀損事実の有無や内容は自ずと異なってくるというべきであるから, 本件各監査請求書の記載事実の説明 解説が, 不法行為としての名誉毀損行為に該当することはない したがって, 被告 Y1 らに原告に対する名誉毀損は成立しない イ本件放送について 原告の主張 ( ア ) 被告毎日放送に対してテレビ報道の内容が人の社会的評価を低下させるか否かは, 一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕 4

方とを基準として判断するのが相当であり, 特にテレビの場合は新聞報道とは異なり, 音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるのであり, 番組の全体的構成, 登場人物の発言内容, フリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきで, 映像の内容, 効果音, ナレーション等の全体像から受ける印象等を総合考慮して判断されるべきである ( 最高裁平成 15 年 10 月 16 日第一小法廷判決 民集 57 巻 9 号 1075 頁参照 ) しかるところ, 本件放送は, 被告 Y1 らの発言を何ら検証することもなくそのまま放映している上, 原告が不正を行ったとの事実を断定的に表現している また, 報道は, 伝聞や風評という形式でなされる場合が多いが, その場合の摘示事実は, 伝聞や風評の存在ではなく, 伝聞や風評の内容そのものである ( 最高裁昭和 48 年 1 月 18 日第一小法廷判決 刑集 22 巻 1 号 7 頁参照 ) この点からしても, 本件放送で摘示された事実は, 談合の疑惑の存在ではなく, 談合の事実そのものである なお, 被告毎日放送は, 本件放送の報道対象は, 原告ではなく, 原告のファミリー企業である旨主張するが, あえて原告の実名を放送していること, X 前町長 ( 原告 ) のファミリー企業 という表現を繰り返し使用していること, 同ファミリー企業の者ではなく原告の弁明を放送していることから, 原告を談合疑惑の中心に置いていることは明らかであるし, 被告毎日放送の記者で本件放送に携わった B 記者 ( 以下 B という ) も, その証言において, 原告を疑惑の中心として本件放送にかかる取材 編集を行ったことを認めている しかも, 上記ファミリー企業という表現自体が, 情実, 不正, 利権 といった印象を与えるもので, 一般人に対し, 原告が中心となってその人的 資金的関係の深い企業と共謀して不正を行っているという認識を与えるものである したがって, 本件放送は, 一般視聴者における普通の注意と視聴の仕方を基準とすると, 原告が, a その人的 資金的関係が深い企業に対して, 情実によってこれに利益を得させ又は見返りを得る目的で, 予定価格などの入札情報提供を繰り返していた b その人的 資金的関係が深い企業に対して, 情実によってこれに利益を得させ又は見返りを得る目的で, 約 2 億 8000 万円の 税金 がつぎ込まれた平成 14 年 2 月 28 日付企業誘致開発事業用地造成工事 ( 以下 本件造成工事 という ) において予定価格などの入札情報を漏洩した c その人的 資金的関係が深い企業と共謀して, 批判的な言動をする住民に対して不当な圧力を加えていたとの事実を摘示したものであって, これらは原告の社会的評価を著しく低下させるものであるから, 被告毎日放送の原告に対する名誉毀損行為に該当する ( イ ) 被告 Y1 らに対して被告 Y1 らは, その意図に沿った内容のテレビ放送が行われることを目論み, 被告毎日放送に情報提供を行い, 自らの言動を収録させるなど, 本件放送に主体的 能動的に関与したものであるから, 本件放送による名誉毀損について, 被告毎日放送と共同不法行為責任を負う 被告毎日放送の主張 ( ア ) テレビ放送においていかなる事実が摘示されたかは, 登場人物の発言内容や文字情報の内容などの言語による表現を重視すべきところ, 本件放送は, 原告が談合への関与を否定しているというナレーション以外, 原告を主語とした表現を用いていない したがって, 本件放送は, そもそも原告を報道対象としていないのであるから, 原告に対する名誉毀損は成立しない ( イ ) 仮に, 原告が本件放送の報道対象に当たるとした場合であっても, 本件放送は, ある自治体において, その住民が談合の疑惑があると主張して住民監査請求を行ったという報道であり, 談合の存在自体を断言したものではないし, 同時に, 談合への関与を否定する原告側の主張も放送している このような報道が, 報道対象の名誉を毀損することはない ( ウ ) これに対し, 原告は, テレビ放送の特殊性を挙げ, 本件における摘示事実は, 原告が人的つながりのある企業に対して入札情報を漏洩するなどの不正行為を繰り返していたとの事実や, 原告が旧南淡町の住民に対して不当な圧力を加えていた事実であるなどと主張する 5

しかし, テレビ放送においても, 印象そのものではなく言語による表現が重視されるべきことは前述のとおりであって, 原告の主張するところは, 単に原告が受けた印象にすぎない 被告 Y1 らの主張 本件放送による原告に対する名誉毀損の成立及び被告 Y1 らの責任はいずれも争う (2) 本件各行為の違法性阻却事由の有無ア本件記者会見について 被告 Y1 らの主張 ( ア ) 仮に, 本件記者会見によって原告の名誉が毀損されたとしても, その違法性については, それが住民監査請求手続の中で行われたものとして判断されねばならない そして, 本件各監査請求にかかる事実のように, 公共の利害に関する事実については, 表現行為がもっぱら公益を図る目的に出た場合には, 摘示された事実が真実であることが証明されたときは, その行為には違法性がなく, 不法行為は成立しない ( イ ) 被告 Y1 らは, 旧南淡町において行政が私物化されていた状況を受けて, 南あわじ市への合併を機に, 税金の使途を見直すことを目的として本件各監査請求を行った そして, 事前に新聞記者から住民監査請求の折りには記者会見を開催するよう要請を受けていたことに応え, 本件各監査請求書の内容を代理人弁護士にわかりやすく解説してもらうことによって, 南あわじ市の住民に新しい市政への参加 関心を呼び起こそうとしたものである したがって, 本件記者会見は公益を図る目的で行われたものといえる なお, 本件 2 監査請求が住民監査請求期間を徒過したのは, 先行取得にかかる用地ごとの取得価格が情報開示条例に基づいて初めて開示され, それまで住民が請求の基礎となる事情を客観的に知り得なかったからであり, 被告 Y1 らは, 正当な理由 ( 地方自治法 242 条 2 項但書 ) はあったと考えていた その他, 被告 Y1 らの目的に関する原告の主張は, いずれも同目的の公益性を否定する理由とならない ( ウ ) そして, 被告 Y1 らが本件記者会見で公表したのは本件各監査請求書の記載内容, すなわち,1a 社とその関連会社が, 旧南淡町における平成 16 年度発注の公共工事の 78.1 パーセントを請け負っていること,2 同関連会社の落札価格の平均が予定価格の 98.0 パーセントであること,3 入札価格が近接し, ばらつきがないこと,4 旧南淡町では, 予定価格の事前公表が行われていないこと,5 旧南淡町における本件不動産の取得価格は,1 平方メートルあたり 7 万 5000 円ないし 9 万円であったこと,6 本件不動産の周辺土地の時価は,1 平方メートルあたり 2 万円ないし 4 万円であったこと,7 被告 Y1 らは, 上記事実に基づくと談合が想起されるとして本件各監査請求を行ったことであり, これらはいずれも真実である ( エ ) 仮に, 原告の主張するように,1 原告が, 人的つながりのある企業に対して, 入札情報を漏洩するなどの不正行為を繰り返していたこと,2 原告が, 人的つながりのある企業から本件不動産を不当に高額で先行取得し, 違法な公金支出を行ったことが真実性の証明対象事実であったとしても, これらの事実は, 以下のとおり, 証明可能な程度に真実である a 本件 1 監査請求について落札率は, 談合しているかどうかを判断するための基準になり, 落札率が高いほど談合の疑いは強いといえ ( 乙 9,10), 予定価格の 97 パーセントを超える入札は, 通常, 自由競争において, 真実, 工事の受注を希望しての入札であるとは考え難い ( 金沢地方裁判所平成 17 年 5 月 16 日判決 乙 12) しかるに, 被告 Y1 らが情報公開条例に基づく開示請求や商業登記簿謄本等信頼性の高い資料から得られた本件 1 監査請求書記載の事実に照らせば,a 社を始めとする入札業者が, 原告ら旧南淡町の関係者から予定価格などの入札情報を受けるなどして, 入札業者間で, 本命業者に落札させる旨の合意を形成し, その合意に基づいて各業者が入札したという事実は, 極めて高い蓋然性をもって証明することが可能な程度に真実である なお, 原告は, 本件 1 監査請求書に記載された兵庫県の落札率に誤りがある旨主張するが, 上記のとおり, 談合が疑われる根拠としては旧南淡町における平均落札率が 98 パーセントであることだけ 6

で十分であり, 兵庫県の落札率は, 損害額の概数を記載するためにすぎないから, 原告の上記主張は, 本件における名誉毀損の成否には関係しない b 本件 2 監査請求について被告 Y1 らの調査によれば, 旧南淡町が本件不動産を先行取得した価格は, 平成 13 年から平成 1 4 年にかけての同土地の周辺時価 ( 路線価 ) の二, 三倍もの高額であった 上記事実から, 旧南淡町に損害が発生したことは, 証明することが可能な程度に真実である 原告の主張 ( ア ) 以下の諸事実にかんがみれば, 本件記者会見が, 被告 Y1 らの利己的な意図に基づき, ひとえに原告の社会的評価を低下させるためにされたものであって, 公益を図る目的が存しないことは明らかである a 被告 Y1 らは, 本件 1 監査請求の根拠として, 旧南淡町の公共工事における落札率の高さを問題とする しかし, 被告 Y2 が市議会議員を務める南あわじ市における落札率は平均 98.01 パーセント, 南あわじ市合併前の西淡町における平成 13 年度ないし平成 16 年度の平均落札率は 96.8 パーセント, 同三原町における平成 13 年度ないし平成 16 年度の平均落札率は 96.56 パーセント, 同緑町における平成 15 年度及び平成 16 年度の平均落札率は 93.44 パーセントで ( 甲 10 の 2 ないし 8), いずれも水準はほぼ同じであるところ, あえて旧南淡町のみを問題とした点について, 被告 Y1 らから合理的な説明はない 被告 Y1 らが, いずれも住民ではなかった旧南淡町の入札について本件各監査請求や本件記者会見を行ったのは, 同人らが同記者会見の翌月に行われた南あわじ市市議会議員選挙に立候補していること ( 甲 35,36) を併せ勘案すると, 原告の社会的評価を低下させるセンセーションを巻き起こして, 市政浄化を図る自らのイメージの獲得を目指した疑いが濃厚であり, 恣意的で利己的な意図 目的に出たものというべきである b 本件 2 監査請求は, 住民監査請求期間を明らかに徒過した後になされたものであるところ, 被告 Y1 らの主張によっても, 何らその正当性は基礎付けられていない c 被告 Y1 らの代理人の一人である小田耕平弁護士 ( 以下 小田弁護士 という ) は, 南あわじ市の顧問弁護士をも務めており, 本来であれば, 同市の代理人として本件各監査請求に対する対応をとらねばならない立場にある それにもかかわらず, 同弁護士は,B に対し, その提起前に本件各監査請求の情報を提供した d 被告 Y1 らは, 合計 222 名ないし 223 名の署名を集め, 弁護士に依頼の上で本件各監査請求を行い, 記者会見及びテレビ放映まで行っておきながら, その却下後, 住民訴訟を提起していない e 被告 Y2 は, 自らが代表取締役を務める企業が行った工事によって, 南あわじ市議会議員政治倫理条例 12 条 2 項違反に問われている ( 甲 25) ( イ ) 本件における真実性の証明対象事実は,1 原告が, 人的つながりのある企業に対して, 入札情報を漏洩するなどの不正行為を繰り返していたこと, 及び 2 原告が, 本件不動産を, 人的つながりのある企業から不当に高額で先行取得し, 違法な公金支出を行ったことである なお, 上記 1 の前提として, 談合が存在しなければ原告にそのような非難は生じ得ないから, 談合が存在したことの証明も必須である これらについて真実であることが被告 Y1 らによって証明されない以上, 被告 Y1 らの行為の違法性が阻却されることはない しかるに, そもそも旧南淡町において談合の事実はないし, 旧南淡町において, 公共工事の入札に関する決裁権者は助役であったから ( 甲 21), 原告が談合に関与したとは疑いようがない さらに, 本件 1 監査請求書に原告の関連企業として記載されている会社のうち,a 社と b 社を除く会社は, 原告の関連企業といえるようなものではない なお, 被告 Y1 らは, 本件 1 監査請求書において, 兵庫県の平均落札率を 86.9 パーセントとしているが, その算出根拠には合理性がない また, 本件不動産の先行取得価格は, 不動産鑑定評価書 ( 甲 14) に基づいて適正に定められたものであり, これが著しく高額であったとの事実は虚偽である 7

イ本件放送について 被告毎日放送の主張 ( ア ) 本件放送が, 公共の利害に関する事実について, もっぱら公益を図る目的でされたことは明らかである ( イ ) 本件放送の目的は, 旧南淡町の住民が同町で談合疑惑があると主張して本件 1 監査請求を行ったことを伝えることにあったから, 真実性の証明対象事実は, 談合疑惑があると主張して, 住民が住民監査請求を行ったことであり, 同事実が真実であることには争いがない ( ウ ) 仮にそうでなくとも, 本件放送は, 談合が存在するとの断定的表現を一切用いていないから, 真実性の証明対象事実は, 疑惑の存在というべきである また, 本件放送は, 旧南淡町の住民が 談合の疑惑が存在する と主張している事実を明確にとり上げたものであるから, 伝聞や風評の形で事実を摘示する報道と同視することはできない そして, 住民らは, 情報公開条例に基づく請求証拠, 議会議事録等, 社会通念上信頼性のある資料を収集の上, 本件各監査請求に及んだのであるから, 談合の存在について合理的疑惑が存在することは明白である ( エ ) 仮に, 原告の主張するように, 談合の存在及びこれに対する原告の関与が真実性の証明対象事実であったとしても, 被告 Y1 らが主張するとおり, 本件各監査請求に当たって被告 Y1 らが収集した証拠ないし情報によれば, 談合及びこれに対する原告の関与の事実が真実であることは強く推認されるというべきである 原告の主張 前記 (1) イ 原告の主張 のとおり, 本件放送は, 字幕, 音声, 演出等を総合すると, 一般の視聴者が普通の注意を持って見た場合に, 原告が, 1 その人的 資金的関係が深い企業に対して, 情実によってこれに利益を得させ又は見返りを得る目的で, 予定価格などの入札情報提供を繰り返していた 2 その人的 資金的関係が深い企業に対して, 情実によってこれに利益を得させ又は見返りを得る目的で, 約 2 億 8000 万円の 税金 がつぎ込まれた本件造成工事において予定価格などの入札情報を漏洩した 3 その人的 資金的関係が深い企業と共謀して, 批判的な言動をする住民に対して不当な圧力を加えていたとの事実を摘示したものである したがって, 上記事実が真実であることが証明されない以上, 本件放送の違法性が阻却されることはない (3) 被告らの有責性の有無ア本件記者会見について 被告 Y1 らの主張 仮に, 被告 Y1 らの摘示した事実が真実であると証明されないとしても, 同被告らにおいて, その事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには, 同被告らには故意又は過失がないこととなり, 名誉毀損は成立しない 前記 (2) ア 被告 Y1 らの主張 のとおり, 高い落札率はそれだけで談合の存在を疑わせる資料となるものであり, さらに, 被告 Y1 らは, 前記金沢地裁の判決 ( 乙 12) を参考に, 情報公開条例に基づく請求や法人登記簿謄本, 不動産登記簿謄本, 議会や委員会の議事録, インターネットなどによって得られた資料から十分な調査を行ったものであるから, 同摘示事実を真実であると信じるについて相当の事由があったというべきである 原告の主張 本件 1 監査請求にあたり, 被告 Y1 らの主張する一見高率に見える落札率は, 談合等の行為を推定させるものではなく ( 甲 5 ないし 8 参照 ), 他に談合の存在を推定させる資料はない なお, 原告が引用する金沢地裁の裁判例は, 本件のような官製談合にまで射程が及ぶものではない上, 名古屋高裁金沢支部での控訴審において, 談合が認定できないとして取り消されており ( 同庁平成 19 年 1 月 1 8

5 日判決 甲 9), 先例としての力を有しない 仮に, 被告 Y1 らが提出する資料から談合の存在が推定されるとしても, それは原告が談合に関与したことを推定させるものでは有り得ない 本件 2 監査請求にあたり, 住民監査請求期間内に周辺土地との価格の比較がなしえなかったとはいえず ( 乙 6), そもそも, その取得価格については, 当該土地の鑑定を経た上, その結果を踏まえて町議会の議決を経て買収したものである その不動産鑑定書 ( 甲 14) は公文書公開請求によって容易に入手, 検討できるものであったのに, 被告 Y1 らはこのような検討を一切行っていない 以上の事実に加え, 前記 (2) ア 原告の主張 にも照らせば, 被告 Y1 らにおいて, 本件記者会見で摘示された事実を真実と信じたとしても, そのことに相当な事由はない イ本件放送について 被告毎日放送の主張 ( ア ) 仮に, 真実性の証明対象事実が談合の存在であったとしても, 被告毎日放送には, これを真実と信じるに足りる相当な理由があったというべきである 被告毎日放送の B は, 小田弁護士から本件各監査請求書の案を入手し, 同請求書案について伊藤明子弁護士 ( 以下 伊藤弁護士 という ) から資料の提示とともに詳細な説明を受けた上で, 被告 Y 1 らや旧南淡町の住民に対するインタビュー及びカメラ取材を行った 被告毎日放送は, 上記調査で得られた情報が客観的な資料に依拠したものであったことから, その内容が合理的であると判断したものであり, これを真実と信じるに足りる相当な理由があったといえる ( イ ) また, 仮に真実性の証明対象事実が談合疑惑の存在であったとしても, 上記の理由で被告毎日放送が疑惑の存在を信じたことにつき相当な理由があったというべきである なお, 報道機関は, 提訴や住民監査請求の申立ての事実を報道するにあたっては, それらが濫訴の類に属さず, 法律の専門家たる弁護士の検討を経た結論に相当程度の合理性があるといえる場合には, それ以上独自の調査を義務付けられることはないというべきである 原告の主張 テレビ放映という形式でなされた名誉毀損の程度は比類なく深刻であり, 被告毎日放送の調査能力は一般人と比べて格段に高いのであるから, 相当性の有無の判断も厳格となる ところが, 被告毎日放送は, 本件記者会見と同日である平成 17 年 9 月 13 日午後 6 時 23 分から本件放送を行ったものであり, 同報道にあたっては, 被告 Y1 らの情報のみに依拠し, 独自の裏付け調査を全く行っていない そもそも, 本件各監査請求は官公庁情報に取材源をおく場合とは異なるから, 報道機関は, その報道に当たって独自に裏付け調査を行う義務を免れるものではないし, 被告毎日放送が依拠する被告 Y 1 らの提出資料も, 何ら談合の存在や同談合への原告の関与を裏付けるものではない 現に, 朝日新聞社や神戸新聞社は, 談合の疑いについて言及するも, 原告の関与を示唆するような報道はしていない また, 被告毎日放送が, 住民グループは, 第 2 弾, 第 3 弾の談合疑惑を追及していきたいとしています と放送し, 何重にも疑惑を煽りつつ, その後に何の報道も行わなかったのは相当な資料, 根拠に基づかない報道を行ったことの証左でもある したがって, 本件放送に当たっての被告毎日放送の注意義務違反は明らかであり, 被告毎日放送において, 本件放送で摘示された事実を真実と信じたとしても, そのことに相当な事由はない (4) 原告の損害の有無及び損害額並びに謝罪広告 謝罪放送の要否 原告の主張 本件記者会見, それに基づく本件各新聞社の新聞報道及び本件放送によって, 多数の旧南淡町民が, 既に原告が逮捕されたのではないかなどとの印象 感銘を受け, 原告宅に駆けつけてくるなど大きな反響を呼んだのであり, 原告の妻は婦人会等の世話役を辞めざるを得ず, 原告の実母も外出を控えざるを得ない状況となった このような事実から明らかなように, 原告は, 被告らの名誉毀損行為によって, 著しく社会的評価 9

を低下させられ, 甚大な被害を被った 原告の上記損害に対する慰藉料は, 本件記者会見及び本件放送の各行為について, それぞれ 1000 万円を下らない さらに, 本件放送による侵害の甚大性にかんがみれば, 読売新聞淡路版朝刊に, 別紙 1 記載の謝罪広告を, 別紙 2 の記載条件で 1 回掲載し, かつ被告毎日放送が午後 6 時からの時間帯に放映する番組 に別紙 1 記載の謝罪広告の全内容を放送させることが相当である 被告らの主張 否認ないし争う 第 3 当裁判所の判断 1 争点 (1)( 被告らによる本件各行為の名誉毀損性の有無 ) について (1) 本件記者会見についてア ( ア ) 被告 Y1 ら及びその代理人弁護士が, 本件記者会見において, 本件各監査請求書の写しを交付し, その内容を朗読, 解説するなど, 同請求書の記載に沿った発言をしたことは当事者間に争いがない なお, 被告 Y1 ら代理人弁護士の発言は, 被告 Y1 らの代理人として発言しているものと認められるから, その発言内容も含めて, 被告 Y1 らの発言の名誉毀損性を判断するのが相当であると解される したがって, 以下, 本件記者会見における被告 Y1 らの発言とその代理人弁護士の発言とは, 特に区別することなく, 全て被告 Y1 らの発言として説示する ( イ ) この点について, 原告は, 新聞記事 ( 甲 3 の 3,3 の 4) を引用して, 被告 Y1 らは, 上記発言に加え,1 当時の X 南淡町町長 ( 原告 ) らが, その関連企業などと官製談合を繰り返した疑いが濃い,2 X 前南淡町町長らが, 福良浄化センター建設に際して, 同人の関連企業などから買収した土地約 1 万 2 千平方メートルについても, 二, 三倍の高額で購入された,3 旧南淡町において, 行政の私物化がなされていたが, 行政の私物化はきちんと見直す必要がある などと発言した旨主張する そこで検討するに, 上記 1,2 の発言内容は, 本件各監査請求書の記載と同旨であり, 新聞記事の記載内容からも, 概ねそのような趣旨の発言がなされたと認められる また, 上記 3 の発言は, 本件各監査請求書に記載がないけれども, 新聞記事において, 代理人弁護士の発言として 付きで記載されており, 被告 Y1 ら自身, 本件各監査請求を行った契機として本訴でも主張しているところであるから, そのような趣旨の発言がなされたものと認められる ( ウ ) したがって, 被告 Y1 らは, 本件記者会見において, 本件各監査請求書の内容を朗読し, 同監査請求書の記載に沿った説明を行った他, 上記 1 ないし 3 の発言をしたことが認められる そして, 本件記者会見の全体を通じてその発言内容をみれば, 上記 1 及び 2 の発言は, 本件各監査請求書の説明の一環として述べられたものであり, 上記 3 の発言は, 代理人弁護士ないし被告 Y1 らが, 本件各監査請求書に記載された事実を基礎に意見を表明したものと認めるのが相当である イ ( ア ) 本件記者会見が人の社会的評価を低下させるか否かについては, 一般人の普通の注意と受け取り方とを基準として判断すべきものである ( 最高裁昭和 31 年 7 月 20 日第二小法廷判決 民集 10 巻 8 号 1059 頁参照 ) そして, 本件記者会見によって摘示された事実がどのようなものであるかという点についても, 一般人の普通の注意と受け取り方とを基準として判断するのが相当である ( 最高裁平成 15 年 10 月 1 6 日第一小法廷判決 民集 57 巻 9 号 1075 頁参照 ) 上記認定事実からすれば, 本件記者会見は, 全体として, 被告 Y1 らが, 1 原告の関連企業が, 原告を始めとする同町の関係者からの情報提供に基づき旧南淡町の公共工事について談合を繰り返していることが想起されるとして, 本件 1 監査請求を行った 2 原告が町長をしていた旧南淡町が, 原告の関連企業から本件不動産を周辺土地の時価の数倍という著しい高額で購入したことが違法な公金の支出に当たるとして, 本件 2 監査請求を行ったとの事実を摘示したものというべきである ( イ ) これに対し, 原告は, 本件記者会見において, 原告が官製談合に関与し, また, 人的つながりのある企業から本件不動産を不当に高額で先行取得し, 旧南淡町に損害を与えたとの事実が摘示されたと主張する 10

しかし, 本件記者会見は, 本件各監査請求がなされた当日に行われたものであり ( 前記第 2 の 1 (2) イ認定 ), 本件各新聞社による報道も, 上記 1,2 の内容で本件各監査請求がなされたと報じているのであって ( 甲 3 の 1 ないし 3 の 4), 上記報道に接した一般人の普通の注意と受け取り方を基準として判断すれば, 本件記者会見は, 被告 Y1 らが, 上記 1,2 の内容で本件各監査請求を行ったとの事実を摘示したにとどまると解するのが相当である また, 原告は, 本件各新聞社による報道等によって, 旧南淡町の住民は, この時点で旧南淡町町長が既に逮捕されたのではないかなどとの印象を受け, 多数の住民が原告宅に駆けつけてきた旨主張し, 供述する しかし, 本件各監査請求がなされた当日は, 本件記者会見の他に, 本件放送もされている ( 前記第 2 の 1(2) ウ認定 ) のであるから, 本件各新聞社による報道がどの程度影響を与えたかは必ずしも明らかではない上, 原告宅に駆けつけてきた人の多くは原告の知人ないし支援者であると推認されるから, 一般人の注意と受け取り方を基準とした上記の判断を左右する事情であるとは必ずしもいえない ( ウ ) 以上の点に加え, 本件各監査請求書の記載は, いずれも簡潔な内容であり, 問題とする談合及び違法な公金支出に関して, 行為主体を原告一人に断定していない上, 原告の行為ないし関与形態が具体的には示されていないことに照らせば, 同請求書の記載に沿った説明をもって, 原告が官製談合に関与したとの事実や, 原告が旧南淡町の町長としてことさらに高額の土地買収を行ったとの事実を摘示したものであると認めることは困難であり, 他にこれを認めるに足りる証拠はない ウもっとも, 本件記者会見における事実の摘示が上記のとおりであるとしても, 旧南淡町の公共工事に関して, 原告の関連企業の間で談合が行われたことが想起されるとして住民監査請求がされ, また, 旧南淡町において違法な公金の支出が行われたとして住民監査請求がされたことに加え, 行政の私物化があった旨の発言がされれば, 一般人の受け止め方として, 被告 Y1 らの主張が真実かどうかは最終的には監査委員の判断を待つ必要があると理解しつつも, 原告が, 旧南淡町において, 専断的な行政を行い, 自身の関連企業に情報を提供するなどして談合に関与し, また, 公金の支出に関して違法あるいは違法を疑わせる行為を行った可能性があるとの印象を持つ者が相当数いるものと考えられる この点, 被告 Y1 らは, 違法行為の主体を原告に限定した事実はなく, 本件各監査請求書の 首長 ( 原告 ) ら同町の関係者 との表現を用いたのは, 住民監査請求における慣用にならったものにすぎない旨主張するが, 表現の受け手としては, 代表として挙げられ, かつ, 旧南淡町の首長という立場にあった原告を主体と受け取るのが通常と考えられるから, 被告 Y1 らの主張は採用の限りではない そして, 町の公益の代表者たる町長において, 同町の公共工事について談合に関与することや, 公金を違法に支出することがおよそ許されざる行為であることにも照らせば, 本件記者会見は, 原告の社会的評価を低下させ, その名誉を毀損するものといえる (2) 本件放送についてアテレビ放送の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては, 一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきであり, テレビ放送によって摘示された事実がどのようなものであるかという点についても, 一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断するのが相当である そして, テレビ放送においては, 新聞記事等の場合とは異なり, 視聴者は, 音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるのであり, 録画等の特別の方法を講じない限り, 提供された情報の意味内容を十分に検討したり, 再確認したりすることができないものであることからすると, 当該テレビ放送により摘示された事実がどのようなものであるかという点については, 当該テレビ放送の全体的な構成, これに登場した者の発言の内容や, 画面に表示された字幕等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより, 映像の内容, 効果音, ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して, 判断すべきである ( 前掲最高裁平成 15 年 10 月 16 日第一小法廷判決参照 ) イこれを前提に, 前記第 2 の 1(2) ウで認定した本件放送の内容から, 本件放送においていかなる事実が摘示されたかについて検討を加える 11

( ア ) 談合及び同談合への原告の関与について a 原告は, 本件放送によって, 原告がその人的 資金的関係が深い企業に対して, 情実によってこれに利益を得させ又は見返りを得る目的で, 約 2 億 8000 万円の税金がつぎ込まれた本件造成工事等における予定価格などの入札情報提供を繰り返したとの事実が摘示された旨主張する これに対し, 被告毎日放送は, そもそも原告を報道対象としてはいないし, 本件放送は, ある自治体において, その住民が談合の疑惑があると主張して住民監査請求を行ったという報道である旨主張する b そこで検討するに, 本件放送は, 冒頭で 談合疑惑で住民監査請求 との字幕を出した上で ( 別表 1), 被告 Y1 ら住民グループが, 原告のファミリー企業が談合を繰り返し行った疑惑があると主張して住民監査請求を行うに至ったことを, 被告 Y1 らの視点から, 同被告らへのインタビューや本件造成工事現場の映像を交え, ドキュメント形式でまとめたものである ( 別表 1 ないし 14 参照 ) そして, 本件放送について, 前記アで説示した各要素を総合的に考慮して判断すれば, 旧南淡町において談合の事実があり, 原告がこれに関与したと断定した上で, 同事実を摘示したものとまでいうことはできないが, 単にある自治体の住民が談合の疑惑があるとして住民監査請求を行ったというだけではなく, 約 2 億 8000 万円の税金がつぎ込まれた本件造成工事等において原告の関与する談合の疑惑があり, 被告 Y1 らが同疑惑の存在を主張して住民監査請求を行ったとの事実を摘示したものということができる この点に関し, 本件放送は, その字幕やナレーション等を通常の意味に従って理解すれば, 原告のファミリー企業に談合の疑惑があることを述べたものといえ, 原告が談合に関与したとの事実を明示的に摘示したものではない しかし, 本件放送が, 原告の実名を出した上で, 談合疑惑の主体を 原告のファミリー企業 ないし ファミリー企業 であると繰り返し述べていること ( 別表 1,5,11 ), 放送の最後に, 原告が談合への関与を否定していると述べて締め括っていること ( 別表 14) に照らせば, 本件放送は, 黙示的にではあるものの, 原告が談合疑惑に関与しており, その関与の形態としては, 原告が旧南淡町の町長という立場にあったことからして, 入札情報の提供の疑いとみるのが自然であるから, これらの事実を摘示したものというべきである なお, 原告は, ファミリー企業という表現から受ける印象は 情実 不正 利権 である旨主張するが, 独自の見解というほかなく, 一般的に, ファミリー企業という表現それ自体は必ずしも原告主張のような消極的評価をもたらすものではないというべきであるから, 同表現から, 原告が談合に関与したとの事実を導き出すことはできない c 以上によれば, 被告毎日放送が本件放送で摘示した事実は, 旧南淡町で公共工事の受注に関する談合が行われ, 同談合に原告が関与していたとの疑惑が存在すること, 及び, 被告 Y1 らが同疑惑の存在を主張して住民監査請求を行ったことであるというべきである ( イ ) 原告による旧南淡町住民に対する圧力について原告は, 本件放送によって, 原告がその人的 資金的関係が深い企業と共謀して, 批判的な言動をする住民に対して不当な圧力を加えていたとの事実が摘示された旨主張する しかしながら, 本件放送は, 相手はこの地区最大の勢力 ( 別表 1), 相手は公共工事の 8 割を落札する企業グループ ( 別表 6) などと原告のファミリー企業を評した上で, 被告 Y2 が ただそれを声にして今まで言うことができなかったというのは事実です ( 別表 7) と, 旧南淡町の住民が 人間関係とかあるし, そういうのも考えますよ ( 別表 10) とそれぞれ発言し, 旧南淡町における談合疑惑に対する批判が困難であったことを取り上げる構成をとっており, これを一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準に見ると, 旧南淡町の住民は, 地元有力企業である原告のファミリー企業の存在とその影響力を慮って, 自らの判断で上記批判を控えていたと受け取れるのであり, 原告がファミリー企業と共謀して, 談合に批判的な住民に対する圧力を加えていたという事実を摘示したと見ることはできないというべきである したがって, この点に関する原告の主張は採用できない ( ウ ) 小括 12

以上によれば, 本件放送で摘示されたのは, 原告のファミリー企業が旧南淡町の公共工事の受注に関して継続的に談合を行っており, 原告が入札情報を提供するなどしてこれに関与していた可能性があるという疑惑の存在, 及び, 同疑惑に基づいて住民監査請求が行われたとの事実であると認めることができる ウこれに対し, 原告は, 伝聞や風評という形式でなされた報道であっても, 摘示された事実は, 伝聞や風評の存在ではなく伝聞や風評の内容そのものであるから, 本件放送で摘示された事実は, 談合の疑惑の存在ではなく, 談合の事実そのものである旨主張する しかしながら, 本件放送は, 前記イで説示したとおり, 旧南淡町において談合があったとの事実を摘示したものではなく, 談合の疑惑の存在及び旧南淡町の住民が同疑惑に基づいて住民監査請求を行ったとの事実を摘示したものであって, 風評や伝聞という形式をとりつつそれを事実として報道した場合と同視することはできず, 原告の引用する判例 ( 最高裁昭和 48 年 1 月 18 日第一小法廷判決 刑集 22 巻 1 号 7 頁 ) は, 事案を異にしており, 採用できない したがって, 原告の上記主張は採用できない エ以上のとおり, 本件放送全体の印象としては, 被告 Y1 らが, 旧南淡町の公共工事に関して, 原告のファミリー企業に談合の疑惑があり, 原告がこれに関与した旨主張して, 住民監査請求を行ったとの事実にとどまらず, 原告には上記のような疑惑があるとの事実も摘示されているというべきである そして, 町の公益の代表者たる町長が公共工事の談合に関与することは違法行為であるから, 原告にそのような疑惑が存在することを摘示した本件放送は, 原告の社会的評価を低下させ, その名誉を毀損するものというべきである よって, 本件放送は, 被告毎日放送の原告に対する名誉毀損行為に該当する オさらに, 原告は, 被告 Y1 らも, その意図に沿った内容のテレビ放送が行われることを目論み, 被告毎日放送に情報提供を行い, 自らの言動を収録させるなど, 本件放送に主体的 能動的に関与したものであるから, 本件放送による名誉毀損について, 被告毎日放送と共同不法行為責任を負う旨主張する ( ただし, 原告は, 本件放送内で被告 Y1 らが行った個々の発言自体が名誉毀損行為に該当する旨主張するものではない ) ところで, 共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において, 各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは, 各自が上記違法な各加害行為と相当因果関係にある損害について責任を負う ( 最高裁昭和 43 年 4 月 23 日第三小法廷判決 民集 22 巻 4 号 964 頁参照 ) これを本件放送について見ると, 本件放送が全体として原告の名誉を毀損する内容であることは前記説示のとおりであり, 証拠 ( 乙 10,16, 丙 2, 証人 B, 被告 Y1 本人 ) によれば, 被告毎日放送の記者である B は, 平成 17 年 8 月 26 日に小田弁護士から本件各監査請求書の案を入手し, その後, 伊藤弁護士から, 原告の親族図や全国市民オンブズマン連絡会議作成に係る 入札調書の分析結果についての報告 等の資料の提示を受けた上で, 同請求書の内容について説明を受けたこと, 被告 Y1 らは,B からカメラ取材を行うに適した現場の候補を挙げるよう依頼されたため, 本件各監査請求に関連する現場を 3 か所挙げ, 被告毎日放送は, その中からロケ場所 ( 本件造成工事の現場 ) を決定したこと, 被告 Y1 らは, インタビュー等に答えて疑惑の存在を肯定する発言をしていること ( 別表 2,3,7,9,12 参照 ) が認められる しかしながら, 一般に, ある主題について, テレビ放送を行うか否か, その内容をどのように構成 編集するかといった方針決定等は, 全て放送会社の自主的な裁量, 判断, 責任において行われるところ, 本件において, 被告 Y1 らが, その意図に沿った内容のテレビ放送が行われることを目論み, 本件放送を行うことの判断や, 上記構成 編集方針の決定等に主体的 能動的に関与したと認めるに足りる証拠はない そうすると, 結局, 被告毎日放送は, 被告 Y1 らに対するインタビューの結果等を自己の判断で編集, 構成した上で, 本件放送を行ったものであるから, 被告 Y1 ら及びその代理人弁護士が, 被告毎日放送に情報を提供した上で, 取材対象ともなった事実にかんがみても, 本件放送について, 被告 Y1 らに独立の不法行為が成立するとまでいうことはできない 13

したがって, 被告 Y1 らは, 本件放送による名誉毀損については不法行為責任を負わず, この点に関する原告の主張には理由がない 2 争点 (2)( 本件各行為の違法性阻却事由の有無 ) について事実の摘示による名誉毀損の不法行為については, その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合には, 摘示された事実が重要な部分について真実であることが証明されたときは, 上記行為には違法性がなく, 不法行為は成立しないものと解するのが相当である ( 最高裁昭和 41 年 6 月 23 日第一小法廷判決 民集 20 巻 5 号 1118 頁参照 ) このような見地から, 被告らは, 本件記者会見及び本件放送による名誉毀損については違法性がない旨主張するので, 以下検討する (1) 本件記者会見についてア事実の公共性について前記 1(1) イで認定したとおり, 本件記者会見は, 被告 Y1 らが, 原告の関連企業が, 原告を始めとする同町の関係者からの情報提供に基づき旧南淡町の公共工事について談合を行ったことが想起されるとして, 本件 1 監査請求を行った事実, 及び, 同被告らが, 原告が町長をしていた旧南淡町が, 原告の関連企業から本件不動産を著しく高額で購入したことが違法な公金の支出に当たるとして, 本件 2 監査請求を行ったとの事実を摘示したものであるところ, これらの事実は, いずれも, 公共の利害に関する事実であることは明らかである イ目的の公益性について ( ア ) まず, 本件各監査請求は, 旧南淡町において生じた損害を南あわじ市に返還させることを趣旨とするものであって, それ自体はもっぱら公益を図る目的によるものといえるが, 住民監査請求に関連して行う記者会見については, これを住民監査請求手続そのものと同視することはできないから, 本件記者会見の目的については, 別途の検討を要する しかるところ, 前述したとおり, 本件記者会見の内容は, 本件各監査請求書の記載内容とその解説であるところ, 直接民主制による住民自治の保障を目指し, 住民が監査委員の監査を通じて地方公共団体の適正な財政運営を確保することを目的とする住民監査請求の制度趣旨に照らせば, 本件記者会見は, 本件各監査請求を行った事実を記者会見で発表し, 住民にこれを知らしめることを目的としたものと認めるのが相当である ( イ ) これに対し, 原告は, 被告 Y1 らが, 南あわじ市や同市に合併前の他の自治体ではなく, あえて旧南淡町を住民監査の対象としたこと, 本件 2 監査請求を監査請求期間経過後に行ったこと, 本件記者会見においてあえて原告の実名を公開したこと, 本件各監査請求が却下された後, 結局住民訴訟を提起しなかったこと, 南あわじ市の顧問弁護士が, 本件各監査請求に関わり, マスコミに対する情報を提供したこと, 被告 Y2 の関連企業が政治倫理条約違反に問われたことなどを根拠に, 被告 Y1 らの目的は, ひとえに原告の社会的評価を低下させることにあった旨主張する しかしながら, 前記 1(2) の事実のとおり, 本件各監査請求は, 被告 Y1 らの他, 合計 222 名ないし 223 名の旧南淡町住民の賛同を得て行われたものである上, 本件記者会見で摘示された事実が, 上記のとおり, 概ね本件各監査請求書の記載内容とその解説にとどまるものであることからすれば, 被告 Y1 らの主眼が, 原告の社会的評価の低下にあったとは認め難い そもそも, 住民訴訟を提起するか否かは個人の全くの自由であって, 住民監査請求却下の結果を受けて, 住民訴訟までは提起しないとの判断は十分あり得るところであるし, 住民監査請求自体, 相当程度の事前準備が必要である上, 住民監査請求ができるだけの資料を揃えてから住民監査請求をするのが通常であることに照らせば, 旧南淡町のみが同請求の対象となったこと自体は, 必ずしも請求人の不当な意図を推認させるものではない また, 請求期間経過後の住民監査請求も一定の要件の下で許容されていることからすれば ( 地方自治法 242 条 2 項但書参照 ), 請求期間経過後の住民監査請求であることから当然に請求人の不当な意図を推認することもできない その他, 原告の主張するところを検討しても, 原告の社会的評価を低下させることが目的であったことを推認させる事情があるとは認められない ( ウ ) したがって, 本件記者会見は, もっぱら公益を図る目的でされたものと認められる 14

ウ事実の真実性について前記 1(1) イで認定したとおり, 本件記者会見は, 被告 Y1 らが, 原告の関連企業が, 原告を始めとする同町の関係者からの情報提供に基づき旧南淡町の公共工事について談合を行ったことが想起されるとして, 本件 1 監査請求を行った事実, 及び, 同被告らが, 原告が町長をしていた旧南淡町が, 原告の関連企業から本件不動産を著しく高額で購入したことが違法な公金の支出に当たるとして, 本件 2 監査請求を行ったとの事実を摘示したものであるところ, 前記第 2 の 1(2) アの事実に照らせば, これらの事実はいずれも真実であると認められる エ小括以上のとおりであるから, 本件記者会見による名誉毀損については, 違法性がなく, 不法行為は成立しない (2) 本件放送についてア事実の公共性について前記 1(2) イで認定したとおり, 本件放送は, 原告のファミリー企業が旧南淡町の公共工事の受注に関して継続的に談合を行っており, 原告がこれに関与していたという疑惑の存在, 及び, 同疑惑に基づいて住民監査請求が行われたとの事実を摘示したものであるところ, これらの事実は, いずれも, 公共の利害に関する事実であることは明らかである イ目的の公益性について前記 1(2) オで認定した事実に加え, 証拠 ( 丙 1,2, 証人 B, 原告本人, 被告 Y1 本人 ) 及び弁論の全趣旨によれば,B ないし被告毎日放送は, 本件各監査請求書案の入手及び同請求書に関する伊藤弁護士からの説明, 被告 Y1 らを始めとする旧南淡町の住民に対する取材並びに原告に対する 30 分ないし 1 時間ほどの取材等を行い, それらの取材結果などを検討した上で, 本件放送を行ったと認められる そうすると, 被告毎日放送は, 同監査請求の事実が公共の利害に関する事実であり, それに関する疑惑を取り上げて放送することは公益に適い, ニュースバリューがあると判断して本件放送を行ったことが推認されるから, 同放送の目的は, 専ら公益を図ることにあったものと認められる ウ事実の真実性について ( ア ) 前記 1(2) イで認定したとおり, 本件放送は, 原告のファミリー企業が旧南淡町の公共工事の受注に関して継続的に談合を行っており, 原告がこれに関与していたという疑惑の存在, 及び, 同疑惑に基づいて住民監査請求が行われたとの事実を摘示したものである そして, 名誉毀損の違法性が阻却されるためには, 原告のファミリー企業が旧南淡町の公共工事の受注に関して継続的に談合を行っており, 原告がこれに関与していたという疑惑について, 同疑惑の前提となっている事実が真実であり, それから合理的な理由をもって疑惑が導かれることを証明する必要があると解するのが相当である ( イ ) そこで検討するに, 原告のファミリー企業という表現は, 原告又は原告の親族が, 現在ないし近接した時期に役員や主たる株主であった会社など, 原告と非常に緊密な関係にある会社であるとの印象を一般視聴者に与えるものであるということができるが, 証拠 ( 甲 37 ないし 43, 原告本人 ) によれば, 本件 1 監査請求書に原告の関連企業として記載されている 7 社のうち, 上記観点からのファミリー企業に該当するのは, 過去に原告が役員を務めたことがあり, 現在も原告の親族が代表取締役を務める a 社及び b 社の 2 社であると認められる そして, 証拠 ( 甲 10 の 5, 乙 1) によれば, 平成 13 年度から平成 16 年度までの旧南淡町の公共工事を,a 社は平均約 98 パーセント,b 社は平均約 97 パーセントと, 非常に高い落札率で競落していること,a 社は, 上記 4 年度における公共工事全体の約 44 パーセントを落札していること, 平成 16 年度のみを見ると,a 社と b 社が, 公共工事の約 45 パーセントを落札していることが認められる この点, 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会の入札制度改革に関する調査報告書 ( 乙 9) において, 落札率は, 談合しているかどうかを判断するための主たる基準になることや入札制度改革を行った長野県や宮城県で落札率が低下していることなどが記載されており, 日本弁護士連合会の 入札 15

制度改革に関する提言と入札実態調査報告 ( 乙 8) においても, 日本の入札の落札率の平均が 95 パーセントであるということや刑事記録の内容から, 日本の入札は談合が蔓延していると極めて高い確率で推定できるとし, 入札制度改革を行った自治体においては, 落札率が低下していることを指摘していることなどに照らせば, 落札率の高さは, 談合の事実そのものを証明するものではないものの, 談合の可能性を疑わせる事情の一つであるとはいえる しかしながら, 他方で, 公共工事に関する競争入札にあっては, 工事の種類や性質, 予定価格や入札価格の積算方法等によって, 談合が行われなくとも落札率が高くなることはあり得ることであり, 現に, 予定価格と落札価格が一致した競争契約案件に関する国土交通省及び厚生労働省の各調査結果 ( 甲 5,6) によれば, 予定価格と落札価格が一致した要因として, 当該工事における積算基準の公表や, 予定価格にかなり近似した額の見積が可能な積算ソフトの存在, 端数処理の結果による落札価格と予定価格との偶然の一致等, 談合以外にも多くの事項が挙げられていること, 本件においても, 証拠 ( 甲 22,23, 原告本人 ) によれば, 旧南淡町では, 平成 15 年 4 月から, 入札に関する透明性を確保するため,1000 万円以上の公共事業の約 3 分の 1 の予定価格の事前公表を 1 年間を試行期間として実施し, その後も平成 17 年 1 月の合併に至るまで実施していたことが認められる 以上の点に加え, 証拠 ( 甲 10 の 5,37) 及び弁論の全趣旨によれば,a 社は旧南淡町では有数の規模の企業であることが認められることからすれば, 入札件数に対する落札件数の割合が相対的に高くなっても必ずしも不自然であるとはいえないこと, また, 証拠 ( 甲 21,23,24, 原告本人 ) によれば, 原告の旧南淡町町長就任以降, 同町の公共工事に関する決裁権は助役の専決事項とされ, 入札当日の朝, 助役が入札予定価格を決定し, 書類を封印していたことが認められることをも考慮すれば,a 社及び b 社による落札率及び落札件数の割合が上記のとおりであることをもってしても, いまだ談合の存在や同談合に対する原告の関与を推認するには足りないし, それらの疑惑について合理的な理由があるとは認め難い なお, 被告 Y1 らは, 談合の存在を疑わせる事情として, 本件 1 監査請求書において, 原告の各関連企業間の入札価格がそれぞれ相互に近接しているという特色があること, 自由競争による入札が行われていたなら, 上記各関連企業による落札価格は, 予定価格の 86.9 パーセント前後になるはずであったことなども主張するが, これらを認めるに足りる証拠はないし, 原告のファミリー企業に該当するのは,a 社及び b 社の 2 社であることは, 前述したとおりである さらに, 本件放送は, 本件造成工事の現場を撮影場所として使用した上で, 同工事における公共入札の落札率が 100 パーセントであったこと, 談合がなければ落札率が 100 パーセントになることはあり得ないこと, 同工事のために約 2 億 8000 万円の税金が使用されたことを放送することによって, 視聴者に対し, 談合の疑惑が合理的なものであり, 同談合によって旧南淡町が被った被害が甚大なものであったかのような印象を与える構成をとっており, 談合疑惑の重要な根拠事実となっているものである しかし, 証拠 ( 甲 21,23, 乙 3 別紙 52, 原告本人 ) によれば, 上記工事は入札ではなく随意契約によって a 社が受注したものであること, 同工事に当たって現実に税金で賄われた費用は約 79 20 万であることが認められるから, 本件放送において, 談合疑惑の根拠として挙げられる主要な部分は, いずれも真実ではないというべきである 以上によれば, 原告の町長在任期間中である平成 13 年度から平成 16 年度における旧南淡町の公共工事について, 談合が存在し, かつ, 同談合に原告が関与したとの疑惑は, 未だ合理的な根拠をもって導き出されたものとはいえず, さらに, 本件放送において, 同疑惑を基礎付ける事実として報道された事実は, 重要な部分で真実ではなかったと認められる エ小括よって, 本件放送について, 違法性がないものということはできない 3 争点 (3)( 被告らの有責性の有無 ) について (1) 前記 2(2) で説示したとおり, 本件放送の摘示事実に真実性は認められないところ, 真実であることの証明がなされなくても, その行為者がその重要な部分につき真実であると信じたことに相当の理由があるときには, その故意又は過失が否定され, 不法行為は成立しないものと解するのが相 16

当である ( 前掲最高裁昭和 41 年 6 月 23 日第一小法廷判決参照 ) この点, 被告毎日放送は, 被告 Y1 らの代理人弁護士から, 本件各監査請求書の案及びその関連資料の提示とともに詳細な説明を受けた上で, 被告 Y1 らや旧南淡町の住民に対する取材を行ったのであるから, 同事実が真実であったと信じるにつき相当の理由がある旨主張する (2) しかしながら, 本件 1 監査請求書は, 被告 Y1 ら旧南淡町の住民が, 原告を始めとする旧南淡町の関係者が談合に関与した可能性があると主張して監査請求をするという内容のものであり, その代理人である弁護士の説明も, 本件各監査請求における住民側の主張に基づくものであることは明らかである ( 被告 Y1 ら及び同被告らを支持する旧南淡町の住民に対する取材も同様である ) この点, 確かに, 前記 2(2) ウで認定, 説示したとおり, 落札率の高さは, 談合の可能性を疑わせる事情の一つではあるものの, これは談合以外の要因によってもあり得ること, 本件 1 監査請求書に原告の関連企業として記載された企業のうち, 原告のファミリー企業と評価しうるのは a 社と b 社の二社のみであること, 本件造成工事は随意契約によって a 社が請け負ったものであること, さらには原告の旧南淡町町長就任以降, 同町の公共工事に関する決裁権は助役の専決事項とされたこと等談合の存在及び原告が談合に関与したことを否定する方向に働く事情も認められたのである そして, 前記 1(2) イで認定したとおり, 本件放送は, 原告が談合に関与した疑惑があると報じたものであるから, このように, 原告を談合疑惑の当事者とする趣旨の報道を行う以上, 被告毎日放送は, 弁護士の説明等を鵜呑みにするのではなく, 談合の存在及び原告が談合に関与した可能性について, さらに慎重に調査, 裏付けを行い, 疑惑の存在の信憑性等について十分な吟味をする必要があったというべきであり, そのような調査を行っていれば, 上記の談合の存在等を否定する方向に働く事情を明らかにすることができたというべきである そうであるにもかかわらず, 証拠 ( 丙 2, 証人 B) 及び弁論の全趣旨によれば, 被告毎日放送は, 旧南淡町における談合疑惑及びそれに対する原告の関与の可能性について, 上記弁護士から受けた説明の他, 被告 Y1 ら, 同被告らを支持する旧南淡町の住民若干名及び原告に対する取材 ( 聴取 ) 以外には独自の裏付け取材を行わなかったと認められる なお, 被告毎日放送は, 原告に対する取材を行った上で, 本件放送の最後に, アナウンサーが 前町長は, 公共工事の入札には自分は全くノータッチで, 適切に行われていると, 談合疑惑を否定しています として原告の言い分を紹介している ( 別表 14) けれども, 証拠 ( 証人 B, 原告本人 ) によれば, 原告に対する取材は, 被告毎日放送の記者が, 現場での取材等を終えて予告なく原告の自宅を訪れ, たまたま在宅していた原告に対し, 本件各監査請求の資料を示すこともなく, また, 談合を疑わせる事実と考えている点について詳しく尋ねて事実関係を確認することもなく, 本件不動産の先行取得や旧南淡町の体育館に関する点など, 本件放送とは必ずしも関係しない取材を含めて 30 分ないし 1 時間程度行ったものと認められ, 上記疑惑の裏付け取材としては, 極めて不十分なものというべきである 以上によれば, 被告毎日放送は, 本件各監査請求について, 一方当事者にすぎない被告 Y1 らの代理人弁護士の説明等を全面的に信用し, 旧南淡町における談合及び同談合への原告の関与の疑惑について, 上記弁護士から与えられた資料を精査, 検討したり, さらには最低限の裏付け取材を行うこともないまま, 本件放送を敢行したものといわざるを得ず, 同疑惑の存在ないし同疑惑を推論することの合理性を窺わせる事実について, それを信じるについて相当といえる程度の裏付けを得ていたものとは認められない (3) したがって, 本件放送による名誉毀損について, 被告毎日放送に責任がないということはできない 4 争点 (4)( 原告の損害の有無及び損害額並びに謝罪広告 謝罪放送の要否 ) について前記 1 ないし 3 で認定, 説示したところによれば, 被告毎日放送は, 原告に対し, 民法 709 条に基づき, 本件放送によって名誉を毀損されたことによって被った原告の損害を賠償すべき義務がある そこで, 同名誉毀損による原告の損害について検討するに, これまで認定してきた事実関係並びに証拠 ( 甲 23, 原告本人 ) 及び弁論の全趣旨によれば, 原告は, 旧南淡町において, 平成 11 年 5 月から平成 17 年 1 月まで町長を務め, 同町を中心とする周辺地域において相当な知名度があるところ 17

, 本件放送は, 報道番組内の特集として関西地方で放送され, 原告の実名を出した上で, 原告が談合に関与した疑惑があることを大きく採り上げており, それにより, 本件放送の後, 心配した知人ないし支援者が原告方に駆けつけた他, 原告の妻は婦人会の世話役を辞退したり, 原告の母親は外出を控えるようになるなど原告本人はもとよりその家族にも影響が出ていることが認められ, その損害は小さくないといえること, 他方, 前記 2(2) で認定, 説示したとおり, 本件放送は, 公共の利害に関する事実について公益目的でなされたものであり, 取材に不十分な点はあったものの悪意をもって放送したものとまでは認められないこと等諸般の事情を総合考慮すれば, 原告の慰謝料としては 100 万円をもって相当と認める そして, 上記諸事情を総合考慮すれば, 原告に対する名誉回復の措置としては, 上記慰謝料の支払で足り, それ以外にさらに謝罪広告及び謝罪放送を命じる必要性があるとは認められない 5 結論以上によれば, 原告の被告毎日放送に対する請求は, 主文 1 項記載の限度で理由があるからこれを認容し, その余の請求及び被告 Y1 らに対する請求は, いずれも理由がないからこれを棄却することとし, 主文のとおり判決する ( 裁判長裁判官角隆博裁判官村中玲子裁判官西谷大吾 ) 以下省略 ******* 18