エッセー JOGMEC 石油企画調査部 伊原賢 JOGMEC 技術調査部 坂東克彦 Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 筆者は 2010 年 9 月 20 日から22 日までイタリアのフィレンツェで開催された2010 年 SPE(Society of Petroleum Engineers: 世界石油工学者協会 117カ国の会員数約 9 万 2,000 人 ) の ATCE(Annual Technical Conference and Exhibition: 年次総会 ) に参加し 最新の石油工学に触れる機会を得ました 得られた情報を基に Petroleum Engineerの取り組む技術トレンドを探ります はじめに 世界全体の原油の残存確認可採埋蔵量を見ると 全体の約 8 割を国営石油会社 (National Oil Company:NOC) が支配しており ロシア企業を除くと民間企業はわずか1 割未満の支配に過ぎません ( 図 1) 現在の原油市場は 1960 年代までの国際石油会社 (International Oil Company:IOC) に よる支配の時代は遠くなり 国営石油会社の時代になっていることを如実に示しています 従来 生産される原油は 需要が大きく利益への期待が大きい軽 中質油の開発が進められてきましたが 埋蔵量の支配地図を考慮し 昨今の需要増大と油価高水準を追い風にすると 重質油やオイルサンドといった非在来型の石油資源にも注目が集まっています 図 2に示すように 在来型の石油 ( 生産済み OPEC 原油 中東外の在来型 ) に比べ 重質油 ( オイルサンド ビチューメンを含む ) は可採埋蔵量が1 兆バレルにも迫るレンジにあり 経済的に採算のとれるコストは 在来型の 10 ~ 20ドル / バレルよりも生産 処理に手間がかかる分 30 ~ 40ドル / バレルと高いレンジにあるとされます けつ頁岩や浸透性の低い砂岩 ( 浸透率 0.1 ミリダルシー <md> 未満 1md=9.87 10-16 m 2 ) に含まれる天然ガスは従ちかさ来 緻密でコストの嵩む技術を要することから 開発が見送られる非在来型資源と見なされてきましたが 21 世紀に入ってからの米国での天然ガス需要の補完と天然ガス価上昇に支えられ また 技術の進展に伴い 北米を中心に天然ガス供給源として注目を浴びています 図 3は 1979 年に Mastersが提唱した 天然ガスの資源量トライアングル と呼ばれるもので 非在来型天然ガスの定義によく使われます 賦存環境が在来型天然ガス資源よりも劣るタイトガスサンド コールベッドメタン シェールガスの開発には 技術の進歩と一定水準以上のガス価が必要ですが 非在来型は在来型よりも資源量が豊富なことが魅力です このように 埋蔵量へのアクセスが縮小する投資機会に対応した石油開発の対象は 在来型から非在来型資源へ 16% 7% () 65% 12% 出所 : 2008 PFC Upstream Competition Service 資料を基にJOGMEC 石油企画調査部作成 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 出所 :IEA SPE 資料を基に JOGMEC 石油企画調査部作成 図 1 世界全体の原油の残存確認可採埋蔵量の支配状況 図 2 原油の可採埋蔵量と採算コスト 61 石油 天然ガスレビュー
JOGMEC 技術調査部 伊藤 義治 エッセー 筆者は イタリア フィレンツェの 報を参考に 当面の可採埋蔵量の積み コンベンションセンターで 2 0 1 0 年 9 増しをコントロールすることになる石 0.001md 月 2 0 日から 2 2 日にかけて開催された 油開発技術のトレンドをまとめます 10md Large volumes; Tight Coalbed difficult to gas methane develop Gas Low quality shales 0.1md Increased Prices どのような技術トレンドをもって進め Small volumes; 1,000md easy to develop High quality Medium quality ③ シ ェールガスやタイトガスの開発 Increased Technology とシフトするでしょうが その開発は Gas hydrates 1md= 9.87 10 16m2 出所 SPE 103356論文 技術の進歩 られるのでしょうか 最後に SPE ATCE で得られた情 2 0 1 0 年 SPE の ATCE に参加し 写 1 写 3 最新の石油工学にかかる情 報を収集しました ここで 石油工学 1. 2 010 年 SPE ATCE の概要 とは 石油 天然ガスの掘削 油層管 図3 天然ガスの資源量トライアングル 理 生産に関する技術の総称で これ SPE が主催する情報交流の場には なくして 地下の石油 天然ガス資源 過去の事実を議論する ATCE 年次総 を地上に取り出すこと 会 ほ か 現 在 の 動 向 を 議 論 す る はできないといっても Applied Technology Workshop 過言ではありません ATW と未来の技術展開を議論す SPE はその技術者集団 です 出所 筆者撮影 会場 フィレンツェのコンベン 写1 ションセンター バッソ要塞の 跡 の入り口前に立つ筆者 伊原 る SPE Forum があります 今年の SPE ATCE は 7 0 カ国から 本稿では まず 初 約 4,7 0 0 人が参加しました 口頭発表 の米国外での開催と e- ポスターは約 4 0 0 件で 以下の 6 分 な っ た 2 0 1 0 年 SPE 野 /5 4 セ ッ シ ョ ン 1. Drilling and ATCE の概要を述べ Completions 2. Project, Facilities 次 に ATCE で 取 り 上 and Construction 3. Production and げられた 次に示す三 Operations 4. Reservoir Description つのトピックスでの情 and Dynamics 5. Management and 報交換 議論を紹介し Information 6. Health, Safety and ます Environment / HSE に分かれて 1 0 ① 天 然ガスの世界需 会場で発表されました 内容は主に技 要の見込み 術開発と石油開発プロジェクトの動向 ② 油層管理の今後 について 昨年に引き続き 非在来型 出所 筆者撮影 出所 筆者撮影 写2 会場の見取り図 主会場 写2 マップ②の建物 写3 の前の花飾り 2011.1 Vol.45 No.1 62
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 出所 :SPE ATCE Percentage of Total Membership 20 15 10 5 0 % <20 20~24 出所 :SPE 124777 Membership by Age Range 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 Age Range 1997 2008 65++ *n/a 図 4 発表論文 e- ポスターが収められた CD 図 5 石油開発業界の年齢構成 炭化水素の開発 が大きく取り上げられました 発表論文 e- ポスターは CDとして配布されました ( 図 4) ホームページは http://www.spe.org/ atce/2010/ を参照願います 展示会場は 大小取り交ぜて 2 5 0 社 /4,000m 2 の規模 2008 年のような油価高騰がないことや 同じく2008 年からの世界金融危機を反映し 展示会場の規模は2 年続けて大幅な縮小傾向 (2008 年は450 社 /9,900m 2 2009 年は390 社 /8,250m 2 の展示 ) にあり 業界の景気低迷の実情を感じさせました 油価 ( 年次総会開催中 7 0 ドル / バレル台 ) 非在来型ガス資源の供給拡大 石油工学技術者の中高年化ほかを反映して SPEに属する技術者は 目先の利益追求のみならず 人材の確保と浸透率の低い岩石中の天然ガス ( タイトガス コールベッドメタン シェールガス ) 超重質油 大水深開発といった非在来型の資源開発に注力すべきであり そのための技術は主力サービス会社 (Schlumberger, Halliburton, Baker Hughes, Weatherford) を中心に確実に育っており NOCsやIOCsは 技術を自分たちの資源開発に効果的に適用できる環境にあることが 総会の全体を通じて感じられました 既発見の油ガス田からの回収率向 上 生産性改善の技術 ( 酸処理や水圧破砕といった坑井刺激法 EOR/IOR 技術 ) の適用や 非在来型ガス資源 ( タイトガス シェールガス等 ) の開発技術の進歩がここ数年インパクトを与えています 風力 太陽光 バイオ燃料といった再生可能エネルギーの台頭も今後あり得るでしょうが 世界における石油や天然ガスの1 次エネルギー全体に占める役割は そのエネルギー投入率が再生可能エネルギーに比べ格段に低いという点からも 経済合理性の高いエネルギーとしての立場は当面ゆるぎないと思われ 原油需要が2030 年には日量 1 億 2,000 万バレルに達するとも言われることも その動向をサポートしていると言えるのでないでしょうか この時期の石油 天然ガスの上流業界の好景気に人と技術を注入することで 石油開発 ( いわゆる上流 ) 業界は ちまた巷で言われる斜陽産業などではなく 石油 天然ガス資源の可採埋蔵量積み増しと環境面にも配慮した経済的開発に大きく貢献することができます 本総会における口頭発表や展示を見聞きすることで その実現に必要な技術の進展を実感できました 筆者は また総会の会期中に開かれた 2 5-Year Club ATCE Chairman's Luncheon President's Luncheon と いった会合に参加し 日本人として世界の石油工学技術者との旧交を確かめ かつ新たなネットワークを広げることに努めました 油価低迷時の1990 年代に多くの石油会社が その研究開発活動を低下させたなかで 将来の技術開発を担うのは誰か? というのが 近年の石油開発業界の大きな課題です 技術者として上流業界に入る若者が減り続け 業界の平均年齢は50 歳代前半に入っており 30 歳代が少なく 技術の空洞化の危機が迫っています ( 図 5) 2004 年以降の油価の高値安定は 大学で石油工学を学ぶ学生数を増やしています ( 図 6) 現在業界にいる人たちとこれからの若者で業界を支えるには 各自が持つ知見を若者と共有 伝授すること 若者が石油開発に夢や強い関心を持つべく草の根の啓蒙活動 石油工学教育のブラッシュアップ 学生の企業でのインターンシップ研修を精力的に行うことが極めて大事であることが関係者間で再確認されました 3 日目の22 日には SPE 会長主催の昼食会に出席しました 2010 年の会長であるMr. Behrooz Fattahi(coordinator for heavy oil development at Aera Energy:Shellと ExxonMobilの子会社が共同所有するカリフォルニア州 63 石油 天然ガスレビュー
エッセー 130 BS Degrees Granted 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 出所 :Lloyd Heinze,Texas Tech Tx AM Co Mines Texas Tx Tech Oklahoma Mt Tech La State Tulsa La Lafayette Mo Rolla Marietta Wyoming W Va Penn State Alaska Kansas NM Tech Stanford S Ca と 参加者数は他国に比べ低調でした 来年の年次総会 2011SPE-ATCEは 10 月 30 日 ~ 11 月 2 日に米国のデンバーで開催予定です 2. 天然ガスの世界需要の見込み 天然ガスの世界需要の見込み にかかるパネルディスカッションに参加しました Schlumbergerの Gould CEO が司会 パネリストは Hess PetroChina ExxonMobilの技術幹部と IHS CERA のアナリストでした 図 6 ベースの石油開発会社 ) は SPE の活動は会員のボランティア活動や精神に支えられている ボランティアは SPE のなかでリーダーシップの技を磨き これまでの知見を活用し SPE のミッション遂行に影響を与えている 今年は メキシコ湾油流出事故や女性の業界での位置付けについて タスクフォースを組織し 議論を重ねた と挨拶しました ( 写 4) SPE の名誉会員の紹介もありました ( 写 5) 2011 年 米国の大学における石油工学の学士号取得学生数の推移 の SPE Presidentは Totalの EOR 技術顧問の Alain Labastie 氏となりました JOGMECからは和佐田理事 技術調査部の坂東 伊藤職員 筆者の4 名の参加 ほかの日本人の参加者は 早稲田大学 環境資源工学科の在原教授 森田教授とその引率学生 15 名程 ConocoPhillipsの古井氏 日本の石油企業の参加はINPEX 鈴木孝一氏 JAPEX 山田知己氏 JOE 河田裕子氏 < 共通認識 > 世界のエネルギーバランスにおけるガス市場の位置付けは 2007 年から2030 年までに年率 1.5% の伸びが予想され (2030 年の需要は年 171Tcf) 同期間の原油需要の伸び率の約 2 倍が予想されます ( 図 7) 非 OECD 諸国の消費がOECD 諸国の消費を抜き 中国では年率 6% の伸びが予想されます 背景には 技術 ( 水平坑井や多段階フラクチャリング ) の進歩に伴う採掘コストの減少と他の化石燃料に比べ CO2 排出量が少ないことが挙げられま 出所 : 筆者撮影 出所 : 筆者撮影 写 4 2010 SPE President Behrooz Fattahi の挨拶 写 5 SPE の名誉会員の紹介 右端は早稲田大学の在原教授 2011.1 Vol.45 No.1 64
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 Mtoe 出所 :IEA 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1980 図 7 1990 2000 す 非在来型ガスのコールベッドメタンや北米のシェールガスを中心に埋蔵量積み増しの動きが顕著です 将来の原油や天然ガスの需要増 ( 現状技術では2030 年までに石油換算で日量 4,500 万バレルの供給不足が予想される 2005 年の需要から35% アップ ) に対応するには IOCs/NOCs/ サービス会社の相互意思疎通を通じたビジネス機会の創出が今後ますます大事になるというのが パネルディスカッションの前提 IOCs/NOCs/ サービス会社の3 者とも上流ビジネスの実施に人と技術を提供し それぞれの仕事に対して説明責任を持つことが大事です < ExxonMobil > 天然ガスの需要増への対応には 統合的な技術 (1/3のコストダウンを実現したLNGチェーン 酸性ガス処理技術の進歩 ) の提示が必要 < IHS CERA> 1999 年から10 年間に埋蔵量の増加 2010 2020 2030 2030 年までの天然ガスの世界需要見込み Other renewables Hydro Nuclear Biomass Gas Coal Oil が顕著な国 : トルクメニスタン 中国 米国 豪州 ブラジル インド 天然ガスとクリーンコールに クリーンエネルギーとしての認識の高まりがある < Hess > 2035 年までに4,000Tcfもの天然ガスが必要 これはBarnettシェールガス構造の 1 30 万本のガス井 4 兆 5,000 億ドルの投資に相当 試掘の成功確率 : 在来型 大水深 30% 非在来型ガス 95% 非在来型ガス開発は 社会認識 鉱区へのアクセス 経済合理性 地球環境問題にまだバリアが残るも 低炭素化社会に向けて必要な資源開発との認識 < PetroChina > 中国では電力需要が2000 ~ 2009 年まで年率 15.4% で上昇 その需要に応えるため 中国のガス生産量 埋蔵量のそれぞれ81% 75% を握る PetroChinaは非在来型ガスのコールベッドメタンやシェールガス開発に注 力していく < 全員 > シェールガス開発の広がりは北米 アジア 欧州の動きに注目 LNG シェールガス開発とも安全と信頼性の確保が肝要 3. 油層管理の今後 Ganesh Thakur 氏によれば 油層管理 とは 経済 技術 人的資源を活用し 投資や経費を最少限に抑え 地下からの化石燃料資源の回収量を最大化することです 油層管理 の業務範囲は 油層工学者 (Reservoir Engineer) の守備範囲を超え 例えば油層流体の挙動を予測するシミュレーターには 油層モデルに加え 坑井の仕上げや海底機器も含まれるようになり 複数の専門家が協力して検討する業務へと変化しています Chevronの Narahara 油層工学顧問が司会 パネリストは Total Saudi Aramco Petrobrasの技術幹部と英インペリアル カレッジの研究者でした 油層シミュレーターの計算セル数の増加 (10 億セル ) 陸上と海洋での油層管理の違い (Petrobrasは海洋/ 大水深プレソルト構造では 地下構造把握や流動モニタリングのため早期試験生産に注力 ) 石油工学の修士教育プログラム 坑井内に設置したセンサーやフローコントロールバルブによって圧入量 生産量をコントロールする技術 について最新の適用技術の動向がパネリストから紹介されました パネルディスカッションのまとめとしては 在来型の石油資源 ( 生産済み OPEC 原油 その他の在来型 ) へのアクセスが制限されるなかで 今後の油層管理技術には それを支える教育と組織が重要 としました 65 石油 天然ガスレビュー
エッセー 4. シェールガスやタイトガスの開発技術の進歩 < 付録 : シェールガス開発技術の概要 > への理解をベースにして 口頭発表e-ポスター 展示スペースを見聞きして 次の3 項目の技術の進歩について その内容の把握に努めました (1) 貯留層の評価 発表論文 SPE 133607 タイトガスやシェールガス貯留層の初期生産データ ( 無視されることが多い ) を定性的に分析解釈するためのワークフロー (5 坑井のデータを使い ケーシング圧力とガスレートほかをできる限りグラフにプロットし 相関式を抽出 ) が提案されました 解釈データは将来の生産挙動予測に活用されます Anadarko El Pasoと Texas A&M 大の発表 発表論文 SPE 133685 シェール層においては 通常ワイヤラインによる検層データ取得が一般的ですが 本発表では 坑壁の不安定性リスクを回避するために適用事例が増加しているシェール層におけるLWD (Logging While Drilling: 掘削時検層 ) について Bakken と Haynesville シェールでの実例を基に適用性 リアルタイムでの測定の利点やワイヤラインとの相違について紹介されました HalliburtonとBPアメリカの発表 発表論文 SPE 134559 本報告では ワイヤライン検層から得られるシェールガスの鉱物種 ケロジェン 粒子密度 孔隙率 ガス飽和率の推定値と コア分析から得られるデータを利用して 検層データの解釈プロセスに要する労力の削減と推定値の精度を向上させるためのガイドラインが示されました コアのエックス線 回折データを利用することで 検層解釈で得られる鉱物モデルや粒子密度および粒子密度から計算される孔隙率 TOC(Total Organic Carbon) の推定値の精度を向上させる手法が紹介されており シェールガスにおいてコアが取得された際に その利用価値を高めるための一助になると思われます シェールガスの貯留層特性を推定する際のガイドラインとして有用 HalliburtonとBPアメリカの発表 発表論文 SPE 134830 フラクチャー型シェールガス貯留層からの生産をモデリングする際に シェールのマトリックス内の流体流動を評価することで予測精度を向上させる手法についての発表 現在のシェールガス貯留層のモデリングにおいて採用されているダルシー (Darcy) 則のみを考慮した二重孔隙モデルでは 生産性はフラクチャーネットワークに左右され 多くの場合マトリックスからの生産分については疑問が残されていました 本発表で紹介された手法は nanodarcy(10-9 ダルシー =0.000001md) レベルの浸透率しか持たないマトリックス内の拡散流動を考慮して マトリックスからの生産寄与について解明するためのモデルでした こうしたダルシー則と拡散流の二重流動機構を考慮した二重孔隙モデルを利用して生産予測を行い 27 年の生産期間を有する坑井の場合 低浸透率 (10-8 ダルシー程度 ) のシェールガス貯留層の生産後期において 拡散流による生産寄与が重要になる ( 拡散流を考慮しない場合は 生産量を過小評価してしまう ) という結果が示されました 現時点で入手可能な商業用ソフトウェア (Schlumbergerの Petrel/ ECLIPSEや CMGの GEM 等 ) でもシェールガスの生産予測機能を持つも のもあります その一方で 本研究のようにシェールガス貯留層内の流動メカニズムを解明し 予測精度を向上させるモデリング技術も日進月歩で開発されていることがよく分かる発表であり 今後 開発増加が見込まれる非在来型ガス資源を評価するにあたり こうしたモデリング技術に関心を向けていくことの重要性も再確認できました コロラド鉱山大 ConocoPhillips EOG Resourcesの発表 発表論文 SPE 135427 本報告は 1 micro-darcy(0.001md) 以下の絶対浸透率を有するガスシェールやタイトガス砂岩コアを使用してガス- 水相対浸透率を評価する方法についての発表 非常に低い絶対浸透率を有するコアを使用して 通常のコア分析による相対浸透率評価 ( 定常流法 非定常流法 遠心分離法等 ) を行うことは 技術的に困難な場合があります こうした状況を改善するために end point specific permeability end point non-wetting phase trapping capacityやcritical gas saturationなどのデータを統合し 一般的な相対浸透率の評価式と岩石特性の理論を利用して ガス- 水相対浸透率の評価を行う手法が紹介されました 7 種以上のコア分析のデータを統合することで 飽和率の履歴を考慮した水飽和率の関数として ガス- 水相対浸透率の評価が可能であるとの結果が示されました 相対浸透率の測定は 油層シミュレーション 生産予測 貯留層ダメージの評価に影響する重要なパラメーターであるため 今後同分野でより一般的な評価手法の確立がなされた場合は 非在来型炭化水素の開発を評価する上で大きな改善をもたらすと思われます Core Laboratoriesの発表 2011.1 Vol.45 No.1 66
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 (2) 坑井の掘削 仕上げ 発表論文 SPE 133456 シェールガス開発へ水圧破砕技術が適用されて早や30 年ですが 過去 10 年間に回収率が2% から50% にまで向上したケース (Barnettシェールガ ス構造 ) が本発表で紹介されました 水平坑井 多段階フラクチャリング スリックウォーター ( 低粘性で水ベースの流体 ポリマーを少量混ぜて坑井内の圧損を低減 ) という技術の進歩によって ガス貯留層と坑井の接触面積 もしくは貯留層内での流体の流路体積が飛脚的に増加したことが大きな要因として挙げられます 今後は フラクチャー内流体の動き フラクチャリング流体の再利用 水圧破砕によってできたフラクチャーの制御について 更なる技術進歩が期待されます 350 件もの文献をレビュー Apacheの発表 Frac String With Seals Openhole Completion Placed in the Upper Lateral Liner Top Packer Swellable Isolation Packers Frac Sleeves 出所 :SPE 135268 発表論文 SPE 134491 タイトガスサンド層に再度フラクチャリングを施す際の地層応力の評価法 コロラド州の WattenbergフィールドのCodellタイトガスサンド層のデータを使い 地層の応力分布の変化を評価して 再フラクチャリングのタイミングと産ガスレートの増加について手法を検証 テキサス大オースチン校の発表 出所 :SPE 135386 図 8 図 9 水平坑井の裸坑に多段階フラクチャリングを施した 2 層同時生産 OHMS: Open Hole Multi-Stage system completion 発表論文 SPE 135268 米国ノースダコタ州のBakkenシェールガス構造において 水平坑井の裸坑に多段階フラクチャリング (Openhole Packer & Sleeve Completion) を施し 2 層同時生産を実現しました ( 図 8) 一度に24 段階ものフラクチャリングを実施することが可能となり 効率的なシェールガス開発法として 世界的でんぱな伝播が期待されます Baker Hughesの発表 Oil Window Gas Window Wise Denton Parker Nola/Simpson Fort Worth Muenster Arth Tarrant Marble Falls Ouachita Thrust Belt 出所 :SPE 135386 図 10 Newark Eastフィールドの位置 発表論文 SPE 135386 テキサス州のBarnettシェールガス構造において ケーシングではなく 裸坑に多段階フラクチャリングを施し コスト削減とフラクチャリングの段数増を同時に実現した坑井仕上げ (OHMS 図 9) のケーススタディー Newark Eastフィールド ( 図 10) では 2004 ~ 2005 年の近傍のケーシング井との比較において生産量に17% から68% の増加が見られたとのこと ( 図 11) です この理由の一つに 67 石油 天然ガスレビュー
エッセー Barnettシェールのように天然亀裂が卓越したフラクチャー型貯留層に対しては 裸孔仕上げだとフラクチャーの流動性を損なうことが少なく 坑井へのガスの流路を多く確保できることが挙げられました Eagle Oil & GasとPackers Plus Energy Services の発表 1,000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 出所 :SPE 135386 6 Months Cumulative MMCFGE 12 Months Cumulative MMCFGE 発表論文 SPE 135396 貯留層条件に応じたシェールガス開発の仕上げの最適化法についての発表 米国の Antrim Shale Barnett Shale Haynesville Shale Marcellus Shale Woodford Shaleの五つのシェールガスの貯留構造の開発について文献調査を実施し ガス価格の変動を考慮した仕上げ技術の最適化方法と 坑井 24 Months Cumulative MMCFGE OHMSを施した坑井と近傍のケーシング井図 11 (2004 2005 年掘削 ) との生産量比較 94C 94J N.W.T Ft.Nelson 出所 : Ziff Energy Group, 2008. 94P 図 12 Horn River Basinの位置と層序 60 Months Cumulative MMCFGE の生産性と経済性に影響を与える地質的要因についての説明が行われました 生産性 経済性に影響を与える地質的要因として層厚 (Thickness) 全有機炭素 (TOC) 孔隙率 浸透率 こうばい貯留層圧 貯留層圧の勾配 ガス含有量 (Gas Content) 石英含有量(Quartz Content) 粘土含有量(Clay Content) を 上記五つのシェールガス構造について分析し これらの貯留層データとの相関から 掘削 仕上げの最適化を図るためのフローチャートが示されました このフローチャートは 操業会社が自社で検討しているシェールガス開発の掘削 仕上げの初期計画を立案する際に 有用なガイドラインになると思われます このフローチャートに基づいて開発された経済解析ソフトもあり 上記の地質パラメーターを入力することで 坑井 ( 垂直井か水平井 ) フラクチャー流体 仕上げ流体の経済的最適化について簡易分析を行うことが可能とのことでした そのためのソフトウェアはUGR(Unconventional Gas Resource)Advisorというソフトウェア開発研究プロジェクトの一環として開発されているもので 2011 年末をめど目処にソフトウェアパッケージの完成を予定しているとのことです Chevron C&C Reservoirs Texas A&M 大の発表 発表論文 SPE 135454 シェールガス坑井への多段階フラクチャリングにかかる資機材のロジスティクスについて 2 坑の仕上げ作業から得た知見を紹介 戻りフラクチャリング流体と生産流体の処理ピット ( スイミングプールの利用 ) 流体やプロパントの貯蔵その他については 6 カ月前から計画 準備が行われるとのことです カナダでは初めて ケーシングではなく 裸坑に多段階フラク 2011.1 Vol.45 No.1 68
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 チャリングを施し コスト削減とフラクチャリングの段数増を同時に実現したとの報告がありました Penn West Petroleumの発表 < 注 > 三菱商事とPenn West Energy Trust (PWE) との共同事業 :Cordova Embayment (Horn River Basin 東方 図 12) において活動中のPWEと 16 月 23 日 カナダ ブリティッシュ-コロンビア州新規シェールガス鉱区公開入札への共同応札 2PWE 保有のシェールガス鉱区へのファームイン 3 三菱商事の在カナダ子会社であるCordova Gas Resources Ltd. とPWEがそれぞれ50% 保有する非法人合弁事業体を通じて シェールガスの開発 生産を積極的に推進 (2010 年 9 月 24 日付三菱商事プレスリリース ) 発表論文 SPE 135584 米国陸上 Williston 盆地に位置する Bakken 層での掘削事例の紹介 Bakken 層は 上部 中部 下部の3 層に分類され 上部 下部層は organic-richの頁岩 中部層は孔隙率 5% 浸透率 0.04mdのドロマイト シルト 砂岩が混合したフラクチャー型貯留層となっています 本貯留層において Open Hole Multi Stage fracturing system(ohms) で仕上げた坑井 ( 図 13) と Cemented Liner に Plug-and-Perforationの坑井刺激を 出所 : http://www.packersplus.com/pdfs/products/stackfracbroch%200818reg.pdf 図 13 OHMS 概念図 施し仕上げた坑井の経済性 生産性の比較結果の報告が行われました Bakken 層自体が Extended Reachの水平井 ( 掘削深度 / 垂直深度 >2) などの高度な掘削技術の適用によって 経済的に生産可能になったものであるとのことでした ( 現在の原油可採埋蔵量は 36 億 5,000 万バレル ) OHMSは施工時間とコスト両面を効率化するための水圧破砕技術で 連続的なポンプオペレーションで18 ~ 20の段数のフラクチャリングで仕上げることが可能となり Bakken 層のように天然亀裂が卓越したフラクチャー型貯留層に対しては 裸孔仕上げであるためフラクチャーの流動性を損なうことがなく 有効な仕上げデザインとなります 実際 本発表で示された結果でも OHMSで仕上げた坑井は Cemented Linerに Plug-and-Perforationで仕上げた坑井に対して 優れた生産性を示していました Slawson Exploration とPackers Plus Energy Servicesの発表 出所 : https://www.slb.com/services/stimulation/sandstone/~/media/files/stimulation/ product_sheets/sandstone/hiway_ps.ashx 図 14 SchlumbergerのHiWAY Channel Fracturing 概念図 展示スペース Schlumbergerの HiWAY Schlumbergerの HiWAYは 独自仕様のファイバーを利用しフラクチャーの流路を安定的に確保するための技術サービス ( 図 14) です 通常の水圧破砕では プロパントによってフラクチャーの開口幅を保持しますが プロパントの破砕 細粒分 (fines) 多相流の影響 非ダルシー効果等のために フラクチャーの流動性が失われることがあります HiWAYはこうしたフラクチャー内の流動性の損失を改善し 開口幅を確保しながら安定的に流体流動を保持するための技術です 有効適用範囲は 貯留層温度 :100 (37.8 ) から 250 (121.1 ) の比較的岩石強度の高い固結層とのこと Schlumbergerの担当者に どのようにプロパントの形状を維持するの 69 石油 天然ガスレビュー
エッセー PRODUCTION VALUE OPERATIONS VALUE VALUE Ability to Influence Sandface Permeability Low Post Installation Skin Positive Compliance Operational Simplicity Modular Construction Reduced Logistics RISK 出所 : http://www.darcyflow.com/getattachment/851ed89a-e15f-4cae-863d-e3302507b3cb/ Online-Brochure 出所 : http://www.spe.org/jpt/print/archives/2008/11/ JPT2008_11_9TechUpdate.pdf 図 16 Matrix Management System のメリット 図 17 Acid-Tunneling tool か質問しましたが 技術の守秘性にかかわるため 明確な返答を得られませんでした しかし 既にこの技術は実フィールドに多数適用されており ガスの生産性向上に寄与した実績を持っています 米国 Wyoming 州 Pinedale 近郊の Jonahフィールド ( 孔隙率 6 ~ 9% 浸透率 0.005 ~ 0.01md [1md=9.87 10-16 m 2 ] 有効層厚 800ft<244m> ガス飽和率 35 ~ 5 5%) では 1 万 2,0 0 0ft(3,6 5 8m) を 出所 : http://www.darcyflow.com/ getattachment/851ed89a-e15f-4cae- 863d-e3302507b3cb/Online-Brochure Matrix Management 図 15 Systemにおける仕上げツール 超える掘削深度をもつ坑井にHiWAY 技術を適用し 180 日後の累計ガス生産量で offset wellと比較し 24 % (7 3MMcf) 増と生産性の改善を実現したとのことです 展示スペース Darcy Technologies の Matrix Management System 英国アバディーンをベースにする Darcy Technologiesが開発した仕上げツールで 同社によると出砂対策において グラベルパック 単独型のサンドスクリーン 膨張型スクリーンに今後替わり得る技術 展示場には 図 15のようなツールが展示されていました 二重管構造になっており外管の外周部がスクリーン機能を果たし アニュラス部 ( 外側 ) には 6 本の炭素鋼のチューブが圧迫されて押し込まれています この中を通る生産流体のバックプレッシャー ( 背圧 ) を調整することで 6 本のチューブが膨張 圧壊し サンドフェース ( 砂岩と仕上げツールとの接触面 ) に対する圧力がコントロールできます 積極的にサンドフェースの圧力を調整することで 生 出所 : http://www.epmag.com/ archives/techwatch/309.htm Acid Jetによって図 18 穿孔された炭酸塩岩 産に伴うサンドフェースの変形をコントロールし 出砂しない領域内で生産性を最大限に上げることが可能になるとのことです ( 図 16) 展示スペース BJ Serviceの Acid- Tunneling Technique Baker Hughes 傘下の BJ Serviceが開発し 特許を所有している酸処理用のツール ツールは図 17のように2 個所のキックオフポイントを持ち コイルドチュービングの先に付けられ仕 2011.1 Vol.45 No.1 70
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 上げ層まで降ろされます ツールの先はノズルになっており 酸がジェット噴射される仕組みのようです そのジェットの効果は図 18のとおり また図 19のように キックオフしたツールスを回転させながらジェット噴射することで裸坑部自体を側面方向に Secondary Dissolution Primary tunnel Secondary Dissolution Primary tunnel 出所 : http://www.worldoil.com/february-2007-coiled- Tubing-Technology-Acid-tunneling-with-coiledtubing-significantly-increases-production.html 押し広げることができ 炭酸塩岩油層の産出能力を飛躍的に上げることが可能になるとのことです 本技術自体は数年前から市場に出ていますが 公表された実績生産データは図 20のインドネシアでの結果だけのようで これを見る限りでは相当な生産性の改善が認められます (3) フラクチャーのモニタリングと評価 発表論文 SPE 133877 油層シミュレーションに使われるフラクチャーのモニタリング 岩石力学と流体力学の知見を使った マイクロサイスミックによるフラクチャーのマッピング と 貯留層の流動シミュレーションモデル の融合 ( 図 21) 坑壁近傍の複雑なフラクチャー分布の解釈は 全体のフラクチャーのマッピングに重要な情報となります Schlumbergerの発表 発表論文 SPE 135262 minifrac, fracture treatment, microseismic, production dataを統合し Marcellusシェールガス構造の開発の増産計画と経済的最適化を図った事例紹介 Marcellusシェールガス構造は Pennsylvania, New York, Ohio, Maryland, West Virginia 州にまたがり Devonian Black Shale フィールドの一部を形成しています また 本構造は 500Tcf( 兆立方フィート ) もの巨大なガスポテンシャルを持ち そのうち可採埋蔵量は約 10% となると推測しています 本発表では この Marcellus シェールガス構造を対象に 水平井に multiple transverse vertical hydraulic fractureを施工した場合の設計の最適化 ( フラクチャーサイズ フラクチャーのステージ数 ) と経済性評価に関するデータ統合手法が紹介されました 次の5 点が分析に使用したデータになります 1 岩石物理学分析と検層データの解析 : 岩石物性や貯留層特性の解析 2minifracテスト : 応力場の解析 3 microseismic: フラクチャージオメトリーの解析 4Discrete Fracture Network(DFN)modeling: Acid-Tunnelingの酸処理図 19 オペレーションイメージ Geology & Geophysics Geomechanics HydraulicFracture Mapping Reservoir Simulation ComplexHydraulic Fracture modeling 出所 :from Soper et al. 2008 出所 :SPE 133877 インドネシアの炭酸塩岩油層における図 20 Acid-Tunneling Techniqueの適用結果 フラクチャーのマッピング と 貯留層図 21 の流動シミュレーションモデル の融合 71 石油 天然ガスレビュー
エッセー フラクチャーの広がりを解析 5 生産履歴 : フラクチャー長 伝導性 (conductivity) スキン( 坑井近傍の生産性障害による浸透率低下の度合 ) 浸透率の分析 これらのデータを相互に利用しDFNモデルを修正し フラクチャー流体 プロパントの種類および量のパラメーター解析を行い 坑井刺激設計が生産性に与える影響とその経済性が分析されていました 本シェールガス構造においては フラクチャー数を30で施工した場合に 最適なNet Present Value( 施工後 3 年で1,200 万ドル ) が得られるとの結果が示されていました 当然のことながら 得られているデータによってフィールドごとに統合手法は異なりますが より信頼性の高い設計デザインと経済性評価のためには 本発表で紹介されたような方法論は参考になります Atlas Energy Resources Bazan Consulting Meyer & Associates の発表 発表論文 SPE 135523 タイトガス層における水圧破砕処理の最適化と坑井生産性に影響を与えるパラメーター評価についての発表 米国西部 Wyoming 州の Pinedaleフィールドにおけるタイトガス層開発を対象に データマイニング技術と多変数ニューラルネットワークを用いた分析結果が報告されました Pinedale フィールドは 1 垂直方向 水平方向に広く分布した河川堆積物の砂岩を貯留層としている 2 圧力勾配が0.44psi/ ftから 0.83psi/ftと幅広い分布を持つ 3プロパントの閉口応力が4,000psiから1 万 psiと幅広い分布を持つといった特徴のために 坑井の生産性評価において高い変動幅があります このため 水圧破砕の設計には 不確実性や変動幅を考慮することが重要になります 本発表では 坑井設計の最適化と地 質的なスイートスポット ( ガスの密集帯 ) の特徴を同定するためのツールスとして 多変数ニューラルネットワークの有用性が示されました 坑井の生産性に影響を与えるインプットパラメーターとして 操業により制御できない層厚 圧力勾配 孔隙率 浸透率 ガス飽和率等と 操業により制御が可能なプロパント圧入体積 Flowback initiation timingの2 種を使って分析を実施しています 分析のなかでは 全インプットパラメーターのうち 生産性に与える影響としては 操業条件であるプロパント圧入体積が10% Flowback initiation timingが 9 % 程度との結果が報告されました また 本手法を用いたプロパント体積の最適化のデモンストレーションが示され Pinedaleフィールドで2009 年に実施された全 195ステージのうち 49ステージでプロパント体積を増加させることで生産量の増加が可能との結果を得ました この結果は 1,962Mscf/d(Mscf/ d: 千立方フィート / 日 ) の増産に対して $2.23Millionの費用が掛かるというもので ガス価格 $2.6/(Mscf/d) が損益分岐点となり ガス価格が $3/ (Mscf/d) でも経済的に成功すると説明されていました Shellの発表 まとめ 現在 埋蔵量の大半 (80% 弱 ) が産油国のNOCに握られている環境下では IOCや独立系石油会社 ( インディペンデント ) は 新規油田開発よりも既発見油田からの生産促進に軸足を置かざるを得ず 投資機会は縮少しています 縮少する投資機会に対応した開発技術のトレンドを整理するには 石油価格変動下における石油開発技術の適用とそれを担う人材確保の行方という観点からの物事の分析が必要です 今回のSPE 年次総会からの情報を基に 技術トレンドを考えてみました SPE 年次総会は 言うまでもなく 石油工学者 (Petroleum Engineers) にとって1 年で最大の展示を備えた学会で 学術的にも最も権威があると言われます 今回も米国の大学を中心に 多くの学生が発表を行っていました すその業界の技術者の裾野の広がりは世界的に維持できています アジアの貢献としては 米国留学中の中国人やインド人の口頭発表数が多く 彼らが石油工学の発展に寄与しているのは もはや常識です 日本人も早稲田大学や東京大学を卒業した若い人が そのまま当地の大学院に進学し石油工学を勉強し 米国企業に就職 あるいは就職を目指している姿も垣間見られました 一方 各大学とも適正な教員数確保に苦しんでいます その背景には 上流産業の好景気に伴う教員の産業への流出も挙げられます また 夏場に職場経験を積み業界の雰囲気に慣れるインターンシップ研修の募集も希望学生数に満たず 大学も業界も将来の人材確保に苦労しているとのことでした 展示スペースでは 例年どおり Schlumberger, Halliburton, BJ Services, Baker Hughes, Weatherford といったソフト ハードをコンサルティング ( 専門家 ) とともにオペレーターに提供できる大手サービス会社がスペースも多くとり 景品や飲み物を取り揃え 観衆を集めていました ここ数年の傾向ですが 製品のカタログを渡すというよりも 大型スクリーンでのPC 画面やDVDといったメディアを使ってのPRが目に付きます 油層シミュレーションモデルの紹介では 5 年くらい前から油層全体が 3 次元的に時間経過とともに 油層の流体飽和率の変化が視覚的に適切にとらえられるインターフェイスがパソコン画面上で実現できるようになっています 2004 年来 高油価が継続し 油田操業により多くのお金が掛けられ リ 2011.1 Vol.45 No.1 72
Petroleum Engineer の取り組む技術トレンド 2010 モートモニタリング技術や動く3 次元油層モデルを使って生産量増加を目指し 坑井の追掘や改修といった油層管理の意思決定時間の短縮化が図られています もちろん 油田の現場をよく知り データをよく見極める目を持った専門家の存在がその前提としてあるわけですが 大手サービス会社の油田操業現場への技術提供がかなり細部にまで及んでいます 極論すれば 油田操業会社の技術者はサービス会社の提供する技術のよし悪しを判断 管理する役目になっているように感じられました ( 場合によっては 詳しい技術の中身の理解はあまり要求されない ) 現在埋蔵量の大半が産油国のNOC に握られている環境下で IOCや独立系石油会社は 新規油田開発よりも既発見油田からの回収率向上や生産効率向上を目指した技術 ( インテリジェントウェル EOR/IOR 水平坑井 多段階フラクチャリング 坑井コントロール ) の適用や非在来型資源 ( オイルシェール タイトガス オイルサンド ) の開発に軸足を移しつつあります 非在来型の油ガス田について まずはシェールガスを中心に 更にはシェールオイルまで 開発が加速しつつあるというのが世界のコンセンサスであると思います 今回の年次総会への出席を通じて最も印象に残ったのは 上述のような状況を敏感に感じ取っているサービス会社 ベンダーによる技術開発が牽引し これまでは開発が困難であった性状の悪い油層に対して行う水圧破砕法 酸処理法などの分野に 技術開発投資が集中しつつあるというトレンドでした また これまで年次総会の開催場所は 常に米国内でしたが 今回 2010 年に初めて米国外となるイタリアのフィレンツェでの開催となりました この背景には 9 万 2,000 人にも達す る会員数の半数以上が北米外の在住者 (10 年程前には欧米の会員が大半でした 2003 年からの会員数増加率は なんと 3 0 %) であること 石油 天然ガスの掘削 油層管理 生産に関する技術のフロンティアがメジャーのみならず 可採埋蔵量の80% 弱を支配す ける国内関連企業の認知度の向上や業界発展のためにも 30 歳代までの若手技術者は特に積極的に参加 発表を行い 自らの技術レベルを磨いていくことが ゆくゆくは石油天然ガス資源の供給確保へとつながるのではないでしょうか る産油国の国営石油会社をはじめ イ ンド 中国ほかへと 全世界的な広がりを見せているということもあるよう 付録 : シェールガス開発技術の概要 に思います 筆者は 石油開発技術のグローバル化を強く意識し 環境対策をとりつつ ( 出所 :JOGMEC 石油 天然ガスレビュー シェールガスのインパクト 可採埋蔵量の積み増しを着実に進め 2010 年 5 月 伊原賢 ページ20 ~ 石油需要の伸びにも応える供給へ努力する上流業界の姿を感じました 22を抜粋 ) SPE のみならず AAPG( 地質 ) SEG( 物探 ) などの技術会議に出て 最新動向を肌で感じ かつ 発表を行うことは大変貴重な経験であり これらは 日本の石油開発業界の若手技術者の技術レベルの底上げには欠かせないと考えます 世界の石油開発業界にお シェールガスは在来型ガスと比べ貯留層は不均質でガスの包蔵メカニズムが複数ある 過去 20 年のこの複雑な貯留層特性への理解は掘削 仕上げ 生産技術の進歩により深まったと言える 具体的には水平掘りや岩石に人工的に割れ目をつくる水圧破砕 ( 図 22) さ さ 出所 : 石油技術協会資料 図 22 水圧破砕技術の概要 73 石油 天然ガスレビュー
エッセー といった要素技術の進歩が重要だ が在来型ガス開発に比べ多い 坑井や水平部分への多段階水圧破砕 シェールガスの開発は技術主導型 生産減退率は高く 1 坑あたりの生 図25 も広く適用されるようになっ と言われ 製造業 職人技に近い技術 産レートは在来型に比べオーダーが一 図 2 3 を用いる 新規のガス開発事 桁低いので 生産量確保には従来型 割れ目が貯留層中に広がらず 上下 業であるため 米国ではメジャーでは よりも多くの井戸数を要する した に成長し 帽岩 キャップロック を壊 なく中堅企業中心の事業としてスター がって 一つの坑口位置から複数の水 し 他の貯留層や帯水層につながって トした 複雑できめ細かな作業が必要 平部分をもつ坑井も出現した 図 2 4 しまうと ガスの回収に支障をきたす なことから 作業コントラクターの数 水平部分の長さが 2km を超える水平 そこで 割れ目に関する情報を少しで てきた も多く得るために 割れ目そのものを 観測する技術開発が進められてきた マイクロサイスミック技術 図 2 6 に より できたフラクチャーの成長や広 がりも把握できるようになってきた ところで マイクロサイスミック とは 割れ目が形成される時に発生 する地震波 P 波 S 波 を観測し 解 析して割れ目の広がりを評価し ガ 圧入流体中に含まれた固形物のネットワーク /Fiber が 機械的にプロパントを閉じ込めながらフラクチャー内 に移動 Fiber は熱により分解され貯留層に浸み込む ス回収の効率向上に必要な情報 割れ 目のマッピング を提供する技術であ 米国におけるガス生産量と可採埋蔵量の激増 る 図 2 7 2 0 0 0 年以降 マイクロ シェールガス革命 500 780Tcf 埋蔵量が期待 貯留層特性 長い間 根源岩や貯留層構造の シール 蓋 と見なされてきた 水平坑井と多段階フラクチャリング フラクチャリング後の貯留層評価 生産量と可採埋蔵量増に必要な技術サイクル サイスミックには現場で 6,0 0 0 件以上 の適用事例がある しかし 新しく シェールガス層に掘られた水平坑井を 横切るフラクチャー分布 マイクロサ イスミック 高度な技術であり 技術プロセス 作 業の計画 実行 分析 解釈 には厳 密さを加える必要があると言われる 出所 Schlumberger資料より 水平坑井 水圧破砕 マイクロサイ スミックという 三つの要素技術さえ 図23 シェールガスの開発技術 理解し 実践すれば効率的に経済合理 Fracture Stimulation 200m Lateral Spacing 出所 カナダNational Energy Board 一つの坑口位置から複数 図24 の水平部分を持つ坑井 出所 SPE 107053 図25 水平坑井と多段階の水圧破砕のイメージ 2011.1 Vol.45 No.1 74
Petroleum Engineerの取り組む技術トレンド2010 Geology Optimized Completion Strategy Enhance Recovery Stimulation Design Reservoir Characterization Reservoir Simulation 出所 ICEP 出所 Schlumberger マイクロサイスミック技術 微小地震/ シェールガス開発に適用 図26 マイクロサイスムを観測 分析し水圧破 図28 される技術サイクル 砕でできた割れ目を評価 1,400 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 1,200 Monitoring well 1,000 Mcf per Day Treatment well Microseism Reservoir 800 600 400 200 0 1995 Hydraulic fracture 出所 ICEP 2000 2005 2010 年 出所 SPE資料 微小地震/マイクロサイスムから出る 図27 地震波を観測井でモニタリング 米国におけるシェールガス生産 図29 レートは技術進歩によりV字回復 性をもってシェールガスを開発できる 知ることで マトリクスの孔隙率と水 層データからフラクチャーを貯留岩元 わけではない それには シェールガ 飽和率が分かり シェールの浸透率と 来 の も の と 掘 削 上 の も の に 分 類 し スを経済的に地下から取り出す 技術 シェール中のガス量 孔隙内とシェー シェール中で最も浸透率の高い個所を サイクル を習得する必要がある す ルの有機物に吸着の 2 種類 の推定に 探しあてる そこに穿孔とフラクチャ なわち 地下に眠る資源量を可採埋蔵 つながる シェール中の有機物はガス リングを施し高生産レートを目指す 量に変え得る緻密な技術検討が必要 源のみならずガスの吸収媒体であるこ 地層圧力の計測も必要だ 水平掘りや だ とに留意しなければならない 地化学 傾 斜 掘 り MWD Measurement まず地化学検層データからシェール 検層データからは粘土分のタイプも分 While Drilling ガ ン マ 線 検 層 の鉱物組成 炭酸塩 黄鉄鉱 /Pyrite かり それが水圧破砕に用いる圧入流 Rotary Steerable System 他 の 掘 削 粘土 石英 Total Organic Carbon/ 体の仕様を決めるのに役立つ 検層技術を適用し 貯留岩特性を把握 TOC を分析する 岩石中の TOC を 75 石油 天然ガスレビュー 次 に Electrical Imaging と Sonic 検 し 貯留岩内の流体挙動シミュレー
エッセー ションを実施し その結果を坑井刺激法に的確に反映させ ガスの生産量および可採埋蔵量増に結びつける シェールガスを開発するオペレーターには この技術サイクル ( 図 28) の理解と適切な実践が求められる 技術サイクルの適用ノウハウを身に 付けたオペレーターが手がける開発プロジェクトでは 作業の失敗が減って効率も高まり 初期生産レートもV 字回復が見られる ( 図 29) 総じて ガスの産出コストも低下傾向にある 結果として 最初のガス生産レートの効率化 埋蔵量推定精度と経済性の 向上につながっている この技術リスクの軽減が 米国ではシェールガス開発に投資が集中するようになった理由だ この技術進展と一定のガス価が維持されれば シェールガスの開発は世界中に進展を見せることとなろう 参考文献 1.JOGMEC 石油 天然ガスレビュー Petroleum Engineerの取り組むトレンドを読み解く 2010 年 1 月伊原賢 2.JOGMEC 石油 天然ガスレビュー シェールガスのインパクト 2010 年 5 月伊原賢 執筆者紹介 伊原賢 ( いはらまさる ) 1983 年 東京大学工学部資源開発工学科卒業 1991 年 タルサ大 ( 米国オクラホマ州 ) 大学院石油工学修士課程修了 1994 年 東京大学博士号 ( 工学 ) 取得 石油学会奨励賞受賞 1983 年 石油公団 ( 当時 ) 入団 技術部 石油開発技術センター アラブ首長国連邦 (UAE) ザクム油田操業 1999 年 生産技術研究室長 天然ガス有効利用研究プロジェクトチームリーダー JOGMEC ヒューストン事務所長ほかの勤務を経て 2008 年 7 月より石油 天然ガスの上流技術の調査 分析業務に従事 ( 上席研究員 ) 専門は石油工学と C1 化学 趣味はへぼゴルフ ホットヨガ グルメ ( 和食中心 ) アニメ デザイン 故郷の博多に加え 現在横浜の住環境も堪能中 坂東克彦 ( ばんどうかつひこ ) 2001 年 3 月 横浜国立大学大学院工学研究科物質工学専攻修了 同年 JOGMEC 入構 石油工学研究室に配属 その後天然ガス有効利用プロジェクトチーム 東シベリアプロジェクトチームを経て 2006 年 4 月より現職 ( 現在 技術調査部開発技術課兼 R&D 推進部 CCS 環境調和型油ガス田開発研究チーム ) 趣味はピアノ ギター演奏 ( 好きなバンド Korn) ジョギング 伊藤義治 ( いとうよしはる ) 2004 年 早稲田大学大学院環境資源及材料理工学修了 2007 年 JOGMEC 入構 石油工学研究課 ( 旧 研究室 ) 配属 2010 年 4 月より現職 趣味はジョギング 水泳 読書 音楽 ( クラシック ジャズ ロック ) 2011.1 Vol.45 No.1 76