御社が販売の主導権を握る : 販売の主導権は販売書類で決まる Taking Charge of Your Sale: Controlling the Sale Means Controlling the Sales Documents 弁護士エドワード アンダーヒル 流通販売関連情報 販売 とは どの時点で生じるのだろうか 騒々しい工場で作業を行う顧客を初めて訪問するときだろうか ゴルフコースで購買担当者と会話を交わすときだろうか それとも 購買部副部長との E メールのやり取りのなかで生じるのだろうか 御社の営業マンが ゴルフコースの後半 9 ホールで話したことや封筒の裏に表示したものは 販売契約の一部だろうか E メールやテキスト メッセージが 後に 保証 または契約条件とみなされる可能性はないだろうか 私達は今や 携帯メールで使用される略語や E メールを含め 様々な方法でコミュニケーションを行うことができる それはつまり 御社が販売文書において販売条件をしっかり整理することが今まで以上に重要になったということである 売り手である御社は 100 万ドルの印刷機を販売しているか または 10 ドルの小さな部品を販売しているかに関わらず 御社の権利を保護し 責任を限定するとともに 御社の製品に対して全額の支払いがなされるように 販売取引を文書化することで販売手続の主導権を握ることができる 販売の主導権を握り 販売取引を文書化することは ときに手間のかかる作業のように見受けられるが 実は概してその反対である 販売が思い通りに進行していれば なぜ面倒な手間をかけてまでその取引を文書化しなければならないのかと疑問に思うだろう しかし 10~20 件の取引に 1 件は 問題が生じ その結果 未回収の売掛金が発生したり 費用と時間のかかる訴訟に発展したりするものである 御社が通常の営業業務の一環として販売取引の管理を習慣付けることにより 御社の全ての販売業務が順調に進むだけでなく 販売毎に代金を全額回収できるようになるだろう さらに 御社に対して請求が提起されても その請求をより迅速に より小額の法的費用で解決できるようになる可能性がある I. 販売の主導権を握るには何が必要か? 販売手続の主導権を握るには まず明確で有効な標準販売条件を作成する必要がある そして それらの標準条件が議論の余地なく販売取引の一部となるように必要な措置を取らなければならない 理想としては 販売取引に関する全ての義務が 売り手の販売条件を含む単一の契約書 つまり売り手と買い手の双方の署名が付された契約書で確認されるべきである しかしながら 売り手と買い手の双方の署名が付された単一の包括的な契約書 ( 弁護士は 統合契約書 と呼んでいる ) の作成は 顧客専用の製品が設計 製造される場合か あるいは一台数百万ドルの機械または加工システムが販売される場合を除き 米国では一般的ではない 通常 米国の商取引のほとんどが 書式 ( 定型文書 ) と E メールの不完全なやりとりで文書化されている また 買い手と売り手が交わす 標準条件 が一致しなかったり あるいは真っ向から矛盾することも多い では 一体どちらの書類が優先されるの 本書は クライアントの皆様に情報を提供するために作成されたものであり 法務相談に代わるものではありません 広告とみなされる内容を含む場合もあります 2012 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved.
だろうか 企業にとっては 紛争が起きない限り 自社の販売条件が本当に優先するか否かを確認するためにその販売手続を 検証 するすべがない もちろん 当事者自身が訴訟当事者となれば話は別である 契約上の紛争は 販売においてどちらの条件が優先されるかという両者間の論争から始まることが多い また こうした争いが 企業の上層幹部にとっては その企業の販売 書式 について初めて熟考するきっかけとなることも珍しくない 上層幹部は 弁護士と共に カタログ パンフレット E メール 設計図 写真 見本 メモ 企業間で交わした書式や文書など 販売の法的根拠を形成する文書を収集する 裁判所や弁護士は 書式の交換を 書式間の争い と呼んでいる 販売においてどちらの書式が優先するかを決定すれば 販売に関するどのコミュニケーションや会議が 実際の販売条件を決定する上で考慮の対象になるかをも見極めることができる どちらが 書式間の争い に勝つかということについては 買い手と売り手が莫大な費用をかけて取引履歴を調査するまで 裁判官でさえ知り得ないことが多い そのような法廷闘争はできることなら回避すべきであり そして その鍵は販売の主導権を握ることにある 従って 御社が販売の主導権を握ろうと望むのであれば 書式間の争い に勝つための秘策を事前に知っておく必要がある II. 書式間の争い の勝利は 御社の標準条件から始まる 書式間の争い に勝つための第一ステップは 販売取引で最初に交わされる文書 ( 例えば 販売見積書 または 販売承認 書など ) の中の 1 ページに 売り手の標準販売条件 を明記することである 売り手の標準販売条件には 最低以下のものが含まれなくてはならない 買い手の購入注文書の条件から売り手が好ましくないと思う条件を効果的に排斥する文言承諾および取消条件引渡条件買い手の検査義務インボイス ( 送り状 ) 支払および返却についての義務該当する場合 製品に対する担保権を売り手に付与するという文言該当する場合 秘密保持義務製品安全情報および製品取扱説明準拠法 管轄権 裁判地 および売り手を保護するための権利放棄条項仲裁および調停条件など 紛争解決条項 不可抗力 条項おそらくこれが最も重要であろうが 限定品質保証 および損害賠償制限を含む御社の標準販売条件 限定品質保証は 販売する製品が約束通りの性能を果たし 果たさない場合は 誠実な救済を買い手に提供するという 書面による売り手の明示的な意思表明である この 限定品質保証 を提供することにより 売り手は 製品が何らかの理由で約束通りの性能を果たさない場合に 通常買い手に対する法的義務を契約上制限できる 売り手が 限定品質保証 を提供せず また回復可能な損害賠償額が契約上制限されていない場合には 統一商事法典 (Uniform Commercial Code 以下 UCC という ) による品質保証が御社の販売に適用されることとなる 注意しなければならないのは UCC の品質保証条項は 御社の限定品質保証に比べて より幅広い権利と救済を買い手に保証する傾向があるという点である UCC は 米国 50 州における法律であるため 売り手は その販売が UCC に規制されることを念頭に置かなければならない UCC が認める品質保証を排斥し UCC に基づき原告 ( 買い手 ) が回復できる損害賠償額を制限するためには 売り手の 限定品質保証 および損害賠償制限を書面で提示しな 2012 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 2
ければならず かつ 販売に関連して買い手に提供される書類に目立つように表示されなければならない 御社の限定品質保証の表現 表示 および配布方法は その有効性が非常に重要なため 売り手は 全ての書式 ( カタログ パンフレット およびウエブサイトの掲載を含む ) における限定品質保証の発行に関して UCC の要件に準拠するよう弁護士に相談されることを強くお勧めする III. 売り手は 標準条件があらゆる販売において強制可能であることをどのように確認できるか? さて 御社は 有効な限定品質保証と有効な損害賠償制限が含まれたしっかりした標準販売条件を作成した しかし残念なことに 御社は先で見たような単一の統合契約書を常に作成するわけではない それでは 将来起きるかもしれない 書式間の争い に 御社が勝つための最良の方法は何か それは 売り手から買い手に送信される一連の取引文書により 買い手を御社の標準販売条件に拘束することである 売り手は 自らの販売条件が 契約において必ず優先されるように 以下の書類を使用する (a) 見積書 (b) 販売承認書 (c) インボイス ( 送り状 ) これらの書類はいずれも取引における特定の手続と関係する (a) 見積書見積書は 販売において売り手が買い手に対して特定の条件 ( 例えば 数量 価格 引渡し 仕様など ) および製品の品質保証を明示する提案書である 一般に見積書は 売り手が買い手の発注を促すためのものである 買い手はしばしば特定の見積書番号を発注書の中で参照し 参照した見積内容を発注書の一部とすることができるので 見積書は御社の標準条件を含めるには理想的な場所である (b) 販売承認 ( 承諾 ) 書販売承認書は 売り手が買い手からの注文書を承諾したことを示すもので 必要であれば追加条件を明記し 売り手の販売条件の全てが買い手に確実に伝達されるようにするためのものである 製品の出荷条件として買い手に販売承認書に署名してもらうことを習慣化し 買い手が署名する最後の書式に御社の標準条件が含まれるようにすることをお勧めする これが不可能な場合 売り手は 慣例として 製品が引き渡される前に買い手に販売承認書を必ず送信するようにすべきである (c) インボイス ( 送り状 ) インボイスは 製品について買い手に発行される請求書である 売り手はインボイスの中で販売条件を参照し どこに参照元があるかを説明すべきである 一般的に 販売条件を販売の一部とするには こうした条件をインボイスに含めるだけでは十分ではない しかし このような条件をインボイスに含める理由は他にもある それらについての詳細は 御社の担当弁護士に説明を委ねたい 従来 売り手の標準販売条件は 一般的に売り手の文書の裏面に記載されていた しかし E メールの到来により 書式の裏面は姿を消した その代わり 売り手は 標準販売条件を有しており それらの条件に限定して販売する旨を買い手に通告し その他の条件は明示的に排斥するという断固たる措置を取らなければならない これを達成するためには 売り手は その条件を 公示 するあらゆる機会を探して カタログやウエブサイトに掲載したり パンフレットの中で参照したりしなければならない さらに 全ての販売は 売り手の標準販売条件と限定品質保証に準拠し それら標準販売条件と限定品質保証は売り手のウエブサイトで閲覧可能であり 要求に応じて入手可能である このような条件は 本書に明確に組み込まれ 売り手は 売り手の条件と矛盾する あるいは売り手の条件を曖昧にするいかなる条件を明示的に排斥し拒否するものとする という文言を売り手の書式 ( 例えば 見積書 販売承認書 インボイスなど ) の最初のページに掲載することをお勧めする 2012 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 3
IV. まとめ 御社が 21 世紀において利益向上を掲げるのならば 各販売において主導権を握る必要があるであろう それは販売契約において主導権を握ることに他ならない 御社は まず標準的な限定品質保証や損害賠償制限などの有効な標準販売条件の作成から始める必要がある 取引が御社の標準販売条件に準拠して行われるためには 販売において御社の標準条件 ( だけ ) が優先することを認める文書に買い手の署名を付してもらうことが 最良の業務慣行 である そして 御社の条件が 売り手と買い手の双方の署名が付された単一の完全な販売契約書に含まれることが理想的である それが不可能ならば 買い手に御社の標準販売条件を含む文書 ( 署名が付された販売承認書など ) に署名してもらうべきである それさえも達成できない場合には 法的紛争が生じた場合 書式間の争い が予想されるのもやむをえないであろう 少なくとも 顧客に配布する全ての販売促進用資料ならびに全ての書式上で御社の標準販売条件を参照する ( そしてそれを含む ) ことで 書式間の争い に勝てるようにし さらに 御社のウエブサイトのリンクにも標準販売条件を忘れずに公開することである 当事務所では 御社の標準販売条件や現在の限定品質保証を含む販売書式を最新化するためのご相談に応じています 本書に関するご質問は エドワード アンダーヒル弁護士 ( 電話 :312.245.7500 Email: eunderhill@masudafunai.com) までご連絡ください 日本語でのお問合せをご希望の方は クライアント サービス部門の江口香 ( 電話 :312.245.7482 Email: keguchi@masudafunai.com ) または徳吉史子 ( 電話 :312.245.7439 Email: ftokuyoshi@masudafunai.com ) までご連絡ください 2012 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 4
流通販売部門 増田 舟井法律事務所の流通販売部門は 製品の製造 流通 販売およびサービスに携わるクライアントに法的サービスを提供しています また このような事業分野に関する法律問題だけではなく 宣伝広告 マーケティングまたは価格設定などに関するご相談にも応じています さらに ディストリビューター 販売業者 販売代理店などとの取引も含め 商品やサービスのディストリビューションおよび売買あるいは反トラスト法について 重大な問題が発生する前にそのリスクを回避するための予防対策 ( リスク マネジメント ) を提供すると共に 製品の保証や製造物責任問題に欠かせない法的アドバイスはもちろん 同問題の回避対策や訴訟費用など手続上の対策も講じます 訴訟部門 増田 舟井法律事務所の訴訟部門は 全米の連邦 州裁判所または仲裁裁判所 調停機関および行政機関における事実審理または上訴処理での代理も含め 様々な分野で発生する紛争および訴訟を取り扱います 商取引上のごく単純な問題から複雑な紛争まで 国内外のクライアントが直面する独自の状況に適切に対処しながら トップレベルのリーガル サービスを提供します 当訴訟部門は 各クライアントの法律上および事業上の目的はそれぞれ異なるという理解に基づき クライアントの目標に適った戦略を立てるために協力を惜しみません 増田 舟井法律事務所 増田 舟井法律事務所は 米国で事業経営や投資を行う国際企業ならびに米国企業を代理する法人向けの総合法律事務所です シカゴ シカゴ郊外 ( シャンバーグ ) およびロサンゼルスに事務所を構え 所属する40 名以上の弁護士たちが 会社設立 買収 融資 不動産の所有 開発 リース 海外からの従業員派遣 雇用 労働 福利厚生および紛争解決 知的財産 著作権 商標 商事訴訟 債権者の権利とリスク マネジメント サービス 製品の流通 販売システムの構築など 事業のあらゆる側面においてクライアントにリーガル アドバイスを提供しています CHICAGO 203 North LaSalle Street Suite 2500 Chicago, Illinois 60601-1262 TEL 312.245.7500 FAX 312.245.7467 LOS ANGELES 19191 South Vermont Avenue Suite 420 Torrance, California 90502-1051 TEL 310.630.5900 FAX 310.630.5909 SCHAUMBURG 1475 East Woodfield Road Suite 800 Schaumburg, Illinois 60173-5485 TEL 847.734.8811 FAX 847.734.1089 www.masudafunai.com 2012 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 5