平成 27 年度 震災時における二輪車の避難行動 に関する調査研究報告書 東北大学 未来科学技術共同研究センター 山邉茂之 1
目次 1 背景 目的... 3 2 アンケート内容... 3 3 調査のまとめ... 6 4 おわりに... 8 2
1 背景 目的東日本大震災は昼間に起こった震災のため, 多くの方が乗り物 ( 自動車やバイク 自転車 ) に乗っている状態で震災に遭われ, 災害時 徒歩 で避難するのが原則であるが, 乗り物に乗っている状態でどのように避難してよいのか分からない多くの方が居た. さらに, 徒歩で避難することが困難な方もいて, 乗り物に乗らないと逃げられない人もいたことから, 震災当日, 様々な乗り物に乗った状態での避難の行動が行われた. その中で徒歩でも自動車でもない二輪車での避難は, 絶対数が極めて低いが本アンケートで把握することで, 当時の避難行動から乗り物に乗った状態からの避難訓練方法の提案を行う. 上記の背景から, 最大の被災地である宮城県石巻市を対象に避難行動のアンケート調査を行うことを決め, 自転車やバイクの販売店や修理店, 現在から逆算して 5 年前に記憶があると思われる小学生 中学生世代つまり現在, 中学生や高校生の方を中心に自転車を使っていた可能性が高い方からお話が聞きやすい地元の教育委員会にも精通していた地元の方に協力いただきアンケート調査を実施した. 2 アンケート内容 アンケートを実施した内容を以下に示す. 本アンケートは, 東北大学未来科学技術共同研究センター准教授山邉茂之が実施するもので 個人を特定するものはなくプライバシーに配慮した形で実施いたします 本アンケートは学術的研究のみに使用し 他のことには利活用いたしません 震災時の乗り物 ( バイク 自転車 ) 乗車での 避難行動の調査ご協力のお願い 東日本大震災は昼間に起こった震災のため 多くの方が乗り物 ( 自動車やバイク 自転車 ) に乗っている状態で震災に遭われました 災害時 徒歩 で避難するのが原則であり 平時に定期的に避難訓練をされていたかと存じます しかし 昼間に地震が起こったことから乗り物に乗っている状態でどのように避難してよいのか分からない多くの方が居られました また 徒歩で避難することが困難な方もおり 乗り物に乗らないと逃げられない方もいたことから 当日 様々な乗り物に乗った状態での避難の行動を本アンケートで把握することで 当時の避難行動から乗り物に乗った状態からの避難訓練方法の提案が出来ればと思っております 今回は特に二輪車での避難行動アンケートになります ご協力お願い申し上げます 3
他の方から聞いた話も参考になりますので 是非そのお話も記載いただければ幸いです (0) 下記 どちらの場合かご選択下さい 1 東日本大震災 ( 以後 3.11) 時の行動 2 3.11 の余震である 2012 年 12 月 7 日 17 時 18 分頃の三陸沖地震時の行動 (1) 性別 年代 ( 地震が起きた当時の年齢 ) 1 男性 2 女性 1 10 歳代 2 20 歳代 2 30 歳代 3 40 歳代 4 50 歳代 5 60 歳代以上 (2) 地震が起きた際に乗っていた乗り物 ( 複数選択可 途中で別の乗り物に乗り換えた場合は 2 番目に乗った物を で囲って下さい ) 1 自動車 2 バイク 3 自転車 (3)(2) で選んだ乗り物でなぜ避難しようと思ったのか 例 : 乗り慣れたものだから移動が速いからなど ( ) (4) 地震が起きた直後の行動 1 止まった 2 速度を落として徐行した 3 走行を継続した 4 その他 ( ) (5) 地震 津波の情報の入手方法 1 携帯 スマートフォン 2 ラジオ 3 町内放送 4 調べなかった 5 その他 ( ) 次が重要な項目になりますので記載お願いいたします (6) 地震が治まった後の行動例 : 自宅が心配で向かうことにした. または, 子供が心配で幼稚園に向かうことにした 大通りは渋滞や人が縦横無尽におり 脇道などを利用した 自転車で駐車場まで行き 自動車に乗り換えた 4
非常事態のため 道路の真ん中または対向車線を走行したなど 安全な場所に着くまでの避難の行動を詳しく教えて下さい (7) 避難する際に不安や困ったこと例 : 信号機が消えていたや携帯がつながらないなど (8) 震災対応であったらよい バイク や 自転車 への機能例 : ノーパンクタイヤや町内放送が受信できる機能など 5
(9) 震災後に意識するようにしたこと例 : 避難所の場所の確認やスマホやラジオを持ち歩くなど アンケートは以上になります ご協力ありがとうございました 3 調査のまとめ調査は, 石巻市の中学生 4031 名に教育委員会ならびに学校のご協力で配布いただき, 家族を含めるとのべ約 10,000 人, 他に仮設住宅の方 500 名, 自転車バイクショップの店員と顧客 500 名合わせて 1,000 名に配布しました. 回答数は 163 と予想はしていたが低い回答数で, 一部の人は回答してくれたが当時の思い出すのもつらいと書いて下さった方もおり, 率直な意見をいただけたアンケート調査になった. 以下, アンケートの項目ごとにまとめる. 性別 : 男性 11 名, 女性 149 名 ( 性別未記入 3 名 ) 年齢 :10 代 127 名,20 代 15 名,30 代 16 名,40 代 2 名,50 代 0 名,60 代 1 名 ( 年齢未記入 2 名 ) 地震が起きた直後の行動 : 止まる > 走行を継続した > 速度を落として徐行した 止まるという意見が当然だが多かったが, 徐行より走行を継続した方が意外に多く, 走行していた場所により揺れ方が違ったのも要因だが, 止まらずにそのまま直ぐに帰宅するケースが多かった. 地震 津波の情報の入手方法 : ラジオ > 町内放送 > 携帯 スマートフォン 情報入手方法としては, 携帯 スマートフォンは全然つながらなかったという意見が多く, 情報収集手段としては当時最弱であった. ただし, 東日本大震災を教訓につながらない可能性は低くなってきている. 二番目に多かったのが町内放送である. 地方では町内放送が完備されており, 自転車で走行していても情報を手に入れることができる. ただし, 都心部では 6
町内放送は完備されておらず, 情報入手方法としては一番が多かったラジオが有力である. 別の項目で 震災対応であったらよい バイク や 自転車 への機能 においてもラジオが受信できる機能が欲しいとの意見が多かった. スマホでもラジオが聞ける機能があるが, IP 電話同様携帯電話会社の基地局にトラブルがあると聞けなくなってしまう. ラジオ受信機を直接自転車に搭載することは可能かと思うが, 普段頻繁には使用しないラジオのためにスピーカーなどを搭載させるのかなど, 課題はある. 地震が治まった後の行動 : 回答は手書きにしており, 避難方法を詳しく書いていただいた. 二輪車における避難方法としては下記に挙げる方法が主であった. 1. 地震により車では交通機関のマヒの可能性を考えて, 子供の迎えに自転車を用いた. 2.1. の逆で, 職場までは車で通勤しているが, 地震後, 同じ理由で家族の安否確認で会社の自転車で戻った. 3. 高い台が自宅から近い場合は, 自転車 ( 母親と子供二人までの場合 ) を用いる傾向 上記以外では, 4. 自転車で避難した方は多くは津波に飲み込まれた. 5. 大通りが交通渋滞で, 裏道は自動車やバイクが猛スピードで走行しており, その自動車やバイクと接触して交通事故で亡くなった方も多かった. 6. 渋滞がひどかったのでバイクは一部歩道を走行した. とい意見もあり, 二輪車による避難の危険性も記載いただいた. 避難する際に不安や困ったこと : この項目は箇条書きで記載いただいた. 信号機が消えていたので道路横断の際は危なかった 誰も声をかけてくれなかった( 多分自分のことで必死だったから ) マンホールなど地面に置かれているものが外れて, 落とし穴が沢山ある状況で自転車や徒歩は注意が必要だった 津波後, 泥で段差が分からず歩くのが危なかった後は, 震災後に良く聞かれた 携帯が使えなかったので, 家族の安否確認 トイレ 家族の居場所が分からない 津波がどこまで来ているのか分からなかった 灯りがなく暗くて不安だった ペットを連れていくか否か 救助依頼のやり方 7
上記から, 二輪車の避難に際し, 地割れや電柱の転倒などは認識しやすいが, マンホールがない状態は認識しにくい可能性があり ( 色合いなど ), 注意が必要なのが分かった. 震災対応であったらよい バイク や 自転車 への機能 : この項目は箇条書きで記載いただいた. 二輪車特に自転車の活躍は上記の記載した通り, 地震後の初動であるが, 津波が引いた後, 移動は自転車だった方が多く, 津波で流されてしまった自転車は移動手段としてありがたく全国から物資で送っていただけたのは助かったとアンケートには記載がないがコメントとしていただいた. 津波の後は瓦礫であふれ, 自転車がパンクしてしまうので, ノーパンクタイヤの意見が圧倒的で, 次いで 小型ラジオであった. 4 おわりに二輪車における避難行動をまとめると, 二輪車による避難は, 初動で子供を迎えに行く際に小回りが利き有効的であった. ただ, 自転車による裏道走行は逆に危険で大通りは渋滞して人が多いがそちらの方が安全に走行できた. 家族が揃い自宅に戻ると大勢で移動可能な自動車に手段を変える人がほとんどであった. 大通りは行きかう人から情報を聞きやすく, 津波の情報を聞き, 自宅に戻らずに自転車のまま高台に逃げる決断ができた ( 自動車の場合はそのまま乗っていたという ). 避難経路としては, 大通りの人と自動車が渋滞している場所を避けて裏道を通りそうだが, 裏道こそ自動車が猛スピードで逃げる場所であり, 避難経路としては大変危険で, 地震の揺れや地割れ, マンホールの欠損で足元が不安定になっているため尚更避けるべきであることが分かった. ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 今回の調査で, 徒歩または自転車の避難の際, 裏道の速度超過した自動車による避難行動から普段起こり得る交通事故に遭い, 震災で命を落としたのではなく, 交通事故で命を落とした方がおり, それが震災という一括りにされていることを知り, 自動車による避難方法も含めて取るべき避難方法を言葉だけではなく, 実際に体験できるシステムを構築し, 地震が今後あると言われている地域の方に体験, 知ってもらうことで, 実際に震災に遭われた際, 減災の一助になる研究として発展させていきたい. 8