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日本の証券市場の活性化について 2014/10/03 長田優太 成田 長田将輝 加藤 ~ 論文章構成 ~ はじめに 第 4 章個人金融資産の運用 第 1 節 NISA 第 1 章証券市場とは 第 2 節確定拠出年金制度 第 1 節証券市場の意義 役割 第 3 節財形貯蓄制度 第 2 節証券の発行市場のあり方 第 3 節証券の流通市場のあり方 第 5 章日本の証券市場の課題 第 4 節証券市場の活性化 第 1 節 第 2 節 第 2 章様々な証券の仕組み 第 3 節 第 1 節株式 第 2 節公社債 第 6 章活性化のための具体的な方策 第 3 節投資信託 第 1 節 第 4 節デリバティブ 第 2 節 第 5 節証券化商品 第 3 節 第 3 章日本の証券市場の現状第 1 節概説第 2 節金融商品取引所第 3 節証券会社第 4 節金融商品取引法第 5 節証券税制 おわりに 証券市場とは 金融市場は 一国経済において 仲介手段の観点から間接金融と直接金融に分類される そして この直接金融が行われる場が証券市場であり 発行市場と流通市場に分けられる また 証券市場で取引される証券は 金融商品取引法上の有価証券 であり この証券市場を通して 投資家による資金運用 企業による資金調達が行われている 証券市場の活性化の定義 企業の資金調達における更なる証券の利用 家計の 貯蓄から投資へ という動きを促進させる 1

今後の個人金融資産運用プラン まず 家計の金融資産の 貯蓄から投資へ を促していくにあたり 資産形成を行う土台作りが必要である つまり 確定拠出年金や NISA 等の各種個人金融資産形成制度へのアクセスが容易で 簡単に参加できることが重要となってくる そのため 私たちのライフサイクルにおいて重要な役割を占める職場経由で これら各種制度を提供していくことにより 幅広い世代への普及拡大が期待できると考える 確定拠出年金 NISA ジュニア NISA 一括して職場の福利厚生制度で提供 ~ 職場経由のメリット~ 個人で口座開設等の手続きを行わなくても 企業により初めから投資環境が整備されているため 投資を始めるハードルが低くなる 各種制度の併用により 互いに制度の欠点を補完し合えることができる ( 確定拠出年金は中途引出が原則できないが NISA は資産売却により可能など ) 確定拠出企業年金制度の投資教育義務による金融リテラシーの向上が NISA 等への投資促進に反映されやすい 図表 1 確定拠出年金加入者の方が 非加入者よりも NISA への投資に対して積極的な態度を示している 投資リテラシーの向上により NISA のメリットを理解する人が相対的に多いことがうかがえる 家計の 貯蓄から投資 への課題 図表 2 さらなる投資の拡大には 1 高齢者から若年層への余剰資金のシフト 2 若年層の投資に対する意識の向上を進めていくことが必要である 2

1 高齢者から若年層への余剰資金のシフト 図表 3 ジュニア NISA の導入によって 資金的余裕がない若年層へ 投資資金の援助を行い その後の NISA による運用を活性化さ せる 高齢者による子供や孫のための資金援助に対する意識は高く 若年層への資金シフトの強い誘因となる また 職域制度にも組み込むことにより 高齢者だけではなく 子供を養っている親による子供の資産形成のニーズを取り込みやすくなる 図表 4 出所 : 金融庁 2 若年層の投資に対する意識の向上 若年層への投資に対する意識の向上においては 確定拠出企業年金制度における従業員への投資教育義務規定を活用し 職域制度内における NISA 等の他の資産形成制度も促進していくことが有効であると考える 投資教育で行う内容例 わが国の年金制度 確定拠出年金制度の概要 金融商品の仕組みと特徴 資産運用の基礎知識しかし この事業主による従業員への投資教育義務は 確定拠出年金法 22 条に基づく事業主に対する努力義務となっている そのため この義務付けは強制力に乏しいことから 積極的な事業主とそうではない事業主との間で 継続的な投資教育の実施状況に差異が生じている 出所 : 野村資本市場研究所図表 4 最もリスクを取っている 30 代でも元本確保型 ( 預貯金や保険 ) への投資が半分以上を占めている これは同じ年金運用である確定給付年金 あるいは確定給付年金よりも保守的な GPIF の運用と比較しても 元本確保型 特に預貯金への投資の比率が高くなっている つまり 投資家が投資に馴染みがないために元本確保型に資金を拠出していることが考えられる 3

通常 多くの企業が確定拠出年金を導入する際 従前の制度との比較において不利益変更とならないように 確定拠出年金加入者の長期的な平均利回りを想定した上で掛金を設定している そして この想定利回りは企業 により異なるものの 2% 前後に分布している ( 企業年金連合会の調査 ) 現在の預金金利ではこの想定利回りを上回るのは困難であり 預貯金等中心の運用をした結果 長期的に想定 利回りを達成できない確定拠出年金加入者は 制度導入前と比べて将来の受取額が減少してしまう恐れがある 確定拠出年金制度の事業主による投資教育義務を実効的なもの にし 加入者の運用をより合理的な内容に近づけていく必要がある DC における加入者のリスクテイクの促進と事業主による投資教育義務の強化 通常の確定拠出企業年金制度において 加入者による最初の 5 年間の運用については 企 業側が将来の受取額を保証する制度を設ける 運用指図はすべて加入者が行う 5 年間分の掛金は 通常の想定利回りにより算出した額よりも少なく設定する 保証受取額も掛金と同様に 想定している将来の 5 年間分の受取額よりも少なく設定する 加入者の運用による利益や損失は すべて企業側が被る 6 年目からは通常の確定拠出企業年金制度での運用に戻る この制度の利用は加入者の任意とする ~ 加入者のリスクテイクの促進 ~ 実践的な投資を通じて 投資リテラシーの向上を図る 加入者はノーリスクであるため 保守的な運用ではなく ある程度リスクを取った運用を試すことができる 5 年間という現状の NISA の 1 サイクルを練習投資させることで 今後の NISA での投資に反映させる ~ 事業主による投資教育の強化 ~ 加入者による運用の利益や損失を企業側が負うことが 投資教育を強化することの誘因となる 運用指図に積極的ではない投資家に対しては 米英の制度に倣い デフォルト商品 ( 運用未指図者の拠出の行き先としてあらかじめ設定されている商品 ) を設定する 一般にデフォルト商品は 低リスク低リターンの MMF や GIC であったが インフレへの対応を含めて長期的な資産形成につながらない懸念があったため 現在ではバランス型投信のような長期的に一定のリスク リターンを追求できる商品を選定するようなっている 現在は 加入者の年齢や退職目標年に応じてファンドマネージャーが代わりに資産配分調整を実践してくれる ターゲット デート ファンドと呼ばれる投資信託が中核となっている 日本でも このような商品の設定により 個人投資家の投資サポートを図っていく必要がある 4

さらなる投資促進のために現状で確定拠出年金の月額の拠出額は平均で 1 万円くらいであり 月額の非課税上限額 5.5 万円まで利用が進んでいない これは 給与水準をもとに拠出額が決められているため ほとんどの加入者は上限額までには至らない 1 人当たり掛金額 : 年額 1 人当たりマッチング拠出額 : 月額 図表 5 マッチング拠出の制限を撤廃することで 確定拠出年金の満額の利用を目指 し 投資の活性化を図ることができる NISA, 確定拠出年金への自動拠出制度 確定拠出年金へのマッチング拠出や NISA への給与天引きを通じた投資を 従業員が能動的に選択するの ではなく 給与から一定額を差し引いて自動的に投資をする仕組みをつくる 投資をしたくない場合は 毎月事 前に申告することで その額は給与に戻される 投資先は あらかじめ設定したターゲット デート ファンドのようなデフォルト商品とする デフォルト商品以外に投資したい場合も同様に 事前に申告することで変更ができる ~ 期待される効果 ~ 当該月において その額を特に貯蓄しておく必要がない場合 申告の手間もあるため自動投資を容認しやすい 資産運用に関してあまり関心がない加入者を 投資へと仕向けるのに効果的だと思われる 家計の 貯蓄から投資へ を促すためには 職域制度を利用して各制度へのアクセスを容易にすることが必要だと考える その制度の上で ジュニア NISA による若年層への資金シフト 確定拠出年金制度を通じた投資教育により 投資の壁をなくしていくことが有効だと思われる また 資産運用にあまり積極的ではない者に対しては 米英のようなターゲット デート ファンドを利用して投資をサポートしていくことが望ましいと考える 5

社債投資プラットフォーム 家計の 貯蓄から投資 への動きを促進し 証券市場を活性化させるために社債市場に注目した 社債市場の現状 を踏まえて 貯蓄から投資 への動きを促す案を考える 社債市場の現状 < 社債発行額 > < 社債発行額 > 図表 6 日本の社債発行額図表 7 米国の社債発行額 日本の社債の発行額は 1998 年がピークで その後 2004 年に底を打ち 現在は 10 兆円規模で推移している 状況である 一方米国の発行額は金融危機に至るまでの間 0.6~1.2 兆ドル (60 兆円 ~120 兆円 ) の規模で 推移している これは日本の年間の発行額の 6~10 兆円の 10 倍以上の水準である < 個人向け社債発行額 > > < 社債の保有者の内訳 > > 図表 9 図表 8 個人向け社債の発行は活発化しており 2008 年度の発行額は過去 5 年間の合計に匹敵する 2 兆円に上り 社債全体の 2 割を占めた 1999 年や 2001 年にも比率で 15% 前後に達したが 2 割越えの水準は過去に例がないほどである しかし残高ベースでは個人が保有する社債は全体の 0.5% に過ぎないのが現状である 日本では銀行が 48% 保険会社 年金基金が 27.9% の社債を保有し 全体の 7 割を占める 一方 家計は 2.3% とわずかで特定の投資家に偏っている 一方アメリカでは家計の保有割合が 17.9% と日本と比べると非常に高く 個人の金融資産として社債が浸透していることがわかる 6

アメリカの社債市場と比較してみると 社債の発行額はまだまだ少なく また 家計の保有の割合が極端に少ないことな どの問題があると分かった 以下では 家計の社債の保有割合が少ないことに注目し 家計の保有割合を増やし 家計 の 貯蓄から投資 への動きを促すための案を考える 社債投資プラットフォームの導入 < 社債投資プラットフォームとは> 社債投資プラットフォームとはウェブサイト上で個人投資家向けに運営されている取引システムのことである この社債投資プラットフォームの存在は 欧米の社債市場において個人投資家の市場の参入に大きく寄与しており 導入以降 着実に個人投資家の社債保有比率を高めている プラットフォームは毎週月曜日に その週に起債される銘柄の利率や償還日 格付けなどの発行条件が提示される 個人投資家は同じ週の金曜日まで 月曜日に提示されたものと同じ条件で社債を購入することができる 図表 10 < 社債投資プラットフォームを導入する必要性 > 社債の取引は 株式などの取引とは異なり証券取引所ではなく 証券会社と投資家との間で 相対で行われるため 第三者がそこで取引されている売買価格などを把握することは困難である 証券会社のホームページでは 個人投資家向けの社債情報がほとんど掲載されていないなど 個人投資家には社債の情報を取り入れる手段が少ない 社債の情報インフラは未整備! 家計の社債の保有割合を増やすためには社債の正確な取引情報を公表することにより 社債の価格情報の信頼性 を確保し 透明性を高めることが大切である そのためにも社債投資プラットフォームを導入することは重要であると考える < 社債の価格発表制度 > 現在 日本では社債の店頭取引における取引価格を公表する制度が少ないというのが現状で 価格情報の透明性を高めるために 日本証券業協会は証券会社から報告を受けた社債の取引情報をホームページ上で発表するという社債の価格発表制度を 2015 年 11 月から開始するとした 発表事項 図表 11 発表イメージ 図表 12 発表対象の取引 取引数量が額面 1 億円以上の取引 発表対象の銘柄 当該社債の銘柄格付けが AA 格相当以上 7

取引所時間の拡大案に関して 日本取引所グループは中期経営計画 (2013 2015 年度 ) において 新しい日本株市場の創造 ( 日本株の魅力向上 ) を重点戦略のひとつとして 取引所時間の拡大案を掲げている 取引所の見直しは 市場関係者を含む多方面にかかわる事柄であることから 学識経験者および市場関係者によって構成される検討の場として 現物市場の取引時間拡大に向けた研究会 を設置 計 19 名で構成 今年 7 月末 現在 夜間取引市場が使えるものかどうか 顧客の意見を細かく聞いている段階 年内には結論を出すとの見通しを示した また検討対象は 株式現物市場の取引時間の拡大である 主要取引所の取引時間比較 ( 日本時間基準 / 夏時間 ) 図表 13 考えられる時間拡大の意義 日本の現物市場の取引時間は世界の主市場と比較すると 短い現状 1 市場の役割である 価格発見機能 の向上価格発見機能とは 株式市場に多くの売買注文が集まることで 適正な価格が形成されるという機能である つまり 取引時間を拡大することで 市場に多くの売買機会を提供することで取引量を増やし より適正な価格が形成されると考えられている 2 海外主要取引所とのオーバーラップ形成図表にもある通り 日本の取引時間とロンドンやニューヨークの取引時間には時差がある 時間拡大 ( これに関しては昼休み短縮 後場の延長ではなく 夜間セッションによる拡大 ) をすることによって 欧米市場と重なる時間帯で取引機会を提供し 海外市場の変動を東京市場に反映させる あるいは海外の投資家の参入を促す狙いがある 3 取引参加者の裾野拡大と 貯蓄から投資へ の実現仕事などで日中は取引できなかった投資家 (=サラリーマン層など個人) への投資機会の提供ができる また それによって株式投資家層の裾野が拡大すれば わが国の持続的成長に向けた 貯蓄から投資へ の実現に資するものとなる 8

取引時間と売買高の相関 時間拡大の意義は 上記のいずれも拡大によって必ず投資家や取引量が拡大することが前提である ここでは 実際に取引時間と売買高に相関関係があるのかを考える A: 過去の時間拡大からみた相関性 図表 14 取引時間拡大と現物株式の売買高 売買代金変化 取引時間と売買高の関係を定量的に見たとき 取引時間が増えれば単純に売買高が増えるとは言えない 東証でも過去 1991 年と 2011 年に昼休み短縮による時間拡大が行われたが 売買高との相関性は客観的にみられないのが現状である 1991 年はバブル崩壊直後の相場低迷の中という外的要因があったことを考慮しても 海外の事例からみても 成功したとは言い難い また より長期のデータを用いて二つの関係性を観察しても 密接な関係は確認できない < 海外の事例 > ドイツ取引所 (2000 年 :17:30 20:00)/ スイス ノルウェー ( 時間拡大したものの再び短縮 ) 等 B: 現物市場の実態からみた相関性 取引の希薄化 図表 : 時間帯別の現物株式売買高分布 ( 東証 ) 図表 15 株式現物取引において 日々の取引開始直後と取引終了間際に取引が集中する傾向が確認できる 日経 225 銘柄 東証における 2014 年 4 月の一日の平均をみると 最初と最後の 15 分に一日の取引の 28.7% が行われている つまり 厚い取引が行われているのは 取引開始と終了というイベントに付随しているものであり 仮に取引時間を延長したとしても 比較的密度の薄い時間帯が増えるにとどまる可能性が高いということが言えるのではないだろうか 市場の質や競争力という観点では どの時間帯においても一定の厚みが確保されることが望ましい 9

市場の安定と価格形成の欠如 中長期的な観点から投資を行う個人投資家や市場環境を考慮し反映しながらポートフォリオ運用する機関投資家の取引では 一日の取引回数は多くない 取引時間を拡大しても これら投資家によって売買が増加する動機が考えにくい 一方 デイトレーダーや証券会社のディーラー部門による取引にはある程度の増加見込みはあるだろう 一日で何回も取引を繰り返すこれら投資家にとっては 時間が拡大すれば その分取引機会が与えられるからだ 市場の問題として 適時開示への対応 がある 決算発表などの企業の適時開示が後場の引け直後に集中しており それを消化する場を設けたいとの考え それによる前日終値と翌日始値のスプレッドが日本は大きいとの指摘 適時開示があった時間以降に東京市場で取引の機会が設けられれば 取引ニーズは大きいとの見方 しかし この事情に対して 仮に夜間取引で対応した場合 上記のように機関投資家の活発な参加は見込めないため 開示情報の適切な価格への反映が行えない可能性が高まる!! 夜間取引の主体は個人投資家だと見込まれるが 投資家がニュースの影響を客観的に評価できず 過敏に反応してしまうリスクが懸念される よって 長田班としては 取引時間の拡大案は否定的で 拡大による市場の活性化を図るより そもそもの証券市場の健全性確保 を重要視する考え 参考文献 野村資本市場研究所(2014) 家計の資産形成を支援する制度の在り方に関する調査報告書 金融庁(2014) 平成 27 年度税制改正要望 フィデリィティ投信株式会社(2014) 若年層のための資産形成と非課税制度の活用 日本証券業協会(2014) 確定拠出年金入門 10

日本版スチュワードシップ コード 日本版スチュワードシップ コードとは 機関投資家が 顧客 受益者と投資先企業の双方を視野に入れ 責任 ある機関投資家 として当該 スチュワードシップ責任 を果たすにあたり有用と考えられる諸原則を定めたもの スチュワードシップ責任 とは機関投資家が 投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な 目的を持った対話 などを通じて 当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより 顧客 受益者 の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任 図表 16 本コードの原則 本コードの対象とする機関投資家は 基本的に日本の 上場株式に投資する機関投資家 機関投資家がとるべき行動について詳細に規定する細則主義ではなく 各々の状況に合わせて自らのスチュワードシップ責任を適切に果たすことができるように原則主義を採用 出所 : 金融庁 本コードの原則の中に 自らの状況と照らして実施することが適切ではないと考える原則がある場合 それを実施しない理由を十分に説明することにより 一部の原則を実施しないことも想定している 日本版スチュワードシップ コードの取り組みを通じて 企業価値の向上 投資者にとって投資魅力の高い企業を 目指し 企業の資金調達における更なる証券の利用 ( 証券市場の活性化の定義 ) を促進する 今後のプラン 小規模機関投資家も含め幅広く普及 させ 実効的なものにするためには インデックスの銘柄選定の基準に ノウハウを蓄積してデータベース化 機関投資家同士の話し合いの場を設ける 本コードを遵守している機関投資家や企業の評価 表彰 11