参考資料 応急手当の基礎知識 ~ いざというときのために ~ 日頃から応急手当の基礎知識を習得しよう
応急手当の基礎知識 心臓 呼吸が止まったら! 1 心臓停止後約 3 分で 50% 死亡 2 呼吸停止後約 10 分で 50% 死亡 3 多量出血後約 30 分で 50% 死亡 応急手当をまとめたら! 65
心肺蘇生法の手順 1 反応 ( 意識 ) の確認 (1) 傷病者に大きな声をかけ 肩を軽くたたき 反応の有無を確認する (2) 目を開けない 目的のあるしぐさがなければ 反応なし とする (3) けいれんのような全身がひきつるような動きは 反応なし とする (4) 反応があれば 傷病者の訴えを聞き 必要な応急手当を行う 2 助けを呼ぶ (1) 大きな声で助けを求める (2) 協力者が来たら 119 番通報と AED の手配を依頼する (3) 協力者がいない場合には まず自分で 119 番通報をする すぐ近くに AED があることが分かっている場合は AED を取りに行く 救急時の 119 番通報のポイント 119 番通報すると 火事 か 救急 か聞かれるため 救急 であることをはっきりと伝える どこで起きたのかをできるだけ正確に伝え 住所がわからない場合は 目印になるもの ( 建物 電柱にある番地等 ) を伝える 何が起きたのかをはっきりと伝える 通報者の名前と連絡先を伝える 通報後 どうしたらいいか 心肺蘇生の方法 など 救急車の要請だけでなく 助言や指示を仰ぐことができる 電話は切らずにスピーカーモードなどにする 3 呼吸の確認 (1) 傷病者のそばに座り 10 秒以内で傷病者の胸や腹部の上がり下がりを見て 普段どおりの呼吸をしているか判断する (2) 次のいずれかの場合は 普段通りの呼吸なし と判断する 胸や腹部の動きがない場合 約 10 秒間確認しても呼吸の状態がよくわからない場合 しゃくりあげるような 途切れ途切れに起きる呼吸がみられる場合 ( 心停止が起こった直後には 呼吸に伴う胸や腹部の動きが普段どおりでない場合や しゃくりあげるような途切れ途切れに起きる呼吸がみられることがある この呼吸を 死戦期呼吸 という 死戦期呼吸 は 普段どおりの呼吸 ではない ) 呼吸の確認に迷った場合は すぐに胸骨圧迫を開始する 66
4 胸骨圧迫傷病者に普段どおりの呼吸がないと判断したら 直ちに胸骨圧迫を開始し 全身に血液を送る (1) 傷病者を固い床面に仰向けで寝かせる (2) 救助者は傷病者の片側の胸の辺りに両膝をつき 傷病者の胸の真ん中に片方の手の付け根を置き その上にもう一方の手を重ねる (3) 肘をまっすぐに伸ばして手の付け根に体重をかけ 胸が少なくとも 5cm 以上沈むように圧迫するが 6cm を超えないようにする ほど強く圧迫する (4) 1 分間に 100 から 120 回の速いテンポで 30 回連続して絶え間なく圧迫する (5) 圧迫を緩めるときは胸がしっかり戻るまで十分に力を抜く 5 人工呼吸 30 回の胸骨圧迫後 口対口人工呼吸により息を吹き込む (1) 気道確保 ( 頭部後屈あご先拳上法 ) 片手を額に当て もう一方の手の人差指と中指の2 本をあご先に当てて 頭を後ろにのけぞらせ あご先を上げる (2) 気道を確保したまま 額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまむ (3) 口を大きく開けて傷病者の口を覆い 息を約 1 秒かけて吹き込む 傷病者の胸が持ち上がるのを確認する (4) いったん口を離し 同じ要領でもう1 回吹き込む (5) もし 胸が上がらない場合でも吹き込みは2 回までとし すぐに胸骨圧迫に進む (6) 傷病者の顔面や口から出血している場合や 口と口を直接接触させて口対口人工呼吸を行うことがためらわれる場合は人工呼吸を省略し 胸骨圧迫のみを続ける 6 心肺蘇生 ( 胸骨圧迫と人工呼吸 ) の継続 (1) 胸骨圧迫 30 回連続して行った後に 人工呼吸を2 回行う (2) この組み合わせ (30:2 のサイクル ) を救急隊に引き継ぐまで絶え間なく続ける (3) もし救助者が2 人以上いる場合は 1~2 分を目安に胸骨圧迫を交代する (4) 胸骨圧迫の中断は 10 秒を超えないようにする (5) 心肺蘇生を中止するのは 救急隊に心肺蘇生を引き継いだとき 又は傷病者が目を開けたり 普段どおりの息をし始めたときとする 67
反応はないが普段どおりの呼吸をしている場合 1 気道の確保を続けて救急隊の到着を待つ 気道確保は頭部後屈あご先拳上法で行う 2 吐物などによる窒息の危険があるか やむを得ず傷病者のそばを離れるときには傷病者を 横に向かせる このような姿勢を回復体位という AED( 自動体外式除細動器 ) を用いた除細動 心臓が突然止まるのは 心臓がブルブルと細かくふるえる 心室細動 によって生じることが少なくない この場合にはできるだけ早く心臓に電気ショックを与え 心臓のふるえを取り除くことがとても重要である AED( 自動体外式除細動器 ) とは この電気ショックを行うための機器である 電源を入れ 音声メッセージにしたがって操作し コンピュータによって自動的に心室細動かどうかを調べ 電気ショックが必要かどうかを決定し 電気ショックの指示をしてくれるため 一般の人でも簡単で確実に操作することができる 心肺蘇生法を行っている途中で AED が届いたらすぐに AED を使う準備を始める AED にはいくつかの種類があるが どの機種も同じ手順で使えるように設計されている AED は電源が入ると音声メッセージと点滅するランプで 救助者が実施すべきことを指示してくれるため 落ち着いてそれに従う なお 可能であれば AED の準備中も心肺蘇生を続けること 1 使用手順 (1) AED の電源を入れる ふたを開け 電源ボタンを押す ふたを開けることで自動的に電源が入る機種もある (2) 電極パッドを貼る 衣服を取り除き 胸をはだけさせ 肌にしっかりと貼り付ける 機種によっては AED 本体の差込口にケーブルを入れるものがある 電極パッドは 胸の右上 ( 鎖骨の下 ) 及び胸の左下側 ( わきの5~8cm 下 ) の位置に貼り付ける 可能であれば 胸骨圧迫を継続して電極パッドを貼り付ける 68
電極パッドは 肌との間にすき間を作らないよう しっかりと貼り付ける アクセサリーなどの上から貼らないよう注意する 成人用と小児用の2 種類の電極パッドが入っている場合や 成人モードと小児モードの切り替えがある機種がある その場合 小学生以上には成人用の電極パッドを使用し 未就学児には小児用の電極パッドを使用する 成人には小児用電極パッド ( 小児モード ) は使用しないこと (3) 心電図の解析 AED から 体に触れないでください などと音声メッセージが流れ 自動的に心電図の解析が始まる このとき みなさん 離れて!! と注意を促し 誰も傷病者に触れていないことを確認する 一部の機種には 心電図の解析を始めるために 音声メッセージに従って解析ボタンを押すことが必要なものもある もし ショックは不要です などのメッセージが流れた場合は直ちに胸骨圧迫を再開する (4) 電気ショック AED がショックを加える必要があると判断すると ショックが必要です などの音声メッセージが流れ 自動的に充電が始まる 充電が完了すると ショックボタンを押してください とメッセージが流れ ショックボタンが点灯 ( または点滅 ) し 充電完了の連続音が鳴る 充電が完了したら ショックを行います みなさん 離れて!! と注意を促し 誰も傷病者に触れていないことを確認し ショックボタンを押す 電気ショックが加わると 傷病者の腕や全身の筋肉が一瞬けいれんしたように ビクっ と動く (5) 心肺蘇生の再開 電気ショックが完了すると 直ちに胸骨圧迫を開始してください などの音声メッセージが流れるため これに従って直ちに胸骨圧迫を再開する AED を使用する場合でも AED による心電図の解析や電気ショックなど やむを得ない場合を除いて 胸骨圧迫の中断をできるだけ短くすることが大切である (6) AED の手順と心肺蘇生の繰り返し 心肺蘇生を再開して2 分ほど経ったら 再び AED が自動的に心電図の解析を始める 音声メッセージに従って傷病者から手を離し 周りの人も傷病者から離れる 以後は 救急隊が到着するまで 胸骨圧迫 人工呼吸 AED の使用を繰り返す 69
気道異物除去 口や喉などに異物 ( 食物など ) が詰まっている場合に 異物を取り除く方法 1 反応 ( 意識 ) がある場合 (1) 傷病者に 喉が詰まったの? と尋ね 声が出せずうなずくようであれば窒息と判断する (2) 119 番通報を誰かに頼むとともに 直ちに以下の 2 つの方法を数回ずつ繰り返し 異物が取れるか 反応がなくなるまで異物の除去を試みる (3) 傷病者が咳をすることが可能であれば できるだけ咳を続けさせる 咳ができれば それが異物の除去に最も効果的である 腹部突き上げ法 傷病者を後ろから抱えるように腕を回す 片手で握りこぶしを作り その親指側に傷病者のへそより上で みぞおちの十分下方に当てる その手をもう一方の手で包み込むように握り すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げる 背部叩打法 背中をたたきやすいように傷病者の横に回り込む 手の付け根で肩甲骨の間を力強く 何度も連続してたたく ポイント 妊婦や乳児には腹部突き上げ法を行ってはいけない 背部叩打法のみを行う 横になっている傷病者が自力で起き上がれない場合は 背部叩打法のみを行う 腹部突き上げ法と背部叩打法の両方が実施可能な状況で どちらか一方を行っても効果がない場合は もう一方を試みる 腹部突き上げ法を行った場合は 腹部の内臓をいためている可能性があるため 実施したことを到着した救急隊に伝えること また 119 番通報前に異物が取れた場合も医師の診察を受ける 2 反応 ( 意識 ) がない場合 (1) 反応がない場合 あるいは 最初は反応があって応急手当てを行っている途中にぐったりして反応がなくなった場合には 直ちに通常の心肺蘇生の手順を開始する 救助者が一人の場合は 119 番通報を行い AED が近くにあれば AED を取りに行き心肺蘇生を開始する (2) 心肺蘇生を行っている途中で 口の中に異物が見えた場合は異物を取り除く (3) 口の中に異物が見えない場合は 異物を探すのに時間を費やすことはせずに心肺蘇生を繰り返す 70
乳児の救命処置の手順 1 反応 ( 意識 ) の確認 (1) 声をかけながら反応の有無を確かめる 足の裏を刺激することも有効 2 助けを呼ぶ (1) 反応がなければ大きな声で助けを求める (2) 協力者が来たら 119 番通報と AED の手配を依頼する (3) 協力者がいない場合は まず自分で 119 番通報と AED の手配をする 3 呼吸の確認 (1) 胸や腹部の上がり下がりを見て 普段どおりの呼吸をしているか判断する 4 胸骨圧迫 (1) 圧迫の位置は 両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とした胸の真ん中 (2) 胸骨圧迫は指 2 本で行う (3) 1 分間に 100 から 120 回の速いテンポで 30 回連続して絶え間なく圧迫する (4) 圧迫の深さは 胸の厚みの約 1/3を目安として 十分に沈む程度に 強く 速く 絶え間なく圧迫する 5 人工呼吸 (1) 準備ができしだい人工呼吸を開始する (2) 乳児の大きさでは口対口人工呼吸を実施することが難しい場合がある この場合は 口と鼻を同時に救助者の口で覆う 口対口鼻人工呼吸を行う 6 心肺蘇生 ( 胸骨圧迫と人工呼吸 ) を継続 (1) 胸骨圧迫を 30 回連続して行った後に 人工呼吸を 2 回 行う組み合わせを絶え間なく続ける 7 AED の使用 (1) 乳児にも AED は使用できる (2) AED に小児用電極パッド ( 小児モード ) が備わっている場合はそれを用いる ( 切り替える ) もし 小児用電極パッド ( 小児モード ) が備わっていない場合は 成人用パッドを使用する ( 貼る位置は電極パッドに表示されている絵に従う ) 71
乳児に対する気道異物除去 気道異物による窒息と判断した場合は ただちに 119 番通報を誰かに依頼し 異物除去を行う 反応がある場合には 乳児に対しては背部叩打と胸部突き上げを実施する 背部叩打は まず救助者の片腕の上に乳児をうつぶせに乗せ 手のひらで乳児の顔を支えながら頭部が低くなるような姿勢にする もう片方の手の付け根で 背中の真ん中を異物が取れるか反応がなくなるまで強くたたく 胸部突き上げ法は 救助者の片腕の上に乳児の背中を乗せ 手のひらで乳児の後頭部をしっかり支えながら 頭部が低くなるように仰向けにし もう一方の手の指 2 本で 胸の真ん中を力強く数回連続して圧迫する ( 心肺蘇生の胸骨圧迫と同じ要領である ) ポイント 乳児に対して腹部突き上げ法を行ってはいけない 反応がなくなった場合には乳児に対する心肺蘇生の手順を開始する 救助者が一人の場合は まず 119 番通報と AED の手配を行い 通常の心肺蘇生を行う 出血時の止血法 一般に体内の血液の 20% が急速に失われると出血性ショックという重篤な状態になり 30 % を失えば生命に危険を及ぼすといわれている したがって 出血量が多いほど止血手当を迅速に行う必要がある 出血時の止血法としては 出血部位を直接圧迫する直接圧迫止血法が基本である (1) 出血部位を確認 (2) 出血部位を圧迫 きれいなガーゼやハンカチ タオルなどを重ねて傷口に当て その上を手で圧迫する ポイント 感染防止のため 血液に直接触れないようゴム製の手袋やビニール袋を使用する 出血を止めるために手足を細い紐や針金で縛ることは 神経や筋肉を損傷する恐れがあるため行わない ガーゼが血液で濡れてくるのは 出血部位と圧迫部位がずれているか または圧迫する力が足りないからである 119 番通報が必要な場合 大量に出血している場合や 出血が止まらない場合 ショックの症状がみられる場合は 直ちに 119 番通報すること 72
ショック状態への対応 1 ショックの見方 (1) 顔色 (2) 呼吸 2 ショックの症状 (1) 目はうつろ 表情はぼんやり ( 無欲 無関心 ) (2) 唇は白か紫 ( チアノーゼ ) (3) 呼吸は浅く速くなる (4) 冷や汗が出る (5) 体は小刻みに震える (6) 皮膚は青白く 冷たくなる 3 ショックに対する応急処置 (1) 傷病者を水平に寝かせ 両足を 15~30cm くらい高く上げる ( ショック体位という ) (2) ネクタイやベルトを緩める (3) 毛布や衣服をかけ 保温する (4) 声をかけ元気づける ポイント 頭にけがのある場合や足に骨折がある場合で固定していないときはショック体位をとって はいけない 仰向けとする 119 番通報が必要な場合 ショックの症状がみられるときは 生命に危険が迫っている状態にあるので 直ちに 119 番 に通報すること 73
骨折に対する応急手当 1 部位の確認 (1) 痛がっているところを聞く (2) 可能であれば痛がっているところに変形 出血がないか確認する ポイント 痛がっているところを動かしてはいけない 骨折の症状 ( 激しい痛みや腫れがあり 動かすことができない 変形が認められる 骨が飛び出している ) 骨折の疑いがある場合は骨折しているものとして 手当てをします 2 固定 (1) 変形している場合は 無理に元の形に戻さない (2) 協力者がいれば 骨折しているところを支えてもらう (3) 傷病者が支えることができれば自ら支えてもらう (4) そえ木を当て 三角巾などで固定する そえ木などがない場合は雑誌や段ボールを活用する ポイント そえ木は 骨折部の上下の関節が固定できる長さのものを使用する 固定するときは 傷病者に知らせてから実施し 顔色や表情を見ながら固定する 119 番通報が必要な場合 太ももが変形している場合や 骨が飛び出していたり 変形している部分に傷がある 場合 それ以外にも多数の傷がある場合は 直ちに 119 番通報すること 74
熱傷 ( やけど ) に対する応急手当 1 応急手当 水で冷やす ポイント できるだけ早く 水道水などの清潔な流水で十分に冷やす 衣類を着ている場合は 衣類ごと冷やす 広い範囲にやけどをした場合は やけど部分だけでなく体全体が冷えてしまう可能性があるため 冷却は 10 分以内にとどめる 2 やけどの程度と留意点 やけどが軽いか重いかは やけどの深さと広さで決まる 一番浅いやけど 日焼けと同じで皮膚が赤くなりひりひりと痛みますが 水ぶくれはできない よく冷やしておくだけで ほとんどは病院に行かなくても自然に治る 中ぐらいの深さのやけど 水ぶくれができるのが特徴である 水ぶくれは傷を保護する役割があるため 破いてはいけない 指先などのごく小さいやけどを除いては ガーゼやタオルで覆って水ぶくれが破れないよう気を付けて できるだけ早く医療機関に行く必要がある また 水ぶくれが破けても薬などを塗ってはいけない ガーゼやタオルで覆いきれないような大きな水ぶくれになったときは救急車を呼ぶことも考慮する 最も深いやけど 水ぶくれにならず 皮膚が真っ白になったり 黒く焦げたりしてしまう ここまで深いやけどは かえって痛みをあまり感じなくなる このようなやけどは治りにくく 手術が必要になることもあるので 痛みがないからと言って安心せずに必ず医療機関に行く必要がある 化学薬品等によるやけど できるだけ早く衣服や靴などを取り除く 化学薬品等が体に付着したり 目に入った場合は 薬品を水道水などで 20 分以上洗い流す 化学薬品に限らず目のやけどの場合は 絶対にこすらずに やけどの部分をきれいなガーゼ等で被覆する また 原因となった化学薬品による二次災害に注意する ポイント 小さな子供や老人は 比較的小さなやけどでも命に関わることがあるので注意する 火事などで煙を吸ったときはやけどだけでなく喉や肺が傷ついている可能性があるため救急車で医療機関に行く必要がある 119 番通報が必要な場合 やけどが広い範囲にわたっている場合や 顔面や陰部のやけど 又は 皮膚が焦げていたり白くなって痛みを感じないような深いやけどの場合は 119 番通報する 75