ジカ事務連案(自治体) (結核)

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事務連絡 平成 28 年 9 月 23 日 都道府県 各保健所設置市衛生主管部 ( 局 ) 御中 特別区 厚生労働省健康局結核感染症課 ジカウイルス感染症に関する情報提供について 標記については 平成 28 年 8 月 10 日付け事務連絡でお知らせしたところです 今般 ジカウイルス感染症に関して

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

Microsoft PowerPoint 最近の性感染症の動向

世界保健機関 (WHO) による緊急事態宣言 WHOは 2016 年 2 月 1 日に開催された ジカウイルス感染症に関する国際保健規則 (IHR) 緊急委員会 ( 第 1 回 ) 会合の勧告を踏まえ 最近のブラジルにおける小頭症やその他神経障害の急増について 国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事

アジア地域で感染が拡大している国を追加 ( 以下 2(1)) ブラジルにおける小頭症例の報告数の更新 ( 以下 1(3)) 厚生労働省のホームページにおいても関連情報が提供されていますので, こちらも併せ てご確認ください

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

Microsoft Word - 01沖縄県蚊媒介感染症対策行動計画(第3版)

1 ジカウイルス感染症の認知度 問 1 あなたは, ジカウイルス感染症, いわゆるジカ熱を知っていますか この中から 1 つだけお答えください どのような病気か詳しく知っている 9.1% どのような病気かある程度知っている 44.9% 名前だけ知っているが, どのような病気かは知らない 37.7%

ミニカ共和国 エクアドル エルサルバドル グアテマラ ガイアナ ハイチ ホンジュラス ジャマイカ メキシコ ニカラグア パナマ パラグアイ サモア スリナム トンガ ベネズエラ フランス領 ( グアドループ サン マルタン ギアナ マルティニーク ) オランダ領 ( アルバ キュラソー島及びボネール

イ プエルトリコ サモア スリナム トンガ ベネズエラ 米領 ( バージン諸島及びサ モア ) フランス領 ( グアドループ サン マルタン ギアナ マルティニーク ) において ジカウイルス感染症の感染例が報告されています 3. ジカウイルス感染症と小頭症等との関連 2015 年 11 月 28

Q2 蚊媒介感染症 にはどんな病気があるの? A2 蚊媒介感染症は世界的に数多く存在しますが, 海外から日本国内へ持ち込まれ, 流行する可能性のある感染症としては, ウエストナイル熱, ジカウイルス感染症, チクングニア熱, デング熱, 日本脳炎, マラリアの6つがあります 海外から持ち込まれる可能

(9) シンガポールでの流行はアジア系のウイルス ヘイズとは インドネシア スマトラ島などにおける大規模な野焼きや森林火災により生じた煙が モンスーン ( 南西季節風 ) により シンガポール等に流されることによる煙害のことである 煙には 二酸化硫黄やオゾン等が含まれているが 主要なのは微小粒子状物

いずれも海外で感染症にかかった者が帰国又は入国する例 ( 以下 輸入感染症例 という ) を起点として国内で感染が拡大する可能性が常に存在する このため 厚生労働省は 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 ( 以下 感染症法 という ) 第 11 条の規定に基づき 総合的に予防のため

国際的な人の移動の活発化に伴い 国内での感染があまり見られない感染症について 海外から持ち込まれる事例が増加している デング熱などの蚊が媒介する感染症 ( 以下 蚊媒介感染症 という ) についても 海外で感染した患者の国内での発生が継続的に報告されている 我が国においては 平成二十六年八月 デング

目次 1 はじめに 1 2 定義 1 3 デング熱 (1) デング熱とは 2 (2) 臨床的特徴 2 (3) デング熱の届出基準 2 (4) 検査方法 2 (5) 情報提供の要件 2 4 チクングニア熱 (1) チクングニア熱とは 3 (2) 臨床的特徴 3 (3) チクングニア熱の届出基準 3 (

平成28年4月6日(日本産科婦人科学会)

1. 世界保健機関 (WHO) による緊急事態宣言 (1)WHOは 2016 年 2 月 1 日に開催された ジカウイルス感染症に関する国際保健規則 (IHR) 緊急委員会 ( 第 1 回 ) 会合の勧告を踏まえ 最近のブラジルにおける小頭症やその他神経障害の急増について 国際的に懸念される公衆の保

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とを考慮すると ( 症状を有する感染者の 5 倍の ) 約 1,000 人の感染者が既にシンガポール国内にいると推測される ジカウイルスは 1947 年にアフリカのウガンダでサルから発見 ( 参考 : ヒトへの最初の感染例は 1952 年 ) され アジア アメリカに伝わったとされているが これまで

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

日本内科学会雑誌第105巻第11号

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70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

(CREST) 科学的発見 社会的課題解決に向けた各分野のビッグデータ利活用推進のための次世代アプリケーション技術の創出 高度化 ( 研究総括 : 北海道大学田中譲 ) における研究課題 大規模生物情報を活用したパンデミックの予兆, 予測と流行対策策定 ( 研究代表者 : 西浦博 ) の一環として行

0426番号入り。HP用

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

蚊媒介感染症の対策・対応手順

Microsoft Word - H300717【プレスリリース】夏休みの感染症対策について

( 症状および検査所見 ) 3~7 日の潜伏期間の後に 発熱 発疹 頭痛 骨関節痛 嘔気 嘔吐などの症状がおこる 日本国内で診断されたデング熱患者の症状や検査所見の出現頻度を表 1 に示す 3) 発熱は発病者のほぼ全例にみられ 時に二峰性となる 通常 発病後 2~7 日で解熱し そのまま治癒する 約

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Microsoft Word - デング熱診療マニュアル案 doc

はじめに 2016 年 12 月 14 日に国立感染症研究所は有識者の協力を得て 蚊媒介感染症の診療ガイドライン ( 第 4 版 )[1] を発出しました このガイドラインでは デング熱 チクングニア熱 ジカウイルス感染症に関する情報は最新の知見に基づいて更新されています 特に ジカウイルス感染症に

メルマガPDF(感染症危険情報)

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目次 1 はじめに 1 2 基本的な方針 1 3 発生段階と対策の概要 4 Ⅰ 平常時の対策 5 1 体制の整備 5 2 情報提供 広報 5 3 検査 医療体制 6 4 患者対応 6 5 媒介蚊対策 7 Ⅱ 県内感染症例発生時の対策 9 1 情報提供 広報 9 2 検査 医療体制 9 3 患者対応

目 次 はじめに 1 Ⅰ 基本的な方針 2 (1) 根拠 2 (2) 対象とする感染症 2 (3) 目的 2 (4) 発生段階と定義 2 (5) 基本的な考え方 2 Ⅱ 平常時の対策 2 (1) 検査 医療体制 2 (2) 保健所の対応等 4 (3) 蚊の対策 5 (4) 情報提供 広報による自主防

報告風しん

02別添:日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A[H28.3月版]

事務連絡 令和元年 6 月 21 日 ( 公社 ) 岡山県医師会 ( 一社 ) 岡山県病院協会 御中 岡山県保健福祉部健康推進課 手足口病に関する注意喚起について このことについて 厚生労働省健康局結核感染症課から別添のとおり事務連絡が ありましたので 御了知いただくとともに 貴会員への周知をお願い

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

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日本内科学会雑誌第106巻第3号

Microsoft Word - 届出基準

2019 年 7 月 4 日 ( 木 ) 愛知県保健医療局健康医務部健康対策課感染症グループ担当内田 久野内線 ダイヤルイン 手足口病警報を発令します!! 愛知県では 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 に基づき 県内の小児科を標榜する

サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

Press Release 報道関係者各位 平成 28 年 2 月 2 日 照会先 厚生労働省健康局結核感染症課感染症情報管理室長宮川昭二 ( 内線 2387) 課長補佐中谷祐貴子 ( 内線 2373) ( 代表番号 ) 03(5253)1111 ジカウイルスと小頭症などの増加に関する WHO 緊急

蚊の対策の重要性について 蚊が媒介する感染症について我が国では 公衆衛生の向上や住宅構造の変化などにより かつて流行のあった蚊が媒介する感染症は減少しています しかし 海外では蚊が媒介する感染症の流行は依然として続いており 毎年多くの感染者が発生しています そして近年 輸送手段の発達等により 感染症

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東京大会と感染症サーベイランス ~ 普段とどこがちがうのか ~ 疾患疫学が変化する可能性 多数の訪日外国人の流入 多くのマスギャザリングイベント 事前のリスク評価に基づいたサーベイランスと対応の強化の必要性を検討する 体制構築の観点から 行政と大会組織委員会の責任範囲と協力体制の構築が必要 国内移動

新技術説明会 様式例

ように いわゆる渡航者 に推奨されているワクチン (Recommend vaccines) 次に黄熱ワクチンのように一部の国に入国する際 接種証明書の提示を要求されるワクチン (Required vaccines) そして麻しんや風しんワクチンのようにわが国で通常に接種されているワクチン (Rout

蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第2版)

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はじめに 海外に出国する日本人の数は年々増加しており 2006 年には 1700 万人に達しています この中には現地で感染症にかかり 医療施設を受診するケースも少なくありません こうした海外でかかりやすい感染症の予防対策として 旅行者への予防接種の普及が提唱されているところです このパンフレットは

症候性サーベイランス実施 手順書 インフルエンザ様症候性サーベイランス 編 平成 28 年 5 月 26 日 群馬県感染症対策連絡協議会 ICN 分科会サーベイランスチーム作成

蚊の対策の重要性について 蚊が媒介する感染症について我が国では 公衆衛生の向上や住宅構造の変化などにより かつて流行のあった蚊が媒介する感染症は減少しています しかし 海外では蚊が媒介する感染症の流行は依然として続いており 毎年多くの感染者が発生しています そして近年 輸送手段の発達等により 感染症

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PowerPoint プレゼンテーション

【事務連絡】蚊媒介感染症の診療ガイドラインについて

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Microsoft Word - 最終_緊急風疹情報2019年第10週.docx

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Microsoft Word - 緊急風疹情報2019年第20週.docx

第4版

目次 はじめに 2 平成 28 年 5 月改定の経緯 3 第 1 章基本的な方針 4 1 計画の基本的な考え方 4 2 対策の目的 5 3 発生段階の考え方 5 第 2 章各主体の役割 6 第 3 章各段階における対策 8 1 患者未発生時 8 (1) 検査 医療体制 8 (2) 保健所の対応等 1

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

蚊媒介感染症の診療ガイドライン ( 第 45 版 ) 2015 年 5 月 22 日第 1 版 * 作成 2016 年 3 月 11 日第 2 版作成 2016 年 7 月 14 日第 3 版作成 2016 年 12 月 14 日第 4 版作成 2019 年 2 月 7 日第 5 版作成国立感染症研

【事務連絡】蚊媒介感染症の診療ガイドラインについて

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AIDS IS NOT OVER -エイズはまだ終わっていない- 日本の HIV 流行の状況 2016 年の新規 HIV 感染者 エイズ患者報告数は 1,440 件で 過去 9 位となりました 2015 年と比べて 新規 HIV 感染者報告数はやや減少 新規エイズ患者報告数は増加しました 感染経路と

rubella190828

デング熱の

渡航先 ( 国 地域 ) や渡航先での行動によって, 感染する可能性のある感染症は大き く異なりますが, 世界的に蚊を媒介した感染症が多く報告されています 特に熱帯 亜 熱帯地域ではマラリア, デング熱, チクングニア熱などに注意が必要です (1) マラリア毎年世界で約 2 億人の患者が発生し, 約

麻しん 2

平成28年3月11日【ジカ熱】(自治体宛事務連絡) (3) - コピー (2)

日産婦誌58巻9号研修コーナー

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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

針刺し切創発生時の対応

講演 Ⅰ 蚊が媒介する感染症 講師 : 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 忽那賢志氏 1

インフルエンザ、鳥インフルエンザと新型インフルエンザの違い

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

HP掲載用PDF

危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

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Microsoft Word - <原文>.doc

スライド 1

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院内感染対策マニュアル

4 月 17 日 4 医療制度 2( 医療計画 ) GIO: 医療計画 地域連携 へき地医療について理解する SBO: 1. 医療計画について説明できる 2. 医療圏と基準病床数について説明できる 3. 在宅医療と地域連携について説明できる 4. 救急医療体制について説明できる 5. へき地医療につ

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

感染症広域情報:ジカウイルス感染症に関する注意喚起(7月7日)


Transcription:

ジカウイルス感染症に関する Q&A 一般の方向け 作成 2016 年 1 月 21 日 最終更新 2016 年 6 月 16 日 ( 問 10 修正 ) 問 1 ジカウイルス感染症とは どのような病気ですか? 答ジカウイルス感染症は ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症をいいます ジカウイルス病は 後天的に ジカウイルスが感染することにより起こる感染症で 軽度の発熱 発疹 結膜炎 関節痛 筋肉痛 倦怠感 頭痛などが主な症状です ジカウイルスは母体から胎児への感染を起こすことがあり ( 先天性ジカウイルス感染症 ) 小頭症などの先天性障害を起こす可能性があります 問 2 どのようにして感染するのですか? 答ジカウイルスを持った蚊がヒトを吸血することで感染します ( 蚊媒介性 ) 基本的に 感染したヒトから他のヒトに直接感染するような病気ではありませんが 輸血や性行為によって感染する場合もあります また 感染しても全員が発症するわけではなく 症状がないか 症状が軽いため気付かないこともあります 妊娠中の女性が感染すると胎児に感染する可能性があります 問 3 世界のどの地域が流行地域ですか? 答アフリカ 中南米 アジア太平洋地域で発生があります 特に 近年は中南米等で流行し ています 詳しくはジカウイルス感染症の流行地域を確認してください 問 4 日本国内での発生はありますか? 答日本国内で感染した症例はありません 海外の流行地域で感染し 発症した症例が 2013 年以降 10 例 ( うち 今回の中南米の流行後は7 例 ) 国内で見つかっています IASR(2014 年 2 月号 ) フランス領ポリネシア ボラボラ島帰国後に Zika fever と診断された日本人旅行者の2 例 IASR(2014 年 10 月号 ) タイ サムイ島から帰国後にジカ熱と診断された日本人旅行者の1 例 問 5 感染を媒介する蚊は日本にもいますか?

答ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカが ウイルスを媒介することが確認されていま す ネッタイシマカは 日本には常在していませんが ヒトスジシマカは 日本のほとんどの地 域 ( 秋田県および岩手県以南 ) でみられます 問 6 治療薬はありますか? 答ジカウイルスに対する特有の薬は見つかっておりません 対症療法となります 問 7 罹ると重い病気ですか? 答ジカウイルス病は 感染しても症状がないか 症状が軽いため気付きにくいこともありま す 症状は軽く 2~7 日続いた後に治り 予後は比較的良好な感染症です 問 8 妊婦や胎児にジカウイルス感染症はどのように影響しますか? 答ブラジル保健省は 妊娠中のジカウイルス感染と胎児の小頭症に関連がみられるとの発表をしており 2016 年 1 月 15 日には 米国 CDC が 妊娠中のジカウイルス感染と小頭症との関連についてより詳細な調査結果が得られるまでは 流行国地域 ( 問 3 参照 ) への妊婦の方の渡航を控えるよう警告し 妊娠予定の女性に対しても主治医と相談の上で 厳密な防蚊対策を推奨しました 1 月 21 日には ECDC ( 欧州疾病対策センター ) は 流行地域への妊婦及び妊娠予定の方の渡航を控えることを推奨しました 世界保健機関 (WHO) は 2 月 1 日に 緊急委員会を開催し 小頭症及びその他の神経障害の集団発生に関する 国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態 ( PHEIC ) を宣言しました また 3 月 8 日に 第 2 回目の緊急委員会を開催し 以下の渡航措置についての勧告等を発表しました ジカウイルスの伝播がある地域等への( からの ) 渡航や貿易についての一般的な制限はない 妊婦はジカウイルス感染症が発生している地域への渡航をしないよう勧告される ジカウイルス感染症が発生している地域に住んでいる又は渡航するパートナーのいる妊婦は 妊娠期間中は 安全な性行為を確保するか性行為を控える ジカウイルス感染症が発生している地域へ渡航する人は 可能性のあるリスクや蚊による刺咬の可能性を低くするための適切な措置についての最新の勧告を入手し 帰国後は 伝播のリスクを下げるため 安全な性行為を含めた適切な対策をとる WHOは ジカウイルス感染に関するリスクの性質や期間についての情報とともに渡航についてのガイダンスを定期的に更新する WHO は 3 月 31 日 米国 CDC は 4 月 13 日 これまでの研究結果から ジカウイルス感染が小頭症等の原因となるとの科学的同意が得られたと結論づけました なお 現在 小頭症や他の神経障害とジカウイルスとの関連についての更なる調査が行われています

問 9 流行地域へ渡航をする場合は どのように予防すればよいですか? 答海外の流行地域にでかける際は 蚊に刺されないように注意しましょう 長袖 長ズボンの着用が推奨されます また蚊の忌避剤なども現地では利用されています 妊娠中にジカウイルスに感染すると 胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがあることから 妊婦及び妊娠の可能性がある方については 流行地域への渡航を控えた方がよいとされています やむを得ず渡航する場合は 主治医と相談の上で 厳密に蚊に刺されないようにする対策を講じることが必要です また 性行為感染のリスクを考慮し 流行地域に滞在中は 症状の有無にかかわらず 性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します 問 10 性行為による感染はどのように予防すればよいですか? 答性行為による男性から女性パートナーへの感染事例が報告されています 性行為感染及び母体から胎児への感染のリスクを考慮し 流行地域に滞在中は症状の有無にかかわらず 性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること 流行地域から帰国した男女は 症状の有無にかかわらず 最低 8 週間 パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中 性行為の際に コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します ( 参考 ) WHOは 性行為による感染予防について 暫定ガイダンス (2 月 18 日作成 ) を6 月 7 日に改訂しました その概要は 次のとおりです ジカウイルスが性行為により感染しうるという根拠に基づき WHO は以下のとおり推奨する 1. ジカウイルスに感染したすべての男女及びそのパートナー ( 特に妊婦 ) は 性行為による感染のリスク 避妊対策 より安全な性行動についての情報を受けること 及びコンドームを提供されること等 2. 流行地域に住んでいる又は流行地域から帰国後の 妊娠中のパートナーがいる男性は 少なくともパートナーの妊娠期間中は より安全な性行動をとるか 性行為を自粛する 3. 流行地域から帰国後の 妊娠を予定しているカップルや女性は ジカウイルスに感染することがないよう 最低 8 週間 ( 男性に症状が見られた場合には6か月 ) 妊娠を控えることを強く推奨される 4. 流行地域から帰国した人は 帰国後最低 8 週間 より安全な性行動をとるか 性行為の自粛を検討する (1) 渡航中又は帰国後 8 週以内に ジカウイルスの症状 ( 発疹 熱 関節痛 筋肉痛又は結膜炎 ) がある場合には 男性は 最低 6か月間 より安全な性行動をとるか 性行為の自粛を検討すること 女性は この推奨について正しい情報を知ること (2)WHOは ジカウイルスを確認するための定期的な精液の検査を推奨しない しかしなが

ら 国の政策に従い 症状があった男性は 帰国後 8 週後に 精液検査を実施することもでき る 4. ジカウイルスに関する検討に関わりなく WHO は HIV や他の性行為感染症を予防し 望 まない妊娠を避けるために より安全な性行動 ( 正しいコンドーム使用を含む ) を推奨する なお 詳細については 以下の HP を確認してください http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/204421/1/who_zikv_moc_16.1_eng.pdf?ua=1 問 11 日本で購入した忌避剤は 中南米においても効果がありますか? 答国内では ディート や イカリジン を成分とした忌避剤が市販されています 中南米の蚊にも効果があります 製品の用法 用量や使用上の注意を守って使用します 製品の忌避効果は 蒸発 雨 発汗などにより持続性が低下するので 一定の効果を得るためには 定期的に再塗布することが必要です 問 12 予防接種はありますか? 答ジカウイルス感染症に有効なワクチンはありません 問 13 海外旅行中に流行地域で蚊に刺された場合はどこに相談すればよいですか? 答すべての蚊がジカウイルスを保有している訳ではないので 蚊に刺されたことだけで過分に心配する必要はありません 心配な場合は 帰国された際に 空港等の検疫所でご相談ください また 帰国後に心配なことがある場合は 最寄りの保健所等にご相談ください なお 発熱などの症状がある場合には 医療機関を受診してください 問 14 日本国内でジカウイルスに感染する可能性はあるのでしょうか? 答日本にはジカウイルスの媒介蚊であるヒトスジシマカが秋田県および岩手県以南のほとんどの地域に生息しています このことから 仮に流行地域でウイルスに感染した発症期の人 ( 日本人帰国者ないしは外国人旅行者 ) が国内で蚊にさされ その蚊がたまたま他者を吸血した場合に 感染する可能性は低いながらもあり得ます ただし 仮にそのようなことが起きたとしても 成虫は冬を越えて生息できず 限定された場所での一過性の感染と考えられます ( ヒトスジシマカは卵で越冬しますが ウイルスがその卵の中で越冬するという報告はありません ) なお ヒトスジシマカは 日中 野外での活動性が高く 活動範囲は 50~100 メートル程度で

す 国内の活動時期は概ね 5 月中旬 ~10 月下旬頃までです 医療機関 検査機関の方向け 問 15 ジカウイルス病の病原体は何ですか? 答フラビウイルス科フラビウイルス属に属するジカウイルスです 問 16 潜伏期間はどのくらいですか? 答 2 ~12 日 ( 多くは 2~7 日 ) と言われています 問 17 どのような症状が出ますか? 答主として軽度の発熱 斑丘疹 結膜炎 関節痛 筋肉痛 疲労感 倦怠感 頭痛などを呈します これらの症状は軽く 2 ~ 7 日続いて治まります 血小板減少などが認められることもありますが 他の蚊媒介感染症であるデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています これまでの研究結果から WHO や米国 CDC は ジカウイルス感染が小頭症の原因となること また WHO はジカウイルス感染がギラン バレー症候群の原因となることについて科学的同意が得られたと結論づけました 問 18 検査はどのように行うのですか? 答特異的な臨床症状 検査所見が乏しいことから 診断のための検査は 血液または尿からのウイルス分離または PCR 法による病原体遺伝子の検出により行います 血清学的検査による診断は IgM 抗体または中和試験による抗体の検出により行います なお IgM 抗体を用いて診断を行う場合は 患者が感染したと考えられる地域で流行中のその他のフラビウイルス属ウイルス ( デング熱 黄熱 ウエストナイル熱 日本脳炎等 ) による先行感染又は共感染がないこと 半年以内の黄熱ワクチンの接種歴がないことを確認してください その他のフラビウイルス属ウイルスによる先行感染又は共感染を認める場合は ペア血清によるIg M 抗体以外の方法による確認試験を実施してください 問 19 鑑別を要する疾患は何ですか? 答同じ蚊媒介感染症であるデング熱及びチクングニア熱との鑑別が必要です その他 チ フス マラリア レプトスピラ症などとの鑑別も必要です 問 20 治療法はありますか? 答対症療法となります 通常は比較的症状が軽く 特別な治療を必要としません

問 21 患者の経過と予後はどうでしょうか? 答ジカウイルス病の予後は比較的良好です 症状が悪化した場合は医療機関を受診してく ださい 死亡はまれです 問 22 感染症法上の取り扱いはどうなっていますか? 答平成 28 年 2 月 5 日に感染症法の四類感染症 検疫法の検疫感染症に追加され 同年 2 月 15 日に施行されました これにより医師による保健所への届出が義務となり 検疫所での診察 検査 汚染場所の消毒等措置が可能となりました 問 23 ヒトスジシマカについて教えてください 答ヒトスジシマカは 日本のほとんどの地域 ( 秋田県および岩手県以南 ) に分布しています その活動時期は 5 月中旬 ~ 10 月下旬です ( 南西諸島や温暖な地域ではこれよりも活動期間は長い ) ヒトスジシマカの幼虫は 例えば ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶 ペットボトルに溜まった水 放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生します 人がよく刺されるのは 墓地 竹林の周辺 茂みのある公園や庭の木陰などとされています ( 参考 ) 国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページヒトスジシマカの写真 問 24 ヒトスジシマカの体内でジカウイルスは増えますか? 答ヒトスジシマカの体内でウイルスが増えることが確認されています そのため ヒトスジシ マカの刺咬によりジカウイルスが伝播される可能性があると言えます 問 25 ヒトスジシマカは越冬しますか? 答ヒトスジシマカの成虫は 秋になって気温が下がると死んでしまい 卵の状態で冬を越し ます ( 卵越冬 ) 問 26 ネッタイシマカについて教えてください 答現在 ネッタイシマカは国内には生息していません かつては国内でも沖縄や小笠原諸島に生息し 熊本県牛深町には 1944 ~ 1947 年に一時的に生息していたことが記録されていますが 1955 年以降は国内から消滅したとされています ただ今日では 航空機によって国内に運ばれる例も確認されており 定着の可能性は皆無ではありません ( 参考 ) 国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページネッタイシマカの写真

問 27 ネッタイシマカは国内に定着できますか? 答ネッタイシマカの分布の北限は台湾の高雄市周辺とされています 従って 国内では沖縄県の南方 ( 石垣島 西表島など ) 以北の野外では定着できないと考えられます しかし 空港ターミナルなど 一定の温度が維持されているような特別な場所では定着できるかもしれません 問 28 蚊に刺されないようにするにはどうしたらよいでしょうか? 答ヒトスジシマカは 早朝 日中 夕方 ( 特に日没前後 ) に活動し ヤブや木陰などでよく刺されます その時間帯に屋外で活動する場合は 長袖 長ズボンの着用に留意し 忌避剤の使用も推奨します ネッタイシマカは屋内で活動しますから 屋内での服装や対策に留意しなければなりません 問 29 日本でジカウイルスに感染する可能性はありますか? 答現在日本での流行はありません しかし 仮に流行地域でウイルスに感染した発症期の人 ( 日本人帰国者ないしは外国人旅行者 ) が国内で蚊にさされ その蚊がたまたま他者を吸血した場合に 感染する可能性は低いながらもあり得ます 問 30 不顕性感染の患者から感染の可能性はありますか? 答国立感染症研究所のリスクアセスメントによると 不顕性感染の患者が感染源となりうるかどうか ( 刺咬した蚊がウイルスを伝播しうるほどウイルスが増えるか どのくらいの期間ウイルスが持続されるかなど ) については わかっていません したがって 国内の蚊の活動期においては ジカウイルス感染症流行地域からの帰国者は症状の有無にかかわらず忌避剤の使用など蚊に刺されないための対策を少なくとも 2 週間程度は特に注意を払って行うことが推奨されます また 問 10にもあるとおり 流行地域に滞在中は症状の有無にかかわらず性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること 流行地域から帰国した男女は症状の有無にかかわらず最低 8 週間 パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中 性行為の際に コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します